国民的歌手ラファエルにマラガの特別賞*マラガ映画祭2023 ③2023年03月01日 15:28

      国民的歌手ラファエルに特別賞の一つビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞

    

       

 

126日、60年の輝かしいキャリアを誇るラファエル・マルトスに、マラガ映画祭の特別賞の一つビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞授与の発表がありました。1943年ハエン県リナレス生れのスペインの大歌手は愛称〈ラファエル〉としてより広く知られていますが、俳優としての才能も発揮、祖父母から孫世代まで、クラシックからロックまで幅広く活躍、スペインで最も愛されているミュージシャンにしてスター、彼の遺産は国の遺産とまで称されています。サン・アントニオ教会の聖歌隊に入ったのはわずか4歳、ザルツブルグ音楽祭で子供の声賞を受賞したのは9歳でした。1962年ベニドルム歌唱フェスティバルの優勝を機にプロとしての活躍が始まりました。

 

★俳優としてミュージカル映画出演のかたわら、テレビの「ラファエル・ショー」や「ラファエルの世界」のシリーズ番組に出演、その驚異的なボイスと彼独特の個性的なスタイルで視聴者を魅了していった。それは国内だけでなくニューヨークのカーネギーホール、ラジオシティ・ミュージックホール、マディソン・スクエア・ガーデン、世界のアーティストが出演するパリのオランピア劇場、メキシコで最も格式の高い劇場である芸術院宮殿、ロンドンのロイヤル・アルバートホールの舞台にも立った。大きな成功と才能に溺れることなく、常に新しい聴衆を開拓してきた受賞者は、後進の若いアーティストたちの鑑となっている。

 

★映画出演について触れると、1965年、マリオ・カムスの長編3作目となるミュージカル・コメディCuando tú no estásでデビューした。サンタンデール出身のカムスは2021年秋86歳で鬼籍入りしてしまいましたが、60年代に登場した重要な監督の一人です。ほかにラファエルを主役にしたミュージカル「Al ponerse el sol」(67)と「Digan lo que digan」(68)の計3本を立て続けに撮っている。同時期に撮った「Con el viento solano」はカンヌ映画祭1966コンペティション部門にノミネートされ、本邦でも1984年開催のスペイン映画祭で『厄介者』の邦題で上映されている。ほかにベルリン映画祭1982金熊賞受賞の『蜂の巣』、カンヌ映画祭1984審査員スペシャル・メンション受賞の『無垢なる聖者』などが代表作でした。

    

        

         (デビュー作Cuando tú no estás」のポスター

 

★カムスの後を継いだのがビセンテ・エスクリバ1969年の長編3作めEl golfoと、4作目ミュージカル「El ángel」、5作めドラマ「Sin un adiós」(70)の3本を撮っている。1913年バレンシア生れと年齢的には年長ですが、エスクリバはバレンシア大学で哲学と文学の博士号を持っており、監督だけでなく作家、脚本家、製作者、教育者といくつもの顔を持っていました。映画界入りは遅く脚本家として1948年にスタートさせている。監督デビューは60年代に入ってからで、90年代にはTVシリーズでヒット作を飛ばしていた監督。

    

      

            (ミュージカルEl golfo」のポスター

 

1973年、ハビエル・アギレ監督のドラマ「Volveré a nacer」を最後に銀幕から遠ざかるが、今世紀に入ってから、バスク出身の鬼才アレックス・デ・ラ・イグレシアの「Balada triste de trompeta」(10)にヴォイス出演している。本作は『気狂いピエロの決闘』の邦題で公開された。2015年には同監督のヒット作「Mi gran noche」に久々に主演してその健在ぶりを示した。ラテンビート映画祭で『グラン・ノーチェ!最高の大晦日』のタイトルで上映されました。マリオ・カサス、ペポン・ニエト、ブランカ・スアレス、カロリナ・バング、カルロス・アレセス、カルメン・マチ、サンティアゴ・セグラと次々に登場するスターたちのドタバタ演技にファンは大喜びでした。

    

       

          (上段左がラファエル、右がマリオ・カサス)

         

        

            (『グラン・ノーチェ』のプレゼンテーション中のラファエル)

      

312日に開催される「ビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞サークル」で、カムスのCuando tú no estás」と、エスクリバの「El golfo」の上映が決定しており、当日特別賞の授与式が予定されているようです。

 

★本賞以外の映画関係の受賞歴として、ACE1970198219841992受賞、スペイン音楽賞2006,イベロアメリカ・プラチナ賞2019栄誉賞、長年の功績に対してラジオ・オレ賞、2018年マドリード市の文化芸術に貢献した人に贈られるHijo Adoptivo de la ciudad de Madrid いわゆる金のメダルに任命された。彼は上述したようにリナレス生れですが、生後9ヵ月でマドリードに移住、人生の重要な節目、例えば歌手デビュー、初コンサート、初レコード契約、映画デビュー、結婚、すべてがマドリードで始まっているマドリっ子です。ほかに2022年ビルボード生涯功労賞(ラテンミュージック)を受賞、国際ツアーを再開している。パブロ・ロペスによって作曲、プロデュースされた Victoria を発表します。

    

       

     (マドリード市長マヌエラ・カルメナと金のメダルを首にかけた受賞者

  

       

(ラ・マンチャ出身のアルモドバルも同時に受賞)


セクション・オフィシアル(コンペ部門)①*マラガ映画祭2023 ④2023年03月03日 18:26

              26回マラガ映画祭2023ノミネーション長編映画全20

 

        

★コンペティション部門セクション・オフィシアルは全20作、新人発掘の映画祭でもあるのでデビュー作が多いのは当然として、最近はベテラン監督の多さが気になります。すでに既発の国際映画祭(ベルリン、ベネチアなど)でプレミアされたもの、中には受賞作もあるようです。作品数が多いので何回かに分けてアップする予定です。スペイン単独作品が8作と多く、メキシコ、ブラジルは別として、市場が狭く単独では製作できないアルゼンチン、チリ、コロンビアなどのラテンアメリカ諸国は合作です。ブラジルのポルトガル語映画は字幕入り上映、セッションは各3回ずつと例年通りです。

 

     26回マラガ映画祭セクション・オフィシアル全20

 

120.000 especies de abejas (仮題「2万種のミツバチ」)

データ:製作国スペイン、2022年、スペイン語・バスク語・フランス語、ドラマ、129分、長編デビュー作 

映画祭・受賞歴:ベルリン映画祭2023コンペティション部門でプレミア(222日)。ギルデ・ドイツ・フィルムアートシアター賞、バリナー・モルゲンポスト紙読者賞、主演のソフィア・オテロ(9歳)が銀熊主演賞を受賞という快挙、過去の受賞者は故フェルナンド・フェルナン≂ゴメスの2回、2012年にビクトリア・アブリルが『アマンテ』で受賞しているだけである。

   

        (銀熊主演賞のソフィア・オテロ、ベルリンFF授賞式)

  

監督紹介エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン1984年バスク自治州アラバ生れ、監督、脚本家、製作者。バスク公立大学視聴覚コミュニケーションの学位を取得、フィルム編集の制作理論、ESCAC(カタルーニャ映画視聴覚上級学校)で映画監督の修士号と映画ビジネスの修士号を取得、マーケティング、配給、国際販売などを学ぶ。2019年制作会社「Sirimiri Films」を設立。

フィルモグラフィー2012短編「Adri」、2016長編ドキュメンタリー「Voces de papel」(サンセバスチャン映画祭プレミア)、2018短編「Nor nori nork」、2020短編「Polvo somos」、2022短編「Cuerdas」はカンヌ映画祭「批評家週間」に正式出品、受賞歴多数、フォルケ賞短編部門受賞。

    

     

          (エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン監督)

   

キャスト:ソフィア・オテロ(アイトル/ルシア)、パトリシア・ロペス・アルナイス(母親アネ)、アネ・ガバライン(ルーデス)、イツィアル・ラスカノ(リタ)、サラ・コサル(レイレ)、マルチェロ・ルビオ(ゴルカ)、ウナックス・ヘイデンHeyden、他

ストーリー8歳になる少女ルシアは他人の期待に添わない。母親のアネは夏休みを利用して3人の子供たちと養蜂をしている実家に帰郷します。アネの母親リタ、叔母ルルド、3世代の女性たちが直面する疑いと怖れは、彼女たちの人生を変えてしまうだろう。性同一性を求めているルシアの物語。

 

       

    (ベルリンFFで絶賛されたルシア役のソフィア・オテロ、フレームから)

