”Magical Girl” 7個*ゴヤ賞2015ノミネーション ⑤ ― 2015年01月21日 14:25
サンセバスチャンの「金貝賞」受賞作品
★作品賞ノミネーション第4作目は、カルロス・ベルムトの第2作“Magical Girl”、ジャンルはミステリーです。サンセバスチャン映画祭のオフィシャル・セレクションに正式出品され、なんと最優秀作品賞(金貝賞)と最優秀監督賞(銀貝賞)両方を受賞してしまった。元来、本映画祭はカンヌ同様、作品賞とその他の銀貝賞をダブらせないのが基本方針と聞いている。とにかく、1997年のクロード・シャブロルの『最後の賭け』以来のことだそうですから17年ぶりです。当然、この奇妙なダダイズム映画のダブル受賞を非難する観客の声も出たようです。当ブログではサンセバスチャン映画祭で紹介しています。
(サンセバスチャンの「金貝賞」は作品賞のみで以下は全て銀貝賞です)
*カテゴリー7部門ノミネーションは以下の通り:
* Magical Girl *
Films Distribution / Canal+España 1 / TVE 他
監督・脚本:カルロス・ベルムト
主演男優賞:ルイス・ベルメホ
主演女優賞:バルバラ・レニー
助演男優賞:ホセ・サクリスタン
新人男優賞:イスラエル・エレハルデ
*以下は最終ノミネーションに残れなかったカテゴリー
撮影賞:サンティアゴ・ラカRacaj、
編集賞:エンマ・トゥセル
プロダクション賞:モンセ・ラクルス
メイク・ヘアメイク賞:イニャーキ・マエストレ
特殊効果賞:ゴンサロ・コルト
助演女優賞:エリザベト・ヘラベルト
データ:スペイン=フランス、スペイン語、2014、スリラー、撮影地:マドリード、セゴビア、
製作費:約50万ユーロ
映画祭上映:2014年(サンセバスチャン、トロント、チューリッヒ、シッチェス、釜山プサン、テッサロニキ)、2015年(パーム・スプリングス、ロッテルダム)他
受賞歴:サンセバスチャン映画祭金貝賞、監督(銀貝)賞、アルカラ・デ・エナレス映画祭観客賞
スペイン公開10月17日、テッサロニキ映画祭上映後ギリシャで公開11月18日
キャスト:ルイス・ベルメホ(ルイス)、ホセ・サクリスタン(ダミアン)、バルバラ・レニー(バルバラ)、イスラエル・エレハルデ(アルフレド)、エリザベト・ヘラベルト(アダ)、ルシア・ポリャン(アリシア)他
プロット:文学教師のルイスは失業中、彼の12歳になる娘アリシアは末期ガンで余命いくばくもない。アリシアの最後の願いは日本のアニメTVシリーズ『マジカル・ガールYukiko』の衣装を着ること、なんとか叶えてやりたい。その高価な衣装のためルイスは恐ろしいネットに深く入り込むことになる。ダミアンとバルバラを巻き添えに、彼らの運命も永遠に変えてしまうだろう。
(『マジカル・ガールYukiko』 映画から)
★作品賞:ペドロ・エルナンデス・サントスは、2010年設立の製作会社Aquí
y Allí Filmsの代表者。若い才能を発掘して社会変革をモットーにしている。第1作は、アントニオ・メンデス・エスパルサの“Aquí y allá”(2012、西=米=メキシコ)、サンセバスチャンで上映された後、東京国際映画祭2012「ワールド・シネマ」部門でも『ヒア・アンド・ゼア』の邦題で上映され、本作が第2作目になります。
*評価の高い割には興行成績は伸びず17万ユーロ、製作費を回収できていません。スリラー好きの国民ですが、2014年ランキング150位にも入っていないという厳しさです(この数字は外国映画も含んでいると思います)。サンセバスチャン映画祭の快挙を裏切る数字ですが、ゴヤ賞如何では伸びるかもしれません。“Ocho apellidos vascos”、セグラの「トレンテ5」、『エル・ニーニョ』、“La lsla
minima”などに流れてしまったのでしょう。
(金貝賞、監督賞ダブル受賞を喜ぶ二人、サンセバスチャン映画祭授賞式にて)
マンガ愛好家、出発はイラストレーター
★監督賞・脚本賞:カルロス・ベルムトCarlos Vermutは、1980年マドリード生れ、監督、脚本家、漫画家、プロデューサー。美術学校でイラストを学び、「エル・ムンド」紙のイラストレーターとして働く。2006年、最初のコミック“El banyan rojo”がバルセロナのコミック国際フェアで評価された。彼の漫画家としての才能と経験は本作にも活かされている。デビュー作はミステリー・コメディ“Diamond flash”(2011)。他に短編映画3作、コミック3作、2012年刊行の“Cosmic Dragon”は、鳥山明の『ドラゴンボール』のオマージュとして描かれたようです。
