3人の女性がカルロス・ベルムトを性的暴行で告発する ― 2024年02月05日 18:25
周知のことだったカルロス・ベルムトのセクハラ問題
(性暴力で告発されたカルロス・ベルムト監督、2022年)
★カルロス・ベルムトの新作「Manticora」(22)が、『マンティコア―怪物―』の邦題で4月19日に封切られることが発表になりました。30秒ほどの予告編もアップされ「アンチモラル・ロマンス」が謳い文句です。長編2作目『マジカル・ガール』(14)、3作目『シークレット・ヴォイス』(18)など、決して分かりやすい作品とは言えないながら公開され、新作を待ち詫びていたシネマニアには嬉しくないニュースが飛び込んできました。
*『マンティコア』紹介、監督キャリア&フィルモグラフィは、コチラ⇒2022年10月08日
*『マジカル・ガール』の紹介記事は、コチラ⇒2015年01月21日
*『シークレット・ヴォイス』の紹介記事は、コチラ⇒2019年03月13日
★先月26日に開催されたフェロス賞2024の授賞式で、AICEスペイン映画ジャーナリスト協会のマリア・ゲーラ会長が、3人の女性がベルムト監督から性暴力を受けたという告発がなされたこと、AICE は全面的に被害者を支援する旨の表明がありました。発端はエルパイス紙が被害者からの具体的な内容の報告書を掲載したことでした。さらにこの報告書が公になるずっと以前から噂として皆なが知っていたということなのです。それでカルロス・ベルムトの去就が気になりますが、監督自身は「乱暴なセックス」があったことを認めたが、「私はいつも合意のうえでした」と答えている。事実が言い逃れできないケースでの模範解答です。
(被害者支援をスピーチしたマリア・ゲーラ、1月26日、フェロス賞ガラ)
★昨年の第10回フェロス賞2023TVシリーズ脚本賞にノミネートされたミゲル・アンヘル・ブランカの「Autodefensa」(仮訳「自己防衛」全10話)の脚本家の一人で自らも主演しているベルタ・プリエトによると、第8話「Actos colectivos」(仮訳「集団行為」2022年12月6日放映)のテーマになっているということです。「カルロス・ベルムトの性的虐待に関するレポートが発表されたとき、私は他の多くの人たちと同じように既に知っていたので驚きませんでした」とエルパイス紙に寄稿しています。周知のことで何を今更ということなのでした。この年は『マンティコア』の主役を演じたナチョ・サンチェスが男優賞を受賞、ベルムトもポスター賞を受賞しています。
映画産業は「恐怖が勝る小さな狭い業界」
★2017年のハーベイ・ワインスタインで口火を切った#Me Too 運動も、日本同様スペインには届かなかったのでしょうか。3人の女性の名前は伏せられておりますが、期間は2014年5月から2022年2月までと具体的です。2014年は『マジカル・ガール』がサンセバスチャン映画祭の作品賞と監督賞を受賞した年です。2022年はセクハラが信憑性のある巷間の噂になった年です。3人の女性は20代前半で小柄なタイプ、映画を専攻している学生、プロダクションの一員、文化部門で働いている女性ということです。大柄で重量級のベルムトに伸し掛かられると、彼をはねのけることはできなかったと語っている。
★「自分の優位な知名度を利用して、私たちを暴行した」と告発したのですが、そもそもの始りは、女性たちにとって彼が高名な監督で、「憧れの人だった」ということがレポートから窺えるのでした。被害者が泣き寝入りする背景には、女性たちも仕事を失いたくないからです。そのため被害者が「加害者を保護する権力構造の一部になっている」。ベルムトのセクハラはパワハラとセットになっているケースです。ネット上での第三者による無責任な被害者バッシングを想定すると、被害者のトラウマは底知れない。
★タブーなテーマに直面したスペイン映画界は、公式の発言者は目下ゲーラ会長一人ということでしたが、2月4日に開催されたガウディ賞ガラでは、「Creatura」でカタルーニャ語映画(ドラマ部門)の作品賞、監督賞を受賞したエレナ・マルティンが、被害者支援を壇上で表明したようです。他にレオノール・ワトリング、ヴィッキー・ルエンゴ、製作者のアグスティン・アルモドバルなども支援を表明しています。「ベルムトはお金がなくて表沙汰になってしまったが、もっと大物は組織がらみでもみ消すから表面化しない」という記事もあり、どういう成り行きになるのでしょうか。
第16回ガウディ賞2024授賞式*受賞結果 ― 2024年02月11日 15:59
作品賞は「Creatura」と『ミツバチと私』と女性監督がトロフィー
★2月4日、第16回ガウディ賞2024の授賞式がバルセロナの国際会議センターで開催されました。開始は4日の22:00からでしたが、終了は翌日の午前1時半でした。受賞者全員が舞台に勢揃いしてお開きになりましたが、さっさと帰宅した人、夜が明けるまで粘った人もいたのでした。総合司会者はコメディアンのマリア・ロビラ(Oye Shermanオジェ・シェルマン)とアナ・ポロ(Oye Poloオジェ・ポロ)の二人、オーディオビジュアル界の男女不平等を訴えました。ガウディ栄誉賞2024の受賞者であるロザ・ベルジェスや作品賞(カタルーニャ語映画部門)受賞者のエレナ・マルティン監督なども性的暴行に反対するスピーチをして、今年のガウディ賞はフェミニスト色の濃いガラを印象づけました。
(左から、総合司会者のマリア・ロビラ、アナ・ポロ)
(午前2時まで帰宅しなかった受賞者全員)
★大賞に当たる作品賞には、カタルーニャ語部門とカタルーニャ語以外と2部門あり、前者はエレナ・マルティン(監督賞を含めて6部門受賞)の「Creatura」、後者はエスティバリス・ウレソラ・ソラグレン(新人監督賞も含めて3部門受賞)の『ミツバチと私』、共に女性の手に渡りました。しかし負けず劣らず気を吐いたのがダビ・トゥルエバの「Saben aquell」で、主演男優・主演女優賞を含めて7部門受賞、従ってこの3作で全25部門の3分の2を制覇したことになります。
*ノミネーションと受賞結果は以下の通りです。(*印は作品紹介作品)
*第16回ガウディ賞2024ノミネーションと受賞結果*
◎作品賞(カタルーニャ語)
「Saben aquell」 監督ダビ・トゥルエバ *
「Els encantats」 同エレナ・トラぺ *
「La imatge permanent」 同ラウラ・フェレス *
「Creatura」 同エレナ・マルティン *
(製作者と感極まるエレナ・マルティン)
(レッドカーペットに勢ぞろいしたクルー)
◎作品賞(カタルーニャ語以外)
「Un amor」(『ひとつの愛』) 監督イサベル・コイシェ *
「El maestro que prometió el mar」 同パトリシア・フォント
「Upon entry」 同フアン・セバスティアン・バスケス、アレハンドロ・ロハス *
「20.000 especies de abejas」(『ミツバチと私』)
同エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン *
(左から5人目が監督、右隣が製作者バレリー・デルピエール)
◎監督賞
イサベル・コイシェ 「Un amor」
ダビ・トゥルエバ 「Saben aquell」
アグスティ・ビリャロンガ 「Loli tormenta」 *
エレナ・マルティン 「Creatura」
(監督賞に選ばれて共演のオリオル・プラと抱き合う監督)
◎新人監督賞
アレハンドロ・マリン 「Te estoy amando locamente」
フアン・セバスティアン・バスケス、アレハンドロ・ロハス 「Upon entry」
ラウラ・フェレス 「La imatge permanent」 *
エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン 「20.000 especies de abejas」
◎主演男優賞
エンリク・アウケル 「El maestro que prometió el mar」
アルベルト・アンマン「Upon entry」
オリオル・プラ 「Creatura」
ダビ・ベルダゲル「Saben aquell」
(「Saben aquell」のクルー、後列4人目が監督)
◎主演女優賞
ブルナ・クシ 「Upon entry」
ライア・コスタ 「Un amor」
パトリシア・ロペス・アルナイス 「20.000 especies de abejas」
カロリナ・ジュステ 「Saben aquell」
(左から、ペドロ・カサブランク、監督、受賞者)
◎助演男優賞
ダニエル・ブリュール 「La contadora de películas」 監督ローン・シェルフィグ
ウーゴ・シルバ 「Un amor」
ペドロ・カサブランク 「Saben aquell」
アレックス・ブレンデミュール 「Creatura」
◎助演女優賞
アイナ・クロテト 「Els encantats」
アネ・ガバライン 「20.000 especies de abejas」
アナ・トレント 「Sobre todo de noche」 監督ビクトル・イリアルテ
クララ・セグラ 「Creatura」
◎新人俳優賞
アイナラ・エレハルデ 「Els encantats」
アリシア・ファルコ 「Las buenas compañías」 監督シルビア・ムント *
ラ・ダニ(ダニ・F.ポソ)「Te estoy amando locamente」
クラウディア・マラジェラダ 「Creatura」
◎アニメーション賞
「Dispararon al pianista」 監督フェルナンド・トゥルエバ、ハビエル・マリスカル *
「Hanna i els monstres」 同ロレナ・アレス
「Heavies tendres」 同ジョアン・トマス
「Robot dreams」(『ロボット・ドリームズ』) 同パブロ・ベルヘル *
(製作者サンドラ・タピアと監督)
(サンドラ・タピア、監督、アルフォンソ・デ・ビラリョンガ)
◎ドキュメンタリー賞
「Muyeres」 監督マルタ・ラジャナ
「Alteritats」 同アルバ・クロス、ノラ・ハダッド Haddad
「Hermano caballo」 同マルセル・バレナ
「Mientras seas tu, el aqui y el ahora」
同カルメ・エリアス、クラウディア・ピント *
(カルメ・エリアスとクラウディア・ピント)
◎オリジナル脚本賞
エレナ・マルティン「Creatura」
エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン「20.000 especies de abejas」
イサ・カンポ、アンドレア・ケラルト、ビクトル・イリアルテ 「Sobre todo de noche」
フアン・セバスティアン・バスケス、アレハンドロ・ロハス 「Upon entry」
(左がフアン・セバスティアン・バスケス)
(後列2人目主演男優賞ノミネートのアルベルト・アンマン、
隣が助演女優賞ノミネートのブルナ・クシ)
◎脚色賞
アルベルト・バル 「El maestro que prometió el mar」
ダビ・トゥルエバ、アルベルト・エスピノサ 「Saben aquell」
パブロ・ベルヘル 「Robot dreams」
イサベル・コイシェ、ラウラ・フェレロ 「Un amor」
(ラウラ・フェレロ欠席のため、一人で登壇したイサベル・コイシェ)
◎編集賞
アナ・ファフ Pfaff 「Sobre todo de noche」
ベルナト・アラゴネス 「La contadora de películas」
ラウル・バレラス 「20.000 especies de abejas」
アリアドナ・リバス 「Creatura」
◎オリジナル音楽賞
アンドレア・モティス 「Saben aquel」
クララ・アギラル 「Creatura」
マリア・アルナル、ノラ・ハダッド・カサデバル 「Alteritats」
アルフォンソ・デ・ビラリョンガ 「Robot dreams」
(フェロス賞に続いての受賞)
◎撮影賞
アラナ・メヒア・ゴンサレス 「Creatura」
アグネス・ピケ・コルベラ 「La imatge permanent」
ベト・ロウリッヒ 「Un amor」
ジナ・フェレル 「20.000 especies de abejas」
◎プロダクション賞
ドレス・メリーナス 「Creatura」
エリサ・シルベント、パトリシア・ペレイラ 「La contadora de películas」
エバ・タボアダ 「Un amor」
エドゥアルド・バジェス 「Saben aquell」
◎短編映画賞
「Blow!」 監督ネウス・バリュス
「La herida luminosa」 同クリスティアン・アビレス
「Tots els meus colors」 同アンナ・ソラナス、マルク・リバ
「El bus」 同サンドラ・レイナ
(左端バレリー・デルピエール、一人おいてサンドラ・レイナ監督)
◎テレビ・ムービー賞(ノミネート2作)
「Miró」 監督オリオル・フェレル
「Quico Sabate, sense destí」 同シルビア・ケル
◎美術賞
ジョセップ・ロセル 「El maestro que prometió el mar」
シルビア・ステインブレチェトSteinbrecht 「Creatura」
イサスクン・ウルキホ・アリホ 「20.000 especies de abejas」
マルク・ポウ 「Saben aquell」
◎衣装デザイン賞
イシス・ベラスコ 「Te estoy amando locamente」
マリア・アルメンゴル 「El maestro que prometió el mar」
マルセ・パロマ 「La contadora de películas」
ララ・ウエテ 「Saben aquell」
(受賞者欠席につき代理が受けとった)
◎メイクアップ&ヘアー賞
