セクション・オフィシアルに追加発表7作*サンセバスチャンFF26⑥ ― 2026年08月04日 10:39
パブロ・ラライン「Mis muertos tristes」他、アルゼンチン映画

★7月28日、セクション・オフィシアルに7作の追加発表がありました。ニコール・ガルシア(アルジェリア)、マハ・ハラダ(日本)のデビュー作、パブロ・ラライン(チリ)、マイク・リー(イギリス)、ハンス・ペッター・モランド(ノルウェー)、ベンハミン・ナイシュタット(アルゼンチン)、イェシム・ウスタオル(トルコ)の7監督が、金貝賞に参戦します。既に発表になっていた3作に加えて10作が明らかになり、これで約半分です。詳細は別途アップするとして、簡単な作品紹介をしておきます。
*セクション・オフィシアル追加7作品*
4)「7:40 ce matin-là / Milo」(仮題「マイロ」)
データ:製作国フランス、2026年、フランス語、ドラマ、114分
監督・脚本:ニコール・ガルシア(アルジェリア、オラン1946)、監督、脚本家、女優
キャスト:マリオン・コティヤール(アリス)、テオドール・ペレラン(マイロ)、アルトゥス、ロール・カラミー、アレクシス・マネンティ、アンヌ・ブロシェ、エリック・エルモスニーノ、シャルル・ベルリング
ストーリー:出所したアリスは静かな地方の都市に到着し、地元のカフェでウエイトレスとして働きはじめます。自分のものではない生活に自然に溶け込んでいきますが、彼女が此処にいるのは偶然ではありません。それは近くのガレージで働く若い整備士マイロのせいです。しかし彼にとってアリスは他人、しかし彼女にとってマイロは決して離れることのできない過去に縛られた存在なのです。埋もれていた緊張が表面化し、マイロが不確かな境地へ深く入り込むと、二人は岐路に立たされます。何十年も前に壊れた絆を再び取り戻すことはできるでしょうか。

(母マリオン・コティヤールと息子テオドール・ペレラン)

(ニコール・ガルシア監督)

5)「Artakalan / What Remains」
データ:製作国トルコ=フランス=ルクセンブルク=ブルガリア、2026年、ドラマ、130分、
監督:イェシム・ウスタオウル(トルコ、1960)、サンセバスチャンFF2008で『パンドラの箱』が金貝賞を受賞、主演のツィラ・シェルトンが女優賞を受賞している。
キャスト:オイク・カラエル、メティン・アクデュルガー、アリ・カイラ・クル、イリヤス・サルマン
ストーリー:女性詩人は、内なる声と良心に再び向きあうため息苦しい生活の秩序から抜けだします。伝統的な家族の概念や人生の意味に疑問を投げかけ、自身と家族のために新たな道を切り開こうとします。


(イェシム・ウスタオル監督)

6)「Glaxo」(仮題「グラクソ」)
データ:製作国ブラジル=アルゼンチン、2026年、スペイン語、ドラマ、106分、トロント映画祭正式出品
監督・脚本:ベンハミン・ナイシュタット(アルゼンチン、ブエノスアイレス1986)
キャスト:ラリ・エスポシート、マルセロ・スビオット、エステバン・ビリアルディ、エステバン・ラモテ、マヌ・ファネゴ、アラン・サバグ
ストーリー:チビルコイ、1957年、グラクソの工場がある静かなアルゼンチンのの町で、引退した不吉な警察署長とその魅力的な妻の登場が、若者4人の永遠の友情を断ち切ってしまう。数十年後、過去が再び蘇り、彼らは古傷や罪悪感、そして無垢を失った国での復讐の可能性と向きあわざるを得なくなる。エルナン・ロンシノの同名小説の映画化。
◎監督キャリア&フィルモグラフィー紹介を予定しています。


(ベンハミン・ナイシュタット監督)

7)「Markens Grode / Growth of the Soil」(仮題「土壌の成長」)
データ:製作国ノルウェー=デンマーク=ドイツ、2026年、ノルウェー語、ドラマ、155分、撮影地:ノルウェー、2025年6月~12月。トロント映画祭特別プレゼンテーション部門でワールドプレミアされる。公開ノルウェー8月28日、デンマーク、スウェーデン10月30日
監督・脚本:ハンス・ペッター・モランド(ノルウェー、オスロ1955、監督、脚本家)、原作はクヌート・ハムスンの同名小説(1920年刊)の映画化、ガード・B・エイズウォルトが脚本を共同執筆。
キャスト:ハーバート・ノードルム(イサク・セランラー)、アスタ・カンマ・アウグスト(インゲル・セランラー)、ガード・B・エイズウォルト(ガイスラー)
ストーリー:山の向こうに彼独特の決断を携えた一人の見知らぬ男が現れる。過去をもたないイサクは、土地を耕しながら人生を切り開き、定住する場所を探しています。木立の上方の高い場所に、彼は厳しく不毛ながらも約束の土地を見つけます。この過酷な土地が彼を限界まで試しますが、やがて彼はインゲル(インガー)という孤独な女性に出会います。彼女は強靭さと静かな秘密主義に鍛えられています。二人は一緒に自然に耐え、季節の移り変わりに合わせて土壌と家族を築いていきます。しかし年月が過ぎ、世界が狭まるにつれ、時間と困難、欲望が彼らを作り変えていきます。


(ハンス・ペッター・モランド監督)

8)「Mis muertos tristes / My Sad Dead」
データ:製作国アルゼンチン=チリ、アルゼンチン映画、2026年、スペイン語、TVミニシリーズ(4話186分)、心理的ホラー、ファンタジー。撮影のロケ地はアルゼンチン、室内はチリ、2025年6月クランクイン、Netflix日本語字幕入り配信決定
監督・脚本:パブロ・ラライン(チリ、サンティアゴ1976、監督、脚本家、製作者)、共同脚本:アナスタシア・アヤジ、ギジェルモ・カルデロン、原作マリアナ・エンリケスの短編4作
キャスト:メルセデス・モラン(エマ)、ドロレス・フォンシ(ジュリー)、アレハンドラ・フレッチェネル、カロリナ・サンチェス・アルバレス、カルロス・ポルタルッピ、ヘルマン・デ・シルバ、カルロス・ドノソ、ルス・ヒメネス
ストーリー:母親の死後、引退した医師エマは姪のジュリーの予期せぬ訪問を受けます。姪はエマと同じ不穏なギフトを共有しています。家族の再会が癒えることのなかった秘密や傷を再び浮上させることになるが、同時に誰も無傷で生きられない奇妙な現象も現れます。近隣全体が彼方からの気配を感じとり、自分たちの死者の特徴的な声を聞くことになります。生と死の境界が曖昧になり、社会が隠している恐怖が語られることになるだろう。死者の姿を見聞きできるエマを描いた、アルゼンチンの作家マリアナ・エンリケスの作品を原作としている。
◎作品詳細、原作者、監督キャリア&フィルモグラフィー紹介を予定しています。

(エマ役メルセデス・モラン)

(ジュリー役ドロレス・フォンシ)

(パブロ・ラライン監督)

