厳しい年明けとなった2024年*新年のご挨拶 ― 2024年01月04日 20:22
世界も報道した令和6年能登半島地震と羽田空港飛行機事故
★新年早々石川県能登地方を震源地とする震度7の地震が発生、北海道から九州まで日本海側全域に出された大津波を含む津波警報や注意報、被害が明らかになるにつれ予想を超えた惨状に、これは唯事ではないと驚愕する。さらに翌日、羽田空港での追い打ちをかけるように起きた日本航空機と海上保安庁機の衝突事故、テレビに釘付けになったお正月の三日間でした。後者の全員脱出は「奇跡的だ」と報じられたが回避できた事故ではなかったか。しかし前者は、日本列島に住むかぎり避けられない。スペインでも日刊紙エルパイスの北京駐在記者が、輪島や能登半島の生々しい映像を配信している。原発に敏感なスペイン人向けに、NHK報道として志賀、柏崎刈羽原発の異常なしを報じている。そう願わずにいられません。
★昨年は時間の調整がうまく取れず、ブログにかぎらず何事にも言い訳をいろいろ模索した不本意な一年でした。確認というかウラの取れない情報は、個人的なブログとはいえ避けたいと、結局下書きどまりでアップできませんでした。どうも集中力の劣化にも原因がありそうです。2013年8月にデビューした当ブログも10年になり一区切りなのかもしれません。楽しくなくなったら止めるですね。
J. A. バヨナの『雪山の絆』のネット配信始まる
★今日からJ. A. バヨナの最新作『雪山の絆』がNetflixで配信開始、アカデミー賞はドイツ語ながらイギリス製作なので作品賞に回る可能性もあるが、ジョナサン・グレイザーの『ゾーン・オブ・インタレスト』が目玉らしい。しかしヴィム・ヴェンダースの『パーフェクト・デイズ』に続いて本作も高位置にあるので、ノミネートに残れるよう期待しています。
★昨年は年明けにアグスティ・ビリャロンガ監督(1月22日、享年74歳)、ゴヤ栄誉賞ガラ直前にカルロス・サウラ(2月10日、同91歳)、生涯現役を貫いた女優で歌手のコンチャ・ベラスコ(12月2日、84歳)、わずか46歳の若さで旅立った女優イツィアル・カストロ(12月8日)と、多くの映画人を見送りました。いずれ我も行く道ながら、またたく間に過ぎさる時間の重さに心が沈みます。サウラとビリャロンガは訃報をアップいたしましたが、コンチャとイツィアルは記事だけでしたので、在りし日のフォトで偲びたい。
★コンチャ・ベラスコは、1987年Bellas Artes金のメダル、2003年アカデミー金のメダル、2013年ゴヤ栄誉賞、2019年演劇の最高賞であるMax栄誉賞を受賞、10年前からリンパ腫と闘いながら現役に拘った女優でした。アルフレッド・ランダ、フアン・ディエゴなど多くの共演者のもとに旅立った。
(老いても品格を保ったコンチャ・ベラスコ)
(ゴヤ栄誉賞のトロフィーを手にしたコンチャ)
(告別式)
★イツィアル・カストロ(バルセロナ1977)の紹介記事は、ゴヤ賞助演女優賞ノミネートのエドゥアルド・カサノバの『スキン あなたにに触らせて』(17)が最初かもしれないが、パブロ・ベルヘルの『ブランカニエベス』(12)、アレックス・デ・ラ・イグレシアの『スガラムルディの魔女』(13)、ハビエル・フェセルの『だれもが愛しいチャンピオン』(18)と「Compeonex」(23)、パコ・プラサの『RECレック3ジェネシス』(12)など、字幕入りで見られた映画に脇役ですが多数出演している。
(エドゥアルド・カサノバのデビュー作『スキン あなたにに触らせて』から)
(監督とイツィアル・カストロ、ゴヤ賞2018ガラ)
★とにかく重量のある女優だったから長命は望めないと思っていたが、こんなに早く逝くなんて口惜しかったに違いない。自身が太めのレスビアンだったことで差別を受けていた。LGTBI運動、フェミニスト、不正義と闘う活動家、政治的には左派を表明していた。ゴヤ賞ガラにはいつも楽しいファッションで出席していたが、もう彼女の姿は見られない。受賞歴は『スキン あなたにに触らせて』でスペイン俳優組合新人賞、「Matar a Dios」でブエノスアイレス・ロホ・サングレ2017女優賞を受賞している。
(ゴヤ賞2022ガラに出席のイツィアル・カストロ)
アントニオ・メンデス・エスパルサの新作*ゴヤ賞2024 ④ ― 2024年01月11日 19:07
「Que nadie duerma」主演のマレナ・アルテリオ
★アメリカ在住が長かったアントニオ・メンデス・エスパルサがスペインに戻って撮った4作め「Que nadie duerma」が話題になっている。主役のマレナ・アルテリオが本作でフォルケ賞女優賞を受賞して、賞レースに名乗りを上げました。もともとマレナか、またはアルバロ・ガゴのデビュー作「Matria」主演のマリア・バスケスのどちらかと予想していたので驚きはありませんでした。当ブログでは第1作『ヒア・アンド・ゼア』(12)から『ライフ・アンド・ナッシング・モア』(17)、ドキュメンタリー『家庭裁判所 第3H法廷』(20)ともれなく紹介しております。フアン・ホセ・ミリャスの同名小説の映画化、ベルランガ流のクラシック・コメディということもあって紹介する次第です。
*『ヒア・アンド・ゼア』と『ライフ・アンド・ナッシング・モア』の作品紹介は、
*『家庭裁判所 第3H法廷』の作品紹介は、コチラ⇒2020年08月05日/同年12月07日
「Que nadie duerma」(「Let Nobody Sleep」・「Samething Is About to Happen」)
製作:Aquí y Allí Films / ICAA / Que Nadie Duerma / Wanda Visión S.A.
