マラガ-スール賞にロッシ・デ・パルマ*マラガ映画祭2026 ⑥ ― 2026年04月07日 10:15
大賞マラガ-スール賞に比類のない才能の持ち主ロッシ・デ・パルマ

★3月7日、セルバンテス劇場で、ロッシ・デ・パルマのマラガ-スール賞のガラが祝われました。プレゼンターにマベル・ロサノ、カルメン・マチ、ブランカ・ポルティーリョ、そして受賞者の娘ルナ・リオネからトロフィーを受け取りました。ロサノは作家で映画監督、女優、モデルと受賞者と同じく多才、活動家でもある。女優のカルメン・マチ(2025年)とブランカ・ポルティーリョ(2023年)は、それぞれマラガ-スール賞の受賞者、当日上映されたペドロ・アギレラの「Día de Caza」の共演者でもある。簡単なミニキャリア紹介は既にアップしておりますので、今回はガラの模様と受賞者のフィルモグラフィーを中心にお届けします。
*ミニキャリア紹介は、コチラ⇒2026年03月19日

(受賞者、マベル・ロサノ、カルメン・マチ、ブランカ・ポルティーリョ、ルナ・リオネ)
★マベル・ロサノは会場に出席してくれたファンに歓迎の言葉を述べ、「この賞は、スクリーンに姿を見せる度に私たちに強い印象を残してきた忘れられない人々に敬意を表するため役立っています」と。「ロッシは私の姉妹、私の親友、そして共犯者です。ずっと昔から一緒に歩いてきました。これは比喩なんかじゃなく現実なんです、だって私たちは隣人でもあるからね」、「ロッシ・デ・パルマは、独創的、とても個性的で存在感があり、カリスマ的でもある。彼女の才能は世界が認めています」と、受賞者を紹介した。また、受賞者の芸術的な側面、映画を含めて舞台、モード、デザイン、その他創造力豊かな分野、社会活動などにも触れ、受賞者の功績を称えました。

(マベル・ロサノ)
★昨年の受賞者であるカルメン・マチは、「私は80年代のモビダ・マドリレーニャ運動全盛期にPeor Impossible*で彼女を見て魅せられていました。この女性とどうしたら友達になれるかと考えていました。そうこうしているうちに人生は私に贈り物をしてくれた。最終的には映画で共演することにもなったのです。ロッシは全方位的なアーティスト、映画においても人生においてもシンボリックな存在です。しかし、なかでも美しさと寛容な心の広い女性であることは、みんなが認めるところです」とスピーチした。
*モビダ・マドリレーニャ運動というのは、フランコ独裁政権後の民主化移行期にマドリードで発生した若者中心のカウンターカルチャー運動。自由、性的解放、自己表現を掲げ、音楽、映画、芸術、ファッションなどの分野で変革を求め、80年代前半が全盛期だった。Peor Impossible は、1984年に活動を開始したポップミュージックのグループ、ロッシ・デ・パルマはメンバーの一人でした。

(昨年の受賞者カルメン・マチ)
★2023年の受賞者ブランカ・ポルティーリョは、「多分わたしは、個人的にはそれほど親しくなかった。しかしロッシ・デ・パルマには脱帽、心から感心しております。時を分かち合い、仕事を共にすることで、彼女が模範となる女性であること、地面を揺るがせるエネルギーを持っていることに気づきました。美しさ、探求心、優しさ、そして圧倒的な力強さがあり、内面からにじみだす美しさに溢れ、なかでも心の広い素晴らしい仲間です」と、受賞者のエネルギッシュでありながらも、その繊細さを強調しました。

(エネルギッシュで心の広い受賞者を強調するブランカ・ポルティーリョ)
★受賞者の娘ルナ・リオネ(1999年生れ、歌手、モデル)は、彼女のもとで大きくなったことの重要性について語りました。「ロッシ・デ・パルマの娘であることをどう思うか、よく聞かれました。私はいつも同じ返事、決して私を退屈させることがないと応えました。ロッシは多面的な素晴らしい女性です」。ルナにとってロッシ・デ・パルマの娘であることは大きな幸運だと強調しました。デ・パルマにはもう一人ガブリエル(1998)というミュージシャンの息子がいる。「地獄の日々だった」という子供たちの父親から逃れるため、小さい二人を抱えて逃亡して以来、子供中心の生活を重視して、現在は独身と称している。ルナとのツーショットを当ブログでも紹介している。

(「あなたの娘であるのは幸運」と母親を称えるルナ・リオネ)
★会場の座席でプレゼンターたちのスピーチに聞き入っていた受賞者は、登壇すると「今、私は盛大な誉め言葉の数々に当惑しています。何しろ私はお世辞の嵐には馴れておりません」と挨拶して会場を沸かせた。映画祭やマラガ市との絆について「デ・パルマは、映画祭の草創期から素晴らし瞬間を共にしてきました。最も重要なことは、信じられないやり方で映画に専念するマラガの観客の皆さまです」と。「私たち全ての人々がアーティストです。ビスナガ賞受賞者も(砂浜で)魚の串焼きをする職人もアーティストです」と、お金にはちょっと不自由をしているスペインの老若男女に感謝の言葉を述べた。

