アルモドバルの英語映画第2弾「Strange Way of Life」*カンヌ映画祭2023 ― 2023年05月04日 15:53
ルシア・ベルリンの短編『掃除婦のための手引き書』の映画化を断念
(ペドロ・パスカルとイーサン・ホーク主演「Strange Way of Life」ポスター)
★ペドロ・アルモドバル英語映画2作目となる「Strange Way of Life」は、ネオウエスタン、ファッションブランドのサンローランが製作に参加するなど話題に事欠かない。長編新作はケイト・ブランシェット主演が予定されていたルシア・ベルリンの短編『掃除婦のための手引き書』の映画化のはずでしたが、どうやら本作を断念したようです。2022年に新設されたゴヤ賞国際ゴヤの第1回受賞者に選ばれたブランシェットのプレゼンターはアルモドバルでしたから、当時は少なくともまだ良好な関係だったのでしょうか。死後十年を経て「再発見」された作家の小説の映画化が立ち消えになったのは、個人的には非常に残念です。さて本題の「Strange Way of Life」は、主役二人を除いてスペインの若いガラン俳優たち、製作も『ペイン・アンド・グローリー』や『パラレル・マザーズ』の常連が手掛けており、どんなウエスタンに仕上がっているのでしょうか。
「Strange Way of Life / Extraña forma de vida」2023
製作:El Deseo / Saint Laurent /
監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
撮影:ホセ・ルイス・アルカイネ
音楽:アルベルト・イグレシアス
編集:テレサ・フォント
プロダクション・デザイン:アンチョン・ゴメス
美術:マリア・クララ・ノタリ
セット・デコレーション:ビセンテ・ディアス
衣装デザイン:アンソニー・ヴァカレロ
メイクアップ&ヘアー:アナ・ロサノ(メイク)、ノエ・モンテス(ヘアー)
製作者:アグスティン・アルモドバル、エステル・ガルシア、アンソニー・ヴァカレロ
データ:製作国スペイン、2023年、英語、短編30分、ウエスタン、撮影:アルメリア県タベルナス、配給ソニーピクチャーズ・クラシックス、公開スペイン5月26日
映画祭・受賞歴:第76回カンヌ映画祭コンペティション外(特別上映)正式出品。
キャスト:ペドロ・パスカル(シルバ)、イーサン・ホーク(ジェイク保安官)、マヌ・リオス、ジェイソン・フェルナンデス(青年ジェイク)、ジョゼ・コンデッサ(青年シルバ)、ペドロ・カサブランク、ダニエル・リベド(保安官代理)、サラ・サラモ、エレニス・ローハン(クララ)、ジョージ・ステイン、ヴァシレイオス・パパテオカリス、他
ストーリー:ビタークリークから彼を遠ざける砂漠を馬に乗って横断する男シルバの物語、彼はジェイク保安官を訪ねてやって来た。25年前、保安官と牧場労働者のシルバの二人は、金で雇われたガンマンとして一緒に働いていた。シルバは青年時代の友との再会を口実にやってきた。実際、彼らは再会を喜びあうのだが、翌朝、ジェイク保安官は彼の旅の動機が昔の友情の思い出ではないとシルバに告げる。男性二人のラブストーリー。
(シルバとジェイク保安官)
アマリア・ロドリゲスの有名なファドが暗示するもの
★かつてセルジオ・レオーネがクリント・イーストウッドとタッグを組んだマカロニ・ウエスタン「ドル箱三部作」(『荒野の用心棒』64、『夕陽のガンマン』65、『続・夕陽のガンマン』66)の撮影用に建てられた町でクランクインした。スペイン南部アンダルシア地方のアルメリア県タベルナスのウエスタン村テキサス・ハリウッド、北にはシエラネバダ山脈がそびえ、南は地中海を臨む風光明媚なガタ岬、ヨーロッパ唯一の砂漠といわれるタベルナス砂漠がある。2002年にはイーストウッドをカメオ出演させたアレックス・デ・ラ・イグレシアの『800発の銃弾』(02)もここで撮影されている。かつてのアルメリア地方は格安マカロニ・ウエスタンの聖地であった。ウエスタンではないが、ガタ岬で撮影されたのがダビ・マルティン・デ・ロス・サントスの『マリアの旅』(20)である。
(撮影中のアルモドバル、2022年)
★本作のタイトルは、ポルトガルのファドの女王アマリア・ロドリゲス(リスボン1920~99)の有名なクラシック・ファド「Estranha forma de vida」(奇妙な生き方)から採られており、「あなた自身の欲望に背を向けて生きるものほど奇妙な存在はない」ことを示唆している。サンローランのアンソニー・ヴァカレロが製作だけでなく衣装デザインを兼ねている。撮影監督ホセ・ルイス・アルカイネは、『ペイン・アンド・グローリー』、『ボルベール〈帰郷〉』、『私が、生きる肌』などで監督お気に入り、ゴヤ胸像のコレクターと言われる音楽監督アルベルト・イグレシアスは、『私の秘密の花』(95)以来『パラレル・マザーズ』まで12作に参加している常連です。
★フィルム編集のテレサ・フォントとセット・デコレーションのビセンテ・ディアスは、共に『ペイン・アンド・グローリー』、『ヒューマン・ボイス』、『パラレル・マザーズ』を手掛けている。プロダクション・デザインのアンチョン・ゴメスは、バスク出身のベテランのアートディレクター、1997年の『ライブ・フレッシュ』から『パラレル・マザーズ』まで10作ほど手掛けている。ブエノスアイレス出身のアートディレクターマリア・クララ・ノタリは、2009年の『抱擁のかけら』からで『ペイン・アンド・グローリー』、『ヒューマン・ボイス』、本作が4作目だが、公開されたものではアルゼンチン映画でダミアン・シフロンのヒット作『人生スイッチ』や、アスガー・ファルハディの『誰もがそれを知っている』などがある。
★キャスト陣では、シルバ役のペドロ・パスカル(サンティアゴ1975)はチリ出身、TVシリーズ『ナルコス』(2019~23 Netflix)のDEA麻薬取締局の捜査官ハビエル・ペーニャ役で認知度は高い。実在する捜査官だがお化粧直しが多くて本人イコールとは言えない。1973年、もう一つの「9.11」と称されるピノチェト将軍率いるチリ・クーデタによりアジェンデ政権は崩壊した。アジェンデ支持派だった両親はペドロを連れてデンマークに亡命、後アメリカに渡りカリフォルニア、テキサスで育った。国籍はチリと米国、母語はスペイン語、ほかは英語である。オレンジ・カウンティ芸術学校、ニューヨーク大学ティッシュ芸術学校で学び、ニューヨーク在住。出演作はテレビ、短編を含めると60作以上、代表作は『ナルコス』以外では、『ワンダーウーマン』(11)、『ワンダーウーマン1984』(20)、『トリプル・フロンティア』(19)、TVシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』(14)、『ザ・マンダロリアン』(2019~23)、ホラーSFアドベンチャー「The Last of Us」(23)では主役を演じている。
(シルバ役のペドロ・パスカル、フレームから)