監督:アントニオ・メンデス・エスパルサ
脚本:アントニオ・メンデス・エスパルサ、クララ・ロケ
原作:フアン・ホセ・ミリャスの “Que nadie duerma”(2018年刊)
撮影:バルブ・バラソイウ
音楽:セルティア・モンテス
編集:マルタ・ベラスコ
キャスティング:マリア・ロドリゴ
美術:ロレナ・プエルト
衣装デザイン:クララ・ビルバオ
メイクアップ&ヘアー:エレナ・カスターニョ、パトリシア・ベルダスコ・モンテロ
プロダクション・マネージメント:ダビ・エヘア、アルムデナ・イリョロ
製作者:アマデオ・エルナンデス・ブエノ、ペドロ・エルナンデス・サントス、ミゲル・モラレス、アルバロ・ポルタネット・エルナンデス、ほかエグゼクティブプロデューサー多数
データ:製作国スペイン、ルーマニア、2023年、スペイン語。サスペンス・ドラマ、122分、撮影地マドリードのウセラ、 配給Aquí y Allí Films(スペイン)、公開スペイン2023年11月17日
映画祭・受賞歴:バジャドリード映画祭2023ゴールデン・スパイク賞ノミネート(ワールドプレミア)、ホセ・マリア・フォルケ賞2024女優賞受賞(マレナ・アルテリオ)、ディアス・デ・シネ賞スペイン女優賞(同)、シネマ・ライターズ・サークル賞2024ノミネート、ゴヤ賞2024主演女優賞、フェロス賞2024主演女優・助演女優(アイタナ・サンチェス=ヒホン)・オリジナル作曲賞(セルティア・モンテス)
キャスト:マレナ・アルテリオ(ルシア)、アイタナ・サンチェス=ヒホン(ロベルタ)、ロドリゴ・ポワソン(ブラウリオ・ボタス)、ホセ・ルイス・トリホ(リカルド)、マリオナ・リバス(ファティマ)、マリアノ・リョレンテ(エレロス)、マヌエル・デ・ブラス(フアンホ)、イニィゴ・デ・ラ・イグレシア、フェデリコ・ペレス・レイ、イグナシオ・イサシ(ルシアの隣人)、ほか多数
ストーリー:ルシアはコンピューター・プログラマーとしての仕事を突然失ったとき、人生を変えようと決心する。タクシー運転手になりマドリードの街を旅することにしました。タクシーの運転手はかつて出会った男性と遭遇する可能性が非常に高い仕事です。ルシアの頭のなかは日常と非日常が錯綜しながら、厳しい現実とそこからの逃避が奇妙に調和して、観客を置き去りにするまでブレーキなしで走ります。
(タクシードライバーになったルシア)
フアン・ホセ・ミリャスの同名小説の映画化
★主人公はコンピューター・プログラマーの職を解雇されるとタクシー運転手に転職する。このような奇抜な発想をする女性の頭のなかを理解するのはそんなに簡単ではない。フアン・ホセ・ミリャスの同名小説 “Que nadie duerma” の映画化、作家はバレンシア生れ(1946)の77歳、机は勿論のこと壁といわず床といわず山のような本に埋もれて執筆している。3年おきぐらいに新作を発表しているので、本人も出版社も多くてあと3冊くらいと考えている。映画全体のトーンが少し奇妙で観客を不安にさせ当惑させるけれども、文学的な枠組みがあるから飽きさせないようです。
(フアン・ホセ・ミリャスと原作の表紙)
★脚本はアントニオ・メンデス・エスパルサ(マドリード1978)と、2021年、東京国際映画祭とラテンビートFFの共催作品に選ばれた『リベルタード』で監督デビューしたクララ・ロケ(バルセロナ1988)が共同執筆している。彼女は監督より「監督と一緒に仕事ができる脚本家が性にあっている」と語っているように、脚本家としての実績は豊富です。影響を受けている監督の一人にメンデス・エスパルサを挙げていたから、共同執筆は自然な流れでしょうか。監督が『家庭裁判所 第3H法廷』完成後に、「次回作はベルランガ流のクラシック・コメディ」と予告していた作品が本作である。
*クララ・ロケの『リベルタード』の紹介は、コチラ⇒2021年10月12日
★ポスターにあるルシアの後ろに見える黒い鳥はカラスのように見えるが、この鳥はルシアの10歳の誕生日に母親がプレゼントしたものらしい。母親が10歳の娘の誕生日にプレゼントする代物にしてはクレージーだし謎めいている。貰った子供の人生が平穏に進むとは思えない。またタクシー運転中のサウンドトラックが、プッチーニのオペラ『トゥーランドット』のアリア〈誰も寝てはならぬ Nessum dorma〉となると、観客はどうすればいいのか当惑する。観客に届けられた映画は、愛のコメディ風でもあり、サスペンスでもあり、予告編からはホラーの要素もうかがえる。
(ルシアの背後にいる謎めいた黒い鳥)
★マレナ・アルテリオは、1974年ブエノスアイレス生れ、、映画、舞台、テレビの女優、クラシックとコンテンポラリーのダンサー、歌手、楽器はフルートと多才。当時アルゼンチンは軍事独裁制を敷いており、反体制派だった俳優の父親エクトル・アルテリオが殺害予告を受けていた。マレナは生後6ヵ月で家族とともにマドリードに政治亡命する。エルネスト・アルテリオは兄、2003年ルイス・ベルメホと結婚(~2016)、アルゼンチンとスペインの二重国籍を持ち。両国で活躍している。同じアルゼンチンから亡命したクリスティナ・ロタ演劇学校で4年間演技を学ぶ。舞台女優としてキャリアをスタートさせた。
(新作のフレームから)
★映画デビューは、エバ・レスメスの「El palo」でゴヤ賞2001新人女優賞にノミネートされた。ゴヤ賞の受賞はないが、プレゼンターや現在94歳になる父親エクトルのゴヤ賞2004栄誉賞のトロフィーを兄エルネストと手渡しており、今回の主演女優賞受賞が待たれている。当ブログ紹介作品に、2010年、ミゲル・アルバラデホのシリアスドラマ「Nacidas para sufrir」では修道女を好演した。昨2023年のヘラルド・エレーロの「Bajo terapia」などがある。他にマルク・クレウエトの「Espejo, espejo」(22)が『シングル・オール・ザ・ウェイ』の邦題でNetflix配信が予定されているようです。映画に先行して出演したた舞台では、クリスティナ・ロタ演出のほか、チェーホフやブレヒト劇にも出演しており、映画と舞台の二足の草鞋を履いている。