(会場の座席でプレゼンターのスピーチに聞き入る受賞者)
★最近鬼籍入りした両親のこと、モビダ・マドリレーニャ運動、Peor Impossible、アルモドバル、ジャン=ポール・ゴルチエ、ロバート・アルトマン、マイク・フィギス(英)、テリー・ギリアム、アレキサンダー・マックイーン(英)、サン・ローランなど、フランス、米国、イギリスのシネアストやデザイナーについて語りました。

★当日、バンデラス遊歩道に建立された記念碑の除幕式が、マラガ市長フランシスコ・デ・ラ・トーレ以下、歴史的文化遺産担当議員マリアナ・ピネダ、生れ故郷バレアーレス自治体の文化担当書記官ペドロ・ビダル、スール紙の編集長アルベルト・ゴメス・アルメンドレス、本祭ディレクターのフアン・アントニオ・ビガルなど大勢が参加して行われました。更に授与式の後、ペドロ・アギレラの「Día de Caza」(仮題「狩猟日」25)が上映されました。カルロス・サウラが初めてエリアス・ケレヘタとタッグを組んだ長編3作目「La caza」を女性主演で再構築したものです。ベルリン映画祭1966で監督賞を受賞、サウラの力量を国際的に認めさせることになった作品。本邦でも「スペイン映画祭1984」で『狩り』の邦題で上映されました。人里離れた狩猟場でウサギ狩りをする4人の男たちの朝から夕方までの1日を描いたもので、最後には狩り以上に凄惨な結末を迎える。今回プレゼンターを務めたカルメン・マチ、ブランカ・ポルティーリョ、他に若手のソエ・アルナオの3人が共演する。


(除幕式の参加者に囲まれて)


(上映された「Día de Caza」とサウラの『狩り』)
★受賞者紹介:ロッシ・デ・パルマ(本名ロサ・エレナ・ガルシア・エチャベ、パルマ・デ・マジョルカ1964)、少女時代は両親の出身地であるカステリョン(バレンシア)やアビレス(アストゥリアス)で育った。フィルモグラフィーは、1986年デビューだが脇役が多いせいか3桁を超す。受賞歴のある話題作、DVD発売やネットで配信中の作品に絞ってアップします。
1987『欲望の法則』 監督ペドロ・アルモドバル
1988『神経衰弱ぎりぎりの女たち』 監督同上 ACE賞1989助演女優賞ノミネート
1989『アタメ』 監督同上
1992『サム・サフィ』(フランス) 監督ヴィルジニー・テヴェネ(ヴァージニー・テヴネ)
1993『ハイルミュタンテ!電撃XX作戦』 監督アレックス・デ・ラ・イグレシア
1993『キカ』 監督P・アルモドバル ゴヤ賞1994助演女優賞ノミネート
スペイン俳優組合助演女優賞ノミネート、ACE賞1995助演女優賞受賞
1994『プレタポルテ』(米国) 監督ロバート・アルトマン
米ナショナル・ボード・オブ・レビュー1994アンサンブル演技賞受賞
1995『私の秘密の花』 監督 P・アルモドバル、ゴヤ賞1996助演女優賞ノミネート、
スペイン俳優組合助演女優賞ノミネート
1998『踊るのよ、フランチェスカ!』(米国) 監督ケリー・セイン
1998「Hors Jeu」(フランス) 監督カリム・ドリディ、ロカルノ映画祭特別賞受賞
1998『セクシュアル・イノセンス』(イギリス) 監督マイク・フィギス
2002『ル・ブレ』(仏・英) 監督アラン・ベルベリアン、フレデリック・フォレスティエ
2004『ピープル』(仏・西、フランス語) 監督ファビアン・オンテニエンテ
2004『ダブルオー・ゼロ』(仏・英、仏語・英語) 監督ジェラール・ピレス
2005『20センチ!』(東京国際映画祭) 監督ラモン・サラサール
2009『抱擁のかけら』 監督 P・アルモドバル
2016『ジュリエッタ』 監督 P・アルモドバル フェロス賞2017助演女優賞ノミネート
2017『マダムのおかしな晩餐会』(フランス、仏語・西語・英語) 監督アマンダ・スターズ
ガスパリラ映画祭国際演技賞受賞
2018『テリーギリアムのドン・キホーテ』(米・西・仏・ベルギー・英他、英語・西語)
2019『弟は僕のヒーロー』(伊・西、イタリア語) 監督ステファノ・チパーニ
2019「Los Rodríguez y el más allá」(メキシコ・西) 監督パコ・アランゴ
2020『マーメイド・イン・パリ』(フランス) 監督マチアス・マルジウ
2021『パラレル・マザーズ』 監督 P・アルモドバル シネフォリア2022助演女優賞ノミネート
2022『レインボー』 監督パコ・レオン
2022『ラ・メゾン 小説家と娼婦』(仏・ベルギー) 監督アニッサ・ボンヌフォン
2025『ママンと?!ハネムーン』(フランス) 監督ニコラ・キッシュ
2025「Día de Caza」 監督ペドロ・アギレラ
2026「Amarga Navidad」 監督ペドロ・アルモドバル
★その他、ヤン・レノルのドキュメンタリー「Jean Paul Gaultier:Freak and Chic」(2018、ジャン=ポール・ゴルチエの自伝的ミュージカル)に出演している。またマラガ-スール賞以外にも、1994年ラファス・デル・ピ映画祭生涯功労賞、2019年フィルミング・イタリア・ベネチア国際功績賞、2022年イタリア・サルデーニャ・フェスティバル「ウィメンパワー」賞、2025年トゥールーズ・シネスパーニャ「バイオレット・ドヌール」賞などを受賞している。
マルタ・マトゥテのデビュー作が金のビスナガ作品賞*マラガ映画祭2026 ⑦ ― 2026年04月11日 11:41
金のビスナガは若手監督マルタ・マトゥテのデビュー作が受賞