ダナエ・ガテル、アレックス・サルバト 「Creatura」
パトリシア・レイェス 「El maestro que prometió el mar」
パトリシア・レイェス、ヘスス・マルトス 「La contadora de películas」
ケイトリン・アチソン、ナチョ・ディアス、ベンハミン・ペレス 「Saben aquell」
◎視覚効果賞
クリスティナ・ガルモン 「Creatura」
ダビ・マルティ、モンセ・リベ 「Secaderos」2022年 監督ロシオ・メサ
Wesley Barnard、ミリアム・ピケル 「Saben aquell」
ベルナト・アラゴネス 「La contadora de películas」
◎録音賞
アルベルト・ガイ、エンリケ・G・ベルメホ、カルロス・ヒメネス 「Un amor」
エバ・バリニョ、コルド・コレリャ、シャンティ・サルバドール
「20.000 especies de abejas」
レオ・ドルガン、オリオル・ドナト、ライア・カサノバス 「Creatura」
シャビ・マス、エドゥアルド・カストロ、ヤスミナ・プラデラス 「Saben aquell」
(ヤスミナ・プラデラス)
◎ヨーロッパ映画賞(5作品)
「Aftersun」(『aftersun/アフターサン』)2022、英国 監督シャーロット・ウェルズ
「El triángulo de la tristeza」(『逆転のトライアングル』)2022、スウェーデン
同リューベン・オストルンド
「Las ocho montañas」(『帰れない山』)2022、イタリア
同フェリックス・フォン・グルーニンゲン、シャーロット・ヴァンダーメールシュ
「Close」(『CLOSE/クロース』)2022、ベルギー 同ルカス・ドント
「La sociedad de la nieve」(『雪山の絆』)2023、スペイン
同フアン・アントニオ・バヨナ *
(出演者サンティ・バカ、製作者サンドラ・エルミダ、監督)
◎観客特別賞
「El maestro que prometió el mar」
(パトリシア・フォント監督)
(左から3人目が主演男優賞ノミネートのエンリク・アウケル)
◎ミケル・プルテー栄誉賞(Miquel Porter)
ロザ・ベルジェスRosa(Roser)Vergés(バルセロナ1955)、バルセロナ派女性監督のパイオニア的存在であるロサ・ベルジェスが受賞した。代表作はゴヤ賞1991新人監督賞受賞の「Boom, Boom」(90)、他にカタルーニャ自治州映画賞、フォトグラマス・デ・プラタ作品賞などを受賞、「Tic Tac」(97)でシカゴ児童映画祭作品賞、イタリアのジッフォーニ児童映画祭ゴールデン・グリフォン賞などを受賞、「Iris」ではマラガ映画祭2004正式出品、本ガウディ賞の前身でもある2002年設立のバルセロナ映画賞2005の監督・脚本賞にノミネートされている。
(ゴヤ賞1991新人監督賞の「Boom, Boom」ポスター)
★スペインの映画賞でもカタルーニャ語映画に特化しているガウディ賞は、フォルケ賞、フェロス賞、先ほど受賞結果が発表になったゴヤ賞とはノミネーションからして異なっています。新人監督賞にノミネートされた「La imatge permanent」のラウラ・フェレスは、本賞以外どの映画賞にも名前が見当たりません。しかし作品紹介した折に、有望新人監督の一人と紹介しましたように2作目が待たれる監督です。昨年鬼籍入りしたアグスティ・ビリャロンガの遺作「Loli tormenta」も監督賞候補になりました。カタルーニャ映画アカデミー会員は数も少なく賞が僅差で左右されますので、ノミネートされることに意味があります。
(映画業界の低賃金年収12.000ユーロは国家の問題と語る、
カタルーニャ映画アカデミー会長ジュディス・コレル)
(珍しいツーショット、フアン・アントニオ・バヨナとダビ・トゥルエバ)
(カタルーニャ語以外の作品賞プレゼンター、
マリサ・パレデスとエドゥアルド・フェルナンデス)
第38回ゴヤ賞2024バジャドリード授賞式*ノミネーションと受賞結果 ⑦ ― 2024年02月14日 09:45
フアン・アントニオ・バヨナの『雪山の絆』が12部門受賞
★2月10日、第38回ゴヤ賞2024授賞式がバジャドリードのフェリア・デ・バジャドリードで開催されました。総合司会者はアナ・ベレン、ロス・ハビスことハビエル・アンブロッシとハビエル・カルボの3人でした。J・A・バヨナの「La sociedad de la nieve」(『雪山の絆』)が作品賞を含む12部門の大量受賞、ノミネート13部門のほとんどを制覇しました。記憶違いでなければ、ゴヤ賞史上2番目になります。最多受賞はアメナバルの『海を飛ぶ夢』の14冠でした。アグスティ・ビリャロンガの『ブラック・ブレッド』とバヨナの『怪物はささやく』が9部門などがありますが、今後に悪影響がでないことを祈りたい。
★作品賞のプレゼンターが『オール・アバウト・マイ・マザー』25周年ということで、アルモドバル監督以下マリサ・パレデス、セシリア・ロス、ペネロペ・クルス、アントニア・サンフアンが登壇するという華やかさ、それ以外のプレゼンターも概ね豪華で他の映画賞との違いを見せつけました。まだ主要部分しか録画を見ておりませんので、とりあえず結果のみアップしておきます。(*印は当ブログ紹介作品です)
(涙でくしゃくしゃの作品賞受賞者フアン・アントニオ・バヨナ)
*第38回ゴヤ賞2024ノミネートと受賞結果*
◎作品賞
「20.000 especies de abejas」(『ミツバチと私』2024年1月5日公開)*
「Cerrar los ojos」(『瞳をとじて』2024年2月9日公開)*
「Saben aquell」 *
「Un amor」(『ひとつの愛』東京国際映画祭2023)*
「La sociedad de la nieve」(『雪山の絆』Netflix配信開始)*
製作ベレン・アティエンサ、サンドラ・エルミダ、J・A・バヨナ
(『オール・アバウト・マイ・マザー』のクルーがプレゼンターという豪華版)
(最初にスピーチした製作者ベレン・アティエンサ)
(続いてスピーチしたサンドラ・エルミダ)
◎監督賞
ビクトル・エリセ 「Cerrar los ojos」
エレナ・マルティン 「Creatura」(ガウディ賞カタルーニャ語作品賞受賞作品)*
ダビ・トゥルエバ 「Saben aquell」
イサベル・コイシェ 「Un amor」
J・A・バヨナ 「La sociedad de la nieve」
◎新人監督賞
イチャソ・アラナ 「Las chicas están bien」
アルバロ・ガゴ 「Matria」*
アレハンドロ・マリン 「Te estoy amando locamente」
アレハンドロ・ロハス&フアン・セバスティアン・バスケス 「Upon Entry」*
エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン 「20.000 especies de abejas」