9)「Muyou no Hito / In My Father’s Room」『無用の人』
データ:製作国日本、2026年、ドラマ、109分、デビュー作、公開2027年1月予定
監督・脚本:原田マハ(東京都小平市1962、作家、キュレーター、大学教員、監督デビュー作)、著書『リボルバー』(2023年刊)、2024年『坂上に咲く』で第52回泉鏡花文学賞受賞、他受賞歴多数
キャスト:蒼井優(羽島聡美)、イッセー尾形(父唯一)、永山瑛太(古道具屋店主タク)、渡辺えり(母柊子)
ストーリー:聡美は美術館で監視員として働いていたが、美術館に謎の「鍵」が入った封筒が届いた。亡き父がかつて所有していた見知らぬ部屋へと聡美を導いていきます。父は1ヵ月前に一人で他界していた。この小さな物に引き寄せられ、彼女は父の最期の日々を辿ることになります。社会に忘れられたかのように見えながら、言葉や茶道芸術、そして繊細な美への献身に支えられていた。孤独の痕跡を通して、聡美はゆっくりと自分が住む世界の静かな優雅さを発見していきます。『あなたは、誰かの大切な人』収録作「無用の人」の映画化。


(聡美役の蒼井優)

(原田マハ監督)

10)「Tender Loving Care」
データ:製作国イギリス=米国=シンガポール、2026年、英語、コメディ・ドラマ、トロント映画祭正式出品、公開米国2026年12月4日予定
監督・脚本:マイク・リー(ブロケット・ホール1943、監督、脚本家、舞台監督)、SSIFF2024セクション・オフィシアルに「Hard Truths」(『ハード・トゥルーズ 母の日に願うこと』)で登場以来、本作で戻ってきました。『ネイキッド』(93)、『秘密と嘘』(カンヌFF1996パルムドール)、『人生は、時々晴れ』(カンヌFF2002ノミネート)、『ヴェラ・ドレイク』(ベネチアFF2004金獅子)など。
キャスト:マリオン・ベイリー、ポール・ジェッソン、ケイト・オフリン、アリス・ベイリー・ジョンソン
ストーリー:カンヌ映画祭のパルムドール受賞者にして、複数回オスカー賞ノミネートのマイク・リーの新作、現代世界への洞察に満ちた探求を続けています。本作が最後の作品となる可能性を示唆している。
*『ハード・トゥルーズ 母の日に願うこと』の作品紹介は、コチラ⇒2024年08月08日


(マイク・リー監督)

ニューディレクターズ部門14作ノミネート発表*サンセバスチャンFF26 ⑦ ― 2026年08月07日 17:26
クチャバンク賞を競うニューディレクターズ部門全14作のノミネート発表

★7月30日、ニューディレクターズ部門の全14作が出揃いました。この部門はデビュー作を含む2作めまでが対象で、クチャバンク新人監督賞には50.000ユーロが副賞として授与されます。既にスペインが主製作国の映画3作が発表になっており、ラテンアメリカ諸国(メキシコ、チリ)、アジア(日本、韓国、台湾、イラン、カザフスタン)、ヨーロッパ(ドイツ、ノルウェー、イギリス、ブルガリア、ウクライナ)が各1作ずつノミネートされています。スペイン語映画を中心に以下5作を紹介いたします。
*ニューディレクターズ部門(スペイン映画)*
1)「El mal hijo / The Bad Son」
オープニング作品
データ:製作国スペイン、2026年、スペイン語、ドラマ、106分
監督・脚本:ハイメ・ロレンテ(ムルシア1991)、共同脚本サルバドール・S ・モリーナ、撮影エリアス・M・フェリックス、音楽ルイスミ・グレス・ベドマル、編集レヒノ・エルナンデス
キャスト:ウーゴ・アルブエス(ルーベン)、ミゲル・アンヘル・プーロ(父)、スシ・サンチェス(祖母パスクアラ)、オスカル・デ・ラ・プエンテ(伯父ファンジ)、アベル・デ・ラ・プエンテ(少年時代ルーベン)、ナイアラ・カルモナ(母)
ストーリー:11歳のルーベンの父親が謎の失踪をして、少年はほとんど会ったことのない祖母と暮らため引っ越さねばなりません。時が止まったかのような田舎の環境で、子供は家族の傷が代々受け継がれていることを学び、成長する過程で傷を癒そうと努力するだろう。


(ミゲル・アンヘル・プーロ、アベル・デ・ラ・プエンテ)

(ハイメ・ロレンテ監督)

2)「Bloques erráticos / Erratics」(仮題「不規則なブロック」)
データ:製作国チリ=フランス=ドイツ、2026年、デビュー作、スペイン語、ドラマ、ファンタジー、92分、ロッテルダム映画祭2026でプレミア
監督・脚本:トマス・ウッドロフ(サンティアゴ1995,監督、脚本家)、エリアス・ケレヘタ・シネ・エスコラの映画アーカイブコース修了、短編「Fiebre austral」がSSIFF2019ネスト部門の特別賞を受賞、ベネチアFFオリゾンティ、トロントFF短編部門で上映された。共同脚本ヴァレリア・ホフマンアントニオ・ルコ、撮影エミリア・マルティン、製作者パスクアル・メナ、ロドリゴ・ディアス
キャスト:デニス・ラヴァン(リシュアン)、ダニエル・ムニョス
参加者:フランチェスカ・ボッツァーノ(シネマテーク・ドゥ・トゥールーズのコレクション責任者)、ドミニク・ルグピル(フランス国立科学研究センター、作家)、レイナルド・カロ(俳優)、ドミンガ・ソトマヨール(チリの監督)、フェリペ・ガルベス(チリの監督)
ストーリー:100年間パタゴニアの氷河に閉じ込められた後、自らを解放した映画監督リュシアン・カステルノーの亡霊は、未来のパタゴニアを彷徨います。そこは技術の進歩が忘れられた物語と激しく衝突しています。彼の映画遺産が見られずにいるあいだ心が休まらず、記憶から消し去られた世界を横断して、歴史のなかの場所と観客を求めて、遂に失われた作品を生き返らせる。

(フランスの名優デニス・ラヴァン)

(トマス・ウッドロフ監督)

3)「Esta soledad / This Solitude」(仮題「この孤独」)
データ:製作国スペイン、2026年、スペイン語、ドラマ、110分、単独監督デビュー作、公開2026年10月30日
監督・脚本:ハビエル・ギネル(ビスカヤ県バラカルド1977)、監督、脚本家、製作者。2024年、本祭アウト・オブ・コンペティションでコメディ「Yo,adicto / I, Addict」(TVシリーズ全6話の3話)をアイトル・ガビロンドと共同監督して、特別上映枠で上映された。監督自身のビオピックで主役ハビエルをオリオル・プラが演じた。短編「El amor me quedad grande」でシネフォリア賞2016監督賞、観客賞受賞、ほか短編多数。
キャスト:オリオル・プラ(レオ)、マリナ・サラス(ロレア)、ジェンマ・マルティネス(イラティ)、カイ・エチャニス、イツィアル・ラスカノ(ロレアの母親)、フアン・ビアダス(レオの父親)
ストーリー:ビルバオ、レオとロレアは愛しあっていた。もしかしたら今も愛しあっているかもしれない。しかし二人のなかで何かが壊れてしまった。5年に及ぶ二人の関係は終わってしまった。彼は病気の父親を介護しており、その責任と重くのしかかる虚ろな感情に捕らわれている。彼女は低賃金の仕事や個人的な危機に巻き込まれ、どこから手を付ければいいのか分からず、やみくもに人生を立て直そうとしている。彼らは疲れはてた孤独な二つの体であり、不安定で、解決されない、そして全てがいつも遅れてやってくるように思える或る世代の感情的な遺産が横たわっている。例えば、愛、安定、成熟、静寂、個人的な満足感など。
*「Yo,adicto」の紹介記事は、コチラ⇒2024年10月09日