★マラガ映画祭のセクション・オフィシアルは、スペイン映画とイベロアメリカ映画の2本立て、前者の最高賞「金のビスナガ」作品賞は新人監督マルタ・マトゥテのデビュー作「Yo no moriré de amor」が受賞、後者はメキシコのホアキン・デル・パソの「El jardín que soñamos」の手に渡りました。先ず前者の作品紹介から始めます。脚本にマトゥテ監督自身が投影されているという主役を演じたフリア・マスコルトが銀のビスナガ主演女優賞、父親役のトマス・デル・エスタルが銀のビスナガ助演男優賞を受賞しています。昨年もエバ・リベルタードのデビュー作「Sorda」が受賞して女性監督の活躍を印象づけた。本作は『幸せの、忘れもの』という邦題でゴールデンウイークに劇場公開されます。相変わらず陳腐なタイトルですが、何とかなりませんかね。
「Yo no moriré de amor / I Won’t Die for Love」
製作:Elastica Films(スペイン)/ Solita Films(同)/ Saga Film(ベルギー)
協賛:ICAA / RTVE / Movistar Plus+ / Ayuntamiento de Madrid / Filmin /
Comunidad de Madrid
監督・脚本:マルタ・マトゥテ
撮影:サラ・ガジェゴ・グラウ
編集:カルロス・カニャス・カレイラ
音楽:シモン・フランケ
美術:ロシオ・ペーニャ
キャスティング:マリア・ロドリゴ
衣装デザイン:エステル・ルカス・ハケティ Jaqueti
メイクアップ&ヘアー:アンネ・モラリス、サンドラ・オブリエン
製作者:マリア・サモラ(Elastica Films)、ホセ・エステバン・アレンダ、セサル・エステバン・アレンダ(Solita Films)、(エグゼクティブ)セシリア・リバス、フラビア・ビウルン(Saga Film)
データ:製作国スペイン=ベルギー、2026年、スペイン語、ドラマ、94分、撮影地:マドリード自治州バルデモロ(監督の故郷)、公開スペイン2026年5月8日
映画祭・受賞歴;第29回マラガ映画祭セクション・オフィシアル作品、金のビスナガ作品賞、銀のビスナガ助演女優賞(フリア・マスコルト)、助演男優賞(トマス・デル・エスタル)受賞、フェロス賞プエルタ・オスクラ2026受賞(AICEスペイン映画ジャーナリスト協会メンバーが選ぶ賞)
キャスト:フリア・マスコルト(クラウディア)、ソニア・アルマルチャ(母親)、トマス・デル・エスタル(父親)、ラウラ・ワイスマー、ギジェルモ・ベネト、フラン・カントス(ペペ)、レティシア・エタラ、マルク・ドミンゴ(アルベルト)、ダニエル・ゲーロ、ホルヘ・バサンタ、ロレア・インチャウスティ(レイレ)、他
ストーリー:18歳になるクラウディアの物語、母親のアルツハイマー病が静かな嵐のように押し寄せ、長らく断絶していた家族の役割を定義し直す必要に迫られている。クラウディアは早めに始まった介護で彼女の青春は息ができない。介護する義務と同世代の他の女性のように青春を謳歌したい願望のはざまで引き裂かれている。この目の前の現実を生きる方法を探し始めるが、それは家族全員の絆を変えることになるだろう。愛、独立、道義心、義務と願望の葛藤についての物語。

(左から、トマス・デル・エスタル、フリア・マスコルト、マトゥテ監督、
ソニア・アルマルチャ、ラウラ・ワイスマー、マラガFF、3月11日、フォトコール)
★監督紹介:マルタ・マトゥテ Marta Matute García、1988年マドリード自治州バルデモロ生れ、監督、脚本家、女優、撮影監督。2011年、マドリード・コンプルテンセ大学視聴覚コミュニケーション卒、ウィリアム・レイトン劇場ラボラトリーで演劇芸術の学位を取得する。女優として短編映画に出演。ゴン・ラモスやエバ・ミルなどの演出で舞台にも立っている他、パウラ・アモールやハビエル・ヒネルの演出助手も手掛けており、独立系の映画のフィルム編集者でもある。
*フィルモグラフィー:
2016「Zong」短編、監督ボルハ・エチェベリア、女優出演
2017「Grasse Matinée」短編、監督イバン・アルティレス、女優出演
2023「Una amiga」短編、監督、脚本
2024「Xiao Wei」短編、監督Jiajie Yu Yan、脚本共同執筆・女優出演
2026「Yo no moriré de amor」長編デビュー作、監督、脚本


(短編「Una amiga」のポスター)
★金のビスナガ作品賞の「Yo no moriré de amor」は、2020年スペイン映画アカデミーのレジデンシアに選ばれる。2021年に第18回「フリオ・アレハンドロ長編脚本SGAE賞*」を受賞、Ventana CineMad、Ventana Sur、などのワークショップに参加して制作した。アルツハイマー型認知症になった母親を10年間にわたって介護した家族や監督自身が投影されている。同世代のカルラ・シモンやベレン・フネス、ピラール・パロメロの作品からも着想を得ていると語っている。本格的な評価はこれからですが、将来が有望視されている。
*フリオ・アレハンドラ(ウエスカ1906~デニア1995)は、スペイン、メキシコ、アルゼンチン映画の脚本家、ルイス・ブニュエルの『ビリディアナ』(61)や『哀しみのトリスターナ』(70)の脚本を監督と共同執筆している。SGAE Sociedad Genaral de Autores y Editoresは、1995年設立された著作権管理団体でスペイン著者出版社協会。