★イーサン・ホーク(オースティン1970)は、俳優、作家、脚本家、監督。1985年『エクスプロラーズ』でデビューしたが、学業に戻ってカーネギー・メロン大学で演技を学び、その後ニューヨーク大学でも学んだが、いずれも演技と両立せず中退している。ピーター・ウィアーの『いまを生きる』(89)で復帰、リチャード・リンクレイターの連作『恋人までの距離』(95)、『ビフォア・サンセット』(04)、『ビフォア・ミッドナイト』(13)に出演、2作目と3作目では脚本を監督と共演のジュリー・デルピーの3人で執筆、アカデミー脚色賞にノミネートされている。俳優としてはアカデミー賞は受賞していないが、『トレーニングデイ』(01)で助演男優賞に初ノミネート、2014年の『6才のボクが、大人になるまで』でもノミネートされた。アメナバルのサイコ・スリラー『リグレッション』(15)の刑事役、黒澤明の『七人の侍』をもとにした『荒野の七人』(60)のリメイク版『マグニフィセント・セブン』(16)では南北戦争で心に傷を負ったガンマン役で出演している。
★カトリーヌ・ドヌーヴが主演した是枝監督の『真実』(19)では、ジュリエット・ビノシュと夫婦役を演じ、ガルシア・マルケスの息ロドリゴ・ガルシアの『レイモンド&レイ』(22)では、ユアン・マクレガーと異母兄弟になった。マリベル・ベルドゥが共演している。2023年12月にNetflix 配信が決定しているサイコスリラー「Leave the World Behind」(リーブ・ザ・ワールド・ビハインド)に主演している。オスカー像を持っていなくても、サンセバスチャン映画祭2016ドノスティア栄誉賞を受賞しており、スペインでは知名度のあるハリウッドスターです。
*『リグレッション』の紹介記事は、コチラ⇒2015年01月03日
*ドノスティア栄誉賞&『マグニフィセント・セブン』紹介は、コチラ⇒2016年09月12日
(ジェイク保安官役のイーサン・ホーク)
★TVシリーズでお馴染みになっている若いガラン俳優が束になって出演する。大体90年代生れで子役出身が多い。マヌ・リオス(シウダレアル1998)は、俳優、歌手、モデル、9歳でデビュー、ピアノとギターが弾ける。『エリート』のパトリック役で知られているが、ミュージカルの舞台にも立っている。セクシュアリティーについては公にしていない。サンローラン、プラダ、ディオール、バレンシアガなどのモデルとして数多くの雑誌をカバーしている。米国ビバリーヒルズに本拠をおくタレント・エージェンシーWMEと正式に契約した。次回作はアイトル・ガビロンドのTVミニシリーズの犯罪ミステリー「El silencio」(8話)に出演している優良株、Netflixで配信されるようです。
(左端がマヌ・リオス)
★ジェイク保安官の青年時代を演じるジェイソン・フェルナンデスは、SFスリラー『エデンへようこそ』(22、16話)出演のほか、19世紀初頭のアンダルシアを舞台にしたエンリケ・ウルビスの「Libertad」(21)に女盗賊ラ・ジャネラの息子役で出演しており、今年公開予定のダビ・ガラン・ガリンドのコメディ「Matusalén」(仮訳「メトセラ 長寿の人」)にも主演する。共演者にアントニオ・レシーネス、ホルヘ・サンス、カルロス・アレセス、ロベルト・アラモとなんとも豪華版過ぎる。ダニエル・リベトはリュイス・ダネスの「La vampira de Barcelona」(20)他、ホラー映画に出ている。ジョゼ・コンデッサ(リスボン1997)はポルトガルの俳優、数多くのTVシリーズに出演、セルジオ・グラシアノの「O Som Que Desce na Terra」(21、仮訳「大地に降りそそぐ音」)でポルトガル映画アカデミーのソフィア男優賞ノミネート、同 Nico賞とCinEuphoria賞ほかを受賞している。4人とも今後の活躍が期待される。
*「Libertad」の作品紹介は、コチラ⇒2021年04月06日
(ダニエル・リベトとペドロ・パスカル)
追加情報:邦題『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』で東京国際映画祭2023で上映、その後劇場公開された。
「ある視点」にロドリゴ・モレノの犯罪コメディ*カンヌ映画祭2023 ― 2023年05月11日 15:09
アルゼンチンから自由と冒険を求める犯罪コメディ「Los delincuentes」
★「ある視点」部門にはスペインはノミネートなし、アルゼンチン、チリなどラテンアメリカ諸国が気を吐いている。アルゼンチンのニューシネマの一人ロドリゴ・モレノの長編4作目「Los delincuentes」(アルゼンチン、ブラジル、ルクセンブルク、チリ)は、ブエノスアイレスに支店をおく銀行の従業員2人が勤務先で強盗を計画するというコメディ仕立ての犯罪もの、彼らの運命は如何に。モレノ監督はドキュメンタリーや共同監督作品を含めると10作近くなる。なかで単独監督デビュー作の「El custodio」は、ベルリン映画祭2006でアルフレッド・バウアー賞を受賞、サンセバスチャン映画祭、マイアミ、グアダラハラ、ハバナなど国際映画祭の受賞歴は30以上に上りました。フィルモグラフィー紹介は後述するとして、新作のデータ紹介から始めます。
「Los delincuentes」(英題「The Delinquents」)
製作:(アルゼンチン)Wanka Cine / Rizona Films / Jaque Producciones / Compañia Amateur /(ブラジル)Sancho &Punta /(ルクセンブルク)Les Films Fauves /(チリ)Jirafa films 協賛INCAA
監督・脚本:ロドリゴ・モレノ
撮影:イネス・ドゥアカステージャ、アレホ・マグリオ
編集:カレン・アケルマン、ニコラス・ゴールドバート、ロドリゴ・モレノ
プロダクション・デザイン・美術:ゴンサロ・デルガド、ラウラ・カリギウリCaligiuri
衣装デザイン:フローラ・カリギウリ
音響:ロベルト・エスピノサ
製作者:エセキエル・ボロヴィンスキー(エグゼクティブ)、エセキエル・カパルド(プロダクション・マネジャー)、レナタ・ファルチェト(ヘッド)、フロレンシア・ゴルバクスGorbacz、Eugenia Molina、マティアス・リベラ・バシレ(アシスタント)、(以下ルクセンブルク)Jean-Michel Huet、Yahia Sekkil、Manon Santarelli、Alexis Schmitz
データ:製作国アルゼンチン、ブラジル、ルクセンブルク、チリ、2023年、スペイン語、コメディ、90分、撮影地ブエノスアイレス、コルドバの山地、期間2022年3月末~6月、配給マグノリア・ピクチャーズ・インターナショナル
映画祭・受賞歴:カンヌ映画祭2023「ある視点」正式出品、シドニー映画祭(6月)
キャスト:エステバン・ビリャルディ(ロマン)、ハビエル・ソロ(モラン)、マルガリータ・モルフィノ(モランの恋人ノルマ)、ダニエル・エリアス、セシリア・ライネロ(モルナ)、ヘルマン・デ・シルバ、ラウラ・パレデス、ガブリエラ・サイドン(ロマンの妻フロール)、セルヒオ・エルナンデス、他
