第33回ゴヤ賞2019*授賞式あれやこれや ⑩ ― 2019年02月05日 14:54
フォルケ賞、フェロス賞とほぼ重なった受賞者たち

★終わってみれば、今回のゴヤ賞は、政界の汚職の泥沼を描いたロドリゴ・ソロゴジェンのスリラー「El reino」と、フツーとは何かをテーマにしたハビエル・フェセルの「Campeones」での知的障害者の可視化が勝利した。「Campeones」を観ようと映画館に駆けつけた320万人の観客と、アカデミー会員1600人の評価が珍しく一致した。特に全くの無名の新人10%の視力しかない視覚障害者のヘスス・ビダルの受賞スピーチに涙した人は多かったのではないでしょうか。「友好・多様性・可視化」という三つの単語で、障害者を特別扱いする社会に警鐘を鳴らした。YouTubeでの検索回数は既に170万回を軽く突破している。フェセル監督は「撮影を始めたときは知的障害を抱えた人々がテーマだったが、今日は異なった能力をもつ人々について語りたい。もっとチャンピオンについて話そう」とスピーチした。作品賞のプレゼンターは、30年前の脚本賞受賞作『神経衰弱ぎりぎりの女たち』を記念して、アルモドバル監督、出演者のロッシ・デ・パルマ、ロレス・レオン、フリエタ・セラーノが揃って登壇しました。

(自分の家族やこれまでの人生を支えてくれた人々、自分を善き人間、一躍俳優にしてくれたフェセル監督に感謝を捧げた新人男優賞のヘスス・ビダル)

(スピーチをするハビエル・フェセル監督と製作者ルイス・マンソ以下スタッフ)

(アルモドバル監督、ロッシ・デ・パルマ、フリエタ・セラーノ、ロレス・レオン)
★受賞者は結局フォルケ賞、フェロス賞とほぼ重なっていました。なかでフォルケ賞の俳優賞は、主演・助演・新人を一括りにして男優・女優とカテゴリーがすっきりしている。ロドリゴ・ソロゴジェン「El reino」のアントニオ・デ・ラ・トーレは3冠を達成して実力のほどを示しました。彼は下積み時代が長く出演本数はすでに3桁、ゴヤ賞には嫌われ続けであったが、やっと7度目の正直で主演男優賞をゲットした。
*アントニオ・デ・ラ・トーレのキャリア紹介は、コチラ⇒2018年08月27日

(プレゼンターのマリサ・パレデスにひざまずくアントニオ・デ・ラ・トーレ)
★同じく3冠を達成したのは、カルロス・ベルムト『シークレット・ヴォイス』のエバ・リョラチ、新人女優賞を受賞した。1970年ムルシア生れ、ムルシアの舞台芸術上級学校出身、舞台女優としてのキャリアが長い。映画では本作のほか同監督のファンタジー・スリラー「Diamond Flash」(11)や、ジョルディ・コスタの「La lava en los labios」(13)、お馴染み『マジカル・ガール』に出演、新人賞とはいえ、その独特の雰囲気を漂わせるベテラン女優、いずれご紹介することになるでしょう。女性の平等、機会均等をアピールした。

(新人賞なれど貫禄のエバ・リョラチ、後ろはマリア・レオンとベレン・クエスタ)
★主演女優賞のスシ・サンチェス、ラモン・サラサールの『日曜日の憂鬱』ノミネーション1個を守りきりました。本作ではゴージャスな衣装で登場して観客を驚かせた。勿論主演女優賞は初ノミネート、初受賞です。3月22日スペイン公開のアルモドバル新作「Dolor y gloria」に脇役で出演します。

(「まさか私が受賞するなんて」と頭をふりながら登壇するスシ・サンチェス)
★ゴヤ栄誉賞のナルシソ ’チチョ’ イバニェス・セラドールの出席は、体調不良のためマドリードの自宅からのガラ視聴となりました。去る1月14日にスペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソの手からトロフィーを受取っておりました。欠席にもかかわらず会場のスタンディングオベーションを受けていた。ガラの舞台に並んだ紳士たちは ’チチョ’ の影響を受けた、バヨナ、アメナバル、ジャウマ・バラゲロ、ロドリゴ・コルテス、アレックス・デ・ラ・イグレシア、フアン・カルロス・フレスナディーリョ、パコ・プラサ、ナチョ・ビガロンドの8監督でした。1月14日に会長と連れ立って訪れたときにチチョが語った言葉「私がしてきた仕事を上映していただき、その心遣いに感謝いたします。いつも君たちのことを思って撮ってきた」というバヨナのビデオで締めくくられた。
*キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2018年12月03日


(トロフィーを手にしたナルシソ 'チチョ' イバニェス・セラドール、2019年1月14日)

(舞台に勢揃いした8人の監督たち)
★趣向を凝らした演出の評価はまちまち、視聴率はいずれ発表されるでしょうが、総合司会者シルビア・アブリル&アンドレウ・ブエナフエンテのコメディアン夫婦のフォトはなんとしたことでしょうか。衣装デザイン賞の発表前、妻の長すぎるドレスの裾が引っかかって脱げてしまい、連れ合いも気の合ったところを披露すべきとパンツ姿に、傍若無人を通りこしていやはや。シルビアのお召し替えも4回ぐらいあったかな。

(拍手喝采の多かった一つだが、こんな中年夫婦のヌードは見たくない?)

(最後のまっ黄色の衣装のシルビア・アブリル)

(米コメディアン、マルクス兄弟の3男グルーチョを演じだアンドレウ・ブエナフエンテ)
★会場を驚かせたのがスペインを代表する二人の若い歌姫が登場したこと。ロサリアは「Me quedo contigo」を歌い、アマイア・ロメロは作曲家のマヌ・ギックスのピアノ伴奏で歌った。アマイアはオリジナル歌曲賞のプレゼンターでもあった。これは長く皆の記憶に残るでしょう。ほかオーケストラ、伝統的な衣装をまといセレナーデを歌う学生音楽隊トゥナ、カーニバルで祭りの歌をうたうチリゴータのグループ、踊り、サンバありのアンダルシア色、会場からも歌声が上がり盛り上がっていた。

(会場を感動に包んだロサリア)

(アマイア・ロメロとマヌ・ギックス)
★その他、会場を沸かせたのが短編映画賞プレゼンターの作家でジャーナリストのマキシム・ウエルタ、彼はペドロ・サンチェス政権の2018年6月7日~13日まで、たったの7日間だけ教育文化スポーツ相を務め、任期最短レコードの保持者。スピーチは長くならないから「皆さん、心配しないで、ご存知の通り、私はもっとも短かったのです」と皮肉たっぷり、本当に短かく、スピーチは「短ければ短いほど良い」を実証した。

(「すぐ終わるからね」と会場を爆笑させたマキシム・ウエルタ)
★ゴヤ賞が終わって、やっと2018年が終わりました。もう観客の興味は米アカデミー賞、ダブル・ノミネーションのアルフォンソ・キュアロンは、プロモーションや根回しで大忙しか来西はなかった。作品賞も星取表ではトップに付けているがどうでしょうか。今月7日に始まるベルリン映画祭2019コンペティション部門には、イサベル・コイシェの「Elisa & Marcela」だけ、ラテンアメリカ諸国も日本同様ゼロのようです。続いて4月のマラガ、5月のカンヌ、各映画祭も直ぐです。
◎赤絨毯を踏んだノミネーション・スター、衣装が話題を呼んだスターたち◎

(主演女優賞ノミネーションのペネロペ・クルス、単色のシャネル)

(主演女優賞ノミネートのロラ・ドゥエニャス、エドゥアルド・アンデスのデザイン)

(主演女優賞ノミネーションのナイワ・ニムリ、グッチのデザイン)

(助演女優賞ノミネーションのアナ・ワヘネル)

(助演女優賞ノミネートのナタリア・デ・モリーナ、
マイケル・コース・コレクション)

(助演女優賞ノミネーションのアンナ・カスティーリョ)

(主演男優賞ノミネーションのホセ・コロナド)

(助演男優賞ノミネーションのエドゥアルド・フェルナンデス)

(作品賞ノミネートの『カルメン&ロラ』、アランチャ・エチェバリア監督と出演者)

(監督賞プレゼンターのイサベル・コイシェ、タダシ・ショージのドレス、
ヤヨイ・クサマの水玉バッグ)

(ベストドレッサーのレオノル・ワトリング、撮影賞と編集賞のプレゼンター)

(マリサ・パレデスと一緒に主演男優賞のプレゼンターを務めたノラ・ナバス)

(アレックス・デ・ラ・イグレシアとカロリナ・バング夫婦)

(ロドリゴ・ソロゴジェンとイサベル・ペーニャ)

(パコ・レオン、マリア・レオン兄妹)

(ロッシ・デ・パルマと娘ルナ・マリー)

(フードのドレスが好きなマカレナ・ゴメスとアルド・コマス夫婦)

(スペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソと副会長ラファエル・ポルテラ)

(ベストドレッサーに選ばれた左から、フアナ・アコスタ、シルビア・アバスカル、
着物をイメージしたというロサリア、ナイワ・ニムリ)

(エドゥアルド・カサノバ、最も奇抜だったブライス・エフェ、
ミゲル・アンヘル・ムニョス、パコ・レオン)
第33回ゴヤ賞2019*授賞式 ⑨ ― 2019年02月03日 18:51
ロドリゴ・ソロゴジェンの「El reino」に軍配が上がった?