(フリオ・アレハンドロ長編脚本SGAE賞のトロフィを掲げる監督)
★キャスト紹介:フリア・マスコルトJulia Mascort、バルセロナ出身の映画・舞台女優、歌手、楽器はギターとチェロ。ラウラ・オブラドールズの短編単独デビュー作「Las chicas/The Girls」(24、16分、スペイン語)、クリスティアン・アビレスの「La herida luminosa」(22、23分、スペイン語)出演の他、カタルーニャTVシリーズ「Com si fos ahir/With That Same Look」(2022年8話出演)、「Un nuevo amanecer」(2024年2話出演)、長編出演は今回が初、主役も女優賞も初のようです。カタルーニャ語、スペイン語のバイリンガル、英語もできる。マラガではスペイン語でインタビューを受けていた。

(銀のビスナガ主演女優賞受賞、マラガFFガラ)
★トマス・デル・エスタル Tomás del Estal、1967年サラマンカ生れ、俳優。TVシリーズ出演でスタート、脇役専門とはいえ本数が3桁は多すぎる。コメディからホラー、社会派シリアスドラマと芸域は広いから、スペイン映画ファンなら必ず見覚えがあるでしょう。受賞歴は、今回の銀のビスナガ助演男優賞受賞が初、検索している管理人も驚いている。最近では、こんな映画に出演しています、2024『叫び』、2021『ウェイ・ダウン』、2018『誰もがそれを知っている』、2016『スモーク・アンド・ミラーズ』、同『ジュリエッタ』、2015『ヤシの木に降る雪』、2014『トガリネズミの巣穴』、2010『BIUTIFUL ビューティフル』、同『ペーパーバード 幸せは翼にのって』など、当ブログでも作品紹介をしています。TVシリーズではシーズン2が始まった『ガリシアン・ギャング』、『鉄の手』などがNetflixで配信されている。

(銀のビスナガ助演男優賞受賞、マラガFFガラ)
★アルツハイマー認知症の母親を演じたソニア・アルマルチャ(アリカンテ州ピノソ1972)は、バレンシアの演劇芸術学校とウィリアム・レイトンで演技を学んだ。マラガ関連では、マラガFF2025の短編部門でポロ・メナルゲスの「Una vocal」で銀のビスナガ主演女優賞を受賞した。2020年ハビエル・マルコの「A la cara」で同じ短編部門の同賞を受賞している。この短編は2025年に同タイトルで長編化され、ロラ・ガオス賞の主演女優賞にノミネートされた。

(母親とクラウディア、フレームから)
★ハイメ・ロサーレスがゴヤ賞2008作品賞と監督賞を受賞した『ソリチュード:孤独のかけら』に主役に抜擢され、物静かだが我が道を着々と準備する芯の強い女性を演じて、スペイン俳優組合新人女優賞を受賞しています。他2017年にエステバン・クレスポの『禁じられた二人』、パコ・プラサのホラー『エクリプス』、ロドリゴ・ソロゴジェンのスリラー「El reino」、フェルナンド・レオン・デ・アラノアのブラックコメディ「El buen patrón/The Good Boss」では、ゴヤ賞2022助演女優賞ノミネート、俳優組合女優賞などを受賞、ジョン・ガラーニョ&アイトル・アレギの「Marco」、クラウディア・ピントの「Las consecuencias」(21)、最近は主に映画出演にシフトしている。
*『ソリチュード:孤独のかけら』の作品紹介は、コチラ⇒2013年11月08日
*「Las consecuencias」の作品紹介は、コチラ⇒2021年07月01日
*「El buen patrón」の作品紹介は、コチラ⇒2021年08月10日
★ラウラ・ワイスマー(ヴァイスマール)Laura Weissmahr、1992年タリファ生れ、女優、製作者。バルセロナのエオリア高等演劇芸術学校で演技を学んだ後、イギリスのウエストミンスター大学で映画テレビ制作の学位を取得する。ドキュメンタリーを撮っている。エレナ・マルティン・ヒメノ監督の「Júlia Ist」(17)やダビ・ビクトリの「No matarás」(20)に出演、2024年にマル・コルのサスペンス「Salve María」主演して、ゴヤ賞2025新人女優賞ほか、ガウディ賞、フェロス賞、バジャドリード映画祭、サンジェルマン賞などを受賞して脚光を浴びた。これからの活躍を予感させる。

(ゴヤ賞2025新人女優賞受賞のガラ)
★今秋の東京国際映画祭2026での上映を期待したいところです。
イベロアメリカ映画金のビスナガ*マラガ映画祭2026 ⑧ ― 2026年04月17日 16:36
メキシコ映画―ホアキン・デル・パソの「El jardín que soñamos」

