ホライズンズ・ラティノ部門 ③*サンセバスチャン映画祭2022 ⑨ ― 2022年08月25日 17:28
*ホライズンズ・ラティノ部門 ③*
9)「Carvao / Charcoal (Carbón) 」ブラジル
データ:製作国ブラジル=アルゼンチン、2022年、ポルトガル語・スペイン語、スリラードラマ、107分、脚本カロリナ・マルコヴィッチ、撮影ペペ・メンデス、編集ラウタロ・コラセ、音楽アレハンドロ・Kauderer、製作 & 製作者Cinematografica Superfilmes(ブラジル)Zita Carvalhosaジータ・カルバルホサ / Bionica Films(同)カレン・カスターニョ / Ajimolido Films(アルゼンチン)アレハンドロ・イスラエル。カルロヴィ・ヴァリ映画祭2022正式出品され、トロント映画祭上映後、サンセバスチャンFFにやってくる。
◎トレビア:主任プロデューサーのカルバルホサは、マルコヴィッチの長編2作目「Toll」を手掛けている。また主人公イレネに扮したメイヴ・ジンキングスは、クレベール・メンドンサ・フィリオの『アクエリアス』(16)でソニア・ブラガ扮するクララの娘を演じた女優。

監督:カロリナ・マルコヴィッチ(サンパウロ1982)監督、脚本家。短編アニメーション「Edifício Tatuapé Mahal」(14、10分)は、サンパウロ短編FFで観客賞、パウリニアFFでゴールデン・ガール・トロフィーを受賞、2018年の実話にインスパイアされた「O Órfao」(16分)は、カンヌFFクィア・パルマ、シネマ・ブラジル大賞、サンパウロFF観客賞他3冠、ハバナFFスペシャル・メンション、ほかビアリッツ、マイアミ、ヒューストン、クィア・リスボア、リオデジャネイロ、SXSWなどの国際映画祭巡りをした。サンセバスチャンは今回が初めてである。宗教、生と死、義務とは何かを風刺的に描いている。

(カロリナ・マルコヴィッチ)
キャスト:メイヴ・ジンキングス(女家長イレネ)、セザール・ボルドン(麻薬王ミゲル)、ジャン・コスタ(息子ジャン)、カミラ・マルディラ(ルシアナ)、ロムロ・ブラガ(夫ジャイロ)、ペドロ・ワグネル、ほか
ストーリー:2022年ブラジル、サンパウロから遠く離れた田舎町で、木炭工場の傍に住んでいる家族が、謎めいた外国人を受け入れるという提案を承諾する。宿泊客を自称していたが実は麻薬を欲しがっているマフィアだということが分かって、家はたちまち隠れ家に変わってしまった。母親、夫と息子は、農民としてのルーチンは変えないように振舞いながら、この見知らぬ客人と一つ屋根の下の生活を共有することを学ぶことになります。多額の現金と引き換えに単調さから抜け出す方法を提案されたら、人はどうするか。社会風刺を得意とする監督は、木炭産業で生計を立て、結果早死にする人々の厳しい現実を描きながらも、大胆な独創性、鋭いユーモアを込めてスリラードラマを完成させた。

(木炭にする木材を運ぶ子供たち、フレームから)
10)「1976」チリ
Ventana Sur Proyecta 2018、Cine en Construccion 2022
データ:製作国チリ=アルゼンチン=カタール、スペイン語、2022年、スリラードラマ、95分、脚本マヌエラ・マルテッリ、アレハンドラ・モファット、撮影ソレダード・ロドリゲス、美術フランシスカ・コレア、編集カミラ・メルカダル、音楽マリア・ポルトゥガル、キャスティング、マヌエラ・マルテッリ、セバスティアン・ビデラ、衣装ピラール・カルデロン、製作 & 製作者オマール・ズニィガ / Cinestaciónドミンガ・ソトマヨール / アレハンドロ・ガルシア / Wood Producciones アンドレス・ウッド / Magma Cine フアン・パブロ・グリオッタ / ナタリア・ビデラ・ペーニャ、他、販売Luxbox。カンヌ映画祭2022「監督週間」正式出品、ゴールデンカメラ賞ノミネート、エルサレム映画祭インターナショナル・シネマ賞受賞(デビュー作に与えられる賞)

監督:マヌエラ・マルテッリ(サンティアゴ1983)女優、監督、脚本家、監督歴は数本の短編のあと本作で長編デビュー。女優としてスタート、2003年ゴンサロ・フスティニアーノの「B-Happy」でデビュー、ハバナ映画祭で女優賞を受賞するなど好発進、出演本数はTVを含めると30本を超える。2作目アンドレス・ウッドの『マチュカ-僕らと革命-』(04)でチリのアルタソル賞を受賞、アリネ・クッペンハイムと共演している。同監督の「La buena vida」(08)は『サンティアゴの光』の邦題で、ラテンビート2009で上映されている。当ブログでは、アリシア・シェルソンがボラーニョの小説を映画化した「Il futuro」(13、『ネイキッド・ボディ』DVD)で主役を演じた記事をアップしています(コチラ⇒2013年08月23日)。
◎別途詳しい作品紹介、キャリア&フィルモグラフィーを予定しています。
*作品紹介は、コチラ⇒2022年09月13日
キャスト:アリネ・クッペンハイム(カルメン)、ニコラス・セプルベダ(エリアス)、ウーゴ・メディナ(サンチェス司祭)、アレハンドロ・ゴイック(カルメンの夫ミゲル)、カルメン・グロリア・マルティネス(エステラ)、アントニア・セヘルス(ラケル)、アマリア・カッサイ(カルメンの娘レオノール)、他多数
ストーリー:チリ、1976年。カルメンはビーチハウスの改装を管理するため海岸沿いの町にやってくる。冬の休暇には夫、息子、孫たちが行き来する。ファミリーの司祭が秘密裏に匿っている青年エリアスの世話を頼んだとき、カルメンは彼女が慣れ親しんでいた静かな生活から離れ、自身がかつて足を踏み入れたことのない危険な領域に放り込まれていることに気づきます。ピノチェト政権下3年目、女性蔑視と抑圧に苦しむ一人の女性の心の軌跡を辿ります。

(カルメン役のアリネ・クッペンハイムとエリアス役のニコラス・セプルベダ)

(パールのネックレスが象徴する裕福な中流階級に属するカルメン)
11)「Tengo sueños eléctricos」コスタリカ
Ventana Sur Proyecta 2020
データ:製作国ベルギー=フランス=コスタリカ、スペイン語、2022年、ドラマ、102分、Proyecta 2021のタイトルは「Jardín en llamas」。脚本バレンティナ・モーレル。カンヌ映画祭と併催の第61回「批評家週間」正式出品、第75回ロカルノ映画祭に出品され、国際コンペティション部門の監督賞、主演女優賞(ダニエラ・マリン・ナバロ)、主演男優賞(レイナルド・アミアン)の3賞を得た。