ストーリー:ロマンとモランは、ブエノスアイレスに小規模な支店をおく銀行の従業員です。二人は自由と冒険を探しています。モランは日ごとに彼らを灰色の人生に陥れるルーチンを振りはらうというそれだけの意図で、同僚と共謀して大胆な計画を実行することにします。彼らが定年まで稼ぐ給料に相当する金額を銀行から前もって頂くことにしました。どういうわけか彼の強盗計画は成功し、自分の運命を同僚ロマンの運命に委ねます。まず全額を彼に預け、その後土地を探すつもりでコルドバに逃れます。旅先で出会った女性ノルマに無分別にも夢中になります。彼女は姉と山地の分譲地販売をしている彼氏と同居している。数日間一緒に過ごし、必ず戻ってくるが、3年間待ってくれと頼みこむ。ノルマにはすべてが馬鹿げているとしか思えない。一方ロマンは銀行で働きつづけていますが、折悪しくお金の不足についての内部調査が始まりました。非常に多額のお金を隠しているロマンは恐怖に襲われます。同僚たちだけでなく妻フローラにも隠さねばなりません。計画を変更したらいいのでしょうか・・・
(混乱する銀行支店、左から3人目ヘルマン・デ・シルバ)
★モレノ監督によると「モランは犯罪を犯して代価を支払うとしても、解放感を得るために危険な計画を考案する。共犯者のロマンも働かずに義務から解放され自由のなかでより良い生活、つまり都会、仕事、家族から離れ、海とか山とかレジャーが楽しめる田舎暮らしを誰にも依存せずに送りたい。しかし夢を達成するには、どうやって生計を立てるかという実存的な障害が立ちはだかる」。じゃあ目標を追求するにはどうしますか、というお話です。モランの計画は刑務所暮らしも想定内なのです。
★監督紹介:ロドリゴ・モレノ、1972年ブエノスアイレス生れ、監督、脚本家、製作者、ブエノスアイレスのシネ大学の監督プログラムを卒業、独創的なストーリーテリングを目指すアルゼンチンの若い世代のグループの一人です。1993年短編「Nosotros」(8分)で監督デビュー、ビルバオ・ドキュメンタリー短編映画祭で作品賞を受賞する。2012年制作会社「Compañia Amateur」を設立し、「Reimon」以降を製作している。脚本を執筆したルシア・メンドサの「Diarios de Mendoza」、コロンビアのフアン・セバスティアン・ケブラダの「Días extraños」を製作している。フアン・ビジェガスとMoVi cineを共有している。主なフィルモグラフィーは以下の通り:
1993年「Nosotros」短編(8分)、監督、脚本
1998年「Mala época」監督、脚本、マリアノ・デ・ロサ、ほか4名の共同作品
(マル・デル・プラタ、トリノ、シカゴ、サンセバスチャン、他)
2002年「El descanso」監督、脚本、ウリセス・ロセル、アンドレス・タンボルニーノ、
3名の共同作品(Bafici*、ロンドン、ベネチア、トゥールーズ)
2006年「El custodio」単独長編デビュー作、監督、脚本
(ベルリン、サンセバスチャン、マイアミ、ニューヨーク、グアダラハラ、ハバナ)
2007年「La señal」TV Movie、監督、脚本
2011年「Un mundo misterioso」第2作、監督、脚本
(ベルリン、トロント、サンパウロ、Bafici)
2014年「Reimon」第3作、監督、脚本、製作、72分
(ロッテルダム、ハンブルク、Bafici、サンパウロ、バルでビア)
2017年「Una ciudad de provincia」ドキュメンタリー、監督、脚本、製作、88分、IBAFF
(ロッテルダム、ビエンナーレ、Bafici)
2018年「Our Nighttime Story」ドキュメンタリー、監督、フアン・ビジェガス、
ほか3名の共同作品
2023年「Los delincuentes」第4作、監督、脚本
2014年、ルシア・メンドサの「Diarios de Mendoza」(55分)脚本、製作
2015年、フアン・セバスティアン・ケブラダの「Días extraños」(70分)脚本、製作
*Baficiは、1999年設立されたブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭
(ロドリゴ・モレノ)
★上述したように1993年に短編「Nosotros」でスタートした。オムニバス長編「Mala época」は、4名の共同作品ですが、マル・デル・プラタ映画祭1998で、若い映画製作者の視点で現代を切り取ったことが評価されてFIPRESCI賞とスペシャルメンションを受賞、その他トゥールーズ・ラテンアメリカ映画祭1999で観客賞を受賞、ノミネート多数。共同監督作品「El descanso」は、リェイダ・ラテンアメリカFFでICCI脚本賞を受賞した。
★ベルリン映画祭でアルフレッド・バウアー賞を受賞して国際的な評価を受けたのは、単独で監督したデビュー作「El custodio」だが、本作は前年のサンダンスFFに出品されラテンアメリカ部門のNHK賞を受賞している。その他ボゴタFFで作品賞、監督賞、サンセバスチャンFFホライズンズ・ラティノ部門でスペシャルメンションを受賞している。
(アルフレッド・バウアー賞のトロフィーを披露する監督)
★5月10日「ある視点」の審査団が発表になりました。審査委員長は俳優、コメディアンのジョン・C・ライリー、ほか俳優パウラ・ベーア、俳優エミリー・ドゥケンヌ、監督デイヴィー・チョウ、監督アリス・ウィノクールの5名です。
追加情報:邦題『ロス・デリンクエンテス』で2024年3月公開されました。
フェリペ・ガルベスのデビュー作が「ある視点」に*カンヌ映画祭2023 ― 2023年05月15日 11:36
「ある視点」にフェリペ・ガルベスのデビュー作「Los colonos」がノミネート
★チリのフェリペ・ガルベスのデビュー作「Los colonos」が「ある視点」に正式出品、チリ、アルゼンチン、オランダ、フランス、デンマークなど8ヵ国との合作、ガルベス監督は1983年チリのサンティアゴ生れ、監督、脚本家、フィルム編集者。「ある視点」ノミネートは2011年のクリスティアン・ヒメネスの「Bonsai」以来12年ぶりです。本作は東京国際映画祭2011ワールド・シネマ部門で『Bonsai~盆栽』としてアジアン・プレミアされた。「Los colonos」の舞台は20世紀初頭のチリ南端ティエラ・デル・フエゴ島、先住民族セルクナム(またはオナス)のジェノサイドをテーマにした歴史物、彼らがチリの正史から消されてきた過程を探求している。
「Los colonos / Les colons / The Settlers」(仮題「入植者たち」)
製作:Quijote Films(チリ)、Rei Cine(アルゼンチン)、Quiddity Films(英)、Volos Films(台湾)、共同製作:Cine Sud Promotion(仏)、Snowglobe(デンマーク)、Film I Vast(スウェーデン)、Sutor Kolonko(独)
監督:フェリペ・ガルベス
脚本:フェリペ・ガルベス、アントニア・ヒラルディ
音楽:Harry Allouche
撮影:Simone D’Arcangelo
編集:Mattieu Taponier
プロダクション・デザイン:セバスティアン・オルガンビデ