★イベロアメリカ映画部門の金のビスナガ作品賞を受賞した「El jardín que soñamos」は、ホアキン・デル・パソ(メキシコシティ1986)の長編3作目、他に銀のビスナガ監督賞、銀のビスナガ撮影賞(ギョクハン・ティリヤキ)を受賞した。撮影監督のティリヤキは、1972年イスタンブール生れ、トルコのヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督とタッグを組んで数々の話題作を送り出している。既にベルリン映画祭パノラマ部門でワールドプレミアされており、何らかの賞に絡むことは予想されていた。監督キャリア&フィルモグラフィは、簡単に以下にアップしています。
*監督キャリア&フィルモグラフィ紹介は、コチラ⇒2026年03月12日

(金のビスナガ作品賞受賞のホアキン・デル・パソ、マラガFF2026ガラ)

(ホアキン・デル・パソとカルロス・エスキベル、マラガFFフォトコール)
「El jardín que soñamos / The Garden We Dreamed」
製作:Amondo Cine / Cárcava Cine / Atomica Films / Espiral Films ほか
監督:ホアキン・デル・パソ
脚本:ホアキン・デル・パソ、ルーシー・パウラック
撮影:ゲクハン・ティリヤキ
音楽:ロヘリオ・ソーサ、カイル・ディクソン、マイケル・スタイン
編集:ラウル・バレラス、ホアキン・デル・パソ、アンドレス・タンボルニーノ
美術:フェデリコ・カントゥ、ニコル・セイグス
衣装デザイン:ガブリエラ・ガルシアンディア
メイクアップ:リッチ・ゲラ、ホルヘ・フエンテス
キャスティング:セルヒオ・ディアス・オチョア
製作者:フェルナンダ・デ・ラ・ペサ、ホアキン・デル・パソ、エドゥアルド・ディアス・カサノバ、フアン・パブロ・レイノソ、イツェル・シエラ、他エグゼクティブ、共同プロデューサー多数
データ:製作国メキシコ、2026年、スペイン語、ハイチ・クレオール語、ドラマ、102分、配給ピミエンタ・フィルムズ(メキシコ)
映画祭・受賞歴:ベルリン映画祭2026パノラマ部門観客賞ノミネート、第29回マラガ映画祭2026イベロアメリカ映画部門金のビスナガ作品賞、銀のビスナガ監督賞(ホアキン・デル・パソ)、銀のビスナガ撮影賞(ゲクハン・ティリヤキ)各受賞、フランクフルト映画祭、トゥールーズ・シネラティノ・リコントル・デ・フェスティバル正式出品
キャスト:ネヘミエ・バスティアン(エスタル)、フォースタン・ピエール(ジュニオル)、キマエレ・ホリー・プレヴィレ(フロール)、ルス・アイチャ・ピエール・ネルソン(アイチャ)、カルロス・エスキベル(トーニョ)、ほか
ストーリー:ハイチからエスタルとジュニオルの夫婦はより良い未来を求めて、二人の娘フロールとアイチャを連れてアメリカ大陸の旅に出ます。メキシコでは自分たちの土地ではない、人里離れた繊細なオヤメルモミの森の中に居を定めます。家族がこの見知らぬ環境で自分たちの居場所を探すなか、ジュニオルは過去の重みと向き合い、エスタルは支えとなり、周りの世界が崩れ始めるなかでも平和と思いやりを育みます。モナーク蝶に囲まれた家族は、違法伐採で消えゆく森の中で、繊細な温もりの空間をつくり、愛がまだ根を張ることのできる儚い希望の庭を築こうとします。 (文責:管理人)

(カナダ南部から南米大陸北部に分布するモナーク蝶オオカバマダラ)



★監督紹介:ホアキン・デル・パソ Joaquin del Paso、1986年メキシコシティ生れ、監督、撮影監督、脚本家、製作者。キューバの国際映画テレビ学校、ポーランド国立映画学校で学んでいる。2008年、短編ドキュメンタリー「Dialogue about an image」(イメージに関する対話、製作国ドイツ、言語スペイン語)で監督デビュー、製作国はポーランドが多く、米国、ドイツ、メキシコ、英国と多国籍、言語もポーランド語、スペイン語、英語、ドイツ語、ジャンルもドラマ、ドキュメンタリー、ファンタジー、SF、アドベンチャーと、受賞歴多数の短編12本の後、新作「El jardín que soñamos」が3作目となる長編を撮っている。

(金のビスナガ、銀のビスナガをゲットした)
★撮影監督作品としては、製作者キム・ヘンドリクソンのドキュメンタリー「A conversation with Carlos Reygadas」(カルロス・レイガダスとの対話、米国、スペイン語、2019)を共同で撮影している。レイガダスの長編デビュー作『ハポン』についてのアマ・エスカランテとの対話。レイガダスのパートナーであるナタリア・ロペス・ガジゃルドのデビュー作「Manto de gemas」(宝石のマント、22)の製作を共同で手掛けている。以下に代表作、受賞歴のある作品をアップしておきます。