(トロフィを手にした3人、右端が監督、ロカルノFFにて)
監督:バレンティナ・モーレル(サンホセ1988)、監督、脚本家。パリに留学後、ベルギーのブリュッセルのINSASで映画制作を学んだ。コスタリカとフランスの二重国籍をもっている。短編「Paul est la」は2017年のカンヌ・シネフォンダシオンの第1席を受賞した。第2作「Lucía en el limbo」(19、20分)はコスタリカに戻って、スペイン語で撮った。体と心の変化に悩む10代の少女の物語、カンヌ映画祭と併催の第58回「批評家週間」に出品されたほか、トロント、メルボルンなど国際短編映画祭に出品されている。長編デビュー作「Tengo sueños eléctricos」は、第61回「批評家週間」や、ロカルノ映画祭に出品されている。監督はCineuropaのインタビューに「私は父娘関係を探求する映画をそれほど多く見たことがなかったので、それを描こうと思いました」と製作動機を語っている。「これは少女が大人になる軌跡を描いたものではなく、自分の周囲に大人がいないことに気づいた少女の軌跡です」と。また麻薬関連の物語や魔術的リアリズムをテーマにした異国情緒を避けたかったとも語っている。芸術家であった両親の生き方からインスピレーションを得たようです。

(バレンティナ・モーレル、ロカルノFFにて)
キャスト:レイナルド・アミアン・グティエレス(エバの父親)、ダニエラ・マリン・ナバロ(エバ)、ビビアン・ロドリゲス、アドリアナ・カストロ・ガルシア
ストーリー:エバは16歳、母親と妹と猫と一緒に暮らしている。しかし引き離された父親のところへ引っ越したいと思っている。母親が離婚以来混乱して、家を改装したがったり、猫を邪険にしたりすることにエバは我慢できない。ここを出て、猫のように混乱して第二の青春時代を生きている父親と暮らしたい。アーティストになりたい、愛を見つけたいという望みをもって再び接触しようとする。しかし、泳ぎを知らない人が大洋を横断するように、エバもまた何も知らずに父親の暴力を受け継ぎ苦しむことになるだろう。彼にしがみつき、十代の生活の優しさと繊細さのバランスをとろうとしています。思春期が必ずしも黄金時代ではないことに気づいた少女の肖像画。

(エバ役のダニエラ・マリン・ナバロ)

(ダニエラ・マリン・ナバロとレイナルド・アミアン・グティエレス)
12)「La jauría」コロンビア
データ:製作国フランス=コロンビア、スペイン語、2022年、ドラマ、86分、脚本アンドレス・ラミレス・プリド、音楽ピエール・デブラ、撮影バルタサル・ラボ、編集Julie Duclaux、ジュリエッタ・ケンプ、プロダクション・デザイン、ジョハナ・アグデロ・スサ、美術ダニエル・リンコン、ジョハナ・アグデロ・スサ、製作 Alta Rocca Filmsフランス / Valiente Graciaコロンビア / Micro Climat Studios フランス、 製作者ジャン=エティエンヌ・ブラット、ルー・シコトー、アンドレス・ラミレス・プリド。配給Pyramide International
*カンヌ映画祭2022「批評家週間」グランプリとSACD賞受賞、エルサレム映画祭2022特別賞受賞、ニューホライズンズ映画祭(ポーランド)、トロント映画祭出品

監督:アンドレス・ラミレス・プリド(ボゴタ1989)監督、脚本家、製作者。本作はトゥールーズのCine en Construccionに選ばれた長編デビュー作。ティーンエイジャーの少年少女をテーマにした短編「Mirar hacia el sol」(13、17分)、ベルリン映画祭2016ジェネレーション14 plusにノミネートされ、ビアリッツ・ラテンアメリカFF、釜山FF、カイロFFなどで短編作品賞を受賞した「El Edén」(16、19分)、カンヌ映画祭2017短編部門にノミネートされた「Damiana」(17、15分)を撮っている。
キャスト:ジョジャン・エステバン・ヒメネス(エリウ)、マイコル・アンドレス・ヒメネス(エル・モノ)、ミゲル・ビエラ(セラピストのアルバロ)、ディエゴ・リンコン(看守ゴドイ)、カルロス・スティーブン・ブランコ、リカルド・アルベルト・パラ、マルレイダ・ソト、ほか
ストーリー:エリウは、コロンビアの密林の奥深くにある未成年者リハビリセンターに収監され、親友エル・モノと犯した殺人の罪を贖っている。ある日、エル・モノが同じセンターに移送されてくる。若者たちは彼らの犯罪を復元し、遠ざかりたい過去と直面しなければならないだろう。セラピーや強制労働の最中、エリウは人間性の暗闇に対峙し、あまりに遅すぎるが以前の生活に戻りたいと努めるだろう。暴力の渦に酔いしれ閉じ込められている、コロンビアの農村出の7人の青年群像。

(エリウ役のジョジャン・エステバン・ヒメネス)

(センターの本拠地である遺棄された邸宅に監禁されている青年たち)
★以上12作がホライズンズ・ラティノ部門にノミネートされた作品です。セクション・オフィシアルは16作中、女性監督が2人とアンバランスでしたが、こちらは半分の6監督、賞に絡めば映画祭上映もありかと期待しています。

(カロリナ・マルコヴィッチ、マヌエラ・マルテッリ、バレンティナ・モーレル、
アンドレス・ラミレス・プリド)
*追加情報:第35回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門(ラテンビートFF共催)でアンドレス・ラミレス・プリドのデビュー作が『ラ・ハウリア』として上映決定。
グアテマラ映画 『ラ・ヨローナ伝説』 *東京国際映画祭2019 ④ ― 2019年10月20日 18:25
ハイロ・ブスタマンテの第3作『ラ・ヨローナ伝説』がコンペティション部門上映

★デビュー作『火の山のマリア』(15)が公開され、本邦でも幸運なスタートを切ったハイロ・ブスタマンテの第3作目『ラ・ヨローナ伝説』(「La Llorona」)がコンペティション部門にノミネートされました。当ブログではサンセバスチャン映画祭2019「ホライズンズ・ラティノ部門」で第2作目「Temblores」を紹介、第3作はクロージング作品ではあったがコンペ外ということで割愛しました。ラテンアメリカ諸国で現在に至るまで語り継がれてきた「ラ・ヨローナ(泣く女)」の伝説を取り込んで、1980年代グアテマラに吹き荒れた先住民ジェノサイドを告発する社会派スリラーです。いわゆるファンタジー・ホラーではないが、その要素を内包しながら、30年後によみがえる先住民女性たちの復讐劇でもあるようです。