「スター誕生」となるか
★主演女優賞:バルバラ・レニー Barbara Lennie Holguín は、1984年マドリード生れ、女優、舞台俳優。生れはスペインだが家族はアルゼンチン人、誕生後一家でブエノスアイレスに帰国、6歳のとき再びスペインに戻っている。王立演劇学校で演技を学び、16歳でビクトル・ガルシア・レオンの“Más pena que gloria”(2001)で映画デビュー。フェルナンド・トゥルエバの長男ホナス・トゥルエバが脚本デビュー、監督と共同執筆している。ダニエル・モンソンの『エル・ニーニョ』で助演女優賞にもノミネートされていますが、本命は当然こちらです。フォルケ賞最優秀女優賞を受賞したばかりで、流れとしては受賞の可能性が高く、各紙「スター誕生」を予想しており、2014年最も輝いた女優の一人。過去にダブル受賞は1回だけあり、1987年ベロニカ・フォルケが“La vida alegre”で主演、“Moros y Cristianos”で助演を受賞しています。
代表的な出演作は以下の通り:
2005年“Obaba”モンチョ・アルメンダリス、ルルデス役でゴヤ賞2006新人女優賞ノミネート。
2007年“Las 13 rosas”エミリオ・マルティネス≂ラサロ (スペイン内戦物)
2008年“Todos los días son tuyos”ホセ・ルイス・グティエレス・アリアス
2009年“Los condenados”イサキ・ラクエスタ(サン・ジョルディ映画賞で女優賞)
2010年“Todas las canciones hablan de mí”ホナス・トゥルエバ(コメディ)
2011年“La piel que habito”ペドロ・アルモドバル(『私が、生きる肌』の邦題で2012公開)
2012年“Dictado”アントニオ・チャバリアス(『フリア、よみがえりの少女』邦題で2012公開)
同 “Miel de naranjas”イマノル・ウリベ
2014年“Stella cadente” リュイス・ミニャロ(サンセバスチャン「メイド・イン・スペイン」)
同 “El Niño”ダニエル・モンソン(『エル・ニーニョ』の邦題でラテンビート2014上映)
同 “Magical Girl”省略
同 “Murieron por
encima de sus posibilidades” イサキ・ラクエスタ(コメディ)
(最近のバルバラ・レニー)
★以上でも分かるように、脇役が多いが傾向の異なる監督からオファーを受けている。歴史物からシリアス・ドラマ、コメディまでこなせるマルチ俳優。アルモドバルの『私が、生きる肌』のチョイ役で合格点を貰ったようで、次回作“Silencio”がアナウンスされたばかりですが、噂ではオファーがあるのではないかということです。新作は「ウーマンもの」に回帰するとか。ホナス・トゥルエバ(1981マドリード)とは一時恋人同士だったが、現在は本作にも共演して新人賞ノミネートのイスラエル・エレハルデが恋人、舞台でも共演している。ガラのレッド・カーペットは彼のエスコートが期待されている(笑)。
(舞台“Misántropo”でのイスラエル・エレハルデとバルバラ・レニー)
*2007年より間断なくシリーズTVドラにも出演、歴史物“Isabel”(2012~13)で人気を博す。今年から始まった“El incidente”にも出演している。2008年からは舞台でも活躍しており、特に“Misántropo”は、2013年以来のロングランを続けている。バルバラにとって2014年は素晴らしい年になったが、「自分が演じたいと思うような役柄に出会うことは、そんなに簡単なことではない」、本作については「スペインの危機的な現実をダイレクトにテーマにした作品ではないが、どの時代にもある表面には現れてこない危機が、気分的にも経済的にも落ち込んでいるマドリードが描かれている」と語っている。
*今年公開される予定の映画は、ウルグアイの監督フェデリコ・ベイロフの“El apóstata”、『アクネACNE』(2008)がカンヌやトロントなど有名映画祭に招待された。4年後短期間だが劇場公開されている。
★本ブログお馴染みの助演男優賞のホセ・サクリスタン、今回受賞は難しい主演男優賞のルイス・ベルメホ、ヘスス・カストロ受賞確実の新人男優賞のイスラエル・エレハルデは割愛。
(ホセ・サクリスタン、映画から)
(ルイス・ベルメホ、映画から)
サンセバスチャン映画祭2014⇒9月16日
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