2008「Dialogue about an image」短編
2009「Czarna Gora」短編、Camerimage、学生コンペティション部門ノミネート
2009「The Absolute Truth of Thomas Schviefel」短編21分、ファンタジー/SF、
ルーシー・パウラックと共同監督、ポーランド=英国、英語
2011「Moskwa」短編ドキュメンタリー、アドベンチャー、ポーランド、ポーランド語
2012「Dream of San Juan」中編45分、ドキュメンタリー、メキシコ=ポーランド、スペイン語
2013「Syjamscy」短編26分、犯罪ドラマ、ポーランド、ポーランド語、
ポーランドFF2014ヤングシネマ・コンペティション部門特別賞受賞
2016「Maquinaria Panamericana」長編デビュー作コメディ、
グアダラハラFFメスカル賞・PIPRESCI、デュランゴFF観客賞・特別審査員賞、
レインダンスFF脚本賞、モンテレイFF長編映画賞、グアナフアトFF映像賞、
メリダ&ユカタンFFオペラ・プリマ、トリノFFスペシャル・メンション観客賞、
アリエル賞2017脚本賞、各受賞
2021「El hoyo en la cerca」長編2作目スリラー、ベネチアFFオリゾンティ部門プレミア、
ワルシャワFF、モレリアFFノミネート多数、カイロFF作品賞ゴールデン・ピラミッド賞
2026「El jardín que soñamos」割愛
★撮影監督紹介:ギョクハン(ゴハーン)・ティリヤキ Gokhan Tiryaki、1972年イスタンブール生れ、国営テレビ局でカメラマンとして、ドキュメンタリーやドラマの制作に携わり、1996年から撮影監督になる。ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督とタッグを組んだ『うつろいの季節』(06、トルコ=仏)、『スリー・モンキーズ』(08、トルコ=仏=伊)、『昔々、アナトリアで』(11、トルコ=ボスニア・ヘルツェゴビナ)、『雪の轍』(14、トルコ=仏=独=日本)、『読まれなかった小説』(18、トルコ=仏=独他)などが、公開されている。

(ギョクハン・ティリヤキ)
★受賞歴は、『スリー・モンキーズ』で国際撮影監督映画祭マナキ・ブラザーズ賞2008、イェシルカム賞2008、『昔々、アナトリアで』ドバイ映画祭2011撮影賞、アジア太平洋スクリーン賞2011、シネフィル協会賞、トルコ映画批評家協会賞2011、『雪の轍』トルコ映画批評家協会賞2014、「I am You」フローレンス映画賞2020、その他インド映画「Once Upon a Time in Calcutta」(仏=ノルウェー合作、ベンガル語)シルクロード映画祭中国2022撮影賞、「El jardín que soñamos」マラガ映画祭2026などがあり、ノミネート多数。

(主演のネヘミエ・バスティアンとフォースタン・ピエール、ベルリンFF2026)
チリ映画「Hangar Rojo」フアン・ペドロ・サジャト*マラガ映画祭2026 ⑨ ― 2026年04月28日 16:09
フアン・パブロ・サジャトのデビュー作「Hangar Rojo」――観客賞など4冠

★今年のマラガ映画祭はイベロアメリカの映画が気を吐いた。チリのフアン・パブロ・サジャトのデビュー作「Hangar Rojo / The Red Hangar」は、1973年9月11日チリの首都サンティアゴで勃発した軍事クーデタの実話に着想を得てモノクロで撮影された政治映画です。ベルリン映画祭2026「視点」部門でワールドプレミアされ、マラガ映画祭で男優賞・編集賞・エル・パイス観客賞・特別批評家審査員賞の「銀のビスナガ」4冠を制しました。スペイン語圏で「もう一つの9.11」と称されるチリの軍事クーデタは、陸軍総司令官ピノチェトがアジェンデ社会主義政権を転覆した事件、その後ピノチェトはチリ大統領として1990年3月に失脚するまで独裁者として君臨した。パトリシオ・グスマンのドキュメンタリー『光のノスタルジア』を含む「チリ三部作」、パブロ・ララインの『Noノー』を含む「ピノチェト政権三部作」や『伯爵』、ニコラス・アクーニャのTVシリーズ「Los mil dias de Allande」など数々の名作が世に送り出された。では、サジャトの「赤い格納庫」がどんな切り口で語られるのか探ってみたい。

