第33回ゴヤ賞2019*授賞式あれやこれや ⑩ ― 2019年02月05日 14:54
フォルケ賞、フェロス賞とほぼ重なった受賞者たち
★終わってみれば、今回のゴヤ賞は、政界の汚職の泥沼を描いたロドリゴ・ソロゴジェンのスリラー「El reino」と、フツーとは何かをテーマにしたハビエル・フェセルの「Campeones」での知的障害者の可視化が勝利した。「Campeones」を観ようと映画館に駆けつけた320万人の観客と、アカデミー会員1600人の評価が珍しく一致した。特に全くの無名の新人10%の視力しかない視覚障害者のヘスス・ビダルの受賞スピーチに涙した人は多かったのではないでしょうか。「友好・多様性・可視化」という三つの単語で、障害者を特別扱いする社会に警鐘を鳴らした。YouTubeでの検索回数は既に170万回を軽く突破している。フェセル監督は「撮影を始めたときは知的障害を抱えた人々がテーマだったが、今日は異なった能力をもつ人々について語りたい。もっとチャンピオンについて話そう」とスピーチした。作品賞のプレゼンターは、30年前の脚本賞受賞作『神経衰弱ぎりぎりの女たち』を記念して、アルモドバル監督、出演者のロッシ・デ・パルマ、ロレス・レオン、フリエタ・セラーノが揃って登壇しました。
(自分の家族やこれまでの人生を支えてくれた人々、自分を善き人間、一躍俳優にしてくれたフェセル監督に感謝を捧げた新人男優賞のヘスス・ビダル)
(スピーチをするハビエル・フェセル監督と製作者ルイス・マンソ以下スタッフ)
(アルモドバル監督、ロッシ・デ・パルマ、フリエタ・セラーノ、ロレス・レオン)
★受賞者は結局フォルケ賞、フェロス賞とほぼ重なっていました。なかでフォルケ賞の俳優賞は、主演・助演・新人を一括りにして男優・女優とカテゴリーがすっきりしている。ロドリゴ・ソロゴジェン「El reino」のアントニオ・デ・ラ・トーレは3冠を達成して実力のほどを示しました。彼は下積み時代が長く出演本数はすでに3桁、ゴヤ賞には嫌われ続けであったが、やっと7度目の正直で主演男優賞をゲットした。
*アントニオ・デ・ラ・トーレのキャリア紹介は、コチラ⇒2018年08月27日
(プレゼンターのマリサ・パレデスにひざまずくアントニオ・デ・ラ・トーレ)
★同じく3冠を達成したのは、カルロス・ベルムト『シークレット・ヴォイス』のエバ・リョラチ、新人女優賞を受賞した。1970年ムルシア生れ、ムルシアの舞台芸術上級学校出身、舞台女優としてのキャリアが長い。映画では本作のほか同監督のファンタジー・スリラー「Diamond Flash」(11)や、ジョルディ・コスタの「La lava en los labios」(13)、お馴染み『マジカル・ガール』に出演、新人賞とはいえ、その独特の雰囲気を漂わせるベテラン女優、いずれご紹介することになるでしょう。女性の平等、機会均等をアピールした。
(新人賞なれど貫禄のエバ・リョラチ、後ろはマリア・レオンとベレン・クエスタ)
★主演女優賞のスシ・サンチェス、ラモン・サラサールの『日曜日の憂鬱』ノミネーション1個を守りきりました。本作ではゴージャスな衣装で登場して観客を驚かせた。勿論主演女優賞は初ノミネート、初受賞です。3月22日スペイン公開のアルモドバル新作「Dolor y gloria」に脇役で出演します。
(「まさか私が受賞するなんて」と頭をふりながら登壇するスシ・サンチェス)
★ゴヤ栄誉賞のナルシソ ’チチョ’ イバニェス・セラドールの出席は、体調不良のためマドリードの自宅からのガラ視聴となりました。去る1月14日にスペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソの手からトロフィーを受取っておりました。欠席にもかかわらず会場のスタンディングオベーションを受けていた。ガラの舞台に並んだ紳士たちは ’チチョ’ の影響を受けた、バヨナ、アメナバル、ジャウマ・バラゲロ、ロドリゴ・コルテス、アレックス・デ・ラ・イグレシア、フアン・カルロス・フレスナディーリョ、パコ・プラサ、ナチョ・ビガロンドの8監督でした。1月14日に会長と連れ立って訪れたときにチチョが語った言葉「私がしてきた仕事を上映していただき、その心遣いに感謝いたします。いつも君たちのことを思って撮ってきた」というバヨナのビデオで締めくくられた。
*キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2018年12月03日
(トロフィーを手にしたナルシソ 'チチョ' イバニェス・セラドール、2019年1月14日)
(舞台に勢揃いした8人の監督たち)
★趣向を凝らした演出の評価はまちまち、視聴率はいずれ発表されるでしょうが、総合司会者シルビア・アブリル&アンドレウ・ブエナフエンテのコメディアン夫婦のフォトはなんとしたことでしょうか。衣装デザイン賞の発表前、妻の長すぎるドレスの裾が引っかかって脱げてしまい、連れ合いも気の合ったところを披露すべきとパンツ姿に、傍若無人を通りこしていやはや。シルビアのお召し替えも4回ぐらいあったかな。
(拍手喝采の多かった一つだが、こんな中年夫婦のヌードは見たくない?)