(ゴヤ賞授賞式が開催されたセビーリャの夜景、2019年2月2日)
★大賞作品賞はハビエル・フェセルの「Campeones」でしたが、監督賞、オリジナル脚本賞、主演・助演男優賞以下7冠を制したロドリゴ・ソロゴジェンの「El reino」に軍配が上がったのではないでしょうか。4時間近くかかったガラで、招待客3000人の皆さま、テレビ視聴者の皆さま、お疲れさまでした。まだ授賞式の模様は見ておりませんので、取りあえず結果と入手できたフォトをアップしておきます。

(総合司会者のシルビア・アブリルとアンドレウ・ブエナフエンテ)

(スペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソ)
*作品賞
「Campeones」制作会社:Morena Films / Pelícuias Pendeltón SA /
Telefónica Audiovisual Digital

(登壇したスタッフとプレゼンターのアルモドバル、ロッシ・デ・パルマ)

*監督賞
ロドリゴ・ソロゴジェン「El reino」

(前回の受賞者イサベル・コイシェ)
*新人監督賞
アランチャ・エチェバリア「Carmen y Lola」『カルメン&ロラ』

*オリジナル脚本賞
ロドリゴ・ソロゴジェン、イサベル・ペーニャ「El reino」

*脚色賞
アルバロ・ブレッヒナー「La noche en 12 años」『12年の長い夜』

*オリジナル作曲賞
オリビエル・アルソン「El reino」

*オリジナル歌曲賞
「Este es el momento」コケ・マリャ 「El reino」

*主演男優賞
アントニオ・デ・ラ・トーレ「El reino」

*主演女優賞
スシ・サンチェス「La enfermedad del domingo」『日曜日の憂鬱』

*助演男優賞
ルイス・サエラ「El reino」

*助演女優賞
カロリナ・ジュステ『カルメン&ロラ』

*新人男優賞
ヘスス・ビダル「Campeones」

*新人女優賞
エバ・リョラチ「Quién te cantará」『シークレット・ヴォイス』

*プロダクション賞
ヨーサフ・ボカリ 「El hombre que mató a Don Quijote」監督テリー・ギリアム


*撮影賞
Josu Incháustegui「La sombra de la ley」『ガン・シティ~動乱のバルセロナ~』

*編集賞
アルベルト・デル・カンポ「El reino」

*美術賞
フアン・ペドロ・デ・ガスパル 『ガン・シティ~動乱のバルセロナ~』

*衣装デザイン賞
クララ・ビルバオ 『ガン・シティ~動乱のバルセロナ~』

*メイクアップ&ヘアー賞
シルビエ・インベルト、アンパロ・サンチェス、パブロ・ペロナ
「El hombre que mató a Don Quijote」
*録音賞
ロベルト・フェルナンデス、アルフォンソ・ラポソ 「El reino」

*特殊効果賞
リュイス・リベラ、ラウラ・ペドロ 「Superlópez」


*アニメーション映画賞
「Un día más con vida」 Kanaki Films / Platige Films 『アナザー・デイ・オブ・ライフ』

(アマヤ・ラミレス、ラウル・デ・ラ・フエンテ)
*ドキュメンタリー映画賞
「El silencio de otros」 Semilla Verde Productions / Lucernam Films

(ロバート・バハー、アルムデナ・カラセド)

*イベロアメリカ映画賞
「ROMA」(メキシコ)『ROMA/ローマ』監督アルフォンソ・キュアロン


*ヨーロッパ映画賞
「Cold War」(ポーランド)監督パヴェウ・パヴリコフスキ


*短編映画賞
「Cerdita」 監督カルロタ・ペレダ


*ドキュメンタリー短編賞
「Gaza」 監督カルレス・ボベル・マルティネス、フリオ・ペレス・デル・カンポ

(フリオ・ペレス・デル・カンポ、カルレス・ボベル・マルティネス)

*アニメーション短編賞
「Cazatalentos」 監督ホセ・エレーラ


★ここ最近作品賞受賞作品は1年ぐらい遅れても公開されるようになっている。「Campeones」は期待してもいいでしょうか。作品賞にノミネートされながら無冠だったのが『エブリバディ・ノウズ』と「Entre dos aguas」の2作、前者は6月公開が予定されているのでスクリーンで見ることができます。主演女優賞を期待していたペネロペ・クルスの成長ぶりが楽しみです。

監督賞ノミネーション*ゴヤ賞2019 ⑧ ― 2019年02月02日 19:17
予測がつかない監督賞、ハビエル・フェセル、ロドリゴ・ソロゴジェン・・・・

★今年は作品賞の予測がつかないから、それに連動して監督賞もつかない。確実なのは『エブリバディ・ノウズ』のアスガー・ファルハディは受賞しないということぐらいです。観客に一番人気なのは、つまり興行成績バツグンなのはハビエル・フェセルの「Campeones」だが、観客に投票権があるわけではない。ロドリゴ・ソロゴジェンの「El reino」は、批評家の評価はすこぶる高いが観客の反応はどうか。第91回アカデミー賞短編部門に「Madre」が踏みとどまって脚光を浴びているが、それとこれとは別でしょうか。この短編は昨年のゴヤ賞受賞作品、昨年ご紹介しているが、これはよくできている。ソロゴジェンの才能は半端でないことは確かです。ノミネーション数の多寡では推しはかれないが、第11回ガウディ賞を攫った「Entre dos aguas」のイサキ・ラクエスタはちょっと厳しいかもしれない。
★ノミネート監督&作品は以下の通りです。
*アスガー・ファルハディ『エブリバディ・ノウズ』ノミネーション8個
イラン出身のオスカー監督、アカデミー外国語映画賞受賞の『別離』と『セールスマン』は、本邦でも話題になった。家庭の秘密やもめ事を深く掘り下げていく手法は、イランに止まらず万国共通のテーマ。脚本の一部をアルモドバルに渡して意見を訊いた。「こんなストーリーなんだが、スペイン人には受け入れられるかね?」―「実にスペイン的だよ。もしあなたが作らないなら、私が作ってもいいよ」が返事だった。「そうでなかったら、撮らなかったかもしれない」とファルハディ監督。ペネロペ・クルス、ハビエル・バルデム、リカルド・ダリン、バルバラ・レニー、エドゥアルド・フェルナンデス、インマ・クエスタ、これだけの大物俳優を集めて映画を作れるスペイン監督は、良し悪しを抜きにして見当たらない。今夏6月劇場公開が予定されている。
〇ノミネーションは、作品・監督・脚本・オリジナル歌曲・主演女優・主演男優・助演男優・編集賞の8カテゴリー。
*紹介記事は、コチラ⇒2018年05月08日/10月17日


(アスガー・ファルハディ、2018年9月12日、本作のプレミア上映、マドリードのカジャオ)
*ロドリゴ・ソロゴジェン 「El reino」ノミネーション13個
権力に執着する登場人物たちが繰りひろげる卑劣なストーリーに、観客のアドレナリンはドクドク流れるでしょう。フェロス賞2019では、作品賞の他、ソロゴジェンの監督・脚本賞、アントニオ・デ・ラ・トーレの主演男優賞、ルイス・サエラの助演男優賞の5冠、フォルケ賞ではデ・ラ・トーレが男優賞を受賞している。キャストはジョセップ・マリア・ポウ、バルバラ・レニー、アナ・ワヘネル(助演女優賞)、フランシスコ・レイェス(新人男優賞)、ナチョ・フレスネダ他。
〇ノミネーションは、作品・監督・脚本・オリジナル作曲・主演男優・助演男優・助演女優・新人男優・撮影・編集・録音・特殊効果・プロダクション賞の13カテゴリー。
*紹介記事は、コチラ⇒2018年03月26日/07月25日


(2017年7月4日、撮影中のロドリゴ・ソロゴジェン、共同脚本家のイサベル・ペーニャ)
*ハビエル・フェセル 「Campeones」ノミネーション11個
古くからのファンなら『ミラクル・ぺティント』や『モルタデロとフィレモン』の監督作品。『カミーノ』のいざこざに疲れたか、再びコメディに戻ってきた。主役のハビエル・グティエレス以外は知的障害のある新人が殆どです。アカデミー賞外国語映画賞スペイン代表作品(落選)の他、フォルケ賞2019の作品賞とCine y Educación en Valoresのダブル受賞、フェロス賞ではコメディ部門の作品賞を受賞した。キャストはハビエル・グティエレス(主演男優)、フアン・マルガジョ(助演男優)、フラン・フエンテス、グロリア・ラモス(新人女優)、ヘスス・ビダル(新人男優)、ヘスス・ラゴ、ホセ・デ・ルナ
〇ノミネーションは、作品・監督・脚本・オリジナル歌曲・主演男優・助演男優・新人男優・新人女優・プロダクション・編集・録音賞の11カテゴリー。
*紹介記事は、コチラ⇒2018年06月12日


(出演者フラン・フエンテス、グロリア・ラモス、ヘスス・ラゴ、
ホセ・デ・ルナに指示を与えるハビエル・フェセル監督)
*イサキ・ラクエスタ 「Entre dos aguas」ノミネーション2個
1975年ジローナ生れ。サンセバスチャン映画祭2018の「金貝賞」受賞作品、更に先週開催されたガウディ賞の作品賞(カタルーニャ語以外)、監督賞、主演男優賞を含む7冠を達成した。2006年の『時間の伝説』から12年後がロマのゴメス兄弟によって語られる。イサ・カンポ(夫人)とカタルーニャ語で撮った前作は、邦題『記憶の行方』でNetflix配信された。
〇ノミネーションは、作品賞と監督賞の2カテゴリー。
*監督キャリア&作品紹介記事は、コチラ⇒2018年07月25日/2016年04月29日