(ハイロ・ブスタマンテ監督、ベネチア映画祭2019「ベニス・デイズ」にて)
*デビュー作『火の山のマリア』の作品紹介は、コチラ⇒2015年08月28日/10月25日
*第2作「Temblores」の監督キャリア&作品紹介は、コチラ⇒2019年08月19日
『ラ・ヨローナ伝説』(「La Llorona」「The Weeping Woman」)2019年
製作:El Ministerio de Cultura Y Deportes de Guatemala / La Casa de Producción / Les Films du Volcan
監督・脚本:ハイロ・ブスタマンテ
撮影:ニコラス・ウォン
音楽:パスクアル・レイェス
編集:ハイロ・ブスタマンテ、グスタボ・マテウ
プロダクション・デザイン:セバスティアン・ムニョス
助監督:メラニー・ウォルター
製作者:ハイロ・ブスタマンテ、グスタボ・マテウ、その他
データ:製作国グアテマラ=フランス合作、スペイン語、マヤ語(カクチケル、イシル)、2019年、スリラードラマ、97分
映画祭・受賞歴:ベネチア映画祭2019「ベニス・デイズ」出品、作品賞Fedeora賞、GdA監督賞受賞、トロントFF、ミラノFF、エル・グーナFF(エジプト)、ベルゲンFFシネマ才能賞受賞、サンセバスティアンFF「ホライズンズ・ラティノ部門」ヨーロッパ⋍ラテンアメリカ協業作品賞受賞、チューリッヒFF「ヒューチャー・フィルム部門」、ロンドンFF、ヘントFF、シカゴFF、東京国際FFコンペティション部門、ストックホルムFFなど各映画祭に出品または出品予定。
キャスト:マリア・メルセデス・コロイ(アルマ)、サブリナ・デ・ラ・ホス(ナタリア)、マルガリタ・ケネフィック(カルメン)、フリオ・ディアス(退役将軍エンリケ・モンテベルデ)、マリア・テロン(バレリアナ)、フアン・パブロ・オリスラガーOlyslager(レトナ)、アイラ・エレア・ウルタド(サラ)、ペドロ・ハビエル・シルバ・リラ(警察官)、他
ストーリー:「お前が泣けば殺してしまうよ」という言葉が耳に響いてくる。アルマと彼女の子供たちはグアテマラの武力紛争で殺害された。そして30年後、ジェノサイドを指揮した退役将軍エンリケに対する刑罰訴訟の申立てが開始された。しかし裁判は無効となり、彼は無罪放免となった。ラ・ジョローナの魂は解き放たれ、生きている人々のあいだを彷徨い歩く亡霊のようになった。ある夜のこと、エンリケは泣き声を耳にするようになる。妻と娘はエンリケがアルツハイマー認知症になったのではないかと疑い始める。新しく雇われた家政婦アルマは、正義がなされなかった復讐を果たすためエンリケの家にやって来たのだ。1982年から83年にかけて、1ヵ月に3000人のペースでマヤ族を殺害したという先住民ジェノサイドを告発する社会派スリラー。
グアテマラ先住民ジェノサイドとジョローナ伝説のメタファー
★36年間吹き荒れたグアテマラの武力抗争(1960~1996)は、最初はイデオロギー対立で始まったのだが、ある時期からマヤ先住民ジェノサイドに変容する。それが1970年代終りから80年代前半にあたり、当時の指揮官がリオス・モント将軍、作品ではエンリケ・モンテベルデ将軍、約20万人とも調査が進むなかで25万人ともいわれる犠牲者のうち15万人が、この時期に集中して殺害されたという。うち女性が5分の4というのが何を意味するのか、ジェノサイドといわれる所以です。30年後というのが現在を指すようです。同胞セサル・ディアスの「Nuestras madres」(カンヌFFカメラドール受賞)も同時代を背景に同じテーマを扱っている。まだ真相は解明されたとは言えず、真の意味の和解はできていない。社会再生への道程は長い。
*セサル・ディアスの「Nuestras madres」の紹介記事は、コチラ⇒2019年05月07日

(エンリケの自宅前で抗議の声を上げる女性たち、映画から)
★マヤ語は21種類あり、本作で使用されたカクチケル語は、『火の山のマリア』でも使用されていた比較的話者の多いマヤ語の一つ。マヤ語使用者が人口の60%あるというのもジェノサイドの遠因の一つかもしれない。ラテンアメリカ諸国に生き残っている <ラ・ヨローナ伝説> は、メキシコから南米のアルゼンチン、チリまで、国によって、地域によって少しずつ異なるが存在する。表記は <ジョローナ伝説> のほうが一般的かと思われる(llo-の発音は地域によって違いがあるが、リョあるいはジョに近い)。ストーリーにも違いがあり、共通項は女性が高位の男性に思いを寄せ子供を生むが、いずれ捨てられて子供を水辺に沈めて自分も死のうとするが死にきれず、後悔と自責の念に駆られて彼の世と此の世を亡霊のように彷徨うというもの。水辺は川、湖、海などのバリエーションがあり、女性は先住民、女性より高位の男性とはヨーロッパから来た白人というケースが多い。この伝説のメタファーは簡単ではない。

(映画『ラ・ヨローナ伝説』から)
★キャスト陣に触れると、アルマ役のマリア・メルセデス・コロイは、『火の山のマリア』で主役のマリアを演じたほか、メキシコのTVシリーズ「Malinche」で征服者コルテスの通訳マリンチェを演している。メキシコではマリンチェは同胞を裏切りスペイン側についた極悪人の烙印を押されていたが、昨今では当然のことながら再評価が行われている。マリンチェはコルテスに献上された贈り物で、裏切りの代名詞とはかけ離れている。アステカ王国のナワトル語、マヤ語、スペイン語を駆使した聡明な女性で、コルテスとのあいだに男児を設けているが認知されていない。彼女も子殺しはしなかったがラ・ジョローナの一人である。他にこの秋公開されるポール・ワイツの『ベル・カント とらわれのアリア』(18、米国)でテロリストの一人になる。渡辺謙やジュリアン・ムーアとの共演はプラスに働くだろう。

(アルマ役のマリア・メルセデス・コロイ、映画から)
★『火の山のマリア』でマリアの母親を演じたマリア・テロンは、数少ないプロの女優の一人だった。先住民の知識に乏しかったブスタマンテ監督にマヤの文化や伝統を伝える役目を果たして脚本の書き直しに寄与している。またカクチケル語とスペイン語ができたことから、監督とスペイン語を解さない出演者たちのまとめ役でもあった。第2作目「Temblores」とブスタマンテ全作に出演している。

(家政婦アルマのマリア・メルセデス・コロイとマリア・テロン、映画から)

(マリア・テロンとマリア・メルセデス・コロイ、『火の山のマリア』から)
★「Temblores」の主任司祭役で映画デビューしたサブリナ・デ・ラ・ホスは、そのスタニスラフスキー・メソッド仕込みの演技力で注目を集めている。エンリケの娘ナタリアは教養の高い医師、父親の過去を知って苦しむ。プロの体操選手になることが夢だった少女は、長じてアートに目覚め体操を断念、ジョージア州のサヴァンナ大学で芸術史を専攻、かたわら写真、グラフィックデザインも学ぶ。ジョージア、アトランタ、グアテマラ、パナマなどでデザイナーの仕事をしているが、スタニスラフスキー・メソッドも学んでいる。2作品の出演だから評価はこれから。

(エンリケの娘ナタリア役のサブリナ・デ・ラ・ホス、映画から)

(ベルリン映画祭2019「Temblores」のサブリナ・デ・ラ・ホス)
★エンリケ・モンテベルデ将軍役のフリオ・ディアスは本作で映画デビュー、フアン・パブロ・オリスラガーは、「Temblores」の主役パブロを演じた俳優、ペドロ・ハビエル・シルバ・リラも「Temblores」にバーテンダー役で出演しているなど、両作に出演している俳優が多い。

(エンリケ将軍役フリオ・ディアスを採用したポスター)
★編集と製作を監督と共同で手掛けたグスタボ・マテウは、監督、脚本家、編集者、製作者。『火の山のマリア』の配給を手掛けている。本作の製作を担当した La Casa de Producciónの総マネジャーとして、ブスタマンテ監督と共に働いている。ベネチア映画祭2019「ベニス・デイズ」に授賞式まで残り、GdA(Giornate degli Autori)監督賞受賞(副賞2万ユーロ)のトロフィーを代わりに受け取った。