(マリナ・サラス、ハビエル・ギネル監督、オリオル・プラ)

4)「Morro」(仮題「モロ」)
データ:製作国メキシコ、2026年、2作め、スペイン語、ドラマ、95分
監督・共同脚本・製作者:ロドリゴ・ガルシア・サイス(メキシコシティ生れ、監督、脚本家、製作者)、
短編「El hombre que murio de rumor」がアリエル賞1997ノミネート、2023年デビュー作「Lluvia / Rain」がマラガ映画祭2024でプレミア、マイアミ、モレリア、ハバナ、ロスアンゼルスなど各映画祭巡りをした。本作が長編2作めでサンセバスチャンにやってくる。音楽ラミロ・デル・レアル、撮影アルフォンソ・エレラ・サルセド、編集フェルナンダ・デ・ラ・ペサ
キャスト:グスタボ・サンチェス・パラ(獣医マテオ)、アンナ・ディアス(イサベル)、エルネスト・メレンデス(ポンチョ)、アルフォンソ・エスコベド(ダニ)、ホセ・サビノ(ロヘリオ)
ストーリー:獣医のマテオは息子が亡くなって以来、静かな悲しみのなか、譬えようもない罪悪感に満ちた人生を送っている。小さな町の暴力は、終わりのない木霊のように、そこに潜んで直ぐには目に見えない。この壊れやすいバランスは、マテオが地元のマフィアのボスの負傷した犬モロを治療することで崩れます。この動物の日常的な世話は思いがけない絆を生みだし、判断も言葉もない関係を築き、彼は人生の意味を再び取り戻すことになるだろう。
*マラガFF2024ノミネート「Lluvia」の紹介は、コチラ⇒2024年03月04日


(グスタボ・サンチェス・パラとモロ)

(ロドリゴ・ガルシア・サイス監督)

5)「Sieben tage februar / February, Seven Gays / Siete días de febrero」(仮題「2月の7日間」)
WIP Europa 2025
データ:製作国ドイツ=オーストリア=スペイン、2026年、デビュー作、ドラマ、ドイツ語、ロシア語、ウクライナ語
監督・脚本:タチヤナ・ムチニク(ウクライナ、キーウ1988、ドイツ系ウクライナ人、監督、脚本家)、2014年、本祭ネスト部門に短編「Der letzte kuss / The Last Kiss」で参加している。短編、TVミニシリーズ(22)を手がけている。
キャスト:セルゲイ(セルヒー)・コルシコフ(アルカディ)、ヴォロディミル・ホロスニャク、マリア・シュトファ(マリナ)、アルセニ・マルコフ、モイセイ・バジジャン(グランパ・グリシャ)、ダリア・ギトブート(ダシャ)
ストーリー:ウクライナ戦争が勃発する前日のこと、ドイツのシュトゥットガルトに暮らすアルカディは、オデッサから疎遠だった兄とその息子の訪問を受けます。母親の埋葬をするためです。家族の素性についての二つの考え方の違いで対立が生じてしまいます。ロシアによる自国侵攻を背景に、ドイツで再会する兄弟の確執が語られる。

フォト

(タチヤナ・ムチニク監督)

オリソンテス・ラティノス部門12作が出揃う*サンセバスチャンFF26 ⑧ ― 2026年08月12日 16:26
コスタリカの「Siempre soy tu animal materno」がオープニング作品

★8月10日、オリソンテス・ラティノス部門のオープニング作品を含む7作が発表になり、既にアナウンスされていた5作(ディエゴ・ルナ、フェルナンダ・トバルm、マヌエラ・マルテッリ、マルセロ・マルティネッシ、フェルナンド・エインビッケ、各監督)の合計12作が出揃い、オリソンテス賞を競うことになりました。今回はオープニング作品バレンティナ・モーレル(コスタリカ)の「Siempre soy tu animal materno」、フアン・ミゲル・ヘラシオ&エステバン・オヨス・ガルシア共同監督(コロンビア)の「Cinco años. Cuatro meses」、ロレンソ・フェロ&ルーカス・A・ビグナレ共同監督(アルゼンチン)の「El tren fluvial」、以上3作をアップします。
*既にアップ済みの5作品紹介記事は、コチラ⇒2026年07月23日
*オリソンテス・ラティノス部門ノミネート作品②*
6)「Siempre soy tu animal materno / Forever Your Maternal Animal」
◎オープニング作品
データ:製作国ベルギー=フランス=メキシコ=コスタリカ、2026年、ドラマ、スペイン語、108分、撮影コスタリカのサンホセ、長編2作め、カンヌ映画祭「ある視点」でワールドプレミアされ、女優賞受賞作品。ほかメルボルン映画祭出品作品(8月15日)
監督・脚本:バレンティナ・モーレル、1988年コスタリカ、サンホセ生れ、監督、脚本家、映画はフランスとベルギーで学んでおり、フランスとの二重国籍を持っている。長編デビュー作「Tengo sueños eléctricos」がロカルノ映画祭2022で監督賞、ダニエラ・マリン・ナバロが女優賞、レイナルド・アミアンが男優賞の3冠に輝き、本祭SSIFFでは「オリソンテス賞」を受賞している。
キャスト:ダニエラ・マリン・ナバロ(エルサ)、マリナ・デ・タビラ(母イサベル)、マリアンヘル・ビジェガス(妹アマリア)、レイナルド・アミアン(父ナウエル)
ストーリー:ヨーロッパでの長年の留学を終え、28歳になったエルサは家族と再会するためサンホセに戻ってくる。妹アマリアがひとりきりで自宅に引き籠っている。何かに囚われている妹はエルサとも距離をおき、まるで自身の世界に潜りこんでいくかのようだった。一方、両親は自分の生活に没頭しており、父親は一連の恋のアバンチュールに溺れ、母親は母親で若い頃の官能詩を再出版することに夢中になっており、二人とも事の緊急性を全く理解していない。2作めもばらばらに崩壊しかかっている家族の肖像が語られる。
*監督キャリア &「Tengo sueños eléctricos」の紹介記事は、コチラ⇒2022年08月25日

(左から、アマリアとエルサ)

(バレンティナ・モーレル監督、カンヌFF2026フォトコールにて)

