新人監督賞アンドレア・ハウリエタのデビュー作*ゴヤ賞2019 ⑤2019年01月08日 14:26

             アンドレア・ハウリエタのデビュー作「Ana de día

 

★新人監督賞ノミネーション最後のご紹介は、アンドレア・ハウリエタ7年の歳月を掛けて完成させたというAna de día、マラガ映画祭2018でプレミア、限定ながら11月初旬に公開された。いわゆるドッペルゲンガーものらしいが、コメディを含んだ心理サスペンスということです。主演のイングリッド・ガルシア・ヨンソンが、昼間はアナ、夜間はニナの二役を演じ分ける。タイトル「Ana de día」(「Ana by Day」)はそこからきているが、ルイス・ブニュエルの『昼顔』(「Belle de jour67)の西題「Bella de díaへの目配せです。またクシシュトフ・キェシロフスキの『ふたりのベロニカ』(91)、クロード・シャブロルのサスペンス『ヴィオレット・ノジエール』(78)のような作品と対話しているとか。シャブロルのは未見だが、昼間は娼婦、夜はお嬢さまということで想像をたくましくするしかない。一部クラウドファンディングで資金を集めている。

 

     

          (フェロス賞2019ポスター賞にノミネートされている)

 

Ana de día(「Ana by Day」)

製作:Andrea Jaurrieta PC / No Hay Banda / Pomme Hurlante Films /

   クラウドファンディング、協賛ナバラ州政府

監督・脚本・製作:アンドレア・ハウリエタ

撮影:フリ・カルネ・モルトレル

音楽:アウレリオ・エドレル=コペス

編集:ミゲル・A・トルドゥ

キャスティング:アランチャ・ぺレス

プロダクション・デザイン:リタ・エチェバリア

衣装デザイン:ハビエル・ベルナル、クラウディア・ペレス・エステバン

メイクアップ:ルス・アルカラ

製作者:イバン・ルイス、マルティン・サンペル

 

データ:スペイン、スペイン語、2018年、コメディ、心理サスペンス、110分、撮影地ナバラとマドリードで20166月末~8月(約5週間)、製作費約45万ユーロ、販売Media Luna New Films、スペイン公開2018119日(限定上映)

 

映画祭・映画賞:マラガ映画祭2018414日上映)、バルセロナD'A映画祭2018正式出品、トゥールーズ・シネエスパーニャ2018「ベスト・ファースト・フィルム」スペシャル・メンション、第34回アレキサンドリア地中海映画祭2018作品賞・女優賞受賞、アンダルシア映画賞ASECAN作品賞・主演女優賞・助演女優賞(モナ・マルティネス)受賞、他

 

キャスト:イングリッド・ガルシア・ヨンソン(アナ/ニナ)、モナ・マルティネス(ソレ)、アルバロ・オガリャ(マルセロ)、マリア・ホセ・アルフォンソ(マダム・ラクロア)、フランシスコ・ビダル(アベル)、フェルナンド・アルビス(マエストロ)、イバン・ルイス(ラ・ビエハ)、イレネ・ルイス(アンヘラ)、イニャキ・アルダナス(イバン)、カルラ・デ・オテロ(ラ・ムエルタ)、アントニオ・ポンセ(ペペ)、アベル・セルボウティ(アシス)、ほか

 

ストーリー:アナは26歳、中流家庭の<フツウ>の教育を受けた模範的な女性である。新米弁護士として近く結婚を予定している。ある日、アナは誰かが自分のアイデンティティに取って代わっていることに気づく。最初は恐怖に陥るが、時間とともに自分の責任と義務を解放してくれる分身の存在に、自分が果たして本当にアイデンティティを主張する価値があるのか、あるいは以前の自己から別の自己になる価値があるのかどうか迷い始める。分身が自分の代わりをしているあいだ、アナは自分が完全に自由であることに気づくと、新しい匿名性と自由の限界を試そうと、または自分自身の存在の意味を求めて夜のマドリードに繰り出していく。キャバレーは闇に紛れて消えてしまいたい人々で溢れていた。                       (文責:管理人)

 

           

                (マドリードのキャバレーで自身に反乱を起こしているアナ)

 

       

ASECAN賞助演女優賞受賞のモナ・マルティネス、映画から)

 

          自分自身から逃げることは可能か不可能か?

 

★かなり野心的な映画のようだが、観客を疲れさせ混乱させる印象です。ストーリーの背後に見え隠れするのは、モラル的偽善が横行する時代におけるアイデンティティの希薄化についての問いかけのようだ。アナは夢想と現実のあいだで恐怖しているが、それが監督の意図でないことは明白でしょう。ニナはアナのドッペルゲンガーとして登場し、無名であることの恐れに直面するが、精神的な不滅を見つけ、匿名性の魅力から生まれる新しいアイデンティティに身を任せる。どういう結末を迎えるかでアカデミー会員の評価は分かれるだろう。

 

     

(アナとマルセロ役のアルバロ・オガリャ)

    

   

                    (マエストロ役のフェルナンド・アルビス)

 

★アナとニナを演じたイングリッド・ガルシア・ヨンソンの演技を賞賛する批評家が多かったが、残念ながらゴヤ賞でのノミネーションはなかった。マラガ映画祭では主演女優賞候補になった。スウェーデン出身の女優だが、セビーリャで幼少時を過ごしたのでスペイン語は堪能、スウェーデン語の他に英語、フランス語をこなす。ハイメ・ロサーレスの「Hermosa juventud」がカンヌ映画祭2014「ある視点」にノミネートされた折り、キャリアを簡単にご紹介しています。

イングリッド・ガルシア・ヨンソンのキャリア紹介は、コチラ20140504

      

      

アンドレア・ハウリエタAndrea Jaurrietaは、1986年パンプローナ生れ、監督、脚本家、プロデューサー、女優。カタルーニャ映画視聴覚上級学校ESCAC、及びコンプルテンセ大学で学ぶ。現在、複数の教育センターの映画講座で教鞭をとっている。

 

    

2013年、短編「Los años dirán」(15分)でデビュー、ヒロインを演じたのが、本作でラ・ムエルタになったカルラ・デ・オテロである。アルモドバルの『ジュリエッタ』(16)に監督補助として参加、ビデオ制作など手掛け、2018年「Ana de día」で長編映画デビューを果たす。女優としてはフェデリコ・ベイロフ(ベイロー)の『信仰を捨てた男』(「El apóstata15、タイトルNetflix)に脇役で出演している。ここで信仰を捨てた男を演じたのが、本作でマルセロになったアルバロ・オガリャである。余談だがベイロフ監督は、サンセバスチャン映画祭2015で審査員スペシャル・メンションを受賞している。

 

    

       (撮影中の監督とイングリッド・ガルシア・ヨンソン)

 

   

(左から、監督、イングリッド・ガルシア・ヨンソン、イレネ・ルイス、マラガ映画祭にて)


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