監督賞ノミネーション*ゴヤ賞2019 ⑧ ― 2019年02月02日 19:17
予測がつかない監督賞、ハビエル・フェセル、ロドリゴ・ソロゴジェン・・・・
★今年は作品賞の予測がつかないから、それに連動して監督賞もつかない。確実なのは『エブリバディ・ノウズ』のアスガー・ファルハディは受賞しないということぐらいです。観客に一番人気なのは、つまり興行成績バツグンなのはハビエル・フェセルの「Campeones」だが、観客に投票権があるわけではない。ロドリゴ・ソロゴジェンの「El reino」は、批評家の評価はすこぶる高いが観客の反応はどうか。第91回アカデミー賞短編部門に「Madre」が踏みとどまって脚光を浴びているが、それとこれとは別でしょうか。この短編は昨年のゴヤ賞受賞作品、昨年ご紹介しているが、これはよくできている。ソロゴジェンの才能は半端でないことは確かです。ノミネーション数の多寡では推しはかれないが、第11回ガウディ賞を攫った「Entre dos aguas」のイサキ・ラクエスタはちょっと厳しいかもしれない。
★ノミネート監督&作品は以下の通りです。
*アスガー・ファルハディ『エブリバディ・ノウズ』ノミネーション8個
イラン出身のオスカー監督、アカデミー外国語映画賞受賞の『別離』と『セールスマン』は、本邦でも話題になった。家庭の秘密やもめ事を深く掘り下げていく手法は、イランに止まらず万国共通のテーマ。脚本の一部をアルモドバルに渡して意見を訊いた。「こんなストーリーなんだが、スペイン人には受け入れられるかね?」―「実にスペイン的だよ。もしあなたが作らないなら、私が作ってもいいよ」が返事だった。「そうでなかったら、撮らなかったかもしれない」とファルハディ監督。ペネロペ・クルス、ハビエル・バルデム、リカルド・ダリン、バルバラ・レニー、エドゥアルド・フェルナンデス、インマ・クエスタ、これだけの大物俳優を集めて映画を作れるスペイン監督は、良し悪しを抜きにして見当たらない。今夏6月劇場公開が予定されている。
〇ノミネーションは、作品・監督・脚本・オリジナル歌曲・主演女優・主演男優・助演男優・編集賞の8カテゴリー。
*紹介記事は、コチラ⇒2018年05月08日/10月17日
(アスガー・ファルハディ、2018年9月12日、本作のプレミア上映、マドリードのカジャオ)
*ロドリゴ・ソロゴジェン 「El reino」ノミネーション13個
権力に執着する登場人物たちが繰りひろげる卑劣なストーリーに、観客のアドレナリンはドクドク流れるでしょう。フェロス賞2019では、作品賞の他、ソロゴジェンの監督・脚本賞、アントニオ・デ・ラ・トーレの主演男優賞、ルイス・サエラの助演男優賞の5冠、フォルケ賞ではデ・ラ・トーレが男優賞を受賞している。キャストはジョセップ・マリア・ポウ、バルバラ・レニー、アナ・ワヘネル(助演女優賞)、フランシスコ・レイェス(新人男優賞)、ナチョ・フレスネダ他。
〇ノミネーションは、作品・監督・脚本・オリジナル作曲・主演男優・助演男優・助演女優・新人男優・撮影・編集・録音・特殊効果・プロダクション賞の13カテゴリー。
*紹介記事は、コチラ⇒2018年03月26日/07月25日
(2017年7月4日、撮影中のロドリゴ・ソロゴジェン、共同脚本家のイサベル・ペーニャ)
*ハビエル・フェセル 「Campeones」ノミネーション11個
古くからのファンなら『ミラクル・ぺティント』や『モルタデロとフィレモン』の監督作品。『カミーノ』のいざこざに疲れたか、再びコメディに戻ってきた。主役のハビエル・グティエレス以外は知的障害のある新人が殆どです。アカデミー賞外国語映画賞スペイン代表作品(落選)の他、フォルケ賞2019の作品賞とCine y Educación en Valoresのダブル受賞、フェロス賞ではコメディ部門の作品賞を受賞した。キャストはハビエル・グティエレス(主演男優)、フアン・マルガジョ(助演男優)、フラン・フエンテス、グロリア・ラモス(新人女優)、ヘスス・ビダル(新人男優)、ヘスス・ラゴ、ホセ・デ・ルナ
〇ノミネーションは、作品・監督・脚本・オリジナル歌曲・主演男優・助演男優・新人男優・新人女優・プロダクション・編集・録音賞の11カテゴリー。
*紹介記事は、コチラ⇒2018年06月12日
(出演者フラン・フエンテス、グロリア・ラモス、ヘスス・ラゴ、
ホセ・デ・ルナに指示を与えるハビエル・フェセル監督)
*イサキ・ラクエスタ 「Entre dos aguas」ノミネーション2個
1975年ジローナ生れ。サンセバスチャン映画祭2018の「金貝賞」受賞作品、更に先週開催されたガウディ賞の作品賞(カタルーニャ語以外)、監督賞、主演男優賞を含む7冠を達成した。2006年の『時間の伝説』から12年後がロマのゴメス兄弟によって語られる。イサ・カンポ(夫人)とカタルーニャ語で撮った前作は、邦題『記憶の行方』でNetflix配信された。
〇ノミネーションは、作品賞と監督賞の2カテゴリー。
*監督キャリア&作品紹介記事は、コチラ⇒2018年07月25日/2016年04月29日
(左から、イスラエル・ゴメス、ラクエスタ監督、フランシスコ・ホセ・ゴメス)
★作品賞は「Campeones」と「El reino」に分かれ、主演女優賞は『エブリバディ・ノウズ』のペネロペ・クルスと「Viaje al cuarto de una madre」のロラ・ドゥエニャス、『日曜日の憂鬱』のスシ・サンチェスとまさに混戦状態、助演女優賞は「Viaje al cuarto de una madre」のアンナ・カスティーリョの確率が高い。全員一致は主演男優賞のアントニオ・デ・ラ・トーレとイベロアメリカ映画賞の『ROMA/ローマ』くらいか。授賞式は2月2日(19:50~)、傍若無人ぶりが売りのシルビア・アブリル&アンドレウ・ブエナフエンテ夫婦の総合司会で間もなく開幕されます。
(ゴヤ胸像を真ん中に準備OKのシルビア・アブリル&アンドレウ・ブエナフエンテ夫妻)
第33回ゴヤ賞2019*授賞式 ⑨ ― 2019年02月03日 18:51
ロドリゴ・ソロゴジェンの「El reino」に軍配が上がった?