衣装デザイン:ナタリア・アラヨン、ムリエル・パラ
メイクアップ&ヘアー:ダミアン・ブリッシオ
製作者:ジャンカルロ・ナシ、ステファノ・センティニ、ベンジャミン・ドメネク、サンティアゴ・ガレッリ、エミリー・モーガン、マティアス・ロベダ、ティエリー・ルヌーベル、(エグゼクティブ)コンスタンサ・エレンチュン、エイミー・ガードナー、ほか共同製作者多数
データ:製作国アルゼンチン、チリ、イギリス、台湾、ドイツ、スウェーデン、フランス、デンマーク、スペイン語・英語、2023年、歴史ドラマ、97分
映画祭・受賞歴:カンヌ映画祭2023「ある視点」部門正式出品、初長編監督作品賞カメラドールにもノミネートされている。
キャスト:カミロ・アランシビア(メスティーソのセグンド)、ベンジャミン・ウェストフォール(アメリカ人傭兵ビル)、マーク・スタンリー(イギリス人マクレナン中尉)、サム・スプルエル(マルティン大佐)、アルフレッド・カストロ(スペイン人地主ホセ・メネンデス)、マリアノ・リナス(フランシスコ・モレノ)、ルイス・マチン(司教)、マルセロ・アロンソ(大統領勅使ビクーニャ)、アグスティン・リッタノ(アンブロシオ大佐)、ミシェル・グアーニャ(キエプジャ)、アドリアナ・ストゥベン(ホセフィナ・メネンデス)、ほか
ストーリー:19世紀末に羊牧場はチリのパタゴニア地方の領土を拡大していきました。1901年、裕福な地主ホセ・メネンデスは先住民の土地を開拓し、大西洋への道を開くために3人の男を雇いました。最終的な目的は当時の白人の使命に従って、この広大で肥沃な領土を文明化することでした。メスティーソのセグンド、元ボーア戦争のイギリス人船長のマクレナン、アメリカ人傭兵ビルの3人は、国家がメネンデスに与えた土地の境界を定める遠征に乗り出していった。最初は行政上の遠征のように見えたものが、次第に先住民に対する暴力的な狩猟へと変質していった。1901年から1908年のあいだにティエラ・デル・フエゴ島での先住民セルクナム虐殺を描き、先住民が被った植民地化、暴力、不正義というテーマを探求しています。
★ガルベス監督談によると「誰が歴史を書くのか、どのように書かれるのか、その過程で映画の立ち位置はどのように占めるのかを考えさせてくれる」映画だとコメント。チリの正史から消されてきた先住民虐殺の事実が、如何にして闇に葬られてきたのか、その過程がどうして可能だったのか、メネンデス一家がどのように資金調達をしたのかが語られる。「この映画は、内なる旅とその登場人物の精神の崩壊を通して、強制的に文明化されたモデルを反映させた」とプレスリリースで語っている。チリが建国(1818年)100周年を迎えようとしていた頃の過去にさかのぼり、現在にまで及ぶ理念が語られる。
★監督紹介:フェリペ・ガルベス(Felipe Galvez Haberle)、1983年サンティアゴ生れ、監督、脚本家、フィルム編集。2008年フィルム編集者としてキャリアをスタートさせる。2009年の短編「Silencio en la sala」(12分)がBaficiブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭に正式出品されベスト短編賞を受賞。2018年「Rapaz」(13分)がカンヌ映画祭併催の「批評家週間」にノミネートされたことで、その後ウルグアイ映画祭2018、ダウンタウン・ロスアンゼルスFF、ノーステキサスFF、ダラスFF2019のグランプリを受賞、バレンシアFFのCinema Joveにノミネートされた。本作は携帯電話の盗難で告発された十代の少年の市民拘留を描いている。フィルム編集ではクラウディオ・マルコネの「En la Gama de los Grises」(15)、マルティン・ロドリゲス・レドンドのデビュー作「Marilyn」(18)など受賞歴のある映画を多数手掛けている。
(短編「Rapaz」のポスター)
★カンヌFF2000「ある視点」にノミネートされたミゲル・リティンの「Tierra del Fuego」は、ティエラ・デル・フエゴを舞台にしている。セルクナム虐殺をリードした一人であるルーマニア人ジュリアス・ポッパーを主人公にしたクロニカである。他に先住民ジェノサイドに言及している作品にパトリシオ・グスマンのドキュメンタリー「El botón de nácar」(15)があり、この作品は『真珠のボタン』の邦題で公開されています。
*監督作品は以下の通り:
2009年「Silencio en la sala」短編12分、監督、脚本、編集
2011年「Yo de aqui te estoy mirande」短編、監督、脚本、編集
2018年「Rapaz」短編13分、監督、脚本、編集
2023年「Los colonos」長編デビュー作、監督、脚本
*「Marilyn」の作品紹介は、コチラ⇒2018年02月25日
*『真珠のボタン』の作品紹介は、コチラ⇒2015年11月16日
*追加情報:本作は『開拓者たち』の邦題で、東京国際映画祭2023にノミネートされた。
カンヌ・プルミェール部門の追加作品*カンヌ映画祭2023 ― 2023年05月17日 11:19
アマ・エスカランテの7年ぶりの新作「Perdidos en la noche」
★カンヌ・プルミエール部門に3作の追加発表があり、うち2作がラテンアメリカから選ばれました。一つはメキシコのアマ・エスカランテのサスペンス「Perdidos en la noche」、もう一つがアルゼンチンのリサンドロ・アロンソの「Eureka」です。前者は『触手』(16)以来7年ぶり、後者は『約束の地』(14)以来9年ぶり、コロナ・パンデミアを挟んでいるとはいえ空きすぎでしょうか。詳細アップは時間的に間に合いませんが、2 回に分けてアウトラインだけ紹介しておきます。
(撮影中のアマ・エスカランテ監督)
★「Perdidos en la noche / Lost in the Night」
製作:Pimienta Films / Bord Cadre Films / Cárcava Cine / Match Factory Productions / Snowglobe Films
監督・脚本:アマ・エスカランテ
撮影:エイドリアン・デュラソ
編集:フェルナンド・デ・ラ・ペサ
メイクアップ:ホルヘ・フエンテス・ロンキージョ
プロダクション・マネージメント:フアン・ガルバ
製作者:ニコラス・セリス、フェルナンド・デ・ラ・ペサ、アマ・エスカランテ、(エグゼクティブ)ベアトリス・エレナ・エレラ・ボールズ、ロドリゴ・マチン、アレハンドロ・マレス、グスタボ・モンタードン、フリエタ・ペラレス、ハビエル・サルガド、ほか共同製作者多数
データ:製作国メキシコ=オランダ=ドイツ、2023年、スペイン語、サスペンス、120分、撮影地グアナファト、メキシコシティ、期間2021年10月から11月末、
映画祭・受賞歴:第76回カンヌ映画祭2023「カンヌ・プルミェール」部門ノミネート、5月18日上映予定
キャスト:フアン・ダニエル・ガルシア・トレビーニョ(エミリアノ)、エステル・エスポシート(モニカ・アルダマ)、バルバラ・モリ(カルメン・アルダマ)、フェルナンド・ボニージャ(リゴベルト・デュプラス)、ジェロ・メディナ(ルベン)、マイラ・エルモシージョ(ビオレタ)、ヴィッキー・アライコ(エミリアノの母パロマ)他