◎オリジナル脚本賞
ミシェル・ガスタンビデ、ビクトル・エリセ 「Cerrar los ojos」
アレハンドロ・マリン、カルメン・ガリード 「Te estoy amando locamente」
フェリックス・ビスカレット 「Una vida no tan simple」*
アレハンドロ・ロハス&フアン・セバスティアン・バスケス 「Upon Entry(La llegada)」
エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン 「20.000 especies de abejas」
◎脚色賞
アルベルト・バル 「El maestro que prometió el mar」 監督パトリシア・フォント
ベルナト・ビラプラナ、J. A. バヨナ、ハイメ・マルケス、ニコラス・カサリエゴ
「La sociedad de la nieve」
アルベルト・エスピノサ、ダビ・トゥルエバ 「Saben aquell」
イサベル・コイシェ、ラウラ・フェレロ 「Un amor」
パブロ・ベルヘル 「Robot Dreams」(『ロボット・ドリームズ』)
監督パブロ・ベルヘル
◎オリジナル作曲賞
ナターシャ・アリス 「El maestro que prometió el mar」
アルナウ・バタジェル 「La paradoja de Antares」 監督ルイス・ティノコ
アルフォンソ・デ・ビラリョンガ 「Robot Dreams」
アンドレア・モティス 「Saben aquell」
マイケル・ジアッキーノ 「La sociedad de la nieve」
(受賞者欠席で監督が代理で登壇した)
◎オリジナル歌曲賞
Eco-Compositores: Xoel Lopez 「Amigos hasta la muerte」 監督ハビエル・ベイガ
Chinas-Compositores: マリナ・ヘルロプ 「Chinas」 監督アランチャ・エチェバリア
El amor de Andrea-Compositores: アルバロ・B. Baglietto、ダビ・ガルシア、ギジェ・ガルバン、他 「El amor de Andrea」 監督マヌエル・マルティン・クエンカ
La Gallinita-Compositoresu: フェルナンド・モレシ・ハベルマン、セルヒオ・ベルトラン
「La imatge permanent」 監督ラウラ・フェレス
Yo solo quiero amor-Compositores: リゴベルタ・バンディニ
「Te estoy amando locamente」
◎主演男優賞
マノロ・ソロ 「Cerrar los ojos」
エンリク・アウケル 「El maestro que prometió el mar」
ホヴィク・ケウチケリアン 「Un amor」
アルベルト・アンマン 「Upon Entry(La llegada)」
ダビ・ベルダゲル 「Saben aquell」
◎主演女優賞
パトリシア・ロペス・アルナイス 「20.000 especies de abejas」
マリア・バスケス 「Matria」
カロリナ・ジュステ 「Saben aquell」
ライア・コスタ 「Un amor」
マレナ・アルテリオ 「Que nadie duerma」 監督アントニオ・メンデス・エスパルサ
◎助演男優賞
マルチェロ・ルビオ 「20.000 especies de abejas」
フアン・カルロス・ベリド 「Bajo terapia」* 監督ヘラルド・エレーロ
アレックス・ブレンデミュール 「Creatura」
ウーゴ・シルバ 「Un amor」
ホセ・コロナド 「Cerrar los ojos」
(目頭を赤くしてスピーチしたホセ・コロナド)
(『瞳をとじて』唯一の受賞者ホセ・コロナド)
◎助演女優賞
イツィアル・ラスカノ 「20.000 especies de abejas」
アナ・トレント 「Cerrar los ojos」
クララ・セグラ 「Creatura」
ルイサ・ガバサ 「El maestro que prometió el mar」
アネ・ガバライン 「20.000 especies de abejas」
◎新人男優賞
ブリアネイトル 「Campeonex」 監督ハビエル・フェセル
フリオ・フー・チェン 「Chinas」
ラ・ダニ 「Te estoy amando locamente」
オマール・バナナ 「Te estoy amando locamente」
マティアス・レカルト 「La sociedad de la nieve」
(感動的なスピーチをしたロベルト・カネッサ役のマティアス・レカルト)
◎新人女優賞
Xinyi Ye 「Chinas」
Veju Ji 「Chinas」
クラウディア・マラジェラダ 「Creatura」
サラ・ベッカー 「La contadora de películas」 監督Lone Scherfig
ジャネット・ノバス 「O corno」(『ライ麦のツノ』東京国際映画祭2023)*
監督ハイロネ・カンボルダ
(左手にガザ支援のステッカー)
◎プロダクション賞
パブロ・ビダル 「20.000 especies de abejas」
マリア・ホセ・ディエス 「Cerrar los ojos」
エドゥアルド・バジェス 「Saben aquell」
レイレ・アウレコエチェア、ルイス・グティエレス「Valle de Sombras」
監督サルバドル・カルボ
マルガリータ・ウゲエト 「La sociedad de la nieve」
◎撮影監督賞
ジナ・フェレル・ガルシア 「20.000 especies de abejas」
バレンティン・アルバレス 「Cerrar los ojos」
ベト・ロウリヒ 「Un amor」
ディエゴ・テレナス 「Una noche con Adela」 監督ウーゴ・ルイス
ペドロ・ルケ 「La sociedad de la nieve」
(スピーチでバヨナ監督をうるうるにしたペドロ・ルケ)
(会場の母親に感謝の言葉を述べた受賞者、プレゼンターのレオノール・ワトリング)
◎編集賞
ラウル・バレラス 「20.000 especies de abejas」
アスセン・マルチェナ 「Cerrar los ojos」
ファティマ・デ・ロス・サントス 「Mamacruz」 監督パトリシア・オルテガ
フェルナンド・フランコ 「Robot Dreams」(『ロボット・ドリームズ』)
アンドレス・ジル、ジャウマ・マルティ 「La sociedad de la nieve」
◎美術賞
イサスクン・ウルキホ 「20.000 especies de abejas」
クル・ガラバル 「Cerrar los ojos」
カルロス・コンティ 「La contadora de películas」
マルク・ポウ 「Saben aquell」
アライン・バイネー 「La sociedad de la nieve」