    

       

  

2)Bajo terapia (仮題「セラピー中」)

データ:製作国スペイン、2022年、スペイン語、コメディドラマ、93分、マティアス・デル・フェデリコの同名小説の映画化。

監督紹介ヘラルド・エレーロ1953年マドリード生れ、製作者、監督。1987年、制作会社「Tornasol Media」設立、国際的に活躍している大物プロデューサー、手がけた作品はドキュメンタリー、エグゼクティブを含めると150作を超える。うち2009年製作の『瞳の奥の秘密』は、アカデミー賞外国語映画賞を受賞、アルゼンチンにオスカー像をもたらした。ロドリゴ・ソロゴジェンの「El reino」ではゴヤ賞2019の監督賞以下7冠を制した。監督作品としては、実話をベースにした「Heroína」でマラガ映画祭2005の銀のビスナガ監督賞を受賞している。続く2006年には「Los aires dificiles」で金のビスナガ作品賞を受賞した。ほかに『戦火の沈黙、ヒトラーの義勇兵』(11)など。

 

     

  

キャスト:マレナ・アルテリオ、アレクサンドラ・ヒメネス、フェレ・マルティネス、アントニオ・パグド、エバ・ウガルテ、フアン・カルロス・ベリィド

ストーリー3組の夫婦が珍しいグループ・セラピーのセッションを受けに集まった。心理学者はカップルが一緒に対処しなければならないスローガンを同封した封筒を渡しました。提案されたメカニズムは、誰もが自分の意見を述べ、話し合い、最終的にありのままの自身をさらけ出すことを奨励します。ユーモアを主なツールとして、出会いは予想もしない限界まで複雑になるでしょう。

      

                       

      

 

3Desperté con un sueño (仮題「夢で目覚めた」)

データ:製作国アルゼンチン=ウルグアイ、2022年、ドラマ、76分、長編3作目

映画祭・受賞歴:ベルリン映画祭2023ジェネレーションKplus部門でプレミアされた。

監督紹介パブロ・ソラルス1969年ブエノスアイレス生れ、監督、脚本家、俳優、教師。ブエノスアイレス演劇学校に入学、コロンビア大学シカゴ校で映画を学んだ後帰国、母国でキャリアを積む。脚本家として、カルロス・ソリンの「Historias minimas」、アリエル・ウィノグラードの「Sin hijos」、フアン・タラトゥトなどとタッグを組んでいるほか脚本執筆多数。2011年「Juntos para siempre」で長編デビュー、2017年、名優ミゲル・アンヘラ・ソラを主役に起用した2作目「El último traje」が、『家へ帰ろう』の邦題で劇場公開された。SKIP映画祭上映の折来日している。新作が3作目になる。当ブログで「Sin hijos」の作品紹介をしています。

   

      

 

キャスト:ルーカス・フェロ(フェリペ)、ミレリャ・パスクアル、ロミナ・ペルフォ、マリアナ・スミレビテス、エマ・セナ

ストーリー:フェリペの日常は、湯治場の閑散とした通りを友人たちと自転車に乗ったり、フリースタイルでラップしたり、母親に隠れて演劇のクラスに行ったりして過ごしている。彼の情熱は夢のようなものだが、目覚めると直ぐ内容を書き留めておく。ある映画のオーディションの可能性に直面して、父親が亡くなった8歳のとき以来一度も会ったことのない父方の祖母を頼って首都に脱出する。フェリペは過去の断片をかき集め、自分が何になりたいかを考え始める。

 

      

   

                     (再会した祖母、フレームから)

    

      

  

4El castigo(仮題「罰」)

データ:製作国チリ=アルゼンチン、スペイン語、2022年、ドラマ、86

監督紹介マティアス・ビセ1979年サンティアゴ・デ・チリ生れ、監督、製作者、脚本家。2003年にデビュー作「Sábado」を若干23歳で撮った。マンハイム・ハイデルベルク映画祭のライナー・ヴェルナー・ファスビンダー賞を受賞した。2005年の2作目「En la cama」がバジャドリード映画祭2005の作品賞金の穂を受賞、『ベッドの中で』の邦題でミニ映画祭で上映された。5作目「La vida de los peces」はベネチア映画祭2010監督週間でプレミアされ、ゴヤ賞2011イベロアメリカ映画部門で受賞、ブニュエル賞ほか受賞歴多数。6作目「La memoria del agua」はウエルバ映画祭2015銀のコロン賞ほかを受賞、『水の記憶』としてNetflixで配信されている。2022年の「Mensajes Privados」はマラガ映画祭にノミネートされ、ニコラス・ポブレテが助演男優賞を受賞した。新作は9作目になる。

Mensajes Privados」の紹介記事は、コチラ20220314

   

    

        (マティアス・ビセ、マラガ映画祭2022のプレス会見)

 

キャスト:アントニア・セヘルス(アナ)、ネストル・カンティリャナ(マテオ)、カタリア・サアベドラ、ジャイル・フリ Yair Juri、サンティアゴ・ウルビナ(ルーカス)

ストーリー:アナとマテオは、悪さをしたので罰として数分間放っておいた息子が行方不明になってしまった。必死の捜索は、リアルタイムで森の中や自動車道などで行われる。80分間というもの夫婦は、恐怖、罪悪感、壊れやすい彼らの繋がり、最も厳しい発覚に直面する。アナがどこかで息子が見つからないよう願っているのは、彼が生れてからずっと幸せでなかったからだ。

   

       

     (息子を探すアナとマテオ)

 

   

セクション・オフィシアル(コンペ部門)②*マラガ映画祭2023 ⑤2023年03月06日 17:20

        

5El fantástico caso del Golem (仮題「ゴーレムのファンタスティックな出来事」)

データ:製作国スペイン、2022年、スペイン語、コメディドラマ、SF95分、公開スペイン616日予定、長編3作目。

監督紹介フアン・ゴンサレス&フェルナンド・マルティネス(バーニン・ペルセベスBurnin' Percebes)、脚本も同じ。フアン・ゴンサレスはESCAC(カタルーニャ映画視聴覚上級学校)で映画・テレビ・演劇の脚本を専攻。フェルナンド(IMDbナンド)・マルティネスは、バルセロナ大学オーディオビジュアル科卒(2015)、Burnin' Percebesは二人のグループ名。2014年から短編、長編を手がけている。

   

2020年、本作にも出演しているブルナ・クシとハビエル・ボテットを起用して、スーパー8ミリで撮ったファンタジー「La reina de los lagartos」がその斬新さで周囲を驚かせる。フェロス賞ポスター部門、スペシャル賞にノミネート、第7回リソマRizoma賞を受賞、セビーリャ・ヨーロッパ映画祭でも上映された。バルセロナのD'A映画祭ほかに参加している。2023年、制作会社Aquí y Allí Films で本作を撮る。現在アニメーション・シリーズ「Meretricius」、長編「Royal Films」が進行中。

    

  

     (手前フアン・ゴンサレス、後ろフェルナンド・マルティネス)

     


 (フェロス賞ポスター部門ノミネートのLa reina de los lagartos」から)

 

キャスト:ブライス・エフェ、ブルナ・クシ、ルイス・トサール(トニ)、アンナ・カスティーリョ、ハビエル・ボテット、ロジャー・コマ、ナオ・アルベト、ロベルト・アラモ、ダビ・メネンデス、ティト・バルベルデ

ストーリー:パーティが終わったあと、酔っぱらったダビは友人フアンの目の前でテラスから転落してしまいます。ダビの体は車のボンネットの上にぶつかりばらばらになりました。誰も騒ぎ立てていないようなので、フアンは何が起きたのか調べることにしました。こうして彼は空から降ってくるピアノと矛盾の迷宮に迷い込んでいきます。

   

     

 

 

6)Els Encantats(西題Los encantados  仮題「魔法にかけられて」

データ:製作国スペイン、2023年、カタルーニャ語(字幕上映)、ドラマ、108分、公開スペイン62日予定

監督紹介エレナ・トラぺ2作目「Las distancias」がマラガ映画祭2018で金のビスナガと監督賞を受賞、翌年のガウディ賞を受賞している。短編数編の後。「Blog」で長編デビュー、サンセバスチャン映画祭2010サバルテギ部門に出品、「ある視点」を受賞、CECの新人監督賞にもノミネートされた。2015年の「Palabras, mapas, secretos y otras cosas」は、イサベル・コイシェについてのドキュメンタリー、新作は長編3作目。脚本はミゲル・イバニェス・モンロイとの共同執筆。以下で監督紹介をしています。