(父親のゴヤ栄誉賞受賞を喜ぶアルテリオ親子、ゴヤ賞2004ガラ)
★3年に及ぶ長寿TVシリーズ「Aqui no hay quien viva」(2003~06、91話)でスペインのお茶の間に新参、スペイン俳優組合2003助演女優賞を受賞、他に「Vergüenza」(2017~20、23話)でハビエル・グティエレスと夫婦役を演じ、2018年のフォトグラマス・デ・プラタ、スペイン俳優組合、フェロス主演女優賞を受賞している。他に「Señoras del (h) AMPA」(2019~21、26話)に出演している。
★アントニオ・メンデス・エスパルサのキャリア&フィルモグラフィーは、上記の作品紹介で既にアップしております。共演者のアイタナ・サンチェス=ヒホン(ローマ1968)は、2015年にスペイン映画アカデミーの金のメダルを恩師フアン・ディエゴと受賞した折に紹介しております(彼は2022年に鬼籍入りしてしまいました)。舞台に専念して銀幕から遠ざかっていた時期もありましたが、頭の回転が早くて、エレガントで、その舞台で鍛えた演技力には文句の付けようがありません。アルテリオによると「彼女との撮影は驚きの連続で、舞台のリハーサルでは経験ありますが、映画ではなかった」と絶賛している。
(アイタナ・サンチェス=ヒホン、アルテリオ、フレームから)
★ゴヤ賞はアルモドバルの『パラレル・マザーズ』の助演女優賞ノミネートだけです。『パラレル・マザーズ』でフェロス賞、イベロアメリカ・プラチナ賞を受賞している。本作でフェロス賞にノミネートされているほかノミネートは多数ありますが、受賞に至っていない。フラン・トレスのデビュー作「La jefa」(22)が『ラ・ヘファ:支配する者』でNetflixで配信されている。
*アイタナ・サンチェス=ヒホンの紹介記事は、
(監督とアルテリオ)
(アイタナ、監督、マレナ、2023年11月17日マドリード公開にて)
(アルテリオ、監督、アイタナ・サンチェス=ヒホン、バジャドリード映画祭2023)
マイテ・アルベルディの新作ドキュメンタリー*ゴヤ賞2024 ⑤ ― 2024年01月18日 21:48
マイテ・アルベルディの「La memoria infinita」―イベロアメリカ映画
★サンダンス映画祭2024でワールドプレミアされ、ワールドシネマ審査員グランプリ受賞を皮切りに始まった、ドキュメンタリー作家マイテ・アルベルディの「La memoria infinita」の快進撃は、ベルリン、マイアミ、グアダラハラ、リマ、サンセバスチャン、アテネと世界を駆け巡りました。第93回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた前作『83歳のやさしいスパイ』(20「El agente topo」)の知名度だけではなかったでしょう。当ブログはラテンビート2020でオンライン上映された折りの邦題『老人スパイ』でアップしています。
*『老人スパイ』の作品紹介、監督キャリア&フィルモグラフィ紹介は、
★サンダンスに続くベルリン映画祭では観客のほとんどが感涙にむせんだという。というわけでパノラマ部門の観客賞(ドキュメンタリー部門)を受賞したのでした。昨年は国際映画祭での受賞ラッシュの1年でしたが、12月17日に開催されたホセ・マリア・フォルケ賞のガラにはアルベルディ自身が登壇してラテンアメリカ映画賞のトロフィーを手にいたしました。サンセバスチャン映画祭ペルラス部門にノミネートされながら未紹介でしたので、ゴヤ賞ガラに間に合うようアップいたします。
(トロフィーを手にして受賞スピーチをする監督、フォルケ賞ガラ1月17日)
★本作の主人公は、アウグスト・ゴンゴラとパウリナ・ウルティア、二人がパートナーとして一緒に暮らした25年間の物語です。ゴンゴラはジャーナリスト、プロデューサー、ニュースキャスター、ウルティアは女優として有名ですが、第一次ミシェル・バチェレ政権下(2006~10)では文化芸術大臣を務めた政治家でもあり、つまり二人はチリではよく知られた著名人のカップルでした。8年前の2014年、ゴンゴラはアルツハイマー病と診断されました。その後二人は、2016年1月に正式に結婚しました。アルベルディ監督との出会いは5年前、撮影期間はコロナ禍を挟んで5年間に及びました。監督が二人に接触できずにいたときにはパウリナにカメラを渡して撮影してもらった部分、家族のアーカイブ映像も含まれている。
(左から、パウリナ・ウルティア、アウグスト・ゴンゴラ、アルベルディ監督)
「La memoria infinita」(英題「The Eternal Memory」)
製作:Fabula / Micromundo Producciones / Chicken And Egg Pictures
監督・脚本:マイテ・アルベルディ
音楽:ミゲル・ミランダ、ホセ・ミゲル・トバル
撮影:ダビ・ブラボ、パブロ・バルデス
編集:カロリナ・シラキアン
プロダクション・マネージメント:マルコ・ラドサヴリェヴィッチRadosavljevic
製作者:マイテ・アルベルディ、ロシオ・Jadue(Fabula)、フアン・デ・ディオス・ラライン(同)、パブロ・ラライン(同)、アンドレア・ウンドゥラガ(同)、(エグゼクティブ)マルセラ・サンティバネス、クリスティアン・ドノソ、他多数
データ:製作国チリ、2023年、スペイン語、ドキュメンタリー、85分、撮影期間2018年から2022年、配給権MTV Entertainment Films(パラマウント・メディア・ネットワークス部門)、公開チリ8月24日
映画祭・受賞歴:サンダンス映画祭2023ワールドシネマ(ドキュメンタリー部門)審査員大賞、ベルリン映画祭パノラマ(ドキュメンタリー部門)観客賞、サンセバスチャン映画祭ペルラス部門上映、全米審査委員会ナショナル・ボード・オブ・レビューのベスト5の1つに選ばれ、ニューヨーク映画批評家オンライン賞、フォルケ賞ラテンアメリカ映画賞など受賞、他2023年のフロリダ、マイアミ、グアダラハラ、リマ、トロント、アテネ、ヒューストン、ミネアポリス・セントポール、ダラス、ストックホルム、各映画祭にノミネートされた。1月12日発表のシネマアイ栄誉賞2024では、監督賞と記憶に残る映画賞Unforgettablesを受賞、ゴヤ賞の結果待ち。