◎衣装デザイン賞
ネレア・トリホス 「20.000 especies de abejas」
マリア・アルメンゴル 「El maestro que prometió el mar」
メルセ・パロマ 「La contadora de películas」
ララ・ウエテ 「Saben aquell」
フリオ・スアレス 「La sociedad de la nieve」
◎メイクアップ&ヘアー賞
アイノア・エスキサベル、ジョネ・ガバライン 「20.000 especies de abejas」
エリ・アダネス、フアン・ベガラ 「La ternura」 監督ビセンテ・ビリャヌエバ
ケイトリン・アチソン、ベンハミン・ペレス、ナチョ・ディエス 「Saben aquell」
サライ・ロドリゲス、ノエ・モンテス、オスカル・デル・モンテ 「Valle de Sombras」
アナ・ロペス=プイグセルベル、ベレン・ロペス=プイグセルベル、モンセ・リベ
「La sociedad de la nieve」
◎録音賞
エバ・バリニョ、コルド・コレリャ、サンティ・サルバドル
「20.000 especies de abejas」
タマラ・アレバロ、ファビオラ・オルドヨ、ヤスミナ・プラデラス 「Campeonex」
イバン・マリン、フアン・フェロ、カンデラ・パレンシア 「Cerrar los ojos」
ハビ・マス、エドゥアルド・カストロ、ヤスミナ・プラデラス 「Saben aquell」
ホルヘ・アドラドス、オリオル・タラゴ、マルク・オルツ
「La sociedad de la nieve」
(ホルヘ・アドラス)
◎特殊効果賞
マリアノ・ガルシア・マルティ、ジョン・セラーノ、ダビ・エラス、フアン・ベルダ、
インデラ・マルティン「20.000 especies de abejas」
エネリツ・サピアイン、イニャーキ・ジル〈Ketxu〉 「La ermita」
監督カルロタ・ペレダ
マリアノ・ガルシア・マルティ、ジョン・セラーノ、フアン・ベントゥラ、
アンパロ・マルティネス 「Tin & Tina」 監督ルビン・ステイン
ラウル・ロマニーリョス、ミリアム・ピケル 「Valle de Sombras」
パウ・コスタ、フェリックス・ベルヘス、ラウラ・ペドロ
「La sociedad de la nieve」
◎アニメーション賞
「Dispararon al pianista (They Shot The Piano Player)」*
製作クリスティナ・ウエテ、フェルナンド・トゥルエバ、ハビエル・マリスカル
「El sueño de la Sultana」*
同チェロ・ロウレイロ、ディエゴ・エルゲラ、イサベル・エルゲラ、他
「Hanna y los monstruos」 同アンヘレス・エルナンデス、ダビ・マタモロス、
ロレナ・アレス
「Monias」 同クレベル・ベレッタ、フランシスコ・セルマ、ジョルディ・ガスル、他多数
「Robot Dreams」 同アンヘル・ドゥランデス、イボン・コルメンサナ、
パブロ・ベルヘル、他
(パブロ・ベルヘル)
◎ドキュメンタリー賞
「Caleta Palace」 製作ホセ・アントニオ・エルゲタ、レティシア・サルバゴ・ソト
「Contigo, contigo y sin mí」 同アマヤ・ビリャル・ナバスクエス、カルロ・ドゥルシ
「Esta ambición desmedida」 同アントン・アルバレス、クリスティナ・トレナス、
マリア・ルビオ、イサベル・ウトレラ・アルファロ、他多数
「Iberia, naturaleza infinita」 同アルトゥロ・メノル、クリスティナ・メノル
「Mientras seas tú, el aquí y ahora de Carme Elias」*
同クラウディア・ピント・エンペラドール、
イバン・マルティネス=ルファト、ジョルディ・リョルカ、他多数
◎イベロアメリカ映画賞
「Alma viva」(ポルトガル) 監督クリステレ・アルベス・メイラ
「La pecera」(プエルトリコ)* 同グロリマー・マレロ・サンチェス
「Puan」(アルゼンチン)* 同ベンハミン・ナイシュタット、マリア・アルチェ
「Simón」(ベネズエラ) 同ディエゴ・ビセンティニ
「La memoria infinita」(チリ) 同マイテ・アルベルディ
◎ヨーロッパ映画賞
「Aftersun」(イギリス『aftersun/アフターサン』公開) 監督シャーロット・ウェルズ
「Las ocho montañas」(伊、「Le otto montagne」『帰れない山』 プライムビデオ)
同シャルロッテ・ファンデルメールシュ、フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン
「Safe Place」(クロアチア、原題「Sigurno mjesto」) 同ユライ・レロティック
「Sala de profesores (The Teachers’ Lounge)」(ドイツ) 同イルケル・チャタク
「Anatonia de una caída」(フランス『落下の解剖学』公開)
同ジュスティーヌ・トリエ
◎短編映画賞
「Carta a mi madre para mi hijo」 監督カルラ・シモン、
製作マリア・サモラ・モルシーリョ
「Cuentas divinas」 監督エウラリア・ラモン、製作アンナ・サウラ
「La loca y el feminista」監督サンドラ・ガジェゴ、
製作マリア・デル・プイ・アルバラード、他
「París 70」 監督ダニ・フェイシャス、製作アルバ・フォルン、ダニ・フェイシャス
「Aunque es de noche」 監督ギジェルモ・ガルシア・ロペス
製作ダミアン・メゲルビ、ダビ・カサス・リエスコ、マリナ・ガルシア・ロペス他
(左から2人目がガルシア・ロペス監督)
◎短編ドキュメンタリー賞
「BLOW !」監督ネウス・バリュス、製作ミリアム・ポルテ、ネウス・バリュス
「El bus」監督サンドラ・レイナ、
製作ジャウマ・ファルガス・コル、バレリー・デルピエール
「Herederas」監督・製作シルビア・ベネガス・ベネガス
製作フアン・アントニオ・モレノ・アマドール
「Una terapia de mierda」監督ハビエル・ポロ、製作ハビエル・ポロ、ホルヘ・アコスタ他
「Ava」 監督・製作マベル・ロサノ
◎短編アニメーション賞
「Becarias」 監督マリナ・コルトン、マリナ・ドンデリス、ヌリア・ポベダ
製作イバン・マドレル、レティシア・モンタルバ、パブロ・ムニョス・ナハロ、他
「Todo bien」監督・製作ディアナ・アシエン・マンソロ
製作ロシオ・ベナベンテ・メンデス
「Todo está perdido」監督カルラ・ペレイラ、フアンフラン・ハシント
製作アルバロ・ディアス、ダビ・カストロ・ゴンサレス、ホルヘ・アコスタ
「Txotxongiloa」監督・製作ソニア・エステベス