Las distancias」の作品、及びキャリア&フィルモグラフィー紹介は、

  コチラ20180427

 

        

キャスト:ライア・コスタ(イレネ)、ダニ・ペレス・プラダ、ペップ・クルス、アイナ・クロテット、アイナラ・エレハルデ・ベル、デリア・ブルファウ、マルティ・アタンス

ストーリー:最近離婚したばかりのイレネは、4歳になる娘が父親と数日間過ごすことになり、初めて一人で自身に向き合っている。この新しい現実に適応できず、別荘のあるカタルーニャのピレネー山脈の小さな村に旅をしようと思い立つ。長い間失ったと感じていた安定と落着きを取り戻そうと考えたのだ。しかし、以前は親しい場所だったのに、次第に彼女の人生と同じようにイレネを圧倒し、自分の怖れを克服するには逃亡は役に立たないことを理解するだろう。

    

       

      

         (ライア・コスタ、ペップ・クルス、フレームから)

 

7Empieza el baile (仮題「ダンスを始める」)

データ:製作国アルゼンチン=スペイン、2022年、スペイン語、コメディドラマ、99分、撮影地メンドーサ(アルゼンチン)

監督紹介マリナ・セレセスキー1969年、ブエノスアイレス生れ、監督、脚本家、女優。本作が長編3作目、アムステルダム映画祭2016La puerta abierta」で長編デビュー、作品紹介をしています。20192作目の「Lo nunca visto」では、カルメン・マチ、ペポン・ニエトが出演している。ドキュメンタリーのほか短編多数。

La puerta abierta」の作品紹介は、コチラ⇒2017年01月12日

    

      

 

キャスト:ダリオ・グランディネッティ(カルロス)、メルセデス・モラン(マルガリータ)、ホルヘ・マラレ(ピチュキート)、パストラ・ベガ、アゴスティナ・ポッツイPozzi、ラウタロ・セラ、マルセロ・Xicarts、カロリナ・ソビシュSobisch

ストーリー:カルロスとマルガリータは、当時最も認められた有名なタンゴのカップルでした。今日では、その素晴らしさ、二人が共有した情熱、ステージ、旅、人生は何も残っておりません。カルロスはマドリードに住んでおり、マルガリータは忘却のブエノスアイレスに住んでいる。二人の切っても切れない友人ピチュキートと一緒に、カルロス・ガルデルの街からアンデス山脈の麓へ、彼らの記憶、怖れ、そして何よりも本当の望みを求めて旅立ちます。このクレージーな旅で彼らが避けてきた過去だけでなく、最もピュアな人生に出会えるでしょうか。

    

     

               (左から、カルロス、マルガリータ、ピチュキート)

   

   

 

8)La desconocida (仮題「見知らぬ人」)

データ:製作国スペイン、2022年、ドラマ、88分、長編映画3作目。

監督紹介パブロ・マケダ1985年マドリード生れ、製作者、監督、脚本家。2012年「Manic Pixie Dream Girl」で長編デビュー、マドリード・コンプルテンセ大学UCMの視聴覚コミュニケーションの学位を取得。チェマ・ガルシア・イバラ、マルサル・フォレス、エドゥアルド・カサノバを含む25本以上の製作を手がけている。2020年、ヴェルナー・ヘルツォークと共にドキュメンタリー「Dear WernerWalking on Cinema」を撮る。1974年にヘルツォークが師ロッテ・アイスナー危篤の報を受け、彼女の病気平癒を願ってミュンヘンからパリまで歩いた足跡を辿るドキュメンタリー、映画製作の意味を探る旅が語られる。セビーリャ・ヨーロッパ映画祭ニューウェーブ部門でプレミアされた。さらにジネビ、トリノ、トレントなど各映画祭に出品された。RTVEのディアス・デ・シネ賞2021「ビダ・エン・ソンブラ」賞、アルシネ・フェスティバル観客賞を受賞、サンジョルディ賞、フェロス賞、シネマ・ライターズ・サークル賞(ドキュメンタリー部門)にノミネートされた。

   

      

             

          (ドキュメンタリー「Dear Werner」のポスター)

 

キャスト:ライア・マンサナレス(カロリナ)、マノロ・ソロ(レオ)、エバ・リョラチ(エリサ)、ブランカ・パレス(ニナ)、ベガ・セスペデス(アニタ)

ストーリー:カロリナはナイーブで魅力的な若い女性です。彼女はチャットでレオと知り合った。彼は16歳の若者になりすましていた大人の男で、カロリナを騙して市内の閑散とした公園で会うことに成功する。しかしレオがカロリナに会って見ると、彼女が見た目ほどイノセントで無邪気でないのではないかと疑い始める。

    

       

    (レオとカロリナ、フレームから)

   

  


セクション・オフィシアル(コンペ部門)③*マラガ映画祭2023 ⑥2023年03月08日 17:24

9La pecera (仮題「金魚鉢」)

データ:製作国プエルトリコ=スペイン、2023年、スペイン語、ドラマ、92分、長編デビュー作、本作のプロジェクトはハバナ映画祭の未発表脚本に対するサンゴ賞、トライベッカ基金、マラガFFMAFIZ EAVE賞を受賞している。サンダンス映画祭2023ワールド・コンペティション部門正式出品、ヨーテボリ映画祭デビュー作部門出品、公開スペイン421

 

          

      (主役のイセル・ロドリゲスと監督、サンダンス映画祭2023にて)

 

監督紹介グロリマー・マレロ・サンチェス1978年プエルトリコのバランキータス生れ、学際的な映画製作者でアーティスト。テーマはアイデンティティ、植民地主義、ジェンダー問題に関連している。シカゴ大学とマサチューセッツ現代美術館のアーティスト・イン・レジデンス、プリンストン大学ラテンアメリカ研究プログラムの客員アーティストに選ばれている。フィルモグラフィーは、2013短編「Tokio」、2016Todavia」と「Biopsia」、2017Revuelo en la Roosvelt」、2018年ドキュメンタリー「Juana(s) matos」を撮っている。

     

     

キャスト:イセル・ロドリゲス(ノエリア)、モデスト・ラセン、カローラ・ガルシア、ヘオルヒナ・ボッリ、アナミン・サンティアゴ、マキシミリアノ・リバス、マガリ・カラスキーリョ、ナンシー・ミリャン

ストーリー:癌が進行するにつれ、治療を望まないアーティストのノエリアは、生れ故郷のビエケス島に戻ろうと決心する。自身の運命を決断するために自由になることが必要だった。彼女は60年間にわたる軍事演習のためアメリカ海軍が残した汚染処理に携わっている友人や家族と再会することになる。

   

        

   

  

 

10)Las buenas compañías  (仮題「親切な仲間」)

データ:製作国スペイン=フランス、2023年、スペイン語、ドラマ、93分、撮影地サンセバスティアン、バスク自治州から資金提供を受けている。公開スペイン55日予定

監督紹介シルビア・ムント1957年バルセロナ生れ、女優、監督、脚本家、舞台演出家。女優として50作以上の映画に出演、なかでもフアンマ・バホ・ウジョア監督の「Alas de mariposa」(蝶の羽)主演でゴヤ賞1992主演女優賞、シネマ・ライターズ・サークル賞を受賞した。ほかに1989モンチョ・アルメンダリスの『心の秘密』、ペドロ・オレアの「Akelarrre84)など。女優レティシア・ドレラの監督デビュー作、コメディ「Requisitos para ser una persona normal」(15)を最後に監督に専心する。

 

         

        

                  (ゴヤ賞主演女優賞のシルビア・ムント、1992年)

  

TVムービーを含む監督フィルモグラフィーは、1999年に短編ドキュメンタリー「Lelia」で監督としてのキャリアを始め、翌年ゴヤ賞2000短編ドキュメンタリー賞を受賞、2001年「Quia」で長編デビュー、2004年長編ドキュメンタリー「Gala」がトゥデラ・オペラ・プリマ映画祭で受賞、TVムービー「Coses que passen」(06)でマラガFF 2006 TVムービー部門観客賞、バルセロナ映画賞を受賞した。「Pretextos」はマラガFF 2008 銀のビスナガ監督賞を受賞した他、トゥールーズFF、カルロヴィヴァリFFなどに出品。TVムービー「Mentiders」(12)、同「El Café de la Marina」(14)、2015年ドキュメンタリー「La Granjas del Pas」(カタルーニャ語)は、バジャドリード映画祭でプレミアされ、ドキュメンタリー賞を受賞ほか、ガウディ賞にノミネートされた。

