ゴヤ賞2024ガラの落穂ひろい*ゴヤ賞202 ⑧ ― 2024年02月19日 15:32
涙の乾くまもなかったJ.A.バヨナのための授賞式
★J. A. バヨナが泣きっぱなしの祭典となりましたが、早やチームはオスカー賞のプロモーションに全力で邁進していることでしょう。12部門受賞はオスカー賞ノミネート5作品に残ったことも影響しているのかもしれません。『雪山の絆』を見てくれた人が既に1億5千万人を突破したということですからネットフリックスの功績は無視できません。製作者の一人ベレン・アティエンサも「資金的に窮地に陥り、タオルを投げそうになったとき、ネットフリックスが手を差し伸べてくれた」と感謝の辞を述べ、また「パブロ・ヴィエルチによって書かれた著作がなかったら、このプロジェクトも映画も存在しなかった」と原作者を讃えていた。本作はスペインで英語でなくスペイン語で製作され、「不可能と思われたが10年かかってレベルの高いものになった」と。
(スペイン映画アカデミー会長フェルナンド・メンデス=レイテ)
★新人男優賞を受賞したアルゼンチンのマティアス・レカルト(ロベルト・カネッサ役)の受賞スピーチはいささか長すぎましたが、興奮が抑えられなかったのでしょう。監督やチームの仲間は当然として、「アンデスの生存者、生還できなかった人々と私たちに彼らの物語を語らせてくれた遺族の方々、僕が演じたロベルト・カネッサ、母、兄弟、祖母、叔父たち、友人、ガールフレンド、とりわけ映画製作前に亡くなったお父さん、パパにトロフィーを捧げます」と、繰り返し感謝を述べて会場を感動させました。彼だけでなく支えてくれたパパやママなど家族に感謝を述べる受賞者がなんと多かったことでしょう。
(天国の父親に「パパ、ありがとう」とマティアス・レカルト)
★最多15部門ノミネートのエスティバリス・ウレソラの『ミツバチと私』は、新人監督賞とオリジナル脚本賞、少女(少年?)の祖母役アネ・ガバライン(サンセバスティアン1963)の助演女優賞の3賞、受賞者はゴヤ賞初ノミネート初受賞でした。舞台にソフィア・オテロが登場した段階でガバラインの受賞は分かりました。ソフィアの涙もむべなるかな。受賞者については、TVミニシリーズ「Patria」(20)でフェロス賞とフォルケ賞主演女優賞にノミネート、バスク語映画『フラワーズ』(14)などに出演している。
*「Patria」作品&キャリア紹介は、コチラ⇒2020年08月12日
(受賞者アネ・ガバラインとソフィア・オテロ)
★スペインの代表的な映画賞であるフォルケ賞、フェロス賞、ガウディ賞とは大分違う結果になりました。主演男優賞のダビ・ベルダゲルの4冠は特別で、向かうところ敵なしの快進撃でした。カルラ・シモンの『悲しみに、こんにちは』で助演男優賞を受賞していますが、今回は受賞確率も高く「不安でたまらなかった」由。主演女優賞のマレナ・アルテリオは、ガウディ賞にはノミネートさえされませんでしたが、下馬評通り受賞しました。22年前の新人女優賞ノミネート以来の晴れ舞台、生後数ヵ月でアルゼンチンから亡命した。父親エクトル・アルテリオは20年前のゴヤ栄誉賞2004の受賞者、兄エルネストとトロフィーを手渡した。軍事独裁政権と闘ったアルゼンチン国民に向けて、「共に喜びを楽しみたい、両親が私の道案内者、歴史的記憶、共生と平和の闘士だった両親に感謝を捧げたい」とスピーチした。
(マレナ・アルテリオ)
「もらった以上にお返ししています」とアルモドバル監督
★受賞者スピーチより会場の拍手喝采を受けたのが作品賞プレゼンターの一人ペドロ・アルモドバルでした。『オール・アバウト・マイ・マザー』25周年とかで大物5人が登壇しました。「ある人が、政治家ですが、誰も興味を示さないつまらない映画を作るために助成金を貰っている苦労知らずの〈お坊ちゃんたち〉と私たちを批判しました。しかしはっきり言いますが、我々シネアストたちは前払い金として受けとっているお金以上を十二分に返却しております」と。ある政治家とは、カスティーリャ・イ・レオン自治州の副知事フアン・ガルシア・ガジャルドのことで、援助で生活している〈お坊ちゃんたち〉と批判したようです。
(「もらった以上に・・・」とスピーチするペドロ・アルモドバル)
★座席にいた本人にもカメラが移動するというおまけつき、後に一緒に出席していたエルネスト・ウルタスン文化大臣も「映画人はお坊ちゃんの集りではない。誇りをもって映画を製作している」と援護射撃、バジャドリード市長を長年務めた日本の国交省に当たる運輸相のオスカル・プエンテも、「アルモドバルは、文化にもっと敬意をはらえとガルシア・ガジャルドをたしなめたのさ」とコメントしたようです。日本でも似たようなことありましたね。
(作品賞プレゼンター、アントニア・サン・フアン、マリサ・パレデス、
アルモドバル、ペネロペ・クルス、セシリア・ロス)
★ゴヤ賞ガラには来る来ないは別として、首相以下関係者が招待されるのが慣わしです。今年もペドロ・サンチェス首相が出席していました。目下ヨーロッパは戦争中ですから停戦を呼びかけるステッカーを付けてる人、カルロス・ベルムト事件に端を発した反性暴力の扇子を手にする人が多く見られました。ガラのホストの一人アナ・ベレンやエスティバリス・ウレソラなどは「ガザでの武器取引のストップ」のステッカーを、イサベル・コイシェやマリサ・パレデス、映画アカデミー副会長スシ・サンチェスなどスペインを代表するベテラン勢が「もう性暴力は終わりにしよう」と書かれた扇子を持ってアピールしていた。
(映画アカデミー会長メンデス=レイテとペドロ・サンチェス首相)
(アナ・ベレン)
(ステッカーには ”Stop comercio de armas en Gaza” と読める)
(新人女優賞のプレゼンターたち、中央スシ・サンチェス、全員扇子を携えて登壇した)
(CIMA女性シネアスト協会の代表者たち)
(マリサ・パレデス)
(イサベル・コイシェ、扇子には ”#SEACABÓ” と書かれている)
★2023年も多くの監督、脚本家、俳優、声優、製作者が旅立ちました。訃報をアップしたコンチャ・ベラスコ(84歳)、会場に息子マヌエル・マルティン・ベラスコが出席していた。若くして亡くなったイツィアル・カストロ、1970年代に最も人気のあったカルメン・セビーリャ(92歳)やコメディを得意としたヘスス・グスマン(97歳)など既に銀幕から遠ざかっていた俳優たちにもオマージュが捧げられた。
(映画、舞台、TVと活躍したコンチャ・ベラスコ)
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