「To bird or not to bird」 監督マルティン・ロメロ
製作チェロ・ロウレイロ、イバン・ミニャンブレス
◎国際ゴヤ賞
シガニー・ウィーバー(ニューヨーク1949)アメリカの女優、サンセバスチャン映画祭2016ドノスティア栄誉賞を受賞、J. A. バヨナの『怪物はささやく』に少年の祖母役で出演している。ゴールデングローブ賞(助演女優賞受賞)、アカデミー賞、グラミー賞他、ノミネート多数。トロフィーをドノスティア栄誉と同じバヨナ監督から受けとりました。受賞スピーチがメモなしも印象的、彼女のスペイン語版吹き替え声優マリア・ルイサ・ソラに「心から感謝する」とスピーチしたのも、受賞者の濃やかな心づかいが感動的でした。
*キャリア&フィルモグラフィー紹介記事は、コチラ⇒2016年07月22日
(プレゼンターはバヨナ監督、会場は総立ちのオベーション)
(スペイン語と英語でスピーチする受賞者、ドノスティア栄誉賞と同じ緑のドレスで)
ゴヤ賞2024ガラの落穂ひろい*ゴヤ賞202 ⑧ ― 2024年02月19日 15:32
涙の乾くまもなかったJ.A.バヨナのための授賞式
★J. A. バヨナが泣きっぱなしの祭典となりましたが、早やチームはオスカー賞のプロモーションに全力で邁進していることでしょう。12部門受賞はオスカー賞ノミネート5作品に残ったことも影響しているのかもしれません。『雪山の絆』を見てくれた人が既に1億5千万人を突破したということですからネットフリックスの功績は無視できません。製作者の一人ベレン・アティエンサも「資金的に窮地に陥り、タオルを投げそうになったとき、ネットフリックスが手を差し伸べてくれた」と感謝の辞を述べ、また「パブロ・ヴィエルチによって書かれた著作がなかったら、このプロジェクトも映画も存在しなかった」と原作者を讃えていた。本作はスペインで英語でなくスペイン語で製作され、「不可能と思われたが10年かかってレベルの高いものになった」と。
(スペイン映画アカデミー会長フェルナンド・メンデス=レイテ)
★新人男優賞を受賞したアルゼンチンのマティアス・レカルト(ロベルト・カネッサ役)の受賞スピーチはいささか長すぎましたが、興奮が抑えられなかったのでしょう。監督やチームの仲間は当然として、「アンデスの生存者、生還できなかった人々と私たちに彼らの物語を語らせてくれた遺族の方々、僕が演じたロベルト・カネッサ、母、兄弟、祖母、叔父たち、友人、ガールフレンド、とりわけ映画製作前に亡くなったお父さん、パパにトロフィーを捧げます」と、繰り返し感謝を述べて会場を感動させました。彼だけでなく支えてくれたパパやママなど家族に感謝を述べる受賞者がなんと多かったことでしょう。
(天国の父親に「パパ、ありがとう」とマティアス・レカルト)
★最多15部門ノミネートのエスティバリス・ウレソラの『ミツバチと私』は、新人監督賞とオリジナル脚本賞、少女(少年?)の祖母役アネ・ガバライン(サンセバスティアン1963)の助演女優賞の3賞、受賞者はゴヤ賞初ノミネート初受賞でした。舞台にソフィア・オテロが登場した段階でガバラインの受賞は分かりました。ソフィアの涙もむべなるかな。受賞者については、TVミニシリーズ「Patria」(20)でフェロス賞とフォルケ賞主演女優賞にノミネート、バスク語映画『フラワーズ』(14)などに出演している。
*「Patria」作品&キャリア紹介は、コチラ⇒2020年08月12日
(受賞者アネ・ガバラインとソフィア・オテロ)
★スペインの代表的な映画賞であるフォルケ賞、フェロス賞、ガウディ賞とは大分違う結果になりました。主演男優賞のダビ・ベルダゲルの4冠は特別で、向かうところ敵なしの快進撃でした。カルラ・シモンの『悲しみに、こんにちは』で助演男優賞を受賞していますが、今回は受賞確率も高く「不安でたまらなかった」由。主演女優賞のマレナ・アルテリオは、ガウディ賞にはノミネートさえされませんでしたが、下馬評通り受賞しました。22年前の新人女優賞ノミネート以来の晴れ舞台、生後数ヵ月でアルゼンチンから亡命した。父親エクトル・アルテリオは20年前のゴヤ栄誉賞2004の受賞者、兄エルネストとトロフィーを手渡した。軍事独裁政権と闘ったアルゼンチン国民に向けて、「共に喜びを楽しみたい、両親が私の道案内者、歴史的記憶、共生と平和の闘士だった両親に感謝を捧げたい」とスピーチした。
(マレナ・アルテリオ)
「もらった以上にお返ししています」とアルモドバル監督
★受賞者スピーチより会場の拍手喝采を受けたのが作品賞プレゼンターの一人ペドロ・アルモドバルでした。『オール・アバウト・マイ・マザー』25周年とかで大物5人が登壇しました。「ある人が、政治家ですが、誰も興味を示さないつまらない映画を作るために助成金を貰っている苦労知らずの〈お坊ちゃんたち〉と私たちを批判しました。しかしはっきり言いますが、我々シネアストたちは前払い金として受けとっているお金以上を十二分に返却しております」と。ある政治家とは、カスティーリャ・イ・レオン自治州の副知事フアン・ガルシア・ガジャルドのことで、援助で生活している〈お坊ちゃんたち〉と批判したようです。
(「もらった以上に・・・」とスピーチするペドロ・アルモドバル)
★座席にいた本人にもカメラが移動するというおまけつき、後に一緒に出席していたエルネスト・ウルタスン文化大臣も「映画人はお坊ちゃんの集りではない。誇りをもって映画を製作している」と援護射撃、バジャドリード市長を長年務めた日本の国交省に当たる運輸相のオスカル・プエンテも、「アルモドバルは、文化にもっと敬意をはらえとガルシア・ガジャルドをたしなめたのさ」とコメントしたようです。日本でも似たようなことありましたね。
(作品賞プレゼンター、アントニア・サン・フアン、マリサ・パレデス、
アルモドバル、ペネロペ・クルス、セシリア・ロス)
★ゴヤ賞ガラには来る来ないは別として、首相以下関係者が招待されるのが慣わしです。今年もペドロ・サンチェス首相が出席していました。目下ヨーロッパは戦争中ですから停戦を呼びかけるステッカーを付けてる人、カルロス・ベルムト事件に端を発した反性暴力の扇子を手にする人が多く見られました。ガラのホストの一人アナ・ベレンやエスティバリス・ウレソラなどは「ガザでの武器取引のストップ」のステッカーを、イサベル・コイシェやマリサ・パレデス、映画アカデミー副会長スシ・サンチェスなどスペインを代表するベテラン勢が「もう性暴力は終わりにしよう」と書かれた扇子を持ってアピールしていた。
(映画アカデミー会長メンデス=レイテとペドロ・サンチェス首相)
(アナ・ベレン)
(ステッカーには ”Stop comercio de armas en Gaza” と読める)
(新人女優賞のプレゼンターたち、中央スシ・サンチェス、全員扇子を携えて登壇した)
(CIMA女性シネアスト協会の代表者たち)
(マリサ・パレデス)
(イサベル・コイシェ、扇子には ”#SEACABÓ” と書かれている)