7)「Cinco años. cuatro meses / Five Years, Four Months」(仮題「4年5ヵ月」)
WIP Latam 2025
データ:製作国コロンビア=米国、2026年、ドラマ、スペイン語、84分、製作者カルロス・ピニェイロ、エステバン・オヨス・ガルシア他、撮影パウラ・モレノ・ベルガラ、編集フアン・ミゲル・ヘラシオ、音響ダニエル・ガルセス・ナハル、音楽ダニエル・ガルセス・ナハル、スコット・Barley、美術Andyerson Posso Caro
監督・脚本:フアン・ミゲル・ヘラシオ(ボゴタ1995)&エステバン・オヨス・ガルシア(ボゴタ1995)共同監督、デュオはWIP Latam 2023で、初の長編映画「Selva / Jungle」を発表、2作目で戻ってきました。既にカルロヴィ・ヴァリ映画祭でワールドプレミアされている。本作は「A la hora de poner la mesa ya no eramos cinco」のタイトルでWIP Latam 2025のEGEDA(オーディオビジュアル著作権管理協会)産業プラチナ賞を受賞している。
キャスト:ジェニー・ナバ(マルタ・バケロ)、カルミーニャ・マルティネス(サンドラ)、カロリナ・ビバス(マルタの母親)、ロサルバ・ガルシア(アビガイル)、マリア・ドリス・テハダ、ジャクリン・カステージョ(リリアナ)、ロシオ・カステージョ(グロリア)、他
ストーリー:マルタは、コロンビアの武力紛争で息子の足跡を見失ったひとりの母親です。彼女が参加した最近の遺骨掘り起こしでは一致する骨は見つからなかったという知らせを受けます。公式機関の手段を使い果たしたマルタは、女性たちの支援グループを頼って、そこでサンドラに出会います。サンドラが言うには、「平原の遠方の村では、死者が願いごとを聞いてくれる」という噂を語ります。二人は確認を求めて旅に出ます。行方不明になった息子を見つけるために、うさんくさい噂に翻弄される母親が語られる。

(マルタ役のジェニー・ナバ)

(サンドラとマルタ)

(エステバン・オヨス・ガルシア、フアン・ミゲル・ヘラシオ、カルロヴィ・ヴァリFF)

(カルロヴィ・ヴァリ映画祭のポスター)
8)「El tren fluvial / The River Train」(仮題「川の列車」)
データ:製作国アルゼンチン、2026年、成長ドラマ、スペイン語、76分、長編デビュー作、撮影トマス・グリングバーグ、編集アンドレス・メディナ、ルーカス・A・ヴィニャレ、サウンドデザイン、マルティン・ガルシア・ブラヤ、美術・衣装オリビア・シャクテル、製作者トマス・グランディオ、バレンタイン・トレへ、カシアナ・ベラ、他エグゼクティブプロデューサー
監督・脚本:ロレンソ・フェロ(ブエノスアイレス1998)は、俳優として知られ、ルイス・オルテガの『永遠に僕のもの』(18)に主演して大きな注目を集めた。本作が監督デビュー作。一方、ルーカス・A・ヴィニャレ(ブエノスアイレス1997~リオデジャネイロ2026)は、6月14日、アメリカのミュージシャン〈オリバー・ツリー〉をサポートするイベントに参加、搭乗したヘリコプター衝突事故で死去、享年28歳の若さでした。フェロと共同監督した短編「La Pación」(24)はBAFICIで受賞する。ベルリン映画祭2026で上映されている。
キャスト:ミロ・バリア(ミロ)、マリアノ・バリア(父マリアノ)、ルクレシア・パソス(母ルクレシア)、マイレン・バリア(姉マイレン)、リタ・パウルス(教師)、ファビアン・カサス、他多数
ストーリー:9歳になるミロは、アルゼンチン北部の辺鄙な村に住んでいる。マランボ・ダンサーになる教育を受けていますが、彼の本当の夢は別のところにあります。彼は列車に乗り、映画でしか見たことのないブエノスアイレスを探検することに憧れています。小さな世界から抜け出すために、思いきって新たな旅に乗り出さねばなりません。

(ミロ役のミロ・バリア)

(ロレンソ・フェロ、ルーカス・A・ヴィニャレ)

オリソンテス・ラティノス部門ノミネート作品*サンセバスチャンFF26 ⑨ ― 2026年08月17日 14:37
ソトマヨールの「La Perra」はカンヌ「監督週間」のパルム・ドッグ受賞作品
★オリソンテス・ラティノス部門には、前回の3作以外にチリ、メキシコ、ブラジル、米国の4作がノミネートされています。ドミンガ・ソトマヨール(チリ)の「La Perra」は、昨年のオープニング作品「Limpia」に続いての登場、ピラール・キンタナの同名小説の映画化です。アレッサンドラ・サンギネッティ(米国)のドキュメンタリー「La ilusión de un verano sin fin / The Illusion of an Everlasting Summer」、ブルーノ・サンタマリア・ラソ(メキシコ)の「Seis meses en el edificio rosa con azul / Six Months In a Pink & Blue Building」、リカルド・アルヴェス・ジュニア(ブラジル)の「A professora de frances / The French Teacher」の4作、合計12作になりました。
*オリソンテス・ラティノス部門ノミネート作品 ③*
9)「La Perra」(仮題「仔犬のユリ」)
データ:製作国ブラジル=チリ、2026年、ドラマ、スペイン語、113分、撮影地チリ。カンヌ映画祭併催の「監督週間」でパルムドッグ賞受賞作品、カルロヴィ・ヴァリFF(7月)、メルボルンFF(8月)、ブラジルのグラマドFF(8月)、ピラール・キンタナの同名小説に着想をえている。
監督・脚本:ドミンガ・ソトマヨール(チリのサンティアゴ、1985)、監督、脚本家、キャリア&フィルモグラフィーは、前作「Limpia」(『そこから泳いで、私の方へ』)で紹介しています。
キャスト:マヌエラ・オヤルン(シルビア)、ダビ・ガエテ(マリオ)、セルトン・メロ、パウラ・ルクシンガー・エスコバル、パウラ・ディナマルカ、ラファエラ・グリムバーグ
*マヌエラ・オヤルスンはチリでは有名な舞台女優、監督の説得で映画初主演、セルトン・メロはブラジルのベテラン俳優、マヌエラと仔犬は1ヵ月前からの繋がりだったと監督。
ストーリー:チリ南部、遠く離れた風の強い島で、シルビアは海藻穫りで生計を立て、パートナーと穏やかに人生を送っています。捨てられた仔犬のユリを引き取ると、彼女の日々は喜びと愛情と優しさ、それは長いあいだ抑えこんできた母親になるという願いを呼び起こすことになります。しかしユリの突然の失踪は、シルビアが苦しみ続けてきた幼少期のトラウマを再び搔きたて、まだ完全に立ち直れない過去と向き合うことを強いることになります。ピラール・キンタナの同名小説に着想を得て自由に脚色して映画化した。
*「Limpia」(『そこから泳いで、私の方へ』)の紹介記事は、コチラ⇒2025年10月24日


(シルビアとマリオ、仔犬のユリ)

(ドミンガ・ソトマヨール監督)