(ゴヤ賞授賞式が開催されたセビーリャの夜景、2019年2月2日)
★大賞作品賞はハビエル・フェセルの「Campeones」でしたが、監督賞、オリジナル脚本賞、主演・助演男優賞以下7冠を制したロドリゴ・ソロゴジェンの「El reino」に軍配が上がったのではないでしょうか。4時間近くかかったガラで、招待客3000人の皆さま、テレビ視聴者の皆さま、お疲れさまでした。まだ授賞式の模様は見ておりませんので、取りあえず結果と入手できたフォトをアップしておきます。
(総合司会者のシルビア・アブリルとアンドレウ・ブエナフエンテ)
(スペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソ)
*作品賞
「Campeones」制作会社:Morena Films / Pelícuias Pendeltón SA /
Telefónica Audiovisual Digital
(登壇したスタッフとプレゼンターのアルモドバル、ロッシ・デ・パルマ)
*監督賞
ロドリゴ・ソロゴジェン「El reino」
(前回の受賞者イサベル・コイシェ)
*新人監督賞
アランチャ・エチェバリア「Carmen y Lola」『カルメン&ロラ』
*オリジナル脚本賞
ロドリゴ・ソロゴジェン、イサベル・ペーニャ「El reino」
*脚色賞
アルバロ・ブレッヒナー「La noche en 12 años」『12年の長い夜』
*オリジナル作曲賞
オリビエル・アルソン「El reino」
*オリジナル歌曲賞
「Este es el momento」コケ・マリャ 「El reino」
*主演男優賞
アントニオ・デ・ラ・トーレ「El reino」
*主演女優賞
スシ・サンチェス「La enfermedad del domingo」『日曜日の憂鬱』
*助演男優賞
ルイス・サエラ「El reino」
*助演女優賞
カロリナ・ジュステ『カルメン&ロラ』
*新人男優賞
ヘスス・ビダル「Campeones」
*新人女優賞
エバ・リョラチ「Quién te cantará」『シークレット・ヴォイス』
*プロダクション賞
ヨーサフ・ボカリ 「El hombre que mató a Don Quijote」監督テリー・ギリアム
*撮影賞
Josu Incháustegui「La sombra de la ley」『ガン・シティ~動乱のバルセロナ~』
*編集賞
アルベルト・デル・カンポ「El reino」
*美術賞
フアン・ペドロ・デ・ガスパル 『ガン・シティ~動乱のバルセロナ~』
*衣装デザイン賞
クララ・ビルバオ 『ガン・シティ~動乱のバルセロナ~』
*メイクアップ&ヘアー賞
シルビエ・インベルト、アンパロ・サンチェス、パブロ・ペロナ
「El hombre que mató a Don Quijote」
*録音賞
ロベルト・フェルナンデス、アルフォンソ・ラポソ 「El reino」
*特殊効果賞
リュイス・リベラ、ラウラ・ペドロ 「Superlópez」
*アニメーション映画賞
「Un día más con vida」 Kanaki Films / Platige Films 『アナザー・デイ・オブ・ライフ』
(アマヤ・ラミレス、ラウル・デ・ラ・フエンテ)
*ドキュメンタリー映画賞
「El silencio de otros」 Semilla Verde Productions / Lucernam Films
(ロバート・バハー、アルムデナ・カラセド)
*イベロアメリカ映画賞
「ROMA」(メキシコ)『ROMA/ローマ』監督アルフォンソ・キュアロン
*ヨーロッパ映画賞
「Cold War」(ポーランド)監督パヴェウ・パヴリコフスキ
*短編映画賞
「Cerdita」 監督カルロタ・ペレダ
*ドキュメンタリー短編賞
「Gaza」 監督カルレス・ボベル・マルティネス、フリオ・ペレス・デル・カンポ
(フリオ・ペレス・デル・カンポ、カルレス・ボベル・マルティネス)
*アニメーション短編賞
「Cazatalentos」 監督ホセ・エレーラ
★ここ最近作品賞受賞作品は1年ぐらい遅れても公開されるようになっている。「Campeones」は期待してもいいでしょうか。作品賞にノミネートされながら無冠だったのが『エブリバディ・ノウズ』と「Entre dos aguas」の2作、前者は6月公開が予定されているのでスクリーンで見ることができます。主演女優賞を期待していたペネロペ・クルスの成長ぶりが楽しみです。
第33回ゴヤ賞2019*授賞式あれやこれや ⑩ ― 2019年02月05日 14:54
フォルケ賞、フェロス賞とほぼ重なった受賞者たち
★終わってみれば、今回のゴヤ賞は、政界の汚職の泥沼を描いたロドリゴ・ソロゴジェンのスリラー「El reino」と、フツーとは何かをテーマにしたハビエル・フェセルの「Campeones」での知的障害者の可視化が勝利した。「Campeones」を観ようと映画館に駆けつけた320万人の観客と、アカデミー会員1600人の評価が珍しく一致した。特に全くの無名の新人10%の視力しかない視覚障害者のヘスス・ビダルの受賞スピーチに涙した人は多かったのではないでしょうか。「友好・多様性・可視化」という三つの単語で、障害者を特別扱いする社会に警鐘を鳴らした。YouTubeでの検索回数は既に170万回を軽く突破している。フェセル監督は「撮影を始めたときは知的障害を抱えた人々がテーマだったが、今日は異なった能力をもつ人々について語りたい。もっとチャンピオンについて話そう」とスピーチした。作品賞のプレゼンターは、30年前の脚本賞受賞作『神経衰弱ぎりぎりの女たち』を記念して、アルモドバル監督、出演者のロッシ・デ・パルマ、ロレス・レオン、フリエタ・セラーノが揃って登壇しました。
(自分の家族やこれまでの人生を支えてくれた人々、自分を善き人間、一躍俳優にしてくれたフェセル監督に感謝を捧げた新人男優賞のヘスス・ビダル)
(スピーチをするハビエル・フェセル監督と製作者ルイス・マンソ以下スタッフ)
(アルモドバル監督、ロッシ・デ・パルマ、フリエタ・セラーノ、ロレス・レオン)
★受賞者は結局フォルケ賞、フェロス賞とほぼ重なっていました。なかでフォルケ賞の俳優賞は、主演・助演・新人を一括りにして男優・女優とカテゴリーがすっきりしている。ロドリゴ・ソロゴジェン「El reino」のアントニオ・デ・ラ・トーレは3冠を達成して実力のほどを示しました。彼は下積み時代が長く出演本数はすでに3桁、ゴヤ賞には嫌われ続けであったが、やっと7度目の正直で主演男優賞をゲットした。
*アントニオ・デ・ラ・トーレのキャリア紹介は、コチラ⇒2018年08月27日
(プレゼンターのマリサ・パレデスにひざまずくアントニオ・デ・ラ・トーレ)
★同じく3冠を達成したのは、カルロス・ベルムト『シークレット・ヴォイス』のエバ・リョラチ、新人女優賞を受賞した。1970年ムルシア生れ、ムルシアの舞台芸術上級学校出身、舞台女優としてのキャリアが長い。映画では本作のほか同監督のファンタジー・スリラー「Diamond Flash」(11)や、ジョルディ・コスタの「La lava en los labios」(13)、お馴染み『マジカル・ガール』に出演、新人賞とはいえ、その独特の雰囲気を漂わせるベテラン女優、いずれご紹介することになるでしょう。女性の平等、機会均等をアピールした。
(新人賞なれど貫禄のエバ・リョラチ、後ろはマリア・レオンとベレン・クエスタ)
★主演女優賞のスシ・サンチェス、ラモン・サラサールの『日曜日の憂鬱』ノミネーション1個を守りきりました。本作ではゴージャスな衣装で登場して観客を驚かせた。勿論主演女優賞は初ノミネート、初受賞です。3月22日スペイン公開のアルモドバル新作「Dolor y gloria」に脇役で出演します。
(「まさか私が受賞するなんて」と頭をふりながら登壇するスシ・サンチェス)
★ゴヤ栄誉賞のナルシソ ’チチョ’ イバニェス・セラドールの出席は、体調不良のためマドリードの自宅からのガラ視聴となりました。去る1月14日にスペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソの手からトロフィーを受取っておりました。欠席にもかかわらず会場のスタンディングオベーションを受けていた。ガラの舞台に並んだ紳士たちは ’チチョ’ の影響を受けた、バヨナ、アメナバル、ジャウマ・バラゲロ、ロドリゴ・コルテス、アレックス・デ・ラ・イグレシア、フアン・カルロス・フレスナディーリョ、パコ・プラサ、ナチョ・ビガロンドの8監督でした。1月14日に会長と連れ立って訪れたときにチチョが語った言葉「私がしてきた仕事を上映していただき、その心遣いに感謝いたします。いつも君たちのことを思って撮ってきた」というバヨナのビデオで締めくくられた。
*キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2018年12月03日
(トロフィーを手にしたナルシソ 'チチョ' イバニェス・セラドール、2019年1月14日)
(舞台に勢揃いした8人の監督たち)
★趣向を凝らした演出の評価はまちまち、視聴率はいずれ発表されるでしょうが、総合司会者シルビア・アブリル&アンドレウ・ブエナフエンテのコメディアン夫婦のフォトはなんとしたことでしょうか。衣装デザイン賞の発表前、妻の長すぎるドレスの裾が引っかかって脱げてしまい、連れ合いも気の合ったところを披露すべきとパンツ姿に、傍若無人を通りこしていやはや。シルビアのお召し替えも4回ぐらいあったかな。
(拍手喝采の多かった一つだが、こんな中年夫婦のヌードは見たくない?)