(GdA監督賞受賞のトロフィーを手にしたグスタボ・マテウ)
★TIFF での上映は3回、10月31日、11月3日、11月5日、チケット発売中。ハイロ・ブスタマンテ監督が来日、Q&Aがアナウンスされている。
追記:2020年7月、『ラ・ヨローナ~彷徨う女~』の邦題で公開されました。
ハイロ・ブスタマンテの「Temblores」*サンセバスチャン映画祭2019 ⑫ ― 2019年08月19日 11:29
ホライズンズ・ラティノ第2弾―ハイロ・ブスタマンテの第2作「Temblores」

★ハイロ・ブスタマンテは、第3作目「La Llorona」がコンペティション外ではあるが、ホライズンズ・ラティノ部門のクロージング作品に選ばれ、さらにベネチア映画祭2019の「ベニス・デイ」上映も決定しているなど脚光を浴びているグアテマラの監督。第2作となる「Temblores」は、既にベルリン映画祭2019「パノラマ」部門でワールド・プレミアされた。受賞には至らなかったが、テーマの一つがLGBT問題であることからテディー賞対象作品だった。グアテマラではホモセクシュアルは悪い性癖として根絶するための治療が必要と考えられている。テーマとしてはタブーの一つであると、監督はベルリンFFのインタビューに答えていた。

(監督を挟んでパブロとイサを演じた二人の主演者、ベルリンFFにて)
★本作はグアテマラ社会の階級格差、宗教問題、不寛容が語られているようで、デビュー作『火の山のマリア』とテーマが被さっている印象です。結婚して二人の子供に恵まれながら、ある男性を愛してしまったことから地獄を見ることになる敬虔な福音派の信者パブロの物語。ベルリンFF以降、マイアミ映画祭、ルクセンブルク市、グアダラハラ、シアトル、トゥールーズ・ラテンアメリカ、ミネアポリス・St. ポールほか、国際映画祭上映が続いているが、若干グアテマラ社会の分かりにくさがネックになっているのか目下のところ大賞受賞には至っていない。
「Temblores / Tremors」
製作:Tu Vas Voiir Productions / La Casa de Production / Memento Films Production /
Iris Productions / Arte France Cinéma
監督・脚本:ハイロ・ブスタマンテ
撮影:ルイス・アルマンド・アルテアガ
音楽:パスクアル・レイェス(オリジナル・ミュージック)
編集:セサル・ディアス、サンティアゴ・Otheguy
衣装デザイン:ベアトリス・ランタン
プロダクションマネージメント:マウリシオ・エスコバル
製作者:ジェラール・ラクロア、デ・ヘスス・ペラルタ、ニコラス・スティル、エドガルド・テネンバウム、他
データ:グアテマラ=フランス=ルクセンブルク、スペイン語、2019年、ドラマ、107分、フランス公開2019年5月1日、グアテマラ8月22日
映画祭・受賞歴:ベルリンFF2019 パノラマ部門、グアダラハラFFイベロアメリカ部門撮影賞(ルイス・アルマンド・アルテアガ)受賞、ミネアポリス・St. ポールFFイメージング・フィルムメーカー賞受賞、L.A.Outfest 演技賞(フアン・パブロ・オリスラガー)、マイアミFF、トゥールーズ・ラテンアメリカFF観客賞・Rail d’Oc 受賞、トランシルバニアFF、ワールド・シネマ・アムステルダムFF、サンセバスチャンFF ホライズンズ・ラティノ部門出品など多数。
キャスト:フアン・パブロ・オリスラガー Olyslager(パブロ)、マウリシオ・アルマス・セバドゥア(パブロの恋人フランシスコ)、ダイアン・バゼン(パブロの妻イサ)、マリア・テロン(ロサ)、サブリナ・デ・ラ・ホス(主任司祭)、ルイ・フラティ(司祭)、マグノリア・モラレス(クリスティナ)、セルヒオ・ルナ(サルバドル)、パブロ・アレナレス(アベル)、マラ・マルティネス(エバ)、他
ストーリー:40歳になるパブロは、2人の子供のよき父親でもあり、福音派の教義を忠実に守っている敬虔な信徒でもある。しかし、ある一人の男性に魅せられたことから、彼の伝統を重んじる完璧な人生は崩れはじめ、感情は信仰も含めて苦境に立たされる。彼の家族と教会が彼の治療の必要性を決定すると、治療の抑圧が強まるにつれ、不寛容という地獄の苦痛に堪えることになる。まだ LGBT に対する正しい知識がなく、治療が必要な病気と考えるグアテマラ社会の敬虔な福音派の信徒という宗教問題を絡ませて、一変したパブロの人生が語られる。(文責:管理人)

(教会で祈りを捧げるパブロ一家と信徒たち)
デビュー作『火の山のマリア』と同じスタッフで撮った「Temblores」
★カミングアウトしたことで人生が一変する男の悲劇が語られるようだが、グアテマラ社会の情報が少ないなか、国際映画祭で受賞しまくったデビュー作のようなサプライズには乏しいようだ。スタッフのメンバーは、プロデューサー以下、音楽(パスクアル・レイェス)、撮影監督(ルイス・アルマンド・アルテアガ)とも前作と同じメンバーです。編集者の一人セサル・ディアスは同じ部門にノミネートされている「Nuestras madres / Our Mothers」の監督、『火の山のマリア』に引き続いて参画している。グアテマラのような市場の小さい映画発達途上国では、スタッフは互いに協力し合わざるをえないのかもしれない。
★キャスト陣のうち、主人公パブロ役のフアン・パブロ・オリスラガーは、2004年、エリアス・ヒメネス・Trachtenbergの「La casa de enfrente」でデビュー、代表作は、同監督の「VIP:La otra casa」(07)、ライ・フィゲロアの「La bodega」(10)、「Toque de Queda」(11)、ホンジュラス映画、フアン・カルロス・ファンコニの「El Xendra」(12)に出演、ハイロ・ブスタマンテの3作目「La Llorona」にも出演している。各作品ともグアテマラ内戦、政権の汚職、刑務所が舞台だったりと重いテーマの作品ばかりです。パブロが愛するフランシスコ役のマウリシオ・アルマス・セバドゥアは映画初出演のようです。

(パブロとフランシスコ)
★パブロの妻を演じたダイアン・バゼンは本作でデビュー、前作でマリアの母親を演じて貫禄の演技をしたマリア・テロンがクレジットされている。彼女は「La Llorona」にも出演している。本作でデビューした主任司祭役のサブリナ・デ・ラ・ホスの演技を褒めている記事があったが、予告編からもその凄みのある演技が伝わってくる。彼女も「La Llorona」にクレジットされている。ホモセクシュアル矯正施設のような存在に驚きを禁じ得なかった。また2人の子役の演技も高評価です。IMDb情報では、他のキャストもほとんど本作が映画デビューのようです。



(悪い性癖の治療を受けている患者たち、中央が主任司祭のサブリナ・デ・ラ・ホス)
★パブロとフランシスコのバックグラウンドが非常に異なっていること、二人が異なった信仰を持っていることなど、厳しい階級格差や信仰問題の存在が希薄な本邦での公開は難しいかもしれない。どちらかというと第3作目となる「La Llorona」のほうが期待できるのではないか。
*『火の山のマリア』作品、監督キャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2015年08月28日
*『火の山のマリア』の LBFF の記事は、コチラ⇒2015年10月25日
「批評家週間」にコスタリカ映画*カンヌ映画祭2019 ⑧ ― 2019年05月09日 16:10
ソフィア・キロス・ウベダのデビュー作「Ceniza negra」