(左から、イスラエル・ゴメス、ラクエスタ監督、フランシスコ・ホセ・ゴメス)
★作品賞は「Campeones」と「El reino」に分かれ、主演女優賞は『エブリバディ・ノウズ』のペネロペ・クルスと「Viaje al cuarto de una madre」のロラ・ドゥエニャス、『日曜日の憂鬱』のスシ・サンチェスとまさに混戦状態、助演女優賞は「Viaje al cuarto de una madre」のアンナ・カスティーリョの確率が高い。全員一致は主演男優賞のアントニオ・デ・ラ・トーレとイベロアメリカ映画賞の『ROMA/ローマ』くらいか。授賞式は2月2日(19:50~)、傍若無人ぶりが売りのシルビア・アブリル&アンドレウ・ブエナフエンテ夫婦の総合司会で間もなく開幕されます。

(ゴヤ胸像を真ん中に準備OKのシルビア・アブリル&アンドレウ・ブエナフエンテ夫妻)
新人監督賞ノミネーション*ゴヤ賞2019⑦ ― 2019年01月31日 15:08

(着々と準備が進んでいるセビーリャ会場の夜景)
★あと数日に迫った第33回ゴヤ賞授賞式は、マドリードを離れてセビーリャで開催されることになっている。セビーリャは、昨年11月に第15回を迎えたセビーリャ映画祭(グランプリ名は金のヒラルダ賞)を開催したばかり、ヨーロッパ映画賞ノミネーションの発表がある国際映画祭として経験豊富、第31回となるヨーロッパ映画賞授賞式もセビーリャで行われました。因みに受賞作品は、ゴヤ賞2019ヨーロッパ映画賞にも名を連ねているポーランドのパヴェウ・パヴリコフスキの「Cold War」でした。スペイン語と英語字幕入りで上映され、国際映画祭の基準を満たしています。セビーリャは、2000年のバルセロナに続いて、マドリード以外の3番目のゴヤ賞ガラ開催都市になりました。
★作品賞にノミネートされた映画は既に作品紹介を記事にしておりますので、今回はまだ本邦ではあまり馴染みのない新人監督4名を纏めてみました。こちらもそれぞれ作品紹介はしておりますが、3人が女性監督という異例の年になりました。なかでアランチャ・エチェバリアが、ラテンビート2018に来日したこともあって一番知名度があるでしょうか。
◎アランチャ・エチェバリア*『カルメン&ロラ』
1968年ビルバオ生れ。二人の主役サイラ・ロメロ(ロラ役)とロシー・ロドリゲス(カルメン役)に挟まれてポーズをとる監督(2018年8月27日)。カンヌ映画祭2018併催の「監督週間」上映作品。ゴヤ賞ノミネーション7部門8個(作品・新人監督・オリジナル脚本・オリジナル歌曲・助演女優・新人男優・新人女優2)、4作のうち作品賞にノミネートされたのは『カルメン&ロラ』だけ、Netflixで配信されていることを考慮すると先頭を切っているのではないか。
*監督紹介記事は、コチラ⇒2018年05月13日


(左から、サイラ・ロメロ、監督、ロシー・ロドリゲス、2018年8月27日)
◎セリア・リコ*「Viaje al cuarto de una madre」
1982年セビーリャ生れ。アランチャ・エチェバリアのすぐ後ろを走っているのがセリア・リコ。先週開催されたフェロス賞では脚本賞を受賞した。ほかにロラ・ドゥエニャスが主演女優賞、アンナ・カスティーリョが助演女優賞、正式カテゴリーではないが観客賞を受賞しているのが大きな強みです。ゴヤ賞では4部門(新人監督・主演女優・助演女優・編集)、フェルナンド・フランコの編集賞は射程距離に入っているか。
*監督紹介記事は、コチラ⇒2019年01月06日


(第6回フェロス賞ガラでのセリア・リコ、2019年1月19日)
◎アンドレア・ハウリエタ*「Ana de día」
1986年パンプローナ生れ。デビュー作「Ana de día」はマラガ映画祭2018コンペティション部門にノミネートされ、その他国際映画祭ノミネーション、及び受賞多数。主役のアナには、フェロス賞授賞式でメイン司会者を務めたイングリッド・ガルシア・ヨンソンが2役を好演したがノミネーションされなかった。今回ゴヤ賞ノミネーションは1部門のみ。
*監督紹介記事は、コチラ⇒2019年01月08日


(本作撮影中のアンドレア・ハウリエタ)
◎セサル&ホセ・エステバン・アレンダ*「Sin fin」
セサル・エステバン・アレンダ(弟)とホセ・エステバン・アレンダ(兄)兄弟。マラガ映画祭正式出品作品、メランコリックなSFロマンス。ゴヤ賞では1部門ノミネーション、主演のハビエル・レイとマリア・レオンは残念ながら選外だった。
*監督紹介記事は、コチラ⇒2018年04月21日


(左側がホセ、エステバン・アレンダ兄弟、2018年10月22日、マドリードのプレス会見にて)
『ROMA/ローマ』*アルフォンソ・キュアロンの記憶の旅 ― 2019年01月27日 20:35
「リボにはたくさんの借りがあるのです」とアルフォンソ・キュアロン

★ゴールデン・グローブ賞2冠、アカデミー賞2019ノミネーション10部門と、アルフォンソ・キュアロンの『ROMA/ローマ』を取りまく環境が慌ただしくなってきました。当ブログでは度々記事にしておりいささか食傷気味ですが、作品賞と外国語映画賞のダブル・ノミネーションと聞いては話題にしたくなります。過去のダブルのケースでは後者の受賞は確実らしい。今までスペイン語映画の作品賞ノミネートは縁がなかったので無関係と思っていた。しかし『ROMA/ローマ』の外国語映画賞受賞が確実なら、昨年のセバスティアン・レリオの『ナチュラルウーマン』に続いてスペイン語映画が連続で受賞することになります。しかしゴールデン・グローブ賞受賞作品はオスカーは取れないというジンクス通りなら作品賞は受賞なしということになる。今年は8作品ノミネーションと多いから票は割れるでしょう。

(ゴールデン・グローブ賞2冠、作品賞・監督賞のトロフィーを両手にした監督)
★アカデミー賞の作品賞に外国語映画がノミネートされるのは珍しく、スペイン語映画では初めてとなります。外国語映画賞にもダブってノミネートされた作品は、直近ではミヒャエル・ハネケの『愛、アムール』があり外国語映画賞を受賞しています。外国語映画部門がなかった時代ならいざ知らず、常々ダブルのノミネーションに違和感を覚えていますが、本作は監督・脚本・撮影、前評判では候補にも上がっていなかった主演女優(ヤリッツァ・アパリシオ)と助演女優(マリナ・デ・タビラ)まで浮上して、全部で10部門には驚きを通りこして腰が引けてしまいました。製作のガブリエラ・ロドリゲスは、ラテン系では初めての女性プロデューサーということで、老害が懸念される米国アカデミー会員の「初物食い」を期待しておきます。
★主人公クレオのモデルで、監督にインスピレーションを与えたniñeraベビーシッター兼nana乳母リボ、リボリア・ロドリゲスもニューヨーク映画祭2018に登場して『ROMA/ローマ』のプロモーションに一役買いました。現在74歳になるリボリアが、メキシコでも貧しいと言われるオアハカ州北部ミシュテカ地方の村を出てキュアロン家にやって来たのは1962年、監督が生後9ヵ月、彼女が18歳のときだった。「家族の一員、みんなのお気に入り、私の人格形成をした人、リボには大きな借りがあるのです」と監督。「私たちが小さい頃にはみんな<ママ>と呼んで、彼女と結婚するんだと言い合っていたのです」と、常に物静かに接してくれたリボの人柄をCNNのインタビュアに語ったそうです。

(ヤリッツァ・アパリシオ、リボリア・ロドリゲス、監督、ニューヨーク映画祭、2018年10月)
★幼年期のキュアロンは、彼女の故郷オアハカ州テペルメメ・ビリャ・デ・モレロス村の話を聞くのが好きだった。彼女はスペイン人がやってくる前の伝統的な遊戯がどんなものか、シャーマンたちが如何にして人々を癒してくれたかについて語った。今なおメキシコに存続している不平等、ミシュテカ族の少女が舐める辛酸、寒さ、飢え、貧しさについて知りえたのもリボのお蔭だと。12歳の誕生日に父親からプレゼントされたペンタックス・カメラが子供たちに革命を起こした。ミノルタ・スーパー8を買うために節約し、1年後に手にしたキュアロンは、母親、3人の弟妹、甥、勿論リボを主人公にして短編を撮りはじめた。小さな映画監督の誕生、ペンタックス・カメラの到来はまさに革命だった。