(最後のまっ黄色の衣装のシルビア・アブリル)
(米コメディアン、マルクス兄弟の3男グルーチョを演じだアンドレウ・ブエナフエンテ)
★会場を驚かせたのがスペインを代表する二人の若い歌姫が登場したこと。ロサリアは「Me quedo contigo」を歌い、アマイア・ロメロは作曲家のマヌ・ギックスのピアノ伴奏で歌った。アマイアはオリジナル歌曲賞のプレゼンターでもあった。これは長く皆の記憶に残るでしょう。ほかオーケストラ、伝統的な衣装をまといセレナーデを歌う学生音楽隊トゥナ、カーニバルで祭りの歌をうたうチリゴータのグループ、踊り、サンバありのアンダルシア色、会場からも歌声が上がり盛り上がっていた。
(会場を感動に包んだロサリア)
(アマイア・ロメロとマヌ・ギックス)
★その他、会場を沸かせたのが短編映画賞プレゼンターの作家でジャーナリストのマキシム・ウエルタ、彼はペドロ・サンチェス政権の2018年6月7日~13日まで、たったの7日間だけ教育文化スポーツ相を務め、任期最短レコードの保持者。スピーチは長くならないから「皆さん、心配しないで、ご存知の通り、私はもっとも短かったのです」と皮肉たっぷり、本当に短かく、スピーチは「短ければ短いほど良い」を実証した。
(「すぐ終わるからね」と会場を爆笑させたマキシム・ウエルタ)
★ゴヤ賞が終わって、やっと2018年が終わりました。もう観客の興味は米アカデミー賞、ダブル・ノミネーションのアルフォンソ・キュアロンは、プロモーションや根回しで大忙しか来西はなかった。作品賞も星取表ではトップに付けているがどうでしょうか。今月7日に始まるベルリン映画祭2019コンペティション部門には、イサベル・コイシェの「Elisa & Marcela」だけ、ラテンアメリカ諸国も日本同様ゼロのようです。続いて4月のマラガ、5月のカンヌ、各映画祭も直ぐです。
◎赤絨毯を踏んだノミネーション・スター、衣装が話題を呼んだスターたち◎
(主演女優賞ノミネーションのペネロペ・クルス、単色のシャネル)
(主演女優賞ノミネートのロラ・ドゥエニャス、エドゥアルド・アンデスのデザイン)
(主演女優賞ノミネーションのナイワ・ニムリ、グッチのデザイン)
(助演女優賞ノミネーションのアナ・ワヘネル)
(助演女優賞ノミネートのナタリア・デ・モリーナ、
マイケル・コース・コレクション)
(助演女優賞ノミネーションのアンナ・カスティーリョ)
(主演男優賞ノミネーションのホセ・コロナド)
(助演男優賞ノミネーションのエドゥアルド・フェルナンデス)
(作品賞ノミネートの『カルメン&ロラ』、アランチャ・エチェバリア監督と出演者)
(監督賞プレゼンターのイサベル・コイシェ、タダシ・ショージのドレス、
ヤヨイ・クサマの水玉バッグ)
(ベストドレッサーのレオノル・ワトリング、撮影賞と編集賞のプレゼンター)
(マリサ・パレデスと一緒に主演男優賞のプレゼンターを務めたノラ・ナバス)
(アレックス・デ・ラ・イグレシアとカロリナ・バング夫婦)
(ロドリゴ・ソロゴジェンとイサベル・ペーニャ)
(パコ・レオン、マリア・レオン兄妹)
(ロッシ・デ・パルマと娘ルナ・マリー)
(フードのドレスが好きなマカレナ・ゴメスとアルド・コマス夫婦)
(スペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソと副会長ラファエル・ポルテラ)
(ベストドレッサーに選ばれた左から、フアナ・アコスタ、シルビア・アバスカル、
着物をイメージしたというロサリア、ナイワ・ニムリ)
(エドゥアルド・カサノバ、最も奇抜だったブライス・エフェ、
ミゲル・アンヘル・ムニョス、パコ・レオン)
イサベル・コイシェの新作「Elisa y Marcela 」*ベルリン映画祭2019 ― 2019年02月11日 20:40
スペイン初となったレズビアン夫婦エリサとマルセラの遍歴
★第69回ベルリン映画祭2019が2月7日(~17日)開幕しました。18年間ベルリン映画祭を率いてきたヘッド・ディレクター、ディーター・コスリック最後の年ということで世代交代がここでもあるようでした。コンペティション部門のスペイン語映画は、イサベル・コイシェの「Elisa y Marcela」1作だけ、次のパノラマ部門には、ラテンアメリカ諸国、例えばデビュー作『火の山のマリア』が幸運にも公開されたグアテマラのハイロ・ブスタマンテ、アルゼンチンのマテオ・ベンデスキイの家族をテーマにした第2作目など、何本か目に止まりましたが、いずれご紹介できたらと思います。
(コイシェの新作「Elisa y Marcela」のポスター)
★コンペティション17作品のなかにはにはフランソワ・オゾンやファティ・アキン、ワン・シャオシュアイなどベルリナーレに縁の深いライバルが金熊賞を狙って目白押しです。審査委員長はフランスで最も輝いている女優の一人ジュリエット・ビノシュです。彼女はコイシェの「Nobody Wants the Night」で、1909年初めて北極点に達したと言われるアメリカの探検家ロバート・ピアリーの妻を演じ、コイシェを「こんな過酷な役を引き受けてくれるぶっ飛んだ女優は彼女しかいない」と感嘆させた演技派女優。
(審査委員長ジュリエット・ビノシュとディーター・コスリック、2018年2月7日開幕式にて)
★コイシェ監督の新作については既に1年前にアナウンスがあり、当時のキャストはエリサに最初からの候補だったナタリア・デ・モリーナ(ハエン近郊リナレス1990年)、マルセラにマリア・バルベルデでしたので、そのようにご紹介しております(2018年2月8日)。しかしバルベルデのスケジュール調整がつかず、急遽グレタ・フェルナンデス(バルセロナ1995年)に変更になりました。演技派として評価の高いエドゥアルド・フェルナンデス(『スモーク・アンド・ミラーズ』)が父親、1995年バルセロナ生れだが、子役時代から映画やTVシリーズに出演しており芸歴は長い。コイシェ監督も「グレタが8歳のときから知っていた。女優になるために生まれてきたような女性」と語っている。イサキ・ラクエスタの『記憶の行方』の脇役、思わせぶりな邦題が不人気だったエステバン・クレスポの『禁じられた二人』ほか、ラモン・サラサールの『日曜日の憂鬱』でスシ・サンチェスの義理の娘になった。偶然かもしれないが3作ともNetflixで配信された。
「Elisa y Marcela」(「Elisa and Marcela」)2019
製作:Rodar y Rodar / Lanube Peliculas / Netflix España / Zenit / Film Factiry /
TV3(カタルーニャテレビ)/ Canal Sur
監督・脚本:イサベル・コイシェ
原作:ナルシソ・デ・ガブリエル「Elisa y Marcela, Más allá de los hombres」2010刊)
撮影:ジェニファー・コックス
編集:ベルナ・アラゴネス
音楽:ソフィア・アリアナ・インファンテ
製作者:ホセ・カルモナ、ササ・セバリョス、ジョアキン・パドロ、マル・タルガロナ、他