ストーリー:教師で活動家でもあったパロマは、地元の鉱山産業に対して抗議活動を行っていた。その直後、彼女は跡形もなく姿を消してしまう。それから5年後、二十歳になった正義感の強い息子エミリアノは、犯人を探し始める。司法制度の無能さのせいで、正義は彼らの手に握られている。エミリアノは、あるメモを切っ掛けに裕福でエキセントリックなアルダマ家の夏の別荘にたどり着く。一族は著名な女家長カルメン・アルダマによって統率されています。彼は一族に表面化しない秘密が隠されていることに次第に気づいていく。真実を求めてエミリアノは、秘密、嘘、そして復讐だらけの暗い世界に沈潜していくことになる。
(エミリアノ役のフアン・ダニエル・ガルシア・トレビーニョ)
★アマ・エスカランテ(バルセロナ1979)の長編5作目となる本作は、正義の無能さに直面した青年が正義の行動を起こす決意をする物語だが、相変わらず厳しいテーマに挑んでいる。当ブログでは第2作「Los bastardos」(08、『よそ者』)、3作目「Heli」(13、『エリ』)を紹介しています。デビュー作「Sangre」(05、『サングレ』)が東京国際映画祭にノミネートされた折には、若干観客に戸惑いがありましたが、現在ではラテンアメリカ諸国の映画も多数公開されるようになり、少しずつ戸惑いも解消されているのではないかと思います。しかし、4作目「La región salvaje」(16、『触手』)はどうだったでしょうか。ファンタジーと恐怖をミックスさせて社会的暴力を描いたものでした。寡作な監督ですが、幸いなことに日本語字幕入りで観ることのできる幸運な映画作家の一人です。Netflix で配信されている『ナルコス:メキシコ』(18~21、7話)も手掛けています。
(カンヌFF監督賞受賞の「Heli」ポスター)
*フィルモグラフィーは以下の通り(短編、オムニバスは除く):
2005年「Sangre」カンヌFF「ある視点」国際批評家連盟賞FIPRESCI 受賞
2008年「Los bastardos」カンヌFF「ある視点」ノミネート
2013年「Heli」カンヌFFコンペティション部門、監督賞受賞
2016年「La región salvaje」ベネチアFFコンペティション部門、監督賞受賞
2023年「Perdidos en la noche」カンヌFFカンヌ・プルミェール
*『よそ者』の作品紹介は、コチラ⇒2013年10月10日
*『エリ』の作品 & 監督キャリア紹介は、コチラ⇒2013年10月08日
★エミリアノを演じるフアン・ダニエル・ガルシア・トレビーニョは、2000年モンテレイ生れ。フェルナンド・フリアス・デ・ラ・パラの「Ya no estoy aqui」(19、『そして俺は、ここにいない』)に起用されたのが切っ掛けで俳優の道を歩くことになったミュージシャン。ルーマニアの監督テオドラ・アナ・ミハイの東京国際映画祭審査員特別賞を受賞した「La civil」(21、『市民』、公開タイトル『母の聖戦』)、アレハンドラ・マルケス・アベジャのモレリア映画祭作品賞を受賞した「El norte sobre el vacío」(22、『虚栄の果て』)、ケリー・モンドラゴンの「Wetiko」(22)、ソフィア・アウサの「Adolfo」(23)など立て続けにオファーを受けている。
(主役を演じた「Ya no estoy aqui」のポスター)
★当ブログ紹介記事は以下の通り:
*『そして俺は、ここにいない』の作品 & キャスト紹介は、コチラ⇒2021年02月07日
*『母の聖戦』の主な作品紹介は、コチラ⇒2021年10月25日
*『虚栄の果て』のモレリア映画祭の紹介記事は、コチラ⇒2022年11月10日
★次回はリサンドロ・アロンソの「Eureka」紹介の予定。
リサンドロ・アロンソの新作がカンヌ・プルミェールに*カンヌ映画祭2023 ― 2023年05月19日 15:44
『約束の地』から9年ぶりとなるリサンドロ・アロンソの「Eureka」
★カンヌ・プルミェール部門に追加されたリサンドロ・アロンソの「Eureka」は、アルゼンチン、フランス、ポルトガルなど6ヵ国の合作。アロンソ監督はブエノスアイレス生れ(1975)、監督、脚本家。前作『約束の地』(「Jauja」14)以来、9年ぶりの新作。前作主演のヴィゴ・モーテンセンが新作でも主演、同じくモーテンセンの娘役で映画デビューした、デンマークのヴィールビョーク・マリン・アガーも出演して、同じ父娘に扮している。前作同様娘は失踪するようですが、もちろん続編ではありません。ほかにTVシリーズ『ナルコス:メキシコ編』でお馴染みのメキシコのホセ・マリア・ヤスピク、ポルトガルの監督でもあるベテラン女優マリア・デ・メデイロス、同じく舞台女優、ファドの歌手ルイーザ・クルス、ほかマルチェロ・マストロヤンニを父にカトリーヌ・ドヌーヴを母にもつフランスのキアラ・マストラヤンニなど錚々たるスターが共演している豪華キャストです。
*『約束の地』作品 & 監督キャリア紹介は、
(髪を短くした最近のリサンドロ・アロンソ監督)
「Eureka」
製作:4L(アルゼンチン)、Luxbox(フランス)、Rosa Film(ポルトガル)、
Woo Films(メキシコ)、Komplizen Film(独)、Fortuna Films(オランダ)、
Bord Cadre Films、Slot Machine
監督:リサンドロ・アロンソ
脚本:リサンドロ・アロンソ、マルティン・カーマニョ、ファビアン・カサス
撮影:マウロ・エルセ、ティモ・サルミネン
編集:ゴンサロ・デル・バル
衣装デザイン:ナタリア・セリグソン
メイクアップ:エレナ・バティスタ
特殊効果:フィリペ・ペレイラ
製作者:カリーヌ・ルブラン、マリアンヌ・スロット、(エグゼクティブ)アンディ・クラインマン、アンドレアス・ロアルド、ダン・ウェクスラー、(共同)フィオレッラ・モレッティ、エディ・ザルディ、ほか多数
データ:製作国アルゼンチン=フランス=ポルトガル=メキシコ=オランダ=ドイツ、2023年、スペイン語、ドラマ、ウエスタン、140分、撮影アルメリア、2021年11月11日クランクイン、カンヌ上映5月19日
映画祭・受賞歴:カンヌ映画祭2023カンヌ・プルミェール部門正式出品
キャスト:ヴィゴ・モーテンセン(マーフィー)、ホセ・マリア・ヤスピク、キアラ・マストラヤンニ(マヤ)、ヴィールビョーク・マリン・アガー(マーフィーの娘モリー)、ルイーザ・クルス(修道女)、ラフィ・ピッツ(無法者ランダル)、マリア・デ・メデイロス、サンティアゴ・フマガリ(受付係)、ナタリア・ルイス(娼婦)、ほか
ストーリー:ユーレカはアメリカ大陸のさまざまなところを飛びまわる鳥です。飛行中にタイムトラベルします。ユーレカは先住民が大好きです。運よく彼らの言葉を聞くと、人間になることが如何に難しいかを理解しようとします。1870年、アメリカとメキシコ国境地帯の無法者の町から始まり現在までの時間を、アメリカ、メキシコ、ブラジルのアマゾンのジャングルを縦断しながら、先住民文化の伝統と先祖伝来の知恵を守ることの重要性を探求する。4つのエピソードで構成され、異なる地域が描かれる。マーフィーは無法者ランダルに誘拐された娘を探すため町に到着する。