(来マラガしたクルー、中央がサジャト監督、マラガFF、3月7日フォトコール)
「Hangar Rojo / The Red Hangar」
製作:Villano Producciones / Brava Cine / Rain Dogs / Caravan / Berta Film /
協賛:INCAA / Corfo / Mendoza Film Commission / Programa Ibermedia /
Florenz(イタリア) 他
監督:フアン・パブロ・サジャト(サラト)
脚本:ルイス・エミリオ・グスマン
フェルナンド・ビジャグランの著作 ”Disparen a la bandada”
音楽:アルベルト・ミケッリ、マッテオ・マレッラ
撮影:ディエゴ・ペケーニョ
編集:バレリア・エルナンデス、セバスティアン・ブラム
美術:ニコラス・グラム
衣装デザイン:フリオ・レボッタロ
製作者:フアン・イグナシオ・サバティーニ(Villano)、フアン・パブロ・サジャト(同)、(共同プロデューサー)ライカ・ホスラヴィ、ステファノ・ムトロ、カロリナ・ペッツィーニ、バレンティナ・クアランティーニ、他
データ:製作国チリ=アルゼンチン=イタリア、2026年、スペイン語、政治スリラー・ドラマ、モノクロ、81分、撮影は2024年10月、チリと国境を接するアルゼンチンのメンドーサ市、約3週間。公開チリ2026年10月予定
映画祭・受賞歴:ベルリン映画祭2026視点部門、マラガ映画祭セクション・オフィシアル、銀のビスナガ主演男優賞(ニコラス・サラテ)、編集賞(バレリア・エルナンデス、セバスティアン・ブラム)、エル・パイス紙観客賞(フアン・パブロ・サジャト)、批評家審査員特別賞(同)を受賞、フリブール映画祭(スイス、3月)、第44回ウルグアイ映画祭俳優賞(ニコラス・サラテ)特別メンション受賞、以下4月から開催されるグアダラハラ、マイアミ、シアトル、ロンドンなどの映画祭上映が予定されている。
キャスト:ニコラス・サラテ(ホルヘ・シルバ空軍大尉)、マルシアル・タグレ(ヤーン大佐)、ボリス・ケルシア、カタリナ・ストゥアルド(ロサ)、アロン・エルナンデス(エルナンデス軍曹)、フランシスコ・カラスコ(カラスコ中尉)、フアン・カノ(ムヒカ軍曹)、レンゾ・フィオレッティ(フェルナンド・ビジャグラン)、タイウ・ブラベル・イオソビッチ(フェリペ・アグエロ)、他
ストーリー:チリの首都サンティアゴ、1973年9月11日に勃発した軍事クーデタが全国で展開するなか、元空軍諜報機関の長官だったホルヘ・シルバ空軍大尉は、彼の人生を永遠に変える命令を受け取る。それは、現在若い士官候補生を訓練している空軍士官学校を、逮捕者の尋問、並びに拘留と拷問の拠点に変えることでした。シルバは傍観者でいようとするが、かつてのライバルであったヤーン大佐が絶大な権力をもって到着すると、過去だけでなく信念とも深く向きあわざるを得なくなる。格納庫がトラックで運ばれてくる逮捕者でいっぱいになり、軍の権力が日増しに容赦なくなるにつれ、シルバは服従と良心の板挟みになる。不服従は命の危険をともなうかもしれないが、従順もまた命を落とす可能性があるからでした。ピノチェト独裁政権初期の軍の内情を描いた実話に着想を得ている。抑制された語り口とモノクロで撮影された政治的スリラー。

(格納庫に集められた逮捕者を見つめるシルバ、フレームから)
「シルバという人物の心の葛藤」に寄り添うモノクロ撮影
★監督紹介:フアン・パブロ・サジャト Juan Pablo Sallato、1978年サンティアゴ生れ、監督、製作者、脚本家、制作会社「Villano Producciones」をフアン・イグナシオ・サバティーニと共同で設立した。2004年、ニコラス・グラムと短編「El duelo」(13分)で監督デビューする。2010年、チリで最も視聴されたというチリ代表サッカー・チームの8年間の敗北と勝利を掘り下げたドキュメンタリー「Ojos Rojos / Red Eye」をフアン・イグナシオ・サバティーニと共同監督、TVミニシリーズには、「Adictos al Claxon」(13、8話)、「La Cultura del sexo」(15、6話)、「Libre」(21、8話)などがある。また製作で自作以外に手掛けた映画にはフアン・イグナシオ・サバティーニの「Matar a Pinochet」(20)、TVシリーズでは、ダニエル・サムディオ事件に触発された「Zamudio」(15、4話)、謎の失踪事件に基づいた犯罪スリラー「La Caceria: En el fin del mundo」(24~25)などが挙げられる。

(インタビューを受けるサジャト監督、マラガ映画祭)

(メンドーサで本作撮影中のフアン・パブロ・サジャト)

(ドキュメンタリー「Ojos Rojos」のポスター)
★モノクロで撮影した理由を訊かれたサジャト監督は、理由の一つにクーデタに反対したチリ空軍の登場人物たちが持っていた〈灰色〉を私たちは際立たせたかったからで、とくに「明暗とグレーで描く世界は、苦境にあるシルバという人物の心の葛藤をビジュアル化するには完璧でした」と説明している。

(製作者サバティーニ、監督、シルバ役のニコラス・サラテ、マラガFFフォトコール)
★ニコラス・サラテが演じた主人公のホルヘ・シルバは実在した人物で当時37歳、独裁政権下で自身も投獄されている。釈放後家族、特に大学教師の妻ロサの身の安全のためイギリスに亡命、ピノチェト亡き後もチリに戻らず、2024年8月ロンドンで没した。監督によると録画を始める2ヵ月前だったと「エル・パイス」のインタビューに語っている。シルバの役目は、転覆したアジェンデ政権を支持したことで逮捕された人たちの尋問から始まって、処刑場になったチリ・スタジアムに移送するまで監禁することだった。因みにフォルクローレのシンガーソングライターのビクトル・ハラがギターを奏でる両手を打ち砕かれ、顔を切り裂かれて銃殺された場所がこのスタジアムでした。

(当時37歳だったホルヘ・シルバ空軍大尉に扮したニコラス・サラテ、フレームから)
フェルナンド・ビジャグランの ”Disparen a la bandada”
★監督が触発されたという”Disparen a la bandada: Cronica secreta de los crímenes en la FACH contra Bachelet y otros”(プラネタ社、2002年刊) の著者フェルナンド・ビジャグラン(サンティアゴ1949)は、チリの作家、ジャーナリスト、経済学者、ドキュメンタリー製作者、コラムニスト。チリ大学で経済学、サンティアゴ大学でジャーナリズムを専攻、1983年から1995年まで政治誌「Apsi」の副編集長としてチリの民主化移行期の独立系ジャーナリズムに貢献した。1996年からはテレビの文化番組の司会者として活躍している。チリの政治史をジャーナリズムの厳密な手法で検証し、特に軍事独裁政権の弾圧メカニズム、関連する歴史的人物にフォーカスした書籍を多数出版している。本作の土台となった ”Disparen a la bandada” は、翌年文学部門のアルタソル賞を受賞した。1973年のクーデタに反対したチリ空軍(FACH)の将軍や士官に加えられた弾圧や拷問は数十年にわたって隠蔽されてきた。本書はその記録にビジャグラン自身の個人的な体験も活用して事実を明らかにしている。