(最後のまっ黄色の衣装のシルビア・アブリル)
(米コメディアン、マルクス兄弟の3男グルーチョを演じだアンドレウ・ブエナフエンテ)
★会場を驚かせたのがスペインを代表する二人の若い歌姫が登場したこと。ロサリアは「Me quedo contigo」を歌い、アマイア・ロメロは作曲家のマヌ・ギックスのピアノ伴奏で歌った。アマイアはオリジナル歌曲賞のプレゼンターでもあった。これは長く皆の記憶に残るでしょう。ほかオーケストラ、伝統的な衣装をまといセレナーデを歌う学生音楽隊トゥナ、カーニバルで祭りの歌をうたうチリゴータのグループ、踊り、サンバありのアンダルシア色、会場からも歌声が上がり盛り上がっていた。
(会場を感動に包んだロサリア)
(アマイア・ロメロとマヌ・ギックス)
★その他、会場を沸かせたのが短編映画賞プレゼンターの作家でジャーナリストのマキシム・ウエルタ、彼はペドロ・サンチェス政権の2018年6月7日~13日まで、たったの7日間だけ教育文化スポーツ相を務め、任期最短レコードの保持者。スピーチは長くならないから「皆さん、心配しないで、ご存知の通り、私はもっとも短かったのです」と皮肉たっぷり、本当に短かく、スピーチは「短ければ短いほど良い」を実証した。
(「すぐ終わるからね」と会場を爆笑させたマキシム・ウエルタ)
★ゴヤ賞が終わって、やっと2018年が終わりました。もう観客の興味は米アカデミー賞、ダブル・ノミネーションのアルフォンソ・キュアロンは、プロモーションや根回しで大忙しか来西はなかった。作品賞も星取表ではトップに付けているがどうでしょうか。今月7日に始まるベルリン映画祭2019コンペティション部門には、イサベル・コイシェの「Elisa & Marcela」だけ、ラテンアメリカ諸国も日本同様ゼロのようです。続いて4月のマラガ、5月のカンヌ、各映画祭も直ぐです。
◎赤絨毯を踏んだノミネーション・スター、衣装が話題を呼んだスターたち◎
(主演女優賞ノミネーションのペネロペ・クルス、単色のシャネル)
(主演女優賞ノミネートのロラ・ドゥエニャス、エドゥアルド・アンデスのデザイン)
(主演女優賞ノミネーションのナイワ・ニムリ、グッチのデザイン)
(助演女優賞ノミネーションのアナ・ワヘネル)
(助演女優賞ノミネートのナタリア・デ・モリーナ、
マイケル・コース・コレクション)
(助演女優賞ノミネーションのアンナ・カスティーリョ)
(主演男優賞ノミネーションのホセ・コロナド)
(助演男優賞ノミネーションのエドゥアルド・フェルナンデス)
(作品賞ノミネートの『カルメン&ロラ』、アランチャ・エチェバリア監督と出演者)
(監督賞プレゼンターのイサベル・コイシェ、タダシ・ショージのドレス、
ヤヨイ・クサマの水玉バッグ)
(ベストドレッサーのレオノル・ワトリング、撮影賞と編集賞のプレゼンター)
(マリサ・パレデスと一緒に主演男優賞のプレゼンターを務めたノラ・ナバス)
(アレックス・デ・ラ・イグレシアとカロリナ・バング夫婦)
(ロドリゴ・ソロゴジェンとイサベル・ペーニャ)
(パコ・レオン、マリア・レオン兄妹)
(ロッシ・デ・パルマと娘ルナ・マリー)
(フードのドレスが好きなマカレナ・ゴメスとアルド・コマス夫婦)
(スペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソと副会長ラファエル・ポルテラ)
(ベストドレッサーに選ばれた左から、フアナ・アコスタ、シルビア・アバスカル、
着物をイメージしたというロサリア、ナイワ・ニムリ)
(エドゥアルド・カサノバ、最も奇抜だったブライス・エフェ、
ミゲル・アンヘル・ムニョス、パコ・レオン)
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