(マーフィー役のヴィゴ・モーテンセン)
★パート1は、前作『約束の地』で父娘になったヴィゴ・モーテンセンとヴィールビョーク・マリン・アガーが、今回も同じ役を演じる。誘拐犯ランダルはイランの監督で俳優としても活躍するラフィ・ピッツが演じる。パート2「パインリッジ」は、サウスダコタ州にある現在の先住民居留地が舞台となっている。4部構成の最後「アマゾニア」はアマゾンのジャングルが舞台となる。先住民ではないUbirajaraウビラジャラは、アマゾンでは非常に脅かされていたので地元の金鉱山の探査に出発する。文字通りゴールドラッシュに苦しむことになる。パート3は目下情報が入手できていません。
(前作『約束の地』のオリジナルポスター)
★アロンソ監督によると「北米の先住民部族と、南米の祖先伝来の伝統を守りたいと願い現代から逃れてきたアマゾンに住む部族を比較したいと思っています。1870年から始まりますが、まったくと言っていいほど現代を描いています。現代の悲劇、自然との断絶感、富の追求によって疎外された世界の過去を描いています」と、シネヨーロッパのインタビューでコメントしている。「私たち全員、特に南米の人々に、私たちが何処でどのように生きるべきか、よりよく生きるためにはどうすれば良いかを考えてほしい」とも語っている。アルゼンチンのパタゴニアを舞台にした『約束の地』で先住民の過酷な運命を描きたかったが、もっと時間をかける必要を感じたようです。そして今回の「Eureka」に繋げることができたわけです。
(キアラ・マストラヤンニ)
★ヴィゴ・モーテンセンのキャリア & フィルモグラフィー紹介は、既に『約束の地』あるいはサンセバスチャン映画祭2020ドノスティア栄誉賞受賞の折にアップしております。ストーリー及びキャストの立ち位置もはっきりせず隔靴掻痒なので、もう少し全体像が見えてから補足します。脚本家のファビアン・カサスは前作でも共同執筆しており、自分は脚本家というより「アロンソ専用の脚本家」だとコメント、確かに2作しか執筆していない。ほか俳優として「ある視点」ノミネートのロドリゴ・モレノの「Los delincuentes」に教師役で出演している。彼とアロンソ監督とモーテンセンの3人はサッカーファン、アルゼンチンのクラブチーム「サンロレンソ・デ・アルマグロ」の熱狂的なおじさんサポーターである。
*ヴィゴ・モーテンセンのキャリア紹介は、コチラ⇒2020年07月08日
*サンセバスチャン映画祭ドノスティア栄誉賞の記事は、コチラ⇒2020年09月26日
★最近カンヌ映画祭が発表したフォトから選んでおきます。
エレナ・マルティンの2作目が「監督週間」にノミネート*カンヌ映画祭2023 ― 2023年05月22日 13:50
スペインのエレナ・マルティンの第2作「Creatura」が監督週間に
★今年第55回を迎える「監督週間」にスペインのエレナ・マルティンの「Creatura」がノミネートされました。「監督週間」と「批評家週間」はカンヌ映画祭とは選考母体も異なりますが、本体と同期間にカンヌで開催されることからカンヌFFと称しています。今回は本体より1日遅れの5月17日から26日まで、従って結果発表も先になります。長編部門は60分以上、短編部門は60分未満という区別があり、SACD賞、ヨーロッパ・シネマズ賞、観客賞などがあります。
(最近のエレナ・マルティン)
「Creatura」
製作:Avalon PC / Elástica Films / Filmin / S/B Films / Vilauto Films / ICEC / ICAA / Lastro Media / TV3
監督:エレナ・マルティン
脚本:エレナ・マルティン、クララ・ロケ
音楽:クララ・アギラル
撮影:アラナ・メヒア・ゴンサレス
編集:アリアドナ・リバス
キャスティング:イレネ・ロケ
プロダクション・デザイン&美術:シルビア・ステインブレヒト
音響:レオ・ドルガン、ライア・カサノバス、オリオル・ドナト
衣装デザイン:ベラ・モレス
メイクアップ&ヘアー:ダナエ・ガテル(メイク)、アレクサンドラ・サルバ(ヘアー)
製作者:(Vilauto Films)アリアドナ・ドット、マルタ・クルアーニャス、トノ・フォルゲラ、(Elástica Films)マリア・サモラ、(Avalon PC)シュテファン・シュミッツ、(S/B Films)パウ・スリス、ジェイク・チーサムCheetham、他多数
データ:製作国スペイン、2023年、カタルーニャ語、ドラマ、112分、撮影地バルセロナのサンビセンツ・デ・モンタルト、公開スペイン2023年9月18日予定、国際販売LuxBox
映画祭・受賞歴:カンヌ映画祭併催の「監督週間」にノミネート(5月20日上映)
キャスト:ミラ・ボラス(ミラ5歳)、クラウディア・ダルマウ(ミラ15歳)、エレナ・マルティン(ミラ35歳)、アレックス・ブランデミュール(父ジェラルド)、マルク・カルタニャ(ジェラルド)、クリスティーナ・コロム(大人のアイナ)、カルラ・リナレス(ディアナ)、オリオル・プラ(ミラの恋人マルセル)、ベルナ・ロケ(アンドレ)、クララ・セグラ(ディアナ)、テレサ・バリクロサ、ダビ・ベルト
ストーリー:少女のミラはビーチで夏を過ごします。彼女の大好きな父親は彼女に優しく世界を見せます。母親は控えめです。少女から急成長するミラのエネルギーは、彼女の周囲、彼女の体、海との繋がりを変えてしまいます。大人たちは自意識の高いミラの変化に戸惑いを感じます。ミラと父親のあいだで何かが壊れます。30代になったミラは、深刻な危機に向き合っています。ミラは自分の欲望と喪失が心の奥底にあることに気づき始めます。過去の関係を再訪する自己探求の旅をしていますが、再び海に戻ることができるでしょうか。
(思春期のミラ)
★監督紹介:エレナ・マルティン・ヒメノは、1992年バルセロナ生れ、監督、脚本家、映画・舞台女優。ポンペウ・ファブラ大学(1990年設立)で映画を学ぶ。長編デビュー作は主役も自身で演じた2017年の「Júlia ist」、マラガ映画祭2017のZonaZine 部門の作品・監督・モビスター+賞を受賞、他トゥリア第1作監督賞も受賞、バレンシア映画祭、翌年のガウディ賞(カタルーニャ語以外部門)の作品賞にノミネートされている他、ワルシャワFF、レイキャビクFFに出品された。本作については簡単ですが作品紹介をしています。
*「Júlia ist」の作品紹介は、コチラ⇒2017年07月10日
(エレナ・マルティン、「Júlia ist」から)
★エレナ・マルティンは、女優としてスタートしました。2015年のライア・アラバルト他4人の共同監督作品「Les amigues de l’Ágata」(Las amigas de Ágata)のアガタ役で好演し、名前が知られるようになった。2019年イレネ・モライの短編「Suc de síndria」(20分、英題「Watermelon Juice」)に主演し、マラガFF、メディナFF、イベロアメリカンFFなどで主演女優賞を受賞している。モライ監督はゴヤ賞2020の短編映画賞以下、ガウディ賞、メディナFF、バレンシアFF、イベロアメリカン短編映画賞など多数受賞しています。