キャスト: アウグスト・ゴンゴラ(1952~2023)、パウリナ・ウルティア(1969~)、(以下アーカイブ)グスタボ・セラティ(アルゼンチンの俳優・作曲家1959~2014)、ペドロ・レメベル(チリの脚本家1952~2015)、ハビエル・バルデム(スペインの俳優・製作者1969~)、ラウル・ルイス(チリの監督・脚本家1941~2011)他
解説:アウグスト・ゴンゴラとパウリナ・ウルティアは25年間一緒に暮らしています。8年前、アウグストがアルツハイマー病と診断されました。二人とも、彼がパウリナを認識できなる日を怖れています。アウグストはかつてピノチェト軍事独裁政権下のレジスタンス運動の記録者であり、その残虐行為を忘れないようにすることに専念しています。しかしアルツハイマー病が彼の記憶を侵食していきます。パウリナとの日常生活も蝕まれていきますが自分のアイデンティティを維持しようとしています。パウリナは二人に降りかかる困難に直面しながらも、介護と優しさとユーモアを忘れません。二人の人生の記憶と、チリという国家の記憶を監督は再構成しようとしています。
★アウグストはベルリン映画祭後の2023年5月19日に鬼籍入りしましたが、パウリナのことは最後まで認識できたということです。監督は自身がパンデミックで二人に接触できなかったときに、パウリナが撮影した少し焦点のあっていない映像も取り入れています。そのなかに重要な瞬間があるということです。個人と集団の記憶についての物語のなかで、記憶を失うということが何を意味するのか、記憶を維持するということがどうして重要なのか、そしてその喪失の悲しみなどが敬意をもって語られている。
★ドラマではジュリアン・ムーアがアカデミー賞主演女優賞を手にした『アリスのままで』(14)、アンソニー・ホプキンスが同じく主演男優賞を受賞した『ファザー』(20)など記憶に残る作品があります。しかしドクドラ、ドキュメンタリードラマは多数あっても本作のような作品は多くないように思います。信友直子監督が自身の両親を撮り続けた『ぼけますから、よろしくお願いします。』(18)、当ブログで紹介した女優カルメ・エリアスを追ったクラウディア・ピントの「Mientras seas tú, el aquí y ahora de Carme Elias」などが例に挙げられると思います。4年前にアルツハイマー病の診断を受けた女優の「今」を記録しつづけているドキュメンタリーです。本作はゴヤ賞2024ドキュメンタリー部門にノミネートされており、前者は4年後に家族が母親を看取るまでの続編が撮られています。
*「Mientras seas tú, el aquí y ahora de Carme Elias」の紹介記事は、
★話をアウグスト・ゴンゴラとパウリナ・ウルティアに戻すと、アルツハイマー病はゆっくり進行していく治療の困難な病です。二人も同じプロセスを辿るわけですが、どのように葛藤を解決しようとしたのか、自分たちの人生や愛について語りあい、それは「禍福は糾える縄のごとし」という諺に行きつくことになります。チリで8月24日に公開されるやドキュメンタリーにもかかわらず、第1週目の観客動員数が5万人を超え、興行成績は『バービー』や『オッペンハイマー』、『グランツーリスモ』などを抜いたということです。
*追加情報:『エターナル・メモリー』の邦題で劇場公開になりました。2024年8月23日
ベネズエラの新星ディエゴ・ヴィチェンティーニ*ゴヤ賞2024 ⑥ ― 2024年01月23日 17:45
ディエゴ・ヴィチェンティーニの「Simón」――イベロアメリカ映画部門
★ディエゴ・ヴィチェンティーニはカラカス生れのベネズエラの監督ですが、15歳で母国を離れてアメリカで映画製作をしているということなのか、長編デビュー作「Simón」がマラガ映画祭やサンセバスチャン映画祭(オリソンテス・ラティノス部門)にノミネートされることはありませんでした。管理人はゴヤ賞ノミネートで初めて知った次第です。本作には2018年に発表した同じタイトルの短編「Simón」(26分)という下敷きがあり、IMDbを検索したら他にかなりの数の短編を撮っているのでした。長短編とも舞台は2017年のニコラス・マドゥロ専制時代の母国ベネズエラ、自由を求める反体制派の青年シモンのトラウマと苦悩、深い罪悪感が語られます。
★フロリダ映画祭2023でプレミアされた後、ダラス映画祭観客賞、ハートランド映画祭グランプリ、7月開催のベネズエラ映画祭で作品・監督・撮影・脚本・編集・助演男優賞の6部門を制覇するなど母国でも快進撃を続けています。2013年チャベス没後、彼の腹心であったマドゥロが政権を継承しているベネズエラは、国連の発表によると、2023年推定の総人口3051万人に対して約700万人以上が難民として近隣諸国へ国外逃亡しているそうで、にわかには信じがたい数字です。本作を理解するには若干ベネズエラ現代史をひもとく必要があるのかもしれません。
「Simón」
製作:Black Hole Enterprises
監督・脚本・編集:ディエゴ・ヴィチェンティーニ
撮影:オラシオ・マルティネス
音楽:フレディ・シエインフェルド
キャスティング:Lauren Herrel
美術:オスカル・コルテス
衣装デザイン:マルコス・ドゥラン
メイクアップ:カルラ・バリオス
製作者:マルセル・ラスキン、ホルヘ・ゴンサレス、ディエゴ・ヴィチェンティーニ
データ:製作国米国・ベネズエラ、2023年、英語・スペイン語、ドラマ、99分、撮影期間は2021年のコロナ感染のパンデミックと重なったため、マイアミ他23ヵ所、28日間で撮影された。製作資金クラウドファンディング(35,756ドル)、公開ベネズエラ2023年9月7日、ウルグアイ、サンディエゴ、ペルー、メキシコ、スペインなど