★「批評家週間」のもう1作「Ceniza negra」は、アルゼンチン出身のソフィア・キロス・ウベダのデビュー作です。「批評家週間」2017の短編部門にノミネーションされた「Selva」がベースになっているようです。両作とも主役にスマチレーン・グティエレスSmachleen Gutiérrezを起用している。ソフィア・キロス・ウベダ監督は1989年ブエノスアイレス生れですが、ここ数年はコスタリカに在住している。
「Ceniza negra」(「Land of Ashes」「Cendre Noire」)
製作:製作者:Sputnik Films(マリアナ・ムリージョ・Q)、Murillo Cine(セシリア・サリム)、
La Post Producciones(ミジャライ・コルテス、マティアス・エチェバリア)、
(共同)Promenades Films(サムエル・チャウビン)
監督・脚本:ソフィア・キロス・ウベダ
撮影:フランシスカ・サエス・アグルト
編集:アリエル・エスカランテ・メサ
音楽:Wassim Hojeij
録音:クリスティアン・コスグロベ
プロダクション・デザイン:カロリナ・レットLett
データ・映画祭:製作国コスタリカ=アルゼンチン=チリ=フランス、スペイン語、2019年、ドラマ、82分、撮影地コスタリカのリモン、配給EUROZOOM。「批評家週間」2019正式出品、5月19日(英語と仏語の字幕上映)他
キャスト:スマチレーン・グティエレス(セルバ)、ウンベルト・サムエルズ(祖父タタ)、オルテンシア・スミス(エレナ)、キハ(ケハ)・ブラウンKeha Brown(ウインター)
ストーリー:13歳になるセルバは、カリブ海沿岸の町に住んでいる。セルバは死ぬと脱皮できることを発見する。例えばオオカミやヤギ、影、または自分で思いつくどんなものにも変身できる。野菜畑に囲まれた家で暮らしているが、父に続いて母親も突然姿を消してしまうと、残されたセルバは死にたがっている祖父の世話を一人でしなければならない。祖父の願いを叶えてやるかどうか決心しなければならないが、それは子供時代との最後の決別を意味したからだ。

(セルバ役のスマチレーン・グティエレス)



(祖父タタとセルバ)
★キロス監督によると「子供たちが死をどのように理解するのかに興味をもって、2012年ごろから温めていた。約5年前に執筆をスタートさせ、2016年に「Selva」として短編が結実、翌年カンヌで上映できた。長編は主役セルバに同じスマチレーン・グティエレスを起用してその成長課程を追っている。多くの子供たちの中から彼女を見つけられたことは幸運だった。小さな映画だが、カンヌにノミネートされた最初のコスタリカ映画ということに誇りを感じている」とインタビューに答えている。

(短編「Selva」のポスター)
★ソフィア・キロス・ウベダ Sofía Quirós Ubeda は1989年ブエノスアイレス生れ、監督、脚本家、編集者、製作者。2011年短編ドキュメンタリー「Al otro lado」(15分、共同監督)、2016年、コスタリカ、アルゼンチン、チリ合作短編フィクション「Selva」(17分、西語・英語)は、カンヌ上映後40数ヵ都市で上映された。なかでビアリッツ映画祭、グアナファト映画祭が含まれる。製作はSputnik Filmsのマリアナ・ムリージョ・ケサダ、撮影監督にフランシスカ・サエス・アグルトと長編に同じでした。2019年本作、次回作「Entretierra」が進行中。

(ソフィア・キロス・ウベダ監督、2017年)

(短編ドキュメンタリー「Al otro lado」ポスター)
「批評家週間」にグアテマラ映画*カンヌ映画祭2019 ⑦ ― 2019年05月07日 16:47
セサル・ディアスのデビュー作「Nuestras madres」

(フランスの売出し中の俳優フェリックス・マリトーを配したポスター)
★第58回「批評家週間」2019のコンペティション部門のノミネーションは7作、うちスペイン語映画はセサル・ディアスのデビュー作「Nuestras madres」(グアテマラ=ベルギー=仏)とソフィア・キロス・ウベダの「Ceniza negra」(コスタリカ=アルゼンチン=チリ=仏)の2作が選ばれました。他に特別上映としてコロンビアのフランコ・ロジィの「Litigante」がオープニング作品に選ばれています。「批評家週間」はカンヌ本体より先に結果が発表になります(15日~23日)。審査委員長はコロンビアの監督チロ(シーロ)・ゲーラ、『夏の鳥』や『彷徨える河』が記憶に新しい。「批評家週間」ポスターのフェリックス・マリトーは1992年ヌヴェール生れの26歳、『BPMビート・パー・ミニット』、新作「Sauvage/Wild」で初めて主役を演じた目下売り出し中。先ずセサル・ディアスのデビュー作からご紹介します。
「Nuestras madres」(「Our Mothers」)
製作&製作者:Need Productions(Geraline Spimont)/ Perspective Films(Delphine Schmit)
監督・脚本:セサル・ディアス
撮影:Virginie Surdej
編集:Damien Maestraggi
音楽:Rémi Boubal
録音:Vicent Nouaille、Gilles Bernardeau、Emmanuel de Boissieu
衣装デザイン:ソフィア・ランタン
プロダクション・デザイン:ピラール・ペレド
データ・映画祭:製作国グアテマラ=ベルギー=フランス、スペイン語、2019年、ドラマ、82分、配給:Pyramide International。第58回「批評家週間」2019正式出品、ワールドプレミア。
キャスト:アルマンド・エスピティア(エルネスト)、エンマ・ディブ(クリスティナ)、Aurelia Caal、ビクトル・モレイラ、フリオ・セラノ・エチェベリア、他
ストーリー:2013年、グアテマラは内戦を引き起こした陸軍将校たちの裁判に釘付けになっている。犠牲者たちの証言が次々に行方不明者を特定していく。ある日、法医学財団の若い人類学者エルネストは、老婦人の話を通して、内戦中に行方不明になったゲリラ兵の父親を見つけられたと考えている。彼は母親の願いに逆らって、真実を求めて心身ともにのめりこんでいく。

(犠牲者の証言をもとに行方不明者を特定していくエルネスト)
★当ブログのグアテマラ映画紹介は、ハイロ・ブスタマンテの『火の山のマリア』(15)1作しかないという寂しさです。ベルリン映画祭で銀熊賞「アルフレッド・バウアー賞」を受賞した作品、この映画も20世紀後半のグアテマラを殺戮と恐怖に陥れた内戦(1960~96)を時代背景にした力作でした。36年に及んだ内戦の死者・行方不明者20万人のほぼ全員が先住民マヤの人々、先住民族ジェノサイドと言われる所以です。1996年「恒久的和平協定」が調印された後も殺害やリンチは後を絶たず、ジェノサイドをめぐる真相の多くは「殺害」されたまま残されているということでしょうか。中米グアテマラは総人口1760万人の約40%を先住民族が占め、彼らは公用語のスペイン語を話さない人々も多数存在する。ということで本作の使用言語はスペイン語だけではないと想定しております。
★主人公エルネストの父親は軍事独裁政権と闘ったゲリラ兵、内戦中に行方不明になったという設定のようです。エルネストに証言した老婦人役を誰が演じているのか目下詳細が不明ですが、『火の山のマリア』でマリアの母親になった、プロの女優マリア・テロンに似ているようですが。
*『火の山のマリア』の作品紹介は、コチラ⇒2015年08月28日/10月25日