★TVシリーズでは、2019年、レティシア・ドレラが創案者のコメディ「Vida perfecta」(14話、19~20)に参加、2話を監督している。5話からなるTVミニシリーズ「En casa」(1話、20)、ミュージック・ビデオ「Rigoberta Bandeni:Perra」を監督している。他にロス・ハビス(ハビエル・アンブロシ、ハビエル・カルボ)のシリーズ「Veneno」(全8話)のスタッフライターとして6話にコミット、脚本2話を執筆している。
アルモドバルのクィア・ウエスタンがプレミア*カンヌ映画祭2023 ― 2023年05月23日 18:10
アルモドバルのイケマン・カウボーイたちがカンヌにやってきた
★5月17日(水)、ペドロ・アルモドバルの短編英語劇2作目「Strange Way of Life」出演のカウボーイたちが勢揃いしました。といっても肝心の主人公役のペドロ・パスカルはどうやら欠席のようです。アウト・オブ・コンペティションの特別上映ですから賞には絡みませんが、やはりファンの人気は高いようです。容赦のないカンヌの観客にも「好評だった」とスペイン・メディアは報じています。本国での公開が5月26日と早速アナウンスされました。第1作の「La voz humana」(20)が30分の短編ながら興行的に成功したことが背景にあるのかもしれません。来年の年初には本邦でも公開されるかなと思っていましたら、なんと盛夏の8月16日とアナウンスされました。タイトルは原題カタカナ起こしの『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』でしょうか。
(イーサン・ホークとペドロ・パスカル、フレームから)
(カンヌに勢揃いした左から、マヌ・リオス、ジョゼ・コンデッサ、監督、
イーサン・ホーク、ジェイソン・フェルナンデス、ジョージ・スティーン)
★短編だからといって手抜きをしないのがアルモドバル、このクィア・ウエスタンは青春時代に起きた事件をさかいに別れた2人のカウボーイ、ペドロ・パスカルとイーサン・ホークの愛憎劇でもあるが、ロマンティックな恋愛関係にあるメロドラマでもある。「自分がなりたいものにはなれない」というメッセージが込められていると監督。上映後のスペシャル・トークで「皆さんがご覧になった、二人の男がベッド・メイキングをするウエスタン映画は、これが初めてだと思います」とスピーチして会場を沸かせたようです。もう一つの見どころはカンヌのレッドカーペットを踏んだ若い俳優たち、彼らの今後の活躍が楽しみです。
(上映後に登壇してスペシャル・トークで会場を沸かせた監督とイーサン・ホーク)
(左から、マヌ・リオス、ジョゼ・コンデッサ、ジェイソン・フェルナンデス、
ジョージ・スティーン、生き残れるのは誰でしょうか?)
*『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』の紹介は、コチラ⇒2023年05月04日
赤絨毯にビクトル・エリセの姿はなく・・・*カンヌ映画祭2023 ― 2023年05月25日 11:53
カンヌに戻ってきましたがクロアゼットにエリセの姿はなく・・・・
★5月22日(月)、30年ぶりとなる新作「Cerrar los ojos」を携えて、ビクトル・エリセはカンヌのレッドカーペットに現れるはずでしたが、彼の姿はなくホセ・コロナド以下キャスト陣だけの登場になりました。販売代理店のアバロン社が監督のカンヌ出席をアナウンスしていたにもかかわらず、22日のフォトコールにも現れませんでした。監督不在のフォトコールはカンヌではこれまでなかったのではないでしょうか。ただ本人は出席するとは明言していなかった。出席の有無は公式に沈黙が続いたが、結局、映画祭運営に近い情報筋と監督自身が欠席を認めたということです。
(左から、エレナ・ミケル、ホセ・コロナド、アナ・トレント、マノロ・ソロ、
マリア・レオン、レッドカーペットにて)
(ワールドプレミアに勢揃いしたキャスト陣、5月22日、フォトコール)
★「ヨーロッパ映画界のサリンジャー」と言われるバスクの監督ビクトル・エリセは、1940年バスク自治州ビスカヤ県カランサ生れ、サンセバスチャンで教育をうけた。今は寿命が伸びて82歳が高齢者かどうか微妙ですが、欠席は年のせいではない。誰からのプレッシャーも受けたくないのか、映画ギョウカイに無関心なのか、とにかくインタビュー嫌いで知られている。エリセとカンヌの関係が良好なのは、30年前のドキュメンタリー『マルメロの陽光』(92)に遡り、審査員賞、国際映画批評家連盟賞FIPRESCI を受賞している。2010年にはコンペティション部門の審査員としてカンヌ入りしているほどです。
(本作撮影中のビクトル・エリセ監督)
(左から、主演のホセ・コロナド、アナ・トレント、マノロ・ソロ、フォトコール)
★各紙報道によると、エリセは撮影期間中に「この長編は記憶とアイデンティティ、そして必然的に芸術的創造のプロセスについての熟考である」と主張していたようです。現在ではエリセの分身と思われるマノロ・ソロが撮影した未完の映像として、コロナド扮する失踪した映画俳優の最後のシーンがYouTube で見ることができます。俳優が生きているようにも見える最後のシーンです。他にもカンヌに来られなかったソレダード・ビジャミルとソロのシーンもアップされており、やはり胸がざわざわしてきます。ワールドプレミアされた22日には、上映館ドビュッシー劇場前に、午後8時15分開演にもかかわらず午後1時には行列ができたということです。169分の長尺ですから終わるのは夜の11時、お疲れさまでした。
(最後のシーンのホセ・コロナド、フレームから)
(撮影中のホセ・コロナド、マノロ・ソロ)
(マノロ・ソロ、アナ・トレント)
(半世紀ぶりの邂逅、監督とアナ・トレント)
★各紙誌専属コラムニストの記事が出揃うまでには時間がありそうです。映画はカンヌ終了後、第71回サンセバスチャン映画祭(9月22日~30日)で上映され、閉幕1日前の9月29日に公開される予定。そろそろサンセバスチャン映画祭の季節が近づいてきました。今年の映画祭の顔は、ドノスティア栄誉賞受賞者ハビエル・バルデムと発表されています。これで夫婦揃ってトロフィーを飾ることになりました。ペネロペ・クルスは2019年に史上最年少受賞者になっています。
*「Cerrar los ojos」の作品紹介は、コチラ⇒2023年04月29日
*「Cerrar los ojos」の記事紹介は、コチラ⇒2022年07月15日
* 監督キャリア&フィルモグラフィ紹介は、コチラ⇒2022年07月25日
カンヌ映画祭欠席に関するエリセ監督の公開書簡*カンヌ映画祭2023 ― 2023年05月30日 14:16
泥沼化の様相を示しはじめた両者の言い分
(特別ゲストのジェーン・フォンダからトロフィを受けとったジュスティーヌ・トリエ)