★2023年も多くの監督、脚本家、俳優、声優、製作者が旅立ちました。訃報をアップしたコンチャ・ベラスコ(84歳)、会場に息子マヌエル・マルティン・ベラスコが出席していた。若くして亡くなったイツィアル・カストロ、1970年代に最も人気のあったカルメン・セビーリャ(92歳)やコメディを得意としたヘスス・グスマン(97歳)など既に銀幕から遠ざかっていた俳優たちにもオマージュが捧げられた。
(映画、舞台、TVと活躍したコンチャ・ベラスコ)
授賞式のベストドレッサーは・・・*ゴヤ賞2024 ⑨ ― 2024年02月21日 14:53
ぶっちぎりのナンバーワンはペネロペ・クルス
(やはり人気のアルモドバルとペネロペ・クルス)
★授賞式の視聴率は23,5パーセント、約236万人と発表されました。多いのか少ないのか分かりません。ファッションに興味がなくても参加者の顔ぶれが分かるので、今年もベストドレッサーを特集しました。ノミネート対象者、トロフィーを受け渡すプレゼンターが中心ですが、ビクトル・エリセのように新作『瞳をとじて』が3カテゴリーにノミネートされているにもかかわらず出席しない人もおりました。『ミツバチのささやき』も『エル・スール』もゴヤ賞がなかった時代の映画であり、本作が初ノミネートでした。映画祭は別として映画賞ガラに珍しく参加したアナ・トレントの姿がありました。彼女は1997年、主演女優賞にノミネートされた『テシス 次に私が殺される』に続いて2回目、本作はアメナバルのデビュー作であり、作品・新人監督・主演男優賞など8ノミネートでしたが、トレントだけ受賞を逃したのでした。
(ホセ・コロナドと父娘を演じたアナ・トレント、アルマーニ、宝石スアレス)
(主演男優賞ノミネート、エリセ監督の分身を演じたマノロ・ソロ)
(共演者マリア・レオン、イタリアのディースクエアード2 )
★総合司会者のアナ・ベレンとロス・ハビスことハビエル・アンブロッシ&ハビエル・カルボは衣装替えしましたが、レッドカーペットに登場したときの衣装。カルラ・シモン、ピラール・パルメロ、アラウダ・ルイス・デ・アスアはそれぞれゴヤ賞受賞者です。既に登壇している受賞者を除き、デザインの分かるものは併記しました。
(ホスト役のアナ・ベレン、デザインはレドンド・ブランド、宝石ダミアーニ)
(ロス・ハビス、左がアンブロッシ、パロマ・スペイン)
(カルラ・シモン監督、テレサ・エルビグ/ヘルビッヒHelbig)
(ピラール・パルメロ監督、テレサ・エルビグ、宝石ホセ・ルイス・ホジェリアス)
(昨年の新人監督賞を受賞したアラウダ・ルイス・デ・アスア)
(監督賞ノミネートのエレナ・マルティン、ジョアン・ロス、宝石シムエロ)
(ホナス・トゥルエバとパートナーで新人監督賞ノミネートのイチャソ・アラナ)
★ある雑誌社のアンケートによると、ベストドレッサーのナンバーワンは、シャネルの専属モデルでもあるペネロペ・クルスでした。30パーセントとぶっちぎり、2位シルビア・アバスカルの10パーセントを大きく引き離しました。誰のデザインかも重要ですが、着る人が決め手で、支流は去年ほどではないが黒、プラスと赤とスペイン人の好みがわかります。
(第1位30%、ペネロペ・クルス、シャネル、2024年秋冬コレクション)
(第2位10%、シルビア・アバスカル、オスカル・デ・ラ・レンタ、宝石ティファニー)
(第3位9%、ナタリア・サンチェス、バロ・ルカス、宝石ラバト)
(第3位9%、アナ・ルハス、デザインはアルマーニ・プリヴェ、宝石ブルガリ)
(第5位7%、アイタナ・サンチェス=ヒホン、レドンド・ブランド、宝石メシカ)
(第5位7%、ベレン・ルエダ、バレンスエラ・アテリエル)
★以下は当ブログに登場してもらった方に絞りました。
(アントニア・サン・フアン、アンドリュー・ポクリッド、宝石デル・パラモ)
(#SEACABÓのアピールを忘れないセシリア・ロス)
(カエタナ・ギジェン・クエルボ、イサベル・サンチス、宝石イグナシオ・トレス)
(バルバラ・レニー、ウルグアイ出身のガブリエラ・ハースト、宝石カルティエ)
(ベレン・クエスタ、アルマーニ・プリヴェ、宝石ダミアーニ)
(エレナ・アナヤ、アルマーニ・プリヴェ、宝石バルセナ、メークはディオール)
(レオノル・ワトリング、テレサ・エルビグ、宝石ラバト)
(インマ・クエスタ、アリシア・ルエダ・アテリエル、宝石メシカ)
(マカレナ・ガルシア、ロエベ、宝石ブルガリ)
(ブランカ・ロメロ、イサベル・サンチス、宝石スアレス)
(ネレア・バロス、ペドロ・デル・イエロ、宝石メシカ)
(主演女優賞候補者のマリア・バスケス、アナ・プラドス、宝石アラマ・ディベルサ)
(主演女優賞ノミネートのカロリナ・ジュステ、宝石はメシカ)
(マルタ・エトゥア、ガブリエル・ラージ、宝石スアレス)
(マカレナ・ゴメス、マルシアーノ・バイ・ゲス、宝石ゲス)
(エレナ・サンチェス、アリシア・ルエダ、宝石マリナ・ガルシア)
(アンナ・カスティーリョ、スペインのシビラ、宝石カルティエ)
(グレタ・フェルナンデス、バレンティノ、宝石ラバト)
(ヌリア・ガゴ、フアン・ドゥヨス、宝石ホセ・ルイス・ホジェリアス)
(ブルナ・クシ、ハーベイ・クラブ、メークはディオール・ビューティー)
(歌手のアマイア、イタリアのスポーツマックス、宝石バレンシアのシムエロ)
(クリスティナ・カスターニョ、レバノン出身のズハイル・ムラド、宝石ブルガリ)
★今年1年間に鬼籍入りしたシネアストたちを偲ぶ〈アディオス〉のコーナー、ゴヤ賞を2回受賞しているシンガーソングライターのシルビア・ペレス・クルスと、ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト2017の優勝者サルバドール・ソブラルの演奏で見送った。彼はポルトガルに初めてトロフィーをもたらした革命児。また3人の総合司会者によって、12月2日に亡くなったばかりのコンチャ・ベラスコへのオマージュとして、“La chica ye-ye” と "Mama , quiero ser artista" が捧げられた。
(シルビア・ペレス・クルス、サルバドール・ソブラル)
(歌って踊ってコンチャを見送ったアナ・ベレンとロス・ハビス)
第27回マラガ映画祭ノミネーション発表*マラガ映画祭2024 ① ― 2024年02月29日 18:46
セクション・オフィシアル19作、うち11作がスペイン映画
(第27回マラガ映画祭2024の公式ポスター)
★今年で第27回を迎えるマラガ映画祭の季節がやってきました。去る2月15日、マドリードのスペイン映画アカデミー本部でセクション・オフィシアル(全19作)を含む全カテゴリーが、総指揮のフアン・アントニオ・ビガル、マラガ市議会文化市議会員マリアナ・ピネダ、映画アカデミー会長フェルナンド・メンデス=レイテなどの列席にて発表になりました。開催期間は3月1日から10日まで、前回は10日から19日、前々回は18日から27日でしたので大分早まりました。3月になったらと、のんびり構えていましたがとんだ番狂わせです。セクション・オフィシアルの紹介も間に合わず、すべてが後追いのアップになります。例年通り大賞マラガ―スール賞を含む特別賞から紹介いたします。