(老婦人役は、もしかしてマリア・テロンか?)
★セサル・ディアスCésar Díaz、1978年グアテマラ・シティ生れ、監督、脚本家、映画編集者。ベルギーとグアテマラの国籍を持つ。メキシコとベルギーで学んだあと、パリのLa FEMISの脚本コースに参加する。10年以上編集とドキュメンタリーに取り組む。2010年、短編ドキュメンタリー「Semillas de Cenizas」が好評で20数ヵ所の映画祭で上映される。2015年、長編ドキュメンタリー「Territory Liberado」がメキシコのIMCINE(Instituto Mexicano de Cinematografía)賞を受賞、今回初長編映画が「批評家週間」にノミネートされた。
(セサル・ディアス監督)

(短編ドキュメンタリー「Semillas de Cenizas」から)

(長編ドキュメンタリー「Territory Liberado」から)
★エルネスト役のアルマンド・エスピティアはメキシコの俳優。カンヌ映画祭2013コンペティション部門に出品されたアマ・エスカランテの『エリ』(13)で17歳のエリ役でデビューした。エスカランテ監督は本作で監督賞を受賞して周囲を驚かせた。翌年マックス・スニノのコメディ「Los Bañistas」(14)に出演、メキシコのTVシリーズにも出演している。
*『エリ』の作品紹介は、コチラ⇒2013年10月08日
*「Los Bañistas」の作品紹介は、コチラ⇒2014年08月21日
★クリスティナ役のエンマ・ディブはメキシコの女優、メキシコ映画マリアナ・H・メンチャカの「Preludio a una siesta」(18)、アイザック・チェレムの「Leona」(18)などに脇役で出演している。

(アルマンド・エスピティアとエンマ・ディブ、映画から)

(エルネストと先住民族マヤの女性たち)
コスタリカから女性監督デビュー*サンセバスチャン映画祭2017 ⑪ ― 2017年09月22日 16:08
「ホライズンズ・ラティノ」にコスタリカの新人アレクサンドラ・ラティシェフ
★「ホライズンズ・ラティノ」の出品作品は、例年8月前半に開催されるリマ映画祭と同じ顔触れになります。コスタリカの新人アレクサンドラ・ラティシェフの長編第1作 “Medea” は、リマ映画祭2017の審査員特別メンション受賞作品です。今年はラテンアメリカ10ヵ国17作品が上映され、作品賞にグスタボ・ロンドン・コルドバの “La familia”(ベネズエラ他)、審査員特別賞にセバスティアン・レリオの “La mujer fantástica”(チリ他)と、ホライズンズ・ラティノの出品作が選ばれています。 “Medea” からは主演女優のリリアナ・ビアモンテが審査員特別メンション女優賞を受賞していました。ペルーはコスタリカ同様映画産業は盛んとは言えませんが、本映画祭も今年21回目を迎えています。

“Medea” 2016
製作;La Linterna Films / Temporal Film / Grita Medios / CyanProds
監督・脚本:アレクサンドラ・ラティシェフ
撮影:オスカル・メディナ、アルバロ・トーレス
音楽:スーザン・カンポス
編集:ソレダ・サルファテ
プロダクションデザイン・美術:カロリナ・レテ
製作者:パス・ファブレガ、ルイス・スモク、アレクサンドラ・ラティシェフ、(エグゼクティブ)シンシア・ガルシア・カルボ、(アシスタント)バレンティナ・マウレル
データ:コスタリカ=アルゼンチン=チリ、スペイン語、2016年、70分。2016「Cine en Construcción 30」、ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭2017正式出品、第21回リマ映画祭2017正式出品(リリアナ・ビアモンテ審査員特別メンション女優賞)、サンセバスチャン映画祭「ホライズンズ・ラティノ」正式出品。
キャスト:リリアナ・ビアモンテ(マリア・ホセ)、エリック・カルデロン(カルロス)、ハビエル・モンテネグロ(ハビエル)、マリアネイジャ・プロッティ、アーノルド・ラモス、他
プロット:マリア・ホセの人生は、単調な大学生活、日頃疎遠な両親、ラグビーのトレーニング、そしてゲイの友人カルロスとの間を動きまわっている。しかしハビエルと知り合い彼と交際しはじめたことで、周囲との連絡を絶つ。<普通の>人生を送るための努力をなにもせずに受け入れるが、誰も考えもしなかった秘密を抱えこンでしまう、彼女は数か月の身重になっていた。
★これだけの情報では、タイトルから想像するギリシャ神話のメデイア、またはエウリピデスのギリシャ悲劇「女王メディア」に辿りつけない。夫イアソンの裏切りに怒り、復讐を果たす強い女性像とヒロインのマリア・ホセ像とが結びつかない。マリア・ホセは25歳になるのに未だ大学生、内面的には何かが起こるのを待っているモラトリアム人間にも見える。表面的にはラクビー選手という設定だが、メディアのように本当に強い女性なのか。エウリピデスのメディアは二人の息子も殺害するが、ヒロインが妊娠数か月というのが暗示的だ。女性の<女らしさ>を嫌悪するミソジニーと関係があるのかないのか。ギリシャ悲劇の規範でいえば、英雄は最後には降格する宿命にある。マリア・ホセの最後がどうなるのか全く予想がつかない。

(マリア・ホセ役のリリアナ・ビアモンテ、映画から)
★アレクサンドラ・ラティシェフ Alexandra Latishev は、コスタリカのベリタス大学で映画とTV学校で学ぶ。監督、脚本家、編集者、製作者、女優。2011年、短編 “L’Enfante Fatale” を撮る。短編 “Irene”(14)は、トゥールーズ映画祭、アルカラ・デ・エナレス映画祭(作品賞)、フランドル・ラテンアメリカ映画祭(審査員メンション)、ハバナ映画祭(審査員メンション)など多数受賞する。 “Medea” は長編第1作である。


(リリアナ・ビアモンテ出演の “Irene” のポスター)
★監督によれば、「自分自身とは感じられない体で生きているせいで、自分の所属場所がないという人物を登場させたかった。不可能なリミットまで描きたかった。世間は矛盾で溢れているが、他人と調和して生きたいと考えています。しかし私たちにはそれとは対立した<その他>も居座っています。この映画の中心課題は、社会的に積み上げられてきた<女らしさ>の概念についてのマリア・ホセの闘いです」ということです。これで少しテーマが見えてきました。

(製作者シンシア・ガルシア・カルボと監督右、2016「Cine en Construcción 30」にて)
★リリアナ・ビアモンテ Liliana Biamonte は、アレクサンドラ・ラティシェフの短編 “Irene” に主人公のイレネ役で出演、他にユルゲン・ウレニャの “Muñecas rusas”(14)、アレホ・クリソストモの “Nina y Laura”(15)、アリエル・エスカランテの “El Sonido de las Cosas”(16)などコスタリカ映画に主役級で出演している。本作 “Medea” でリマ映画祭2017審査員特別メンション女優賞を受賞している。

(看護師役のリリアナ・ビアモンテ、“El Sonido de las Cosas” から)
『火の山のマリア』 *ラテンビート2015 ⑦ ― 2015年10月25日 15:45
べルリン映画祭「アルフレッド・バウアー賞」受賞作品