映画祭・受賞歴:フロリダ映画祭2023作品賞、ダラス映画祭観客賞、ハートランド映画祭グランプリ、シャーロット映画祭観客賞、ボゴタ映画祭作品賞、カラカス批評家映画祭作品・監督賞、ベネズエラ映画祭作品・監督・撮影(オラシオ・マルティネス)・脚本・編集・助演男優賞(フランクリン・ビルグエス)、他ニューヨーク、マドリード、サンティアゴ、各映画祭上映、ゴヤ賞2024イベロアメリカ映画部門ノミネート(2月10日ガラ)
キャスト:クリスティアン・マクガフニー(シモン)、ヤナ・ナワルツキ(メリッサ)、ルイス・シルバ(ホアキン)、ロベルト・ハラミージョ(チューチョ)、フランクリン・ビルグエス(ルゴ大佐)、プラクリティ・マドゥロ(エレナ)、ペドロ・パブロ・ポラス(メインガード)、サリー・グラナー(ムーア博士)、コンラン・キシレヴィチKisilewicz(ジョーダン)、カルロス・ゲレロ(パポ)、ソフィア・リバ(クロエ)、ガブリエル・ボニージャ(薬剤師ヘルソン)、ホセ・ラモン・バレト(アントニオ)、マイク・ボランド(マテオ)、アリアンヌ・ジロン(アドリアナ)、スザンヌ・コヴィ(裁判官)、イサイリス・ロドリゲス(ラケル)、ほか多数
ストーリー:2017年カラカス、反政府運動の指導者シモンと仲間は抗議行動のさなか逮捕され拷問を受ける。ベネズエラからの逃亡を余儀なくされた彼は亡命者となりマイアミに向かう。米国入国管理局は、亡命が認められると帰国できないと告げる。シモンはトラウマと罪悪感の両方に直面し、マイアミに残って新しい生活を始めるか、母国に戻って自由の闘いのため独裁政権に立ち向かうかの決断をしなければならない。そんななかシモンは法学部の学生メリッサと出会う。マドゥロ独裁政権のベネズエラの危機のため多くの人々が経験する困難が語られる。
観てもらいたい、覚えていてもらいたい、と懇願する映画
★監督紹介:ベネズエラの現状を述べる前に、ディエゴ・ヴィチェンティーニ監督の紹介をしたい。1994年カラカス生れ、15歳で家族と米国に亡命、現在ロサンゼルス在住。ボストン・カレッジで金融学と哲学を専攻、在学中の2013年、ニューヨークで開催された4週間の映画制作ワークショップに参加、その後映画のクラスも受講した。卒業後ロサンゼルス・フィルム・スクールに入学、卒業制作に2017年のベネズエラ圧政抗議行動をテーマにした短編「Simón」を撮る。短編は予想外の反響を受け、2018年には8ヵ国で公開され、長編化を決意する。短編と長編のテーマやストーリーは重なっておりますが、キャストは主役のクリスティアン・マクガフニー以外別の俳優が演じています。
(ディエゴ・ヴィチェンティーニ)
(長編同様クリスティアン・マクガフニーが主演した短編「Simón」のポスター)
★マルセル・ラスキン監督が製作に参画してくれることになり、クラウドファンディングで資金調達を呼びかける。2019年脚本執筆開始、2021年クランクイン。撮影はコロナのパンデミックと重なったため、キャストとクルーは3日おきに検査が義務付けられ、厳しいマスク着用、セットは消毒され、シモン役のクリスティアン・マクガフニーが罹患するリスクを避けるため、混雑したマイアミのナイトクラブのシーンが変更されたり、エキストラは250人から30人に減らさるなど困難を極めた。撮影期間は28日間、異なる23ヵ所での撮影、費用が追加された。タイトルの「シモン」は、ベネズエラの解放者シモン・ボリバルに因んでいる。この抗議運動で多くの死者、負傷者、誘拐または逮捕されたのち拷問を受けた全員が「小さなシモン・ボリバルです」と監督はコメントしている。
(ヴィチェンティーニ監督とマクガフニー、ゴヤ賞ノミネート)
(撮影中の監督と撮影監督オラシオ・マルティネス、2021年)
★本作はフィクションですが語られる内容は実話がベース、最も辛く困難だったのは「マドゥロ政権が若者たちに身体だけでなく心理的にどんなことをしたか、本人たちの口から聞くことでした」。監督は母国を離れ、2017年当時はロスで映画の勉強をして自由で快適な暮らしをしていた。その後ろめたさ、罪悪感が本作製作の動機だったと語っている。「ベネズエラの現在の危機は西半球の歴史上最大の国外脱出です。私を含め710万人が母国を離れ、自由の闘いのために多くの犠牲をはらっている。しかし未だに変化を成し遂げられない。本作が少しでも貢献できることを願っています」。観てもらいたい、覚えていてもらいたい、と懇願する映画です。
★キャスト紹介:
*シモン役のクリスティアン・マクガフニーは、1989年ベネズエラ生れ、米国のTVシリーズでスタートをきる。ベネズエラやコロンビアのTVシリーズ「Yo soy Franky」(15~、78話)にも出演、2023年ジャスティン・マチューズ&ルーク・スペンサー・ロバートのコメディ「The Duel」に出演、2020年ドラマで共演したマリア・ガブリエラ・デ・ファリアと結婚している。
*ベネズエラ映画祭2023助演男優賞を受賞したフランクリン・ビルグエスは、1953年ベネズエラ生れ、監督は照明とルゴ大佐の冷酷な演技で映画を支配させ、彼を真の怪物のように描いている。メキシコ映画出演が多いが、ベネズエラやコロンビアのTVシリーズにも出演している。
*自己嫌悪と後悔の旅を揺れ動くホアキン役のルイス・シルバは子役出身、クラウディア・ピントの作品や、2015年ロレンソ・ビガスが金獅子のトロフィーを初めてラテンアメリカにもたらした『彼方から』(「Desde allá」)で、チリの名優アルフレッド・カストロと共演している。
*法学部の学生メリッサ役のヤナ・ナワルツキは、1990年ドイツのノルトライン・ベストファーレン生れの女優、ライター。米国のTVムービー、短編、TVシリーズ『ナチ・ハンター』(20~23プライムビデオ)に出演している。シモンは彼女と出会うことで一歩を踏み出す。
(メリッサとシモン、フレームから)