データ・映画祭:スペイン、スペイン語・ポルトガル語、2019年、伝記ドラマ、129分、モノクロ。撮影地:ガリシアのセラノバ、オレンセ(ガリシア語オウレンセ)、バルセロナなど、2018年5月7日クランクイン。第66回サンセバスチャン映画祭2018に参加して編集の過程を撮った5分間の予告編を上映。第69回ベルリン映画祭2019正式出品(2月13日上映)、Netflixオリジナル作品(2019年ストリーミング配信予定)、OUTshine 映画祭2019 観客賞受賞。
キャスト:ナタリア・デ・モリーナ(エリサ・サンチェス・ロリガ/マリオ)、グレタ・フェルナンデス(マルセラ・グラシア・イベアス)、サラ・カサスノバス(マルセラの娘アナ)、タマル・ノバス(マルセラの求婚者アンドレス)、マリア・プファルテ(マルセラの母親)、フランセスク・オレーリャ(マルセラの父親)、リュイス・オマール(ポルト県知事)、ホルヘ・スケト(コウソの医師)、マノロ・ソロ(ポルトの刑務所長)、ミロ・タボアダ、マヌエル・ロウレンソ(ドゥンブリア教区の主任司祭ビクトル・コルティエリャ)、エレナ・セイホ、ルイサ・メレラス、ロベルト・レアル(コウソの司祭)、アンパロ・モレノ、タニア・ラマタ、コバドンガ・ベルディニャス、他ガリシアのエキストラ多数
ストーリー:1885年、教師のエリサとマルセラは、働いていたア・コルーニャのドゥンブリアの小学校で知り合った。互いに惹かれあい、やがて隠れて生きねばならない恋愛関係に陥っていった。マルセラの両親の支えもあったが、両親は冷却期間をおくようマルセラを外国に送り出した。数年後マルセラが帰国してエリサと再会する。社会的な圧力にも屈せず二人は共に人生を歩もうと決心するが、口さがない巷の噂を封じるための計画を練らねばならなかった。それはエリサが一時的に村を離れて、数年後に英国生まれのマリオ・サンチェスとなって戻ってくることだった。1901年6月8日、ドゥンブリア教区のサンホルヘ教会でビクトル・コルティエリャ主任司祭の司式で挙式した。教会によって公式に通知されたスペイン最初の同性婚であった。しかし「男なしの夫婦」という噂がたちまち広まり、二人はポルトガルに逃亡、8月16日港湾都市ポルトで逮捕されるも、13日後に釈放された。1902年1月6日、マルセラは父親を明かさないまま女の子を出産、二人は新天地アルゼンチンを目指してスペインを後にする。 (文責:管理人)
(マルセラと男装のエリサ、教会で挙式した1901年6月8日の写真)
20世紀初頭、逆境のなかでも愛を貫いた二人の女性の勇気に魅了される
★続きは端折るとしてこんなお話です。エリサがどうやって男性になることが可能だったかというと、彼女の死亡した従兄弟の偽造身分証明書を利用して男装し、ア・コルーニャの教会を騙したからであった。二人の愛を貫くためにはこうするしか方法がなかった時代でした。20世紀初頭の北スペインのガリシア地方ドゥンブリアでは、女同士の愛など許されるはずがなかった。敵意に満ちた雰囲気の中で主任司祭を騙して挙式するわけですから、二人はかなり思い切った大胆な女性だったと想像できます。伝わっている数字が正しければ、7ヵ月後にマルセラは出産するわけですから切羽詰まっていたとも考えられます。移住したブエノスアイレスでは、今度はエリサが60代のデンマーク人と結婚するが、これはいわゆる打算的な偽装結婚だったことが発覚して、その後二人はいずこともなく消息を絶つ。史実と映画がどのくらい重なるのか現時点では分からない。監督の焦点がどこに当てられているのか興味のあるところです。
(逃亡先のポルトで撮ったマルセラとエリサ=マリオ、1902年)
★原作者のナルシソ・デ・ガブリエルは、1955年ガリシアのルゴ市近郊のカダボ生れの教育学者、ア・コルーニャ(スペイン語ラ・コルーニャ)大学で教育学の理論と歴史を教えている。ガリシア語とスペイン語で執筆、本作のベースになった「Elisa y Marcela, Más allá de los hombres」のオリジナル版は、2008年ガリシア語で執筆され、2年後にスペイン語に翻訳されている。ア・コルーニャ出身の作家マヌエル・リバス(代表作『蝶の舌』)のプロローグが付いている。小説ではなく雌雄同体現象、女性同性愛、異性装者、フェミニズムなどについての考察、前半がエリサとマルセラに費やされているようです。コイシェ監督は著者とは友人関係にあり、直ぐに映画化を構想したがなかなか実現できなかったということです。
(ガリシア語のオリジナル版を手にしたナルシソ・デ・ガブリエル)
★「二人の結婚式の写真を見たときから、これはシロクロで撮りたいと思った。それでジェニファー(・コックス撮影監督)と1930年代の映画を見ていった。そこで目に留まったのがエリッヒ・フォン・シュトロハイムの『「クィーン・ケリー』(29)だった」という。ウィキペディアによると、完全主義者として知られる監督とヒロインのグロリア・スワンソンが衝突して撮影中止になった作品のようです。多分未完成作品が残っているということでしょう。「レズビアンのカップルが主役でも、パルム・ドールを受賞したアブデラティフ・ケシシュの『アデル、ブルーは熱い色』のような女性の性感を描くものではない。現在世界の73ヵ国では同性愛は違法で収監され、13ヵ国は死刑です」。「私を魅了するのは、愛の物語というだけでなく、社会の偏見にもめげず、危険に晒されながらも別れずに、逆境に生きた女性の勇気です」と監督。
(サンセバスチャン映画祭2018でのプレス会見、右端が監督)
★一般公開をせずにダイレクトにNetflixで配信する方法を選んだことについては「私だって映画館を観客でいっぱいにしたい。しかし190ヵ国に配信される魅力」には勝てないと。キャスチングについては「ナタリア(・デ・モリーナ)には、まだプロジェクトが具体化していなかった3年前に、何時になるか分からないがと但し書き付きでオファーをかけていた。デ・モリーナはダビ・トゥルエバの『「ぼくの戦争」を探して』でゴヤ賞2014新人女優賞、フアン・ミゲル・デル・カスティージョの「Techo y comida」で同2016主演女優賞を受賞しているシンデレラ女優。グレタは8歳のときから知っていた。ある日、鏡の前で泣いているので、何があったのと訊くと、どうやったら上手に泣けるか練習していたと。「この子はもう女優だと思った」と監督。
(ナタリア・デ・モリーナとグレタ・フェルナンデス)
★度々ガリシアを訪れて撮影地を探した結果、20世紀初頭の面影を残しているセラノバで2018年5月8日にクランクインした。俳優以外のエキストラ140名にも参加してもらった。ガリシアとバルセロナの半々で撮影したということです。主演の二人はアンダルシアとバルセロナ生れだが、脇役陣には、マルセラの求婚者アンドレス役のタマル・ノバス(『夢を飛ぶ夢』)、アナ役のサラ・カサスノバス、主任司祭のマヌエル・ロウレンソなどガリシア生れの俳優が目立つ。
(20世紀初頭の雰囲気が残るセラノバでの撮影風景)