★今回見たなかで来日ゲストがあった唯一の映画が『火の山のマリア』でした。来春日本公開が決まっているのも目下のところこれ1作です。サンセバスチャン映画祭2015「ホライズンズ・ラティノ」部門で上映されるにつき、作品データ、スタッフ&キャスト、プロット、受賞歴、監督紹介などを既にアップしています。ハイロ・ブスタマンテ監督来日が予告されていたので、ラテンビート鑑賞後に記事を纏めることにしておりました。Q&Aを織りこみ部分的にネタバレしています。
*サンセバスチャン映画祭2015の記事は、コチラ⇒2015年08月28日
もしかして邦題は『火の山の母』ではなかったか
A: 本作の主役は娘マリアではなく、マリア・テロンが演じた母親フアナではないかと予想しておりましたが、その通りでした。移動劇団を結成して先住民の村々を回っているプロの女優、ただし映画出演は初めてです。Q&Aではマリアを置き去りにするペペ役のマルビン・コロイも仲間の一人、彼は詩人で戯曲家、脚本家でもあると紹介していた。
S: マリアを演じたマリア・メルセデス・コロイほか殆どがアマチュア、もっとも先住民のプロは少なく、映画はオール初出演です。
A: 前回の記事にも書いたことです。主役の二人はスペイン語とマヤのCakchiquelカクチケル語のバイリンガルです。公用語のスペイン語ができないことが謂われなき差別の温床なっていることを映画は浮き彫りにしていた。スペイン語の分かるコーヒー園主イグナシオが、分からないマリアの両親を私利私欲で裏切っていく件りは切なかった。

(見事な演技を見せたマリア・テロン、ベルリン映画祭)
S: この映画のアイデアは、「マリアに起こったような事件が新聞に掲載されたことが発端だった」と監督は述べておられたが、後継者が欲しい富裕層に嬰児売買に近い養子縁組をさせたことだけを指しているのか、スペイン語を解さないことを悪用して親を騙して養子縁組させたのか、そこらへんがよく分からなかった。
A: そこが重要ですよ、もし後者なら立派な犯罪だ。グアテマラ政府が早急にすべきことは、先住民に止まらず全国民の教育の普及です。マヤの人々も「スペイン語を学ぶと民族のアイデンティティーが失われる」などと拒絶せずに学ぶことです。マヤ民族の言語は21もの集団に分かれており、グアテマラに吹き荒れた36年間にも及ぶ内戦前は、言語集団を超えて接触することは稀れだったようです。
S: この映画にはマヤ民族のジェノサイドと言われる内戦の傷跡は登場しませんが、虐殺を逃れて言語を異にする多くの老若男女が否応なく国内難民となって移動、接触した。
A: マリアの両親は年齢的に体験者世代です。犠牲者20万人の大半が先住民のマヤ族だったから、互いの融和は口で言うほど簡単ではない。1992年のノーベル平和賞を受賞したリゴベルタ・メンチュウに対する一般国民の反応は冷たく、当時の国際世論との乖離が際立っていた。
S: 平和賞は誰が貰ってもケチがつく(笑)。彼女も毀誉褒貶相半ばする受賞者でしたが、両者の溝は深そうです。監督は「この映画が自分の国を知る機会になった」と意識変化に寄与したことを語っていましたが、どこまで信じていいか疑問かな。
意思疎通の難しさもテーマの一つ
A: 足が地についていないペペを誘惑したのはマリアのほう、レイプされたわけではない。コーヒー園主の後妻となって先妻の残した子供の世話などしたくない、17歳だから当たり前だ。パカヤ火山の裾野の村から脱出して「自由な女」になりたいのは分かりますね。
S: 二人はそれほど真剣に愛し合っていたようには見えなかったし、目指すアメリカがどんな国なのか想像できないのに憧れていた。身ごもる前のマリアは幼すぎる。
A: 母は娘の希望が何であるか、妊娠するまで知ろうとしなかったし、娘も男に捨てられるまで母と向き合わなかった。この意思疎通もテーマの一つですね。
S: 妊娠が分かると母は流産させようとするが、反対にマリアは生みたかった。母娘は意思を確認しあっていないのだ。岩石を飛び降りるのもいやいやだったし、あんな飛び降り方では胎児は流れない。
A: どんな御まじないも効かない、お腹の子ども自身が生まれたがっていることを母親が納得するところが実に感動的、自己主張したのはまだ生れてもいない胎児でした。
S: 人生の選択権は誰にあるかですね。
A: マリアも母になることで強くなる、初めて現実の自分と向き合うことになるからだ。この「母になること」も大きなテーマでしょう。これは監督よりマリア・テロンの意向で膨らませていったテーマかもしれない。ベルリンの記者会見でも、マヤの女性たちから多くのサジェスチョンを受けたことで脚本が豊かになっていったと語っていた。
S: ハッピーエンドにはなりませんでしたが、これがぎりぎりの限界なのでしょう。
A: でもマリアは昔のマリアではない、時代は変わり始めていることをマリアの顔が語っていた。

(マリア役のマリア・メルセデス・コロイ、映画から)
S: 監督の優れているところは、自分の未熟に謙虚で自分一人の手柄にしなかったことです。脚本が特に優れていたという印象はありませんが、「アルフレッド・バウアー賞」にふさわしい映画でした。

A: 「アルフレッド・バウアー賞」というのは新しい視点を示した作品に贈られる賞ですね。ともあれ、岩波ホールでの公開が決定しています。あそこが発行するカタログだけは高いと感じたことがない(笑)。どんな解説が載るか今から楽しみだ。
サンセバスチャン映画祭2015*グアテマラ映画”Ixcanul” ⑥ ― 2015年08月28日 15:09
オール初出演のグアテマラ映画“Ixcanul”

★ハイロ・ブスタマンテがベルリン映画祭2015「アルフレッド・バウアー賞」(銀熊賞)を受賞したときにはデータが揃わず受賞のニュースだけをアップいたしました。受賞のお蔭か、その後グアダラハラ、カルタヘナ、香港、シドニー、台湾、カルロヴィ・ヴァリ、トゥールーズ、サント・ドミンゴ、スロバキア共和国アート・フィルム・フェス、スロベニア共和国マルタなど国際映画祭を旅して、やっとサンセバスチャンに舞い戻ってきました。というのも本作は本映画祭2014「Cine en Construccion」の参加作品でした。ベルリン映画祭のアルフレッド・バウアー賞というのは新しい視点を示した作品に贈られる賞、昨年は大御所アラン・レネの遺作となってしまった『愛して飲んで歌って』が受賞したのでした。どうも何か賞を獲りそうな予感がいたします。
“Ixcanul”(英題“Ixcanul Volcano”)グアテマラ=フランス
製作:La Casa
de Producción(グアテマラ)/ Tu Vas Voir(フランス)
監督・脚本・製作者:ハイロ・ブスタマンテ
音楽:パスクアル・レジェス
撮影:ルイス・アルマンド・アルテアガ
編集:セサル・ディアス
美術・製作者:ピラール・ペレド(アルゼンチン人でフランスのTu Vas Voirのプロデューサー)
衣装デザイン:ソフィア・ランタン
メイクアップ&ヘアー:アイコ・サトウ
製作者:イネス・ノフエンテス(エグゼクティブ)、マリナ・ペラルタ(グアテマラ)、エドガルド・テネムバウム
データ:グアテマラ=フランス、スペイン語・マヤ Cakchiquel カクチケル語、2015年、93分、撮影地:パカヤ火山の裾野の村エル・パトロシニオ。サンセバチャン映画祭2014「Cine en Construccion」参加作品。8月22日エル・パトロシニオで先行上映後、グアテマラ公開8月27日、フランス11月25日
受賞歴:ベルリン映画祭2015「アルフレッド・バウアー賞」、トゥールーズ映画祭2015審査員賞と観客賞、カルタヘナ映画祭2015作品賞、ドミニカ共和国のサント・ドミンゴ映画祭2015初監督作品賞、スロベニア共和国のマルタ映画祭2015撮影賞、スロバキアのアート映画祭2015作品賞「青の天使賞」と助演女優賞(マリア・テロン)など受賞歴多数、目下更新中。
キャスト:マリア・メルセデス・コロイ(マリア)、マリア・テロン(マリアの母フアナ)、マヌエル・マヌエル・アントゥン(マヌエル)、フスト・ロレンソ(イグナシオ)、マルビン・コロイ(エル・ペペ)、映画はオール初出演