(後列左から4人目メンデス=レイテ、マリアナ・ピネダ、アントニオ・ビガル)
★ナリタ・スタジオ制作の公式ポスターはマラガ市の三大要素を表現したそうで、バックの青色はマラガのコスタ・デル・ソルの海と空、白色は海岸ゾーンの日陰棚パーゴラを表したヤシ林、丸いオレンジ色はマラガを代表するポピュラーなお菓子トルタ・ロカ、パイ生地を2枚重ねた中にカスタードクリームを入れ、上にオレンジのフロスティングとサワーチェリーをトッピングしたケーキの三つです。
★マラガ映画祭はスペイン語(カタルーニャ語、バスク語、ガリシア語を含む)とポルトガル語の映画に特化した映画祭、従ってスペイン、ポルトガル以外ではラテンアメリカ諸国からの応募が主ですが、2言語であれば国は問わないということです。2月10日に開催されたゴヤ賞でもノミネーション、受賞作が本祭から選ばれており、秋のサンセバスチャン映画祭同様重要な春の映画祭です。メイン会場はセルバンテス劇場で、前庭にレッドカーペットが敷かれます。
*マラガ映画祭2024特別賞*
◎マラガ―スール賞(スール紙とのコラボ)
ハビエル・カマラ(俳優、監督)、1967年ラ・リオハ生れ、舞台俳優を目指してログローニョの演劇学校で演技を学んだ後、マドリードの王立演劇芸術上級学校PESADで本格的に学ぶ。キャリア&フィルモグラフィーは、ダビ・トゥルエバの『「ぼくの戦争」を探して』で紹介していますが、別途アップの予定。
*キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2014年11月21日
◎レトロスペクティブ賞―マラガ・オイ(マラガ・オイ紙とのコラボ)
マルセロ・ピニェイロ(監督、脚本家、製作者)、1953年ブエノスアイレス生れ、代表作は実話をベースにした『逃走のレクイエム』(20)がヒット、ゴヤ賞2001スペイン語外国映画賞を受賞した。2009年『木曜日の未亡人』、2013年『イスマエル』、2005年の「El método」でキャリア&フィルモグラフィー紹介をしています。
*『逃走のレクイエム』の作品紹介は、コチラ⇒2022年06月16日
*キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2013年12月19日
◎マラガ才能賞―マラガ・オピニオン(マラガ・オピニオン紙とのコラボ)
ピラール・パルメロ(監督、脚本家)、北スペインのサラゴサ生れ、2020年デビュー作『スクールガールズ』がベルリン映画祭でプレミアされ、同年マラガ映画祭の金のビスナガ作品賞を受賞した。続く第2作「La maternal」はサンセバスチャン映画祭2022セクション・オフィシアルにノミネートされた。キャリア&フィルモグラフィー紹介をしています。
*『スクールガールズ』の作品紹介は、コチラ⇒2020年03月16日
*「La maternal」の作品紹介は、コチラ⇒2022年08月01日
◎リカルド・フランコ賞(映画アカデミーとのコラボ)
アナ・アルバルゴンサレス(美術監督、プロダクションデザイナー、衣装デザイナー)、1962年マドリード生れ、1984年、ヘラルド・ベラが美術監督を務めたイタリアと共同製作したTVシリーズ「Las pazos de Ulloa」の衣装デザイナーとしてキャリアをスタートさせた。1986年、マヌエル・グティエレス・アラゴンの「La mitad del cielo」(金貝賞受賞作品)の衣装を手掛けたベラのアシスタントとして参加、後にベラが監督した「La Celestina」ではゴヤ賞1997美術賞にノミネートされた。当時若手女優として脚光を浴びるようになったペネロペ・クルスやマリベル・ベルドゥが着用する中世末期の衣装の時代考証が評価されたもの。他にカルロス・サウラの『恋は魔術師』(86)、リカルド・フランコの「Berlin Blues」(88)など、ベラのアシスタントとして実績を重ねていく。
★またイボンヌ・ブレイクのアシスタントとして彼女の薫陶を受けている。ブレイクはイギリス出身だがスペイン映画アカデミー会長を引き受け、その在任中の2018年に急逝したオスカー賞受賞者でもある衣装デザイナーでした。サウラの「La noche oscura」でゴヤ賞1990衣装デザイン賞にノミネート、カンヌ映画祭1995でプレミアされたケン・ローチの『大地と自由』(英独西伊仏米合作)でも衣装デザインを手掛けている。2011年、アグスティ・ビリャロンガの『ブラック・ブレッド』で遂にゴヤ賞とガウディ賞の美術賞をダブるで受賞でき、遂にトロフィーを手にすることができた。ビリャロンガとは「Incerta Gloria」でガウディ賞2018にノミネートされている。TVシリーズの超大作『ゲーム・オブ・スローンズ』(11~19)に2015年から17年にかけて美術監督として20話手掛けている。TVシリーズではHBOのため2022年「¡Garclia!」(6話)、古くはエンリケ・ウルビスの『貸金庫507』のプロダクションデザインと美術に参加している。
(美術賞のトロフィーを手にしたアナ・アルバルゴンサレス、ゴヤ賞2011授賞式)
◎ビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞
ロラ・エレーラ(映画、舞台、TV女優)、1935年バジャドリード生れ、88歳の現役女優です。初登場、長いキャリアということで次回別途にアップいたします。
◎金の映画
「Las nuevos españoles」(1974、仮訳「新しいスペイン人」)、監督ロベルト・ボデガス(マドリード1933~2019)は監督、脚本家。ナショナル・シンジケート・オブ・スペクタル1974年の最優秀芸術功績賞、作品・脚本賞他を受賞。キャストはホセ・サクリスタン、マリア・ルイサ・サン・ホセ、アンパロ・ソレル・レアル、アントニオ・フェランデス、マヌエル・アレクサンドル他、スペインの保険会社が多国籍企業に吸収合併されたため近代化を図ることになる。従業員は新しい状況と目標に適応するための訓練を家族ぐるみで受けねばならなくなる。70年代の多国籍企業のエリート社員をからかったコメディ。
(ホセ・サクリスタン、マリア・ルイサ・サン・ホセを配したポスター)
★ボデガスはポピュラーとインテレクチュアルの中間を狙った第三の路線〈tercera vía〉を模索した監督。長年にわたって助監督を務め、1971年、「Españolas en París」(仮訳「パリのスペイン女性たち」)で長編デビュー、1970年代にパリにメイドとして出稼ぎに行く女性たちの姿を描いた。昨年鬼籍入りしたラウラ・バレンスエラ、ゴヤ賞2024のホストを務めたアナ・ベレンなどが主演している。1972年のシネマ・ライターズ・サークル新人賞、作品賞、女優賞(ラウラ・バレンスエラ)など受賞歴多数。
(晩年のロベルト・ボデガス)
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