★亡命を求める反体制派の苦悩を描いた作品だが、シモンの人格造形には監督自身が感じている道徳的な罪悪感が投影されているようです。母国の危機に知らんぷりしていていいのか、帰国して共に闘うべきではないかという疑問に苦悩する。チャベス没後、彼の腹心であったニコラス・マドゥロが政権を継承、以来野党リーダーであるフアン・グアイとの闘いは既に10年間も続いている。フアン・グアイが暫定大統領を宣言、米国、EU諸国、近隣の中南米諸国は認めているが、多くの反米、反西側諸国、反民主主義国がマドゥロを守っている。これからも政治的迫害を理由に難民申請をする頭脳流出に歯止めはかからないでしょう。内戦で40年間も自由を束縛されたスペイン映画アカデミーのメンバーたちが、いずれの作品に1票を投じるのか、2月10日を待ちたい。
『雪山の絆』が国際長編映画賞にノミネート*第96回アカデミー賞 ― 2024年01月25日 20:39
『雪山の絆』のほか『ロボット・ドリームズ』や「La memoria infinita」も!
★1月21日、第96回アカデミー賞のノミネートが発表になりました。日本関連の映画については周知のことですから割愛しますが、フアン・アントニオ・バヨナの『雪山の絆』がノミネートされた国際長編映画賞部門には、ヴィム・ヴェンダースの『PERFECT DAYS』(公開中)やイギリスの『関心領域』、イタリアの「Io Capitano」などかなりの激戦区です。本作はメイクアップ&ヘアー賞部門にもノミネートされておりますが、先だってのゴールデングローブ賞ミュージカル部門の作品賞を受賞した『哀れなるものたち』などライバルがひしめいています。
(国際長編映画賞ノミネートの『雪山の絆』)
★パブロ・ベルヘルの『ロボット・ドリームズ』がノミネートされた長編アニメーション映画賞部門には、宮崎駿の『君たちはどう生きるか』がかぶさり、アカデミー会員の高齢化などを考慮すると、ロボットの受賞は難しいでしょうか。しかし開けてびっくり玉手箱は映画賞に限らず世の常です。
(アニメーション『ロボット・ドリームズ』)
★長編ドキュメンタリー賞部門の「La memoria infinita」(英題「The Eternal Memory」)は、チリの監督マイテ・アルベルディの5作目で、彼女は3年前の『83歳のやさしいスパイ』に続いての快挙です。ラライン兄弟の制作会社「Fabula」がプロデュースしており、そのパブロ・ラライン自身が監督したホラーコメディ『伯爵』(原題「El Conde」)の撮影を手掛けたエドワード・ラックマン(またはエド・ラッハマン)がノミネートされ、チリは沸いてます。独裁者ピノチェトが本当は吸血鬼、ドラキュラ伯爵だったという設定、独裁者は死んだのだが、吸血鬼だから実は生きているというダークなコメディ、『トニー・マネロ』が思いおこされる。ラックマンはトッド・ヘインズの『エデンより彼方へ』(02)、『キャロル』(15)に続いて3度目のノミネートですが、彼自身はアメリカ人です。
(ドキュメンタリー「La memoria infinita」のポスター)
(ネットフリックスで配信中の『伯爵』のオリジナル・ポスター)
★この撮影賞部門にはメキシコのロドリゴ・プリエトがマーティン・スコセッシの『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』でノミネートされています。ディカプリオとタッグを組んだ超大作、20世紀初期の先住民迫害という実話をベースにしているから、観たくない会員が多いかもしれない。プリエトは同監督の『アイリッシュマン』に続いて4回目のノミネートになり、そろそろオスカー像が欲しいところです。当ブログ関連のノミネートをアップしました。『伯爵』以外作品紹介をしています。ガラは3月10日(日)、日本放映は翌日午前中になります。
第11回フェロス賞2024*結果発表 ― 2024年01月30日 09:49
映画部門『ミツバチと私』とTVシリーズ部門「Mesias」が作品賞
★1月26日、第11回フェロス賞2024の授賞式がマドリードのパラシオ・デ・ビスタレグレで開催されました。総合司会者はコリア・カスティーリョとブライス・エフェの重量級コンビが務めました。映画は「20.000 especies de abejas」(邦題『ミツバチと私』)がドラマ部門の作品賞と助演女優賞の2冠、これは想定内の受賞でしたが、「Robot Dreams」(邦題『ロボット・ドリームズ』)がコメディ部門の作品賞、オリジナル音楽賞、ポスター賞の3冠を受賞、ノミネート3個を全部ゲットして、これは少し予想外でした。セリフなしのアニメーション、その魅力的な登場人物(?)や観客の心をとらえた音楽のお蔭でしょう。
(コリア・カスティーリョとブライス・エフェ)
(『ミツバチと私』のキャストとクルー)
★TVシリーズのドラマ部門は、ロス・ハビスの「La mesías」が作品・脚本・主演男優・助演男優・主演女優・助演女優賞と6冠、もらえる賞のすべてを独占しましたが、その後遺症が気になります。コメディ部門の作品賞はぺポン・モンテロの「Poquita fe」が受賞しました。
(「La mesías」のキャストとクルー)
★ビクトル・エリセの「Cerrar los ojos」(邦題『瞳をとじて』)は、ノミネーション最多の10個でしたが、結局無冠に終わりました。勿論、日本のシネマニアはフェロス賞など眼中にないから痛くも痒くもありません。イサベル・コイシェの「Un amor」(邦題『ひとつの愛』)も7個ノミネーションで無冠、オスカー賞ノミネートに踏みとどまった「La sociedad de la nieve」(邦題『雪山の絆』)のフアン・アントニオ・バヨナが監督賞、他にハリー・イートンが予告編賞を受賞しました。受賞者欠席で共演者のサンティアゴ・バカとアルフォンシナ・カロシオが代理で受けとりました。このアルゼンチン出身の若い二人は昨年のシッチェス映画祭にも監督と参加していましたから次回作に起用するのかもしれません。既に世界の100,000,000人以上が観たということですから3月10日のオスカー賞が待たれます。脚本賞は「Upon Entry (La llegada)」の監督と脚本を手掛けたアレハンドロ・ロハスとフアン・セバスティアン・バスケスの手に渡りました。