   

キャスト:アリシア・ファルコ(ベア)、エレナ・タラッツ(ミレン)、イツィアル・イトーニョ(フェリ)、アイノア・サンタマリア(ベレン)、マリア・セレスエラ(トト)、ナゴレ・セニソ(アスン)、イバン・マサゲ(ラファ)、イツィアル・アイスプル(サグラリオ)ほか

ストーリー1976年の夏、16歳のベアは、スペイン全土が騒然として怒涛の変化をしているなか、フェミニストの大義を目に見えるようにと、尊厳ある中絶の権利を要求する女性グループに協力していた。この血がたぎるような反逆の行為は、予想もしない感情とごちゃ混ぜになっていた。それはベアが少し年上の良家の女の子ミレンと非常に特別な友情を築くからです。その夏起きたことがベアの人生を決定的に変えてしまうでしょう。実際の出来事に基づいている。

   

  

 


 11)Las hijas (仮題「娘たち」英題「Sister Sister」)

データ:製作国パナマ≂チリ、2023年、スペイン語、ドラマ、80分、撮影地パナマ、長編デビュー作(監督・脚本・製作)、マラガと同時期開催のSXSWサウス・バイ・サウスウエスト映画祭グローバルセクション出品され、31日ワールドプレミアされる。

監督紹介カティア・G・スニィガ、パナマ系コスタリカ人、監督、脚本家、女優、製作者。コスタリカ大学で理学療法とオープンダンスの学位を取得、女優としてスタートした。アレホ・クリソストモ監督の「Nina y Laura」(15)に主演、イカロ・シネ・ビデオ映画祭で女優賞美術監督賞を受賞、ほかパス・ファブレガの「Viaje」(15)に主演、さまざまな視聴覚プロジェクトで製作や女優として活躍。2012年短編「Es Cecilia」(23分)で監督デビューした。2017年に「Cosas que no se rompen」(14分)、2019年にはクリソストモのSFLive Cinema Astronauta Fantasma」に主演、脚本も執筆した。「Las hijas」ではクリソストモが製作と撮影を手がけている。

    

     

キャスト:アリアナ・チャベス・ガビラン(マリナ17歳)、カラ・ロセル・カンポス(ルナ14歳)、フェルナンド・ボニーリャ、ミラグロス・フェルナンデス、ほか

ストーリー:夏休み、マリアナとルナの姉妹は、コスタリカからパナマに、不在の父親を探す旅に出る。二人の間に時おり吹きだす軋轢に対処しながら、彼女たちの望み、新しい友情、恋人、スケートボードを楽しむ空間を見つけだす。ただぶらぶらと時間をつぶすことの長所を学びながら自分たちを解放していく旅であった。熱帯地方の町で姉妹愛を深める親密で愛情のこもった物語であり、多感な青春時代の深遠な肖像画でもある。監督の半自伝的な要素を盛り込んでいる。

   

         

   

   

 

12)Matria (仮題「マトリア」)

データ:製作国スペイン、2023年、ガリシア語、字幕上映、社会派ドラマ、99分、長編映画デビュー作、脚本も執筆、ベルリン映画祭2023パノラマ部門でプレミアされた。2017年の短編と同じタイトル。

監督紹介アルバロ・ガゴ1986年ガリシア州のビゴ生れ、監督、脚本家。バラエティ誌のスパニッシュ・タレント、スクリーン・インターナショナル誌のトゥモロー・スターに選出されている。ポンテベドラで視聴覚コミュニケーションと音楽、シカゴで演劇、ロンドン映画学校で映画を学び、2013年卒業。卒業制作の短編「Curricán」がマラガ映画祭2013に出品された。2017年「Matria」を撮り、ゴヤ賞2018短編映画部門にノミネートされ、サンダンス映画祭審査員賞を受賞、続いて「16 de decembro」もゴヤ賞2019にノミネート、ロカルノ映画祭で上映された。現在、長編2作目「Posto alegre」が進行中である。

    

      

       

       (アルバロ・ガゴ監督とラモナ役のマリア・バスケス)

 

キャスト:マリア・バスケス(ラモナ)、サンティ・プレゴ(アンドレス)、ソラヤ・ルアセス(エストレーリャ)、スサナ・サンペドロ(カルメ)、E. R. クーニャ・タタンCunha Tatán(ソセ)

ストーリー:ラモナは40歳、ガリシアの海辺の町で、個人的に張り詰めた不安定な労働環境に没頭して暮らしている。彼女は娘のエストレーリャが苦労しないで、より良い未来が描けるよう掛け持ちで仕事をこなしている。しかし娘が自分の道を歩む準備ができると、自分自身のために何かできるのではないかと初めて気づくのでした。長年母親業に徹していた女性の鮮やかな肖像画。ガリシア地方の家父長制神話を解体する社会派ドラマ、数年間監督の祖父の介護者だった女性に触発されている。

 

     

(荒々しい魅力で観客を酔わせたマリア・バスケス)

    

 


セクション・オフィシアル(コンペ部門)④*マラガ映画祭2023 ⑦2023年03月12日 17:58

13)Rebelión (仮題「反乱」)

データ:製作国コロンビア=アルゼンチン=アメリカ、スペイン語、2022年、伝記、105分、タイトルはジョー・アロヨのシンボリックな曲から採られた。長編映画3作目、ボゴタ映画祭202210月)、タリン・ブラック・ナイト映画祭202211月)、サウス・バイ・サウスウエスト映画祭20233月)、マラガ映画祭(3月)正式出品、公開ペルー202211

監督紹介ホセ・ルイス・ルヘレス・グラシア、監督、脚本家、製作者。TVシリーズ、映画、コマーシャルなど25年以上のキャリアのある制作会社「Rhayuela Films」設立、長編フィルモグラフィーは、2010年「García」、2015年「Alias María」は、カンヌ映画祭「ある視点」部門でプレミアされ、ハイファ映画祭2015国際部門のカルメル賞、フリボーグ映画祭2016エキュメニカルを受賞、アカデミー賞コロンビア代表作品に選ばれた。新作については「古典的なミュージカルを期待しないでください」と監督。

 

         

      

                               (第2作「Alias María」のポスター)

 

キャスト:ジョン・ナルバエス(ジョー・アロヨ)、マルティン・シーフェルド(ウモ)、アンジー・セペダ(メアリー)、フアン・ミゲル・パエス、グスタボ・ガルシア、エドガー・キハダ、アルマンド・キンタナ、ロジェ・デュグアイ

ストーリー:本作は、コロンビアの歴史上おそらく最も重要な傷つきやすい無名のサルサ歌手ジョー・アロヨが、人生のさまざまな瞬間と空間を超越した旅を切り取っている。音楽の天才、シンガーソングライターであるジョーの音楽とその独特な声は、ステージに収めることができなかった。1970年代のサルサ全盛期のリーダーであるアロヨの音楽への献身、孤独、狂気、さまざまに交錯した感情、混沌が描かれる。

    

   

     

 

     

14Saudade fez morada aqui dentro (英題「Bittersweet Rain」)

データ:製作国ブラジル、2022年、ポルトガル語、字幕上映、ドラマ、107分、長編映画2作目(単独では1作目)、第37回マル・デル・プラタ映画祭2022で作品・監督賞を含む4冠を制した。

監督紹介ハロルド・ボルヘス、監督、脚本家、撮影監督、フィルム編集者。制作会社 Plano3 Filmsのメンバー。ドキュメンタリー「Jonas e o circo sem lona」(15Jonas and the Backyard Circus」)は、IDFAでプレミアされ、トゥールーズ映画祭2019観客賞を含む13冠、長編デビュー作「Filho de Boi」(「Son of Ox」)はエルネスト・モリネロと共同で監督した。釜山、グアダラハラ映画祭に出品され、マラガ映画祭2019ソナシネ部門の銀のビスナガ観客賞を受賞している。

   

       

   (トロフィーを手にしたハロルド・ボルヘス、マル・デル・プラタFF2022にて)

    

     

 (デビュー作「Filho de Boi」のポスター

 

キャスト:ブルーノ・ジェファーソン、アンジェラ・マリア、ロナルディ・ゴメス、テレーナ・フランサ、ウィルマ・マセド、ヘラルド・デ・デウス、ビニシウス・ブスタニ

ストーリー:ブラジル内陸部の小さな町に住んでいる若者は、変性眼疾患のため徐々に視力を失う危険に直面している。視力が衰えるにつれ、片思いだった初恋に混乱し、別の目で人生を見る方法を学ばねばならなくなる。父親のいない15歳の若者の棘のある思春期が描かれる。