(クレオ・ママに抱かれて眠る末っ子ぺぺとソフィ)
★1991年、すぐ下の弟カルロス・キュアロンと共同監督したデビュー作『最も危険な愛し方』(「Solo con tu pareja」)にリボリアも出演してるそうです。10年後に撮った『天国の口、終りの楽園。』(「Y tu mamá también」)にもちょとだけ顔を出しているそうですがどこでしょうか。因みにディエゴ・ルナが扮した政治家の息子、乳母をママと呼んでいたテノッチは、キュアロン監督の分身でしょう。『ノー・エスケープ自由への国境』が公開された長男ホナス・キュアロンのデビュー作「Año uña」(07)にもボイス出演している。何十年も一緒に暮らしたリボなのに、実は何も知らなかったと感じた一瞬があった由、それは祖母が電気代に口うるさかったので、夜は電気を消してロウソクで過ごしたことを聞いた時だった。それは劇中でクレオともう一人の家政婦アデラの会話に活かされていました。
「それでどういう映画なの?」―「勇気ある女性たちの物語よ」
★リボ=クレオを演じたヤリッツァ・アパリシオは、1993年オアハカ州トラヒアコ生れ、映画に出る前は保育園(幼稚園)の先生だった。演技経験は何もなかったがオーディションに駆けつけ、その穏やかな物腰が監督の目に留まった。それ以来、彼女の人生は180度変わってしまい、今やメキシコの重要な顔となった。「今まで不可能だと決めつけていた事が、決してそうではなかった。素晴らしいチャンスをもつことができた」とアパリシオ。彼女がモード雑誌「ヴォーグ」(勿論メキシコ版)の表紙を飾ったニュースを記事にしましたが、彼女だけでなく、雇い主のソフィア夫人役マリナ・デ・タビラ(1974メキシコシティ)、同僚家政婦アデラ役のナンシー・ガルシアも映画祭出席、インタビューと引っ張り凧です。

(インタビューを受ける、マリナ・デ・タビラ、ヤリッツァ・アパリシオ、ナンシー・ガルシア)
★マリナ・デ・タビラは自身の役柄について「ソフィアの長所は、夫との不和に苦しんでいるが、4人の子供たちの前では明るく振舞って、子供たちを前向きに育てようとしている。クレオとアデラの雇い主として家庭を守っている」女性だと分析、「クレオの美点は、子供たちに常に愛情深く接して、信じられない存在だ」と断言した。監督がソフィア夫人の造形は母親クリスティナ・オロスコにほぼ一致すると語っていたが、彼女は昨年3月鬼籍入りした。ここ40年間ほどでメキシコ社会での女性の役割は変化してきているが、まだ道半ばだという点で、3人の女性の意見は一致している。

(子供たちに父親がいなくてもみんなで頑張ろうと話すソフィア夫人)
★ナンシー・ガルシアは「映画のなかでは、女性たちが思い切って何かをすることはできないテーマが際立っていた。女性たちが尊敬しあい高め合う何かを、私はできるんだと自分に言い聞かせる事が必要です。父親の庇護なしでも子供たちを育てられると女性たちが認識するようになってきた」と指摘した。2017年の統計では、3430人のメキシコ人女性が殺害の犠牲になった。人種差別と女性蔑視は見え隠れするが、現在では上流階級でもクレオのような仕事をする女性を雇う家庭は減少しているということです。10代から住み込みで働くこの制度に多くの問題が潜んでいるのは確かです。遅い歩みではあるが静かな地殻変動は起きている。
★それで「この映画は一言でいうとどんなお話?」、「勇気ある女性たちについての映画です」とナンシー・ガルシア、「人生そのものについての物語」と穏やかにヤリッツァ・アパリシオ、「幼年時代の心の傷についてのお話」とマリナ・デ・タビラ、ええ、そういう映画なんです。今日はロスアンゼルス、明日はニューヨークと走り回り、いよいよ2月24日が近づいてきました。ハリウッドの人々は、この地味なモノクロ映画をどう評価するのでしょうか。ゴヤ賞イベロアメリカ映画賞もほとんど受賞が確定していますからサプライズはないでしょう。
『12年の長い夜』 アルバロ・ブレッヒナー*ゴヤ賞2019 ⑥ ― 2019年01月15日 19:01
イベロアメリカ映画賞―アルバロ・ブレッヒナーの『12年の長い夜』

★イベロアメリカ映画賞は、アルフォンソ・キュアロンの『ROMA/ローマ』にほぼ決まりでしょうが、昨年暮れからアルバロ・ブレッヒナーの第3作「La noche de 12 años」が、邦題『12年の長い夜』でNetflixで配信が開始されました。サンセバスチャン映画祭2018「ホライズンズ・ラティノ」部門の目玉としてすぐさま記事をアップしましたおり、ゴヤ賞ノミネーションを予想いたしました。予想通りになりましたが前大統領ムヒカ役のアントニオ・デ・ラ・トーレが助演男優賞候補になるとは思っていませんでした。スペインも製作国の一つですから規則違反ではありませんが、少し強引でしょうか。
★デ・ラ・トーレはロドリゴ・ソロゴジェンの「El reino」で主演男優賞にもノミネートされており、虻蜂取らずにならないことを祈りたいところです。彼が欲しいのは1個持っている助演ではなく、素通りつづきの主演のはずです。スペイン映画賞としては最初に蓋を開けるフォルケ賞2019が、1月12日夜に発表になり、幸先よく「El reino」の演技が認められて男優賞を受賞しました。因みに作品賞は予想通りハビエル・フェセルが監督した「Campeones」で、本作は「Cine y Educacion」賞とのダブル受賞、こういうケースは初めてだそうです。ゴヤ賞を占ううえで重要な映画賞、フォルケ賞2019の受賞結果は次回にアップいたします。

(フォルケ賞のトロフィーを手にしたアントニオ・デ・ラ・トーレ)
*『12年の長い夜』の作品・監督キャリア・キャスト紹介は、コチラ⇒2018年08月27日
*前回と重複しますがキャストとストーリーを以下に若干補足訂正して再録、前回アップ後の映画賞受賞歴も追加しました。
*『12年の長い夜』の主な出演者*
アントニオ・デ・ラ・トーレ(ペペ、ホセ・ムヒカ・コルダノ、2010~15年ウルグアイ大統領)
チノ・ダリン(ルソ、マウリシオ・ロセンコフ)
アルフォンソ・トルト(ニャト、エレウテリオ・フェルナンデス・ウイドブロ、2016年8月5日没)
セサル・トロンコソ(トゥパマロス壊滅作戦「死の部隊」を指揮した軍人)
セサル・ボルドン(アルサモラ軍曹)
ミレージャ・パスクアル(ムヒカの母親ルーシー)
ソレダー・ビジャミル(精神科医)
シルビア・ペレス・クルス(ウイドブロの妻イヴェット、劇中ではグラシエラ)
ニディア・テレス(ロセンコフの母ロサ)
ルイス・モットーラ(少尉)
ジョン・デ・ルカ(マルティネス、兵士)
ロドリゴ・ビジャグラン(アルメイダ、兵士)
ダビ・ランダチェ(軍人)
ロヘリオ・グラシア
ルチアノ・Ciaglia(ゴメス)
ストーリー:1973年6月、ウルグアイは軍事クーデタにより軍部の政治介入が実現した。1971年の大統領選で左派連合が敗北してからは、都市ゲリラ「トゥパマロス」民族解放運動の勢いも失速、壊滅寸前になって既に1年が経過していた。多くのメンバーが逮捕収監され拷問を受けていた。1973年9月7日夜、軍部の掃討作戦で捕えられていたトゥパマロスの3人の囚人がそれぞれ独房から引き出され秘密裏に何処かへ護送されていった。これは12年という長きにわたって、全国に散らばっていた営倉を連れまわされることになる孤独の始りだった。それ以来、精神的な抵抗の限界を超えるような新式の実験的な拷問と孤独に耐え抜くことになる。軍部の目的は「彼らを殺さずに狂気に至らしめる」ことなのは明らか、彼らは囚人ではなく軍部の人質だった。一日の大半を頭にフードを被せられ、足枷をはめられたまま独房に閉じ込められていた3人の人質とは、ウルグアイ前大統領ホセ・ムヒカ、元防衛大臣で作家のエレウテリオ・フェルナンデス・ウイドブロ、ジャーナリストで作家のマウリシオ・ロセンコフのことである。 (文責:管理人)
ウルグアイ軍事独裁政権の闇と孤独を描く12年間
A: 本作は「もし生きのびて自由の身になれたら、この苦難の事実を書き残そう」と誓い合った、エレウテリオ・フェルナンデス・ウイドブロとマウリシオ・ロセンコフの共著「Memorias del calabozo」をもとに映画化されました。映画では3人に絞られていますが、実際は他にトゥパマロスのリーダー6人、合計9名だった。本著はこの9名の証言をもとに纏められたものです。
B: 民政移管になった1985年に釈放、バスで家族のもとに戻るさいに連呼された、ホルヘ・ベニテス、カルロス・ゴンサレス、ロベルト・イポリト、ワシントン・ゴンサレス・・・などが証言に応じた他の6人でしょうか。
A: 1993年にエドゥアルド・ガレアノの序文を付して再刊されたものを検索しましたが確認できませんでした。おそらく苦しみを分かち合った他の仲間たちへの敬意が込められていたのでしょう。収監中に亡くなった人が約100名、いわゆるデサパレシードス行方不明者が140名という記録が報告されています。

(txalaparta社から1993年に再刊された「Memorias del calabozo」の表紙)
B: 隣国アルゼンチンの軍事独裁政権の犠牲者3万人に比べれば桁違いですが、闘争中に射殺されたメンバーも多かった。屋根裏に逃げ込んだニャト(アルフォンソ・トルト)が逮捕されたとき、その家主夫婦が射殺されたシーンはそれを示唆しています。
A: そのときの掃討作戦を行なった<死の部隊>の指揮官の名前は映画では明らかにされなかった。当然分かっていたはずですが、IMDbにも軍人と表示されているだけです。セサル・トロンコソが演じていましたが、彼はウルグアイ出身、本邦ではセザール・シャローン&エンリケ・フェルナンデスの『法王のトイレット』(ラテンビート2008上映)の主役を演じている他、ルシア・プエンソの『XXY』(同2007)にも出演しているベテラン俳優です。