★「『エリサとマルセラ』を携えてベルリンに行くことは、私にとって大きな意味があります。それというのもこの映画は長年培ってきた仕事の頂点の一つであり、根気強く突き進んできた頑張りへのご褒美でもあるからです。世界で一つしかないこの物語を国際的な映画祭の観客に見てもらえる幸運、エリサとマルセラを演じたナタリア・デ・モリーナとグレタ・フェルナンデスの二人の女優がベルリンの観客を魅了することを願っています」とコイシェ監督。果たしてベルリンの審査員や観客を虜にきるでしょうか。ビエンナーレは監督にとって特に思い入れの深い映画祭、過去にはデビュー作『あなたに言えなかったこと』(96)、『死ぬまでにしたい10のこと』(03)、『あなたになら言える秘密のこと』(05)、『エレジー』(08)、オープニング上映作品に選ばれた「Nadie quiere la noche」(15)、間もなく3月に公開される『マイ・ブックショップ』もここで特別上映されたのでした。
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*「Nadie quiere la noche」の紹介記事は、コチラ⇒2015年03月01日
*『マイ・ブックショップ』の紹介記事は、コチラ⇒2018年01月07日
イサベル・コイシェの新作「エリサとマルセラ」*ベルリン映画祭2019 ― 2019年02月15日 19:08
脚本を小脇に抱えて苦戦した10年間
★今年のベルリナーレのコンペティション部門は、前回アップのイサベル・コイシェの「Elisa y Marcela」だけで、去る13日上映されました。プレス会見には監督以下主演のナタリア・デ・モリーナとグレタ・フェルナンデスも出席しました。ちょっと金熊受賞は厳しそうですね。前回とダブりますが、エリサとマルセラは1901年6月8日に挙式したが、女性同士だったことが分かった後も記録を削除しなかった。だから残っているわけです。二人が教えていた村コウソではゴシップが絶えなかったので、隣国ポルトガルのポルトに逃亡しなければならなかった。しかしたちまち8月16日に逮捕され二人は収監されてしまう。マルセラは翌年1月6日に生まれる娘をお腹に抱えて刑務所に入れられたわけです。父親が誰かは分からないそうで、同じ年に赤ん坊を連れずに渡ったアルゼンチンでの生活もよく分かっていないらしい。
(「もっと女性にチャンスを」と書かれた扇子を手にナタリアとグレタ、監督)
★なかなか制作会社が見つからなかった理由の一つが「モノクロで撮る」ということだった。殆どのプロデューサーが「難色を示した」と監督。今ではアルフォンソ・キュアロンの『ROMA/ローマ』やパヴェウ・パヴリコフスキの「Cold War」の成功で製作者の態度にも変化があるようです。そして第二の理由がテーマ、「こんなありそうもない奇妙としか言えない物語を誰に語りかけるのかと、ガリシアでもフランスでも何人ものプロデューサーから言われた」と。それでもう自分でやるしかないと覚悟を決めて走り出した。そんなとき制作会社「Rodar y Rodar」を通じてNetflixが「シロクロでもいいし、テーマも悪くない」と打診してきてくれた。今まで誰も資金を出してやろうとは言ってくれなかったし、誰も興味を示してくれなかった。断る理由なんてないですよね。これはキュアロンの『ROMA/ローマ』のケースと同じだ。「Rodar y Rodar」はバヨナの『永遠のこどもたち』やギリェム・モラレスの『ロスト・アイズ』を手掛けている制作会社です。
(イサベル・コイシェ監督、プレス会見)
★Netflix作品がビエンナーレにエントリーされるのは、公開できないドイツの劇場主にとっては嬉しくない。それで160館が映画祭とドイツ文化省にエントリーしないよう公開書簡を出したということです。スペインでは何時かはまだ分からないが劇場公開できるようです。Netflix問題はこれからも引きずるのは明らかです。監督は「作品は当然スクリーンで観られることを想定して撮っているから、タブレットで私の作品を見ている人を見かけると悲しい」と語っています。だからドイツの劇場主の要求には痛みを覚えるとも。監督だったら誰だって映画館で観てもらいたいですよね。『ROMA/ローマ』がオスカーで成功すれば起爆剤になるかもしれない。「ビエンナーレは大画面を守って、一方Netflixは小画面を守る」と棲み分けすればいい。将来的にはどちらでも観ることができるようになることを期待したい。
★「政治的なメッセージを込めて撮ったのか」という質問には、「個人的には婚姻関係には反対です。しかしそのほうがいいという人はすればいい。(映画の中の)マルセラが司祭や医者や隣人たちに向かって『どうして私たちの人生に首を突っ込むの?』というセリフが重要なんです。これは映画であってマニフェストではない」と。「私が物語を探すのではなく、物語が私を呼ぶのです」。コイシェはスペインでも飛び切り強い女性、そしてエリサやマルセラのように闘う女性が好きなんです。4週間で登場人物に変身したナタリア・デ・モリーナとグレタ・フェルナンデスにも拍手、ナタリアは女優賞候補になっているようです。娘グレタが心配でパパもベルリンに駆けつけてきたようです。
(女優賞候補のナタリア・デ・モリーナを真ん中にした監督とグレタ・フェルナンデス)
(赤絨毯の父エドゥアルド・フェルナンデスとグレタ)
テディー賞ドキュメンタリー賞の「Lemebel」*ベルリン映画祭2019 ― 2019年02月18日 14:27
チリの詩人ペドロ・レメベルの最後の8年間を追うドキュメンタリー
(ビエンナーレ2019でのポスター)
★ジョアンナ・レポシ「Lemebel」は、コンペティション部門の次にランク付けされている「パノラマ」部門に出品された作品。ベルリナーレはコンペティション以外の部門が数多くあり、短編を含めると300とか400作ぐらい上映されるのはないでしょうか。というわけで賞の数も半端ではありません。コンペに新人が食い込めるのは大変なことで、却ってこのパノラマとかフォーラムをいずれ光輝く原石が眠る採石場として重要視している向きが多い。ただしコンペに比べると圧倒的に作品情報が限られるからチェックはしんどい。従って受賞作の落穂ひろいにならざるを得ません。
★ラテンビート2015で上映後に劇場公開された、グアテマラの新人ハイロ・ブスタマンテの「Temblores」をアップしようと思っておりましたが、コンペティション部門の発表に先立って結果が発表になったパノラマ部門の「Lemebel」(96分、チリ=コロンビア)が、テディー賞ドキュメンタリー賞を受賞しましたので先にご紹介します。チリの作家、詩人、コラムニスト、パフォーマンス・アーティスト、自らも同性愛者でジェンダーの平等を訴え続けた活動家でもあったペドロ・レメベルの最後の8年間を追ったドキュメンタリーです。パノラマ部門はLGBTをテーマにしたものが目立つようで、テディー賞を受賞したアルゼンチンのサンティアゴ・ロサの「Breve historia del Planeta Verde」もパノラマ部門でした。昨年のアカデミー賞外国語映画賞を受賞したセバスティアン・レリオの『ナチュラルウーマン』もテディー賞を受賞しましたが、こちらはコンペティション部門でした。
