『燃やされた現ナマ』出版講演&『逃走のレクイエム』上映会2022年06月16日 14:49

           マルセロ・ピニェエロの旧作『逃走のレクイエム』上映会

 

   

 

★劇場公開というわけではありませんが、インスティトゥト・セルバンテス東京の文化イベントとして、マルセロ・ピニェエロの旧作「Plata quemada」(00)が日本語字幕入りで上映されます。本作はリカルド・ピグリアの同名小説を映画化したもので、1965年ブエノスアイレスで起きた現金輸送車襲撃事件の実話に触発されたフィクションです。今回原作が『燃やされた現ナマ』の邦題で水声社より出版されたことで、訳者の大西亮法政大学国際文化学部教授を迎えて講演&上映会が企画されたようです。

 

  『燃やされた現ナマ』出版講演&『逃走のレクイエム』上映会

日時:202276日(水曜日)1800

会場:インスティトゥト・セルバンテス東京地下1階オーディトリアム

   入場無料、要予約、オンライン配信はありません

言語:講演会(日本語)、映画(スペイン語、日本語字幕付)

主催:インスティトゥト・セルバンテス東京、アルゼンチン大使館

協力:NPO法人レインボー・リール東京、水声社

   


      

1997年のプラネタ賞受賞作品ということで、アルゼンチンでの公開当時の評判は、「映画より小説のほうが数倍面白い」というものでしたが、映画もなかなか面白いものでした。脇道になりますが、プラネタ賞受賞については、作家が出版社にもっていた深いコネクションが後々訴訟問題にまで発展しました。裁判所は作家がコンテストを操作したと認め、以後コンテストの明朗化が進みました。話を戻すと日本では第10回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭2001『逃走のレクイエム』の邦題で上映されました(現レインボー・リール東京、2016年に改名)。その後2004より始まったラテンビート(ヒスパニックビートFF2004)では『炎のレクイエム』と改題されています。今回はレインボー・リール東京のタイトルが採用されての上映です。

 

『燃やされた現ナマ』(水声社、2022225日刊、2400円+税)

著者リカルド・ピグリア1940)は筋萎縮症のため2017年に既に鬼籍入りしている。翻訳者は他にピグリアの『人工呼吸』(2015年刊)やビオイ・カサーレスの『英雄たちの夢』(2021年刊)を翻訳しています。

   

           

             (リカルド・ピグリアと原作の表紙

 

           暴力的なフィナーレに魅了される

 

20年以上前の映画なので少し作品紹介をしておきます。映画より面白いという小説は未読ですが、大筋は同じでも、当然のことながら人名、プロットは若干異なるということです。製作国はアルゼンチン、スペイン、ウルグアイ合作、ブエノスアイレス、ウルグアイのモンテビデオで撮影された。アレハンドロ・アメナバルの『テシス 次は私が殺される』でブレイクしたエドゥアルド・ノリエガ、フアン・カルロス・フレスナディーリョの『10億分の1の男』のレオナルド・スバラーリア、マルセロ・ピニェイロの「El método」や『木曜日の未亡人』パブロ・エチャリ、本作がデビュー作のドロレス・フォンシなど、彼らの若い時代の演技が楽しめます。

 

 

Plata quemada」(邦題『逃走のレクイエム』、英題「Burning Money

製作:Oscar Kramer S. A. / Cuatro Cabezas / Mandarin Films S. A. / Tornasol Films / INCAA 他多数

監督:マルセロ・ピニェエロ

脚本:マルセロ・フィゲラス、マルセロ・ピニェエロ

原作:リカルド・ピグリア

撮影:アルフレッド・マヨ

編集:フアン・カルロス・マシアス

録音:カルロス・アバテ、ホセ・ルイス・ディアス

音楽:オスバルド・モンテス

製作:ディアナ・フレイ、オスカル・クラメル、(スペイン)マリエラ・ベスイエブスキ、ヘラルド・エレーロ、(エグゼクティブ)エディイ・ワルター、他多数

 