 


    
                   (ブルーノ・ジェファーソン、フレームから)

 

                

 

15Sica (仮題「シカ」)

データ:製作国スペイン、2023年、ガリシア語、字幕上映、ドラマ、90分、ベルリン映画祭2023ジェネレーション14 plus でプレミアされた。

   

     

  (左から、ヌリア・プリムス、スビラナ監督、ほか主演者たち、ベルリンFF 2023

 

監督紹介カルラ・スビラナ1972年バルセロナ生れ、監督、脚本家、10年の教師歴。スペイン内戦で反フランコ派の祖父が、1940年死刑に処され、女性3世代の家族の中で育つ。映画ファンの祖母の影響で映像の世界に入る。ドキュメンタリーとフィクションのあいだを行き来した最初のドキュメンタリー「Nadar08、カタルーニャ語)は史実と個人的な記憶についての自伝的要素をもっている。ロッテルダム映画祭で上映され、ガウディ賞2009にノミネートされた。3人の共同監督ドキュメンタリー「Kanimambo」(スペイン語・カタルーニャ語・ポルトガル語)はマラガ映画祭2012で審査員のスペシャル・メンションを受賞している。同「Volar」(12、スペイン語)はセビーリャ・ヨーロッパ映画祭に出品された。短編映画「Atma169分)は、セビーリャ・ヨーロッパ映画祭、D'A映画祭に出品され、Fiver 17でナショナル・ダンス賞を受賞した。創造性ワークショップで後進を指導している。

    

       

       

              (ドキュメンタリー「Nadar」のカタルーニャ語版ポスター

 

キャスト:タイス・ガルシア・ブランコ(シカ)、ヌリア・プリムス(母親カルメン)、マリア・ビジャベルデ・アメイヘイラス(レダ)、カルラ・ドミンゲス、ルーカス・ピニェイロ(シモン)、マルコ・アントニオ・フロリド・アニョン(スソ)、ロイス・ソアシェSoaxe(エル・ポルトゲス)、マリア・デル・カルメン・ヘステイロ(教師)、ほか多数

  

ストーリー14歳になるシカは、ガリシアのコスタ・ダ・モルテで難破した父親の遺体を海が戻してくれることに取りつかれている。崖に沿って歩いているとき、シカはストームハンターだという15歳の風変わりな少年スソと知り合います。彼女は事故の状況を調査し、苦痛を伴う発見の旅に乗り出します。彼女の目にうつるのは、自分が育った漁村が海の残酷さとアンバランスな自然の増大によって特徴づけられている所であること、それが決して以前のように戻らないということでした。ガリシアの海の沈黙、失ったものへの強迫観念、父親の不在による無力感と悲しみ、夫や父親の死に対する諸々が女性キャラクターの視点で語られる。事実にインスパイアされている。

 

      

      (シカとカルメン)

 

      

              (シカとスソ、フレームから)

   

        

 

16)Tregua(s) (仮題「休戦」)

データ:製作国スペイン、2023年、スペイン語、コメディ・ドラマ、90分、撮影地マドリード、長編デビュー作

監督紹介マリオ・エルナンデス1988年カスティーリャ・ラ・マンチャのアルバセテ生れ、監督、脚本家、戯曲家、舞台演出家。アリカンテのシウダード・デ・ラ・ルス・スタジオで監督の学位を取得する。2015年短編「A los ojos」で監督デビュー、アルバセテのABYCINEの短編映画賞、マドリード市のヤング・クリエーターズ賞を受賞、2016年「Por Sifo / Slow Wine」はバジャドリード映画祭で短編賞を受賞、2017年、難民危機に関連する詩人ミゲル・エルナンデスのオマージュ「Vientos del pueblo Sirio」(20分)をギリシャのレスボス島で撮影、2020年フリオ・コルタサルの作品にインスパイアされた「Salvo el crepúsculo」は、バジャドリード映画祭のSEMINCI Factoryの脚本賞を受賞した。舞台演出家兼戯曲家としても活躍、カラモンテ賞を受賞するなどしている。現在、RNEのラジオ・プログラムの作成者およびコーディネーターです。

 

   

   

(左から、ブルーナ・クシ、監督、サルバ・レイナ、マラガFF2023のフォトコール)

 

キャスト:サルバ・レイナ(エドゥ)、ブルーナ・クシ(アラ)、アブリル・モンテージャ(シルビア)、ホセ・フェルナンデス(ダビ)、マルタ・メンデス(アリシア)

ストーリー:アラとエドゥは、新人の女優、脚本家だった10年間、恋人同士でした。二人の〈公式な〉関係とは別に、一緒にいるときは常にオアシスを見つけています。現在、二人ともそれぞれ別のパートナーと暮らし、かなり深刻な関係になっています。お互いに会わずにいた1年後、映画祭を利用して再会しますが、この切望した〈休戦〉でさえ、彼らの実生活を支配する嘘と郷愁から解放されることはありません。

 

 

 

      

セクション・オフィシアル(コンペ部門)⑤*マラガ映画祭2023 ⑧2023年03月14日 15:43

17Una vida no tan simple(仮題「それほど容易でない人生」)

データ:製作国スペイン、2022年、スペイン語、ドラマ、107分、撮影地・期間2021年末にビルバオ

監督紹介フェリックス・ビスカレト1975年パンプローナ生れ、監督、脚本家、製作者。2007年「Bajo las estrellas」で長編デビュー、マラガ映画祭金のビスナガ作品賞受賞作品、ビスカレトも銀のビスナガ監督賞、第1作脚本賞を受賞、ゴヤ賞2008では脚色賞を受賞した。2022年「No mires a los ojos」は、バジャドリード映画祭PIC賞とシネマ・ライターズ・サークル賞にノミネートされている。2020年バスク語のTVシリーズ「Patria」(8話)のうち4話を手がけている。ドキュメンタリー『サウラ家の人々』(17)などでキャリアを紹介しています。

監督キャリア&フィルモグラフィーは、コチラ2017111120200812

    

         

       

      (ビスカレト監督以下主演者たち、マラガ映画祭2023フォトコール)

    

       

 (デビュー作「Bajo las estrellas」ポスター)

 

キャスト:ミキ・エスパルベ(イサイアス)、アレックス・ガルシア(同僚ニコ)、アナ・ポルボロサ(知人ソニア)、オラヤ・カルデラ(妻アイノア)、フリアン・ビジャグラン、ラモン・バレア 

ストーリー40歳のイサイアスは受賞歴のある有望な建築家でした。現在、彼は建築スタジオと子供たちが放課後遊ぶ公園の間を行ったり来たりの日々を過ごしています。どこにいても自分がいるべき場所にいないと感じています。彼の妻アイノアとの関係では月日の経過を感じ、幼い頃の子供たちが如何に大人を疲れさせるかを痛感しています。イサイアスはいつもへとへとの生活のなかで、別の子供の母親であるソニアと友情を深めますが、彼女は子供を育てて大人の生活に送り込むのは、それほど簡単でないことを彼に教えます。40代父親の危機が語られる。

     

   

  (イサイアスとソニア)

 

  

             (イサイアスとニコ)

  

 

    

18UnicornsUnicornios  仮題「ユニコーン」)

データ:製作国スペイン、2023年、ドラマ、93分、カタルーニャ語・スペイン語、字幕上映、長編映画デビュー作。脚本を監督と『スクールガールズ』のピラール・パロメロほかが共同執筆、同じく製作をバレリー・デルピエールが手がけている。配給フィルマックス、スペイン公開2023年6月30日予定

監督紹介アレックス・ロラ・セルコス1979年バルセロナ生れ、監督、脚本家、フィルム編集者、ニューヨークを拠点にしている。バルセロナのラモン・リュユ大学で映画製作、脚本、演出の学位を取得、2011年フルブライト奨学生として渡米、シティ・カレッジ・オブ・ニューヨークでメディアアート・プロダクションを修了、オスカー学生アカデミー賞の最終候補になった。数多くの映画祭に参加、特にニューヨーク・エミー賞を受賞、サンダンスFF公式出品2回、ガウディ賞の受賞歴がある。2014年バラエティのカンヌ・エディションで注目すべき有望な監督トップテンに選ばれ、ベルリナーレ・タレントキャンパス、カンヌ・ショート・フィルム・コーナーには3回参加している。受賞歴はトータルで76賞と驚異的な数字である。