(トレード・マークのスカーフを被ったペドロ・レメベル)
★ペドロ・レメベル Pedro Segundo Mardones Lemebel は、1952年11月21日チリのサンティアゴ生れ、父親の姓 Mardones は使用しないことを明言している。2015年1月23日、2011年に発症した喉頭癌のため死去、晩年は手術のために声を失った(享年62歳)。1970年代にチリ大学に入学、造形芸術の学位を得る。1979年サンティアゴの二つの高校の教師となるが、1983年に両校から解雇される。おそらく彼の性的志向が理由だと推測された。以後教職に戻ることはなく、自ら起ち上げたワークショップで指導に当たった。チリの作家といえば、ノーベル賞受賞者のガブリエラ・ミストラルと映画の主人公にもなったパブロ・ネルーダの二人の詩人、若くしてチリを離れたロベルト・ボラーニョ、またはボラーニョが尊敬していたというニカノール・パラなどが挙げられます。日本でのペドロ・レメベルの認知度がどのくらいあるのか分かりませんが、小説「Tengo miedo torero」(2001)の他、グラフィック小説、コラム集、短編・詩・コラムを纏めたアンソロジーが刊行されている。
★代表作品は、上記の「Tengo miedo torero」でフランス語、イタリア語、英語に翻訳されている。代表的なコラム集は、1995年「La esquina es mi corazón: crónica urbana」、1996年「Loco afán: crónicas de sidario」、2004年「Adiós mariquita linda」など。没後出版されたインタビュー集「No tengo amigos, tengo amores」その他中道左派の「ラ・ナシオン」紙、左翼系雑誌「プント・フィナル」や「ザ・クリニック」のコラムニスト、さらにラジオ番組の制作者だった。ハーバード大学やスタンフォード大学など多くの大学に招聘され講義を行っている。2013年ホセ・ドノソ賞を受賞している。1月開催のチリ恒例の文化祭に姿を見せファンを驚かせたレメベル、これが最後の姿になった。
(ファンに最後の別れを告げるレメベル、2015年1月7日)
★彼の青春時代、活動期がピノチェト軍事政権時代(1973~90)と重なるので、反共主義者、ホモ嫌いだった政権下では生きにくかったと想像できます。チリは南米諸国でも際立ってホモセクシュアルの偏見が強く、日本同様同性婚は認められていない。下の写真は1986年ピノチェト政権反対の政治集会に共産主義や共産党のシンボル「鎌と槌」の化粧をしてハイヒールを履いて参加したときのレメベル。集会で「私は釈明を乞うパゾリーニではない/・・・私は詩人に見せかけた同性愛者ではない/変装など必要ない/これが私の顔/・・・私は少しも変ではない」(拙訳)というマニフェスト《Hablo por mi diferencia》を読み上げた。
(独裁政権を挑発した「鎌と槌」の化粧をしたレメベル)
★チリ出身だが1970年代末にスペインに移住した作家ロベルト・ボラーニョ(1953~2003)と同世代ということもあって、チリとスペインと離れていたが親交があった。50歳という若さで鬼籍入りしたボラーニョはレメベルの影響を大きく受けたと書いている。二人の会話は平行線を辿りながらも「レメベルは私の世代ではずば抜けた詩人、私は魅せられていた」と。「レメベルは最高の詩人になるために詩を書く必要はない。誰もレメベルのような奥深さに到達しない」。彼の詩をひたすら読めばいい、彼は私のヒーローだと「Entre parentesis」に書いている。1998年に25年ぶりにチリに帰国している。このときニカノール・パラにも会っている。
(ロベルト・ボラーニョとペドロ・レメベル、1998年に帰国したときのものか)
★監督のジョアンナ・レポシ Joanna Reposi Garibaldi は、1971年サンティアゴ生れ。2013年ごろ生前のレメベルからドキュメンタリー製作の許可を得ていたようで、完成にはかなりの年月をかけている。脚本もマヌエル・マイラと共同執筆した。デビュー作は2002年のドキュメンタリー「Locos del alma」で、本作は第2作めになる。受賞後のインタビューで「レメベルはアヴァンギャルドな芸術家で、いつも言ってるけど、彼はヨーコ・オノ、デヴィッド・ボウイであり、ビクトル・ハラやビオレッタ・ハラのように、この国ではその真価が認められていない芸術家」と語っている。
(ドキュメンタリー「Lemebel」から)
(ジョアンナ・レポシとマヌエル・マイラ)
★本作はベルリンのあと、3月開催のテッサロニキ・ドキュメンタリー映画祭の国際コンペティション部門にも正式出品、「金のアレクサンダー」賞を競うことになる。またサンティアゴ映画祭2019でも8月18日上映がアナウンスされた。
テディー賞&テディー・リーダー賞はアルゼンチン*ベルリン映画祭2019 ― 2019年02月19日 17:34
サンティアゴ・ロサの「Breve historia del Planeta Verde」はパノラマ部門
★テディー賞とテディー・リーダー賞のダブル受賞作品「Breve historia del Planeta Verde」は、パノラマ部門出品のアルゼンチン、独、ブラジル、西の合作映画。サンティアゴ・ロサSantiago Loza は、昨年のマランボという踊り手が男性だけというアルゼンチン伝統のフォルクローレをテーマにした「Malambo, el hombre bueno」に続いてパノラマに選出された。前作は賞に絡むことができませんでしたが、監督紹介を駆け足でいたしました。今年はテディー賞とテディー・リーダー賞の2冠を手にし、出演者やスタッフ総出で現地入りしており、揃って祝杯をあげることができました。
*「Malambo, El Hombre Bueno」の監督&作品紹介は、コチラ⇒2018年02月25日
(両手に花のサンティアゴ・ロサ)
(赤絨毯のスタッフとキャストたち、ベルリン映画祭2019)
「Breve historia del Planeta Verde」(「Brief Story from the Green Planet」)
製作:Constanza Sanz Palacios Films(アルゼンチン)/ Anavilhana Filma(ブラジル)
/ Autentika Films(独)/ Zentropa Internacional Spain(西)
監督・脚本:サンティアゴ・ロサ
撮影:エドゥアルド・クレスポ
音楽:ディエゴ・バイネル Bainer
編集:ロレナ・モリコーニ、イエール・ミシェル・アティアス
製作者:コンスタンツァ・サンツ・パラシオス、ダビ・マタモロス、アンヘレス・エルナンデス、ラウアナ・メルガソ、パウロ・ロベルト・ディ・カルバーニョ、Gudula Meinzolt