10)「La ilusión de un verano sin fin / The Illusion of an Everlasting Summer」(仮題「永遠の夏の幻想」)
データ:製作国アルゼンチン=アメリカ合衆国、デビュー作、ドキュメンタリー、93分
監督・脚本:アレッサンドラ・サンギネッティ(ニューヨーク1968)、写真家、監督。ロカルノ映画祭でワールドプレミアされる。25年にわたる撮影期間を経て、アルゼンチンのパンパスで暮らす従姉妹ギレルミナとベリンダを描いています。2007年からマグナム・フォトのメンバーであるサンギネッティの作品は、ニューヨークのMoMA、サンフランシスコ近代美術館、ヒューストン美術館、ブエノスアイレス美術館のコレクションの一部になっています。グッゲンハイム・フェローシップ他を受賞している。ニューヨーク生れだが、1970年から両親とブエノスアイレスに移り、2002年まで32年間暮らした。現在はカリフォルニア在住、国籍は米国。
解説:ドキュメンタリーは1999年から始り、監督が9歳の隣人ギレルミナとベリンダという少女に幻想を共有するよう誘い、数十年にわたるコラボレーションが続きます。二人の子供時代が終わると、彼女たちのゲームは重みを帯びていくことになります。時間の経過が最も強烈な緊張感として、この映画は二人の友情の記録となり、仕事や結婚、母親業、そして将来の進むべき道は分かれていきます。本作は女性の視点からアルゼンチンのパンパス地方の男性によって神話化された地域についてが語られます。

(左ギレルミナ、ベリンダ、「ネックレス」1999)

(ベリンダが結婚する、2007)

(アレッサンドラ・サンギネッティ監督)

11)「Seis meses en el edificio rosa con azul / Six Months In a Pink & Blue Building」(仮題「ピンクとブルーのビルでの6ヵ月」)
Foro de Coproducción Europa-América Latina 2022
データ:製作国メキシコ=ブラジル=デンマーク、2026年、スペイン語、初のフィクション、104分、カンヌ映画祭併催「批評家週間」でワールドプレミア、メルボルン映画祭(8月)上映
監督・脚本・編集:ブルーノ・サンタマリア・ラソ(メキシコシティ1986)、撮影監督、監督、脚本家、編集者、ドキュメンタリー監督として記憶、秘密、子供時代を探求している。代表作「Cosas que no hacemos」(20)や「Margarita」(16)などが国際映画祭で多数受賞している。当ブログでは、共同撮影監督として参加した、アイ・ウェイウェイの「Vivos」(『ビボス~奪われた未来~』)をアップしています。
キャスト:ジェイド・レイエス(ブルーノ)、ソフィア・エスピノサ、ラサロ・ガビノ・ロドリゲス、エドゥアルド・ゴメス、バレリア・バネガス、アヌアル・ベラ、テレサ・サンチェス、他
ストーリー:メキシコシティ、1990年代初頭。ブルーノは11歳の誕生日に、親友のウラジミルに恋をします。その夜、父親は家族の生活を一変させるHIV陽性の診断を受けます。サルサの歌のように、家族は痛みを和らげるために歌ったり踊ったりします。30年後、ブルーノは子供のころに理解できなかった記憶を撮影し再び思い起こします。
*『ビボス~奪われた未来~』の紹介記事は、コチラ⇒2020年12月21日


(ブルーノ役のジェイド・レイエス)

(ブルーノ・サンタマリア・ラソ監督)

12)「A professora de frances / The French Teacher」(仮題「フランス語教師」)
Proyecta 2018
データ:製作国ブラジル=フランス=ポルトガル、2026年、心理スリラー、ホラー、96分、長編4作め
監督・脚本:リカルド・アルヴェス・ジュニア(ブラジルのベロ・オリゾンテ1982)は監督、脚本家、製作者、舞台演出家。実験映画、フィクションとノンフィクション映画でキャリアを積み、本作が長編4作め。
キャスト:グレイセ・パソー(グラサ)、ジェニー・ベス(クララ)、エリサ・ルシンダ、バルバラ・コーレン、ロムロ・ブラガ、エドゥアルド・モレイラ、イタロ・ラウレアノ、ロジャー・ロジェリオ(グラサの父)、ペドロ・ゴイフマン(トマス)
*グラサ役のグレイセ・パソーは女優、監督、劇作家、『千の父より生れ紙息子』(25)に出演、クララを演じたジェニー・ベスは、カンヌ映画祭2023のパルムドールを受賞したジュスティーヌ・トリエの『落下の解剖学』にマルジュ役で出演、父親役のロジャー・ロジェリオやバルバラ・コーレンは、クレベール・メンドンサ・フィリオの『バクラウ』(19)に出演している。
ストーリー:グラサはベロ・オリゾンテに住んでフランス語の個人教師をしている。フランス人のガールフレンドと一緒に暮らしている。しかし父親の健康にかかわる緊急事態のため、子供時代に過ごした郊外の実家に戻ることにしました。地元の宗教団体を率いる隣家の家族が支援してくれますが、彼女を「自分の居場所」に連れ戻そうとする。グラサはアイデンティティと分別を危うくする不寛容と狂信の世界に囚われ、次第に不穏な道を進んでいくことになる。ブラジルの伝統的な家族の内部に潜む暴力が描かれる。

(グラサ役のグレイセ・パソー)

(リカルド・アルヴェス・ジュニア監督)

ペルラス部門全16作品*サンセバスチャンFF26 ⑩ ― 2026年08月24日 19:27
オープニング作品はカンヌ映画祭グランプリ受賞作の「Minotaur」

★ペルラス(ペルラク)部門には合計16作品が上映されます。このセクションは主要な国際映画祭で既にワールドプレミアされ、評価を受けた作品から大半が選ばれます。今年は11作がカンヌで上映され、パルムドール、グランプリ、監督賞、演技賞(男優女優)などの受賞作が含まれており、スペイン人なら少し待てばカンヌに出向かなくとも本祭で安上りに楽しめます。今年はベネチア、ベルリン、サンダンスなどが含まれています。ドノスティア(サンセバスティアン)市観客賞の対象になります。(ただし「Juste une illusion」は除外)
★オープニングには、カンヌ映画祭グランプリ受賞作品、ロシアのアンドレイ・ズビャギンツェフ(1964)の「Minotaur」(「ミノタウロス」)が選ばれました。クロージングには映画祭とは無縁のフランスでのヒット作、オリヴィエ・ナカシュ(1973)とエリック・トレダノ(1971)の「Juste une illusion / Just an Illusion」に決定、『最強のふたり』でお馴染みのデュオ監督作品、1980年代のパリを舞台にしたコメディ、ルイ・ガレルやカミーユ・コッタン、子役サイモン・ブブリルが共演、映画祭の最後は笑って幸せになろうというわけです。
★今までスペイン映画のロス・ハビスの「La bola negra」だけが発表になっておりましたが、今回16作が勢揃いしました。一応作品名、監督、製作国、ジャンル、主なキャストなど長短ありますがアップしておきます。
*ペルラス(ペルラク)部門16作*
1)「Minotaur / Minotauro」(仮題「ミノタウロス」)
◎オープニング作品
データ:製作国フランス=ドイツ=ラトビア、2026年、ドラマ、135分、カンヌFFコンペティション、次点となるグランプリ受賞作品。ロシア、2022年が舞台、成功した会社の取締役グレブは、増大する企業の圧力に包囲され、彼の慎重に秩序立てられた人生の崩壊が暴力へと加速していく。クロード・シャブロルの『不定の女』()を再構築する犯罪サスペンス。キャストは、ドミトリー・マズロフ、イリス・レベデワ、ボリス・クドリン、他。
監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ(ロシア、ノヴォシビルスク1964)、代表作『エレナ』(11、カンヌFF「ある視点」特別審査員賞受賞)、『リヴァイアサン』(14、ロシア初のゴールデングローブ賞、カンヌ脚本賞など受賞)