(フェルナンド・ビジャグラン)

(アルタソル文学賞受賞の ”Disparen a la bandada” 表紙)
★個人的な体験とは、当時20代前半であったビジャグランは、彼の友人フェリペ・アグエロと共に「赤い格納庫」と命名された場所に運ばれてきた逮捕者の一人だった。二人は即決死刑の運命にあったが、FACH 職員が阻止してくれたことを回想している(本作のキャスト欄に二人もクレジットされている)。副題にある Bachelet とは、アルベルト・バチェレ空軍准将(1923~74、獄死)で、ピノチェトのクーデタに反対したためクーデタ当日に逮捕された。その後釈放と自宅監禁、逮捕が繰り返され、12月18日に「反逆罪」で裁かれ、翌1974年3月12日、サンティアゴの刑務所での拷問中に心臓発作で亡くなった。シルバ大尉はバチェレの最期を看取った人物としても知られています。第33代(2006~10)と第35代(2014~18)の2期、チリ初の女性大統領を務めたミシェル・バチェレの実父である。
★サジャト監督は、本作の準備中にビジャグランとアグエロと昼食を摂りながら、ホルヘ・シルバの行為は「小さなことに思えるけれど、本当に勇気ある行為だ。彼のお蔭で命を繋げることができ、希望を与えてくれた」と、二人を見やりながら語っている。
★その他、ビジャグランの代表作として、”La muerte de Pinochet: Cronica de un delirio”(2003、マルセロ・メンドーサとの共著)、”Represión en dictadura: El papel de los civiles”(2005)、他にイグナシオ・アグエロがアルタソル監督賞を受賞した「El diario de Agustín」(08)の脚本と製作を手掛けている。ニクソン、キッシンジャー時代に米CIAから資金提供を受け、ピノチェト政権下で行われた人権侵害を隠蔽しようとしたチリ最大の日刊紙「エル・メルクリオ」の内情を暴露している。 Agustínとは「エル・メルクリオ」の所有者アグスティン・エドワーズである。アーカイブ映像でアグスティン自身の他、アジェンダやピノチェト、リカルド・ラゴス、各大統領も登場するドキュメンタリー。

(ドキュメンタリー「El diario de Agustín」のポスター)
★キャスト紹介:ニコラス・サラテ Nicolás Zárate 映画テレビ俳優、ミュージシャン、1997年TVシリーズ出演でスタートを切る。2015年のアレハンドロ・トーレスのスリラー「El Tila:Fragmentos de un Psicópata」で実在したレイプ犯エル・ティラを演じている(カルーチェ賞*ノミネート)。シモン・バルガスの「Sobre los muertos」(18)主演、セバスティアン・ムニョスがベネチア映画祭「国際批評家週間」でクィア獅子賞を受賞した話題作「Principe」(19)、ホルヘ・リケルメ・セラーノのサスペンス「Algunas Bestias」(19)では、アルフレッド・カストロやパウリナ・ガルシアと共演している。老いと健康問題と格闘する夫婦を演じたイグナシオ・パベスの「Vieja Viejo」(22)、パオロ・ペスセがモノクロで撮ったデビュー作「La Soledad De Las Plagas」(23)に主演している。
*Caleuche カルーチェはマプチェ語(先住民マプチェ族の言語)に由来している。諸説あるが、チリ南部のチロエ神話に出てくる幽霊船・魔法船から採られた演技賞。チリ映画ではよく目にする賞の一つ。

(実在したサイコパス「エル・ティラ」を演じたニコラス・サラテ)

(ホルヘ・シルバ空軍大尉を演じて銀のビスナガ主演男優賞を受賞したサラテ)
★本作に関連する作品として、フェリペ・カルモナのサスペンス「Penal Cordillera / Prison in the Andes」(23)出演がある。ピノチェト政権下での拷問者5人が、アンデス山脈の麓にある〈高級〉刑務所で服役している。彼らはテレビのインタビュー後に通常の刑務所に移送されることを怖れ、留まるためにあらゆる手段を尽くす。カルモナ監督がケララ映画祭でFIPRESCI賞を受賞した作品。当ブログで紹介したマイテ・アルベルディの『イン・ハー・プレイス』にも出演しているが未紹介、ヤーン大佐役のマルシアル・タグレは判事を演じていた。

(第44回ウルグアイ映画祭俳優賞特別メンションを受賞したサラテ)
★マルシアル・タグレは、パブロ・ララインの「ピノチェト三部作」から出演しているラライン常連の一人、やはりピノチェトをテーマにした『伯爵』(23)にも出演している他、セバスティアン・レリオの『グロリアの青春』、『ナチュラルウーマン』、東京国際映画祭で上映されたマヌエラ・マルテッリのデビュー作『1976年』、最近ではベレン・フネスの「Los Tortuga」などスペイン映画にも活躍の場を広げている。当ブログで作品紹介をしています。

(ニコラス・サラテ、上司ヤーン大佐役のマルシアル・タグレ、フレームから)
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