データ:製作国アルゼンチン=独=ブラジル=西、スペイン語、2019年、ドラマ、90分
映画祭・受賞歴:ベルリン映画祭2019パノラマ部門、第33回テディー賞、テディー・リーダー賞受賞。ランコントル・デ・トゥールーズ2019出品(3月22日~31日)
キャスト:ロミナ・エスコバル(タニア)、ルイス・ソダー(ペドロ)、パウラ・グリンスパン(ダニエラ)、エルビラ・オネット、アナベラ・バシガルポ、他
物語:タニアはブエノスアイレスでディージェーDJをしているトランス女性、ペドロはレギュラー・ダンサー、ダニエラはバーでウエイトレスをしている。三人は子供のときから土地の学校に通い、共にいじめられっ子だった。タニアは祖母が亡くなったという知らせを受け取る。タニアは祖母とある約束をしていた。そこで二人の友人を誘って祖母の過去を遡ろうと決心する。祖母はある授かり物を残しており、彼女の晩年の数年間を一緒に暮らしていたその風変わりな生物体を隠していたのだ。その生物体に永遠の平和がもたらされるような惑星に戻すというミッションが三人に与えられる。それは異星人にとってもタニアにとっても手遅れになる前に成し遂げねばなず、三人は旅に出発する。友情と誠実、そして受諾の試練が語られるロードムービー。 (文責:管理人)
(旅に出発するダニエラ、タニア、ペドロ、映画から)
ジャンルの垣根を取り壊す、人間的な温もりに満ちている
★一応ドラマにジャンル分けしましたが、SF的な要素、寓話的な要素、ファンタジーでもあり、ミックスされてメタファー探しでもあるようです。サンティアゴ・ロサ(アルゼンチンのコルドバ1971年)は、ベルリナーレでの受賞は初めてですが、既に実績のある監督です。受賞スピーチでは「この映画は私のアイデンティティについて語っており、そういう作品での受賞は私のキャリアにとっても重要です。ロミナ・エスコバル―主人公ですが―は、彼女の人生で経験したことのないような限りない愛をベルリンで受け取りました。アルゼンチンやブラジルではトランスの人々にとって非常に厳しい時代です・・・これは違いを受け入れる人々の友情についての映画であり、友人たちに助けられ、彼らと一緒に映画を完成させました。私はその惑星出身です。彼らを大切に思っています」と語りました。
(スピーチするロサ監督、隣はプロデューサーのコンスタンツァ・サンツ・パラシオス)
(アニタ役のロミナ・エスコバルの目にご注目、映画から)
★ビジュアルな側面から見ると、1980年代のエンターテインメント映画、例えば成長物語の古典と称されるロブ・ライナーの『スタンド・バイ・ミー』(86)やスピルバーグが製作総指揮をとった『グーニーズ』との関連があり、映像的にはアンドレイ・タルコフスキーのSF 『ストーカー』(79)やアントニオーニ映画を連想させるという。1分40秒程度の予告編からも感じ取れるが、赤ちゃんのような紫色の異星人は、眠れる森の美女のように横たわっている。三人も地球では異星人のようなものですが、ここがこんなにややこしい惑星だと知っていたら来なかったでしょう。冒頭はブエノスアイレスのゲイ・ショーで始まるようですが、フラッシュバッグで『E.T.』を見るところではモノクロとか、いろんなものがミックスされているようです。
(初めて異星人に対面したアニタ、ダニエラ、ルイス)
(眠れる森の美女のような異星人)
短編銀熊賞にアルゼンチンの「Blue Boy」*ベルリン映画祭2019 ― 2019年02月21日 17:20
マヌエル・アブラモヴィチの短編「Blue Boy」が銀熊賞
★短編部門の銀熊賞と審査員賞を受賞した「Blue Boy」(19m)の監督マヌエル・アブラモヴィチ(ブエノスアイレス、1987)は、ドキュメンタリーの監督、脚本家、撮影監督、製作者。ブエノスアイレスの国立映画制作学校卒、撮影監督としてそのキャリアをスタートさせている。サンセバスチャン映画祭2018(SSIFF)「サバルテギ-タバカレラ」部門でご紹介したロラ・アリアスの「Teatro de guerra」で撮影を手掛けました。本作によりイベロアメリカ・フェニックス賞2018の撮影賞にノミネートされています。先にベルリン映画祭「フォーラム」部門でワールドプレミアされ、エキュメニカル審査員賞とC.I.C. A.E.アート・シネマ賞の受賞作でもありました。
*「Teatro de guerra」の作品紹介は、コチラ⇒2018月08月05日
★マヌエル・アブラモヴィチが国際舞台に登場したのは、2013年の短編ドキュメンタリー、カーニバルのクイーンになりたい少女を追った「La Reina」(19m「The Queen」)で、監督、撮影、脚本、製作のオールランドを担当、多くの国際映画祭で短編賞を受賞しました。うち代表的なものは、アブダビ、フライブルク、グアダラハラ、ハンプトン、カルロヴィ・ヴァリ、ロスアンゼルス、シアトルほか、各映画祭で短編ドキュメンタリー賞を受賞しました。
★長編ドキュメンタリーの代表作は、第67回ベルリン映画祭2017「ジェネレーション14plus」に出品された「Soldado」(72m「Soldier」)、上記の「Teatro de guerra」同様SSIFFの「サバルテギ-タバカレラ」部門に出品されました。コロンビアのカリ映画祭で審査員特別賞、マル・デル・プラタ映画祭でFIPRESCIを受賞。軍事独裁から民主化されて30数年、戦争のないアルゼンチンで志願兵士になるとはどういうことか、という青年を追ったドキュメンタリー。
★『サマ』(17)撮影中のルクレシア・マルテル監督の姿を追ったドキュメンタリー「Años luz」(72m「Light Years」)は、ベネチア映画祭2017ドキュメンタリー部門に出品され、Venezia Classici Awardにノミネートされた。『サマ』もコンペティション外ではありましたが出品された。アブラモヴィチによると「『サマ』撮影中のマルテル監督を主人公にしたドキュメンタリーを撮るアイデアをメールしたら」、マルテルから「私が主人公になるの?」と返ってきた。最初は俳優にあれこれ指示している監督を誰が見たいと思うかと乗り気でなかった。マルテルは凝り性で『サマ』も大幅に遅れ、春の一大映画イベントのカンヌには間に合わなかった。彼女がどの部分に拘り、どんな方法で撮るかは、アブラモヴィチだけでなく後進の映画作家には参考になったのではないか。『サマ』出演のダニエル・ヒメネス=カチョ、ロラ・ドゥエニャスなども登場する。
(中央がマルテル、左側にサマ役のダニエル・ヒメネス=カチョ)
★今回受賞した「Blue Boy」の舞台はドイツの首都ベルリン、まだIMDbにはアップされていないので詳細はアップできないが、ベルリンにあるバー「ブルー・ボーイ」でセックス・サービスを稼業にしている、ルーマニア出身の7人の青年たちを追ったドキュメンタリー。彼らはビジネスや旅行で訪れるお客様を満足させるために役者に変身する。彼らの目は鏡のように私たちの社会を照射する。セックス労働者の自立、都会の孤独が語られるようです。(字幕英語)