(憎まれ役の軍人に扮したセサル・トロンコソ)
B: 石をぶつけたいぐらい憎々しかったと褒めておきます。アルフォンソ・トルトもウルグアイ、その他にウルグアイからはルソ(チノ・ダリン)にラブレターを代筆してもらうアルサモラ軍曹役のセサル・ボルドン、ルソの母親ロサ役のニディア・テレスがウルグアイです。
A: エル・ペペの母親ルーシー役のミレージャ・パスクアルもウルグアイ、彼女については前回ご紹介しています。例の『ウイスキー』でデビューした独特の雰囲気のある女優です。ニディア・テレスはアルバロ・ブレッヒナー監督の第2作「Mr. Kaplan」(14)のカプラン夫人でデビューした遅咲きの女優です。以上がウルグアイの主な出演者です。
B: 多数の受賞歴をもつ「Mr. Kaplan」についても、前回の監督キャリア紹介にワープして下さい。

(ルソにラブレターの代筆をしてもらうアルサモラ軍曹)
A: アルゼンチンからはチノ・ダリンの他、精神科医を演じたソレダー・ビジャミル、スペインからはエル・ペペ役のアントニオ・デ・ラ・トーレの他、ニャトの妻になったシルビア・ペレス・クルスがそうですが、それぞれ前回簡単に紹介しています。監督がデ・ラ・トーレの出演交渉のためマドリードに出向きカフェで会った。すると「10分後には快諾してくれた」とベネチア映画祭のインタビューに答えていました。出演は即決だったようで、デ・ラ・トーレらしい。

(左から、ムヒカ前大統領、監督、デ・ラ・トーレ、ベネチア映画祭のプレス会見にて)
B: 幼児から80歳に近いエキストラは、ウルグアイの新聞に出した募集広告を見て参加してくれた方だそうです。200名ぐらい参加している。1985年民政移管になって釈放された9名を刑務所の門前や沿道で出迎えた家族、支持者たちを演じてくれた。
A: ウルグアイの人々にとって1970年代はそんなに昔のことではないのですね。ウルグアイの軍事独裁政権は、いわゆるブラジル型といわれる官僚主義体制で、隣国アルゼンチンのように軍人が大統領ではなかった。しかしトゥパマロス掃討に功績のあった軍部の政治介入を許した警察国家体制ではあった。
B: 劇中で「お前たちは囚人でなく人質だ」と言い放った<死の部隊>の指揮官がその典型、囚人でないというのは裁判の権利がないということです。都市型ゲリラのトゥパマロスの抵抗に長いあいだ煮え湯を飲まされ続けていた軍部の憎しみは、相当根深かったと言われていますね。

(再会を喜ぶニャトと家族、周囲の人は募集に応じたエキストラ)
1981年軍政合法化についての憲法改正の是非を問う国民投票
A: 劇中では1973年から1985年までの12年間が収監日数と共に表示される。1973年9月7日、9人のトゥパマロスのリーダーが収監されていた刑務所から、軍部の手で秘密裏に南部のリオ・ネグラらしき軍の施設に移送される。
B: 刑務所ではなく、ベッドも便器も一切ないから重営倉の兵士が入れられる独房のようです。約1年後に別の軍施設に移動、803日目の1975年から収監日数が表示される。およそ1年ごとに移動しており、その都度1976年1074日目、1977年1529日目・・・1980年2757日目という具合に日数が表示される。
A: 1981年に軍部の政治介入を合法化する「憲法改正」の是非を問う国民投票が実施され、国民の答えはNoだった。1983年3883日目に、ルソが恋文を代筆したアルサモラ軍曹の兵舎に戻ってくる。軍曹の計らいで手錠をされたままではあったが目隠しなしで初めて太陽の日差しを浴びることができた。

(初めて目隠しなしで顔を合わせる3人、生きていることを実感するシーン)
B: 観客にも解放の日の近いことを暗示するシーン、人間らしさを失わなかった軍人は彼一人だったでしょうか。そして1984年3984日目に仲間の多くが収監されていた最初の刑務所に戻ってくる。
A: ニャトがよたよたしながら刑務所の中庭でサッカーのボールを蹴る真似をする。窓からは「ニャト、ニャト、ゴール」の大歓声、社会の無関心に絶望していた過去が一気に吹き飛ぶ忘れられないシーンでした。彼らを苦しめたのは孤独と自分たちは忘れられてしまったという社会の無関心でした。
B: 母親が差し入れた便器に種をまき咲かせたヒナゲシの植木鉢を抱えてムヒカが出所する。日数の表示は、1985年4323日目が最後になる。

(ピンクの便器を抱えて刑務所を出るエル・ぺぺ、2010年75歳でウルグアイ大統領になる)
冷戦時代の米国がもっとも恐れた裏庭の赤化
A: 各自逮捕時期は異なっており、この日数はあくまで1973年9月7日が起点のようで、囚人ではなく<人質>だった日数です。各自刑務所とシャバを出たり入ったりしていますから、別荘暮らしはトータルでは15年くらいだそうです。時には各人の幻覚や逮捕時の回想シーンが織り込まれておりますが、映画は時系列に進行していくので観客は混乱しません。
B: ウルグアイだけではありませんが、ラテンアメリカ諸国は二つの世界大戦には参戦しておりませんが、米ソ冷戦時代の煽りを食ったラテンアメリカ諸国の実態は複雑で、少しは時代背景の知識があったほうがいいかもしれません。
A: 劇中にもニカラグア革命との連携を疑う軍部やCIAの画策など、米国の関与を暗示するセリフが挿入されています。裏庭の赤化を恐れていたアメリカが軍事独裁政権の後ろ盾であったことは、後の調査で証明されています。赤化より軍事独裁政権のほうがマシというわけです。
B: ラテンアメリカ諸国が、人権や民主主義を標榜する大国アメリカを嫌うのには、それなりの理由があるということです。1979年、左派中道派からの要請で赤十字国際委員会が調査に現れるが、そのおざなりの調査にはあきれるばかりです。
A: どこからか入った横槍に屈したわけです。ほかにもカトリック教会批判がそれとなく挿入されている。精神を病んだペペが、ソレダー・ビジャミル扮する精神科医に「神を信じているか」と訊かれる。ペペの返事は「もし神がいるなら、私たちを救ってくれているはず」だった。
B: カトリック教会が軍部と結託していたことを暗示しているシーン。他のラテンアメリカ諸国も金太郎の飴ですが、保身に徹したカトリック教会と軍事独裁政権は太いパイプで繋がっていました。

(ペペを診察する精神科医役のソレダー・ビジャミル)
A: 信者が多いにもかかわらず、ラテンアメリカ諸国から長いあいだローマ法王が選ばれなかった経緯には、この軍事独裁政権との結託があったからでした。現ローマ法王サンフランシスコも加担こそしませんでしたが、民主化後に見て見ぬふりをしていたことを謝罪していたからなれたのでした。
B: バチカンも危険を冒してまで選出できなかった。ラテンアメリカ諸国のカトリック教徒の減少は、幼児性愛だけが理由ではありません。
A: 主演の3人、ぺぺ(1935)、ルソ(1933)、ニャト(1942~2016)は、共にウルグアイ生れだが、一番年長のルソは両親の時代にポーランドから移民してきたユダヤ教徒、ナチ時代にはポーランドに残った親戚の多くがゲットーやアウシュビッツで亡くなっている。
B: 3人のなかではルソ役のチノ・ダリンが一番若かったのでちょっと違和感があった。
A: 反対に一回り若いニャトはクランクイン前に鬼籍入りしてしまった。彼の一族はスペインからの移民です。リーダー格のぺぺの祖先も、1840年代にスペインのバスク州ビスカヤから移民してきた。
B: ウルグアイはまさに移民国家です。ミレージャ・パスクアルが演じていたペペの母親ルーシー・コルダノは、実名で映画に出ていた。ムヒカは当時独身、それで面会に来るのは母親でした。上院議員のルシア・トポランスキ(1944)との結婚は2005年だった。

(ホセ・ムヒカと夫人ルシア・トポランスキ、2010年)
A: 彼女は2期目となるタバレ・バスケス政権の副大統領を2017年9月から務めている。映画でも女性の力の大きさが際立っていましたが、土壇場で力を発揮するのは女性です。
B: 面会に来たルソの父親イサクの狼狽ぶりと母親ロサの気丈さが印象に残っています。女性のほうが打たれ強いのかもしれません。
A: 前回アップしたときは受賞歴はそれほどではありませんでしたので、以下に追加します。
*映画祭・受賞歴*
アミアン映画祭:観客賞
ビアリッツ映画祭(ラテンアメリカシネマ)観客賞
カイロ映画祭:ゴールデン・ピラミッド賞、FIPRESCI国際映画批評家連盟賞
カンヌ・シネフィル:グランプリ
オーステンデ映画祭(ベルギー)審査員賞
ウエルバ・ラテンアメリカ映画祭:観客、カサ・デ・イベロアメリカ、作品、脚本、撮影の各賞
シルバー・コロン(監督・男優アルフォンソ・トルト)賞
ハバナ映画祭:作品賞(カサ・デ・ラス・アメリカス、キューバ映画ジャーナリズム協会)
サンゴ賞(編集、録音)、グラウベル・ローシャ賞、ラジオ・ハバナ賞
レジスタンス映画祭:監督賞
テッサロニキ映画祭:観客賞
ウルグアイ映画批評家協会:作品、監督、男優(アルフォンソ・トルト)
女優(ミレージャ・パスクアル)、録音の各賞
*以上は2018年開催の映画祭受賞歴(ノミネーションは割愛)
*ゴヤ賞2019ノミネーションは、イベロアメリカ映画賞、脚色賞、助演男優賞(アントニオ・デ・ラ・トーレ)の3カテゴリー。
新人監督賞アンドレア・ハウリエタのデビュー作*ゴヤ賞2019 ⑤ ― 2019年01月08日 14:26
アンドレア・ハウリエタのデビュー作「Ana de día」
★新人監督賞ノミネーション最後のご紹介は、アンドレア・ハウリエタが7年の歳月を掛けて完成させたという「Ana de día」、マラガ映画祭2018でプレミア、限定ながら11月初旬に公開された。いわゆるドッペルゲンガーものらしいが、コメディを含んだ心理サスペンスということです。主演のイングリッド・ガルシア・ヨンソンが、昼間はアナ、夜間はニナの二役を演じ分ける。タイトル「Ana de día」(「Ana by Day」)はそこからきているが、ルイス・ブニュエルの『昼顔』(「Belle de jour」67)の西題「Bella de día」への目配せです。またクシシュトフ・キェシロフスキの『ふたりのベロニカ』(91)、クロード・シャブロルのサスペンス『ヴィオレット・ノジエール』(78)のような作品と対話しているとか。シャブロルのは未見だが、昼間は娼婦、夜はお嬢さまということで想像をたくましくするしかない。一部クラウドファンディングで資金を集めている。