データ:製作国アルゼンチン、スペイン、ウルグアイ、スペイン語、2000年、犯罪サスペンス、ロマンス、117分、撮影地ブエノスアイレス、モンテビデオ、公開アルゼンチン(2000511日)、ウルグアイ(62日)、スペイン(91日)

映画祭・受賞歴:トロント映画祭、パームスプリングス、ベルリン、マイアミ、サンフランシスコ、フィラデルフィア、ロスアンゼルス、アムステルダム・ゲイ&レズビアン、ハバナ、他国際映画祭正式出品、アルゼンチン映画批評家連盟賞2001脚色賞、ゴヤ賞2001スペイン語外国映画賞、ハバナ映画祭2000撮影賞・録音賞、各受賞、ノミネート多数

 

主なキャスト:エドゥアルド・ノリエガ(アンヘル)、レオナルド・スバラーリア(エル・ネネ)、パブロ・エチャリ(エル・クエルボ)、ドロレス・フォンシ(ビビ)、レティシア・ブレディチェ(ジゼル)、リカルド・バルティス(犯罪グループのボス、フォンタナ)、カルロス・ロフェ(弁護士ナンド)、エクトル・アルテリオ(ロサルド)、他多数

 

ストーリー1965ブエノスアイレス郊外サンフェルナンド、アンヘル、エル・ネネ、エル・クエルボは現金輸送車を襲撃する。ブエノスアイレス警察は大規模な捜索を開始する。700万ペソの〈現ナマ手にした強盗団は警察の追っ手を逃れ国境を越えウルグアイに逃走、モンテビデオのアパートの一室に立てこもる。幼年時代の想い出、娼婦との出会い、セックスとドラッグへの耽溺など、トリオの過去をフラッシュバックで描き出す。クエルボの恋人ビビ、ネネが出会った娼婦ジゼル、若者を牛耳るグループのボス、悪徳弁護士などを絡ませて「社会を震撼させた衝撃的事件をフィクションの力で描き出した傑作。

       

   

  (左から、エドゥアルド・ノリエガ、パブロ・エチャリ、レオナルド・スバラーリア)

 

★小説は実話にインスピレーションを得て書かれているうえに、脚本では更にいくつかの変更が加えられている。映画のほうが実話に近いということです。エル・ネネは実際には裁判官になるための教育を受けていたそうです。包囲戦で死亡したトリオはモンテビデオの北墓地に匿名で埋葬されたが、その後ネネの遺体だけが家族によって引き取られ故国に戻っているそうです。クエルボは包囲戦で死亡したのではなく、警察官に唾を吐いたことで暴力を受け、病院に移送された数時間後に息を引き取った。

 

         

   
   
       

★作家ピグリアと出版社プラネタは、後にいくつかの訴訟を起されている。その一つがラ・ネナ(映画ではビビとして登場した)として知られているブランカ・ロサ・ガレアノ、当時エル・クエルボのガールフレンドで彼の子供を収監された刑務所内で出産している。息子には父親の身元を伏せ過去を封印してきたが小説が出版されたことで多大な苦痛を受けたとして100万ペソの損害賠償を要求した。しかし内容は当時の新聞に掲載されていた周知の事実であり、賠償請求額は彼女が被った損害に対して過度であるとして却下されている。言論の自由が優先されたわけだが、自業自得とはいえ現在なら違ったかもしれない。

    

   

         (本作でデビューしたドロレス・フォンシ、フレームから)

 

  関連記事&キャスト紹介

マルセロ・ピニェエロ監督の紹介記事は、コチラ20131219

レオナルド・スバラーリア(スバラグリア)キャリア紹介は、

 コチラ2020011120170313

パブロ・エチャリの出演作はコチラ20131219

エドゥアルド・ノリエガの出演作は、コチラ20131219

ドロレス・フォンシのキャリア紹介は、コチラ2017051820150521