監督・撮影・製作:マヌエル・アブラモヴィチ、
メイン・プロデューサー:Bogdan Georgescu
録音:フランシスコ・ペデモンテ
キャスト:フローリン、ラズヴァン、ステファン、マリウス、ミハイル、ラファエル、ロベルト
(左から、短編銀熊賞のマヌエル・アブラモヴィチと製作者Bogdan Georgescu)
(誰か同定できないが出演者の青年、映画から)
カルラ・シモンの第2作「Alcarras」*ベルリン映画祭2019 ― 2019年02月24日 17:37
アバロンPC がベルリナーレ共同製作マーケットのEurimages de Desarrollo賞受賞
★第16回「ベルリナーレ共同製作マーケット」でカルラ・シモンの第2作目「Alcarras」を製作するアバロン Avalon PC が Eurimages de Desarrollo 賞を受賞しました(副賞20,000ユーロ)。第16回というわけで結構歴史があるようですが、今回初めて知りました。Eurimages は映画産業に携わるヨーロッパ諸国の共同製作、配給、上映のための欧州評議会(1949年設立の国際機関)基金です。受賞者アバロンPCは、直近のではシモン監督の『悲しみに、こんにちは』(17)、カルロス・ベルムトの『マジカル・ガール』(13)、アレックス・デ・ラ・イグレシアの『メッシ』、Netflix配信や海外作品、例えばカンヌ映画祭のグランプリ受賞作品ロバン・カンピヨの『BPMビート・パー・ミニット』やパルム・ドールを受賞したリューベン・オストルンドの『ザ・スクエア思いやりの聖域』などにも共同製作しており、スペインでは老舗の制作会社です。
(『悲しみに、こんにちは』の監督と製作者バレリー・デルピエール、ベルリンFF2017)
★カルラ・シモンは、前作『悲しみに、こんにちは』の成功後、新作「Alcarras」の資金作りに奔走していたが、アバロンPCが前作同様手掛けることになった。新作は2018年11月 TorinoFilmLab トリノフィルムラボ・フェスティバルの ScriptLabtima プログラム最優秀プロジェクトに選ばれている(副賞8,000ユーロ)。更にカンヌ映画祭の「シネフォンダシオン部門」にも選ばれ、10月から4ヵ月間、脚本完成のための専門的な助言を受けられる予定。下の写真は前作のエグゼクティブ・プロデューサーだったマリア・サモラ、新作をプロデュースします。
(カルラ・シモンと製作者のマリア・サモラ)
★どんなストーリーかというと、2008年真夏、カタルーニャ西部リェイダ(西語レリダ)のアルカラスの小さな村は、あたり一面に桃畑が広がっている。ちょうど桃の収穫の季節で、ソレの家族も揃って今年が最後となる取り入れに専念している。祖父が無口になっていたが誰も本当のことは分からなかった。祖父母、伯父伯母、従兄弟、甥姪たちが混乱に陥る一族の姿を、子供や若者たちの目をとして描いている。
(収穫した桃を食べる新作の出演者一同)
★シモン監督の祖父母は2人の息子とカタルーニャの果樹園で桃を育てていた。その土地は監督にとって第二の故郷と言うべきところで、クリスマスや夏季休暇はそこで過ごした。10年ほど前、大農場ビジネスが進出して、桃畑の80%を失った。前作同様自伝的な要素が土台となっているようです。エキストラを含めてキャストはオール土地のアマチュアが演じている由。脚本は監督とArnau Vilaró アルナウ・ビラロとの共同執筆、まだIMDbにアップされていませんので詳細はこれからです。
ベルリン映画祭2019落穂拾い&米アカデミー賞結果発表 ― 2019年02月25日 15:37
金熊賞はイスラエルのナダブ・ラピドの「Synonymes」
★落穂拾いで金熊賞もなんですが、イスラエルのナダブ・ラピドの「Synonymes」(仮題「シノニムズ」仏・イスラエル・独の合作)が受賞しました。1975年テルアビブ生れ、母親のエラ・ラピドが息子の作品の編集を手掛けている。フランスに帰化したいイスラエル人の若者が、国情の違いに呻吟する日常を皮肉たっぷりに描いた映画ということです。
(審査委員長ジュリエット・ビノシュからトロフィーを受取るナダブ・ラピド)
★審査員グランプリ(銀熊)は、フランソワ・オゾンの「By The Grace of God」でした。フランスのカトリック教会が長年にわたって組織的に黙認というか隠蔽してきた児童性的虐待事件がテーマ。子供のときに受けた性的虐待を大人になった当事者たちが集団で教会を告発した実話に基づいている。現在も裁判が続行中ということです。オゾン監督としては珍しいテーマではないでしょうか。スペインでも宗教系の男子校マリスト会に通っていた人たちが、子供のときに受けた性的虐待を親にも信じてもらえず、人生を台無しにされた当事者たちが重い口を開きはじめている。シリーズ・ドキュメンタリー『良心の糾明:聖職者の児童虐待を暴く』(Netflix)で見ることができる。現在では教会が事実を認め謝罪しているが、バチカンを悩ませている性的虐待は今後とも告発が続くのではないでしょうか。
★男優賞・女優賞(銀熊)は中国のワン・シャオシュアイの「So Long, My Son」(「地久天長」『さらば、息子よ』)、一人っ子の息子を失った夫婦を演じた、ヨン・メイとワン・ジンチェンが揃って受賞しました。3 時間にも及ぶ長尺らしく覚悟して見る必要がありそうです。イサベル・コイシェの「Elisa y Marcela」に出演したナタリア・デ・モリーナの受賞を期待していましたが残念でした。
★「ジェネレーションKplus」部門の短編部門に出品されていたカルロス・フェリペ・モントヤ「El tamaño de las cosas」(12分、コロンビア)が、短編賞国際審査員特別賞スペシャル・メンションに選ばれました。他に漏れがあるかもしれませんが、そろそろ終りにします。
『ROMA/ローマ』が下馬評通り外国語映画賞を受賞しました!
★映画賞しんがりの米アカデミー賞2019も終わりました。これで大きな2018年度の映画賞は終了したことになります。作品賞は下馬評通りジム・バーク、チャールズ・B・ウェスラー他の『グリーンブック』、作品賞と外国語映画賞にダブルノミネートされていたアルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA/ローマ』は、これまた下馬評通り後者を受賞しました。プロデューサーのガブリエラ・ロドリゲスは、初参加初受賞でした。キュアロンは他に監督賞・撮影賞も受賞しましたから上出来ではなかったでしょうか。是枝裕和監督も細田守監督も参加することに意味ありとなり、短編映画賞にノミネートされていたロドリゴ・ソロゴジェンの「Madre」(「母」19分)も残念賞でした。
(外国語映画賞を受賞したアルフォンソ・キュアロン)
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