(フェロス賞2019ポスター賞にノミネートされている)
「Ana de día」(「Ana by Day」)
製作:Andrea Jaurrieta PC / No Hay Banda / Pomme Hurlante Films /
クラウドファンディング、協賛ナバラ州政府
監督・脚本・製作:アンドレア・ハウリエタ
撮影:フリ・カルネ・モルトレル
音楽:アウレリオ・エドレル=コペス
編集:ミゲル・A・トルドゥ
キャスティング:アランチャ・ぺレス
プロダクション・デザイン:リタ・エチェバリア
衣装デザイン:ハビエル・ベルナル、クラウディア・ペレス・エステバン
メイクアップ:ルス・アルカラ
製作者:イバン・ルイス、マルティン・サンペル
データ:スペイン、スペイン語、2018年、コメディ、心理サスペンス、110分、撮影地ナバラとマドリードで2016年6月末~8月(約5週間)、製作費約45万ユーロ、販売Media Luna New Films、スペイン公開2018年11月9日(限定上映)
映画祭・映画賞:マラガ映画祭2018(4月14日上映)、バルセロナD'A映画祭2018正式出品、トゥールーズ・シネエスパーニャ2018「ベスト・ファースト・フィルム」スペシャル・メンション、第34回アレキサンドリア地中海映画祭2018作品賞・女優賞受賞、アンダルシア映画賞ASECAN作品賞・主演女優賞・助演女優賞(モナ・マルティネス)受賞、他
キャスト:イングリッド・ガルシア・ヨンソン(アナ/ニナ)、モナ・マルティネス(ソレ)、アルバロ・オガリャ(マルセロ)、マリア・ホセ・アルフォンソ(マダム・ラクロア)、フランシスコ・ビダル(アベル)、フェルナンド・アルビス(マエストロ)、イバン・ルイス(ラ・ビエハ)、イレネ・ルイス(アンヘラ)、イニャキ・アルダナス(イバン)、カルラ・デ・オテロ(ラ・ムエルタ)、アントニオ・ポンセ(ペペ)、アベル・セルボウティ(アシス)、ほか
ストーリー:アナは26歳、中流家庭の<フツウ>の教育を受けた模範的な女性である。新米弁護士として近く結婚を予定している。ある日、アナは誰かが自分のアイデンティティに取って代わっていることに気づく。最初は恐怖に陥るが、時間とともに自分の責任と義務を解放してくれる分身の存在に、自分が果たして本当にアイデンティティを主張する価値があるのか、あるいは以前の自己から別の自己になる価値があるのかどうか迷い始める。分身が自分の代わりをしているあいだ、アナは自分が完全に自由であることに気づくと、新しい匿名性と自由の限界を試そうと、または自分自身の存在の意味を求めて夜のマドリードに繰り出していく。キャバレーは闇に紛れて消えてしまいたい人々で溢れていた。 (文責:管理人)

(マドリードのキャバレーで自身に反乱を起こしているアナ)

(ASECAN賞助演女優賞受賞のモナ・マルティネス、映画から)
自分自身から逃げることは可能か不可能か?
★かなり野心的な映画のようだが、観客を疲れさせ混乱させる印象です。ストーリーの背後に見え隠れするのは、モラル的偽善が横行する時代におけるアイデンティティの希薄化についての問いかけのようだ。アナは夢想と現実のあいだで恐怖しているが、それが監督の意図でないことは明白でしょう。ニナはアナのドッペルゲンガーとして登場し、無名であることの恐れに直面するが、精神的な不滅を見つけ、匿名性の魅力から生まれる新しいアイデンティティに身を任せる。どういう結末を迎えるかでアカデミー会員の評価は分かれるだろう。

(アナとマルセロ役のアルバロ・オガリャ)

(マエストロ役のフェルナンド・アルビス)
★アナとニナを演じたイングリッド・ガルシア・ヨンソンの演技を賞賛する批評家が多かったが、残念ながらゴヤ賞でのノミネーションはなかった。マラガ映画祭では主演女優賞候補になった。スウェーデン出身の女優だが、セビーリャで幼少時を過ごしたのでスペイン語は堪能、スウェーデン語の他に英語、フランス語をこなす。ハイメ・ロサーレスの「Hermosa juventud」がカンヌ映画祭2014「ある視点」にノミネートされた折り、キャリアを簡単にご紹介しています。
*イングリッド・ガルシア・ヨンソンのキャリア紹介は、コチラ⇒2014年05月04日

★アンドレア・ハウリエタAndrea Jaurrietaは、1986年パンプローナ生れ、監督、脚本家、プロデューサー、女優。カタルーニャ映画視聴覚上級学校ESCAC、及びコンプルテンセ大学で学ぶ。現在、複数の教育センターの映画講座で教鞭をとっている。

★2013年、短編「Los años dirán」(15分)でデビュー、ヒロインを演じたのが、本作でラ・ムエルタになったカルラ・デ・オテロである。アルモドバルの『ジュリエッタ』(16)に監督補助として参加、ビデオ制作など手掛け、2018年「Ana de día」で長編映画デビューを果たす。女優としてはフェデリコ・ベイロフ(ベイロー)の『信仰を捨てた男』(「El apóstata」15、タイトルNetflix)に脇役で出演している。ここで信仰を捨てた男を演じたのが、本作でマルセロになったアルバロ・オガリャである。余談だがベイロフ監督は、サンセバスチャン映画祭2015で審査員スペシャル・メンションを受賞している。

(撮影中の監督とイングリッド・ガルシア・ヨンソン)
(左から、監督、イングリッド・ガルシア・ヨンソン、イレネ・ルイス、マラガFF)
新人監督賞セリア・リコ・クラベリーノのデビュー作*ゴヤ賞2019 ④ ― 2019年01月06日 20:49
セリア・リコのデビュー作「Viaje al cuarto de una madre」

★今年のゴヤ新人監督賞は、ノミネーション4作のうち女性監督が3人という珍しい女性対決の年になっています。女性監督が複数の年は第22回(08)のイシアル・ボリャインとグラシア・ケレヘタの1回のみでしょうか。今回のように3人は記憶にありません。そもそも女性監督の受賞は1997年の第11回が最初で、今は亡きピラール・ミロの『愛は奪う』でした。その後第18回には『テイク・マイ・アイズ』のイシアル・ボリャイン、「La suerte dormida」の新人アンヘレス・ゴンサレス=シンデと女性監督がダブルで受賞する異例の年になりました。続いて『あなたになら言える秘密のこと』のイサベル・コイシェ(20回、英語)、『家族との3日間』のマル・コル(24回、新人、カタルーニャ語)と、昨年はコイシェが再び英語で撮った「The Bookshop」が作品・監督・脚色の3賞をゲット、新人カルラ・シモンがカタルーニャ語で撮った『悲しみに、こんにちは』も受賞、確実に女性が認められる時代になってきています。
★ラテンビート上映の『カルメン&ロラ』のアランチャ・エチェバリア、「Sin fin」のホセ&セサル・エステバン・アレンダ兄弟は紹介済み、残る2作のうち始めにセリア・リコ・クラベリーノの「Viaje al cuarto de una madre」からご紹介したい。サンセバスチャン映画祭2018「ニューディレクターズ」部門正式出品、ユース賞・審査員スペシャルメンション・批評家連盟賞受賞作品、かつては「貧乏人の子沢山」が一般的だったスペインでも少子化が進み、家族、特に親子の関係の在り方が難しくなってきている。離れたいが離れられない母と娘の物語。