★演技部門では、管理人の予想が的中して主演女優賞に「Que nadie duerma」のマレナ・アルテリオ、主演男優賞に「Saben aquell」のダビ・ベルダゲルが受賞、助演部門では「Te estoy amando locamente」のラ・ダニ、「20.000 especies de abejas」のパトリシア・ロペス・アルナイスが受賞、彼女はゴヤ賞では主演にノミネートされています。本作の主役はベルリン映画祭2023の銀熊主演賞を受賞した当時9歳のソフィア・オテロですが、スペインでは子役はノミネートから外されることが多く、これは賢明な判断だと思います。ラ・ダニは出演映画もノーチェックでしたが、ゴヤ賞は新人男優賞にノミネートされています。
★過去のフェロス栄誉賞受賞者は、ホセ・サクリスタン、チチョ・イバニェス・セラドール、昨年はペドロ・アルモドバルが受賞して会場を盛り上げました。今年は女優でTV 司会者のモニカ・ランダル(ランドールとも表記)が受賞しました。受賞者は御年81歳、「昨年はペドロ・アルモドバル、今年は私が受賞しました。同じではありません、私たちの美は異なっていますから」とユーモアたっぷりのスピーチをしました。1963年デビュー、銀幕からは引退していましたが、ダビ・ベルダゲルが主演男優賞を受賞したトゥルエバの「Saben aquell」に本人役で出演しています。TV司会者、舞台は現役です。マカロニウエスタン全盛期には多くの作品で活躍した女優です。
第11回フェロス賞2024結果発表(*は紹介作品)
◎作品賞(ドラマ)
「Un amor」(邦題『ひとつの愛』) 同イサベル・コイシェ *
「Cerrar los ojos」(邦題『瞳をとじて』) 同ビクトル・エリセ *
「La sociedad de la nieve」(邦題『雪山の絆』) 同J. A. バヨナ *
「Upon Entry (La llegada)」 同アレハンドロ・ロハス&
フアン・セバスティアン・バスケス *
「20.000 especies de abejas」(邦題『ミツバチと私』)
製作ララ・イサギーレ、バレリー・デルピエール
監督エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン
(受賞スピーチをするララ・イサギーレ)
(真夜中の12時過ぎなのにソフィアも登壇、左が監督)
◎作品賞(コメディ)
「Bajo terapia」 監督ヘラルド・エレーロ *
「Las chicas están bien」 同イチャソ・アラナ
「Mamacruz」 同パトリシア・オルテガ
「Te estoy amando locamente」 同アレハンドロ・マリン
「Robot Dreams」(アニメーション、邦題『ロボット・ドリームズ』)
製作アンヘル・ドゥランデス、イボン・コルメンサナ、イグナシ・エスタペ、
サンドラ・タピア 監督パブロ・ベルヘル
(ベルヘル監督も製作に参加、右隣が音楽エディターのユウコ夫人)
◎監督賞
イサベル・コイシェ 「Un amor」
ビクトル・エリセ 「Cerrar los ojos」
エレナ・マルティン・ヒメノ 「Creatura」 *
エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン 「20.000 especies de abejas」
J. A. バヨナ 「La sociedad de la nieve」
◎主演女優賞
ライア・コスタ 「Un amor」
キティ・マンベール「Mamacruz」
マリア・バスケス 「Matria」 監督アルバロ・ガゴ
カロリナ・ジュステ 「Saben aquell」 同ダビ・トゥルエバ *
マレナ・アルテリオ 「Que nadie duerma」 監督アントニオ・メンデス・エスパルサ *
◎主演男優賞
アルベルト・アンマン 「Upon Entry (La llegada)」
エンリク・アウケル 「El maestro que prometió el mar」 監督パトリシア・フォント
ホヴィク・ケウチケリアン 「Cerrar los ojos」
マノロ・ソロ 「Cerrar los ojos」
ダビ・ベルダゲル 「Saben aquell」 監督ダビ・トゥルエバ
(受賞者欠席のためダビ・トゥルエバ監督がトロフィーを受けとった)
(ダビ・トゥルエバ監督と主演者のカロリナ・ジュステ)
◎助演女優賞
アネ・ガバライン 「20.000 especies de abejas」
ルイサ・ガバサ 「El maestro que prometió el mar」
アイタナ・サンチェス≂ヒホン 「Que nadie duerma」
アナ・トレント 「Cerrar los ojos」
パトリシア・ロペス・アルナイス 「20.000 especies de abejas」
(昨年のTVシリーズ『インティミダ』助演女優賞に続いての受賞)
◎助演男優賞
ルイス・ベルメホ 「Un amor」
ホセ・コロナド 「Cerrar los ojos」
オリオル・プラ 「Creatura」
ウーゴ・シルバ 「Un amor」
ラ・ダニ 「Te estoy amando locamente」 監督アレハンドロ・マリン
(登壇から退場するまでエモーショナルなスピーチをした受賞者)
◎脚本賞DANA
エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン 「20.000 especies de abejas」
イサベル・コイシェ、ラウラ・フェレロ 「Un amor」
ビクトル・エリセ 「Cerrar los ojos」
エレナ・マルティン・ヒメノ 「Creatura」
フアン・セバスティアン・バスケス、アレハンドロ・ロハス 「La llegada」
(黄色の帽子がフアン・セバスティアン・バスケス、アレハンドロ・ロハス)
◎オリジナル音楽賞
