セクション・オフィシアル追加作品*サンセバスチャン映画祭2022 ⑤2022年08月09日 16:27

          70回セクション・オフィシアル追加作品

   

★セクション・オフィシアルの追加4作、2017年の『家族のように』以来、久々の登場となったアルゼンチンのディエゴ・レルマンの「El suplente / The Substitute」、カンヌ・シネフォンダシオン・レジデンスに選ばれて製作したアメリカのマリアン・マタイアスのデビュー作「Runner」、ポルトガルのマルコ・マルティンスがイギリスを舞台にポルトガル出稼ぎ労働者をテーマにした「Great Yarmouth-Provisional Figures」、コロンビアのラウラ・モラがメデジンの10代のアマチュア5人を起用して撮った第2作目「Los reyes del mundo / The Kings of the World」、以上4作のご紹介。

         

9)El suplente / The Substitute」 アルゼンチン

ヨーロッパ-ラテンアメリカ共同製作2019 

監督:ディエゴ・レルマン(ブエノスアイレス1976)は、監督、脚本家、製作者、舞台監督。新作は6作目になる。本祭との関りは、2014年、ホライズンズ・ラティノ部門に4作目「Refugiado」がノミネート、2017年、5作目となる「Una especie de Familia」がコンペティション部門に正式出品され、新作でも共同執筆者であるマリア・メイラと脚本賞を受賞した。ラテンビート2017で『家族のように』の邦題で上映されている。2010年、3作目の「La mirada invisible」が国際東京映画祭で『隠れた瞳』として上映された折り、ヒロインのフリエタ・シルベルベルクと来日している。

 

データ:製作国アルゼンチン=伊=仏=西=メキシコ、スペイン語、ドラマ、110分、脚本マリア・メイラ、レルマン監督、ルチアナ・デ・メロ、フアン・ベラ、製作Arcadiaスペイン / Bord Cadre Films / El Campo Cine アルゼンチン/ Esperanto Kinoメキシコ / Pimienta Filma / Vivo Filmイタリア、製作者ニコラス・アブル(エグゼクティブ)、ディエゴ・レルマン、他多数、撮影ヴォイテク・スタロン、編集アレハンドロ・ブロダーソンBrodersohn、美術マルコス・ペドロソ、主要スタッフは前作と同じメンバーが多い。トロント映画祭202298日~18日)でワールドプレミアム。

 

キャスト:フアン・ミヌヒン(ルシオ)、アルフレッド・カストロ(エル・チレノ)、バルバラ・レニー(マリエラ)、マリア・メルリノ(クララ)、レナータ・レルマン(ルシオの娘ソル)、リタ・コルテセ(アマリア)、他

ストーリー:ルシオは名門ブエノスアイレス大学の文学教授ですが、このアカデミックな生活に倦んでいる。自分の生れ育ったブエノスアイレスのバリオの学校で自分の知識を活用させたいと思っている。彼は復讐のため地域の麻薬組織のボスに追いまわされている学生ディランを救おうとして事件に巻き込まれていく。

別途に作品紹介を予定しています。

 

  

                  (ルシオ役のフアン・ミヌヒン、フレームから)

 

   

         (フアン・ミヌヒン、監督、バルバラ・レニー)

 

 

10)「Runner」アメリカ

監督マリアン・マタイアス Marian Mathias(シカゴ1988)監督、脚本家、デビュー作。ニューヨークのブルックリン在住。カンヌ・シネフォンダシオン・レジデンス2018に選出されたほか、トリノ・ヒューチャーラボ201950.000ユーロ)、ベネチア映画祭プロダクション・ブリッジ・プログラム2020、ニューヨーク芸術財団などの資金援助を受けて製作されている。

データ:製作国アメリカ=ドイツ=フランス、2022年、英語、ドラマ、製作 Killjoy Films ドイツ / Man Alive アメリカ / Easy Riders フランス、脚本マリアン・マタイアス、撮影ジョモ・フレイ、製作者ジョイ・ヨルゲンセン、音楽Para One、キャスティングはケイト・アントニート、衣装スージー・フォード、撮影地ミシシッピー、イリノイ。トロント映画祭ディスカバリー部門でプレミアされ、ヨーロッパは本祭がプレミアとなる。

 

     

      (製作者ジョイ・ヨルゲンセンとマタイアス監督、トリノ・ラボ2019

 

キャスト:ハンナ・シラー(ハース)、ダレン・ホーレ(ウィル)、ジーン・ジョーンズ、ジョナサン・アイズリー

ストーリー18歳になるハースは、ミズリー州の孤立した町で父親に育てられた。突然父親が亡くなり一人残された。ミシシッピー川沿いの生れ故郷に埋葬して欲しいという父親のかつての願いを叶えるため出立する。厳しい気候や不景気と闘っているコミュニティで芸術的な魂を持っているウィルと出会う。彼は家族を養うため遠く離れた土地から出稼ぎに来ていた。彼はハースに引き寄せられ、彼女はウィルに引き寄せられる。彼はハースに生きることを教え、彼女はウィルに感じることを教え、お互いを発見します。ハースの愛と喪失、ふたりの友情と別れが語られる。

   

         

              (ハースとウィル、フレームから)

 

 

11)「Great Yarmouth-Provisional Figures」ポルトガル マルティンス?