「Viaje al cuarto de una madre」(「Journey to a Mother's Room」)
製作:Amorós Producciones / Arcadia Motion Pictures / Sisifo Films AIE / (共)Pecado Films / Noodles Production(仏)/ 協賛Canal Sur Televición / TVE / Movistar+ / ICAA / アンダルシア評議会、他
監督・脚本・製作:セリア・リコ・クラベリーノ
撮影:サンティアゴ・ラカ
編集:フェルナンド・フランコ
美術:ミレイア・カルレス
録音:アマンダ・ビリャビエハ、アルベルト・マネラ
衣装デザイン:Vinyet Escobar エスコバル
キャスティング:ロサ・エステベス
製作者:ジョセップ・アモロス、イボン・コルメンサナ、(以下エグゼクティブ)アンヘル・ドゥランデス、イグナシ・エスタペ、マル・メディル、サンドラ・タピア、他
データ:スペイン、スペイン語、2018年、ドラマ、90分、スペイン公開2018年10月5日
映画祭・映画賞:サンセバスチャン映画祭2018「ニューディレクターズ」部門(9月24日上映)、ユース賞・審査員スペシャルメンション・批評家連盟賞受賞、ロンドン映画祭、ワルシャワ映画祭、モンペリエ地中海映画祭、トゥールーズ・シネエスパーニャ映画祭、ヒホン映画祭、ウエルバ映画祭、アルメリア映画祭、他フェロス賞2019(作品・脚本・主演ロラ・ドゥエニャス、助演アンナ・カスティーリョ)、ガウディ賞(監督・脚本・主演女優・助演女優・美術・録音・衣装デザイン・カタルーニャ語以外作品賞)、ゴヤ賞(新人監督・編集・主演女優・助演女優)各ノミネーション。
キャスト:ロラ・ドゥエニャス(母エストレーリャ)、アンナ・カスティーリョ(レオノル)、ペドロ・カサブランク(ミゲル)、アデルファ・カルボ(ピリ)、マリソル・メンブリージョ(アゲダ)、スサナ・アバイトゥア(ラウラ)、シルビア・カサノバ(ロサ)、アナ・メナ(ベア)、マイカ・バロッソ(メルチェ)、ルシア・ムニョス・ドゥラン(ロシータ)、ノエミ・ホッパー(アンドレア)ほか
ストーリー:家を出る時期だったのだが、レオノルは迷っていた。母を一人置いていく決心がつかないのだ。出ていくことを母が望んでいないからだ。しかしエストレーリャは娘を引き留めることはできないと分かっていた。母と娘は共に不安定なまま人生の岐路に立っていたが、互いに分かれて暮らせるだろうか。離れることができるかどうかは愛が証明するだろう。

(母エストレーリャと娘レオノル)
★セリア・リコ・クラベリーノ(クラベジーノ)Celia Rico Clavellino、1982年セビーリャ生れ、監督・脚本家・製作者・女優と幾つもの顔をもつ。セビーリャ大学オーディオビジュアル・コミュニケーション科卒、バルセロナ大学で文学理論、比較文学を専攻、その後、映画文献調査、分析、脚本編集、オーディオビジュアル制作を学ぶ。現在Amorós Produccionesや Arcadia Motion Picturesのようなさまざまな制作会社で仕事をしているほか、パブロ・ベルヘルの『ブランカニエベス』(12)のキャスティング、ホセ・ルイス・ゲリンの『ゲスト』にも参加している。

(ゴヤ賞新人監督賞ノミネーションのセリア・リコ・クラベリーノ監督)
★2012年に短編「Luisa no está en casa」で監督デビュー、この短編が本作の土台になっている。同年アントニオ・チャバリアスのホラー『フリア、よみがえり少女』にセリア・リコとして出演、2016年、ポル・ロドリゲスのコメディ「Quatretondeta」の脚本執筆など。

(本作の土台となった短編「Luisa no está en casa」のポスター)
★撮影は監督のホームグラウンドであるセビーリャのコンスタンティナという町で、それも監督の実家に主演のロラ・ドゥエニャスとアンナ・カスティーリョを両親と同居させて撮ったそうです。「仕事がやりやすいと同時に自分を奮起させるような地元で撮ろうと決めていた。私の母は裁縫師でロラ(ドゥエニャス)に裁縫を教えるのにも都合よかった。母の部屋を舞台にしたので、みんなで撮影が終了するまで同居したのです。こんな経緯で映画を完成させたのです。それでこの映画が私の人生と深いところで融合していたことに後で気づいたのです」と監督。しかしアンダルシアに典型的な色調、白壁の家並みはほんの少ししかスクリーンに現れない。特に冬だと消えてしまう。

(セビーリャから北方87キロにある冬のコンスタンティナ)
★「手工芸的な映画を作りたかった」と監督、しかし人生は複雑で、「今になればはっきりするけれど、撮影中はエモーショナルな負担に気づかなかった」とも。人口7000人未満の小さな町で撮影するとなれば、お祭り騒ぎになるのは必然だから「自分を部屋に閉じ込め思索する場所を見失った」と語っている。物語は母の視点と娘の視点から構成されており、観客は二つの視点の間で揺れながら平衡を保たねばならない。一方だけを追っていると迷子になってしまうようだ。「娘が工場でアイロンがけしているときでも、背後に母親の存在があり、母親がベッドメーキングしているときでも、ドア越しに娘のベッドを見ている」。

(ゴヤ賞助演助演女優賞ノミネーションのアンナ・カスティーリョ)
★この映画は社会的な問題提起をしているわけではないが、監督のカメラが街路を映しだすとき、スペインの現実が描かれる。「私は子供のときから母親のミシンの音を聞きながら育った。想像することへの私のパッションは、母親が洋裁しているときの観察からきています。一枚の布からドレスを作り出すという、これほど創造的な仕事を他に思い浮かべることができません」。母へのオマージュなのかもしれません。

新年のご挨拶*2019年元旦 ― 2019年01月01日 14:45
明けましておめでとうございます 今年はどんな映画が見られるの?
★慌ただしい年末に更新もままならず、積み残しをしたまま年が明けてしまいました。去る12月28日からアルバロ・ブレッヒナーの「La noche de 12 años」が『12年の長い夜』の邦題でNetflix配信が開始されました。サプライズと喜んでいいのかどうか複雑な心境ですが、さっそく見てしまいました。本作はベネチア映画祭のコンペティション外で上映後、サンセバスチャン映画祭でもエントリー、ゴヤ賞2019イベロアメリカ映画賞ノミネーション、当ブログではかなり詳しくご紹介してきました。大筋で齟齬はきたさなかったと思いますが、書き足したいこともあり後日アップしたい。地味な映画ですがウルグアイ現代史に止まらずラテンアメリカ史を知る上での情報が詰まった作品です。ウルグアイ前大統領ムヒカ役のアントニオ・デ・ラ・トーレは本作で助演男優賞、ロドリゴ・ソロゴジェンの「El reino」で主演男優賞とダブルノミネート、一ファンとしても今回はぜひ受賞して欲しい。
*「La noche de 12 años」の紹介記事は、コチラ⇒2018年08月27日

(『12年の長い夜』撮影中の監督とアントニオ・デ・ラ・トーレ)
★『12年の長い夜』はゴヤ賞2019イベロアメリカ映画賞にもノミネートされておりますが、受賞はアルフォンソ・キュアロンの『ROMA/ローマ』にほぼ決定でしょうか。2作とも一見すると無関係なテーマに思えますが、深いところで繋がっており、現在のラテンアメリカ諸国が抱えている暗部にメスを入れたことでは、甲乙つけがたいと感じました。どちらもNetflixプレゼンツなのが気になります。キュアロンは「私が大好きな映画の多くは、大画面で見たことがない」と語っていたが、Netflixを受け入れた背景には、このような思いがあるのかもしれません。見たい映画が公開されず、年々街から映画館が消えつつある現代、映画館で映画を見るのは難しくなっている。

(『ROMA/ローマ』のポスター)
★ゴヤ賞にノミネートされている作品賞5作品、イベロアメリカ映画賞4作品は既にご紹介済みなので、新人監督賞のうち未紹介作品&監督紹介から今年は出発したい。次回は将来が楽しみなセリア・リコ・クラベリーノの「Viaje al cuarto de una madre」から、キャストは母親にロラ・ドゥエニャス(主演女優賞候補)、娘にアンナ・カスティーリョ(助演女優賞候補)が扮します。

(ロラ・ドゥエニャスとアンナ・カスティーリョ、「Viaje al cuarto de una madre」から)
第33回ゴヤ賞2019ノミネーション発表 ③ ― 2018年12月23日 17:42

★12月12日(水)第33回ゴヤ賞2019のノミネーション発表がありました。プレゼンターはパコ・レオンとロッシ・デ・パルマ、スペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソと書記エバ・サンス、プレセレクションはフィクション84作、ドキュメンタリー63作、アニメーション4作の151作品、イベロアメリカ映画賞16作だったことが報告されました。当然のことですがフォルケ賞、フェロス賞と重なっております。カテゴリーによってはドキュメンタリー賞のようにフォルケ賞と全く同じです。

(パルマ・デ・ロッシとパコ・レオン)
★今年は「El reino」の13個が最高、続いて「Campeones」の11個が続きますが、数の多さは当てになりません。ダブルノミネートはアントニオ・デ・ラ・トーレのみ、彼はノミネーションの数こそダントツですが、受賞は『漆黒のような深い青』(07)の助演賞のみと最近は不運続き、ダブル受賞はないと思いますがそろそろ主演が欲しいところです。今年の主演男優賞はことのほか混戦状態です。なお読みが分からない人名はママにしてあります。
(左から、エバ・サンス、マリアノ・バロッソ、ロッシ・デ・パルマ、パコ・レオン)
★ゴヤ賞28部門の内訳は以下の通り。(★印は当ブログ紹介作品)
◎作品賞
「Campeones」 ★
「Carmen y Lola」『カルメン&ロラ』 ★
「El reino」 ★
「Entre dos aguas」 ★
「Todos lo saben」『エブリバディ・ノウズ』 ★