2)「Juste une illusion / Just an Illusion / Tiempos de illusion」(仮題「ただの幻想」)
◎クロージング作品(アウト・オブ・コンペティション)
データ:製作国フランス、2026年、コメディ、119分、フランスで大ヒットした作品。1985年、もう直ぐ13歳になるヴィンセントは、パリ郊外で中流階級の家族と暮らしている。兄には無視され、両親は夫婦喧嘩が絶えない。もはや子供でも大人でもない宙ぶらりんのヴィンセントは、アイデンティティ、友情、家族、初恋にもひとりで向き合わねばなりません。父親にルイ・ガレル、母親にカミーユ・コッタン、兄にアレクシス・ローゼンシュティール、ヴィンセントにサイモン・ブブリルの布陣。
監督・脚本:オリヴィエ・ナカシュ(フランス、1973)、エリック・トレダノ(フランス、パリ1971)、本祭とは深い繋がりがあり、2011年のクロージング作品で、東京国際映画祭2011でもサクラ・グランプリを受賞した『最強のふたり』、同じく『サンバ』(14)、『セラヴィ!』(17)はセクション・オフィシアル、『スペシャルズ!』(19)はペルラス部門のドノスティア市観客賞を受賞している。日本でも認知度の高いデュオ監督です。

(ヴィンセントの家族)
3)「Club Kid」(仮題「クラブ・キッド」)
データ:製作国アメリカ合衆国、2026年、デビュー作、コメディドラマ、126分。ニューヨークのアンダーグラウンド・パーティの主催する落ち目の男ピーターは、その存在すら知らなかった息子、10歳になるアーロの面倒をみる羽目になる。彼の狂気じみた生活は一変することになるが、やがて予想もしなかった状況に変わっていきます。ジョーダン・ファーストマン(ピーター)、カーラ・デルヴィーニュ、ディエゴ・カルバ、カービー・ハウエル・バティスト、コリーン・キャンプ、レジー・アブソロム(アーロ)出演。カンヌFF「ある視点」の作品賞、カメラドール、クイア・パームにノミネート。
監督・脚本・主演:ジョーダン・ファーストマン(アメリカ合衆国、ロングアイランド1991)は、作家、製作者、俳優、監督。俳優としてチリ出身のセバスチャン・シルバの「Rotting in the Sun」に出演している。ゲイのインフルエンサーでもある。シルバもカミングアウトしている。

4)「Coward / Cobarde」(仮題「臆病者/卑怯者」)
データ:製作国ベルギー=フランス=オランダ、2026年、歴史ドラマ、127分、長編3作め。カンヌFFコンペティション、男優賞にエマニュエル・マキアとヴァランタン・カンパーニュが受賞した。1916年、第一次世界大戦で戦場に送られた二人の兵士は、ベルギーの塹壕の中で愛と芸術の脆い聖域を見つけます。反戦ゲイ映画に止まらない、理不尽な男らしさの暴力を粉々にする危険な映画。
監督:ルーカス・ドン(ベルギー、ヘント1991)、デビュー作『Girl/ガール』がカンヌFF2018「ある視点」でカメラドールを受賞、本祭ではペルラス部門にノミネートされドノスティア市観客賞とセバスティアン賞を受賞した。2作め『CLOSE/クロース』はカンヌFF2022コンペティションのグランプリを受賞、ゴールデングローブ賞外国語映画賞を受賞、アカデミー賞にもノミネートされるなど注目の監督。

5)「Fatherland」(仮題「ファーザーランド/祖国」)
データ:製作国ポーランド=ドイツ=イタリア=フランス、2026年、ドラマ、モノクロ、82分、カンヌFFコンペティション、監督賞共同受賞。冷戦時代の1949年、ノーベル賞作家トーマス・マンと女優で作家の娘エリカは、廃墟となった祖国、アメリカが支配するフランクフルトからソ連支配下のワイマールまで黒のビュイックで横断する困難で感情的なロードトリップ。作家は分断された祖国と家族の深い亀裂に直面する。キャストは、ハンス・ツィシュラー(トーマス・マン)、サンドラ・ヒュラー(娘エリカ)、アウグスト・ディール、デヴィッド・ストリーゾウ、アンナ・メイドリー
監督:パヴェウ・パヴリコフスキ(ポーランド、ワルシャワ1957)、『イーダ』(13、アカデミー外国語映画賞、ヨーロッパ映画賞作品・監督賞、他)、『COLD WAR あの歌、2つの心』(18、カンヌFF監督賞、ヨーロッパ映画賞作品・監督賞)などを受賞している。

6)「Fjord」(仮題「フィヨルド」)
データ:製作国ルーマニア=フランス=ノルウェー=スイス=デンマーク、2026年、ドラマ、146分。カンヌFFでは2度目となるパルムドール受賞作品、他にFIPRESCI賞とエキュメニカル審査員賞の3冠。ルーマニア系家族がノルウェーの田舎町フィヨルドに移住してくる。敬虔なキリスト教徒の夫婦、ノルウェー人の妻(レナーテ・レインスヴェ)とルーマニア人の夫(セバスチャン・スタン)に5人のこどもの家族は、進歩的といわれるノルウェー共同体の価値観に戸惑う。社会の分断が描かれる。実話に基づいている。2027年劇場公開が決定している。
監督・脚本:クリスチャン・ムンジウ(ルーマニア、ラシ1968)、『4ヶ月、3週と2日』(07、カンヌFFパルムドール、ヨーロッパ映画賞監督賞)は、本祭ではペルラス部門でFIPRESCIグランプリを受賞している。『汚れなき祈り』(12、カンヌFF監督賞)、『エリザのために』(16、カンヌFF監督賞)、ほか。

7)「Hope」(仮題「ホープ希望」)
データ:製作国韓国、2026年、SFアクション・スリラー、157分、カンヌFFコンペティションに初ノミネート、山火事で通信が遮断されている町ホープ・ハーバーにエイリアンが降り立つ。増援は消火に向けられ、ホープ・ハーバーの警察署長と警官は高齢者の村を守ろうと奮闘する。人間の争いを通じて宇宙規模の悲劇へとエスカレートしていく。2027年劇場公開決定。
監督:ナ・ホンジン(韓国、ソウル1974)、カンヌFF、本祭SSIFFとも初登場、『チェイサー』(08)、『哀しき獣』(10、シッチェスFF監督賞)、『哭声/コクソン』(16、シッチェスFFフォーカス・アジア賞)が代表作。