監督マルコ・マルティンス Marco Martins (リスボン1972)監督、脚本家。本祭との関りは今回が初めてだが、2005年製作の「Alice」がカンヌ映画祭「ある視点」部門の作品賞を受賞した他、ラス・パルマスFF(新人監督)、マル・デル・プラタFF(監督・FIPRESCI)、ポルトガルのゴールデン・グローブ賞などを受賞している。他ベネチアFFのオリゾンティ部門にノミネートされた「Sao Jorge」(16)では、新作でも主演しているヌノ・ロペスが男優賞を受賞、ほかに「How to Draw a Perfect Circle」(09)が代表作。

 

    

     (中央が監督、右ヌノ・ロペス、第73回ベネチア映画祭フォトコールにて)

 

データ:製作ポルトガル=フランス=イギリス、ポルトガル語・英語、2022年、ドラマ、113分。製作Damned Films / Les Films de IApres-Midi / Uma Pedra no Sapato、脚本リカルド・アドルフォと監督の共同執筆、製作者カミラ・ホドル、フィリパ・レイス、(エグゼクティブ)イアン・ハッチンソン、サスキア・トーマスほか、撮影ジョアン・リベイロ、衣装イザベル・カルモナ、撮影地イギリスのグレート・ヤーマス

 

キャスト:ベアトリス・バタルダ(タニア)、ヌノ・ロペス、クリス・ヒッチェン、ボブ・エリオット、ヴィクトル・ローレンソ、リタ・カバソ、ロメウ・ルナ、ピーター・コールドフィールド(ジョー)、ウゴ・ベンテス(カルドソ)、アキレス・Fuzier(ロマの少年)、セリア・ウィリアムズ(看護師)、ほか

 

ストーリー201910月、ブレグジットの3ヵ月前、英国ノーフォーク州グレート・ヤーマスに何百人ものポルトガル人出稼ぎ労働者が、地元の七面鳥工場での仕事を求めて押しよせてきた。タニアはこれらの養鶏場で働いていたが、現在はイギリス人のホテルの経営者と結婚している。彼女はポルトガルの労働者にとって頼りになる人だったが、今では英国の市民権も取り、夫所有の使われていないホテルを高齢者向け施設に改装して、このやりがいのない仕事を辞めたいと夢見ていた。

 

     

                (フレームから)

 

 

12)「Los reyes del mundo / The Kings of the World」 コロンビア

監督ラウラ・モラ(メデジン1981)は監督、脚本家。新作は第2作目。メルボルン・フィルムスクールRMITで映画制作と監督を専攻する。本祭との関りは、2017年ニューディレクターズ部門に出品されたデビュー作「Matar a Jesús / Killing Jesús」がクチャバンク賞スペシャル・メンション、ユース賞、Fedeora 賞、SIGNIS 賞を受賞している。2002年に殺害された父親の実体験から構想された力作。カイロ映画祭で銀のピラミッド監督賞以下、コロンビアのマコンド賞、カルタヘナFF観客賞、フェニックス賞、シカゴ、パナマ、パーム・スプリングス、各映画祭受賞歴多数。他にTVシリーズ「Pablo Escobar: El Patrón del Mal」(12120話のうち83話を監督する。これは『パブロ・エスコバル 悪魔に守られた男』の邦題でNetflix 配信されている。

新作はプロフェッショナルな女性スタッフの協力と、演技経験のないアマチュアの15歳から22歳の若者5人とのトークを重ねながらクランクインできた。モラ監督は「この映画は男らしさを反映した映画ですが、撮影、録音以外は女性が手掛けています」と。本祭プレミアが決定した折りには「遂に映画をリリースできて、とても嬉しいです。非常に長く厳しいプロセスでしたから。それにサンセバスチャンの公式コンペティションで、私たちが深く尊敬している監督たちに囲まれて初演できることを光栄に思います」と語っている。

 

    

             (新作について語るラウラ・モラ)

 

データ:製作国コロンビア=ルクセンブルク=フランス=メキシコ=ノルウェー、スペイン語、2022年、ドラマ、脚本は『夏の鳥』(18)の脚本を執筆したマリア・カミラ・アリアスと監督との共同執筆、製作 Ciudad Lunar Productions / La Selva Cine、製作者は『彷徨える河』(15)のプロデューサー、『夏の鳥』の監督兼製作者のクリスティナ・ガジェゴと、TVシリーズを数多く手掛けているミルランダ・トーレス資金提供メデジン市。撮影地メデジン、配給 Film Factory Entertainment、公開コロンビア106

キャスト:カルロス・アンドレス・カスタニェダ、ダビッドソン・アンドレス・フロレス、ブライアン・スティーブン・アセベド、クリスティアン・カミロ・ダビ・モラ

 

   

 

  (5人の王たち、フレームから)

 

ストーリー:メデジンのストリートチルドレン、ラー、クレブロ、セレ、ウィニー、ナノの5人の若者の不服従、友情、誇りについての物語。5人の王たちには王国も法律も家族もなく、本当の名前すら知らない。最年長のラーは、かつて民兵組織が祖母から押収した土地に関する政府からの手紙を受け取った。彼と仲間は約束の地を求めて旅の準備に着手する。破壊的な物語は荒々しいが深遠なグループを通して現実と妄想が交錯する。すべてが生じた無に向かっての旅が語られる。


 

       

(左からディエゴ・レルマン、マリアン・マタイアス、マルコ・マルティンス、ラウラ・モラ)

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