◎監督賞
ハビエル・フェセル「Campeones」
ロドリゴ・ソロゴジェン「El reino」
イサキ・ラクエスタ「Entre dos aguas」
アスガー・ファルハディ『エブリバディ・ノウズ』「Todos lo saben」
◎新人監督賞
アンドレア・ハウリエタ「Ana de día」
セリア・リコ・クラベリーノ「Viaje al cuarto de una madre」★
アランチャ・エチェバリア『カルメン&ロラ』
ホセ&セサル・エステバン・アレンダ兄弟「Sin fin」 ★
◎オリジナル脚本賞
ダビ・マルケス&ハビエル・フェセル「Campeones」
アランチャ・エチェバリア『カルメン&ロラ』
イサベル・ペニャ&ロドリゴ・ソロゴジェン「El Reino」
アスガー・ファルハディ『エブリバディ・ノウズ』
◎脚色賞
マルタ・ソフィア・マルティンス&ナチョ・ロペス「Jefe」セルヒオ・バレホン ★
アルバロ・ブレッヒナー「La noche en 12 años」『12年の長い夜』アルバロ・ブレッヒナー ★
ボルハ・コベアガ&ディエゴ・サン・ホセ「Superlópez」エミリオ・マルティネス=ラサロ ★
ポール・ラヴァティ「Yuli」イシアル・ボリャイン ★
◎オリジナル作曲賞
オリビエル・アルソン「 El reino」
イバン・パロマレス「En las estrellas」 ソエ・ベリアトゥア
マヌエル・リベイロ&ハビ・フォント「La sombra de la ley」『ガン・シティ~動乱のバルセロナ~』ダニ・デ・ラ・トーレ
アルベルト・イグレシアス 「Yuli」
◎オリジナル歌曲賞
「Este es el momento」 コケ・マリャ「Campeones」
「Me vas a extrañar」パコ・デ・ラ・ロサ 『カルメン&ロラ』
「Tarde azul de abril」ロケ・バニョス&テシィ・ディエス・マルティン「El hombre que mató a Don Quijote」
「Una de esas noches sin final」 ハビエル・リモン 『エブリバディ・ノウズ』
◎主演男優賞
ハビエル・グティエレス「Campeones」
アントニオ・デ・ラ・トーレ「El reino」
ハビエル・バルデム 『エブリバディ・ノウズ』
ホセ・コロナド「Tu hijo」ミゲル・アンヘル・ビバス ★

◎主演女優賞
スシ・サンチェス「La enfermedad del domingo」『日曜日の憂鬱』ラモン・サラサール ★
ナイワ・ニムリ「Quién te cantará」『シークレット・ヴォイス』カルロス・ベルムト ★
ペネロペ・クルス『エブリバディ・ノウズ』
ロラ・ドゥエニャス「Viaje al cuarto de una madre」

◎助演男優賞
フアン・マルガーリョ 「Campeones」
ルイス・サエラ 「El reino」
アントニオ・デ・ラ・トーレ 「La noche de 12 años」『12年の長い夜』
エドゥアルド・フェルナンデス『エブリバディ・ノウズ』
◎助演女優賞
カロリナ・ジュステ『カルメン&ロラ』
アナ・ワヘネル「El reino」
ナタリア・デ・モリーナ「Quién te cantará」『シークレット・ヴォイス』
アンナ・カスティーリョ「Viaje al cuarto de una madre」
◎新人男優賞
ヘスス・ビダル「Campeones」
モレノ・ボルハ 『カルメン&ロラ』
フランシスコ・レイェス 「El reino」
カルロス・アコスタ 「Yuli」
◎新人女優賞
グロリア・ラモス 「Campeones」
ロシー・ロドリゲス 『カルメン&ロラ』
サイラ・ロメロ 『カルメン&ロラ』
エバ・リョラチ 「Quién te cantará」『シークレット・ヴォイス』
◎プロダクション賞
ルイス・フェルナンデス・ラゴ 「Campeones」
エドゥアルド・バジェス&Hanga Kurucz「El fotógrafo de Mauthausen」 マル・タルガロナ
ヨーサフ・ボカリYousaf Bokhari「El hombre que mató a Don Quijote」テリー・ギリアム
イニャキ・ロス「El reino」
◎撮影監督賞
アレハンドロ・デ・パブロ「El reino」
Josu Incháustegui 『ガン・シティ~動乱のバルセロナ~』
エドゥアルド・グラウ 「Quién te cantará」
アレックス・カタラン 「 Yuli」
◎編集賞
ハビエル・フェセル「Campeones」
アルベルト・デル・カンポ 「El reino」
Hayedeh Safiyari 『エブリバディ・ノウズ』
フェルナンド・フランコ 「Viaje al cuarto de una madre」
◎美術賞
ロサ・ロス 「El fotógrafo de Mauthausen」
ベンハミン・フェルナンデス 「El hombre que mató a Don Quijote」
フアン・ペドロ・デ・ガスパル 『ガン・シティ~動乱のバルセロナ~』
バルテル・ガジャルト「Superlópez」
◎衣装デザイン賞
メルセ・パロマ「El fotógrafo de Mauthausen」
レナ・モスム「El hombre que mató a Don Quijote」
クララ・ビルバオ 『ガン・シティ~動乱のバルセロナ~』
アナ・ロペス・コボス「Quién te cantará」『シークレット・ヴォイス』
◎メイクアップ&ヘアー賞
Caitlin Acheson, ヘスス・マルトス 、パブロ・ペロナ El fotógrafo de Mauthausen
シルビエ・インベルト、アンパロ・サンチェス、パブロ・ペロナ
「El hombre que mató a Don Quijote」
ラケル・フィダルゴ、ノエ・モンテス、アルベルト・オルタス
『ガン・シティ~動乱のバルセロナ~』
ラファエル・モラ&アナベル・ベアト「Quién te cantará」『シークレット・ヴォイス』
◎録音賞
アルマン・シウダド、チャーリー・Schmukler、アルフォンソ・ラポソ「Campeones」
ロベルト・フェルナンデス&アルフォンソ・ラパソ 「El reino」
ダニエル・デ・サヤス&マリオ・ゴンサレス 「Quién te cantará」『シークレット・ヴォイス』
エバ・バリニョ、ペラヨ・グティエレス、アルベルト・オベヘロ 「Yuli」
◎特殊効果賞
オスカル・アバデス&Helmuth Barnert「El reino」
ホン・セラノ&ダビ・エラス「Errementari 」(El herrero y el Diablo)
リュイス・リベラ&フェリクス・ベルヘス 『ガン・シティ~動乱のバルセロナ~』
リュイス・リベラ&ラウラ・ペドロ「Superlópez」
◎アニメーション賞
「Azahar」 Granada Film Factory
「Bikes The Movie」Animation Bikes / A.I.E.
「Memorias de un hombre en pijama」 Dream Team Concept / Ézaro Films S.A./ Hampa Studio
「Un día más con vida」 Kanaki Films / Platige Films 『アナザー・デイ・オブ・ライフ』
◎ドキュメンタリー賞
「Apuntes para una película con atracos」 Avalon Productora Cinematográfica, S.L.
「Camarón: flamenco y revolución」 Media Events / Lolita Films
「Desenterrando Sad Hill」 Sadhill Desenterrado, A.I.E / Zapruder Pictures
「El silencio de otros」 Semilla Verde Productions / Lucernam Films
◎イベロアメリカ映画賞
「El ángel 」 (2018アルゼンチン) ルイス・オルテガ ★
「La noche de 12 años 」『12年の長い夜』(2018ウルグアイ) アルバロ・ブレッヒナー ★
「Los perros」 (2017チリ) マルセラ・サイド ★
「ROMA」『ROMA/ローマ』 (2018メキシコ) アルフォンソ・キュアロン ★
◎ヨーロッパ映画賞
「Cold War」(2018ポーランド) パヴェウ・パヴリコフスキ
「El hilo invisible」(2018米国)『ファントム・スレッド』ポール・トーマス・アンダーソン
「Girl」(2018ベルギー) Lukas Dhont
「The Party」(2017イギリス) サリー・ポッター
◎短編作品賞
「9 pasos」 マリア・クレスポ&モイセス・ロメラ
「Bailaora」 ルビン・ステイン
「Cerdita」 カルロタ・ペレダ
「El niño que quería volar」 ホルヘ・ムリエル
「Matria」 アルバロ・ガゴ
◎短編ドキュメンタリー賞
「El tesoro」 マリサ・ラフエンテ&ネストル・デル・カスティーリョ
「Gaza」 カルレス・ボベル・マルティネス&フリオ・ペレス・デル・カンポ
「Kyoko」 ジョアン・ボベル&マルコス・カボタ
「Wan Xia. La última luz del atardecer」 シルビア・レイ・カヌド
◎短編アニメーション賞
「Cazatalentos」 ホセ・エレーラ
「El olvido」 クリスティナ・バエリョ&Xenia Grey
「I Wish...」ビクトル・L.ピネル
「Soy una tumba」 Khris Cembe
- ★イベロアメリカ映画賞のうちチリのマルセラ・サイドの「Los perros」(17)が選ばれているのは、スペイン公開が2018年6月という理由によります。想定していたパラグアイのマルセロ・マルティネシの『相続人』は未公開で対象外になりました。ゴヤ賞も米国アカデミー賞と同様の縛りがあり、公開が重要です。
★第33回ゴヤ賞授賞式は、2月2日、マドリードを離れてセビーリャ開催、総合司会者は女優のシルビア・アブリルとTV司会者のアンドレウ・ブエナフエンテのコメディアン夫婦が務めます。

(コメディアン夫婦シルビア&アンドレウ)
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