フェデリコ・フシド 「Cerrar los ojos」
セルティア・モンテス 「Que nadie duerma」
マイケル・ジアッキーノ 「La sociedad de la nieve」
ニコ・カサル 「Te estoy amando locamente」
アルフォンソ・デ・ビラリョンガ 「Robot Dreams」
(観客の心をふるわせた作曲家アルフォンソ・デ・ビラリョンガ)
◎ポスター賞
「20.000 especies de abejas」
「Cerrar los ojos」
「O corno」(監督ハイオネ・カンボルダ)*
「Hermana Muerte」(『ブラックサン』監督パコ・プラサ)
「Robot Dreams」 ホセ・ルイス・アグレダ
(イラストレーター、ホセ・ルイス・アグレダ)
◎予告編賞
「20.000 especies de abejas」
「Cerrar los ojos」
「Saben aquell」
「Te estoy amando locamente」
ハリー・イートン 「La sociedad de la nieve」
(受賞者欠席のため共演者サンティアゴ・バカとアルフォンシナ・カロシオが受けとった)
(左から、サンティアゴ・バカ、バヨナ監督、アルフォンシナ・カロシオ)
◎TVシリーズ作品賞(ドラマ)
「El cuerpo en llamamas」(Netflix)
「El hijo zurdo」(Movistar Plus+)
「Rapa 2」(Movistar Plus+)
「Selftape」(Filmin)
「La mesías」(Movistar Plus+)製作ドミンゴ・コラル、フラン・アラウホ、
スサナ・エレラス、ハビエル・カルボ、ハビエル・アンブロッシ
(6冠制覇の受賞者たち)
◎TVシリーズ作品賞(コメディ)
「Citas Barcelona」(TV3, Amazon Prime Video)
「Esto no es Suecia」(RTVE Play y 3Cat)
「El otro lado」(Movistar Plus+)
「Poquita fe」(Movistar Plus+)
製作フラン・アラウホ、イグナシオ・コラレス、ペペ・リポル
監督(クリエイター)ぺポン・モンテロ、フアン・マイダガン
(右側がぺポン・モンテロ監督)
◎TVシリーズ主演女優賞
ウルスラ・コルベロ 「El cuerpo en llamamas」
マカレナ・ガルシア 「La mesías」
エスペランサ・ペドレーニョ 「Poquita fe」
アナ・ルハス 「La mesías」
ロラ・ドゥエニャス 「La mesías」
◎TVシリーズ主演男優賞
ハビエル・カマラ 「Rapa 2」
ラウル・シマス 「Poquita fe」
パトリック・クリアド 「Las noches de Tefía」(Atresplayer)
キム・グティエレス 「El cuerpo en llamamas」
ロジェール・カザマジョール 「La mesías」(欠席)
◎TVシリーズ助演女優賞
アマイア・ロメロ 「La mesías」
タマラ・カセリャス 「El hijo zurdo」
フリア・デ・カストロ 「Poquita fe」
カルメン・マチ 「La mesías」
イレネ・バルメス 「La mesías」
◎TVシリーズ助演男優賞
アンドレウ・ブエナフエンテ 「El otro lado」
チャニ・マルティン 「Poquita fe」
ビエル・ロッセル・ペルフォート 「La mesías」
ホセ・マヌエル・ポガ 「El cuerpo en llamamas」
アルベルト・プラ 「La mesías」
(受賞者欠席のため共演者4人がトロフィーを受けとった)
◎TVシリーズ脚本賞
ラウラ・サルミエント、エドゥアルド・ソラ、カルロス・ロペス、
ホセ・ルイス・マルティン 「El cuerpo en llamamas」
ラファエル・コボス 「El hijo zurdo」
ベルト・ロメロ、ラファエル・バルセロ、エンリク・パルド 「El otro lado」
ペポン・モンテロ、フアン・マイダガン 「Poquita fe」
ハビエル・アンブロッシ、ハビエル・カルボ、ナチョ・ビガロンド、
カルメン・ヒメネス 「La mesías」
(左から、カルメン・ヒメネス、ハビエル・カルボ、ハビエル・アンブロッシ)
◎フェロス感動賞(フィクション)
「Sobre todo de noche」 監督ビクトル・イリアルテ、製作バレリー・デルピエール他
(受賞者ビクトル・イリアルテ、製作者のバレリー・デルピエール)
◎フェロス感動賞(ノンフィクション)
「La Singla」 製作ナジャ・スミス、パオラ・サインス・デ・バランダ
監督パロマ・サパタ
*難聴のフラメンコダンサー、アントニア・シングラのドキュメンタリー
(受賞スピーチするパロマ・サパタと製作者たち)
◎フェロス栄誉賞
モニカ・ランダル(女優、テレビ司会者)1942年バルセロナ生れ。マラガ映画祭2018のビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞を受賞した折にキャリア&フィルモグラフィーの紹介をしています。
*キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2018年03月30日
★フェロス賞はスペイン映画ジャーナリスト協会AICEが主催する映画賞、マリア・ゲーラ会長の挨拶スピーチには、カルロス・ベルムトによる3人の女性へのセクハラ告発の問題も含まれていた。これに対してAICEは全面的に被害者を支援するとの表明があった。この件については詳細が分かりませんので後にアップするとして今回は触れません。3時間にも及ぶお祭り気分も吹き飛んでしまいます。
(性被害を告発するマリア・ゲーラAICE会長)
(煌びやかなベストドレッサーたち)
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