★5月27日、カンヌ映画祭はパルムドールにジュスティーヌ・トリエのスリラー「Anatomy of a Fall」(仏)を選んで閉幕しました。女性監督の受賞は76回にして3人目(!)。是枝チームの『怪物』も脚本賞(坂元裕二)とクィア・パルム賞(是枝裕和)を受賞、ヴィム・ヴェンダースの「Perfect Days」(日本)に公衆トイレの清掃員役で主演した役所広司が男優賞を受賞するなど、日本勢には収穫のあるカンヌでした。坂元氏は帰国しており、監督が代理で受け取った。スペインはコンペティション部門ノミネートはありませんでしたが、カンヌFF併催の「監督週間」にノミネートされていたエレナ・マルティン・ヒメノの「Creatura」が、2003年に新設された「最優秀ヨーロッパ映画賞」を受賞しました。
*「Creatura」の作品紹介は、コチラ⇒2023年05月22日
(脚本賞を代理で受け取った是枝監督と男優賞受賞の役所広司)
(帰国した監督からトロフィを受け取った坂元裕二)
(赤いドレスがエレナ・マルティン・ヒメノ監督、カンヌFF5月22日)
★スペインでは5月24日に、ビクトル・エリセ監督のカンヌ欠席の続報がエル・パイス紙に掲載され、何やら不穏な空気が漂っています。誰もが予想したように矢張り見解の相違というか舞台ウラのゴタゴタがあったようです。というのもエリセ監督が「カンヌ映画祭欠席についての公開書簡」をエル・パイスに寄稿したことで明るみに出ました。書簡の大要は、選考システムに疑問を呈しているのではなく、「Cerrar los ojos」(スペイン、アルゼンチン)がどのセクションで上映されるのかについてのカンヌ側の、具体的には総代表ティエリー・フレモーの情報不足を問題にしています。しかしカンヌの主催者はエリセとの対話の欠如を否定して、公開書簡に「私たちは驚いています」と反応した。
★書簡の要点は以下の通り(文責&ゴチック体は管理人):
*カンヌへの欠席は、4月28日にティエリー・フレモー宛に手紙で伝えている。
*コンペティション関係者の情報筋の話として、「Cerrar los ojos」をコンペに含めなかったのは、本作が「完成していなかったから」というものでした。しかしそれは間違いです。
*3月24日、映画の最終カットを含む QuickTime でカンヌの選考委員会に作品を送ったが、etalonaje digital(作品全体のトーン決定や前後のカットの色味を合わせること)に対応する補正は行われていなかった。・・・これは進行中の作品においては一般的なことで、選考委員会によって受け入れられた。
*その後、DCP(デジタル・シネマ・パッケージ、デジタルで上映する際の標準的な配信形式)が収録され、パラシオ・デ・フェスティバルで上映された。従って、数日前まで「完成」していなかったため委員会が見ることができなかったと断言したり、それが理由でコンペに入らなかったと言うのは誤りです。カンヌ・プルミェール部門上映が準備できていたなら、どうしてコンペ部門に間に合わなかったのかと疑問に思う人は少なくないでしょう。
管理人:4月13日、コンペティション部門とカンヌ・プルミェール部門は同日発表された。以上が書簡の前半部分です。しかしエリセの主張するように対話不足があっても選ばれていたら・・・と考えると心境は複雑です。
*コンペティション部門の決定を待っていた3月から4月にかけて、「監督週間」の総代表ジュリアン・レジル氏とフランス専門批評学部長ジャン・ナルボーニ氏から「監督週間」の特別セッションでの上映を提案された。直ぐにティエリー・フレモーに手紙を認め、コンペに選ばれない場合には、他の選択肢を検討できるよう事前に知らせてくれと伝えました。これは慣例です。カンヌの「監督週間」、またはカンヌ以外のロカルノ、ベネチア映画祭を検討したいからです。しかし一向に梨のつぶてでした。
*最終的な結果を4月13日朝の公式プレス会見で私は初めて知りました。最初に書いた通り4月28日、プレゼンテーションに出席しない理由を説明した手紙でフレモーに伝えました。
*コンペティション部門に選ばれなかったことに対する抗議や拒絶とはほとんど無関係です。
★エリセは「監督週間」にも作品を送っていたことになり、当委員会が数週間も「プロトコルの時間がなくなるまで、提案を保ち続けた」とも書いている。「この特別セッションには前例があり、それはフランシス・フォード・コッポラである」ともエリセは書いている。カンヌ側の公式発表は、コンペティションに含めないという決定は「通常のルート内で行われた」と回答し、エリセが主張している対話の欠如はなかったとした。論点がずれて嚙み合いませんね、監督は選考システムに疑問を呈しているわけではないからです。こういう泥仕合は楽しくありませんから終わりにしますが、今後に禍根を残さないか、特にこれから始まるサンセバスチャン映画祭SSIFFが気になります。ここ数年フレモー氏はこのスペインの映画祭に欠かさず足を運んでいるからです。
★カンヌのセクションには、コンペティション、特別セッション、コンペティション外、カンヌ・プルミェール、新人枠の「ある視点」などに分かれていますが、コンペとコンペ以外では数段の差があります。ですから4月13日の発表前にエリセの新作を観ていたスペインの批評家、海外メディア関係者に動揺が走ったそうです。当然コンペに選ばれると思っていたからでしょうか。ノミネートされた「カンヌ・プルミェール」部門は、2021年新設されたもので上映回数もたったの2回、ワールドプレミアこそドビュッシー劇場でしたが、2回目は車での移動が必要だったそうです。
★SSIFFの代表ディレクターのホセ・ルイス・レボルディノス氏は、「選考プロセスは、監督でなく製作者と話し合います。映画祭のプログラマーは、映画の販売権を持っている人物と必ず面会する。その人物が監督であることは殆どない。しかしエリセのケースでは彼も共同プロデューサーであるから、この言い訳は通用しません」と、エル・パイスに語っている。選考委員会は映画祭の規模によりさまざまだそうで、SSIFFの場合は「12人で構成」されている。レボルディノス氏は、カンヌが受け取った作品の数を知るには、「昨年SSIFFで3990本、そのうち短編が600本だったと言えば十分でしょう」とコメントした。コロナ下でもすごい数です。カンヌは桁が違うのでしょう。
★コンペに選ばれる作品は「フランスとの強い繋がりがあるのは明らか、フランスとの共同製作か、フランスの販売代理店が背後にいるかのどちらか」とアルベルト・セラ。昨年コンペ入りした彼の新作『パシフィクション』は、フランスとの共同製作、言語もフランス語と英語でした。ロドリゴ・ソロゴジェンの『ザ・ビースト』は、フランスとの合作でしたが、エリセと同じカンヌ・プルミェール部門でした。因みに前回のパルムドールは、スウェーデンのリューベン・オストルンドの『逆転のトライアングル』、これもフランスとの合作、芸術性が大切なのは当たり前ですが産業も考慮しなければ勝ち残れません。個人的には鑑賞できればよいのですが、時間が少しかかるかもしれません。カンヌは終わりにしてサンセバスチャン映画祭(9月22日~30日)の情報を発信する予定です。
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