 

主なフィルモグラフィーは、2011年ドキュメンタリー短編「OdysseusGambit」は、サンダンス映画祭ノミネート、2013年の同「Godka Cirka」もサンダンスFF、その他マラガFFに出品され、ガウディ賞2014短編賞を受賞している。2015年長編ドキュメンタリー「The Fathers Chair」、2019年同「El cuarto reino」(The Fourth Kingdomは、グアダラハラ映画祭2019イベロアメリカ部門受賞、ガウディ賞2020ドキュメンタリー賞受賞、フェロス賞にノミネートされた。

 

       

     

        (ドキュメンタリー「El cuarto reino」のポスター)

 

キャスト:グレタ・フェルナンデス(イサ)、ノラ・ナバス(メルセ)、アレハンドロ・パウ(ギレム)、エレナ・マルティン(アブリル)、パブロ・モリネロ(ミケル)、ソニア・ニニャロサ(マルタ)、リディア・カサノバ(ガビ)、ホルヘ・カブレラ、アグスティン・スリバン、ほか

ストーリー:イサはすべてをもっている。それは知性であり、美しさであり、自信です。フェミニストでコミットすることを拒否するポリアモリーのイサは、情熱をもって自分の人生を守っている。ギレムが一夫一妻のカップルになることを提案したとき、自分の人生を変えたいかどうか確信がもてず決定できない。ギレムは二人の関係を壊すことにした。外見と快適さの世界に住んでいると、矛盾がはっきりし、宇宙はネットワークがなったウェブでの好き嫌いやモラルの判断が打撃を受け崩壊してしまう。

 

     

                      (イサ役のグレタ・フェルナンデス)

   

     

                 (ノラ・ナバス)

   

       

 

19Upon EntryLa llegada 仮題「通関」)

データ:製作国スペイン、2022年、スペイン語、ドラマ、74分、英語、字幕上映、共に長編デビュー作。タリン・ブラックナイツ映画祭FIPRESCI賞受賞(202211月)、コルカタ映画祭ゴールデンロイヤル・ベンガルタイガー賞受賞(2022年)、サウス・バイ・サウスウエスト映画祭(20233月)、公開スペイン616日予定

 

監督紹介アレハンドロ・ロハス1976年ベネズエラのカラカス生れ、監督、脚本家、フィルム編集。映像ジャーナリストとして、カンヌ、ベネチア、ベルリン、トロント、サンダンスなど各映画祭で取材している。HBONetflix、などの仕事をしている。本作で監督デビューした。

フアン・セバスティアン・バスケス1981年カラカス生れ、HBOのコピー製作者としてキャリアをスタートさせる。撮影監督としてカルレス・トラスの「Callback」を手がけ、本作はマラガFF2016の作品・脚本・男優賞(マルティン・バシガルポ)を受賞している。2020年には同監督の「El practicante」で再びタッグを組んだ。『パラメディック~闇の救急救命士』の邦題でネットフリックスが配信した。またシッチェスFF2020のニュービジョン部門の審査員を務めている。

*「Callback」の作品紹介は、コチラ20160503

   

       

     (アレハンドロ・ロハス)

 

       

                      (フアン・セバスティアン・バスケス)

 

キャスト:アルベルト・アンマン(ディエゴ)、ブルーナ・クシ(エレナ)、ベン・テンプル、ラウラ・ゴメス、ジェラルド・オムス(旅客)

ストーリー:ベネズエラの都市計画家であるディエゴとバルセロナ出身のコンテンポラリーダンサーのエレナは、プロとしてのキャリア向上、チャンスの地で家族を作ることにする。新生活を始めるにあたって米国の正式なビザを取り移住することにした。ところがニューヨーク空港の入国審査場に入ると、二人は二次検査室に連れていかれた。待ち受けていた2人の国境警備員が検査プロセスと心理的に激しい尋問をかけ、カップルが何か隠蔽しているものがあるのではないかと発見に務めます。

 


                     (ディエゴとエレナ)

  

     

   (二人を尋問する国境警備員)

    

    

 

20Zapatos rojosRed Shoes 仮題「赤い靴」)

データ:製作国メキシコ=イタリア、2022年、スペイン語、ドラマ、83分、長編デビュー作、第79回ベネチア映画祭2022公式出品、モロッコ・マラケシュFF2022)、インド・ゴアFF2022)、米国サンタバーバラFF2023)、ブルガリア・ソフィアFF2023)、その他モレリアFF、サンディエゴFF出品

監督紹介カルロス・アイチェルマン・カイザー1980年サンルイス・ポトシ生れ、監督、製作者、脚本家。マドリードで映画監督と製作を学んだ。2006年から2010年までTVシリーズのプロデュースをする。2011年製作会社「Wabi Productions」設立、2016年トリシャ・ジフ監督の長編ドキュメンタリー「The Man Who Saw Too Much」を製作、アリエル賞を受賞した。2018年マイケル・ロウの文学ワークショップで「赤い靴」の脚本を執筆した。同年「Feral」の製作に参画し、ロスカボス映画祭2018で受賞、2021EFICINEの援助をを受け、デビュー作を監督した。

    

      

キャスト:エウスタシオ・アスカシオ(アルテミオ)、ナタリア・ソリアン(ダミアナ)、ファニー・モリーナ(アレハンドラ)、ロサ・イリヌ・エレーラ(ルベン)

ストーリー:年配の農民アルテミオは、メキシコ山地の忘れられた村で暮らしている。首都から娘の訃報という衝撃的なニュースが届くまでは、彼の人生はゆっくりと順調に進んでいた。彼は贖罪を求めて町に出発する決心をしますが、残忍で未知の世界に踏み出したことに気づきます。

   

     

          

  

マラガ特別賞ガラのフォト集*マラガ映画祭2023 ⑨2023年03月17日 09:59

         マラガ―スール賞以下特別賞ガラのフォト特集

 

310日に開幕したマラガ映画もすでに半ばを過ぎ、15日現在の特別賞ガラのフォトが続々配信されています。オープニングにビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞の国民的歌手ラファエル・マルトス11日にレトロスペクティブ賞―マラガ・オイのアルベルト・ロドリゲス監督、12日にマラガFFの大賞マラガ―スール賞に女優ブランカ・ポルティーリョ13日にリカルド・フランコ賞にスクリプトのユイ・ベリンゴラ、と4賞のガラが終了しました。受賞者紹介はアップ済みなのでフォト集をお届けします。

   

     

      (オープニングの司会者、エレナ・サンチェスとマルタ・ハザス)

   

     

  (セクション・オフィシアルの5人の審査員)

 

ビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞310日、メイン会場セルバンテス劇場

ラファエル・マルトス、愛称ラファエルで親しまれているスペインの国民的歌手にトロフィーを手渡したのは、TVシリーズのヒット作「Velvet」の主役を演じたマルタ・ハザスでした。歌手ディアナ・ナバロも登場、ラファエロの曲をミックスして歌いあげオマージュを捧げました。開幕ということもあって、審査委員長マヌエル・グティエレス・アラゴン以下の審査員4人も紹介されました。オープニングの司会者はジャーナリストのエレナ・サンチェスとマルタ・ハザスでした。

 

      

  

                      (受賞者とマルタ・ハザス)

 

   

           (受賞者とディアナ・ナバロ)

 

レトロスペクティブ賞―マラガ・オイの(311日、メイン会場セルバンテス劇場)

アルベルト・ロドリゲス監督、プレゼンターは長年脚本を共同で執筆しているラファエル・コボス、彼は2019年のリカルド・フランコ賞受賞者です。他『マーシュランド』主演のハビエル・グティエレス(2019年のマラガ―スール賞受賞者)、製作者で受賞者の妻マヌエラ・オコンなど、一緒にステージに立ちたいサポートが大勢集合しました。「この賞を与えてくれたフェスティバルに感謝いたします。映画は個人的なものではなく、集合的なものです。この賞をチームと友人たちと共有したい。それは彼らが私を今夜このステージに立たせてくれたからです」と締めくくり、どこまでも真面目で控えめなロドリゲスなのでした。

 

         

         

          (長年の盟友ラファエル・コボスからトロフィーを受け取った受賞者)

    

      

(受賞スピーチをするロドリゲス、後方は司会のノエミ・ルイス)

     

      

            (大勢のサポーターに囲まれて・・・)

 

マラガ―スール賞312日、メイン会場セルバンテス劇場)