8)「Josephine」(仮題「ジョセフィン」)
データ:製作国アメリカ合衆国、2026年、ドラマ、114分、長編2作め。サンダンスFF審査員グランプリ受賞、ベルリンFFコンペティションにノミネート。サンフランシスコのゴールデンゲート公園で偶然レイプを目撃した8歳のジョセフィンの物語。トラウマを抱えた少女は家族を不安定にし、両親は正義を求め、失った安全を取り戻す方法を模索する。メイソン・リーブス(ジョセフィン)、チャニング・テイタム(父)、ジェマ・チャン(母)、他
監督・脚本:ベス・デ・アラウジョ(サンフランシスコ1985)、監督、脚本家、製作者。カリフォルニア大学バークレー校で社会学を専攻、アメリカ映画協会のMFAを取得している。デビュー作「Soft Quiet / El club del odio」はアメリカーナFFでヤング審査員賞受賞、ゴッサム賞以下ノミネート多数。

9)「La bola negra」(仮題「黒いボール」)
データ:製作国スペイン=フランス、2026年、ドラマ、155分、カンヌFFコンペティション、監督賞共同受賞作品。ペネロペ・クルス、ロラ・ドゥエニャス、グレン・クローズ共演など話題てんこ盛り。当ブログでは作品紹介をしています。
監督・脚本:ハビエル・カルボ(マドリード1991)、ハビエル・アンブロッシ(マドリード1984)
*作品紹介は、コチラ⇒2025年07月04日/2026年05月26日


10)「La corset / Iron Boy」(仮題「コルセット/アイアン・ボーイ」)
データ:製作国フランス=ベルギー、2026年、アニメーション、90分、ソロデビュー作。農場で成長する11歳のクリストフは、体が真横に傾く病気に罹り、背骨のコルセットをつけざるをえなくなる。音楽とクララとの出会いで新たな地平を拓いていく少年の成長物語。自身の体験がもとになっている。カンヌFF「ある視点」特別審査員賞、アヌシーアニメーションFF審査員・観客・ガン財団配給賞の3冠。フランス公開10月14日、日本は2027年の劇場公開が決定している。
監督・共同脚本:ルイ・クリシー(フランス、シャルトル1977)、アニメ監督、アニメーター、脚本家。アニメーション『レミーのおいしいレストラン』、『カールじいさんの空飛ぶ家』、『ウォーリー』などのピクサー作品にアニメーターとして参加、「アステリックス・シリーズ」では共同で監督・脚本を手がけた。『アステリックスの冒険~秘密を守る戦い』がセザール賞2018アニメ部門にノミネートされている。初の長編ソロデビュー作品(共同脚本フランク・サロメ)である本作がカンヌ入りして特別審査員賞を受賞した。

11)「Soudain / All of a Sudden / De repente」『急に具合が悪くなる』
データ:製作国フランス=日本=ドイツ=ベルギー、2026年、カンヌFFコンペティション、女優賞にヴィルジニー・エフィラと岡本多緒(日本人初)が受賞。
監督:濱口竜介(川崎1978)、本祭では2008年ニューディレクターズ部門にデビュー作『PASSION』がノミネートされている。ペルラス部門に『寝ても覚めても』(18)、『ドライブ・マイ・カー』(2021年FIPRESCIグランプリ受賞)は特別上映枠で上映されたが、コロナ隔離期間中のため単独で現地入りしている。ペルラス部門に『悪は存在しない』(23,ルラ賞受賞)など。詳細は日本語版ウイキペディアに詳しい。

(ヴィルジニー・エフィラ、岡本多緒)
12)「Succedera questa notte / It Will Happen Tonight / Sucedera esta noche」(仮題「今夜必ず起こる」)
データ:製作国イタリア=フランス=スペイン、2026年、コメディ・ロマンス、103分。ベネチア2026コンペティションでワールドプレミアされた後、サンセバスチャンFFにやってきます。2011年の『3つの鍵』と同じイスラエルの作家エシュコル・ネヴォの短編集 ”Hungry Heart / Lev Raev”(2023年刊)にインスパイアされている。イスラエルの都市が舞台、同じマンションに住む悩み多き4人の人生が語られる。彼らの人生は、充足感、繋がり、贖罪を求めて絡み合う。マッテオ(ルイ・ガレル)とグレタ(ジャスミン・トレンカ)が主演。
監督:ナンニ・モレッティ(イタリア、ブルニコ1953)、監督、脚本家、俳優。1981年『監督ミケーレの黄金の夢』でベネチアFF審査員特別賞(特別金獅子賞)、1985年『ジュリオの当惑』でベルリンFF銀熊賞(審査員グランプリ)、1993年『親愛なる日記』でカンヌFF監督賞、2001年『息子の部屋』がパルムドールを受賞、俳優としても主演、自伝的な『母よ、』もカンヌFF2015にノミネートされている。

(ジャスミン・トレンカ、ルイ・ガレル)
13)「Tangles」(仮題「タングルズ」)
データ:製作国カナダ=アメリカ合衆国、2026年、長編アニメーション、デビュー作、102分。1990年代、アルツハイマー病が活気ある母親の人格を奪いはじめると、アーティストで活動家のサラは、クィアに優しいサンフランシスコでの刺激的な生活を離れ、生れ故郷の保守的な小さな町に戻ってきます。風変わりな家族が必要な娘となるためには、厳しい現実を受け入れねばなりません。ジャーナリスト、作家、漫画家のサラ・リービットのグラフィックノベルが原作。サラにアビー・ジェイコブソン、母親にジュリア・ルイ・ドレファス。カンヌFF特別上映部門で上映され、カメラドールとクィア賞にノミネートされた。トロントFFで北米初公開される。
監督・製作・脚本:リア・ネルソン(カナダ、バンクーバー1984)、監督、製作者、脚本家。バンクーバーを拠点にCM、ドキュメンタリーなどを手がける。代表作は、2013年ミュージックビデオ「Kylee Epp:Be Your Girl」、2015年、短編「Swiss Chalet:A Helping Hand」、2021年、キャシー・デ・コリングの「Precious Leader Woman」の製作を手がけている。

14)「The Invite / La invitacion」(仮題「招待状」)
データ:製作国アメリカ合衆国、2026年、コメディドラマ、107分。ジョー(セス・ローゲン)とアンジェラ(オリヴィア・ワイルド)の結婚生活は、危機に陥っている。謎めいた隣人ピニャ(ペネロペ・クルス)とホーク(エドワード・ノートン)を夕食に招くと、告白やら隠された欲望などが頭をもたげ、危うい展開を見せ始める。セスク・ゲイの「Sentimental」(20)アメリカ版。ロカルノFF観客賞、シドニーFFシドニー映画賞、ゴールデン・トレラー賞などにノミネートされている。
監督・主演:オリヴィア・ワイルド(ニューヨーク1984)、監督、女優。2019年、『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』で監督デビューする。他に『ドント・ウォーリー・ダーリン』(22、出演・監督・製作)がある。

