メイド・イン・スペイン部門19作*サンセバスチャン映画祭2023 ⑭ ― 2023年09月11日 17:53
ワールドプレミアが5作、クラウディア・ピントのドキュメンタリー
★8月29日、今年1年の話題作が一挙に鑑賞できるのが「メイド・イン・スペイン」(MS)です。マラガ映画祭ノミネート、または受賞作などで当ブログでご紹介済みの作品が目につくのもこのセクションです。今年は19作、うち5作がワールドプレミアです。新型コロナ以前のラテンビート映画祭(LBFF)の上映作品の多くが、このセクションから選ばれていました。
★マラガ映画祭関連では、ヘラルド・エレーロの「Bajo terapia / Under Therapy」(審査員特別賞受賞)、フアン・ゴンサレス&フェルナンド・マルティネスの「El fantástico caso del Golem / The Fantastic Golem Affairs」(95分)、エレナ・トラぺの「Els encantats / Los encantados」(カタルーニャ語、108分、脚本賞受賞)、アルバロ・ガゴの「Matria」(99分、マリア・バスケスが女優賞受賞)、カルラ・スビラナの「Sica」、アレハンドロ・ロハス&フアン・セバスティアン・バスケスの「Upon Entry / La llegada」(74分、アルベルト・アンマンが銀のビスナガ男優賞受賞)、エレナ・マルティン・ヒメノの「Creatura」は、カンヌ映画祭と併催の「監督週間」にノミネートされ、最優秀ヨーロッパ映画賞を受賞しています。各作品紹介と監督キャリアなど長短ありますが既にアップしております。
(アルベルト・アンマンが男優賞を受賞した「Upon Entry / La llegada」ポスター)
クラウディア・ピント監督と女優カルメ・エリアスの共同作品
★ワールドプレミア5作のうち、ぜひご紹介したかったのが、クラウディア・ピント・エンペラドールのドキュメンタリー「Mientras seas tú / While You’re Still You」(仮題「あなたが未だあなたでいるうちに」)です。監督は1977年ベネズエラのカラカス生れですが、スペインで映画製作をしている、いわゆる才能流出組の一人です。アルツハイマー病の診断を受けた後の女優カルメ・エリアスの「ここ、今」を4年前から追っているドキュメンタリー。カルメ・エリアス(バルセロナ1951)と言えば、ハビエル・フェセルの『カミーノ』の頑迷なオプス・デイ信者の母親役(ゴヤ賞2009主演女優賞受賞)が有名ですが、クラウディア・ピントのデビュー作「La distancia más larga」(13)のヒロインだったことも記憶に残っています。数多の国際映画祭を駆け巡り、二人に大きな賞を多数もたらした作品でもありました。
(クラウディア・ピントの新作「Mientras seas tú / While You’re Still You」)
★他にピントの第2作「Las consecuencias」は、マラガ映画祭2021の批評家審査員特別賞受賞作ですが、主役フアナ・アコスタの母親役で出演しています。2021年というのはカルメがガウディ栄誉賞を受賞した年でもあり、当時はまったく知りませんでしたが、既にアルツハイマー病の診断を受けていたことになり、本当に驚きを隠せません。
(カルメ・エリアス、第13回ガウディ栄誉賞2021の授賞式から)
★「Mientras seas tú / While You’re Still You」は、クラウディア・ピントとカルメ・エリアス、二人の親密な共同作品として、アルツハイマー病の診断の無気力と闘う方法として4年前に始まりました。寛大で勇気があり、活力に富んだ証言である。アルツハイマー病についての教育を意図しておらず、良心の喪失に圧倒的な明快さで直面する女優の旅に同行することを目的としている。「私の最後の意識的な旅」とカルメ。進行中のユニークな作品であるため、サンセバスチャン映画祭で見られる作品と、いずれ公開される作品とは同じものではないということです。カルメが追求する「ここ、今」は、愛と友情、映画と演技を前提としており、不確実性への創造的な旅、ネットのない空虚への飛躍です。
★舞台演出家フアン・カルロス・コラッサが最後のリハーサルに同行する。女優を手放すことを拒否する映画監督クラウディア・ピント、自身の痕跡を残すことを熱望する女優。ピントは「映画のメイキングは映画の一部であり、カルメ同様、私たちも絶対的な現在に生きています。創造的なプロセスでの疑問、適切な判断、または誤りを節度を超えて共有しています」と語っている。現在を生きるための説得力のある招待となっている。
(ゴヤの胸像を手に、ゴヤ賞2009主演女優賞のガラにて)
★また監督は、「今まで作ったなかで最も難しい映画です。今回はフィクションという逃げ場がありません。カルメはキャラクターを演じているわけではありません。私たちを現実から切り離すアクッションもカットもありません」と製作の困難さを語っている。予告編を鑑賞できますが、これがドラマだったらと思わずにいられません、少し辛いですね。ジュリアン・ムーアにアカデミー主演女優賞以下、数えきれないほどのトロフィーをもたらした『アリスのままで』(14)に、いま思いを馳せています。
(クラウディア・ピント監督、マラガ映画祭2021)
*カルメ・エリアスの第13回ガウディ栄誉賞受賞の記事、キャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2021年03月29日
*クラウディア・ピントの「Las consecuencias」の作品紹介、監督キャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2021年07月01日
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