ブランカ・ポルティーリョTシャツにジーパン、スニーカー姿で登壇した受賞者に皆さんびっくり。この豪華衣装には理由があったのです。「贅沢品や仮面を剝ぎ取られた人間」としてトロフィーを受け取りたかった。「考えに考えて決断した、愛を必要としている59歳の女性」ともスピーチしました。サポートしたのはグラシア・ケレヘタ監督、女優パウラ・オルティス、プレゼンターはアシエル・エチェアンディアでした。

 

     

           (これ以上ラフな恰好はないでしょう)

 

          

           (アシエル・エチェアンディアからトロフィーを受け取る受賞者)

   


     (大喜びのグラシア・ケレヘタと)

     

   

              (サポーターに囲まれて)

 

★授賞式に先立ってマラガ―スール賞受賞者には、海沿いの遊歩道アントニオ・バンデラス通りに手形入りの記念碑が立ててもらえる。マラガ市長フランシスコ・デ・ラ・トーレ以下、本祭総ディレクターのフアン・アントニオ・ビガルなどが立ち会って除幕式が行われた。

             

  

           (このときはこんな衣装でした。3月12日)

 

リカルド・フランコ賞315日、メイン会場セルバンテス劇場)

ユイ・ベリンゴラ この賞はスペイン映画アカデミーとのコラボレーションで授与され、舞台裏で活躍する映画スペシャリストに与えられる。ユイ・ベリンゴラはアルモドバルの作品を数多く手がけたスクリプトですが、彼女はリカルド・フランコ監督の親友でもあったから一入感慨深いものがあったようです。プレゼンターはスペイン映画アカデミーの会長フェルナンド・メンデス≂レイテでした。進行役はノエミ・ルイス、他ナチョ・ガルシア・ベリーリャ監督、前回の受賞者フィルム編集者のソル・カルニセロなどが登壇しました。ベリンゴラは「家族、友人、とりわけ留守がちな母親に苦しんだ息子にこの賞を捧げる」とスピーチした。

 

      

             (受賞スピーチをする受賞者

 

    

メンデス=レイテ会長からトロフィーを受け取る受賞者) 

 

     

★残るはマラガ才能賞のカルラ・シモンと「金の映画」賞となりました。


カルラ・シモンにマラガ才能賞*マラガ映画祭2023 ⑩2023年03月19日 15:29

      マラガ才能賞のトロフィーはアンヘラ・モリーナから

 

       

317日、メイン会場セルバンテス劇場でマラガ才能賞(マラガ・オピニオン紙とのコラボ)のガラがありました。受賞者カルラ・シモンはベテラン女優アンヘラ・モリーナの手からトロフィーを受け取りました。司会者はセリア・ベルメホでした。サポーターはモリーナの他、デビュー作『悲しみに、こんにちは』主演のブルーナ・クシダビ・ベルダゲラ、監督のフアン・アントニオ・バヨナなどが登壇しました。モリーナは、シモンが映画監督としてでなく、人間として素晴らしいことを讃え、「善と純粋さですべてを凌駕している彼女が受賞するのはとても価値がある」とスピーチした。

   

         

                      (アンヘラ・モリーナと受賞者)

   

          

   (ブルーナ・クシとダビ・ベルダゲラ)

 

★アクションを盛り込んだヒット作を出し続けているフアン・アントニオ・バヨナ監督は、「私の最後の映画がモンスター主演であったことを考えると、私のような監督が登壇するのは場違いに思うでしょう。モンスターを撮るのは非常に複雑なものがあります。なぜなら存在しない生き物を本物に見せようとしなければならないからです。カルラがしていることもまったく同じです。違うのは彼女は現実を並外れたものに変えるのです」とバヨナは、自作と親密で現実的なシモン映画を比較した。

   

       

            (フアン・アントニオ・バヨナ監督)

 

★カルラ・シモンは、この特別な日にサポートしてくれた同僚や友人に一人ずつお礼を述べたいと語り、またフェスティバル関係者や家族にも感謝したいとスピーチした。しかし、彼女が最も伝えたかったのはフェミニストとしてのメッセージでした。「私たちの視点は、今までの視点と同じではありません。私たちは女性によって語られる新しいタイプの作品を目指していきたい。今までとは異なる視点、より優しく、母性的な作品です。私たちの世界では光と愛が不足しているのでヒューマニストの映画とアートを保護しなければならない」と語った。

   

      

★授賞式に先だってセルバンテス劇場ロッシーニ・ホールで、本祭総ディレクターのフアン・アントニオ・ビガルのインタビューが行われた。シモンの『悲しみに、こんにちは』は、2017年の金のビスナガ賞受賞作品、2作目Alcarràs2022年のアウト・オブ・コンペティションに参加していた。「マラガは自宅に帰ってきたような気分でリラックスできる」と語った。第2作はとても厳しい長い道のりだったと明かし、ベルリンで金熊を与えられたとき「撮った甲斐があった」と感じたようです。

    

   

   (カルラ・シモンとフアン・アントニオ・ビガル、ロッシーニ・ホールにて)

 

★受賞者曰く「人々が映画監督についてイメージするのは若い女性ではありません。しかしこれは急速に変化しており驚きです。最初はチームがこの映画を完成させられるかどうか理解するのは難しいです。でも自分のやり方でやり通すことです」と。「技術チームが不確実性に慣れていない場合は、彼らの疑念を払拭するよう作業を進める必要があります」とも述べている。やはり「若い女性監督で大丈夫か?」という技術部門の不安を解消するのは大変ということでしょう。監督がどうしたいか、何を模索しているか、を理解してもらうことが必要ということでしょうか。彼女のキャリアが進むにつれて、彼女のやり方を尊重し、理解してくれるようになり、うまく作業できるようになった。今更ですが、若い監督にとって国際映画祭の受賞は大きな前進に繋がるようです。

 

★次回3作目のタイトルはRomeríaで、シモンの「家族についての三部作」を締めくくりたい、「それは一種のルーツへの旅、家族の記憶がテーマになるだろう」ということでした。


第26回マラガ映画祭受賞結果*マラガ映画祭2023 ⑪2023年03月21日 17:44

   金のビスナガに「20.000 especies de abejas」と「Las hijas」を選んで閉幕

 

     

 

318日(2000~)、第26回マラガ映画祭は金のビスナガに、スペイン映画部門はエスティバリス・ウレソラの「20.000 especies de abejas」とイベロアメリカ映画部門にカティア・G・スニィガの「Las hijas」(パナマ=チリ合作)を選んで閉幕しました。偶然でしょうが両部門とも女性監督の手に渡りました。前者は下馬評通りの受賞でしょうか。作品賞2以外の銀賞は監督賞を含む10部門です。今年はアルゼンチンのベテラン俳優、本邦でも知名度の高いダリオ・グランディネッティとジャーナリストのモニカ・カリージョがホスト役を務めました。前者はマリナ・セレセスキーの「Empieza el baile」に主演していましたから受賞の可能性もあったはずです。本作は観客賞と同僚のホルヘ・マラレが助演男優賞を受賞しました。後者のジャーナリストはアンテナ3の「週末ニュース」の司会をしていますので、お茶の間のお馴染みさんです。第27回は2024年3月1日から10日までの予定。

   

   

     (総合司会者のダリオ・グランディネッティとモニカ・カリージョ)

 

★ガラの音楽パフォーマンスは、フラメンコ歌手で作曲家のイスラエル・フェルナンデスの情熱的なパフォーマンスで始まりましたが、彼は先だってのゴヤ賞ガラにも出演しておりました。加えてAlizzz y el grupo Amaral、正確にはカタルーニャの25年のキャリアのあるエバ・アマラルフアン・アギーレのデュオが会場を沸かせましたが、主役はやはり最優秀作品賞の金のビスナガ受賞者でしょう。1作品に固まらず丁寧に選んでいる印象を受けました。審査員は委員長のマヌエル・グティエレス・アラゴン(スペイン、監督)、ガブリエラ・サンドバル(チリ、製作者、プログラマー)、パブロ・ストール(ウルグアイ、監督、脚本家)、フリエタ・シルベルベルク(アルゼンチン、女優)、ゴンサロ・ミロー(スペイン、監督)の5名でした。

   

   

                (審査委員長マヌエル・グティエレス・アラゴン)

      

    

   (審査員ゴンサロ・ミロー、ガブリエラ・サンドバル、パブロ・ストール)

 

 

        セクション・オフィシアルの受賞結果

  

金のビスナガ(作品賞・スペイン映画)副賞8.000ユーロ

20.000 especies de abejas 」製作:Gariza Films / Inicia Films

             監督:エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン

      