15)「The Man I Love」(仮題「愛する男」)
データ:製作国アメリカ合衆国=フランス、2026年、ドラマ、95分。カンヌFFコンペティション&クィア賞ノミネート、ミュンヘンFF国際映画賞ノミネート。1980年代後半のニューヨーク、エイズを患うアンダーグラウンドのパフォーマンス・アーティスト(ラミ・マレック)の生と死、愛と欲望が描かれる。ラミ・マレク、トム・スターリッジ、レベッカ・ホール、ルーサー・フォード出演。
監督・脚本:アイラ・サックス(テネシー州、メンフィス1965)、監督、脚本家、製作者、ユダヤ系アメリカ人、ゲイを公表して、主にニューヨークで活躍。1996年『ミシシッピの夜』で長編デビュー、東京国際レスビアン&ゲイFF上映された。2007年ブラックコメディ『あぁ、結婚生活』、2014年、『人生は小説よりも奇なり』は、同性婚の合法化を受けてやっと結婚できたゲイのカップルが辿る居場所探しの物語、インディペンデント・スピリット賞、ゴッサム・インディペンデント映画賞など数々の映画祭にノミネートされ、SSIFFペルラス部門にノミネートされた。米仏ポルトガル合作の『ポルトガル、夏の終わり』は、カンヌFF2019でプレミアされ、主役のフランキーにイザベル・ユペール、その友人にマリサ・トメイが扮した豪華な布陣でした。

(ラミ・マレク)
16)「Wild Horse Nine」(仮題「ワイルド・ホース・ナイン」)
データ:製作国アメリカ合衆国=イギリス=チリ、2026年、ドラマ、113分。1973年チリ、軍事独裁クーデタが起きる直前、CIA のクリス(ジョン・マルコヴィッチ)とリー(サム・ロックウェル)は、サンティアゴからイースター島に派遣される。上司MJ(スティーブ・ブシェミ)と共に駐屯します。他にマリアナ・ディ・ジロラモ、アイリン・サラス、他。
監督・脚本:マーティン・マクドナー(イギリス、ロンドン キャンバーウェル1970)、劇作家、監督、脚本家。初長編映画『ヒットマンズ・レクイエム』(アカデミー脚本賞ノミネート)、『スリー・ビルボード』(17)でベネチアFF脚本賞受賞、ゴールデングローブ賞作品賞を含む4冠、アカデミー賞ではサム・ロックウェル助演男優賞、フランシス・マクドーマンド主演女優賞受賞、『イニシェリン島の精霊』(22)ベネチアFF脚本賞など常に高評価のシネアスト。本作も既に来年の劇場公開が決定している。

(サム・ロックウェル、ジョン・マルコヴィッチ)
★以上16作品です。以下に監督のフォトをアップしておきます。

(左から、アンドレイ・ズビャギンツェフ、オリヴィエ・ナカシュ、エリック・トレダノ、
ベス・デ・アラウジョ)

(左から、ルイ・クリシー、ルーカス・ドン、ジョーダン・ファーストマン、
濱口竜介、ナ・ホンジン)

(左から、マルティン・マクドナー、ナンニ・モレッティ、
クリスチャン・ムンジウ、リア・ネルソン)

(左から、パヴェウ・パヴリコフスキ、アイラ・サックス、オリヴィア・ワイルド、
ハビエル・アンブロッシ、ハビエル・カルボ)
★高評価の作品群ということもあって、なかなか多彩な顔ぶれです。日本での劇場公開が決定している作品もあるので、来年は楽しめそうです。
開幕作品はファティ・アキンの「Geister」*サンセバスチャンFF26 ⑪ ― 2026年08月28日 17:41
サンセバスチャンFF初登場のファティ・アキンの詩的ドラマ「Geister」

★今回のセクション・オフィシアルの発表は五月雨式でなかなか全容が見えませんでしたが、オープニング作品にトルコ系ドイツ人のファティ・アキンの「Geister / Ghost Song」のアナウンスがありました。アキン監督は本祭初登場、他6作も発表になり合計17作が金貝賞を競うことになりました。クロージング作品はアウト・オブ・コンペティションからベルギーのミヒャエル・R・ロスカムの「Le Faux Soir」に決定しました。コンペティション17作(うちデビュー作が3本)、アウト・オブ・コンペティション2作、アウト・オブ・コンペティションの特別上映5作、これでリストが完成しました。今回は開会式の後にクルサール・ホールで上映されるオープニング作品の紹介。
「Geister / Ghost Song」(仮題「ゴースト・ソング」)
◎オープニング作品
データ:製作国ドイツ、2026年、ドイツ語、ファンタジー、ロマンス、106分、撮影ハンブルク
監督:ファティ・アキン
脚本:ファティ・アキン、ルース・トマ
撮影:フランク・グリーブ
プロダクションデザイン:セス・ターナー
メイクアップ:マイケ・ハインライン
製作:Bombero International / Warner Bros.Film Productions Germany
キャスト:マリアム・ダウード(ファラシャ)、エレン・M・ギューヴァルチン(ファリス)、カルロッタ・フォン・ファルケンハイン、ガブリエル・ウィナー・アモリン、モハメド・アチュール(ガッサン)、ラマ・アルハラビ(シファ)、他
ストーリー:ファラシャとファリスは、卒業パーティーで出会ったとき20歳でした。一目ですべてが変わります。しかしファラシャはその夜に亡くなってしまいます。彼と離れることを拒み、彼女は二つの世界の境界を越える方法を発見します。40夜だけ、40だけ、彼女は夢の中でファリスに会うことができます。このようにして愛は育み続けます、最後の夜まで。二つの世界のあいだで展開する特別なラブストーリー。


(ファラシャとファリス)
★監督紹介:ファティ・アキン(ファティフ・アーキンとも表記される)は、1973年ハンブルク生れのトルコ系ドイツ人、監督、脚本家、製作者、俳優。1994年ハンブルク造形芸術高等専門学校入学、2000年卒。彼はドイツの映画監督としては国際舞台では認知度が高いほうですが本祭初登場です。最も本祭はドイツ映画がそもそも少ない。彼は2004年、『愛より強く』(Head-On)がベルリナーレの金熊賞を受賞して国際舞台に登場しました。その後、『そして、私たちは愛に帰る』(The Edge ob Heaven)でカンヌFF2007の脚本賞と観客賞、『ソウル・キッチン』(Soul Kitchen)でベネチアFF2009特別審査員賞と、30代の若さで世界三大映画祭の主要な賞を手に入れました。

(ファティ・アキン監督)
★以後の代表作は、2012年ドキュメンタリー『トラブゾン狂騒曲 小さな村の大きなゴミ騒動』、2014年『消えた声が、その名を呼ぶ』、2016年『50年後のボクたちは』、2017年『女は二度決断する』がカンヌのパルムドールを争い、主演のダイアン・クルーガーに女優賞をもたらした。ゴールデングローブ賞外国語映画賞を受賞した。2019年『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』、2022年の『ラインゴールド』は、ドイツでは100万人以上の観客が鑑賞した。2025年『白パンと独裁者』は、第2次世界大戦末期が舞台、12歳の少年の視点で描かれる戦争ヒューマンドラマ、ダイアン・クルーガーも共演した。作品の大半が字幕入りで鑑賞できる稀有な監督。
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