              (大喜びの子役たち)

     

 

(エスティバリス・ウレソラ監督)

       

    

       (受賞ラッシュの製作者バレリー・デルピエーレ)

 

金のビスナガ(作品賞・イベロアメリカ映画)副賞8.000ユーロ

Las hijas」(パナマ=チリ)製作:Ceibita Films / Mente Pública

                        監督:カティアG. スニィガ

    

      

     

                     (カティア・G・スニィガ監督

   

   

          (レッドカーペットに現れたチーム)

 

審査員特別賞(銀のビスナガ)

Bajo terapia」(スペイン)監督:ヘラルド・エレーロ

    

  
       
                             (ヘラルド・エレーロ監督、レッドカーペット)                

監督賞(銀のビスナガ)

マティアス・ビゼ (チリ=アルゼンチン)「El castigo

    

    

  


   

女優賞(銀のビスナガ)

マリア・バスケス (スペイン)アルバロ・ガゴの「Matria

予想通りの受賞、「労働者階級の不完全なガリシア女性」というキャラクターを選んでくれた審査員に感謝した。プレゼンターは、アントニオ・レシーネスとラウラ・ガラン。

    

   

    

 

   (マリア・バスケス、レッドカーペット)

   

男優賞(銀のビスナガ)

アルベルト・アンマン(スペイン)

  アレハンドロ・ロハス&フアン・S・バスケスの「Upon Entry

アンマンは「カップルのプライバシーが侵害される映画を軌道に乗せるようやりくりした監督たちの勇気」を強調した。

    

     

       

 

助演女優賞(銀のビスナガ)

パトリシア・ロペス・アルナイス (スペイン)「20.000 especies de abejas

   

       

     

                     (名前を呼ばれて登壇するパトリシア)

 

助演男優賞(銀のビスナガ)

ホルヘ・マラレ (アルゼンチン)マリナ・セレセスキーの「Empieza el baile

*受賞者の来マラガはなく監督が代理で受け取りました。

    

   

        

              (右側が受賞者ホルヘ・マラレ)

      

脚本賞(銀のビスナガ)

ミゲル・イバニェスエレナ・トラぺ(スペイン)エレナ・トラぺの「Els Encantats

      

        

    

    

音楽賞(銀のビスナガ)

パブロ・モンドラゴン (コロンビア)ホセ・ルイス・ルヘレスの「Rebelión

 

   

                    (左が音楽監督パブロ・モンドラゴン)

   

    

                    (左端がルへレス監督、レッドカーペット)

  

撮影賞(銀のビスナガ)

セルゲイ・サルディバル・タナカ(メキシコ)

カルロス・アイチェルマン・カイザーの「Zapatos rojas」、受賞者はロドリゴ・プラの「Desierto adentro」などでアリエル賞を受賞しているベテラン。今回来マラガはなく監督が代理で受け取りました。

     

   

                   (カルロス・アイチェルマン・カイザー監督)

     

   

 

    

編集賞(銀のビスナガ)

ハロルド・ボルヘスフリアノ・カストロ(ブラジル)

 ハロルド・ボルヘスの「Saudade fez morada aqui dentro

     

     

               (ハロルド・ボルヘス)

     

      

     (レッドカーペット)

       

★以下は補完的な銀のビスナガです。批評家審査員特別賞の審査員は、アルフォンソ・カロ、アナ・サンチェス・デ・ラ・ニエタ、カルロス・サノンの3名です。観客賞は一般観客の投票50%とダビ・コレアなど7名で構成された専門家が決定しました。

 

批評家審査員特別賞(銀のビスナガ)

Desperté con un sueño」(アルゼンチン=ウルグアイ)監督:パブロ・ソラルス

今回、来マラガは監督と主役のルーカス・フェロ少年を含む4人でしたが、二人は帰国してガラ出席は女性陣だけでした。

    

        

      

       (パブロ・ソラルス監督と出演者たち、フォトコールから)

 

観客賞(銀のビスナガ)

Empieza el baile」(アルゼンチン)監督:マリナ・セレセスキー

    

   

              (マリナ・セレセスキー監督)

     

     

 

★セクション・オフィシアルの受賞者は以上の通りです。金のビスナガを受賞したウレソラ・ソラグレン監督は「トランスジェンダーの子供時代を大切にし、可視化したい願望が高まっていると思います。これらの子供たちが自分たちの居場所を見つけることが重要です。本作では家族のアプローチから、みんなが想像していたのとは異なる方法で自身を表現している人に同行しなければならないとき、周りの人々がどのように変化するかを物語っています」とスピーチしました。もう一人の受賞者カティア・G・スニィガ監督はこのプロジェクトが「9年かけて製作したこと」を強調し、「個人的な物語ですが、素晴らしい映画になる可能性を疑わなかった」と自信のほどを垣間見せたスピーチした。

 

★モニカ・カリージョの「来年は第27回になります、では映画館でお会いしましょう。ビバ・スペイン映画、ビバ・マラガ!」で締めくくられました。今回は長短はありますが、作品紹介はすべてアップ済みです。

    

    

       (受賞者、ミュージシャン全員が勢ぞろいしたクロージング)

 

マラガ映画祭2023の落穂ひろい*マラガ映画祭2023 ⑫2023年03月24日 18:01

  クロージングはパス・ヒメネスのコメディ、長編第1作「Como Dios manda

    

          

★セクション・オフィシアルのクロージング作品は、例年通りアウト・オブ・コンペティションから選ばれる。今回はパス・ヒメネスの長編デビュー作である多様性を反映したコメディ「Como Dios manda」(22)で締めくくられました。ヒメネス監督は1977年マラガ生れ、「故郷のコスタデルソルで撮影できたことはエキサイティングな体験でした」とプレス会見で語っている(317日)。自分を「神が意図した人」であると考えている、財務省の厳格な役人アンドレス(レオ・ハーレムが扮する)のお話。同僚との対立から制裁を受けるが、ユーモアと楽観的で希望に満ちた視点を通して、排除の危険にさらされているグループの纏めに取り組んでいる。監督は「批判的な背景をもつジョークや誇張があっても政治は脇においています」とも。製作者のマルタ・ベラスコによると、友人からもたらされた実話に基づいているということです。ベラスコは観客賞を受賞したマリナ・セレセスキーの「Empieza el baile」のエグゼクティブの一人です。

      

          
     (左から、レオ・ハーレム、監督、マルタ・ベラスコ、ペレス・プラダ、

      「Como Dios manda」のフォトコール、317日)

     

       

        (レオ・ハーレム扮するアンドレスを配したポスター)

 

 

   ドキュメンタリー映画はフェルナンド・フラゲラの「El matadero」が受賞

 

★ドキュメンタリー部門の受賞作は、フェルナンド・フラゲラ(キューバ1991)の「El matadero」(キューバ2022、仮題「食肉処理場」)、キューバ革命のプロジェクトとして建設されたアパートが建ち並ぶバリオでは、隣人たちが生き残るために豚を飼育している。フェルナンドは子供時代からそこで暮らしており、国を脱出するために豚を飼って販売している友人ドゥスニエルについて語ります。フェルナンドも逃げ出したいと思っている。

    

        

      

  

監督賞ソフィア・パオリの(「Guapo 'y」(パラグアイ=アルゼンチン=カタール2022、「ハンサム」) が受賞、パラグアイの軍事独裁政権が残した女性セルサ・ラミレスの傷が語られる。パオリは1982年ペルー生れだが、武力紛争を逃れてパラグアイに亡命して映画製作をしている。

    

       

   

 

観客賞は、エレナ・モリーナ(マドリード生れ)の「Remember my Name」(西=仏=カタール2023)は、モロッコからメリリャのフェンスを跳び越えたあと、未成年者は保護センターに入ります。それぞれ一人で越境してきますが、ここで新しい疑似家族を作ります。NANAというダンス・グループを作った若者を追うドキュメンタリー。メリリャはアフリカ北西部沿岸に位置するスペインの自治都市、不法移民を防ぐためモロッコとの国境に高さ6メートルの金属フェンスを張り巡らせている。

 

      

   

 

3作とも厳しい内容のドキュメンタリーですが、3監督とも若く将来が期待されます。カルラ・シモンが語ったように監督といえば中年男性をイメージする時代は既に終りを告げました。若い女性シネアストの躍進、これが今年のマラガで最も印象深かったことでした。映画館に足を運んでくれた観客は9万人という発表がありました。