プロット:マヤ族カクチケルのマリアは17歳、グアテマラの活火山パカヤの山腹で両親と一緒に暮らしている。コーヒー農園で働いていたが、両親が農園主イグナシオとの結婚を取り結んだことで平穏が破られる。マリアはインディヘナとしての運命を変えたいと思っていたが、この結婚から逃れることはできない。妊娠という難問をかかえており、都会の病院は高額すぎて彼女を助けることができない。マリアは火山の反対側の新世界アメリカを夢見る若いコーヒー刈り取り人が彼女を置き去りにしたとき、改めて自分の世界と文化を発見する。しかし先住民の伝統や文化についての映画ではなく、ましてやフォークロアなどではない。後継者のいない富裕層の養子縁組のために生れるや連れ去られてしまう残忍なテーマ、先住民の女性たちが受ける理不尽な社会的差別、母と娘の内面の葛藤が語られるだろう。 (文責管理人)

(パカヤ火山を背にマリア役のマリア・メルセデス・コロイ、映画から)
トレビア:タイトルの‘Ixcanul’(イシカヌルか)はカクチケル語で「火山」という意味。グアテマラの公用語はスペイン語であるが、先住民マヤ族の言語は21種もあり、多言語国家でもある。そのうちカクチケル語の話者は約50万人いると言われ最も重要な言語の一つであり、メキシコにも話者は多い。本作の主人公に扮する2人のマリアのようにバイリンガルな人もいるが、スペイン語ができない人も多い。識字率が70%に満たない低さで、ラテンアメリカ諸国のうちでも最低の国に数えられている。それは前世紀後半グアテマラに吹き荒れた36年間に及ぶ内戦が深くかかわっている。1960年から始まり1996年に終結したが、死者約20万人、うち犠牲者の80%以上がマヤ族の武器を持たない性別を選ばない赤ん坊から老人まで、グアテマラ内戦が「ジェノサイドだった」と言われる所以である。内戦の後遺症は尾を引き、現在でも治安は悪く、真の平和は遠いと言われている。
★今年のベルリンは本作の他、チリのパブロ・ララインの“El Culb”が審査員賞、同パトリシオ・グスマンの『真珠のボタン』の脚本賞と、ラテンアメリカのシネアストが評価された年であった。

(クロージングに出席した監督と民族衣装に身を包んだ二人のマリア、2015年2月14日)
*監督キャリア
& フィルモグラフィー*
★ハイロ・ブスタマンテ Jayro Bustamante は、監督、脚本家、製作者。映画の舞台となったグアテマラのマヤ族カクチケルが住む地域で育った。現在37歳ということなので1978年ころの生れか。まさにグアテマラ内戦(1960~96)の中で生れ育った世代。パリやローマで映画製作を学び、多数の短編を製作、そのなかの“Cuando sea grande”(2011)が評価される。のち本作を撮るために故郷に戻ってきた。

(受賞のトロフィーを手にした監督、ベルリン映画祭にて)
メーキング:ブスタマンテ監督によると、「まず現地でワークショップを開催、彼らの生き方を自身の口から語ってもらうことにした。近距離からマヤの人々が現在置かれている状況を調査した。そうすることで、女性たちとの特別なコネクションができ、母親や祖母世代の慣習や仕来たりを学んでいった」という。グローバル化からはほど遠い、あまり知られていない日常的な日課が我々を待っているが、先住民文化についての映画ではない。「この映画が世界に受け入れやすくするための方針はとらなかった。また同世代の監督が陥りやすい民族的な悲惨さを描くのを避けた」とも語っている。必要なのは観客を魅了する人間ドラマを撮ること、それには互いの立場を尊敬しあうことでしょうね。
★まだカメラ経験のないアマチュアの出演者を探すのに奔走した。主人公マリアの母親を演じたマリア・テロンから「多くのリハーサルに時間をかけるのか、もしそうなら私はあなたを信頼しない」と質問された。勿論「ノー」と答えた。「監督することであなた方から多くのことを学びたい」。「分かったわ、そうであるなら、教えてあげましょう」とテロン。彼女は映画は初出演だが舞台女優の42歳、「映画に出てくる火山のようにエネルギュッシュな女性」と監督、スロバキアの映画祭で助演女優賞受賞した理由は、「物語の最初から最後まで緊張状態を維持した。母親役を言葉ではなく優しさと才覚で演じた」その演技力が評価された。

(マリア・テロン、ベルリン映画祭にて)
★製作者には、二人の女性プロヂューサーが初参加、グアテマラの La Casa de Producción のマリナ・ペラルタ、この制作会社はブスタマンテ監督が設立した。もう一人はアルゼンチンのピラール・ペレド、フランスの Tu Vas Voir に所属している。
グスタボ・ファジャス*モントリオール国際映画祭① ― 2013年09月05日 14:23
★グスタボ・ファジャスGustavo Fallasはコスタリカ出身。カナダのケベック大学で映画と脚本を学んだ。受賞にはこれが幸いしたかもしれない。本作は監督が長年あたためていた脚本をPrograma Ibermediaからの資金援助($150,000)をもとに、最終的には概算で$550,000の援助を受けて実現させた。コスタリカではプンタレナス州の州都プンタレナスでの撮影開始から話題になっていた。古びたLas Hamacasホテルを舞台に4人の登場人物が繰り広げるドラマ。監督によるとこのホテルに出会うことで構想が生まれたそうです。どうやらホテルも重要な役割を担っているらしい。
★漁師のダニエル(ジェイソン・ペレス)に両親はなく祖母とチラ島で暮らしていた。16歳になったダニエルはこの小島に希望はないと、プンタレナスにいるという自分の名付け親ミゲルを頼って故郷を後にする。しかし母の行きつけだったホテルの支配人チコ(ガブリエル・レテス)から既にミゲルは死んだと素っ気なく告げられる。しかしチコはダニエルに仕事を世話してくれ、ダニエルは調理場で働く若いシングルマザーのソレダ(アドリアナ・アルバレス)に想いを寄せていく。チコの父親でもあるホテルのオーナーのパト(アルバロ・マレンコ)は、今や衰弱して見捨てられたようにベッドに臥せっていた・・・
★このホテルには何やら秘密がありそうです。ハリケーンの目の中に巻き込まれてしまったダニエル役のジェイソン・ペレスはこれがデビュー作、西アフリカのリベリア出身、マリンバが得意とか。チラ島での撮影が短期間ではあったが役の掘り下げに役立ったと。ソレダ役のアドリアナ・アルバレスはコスタリカ出身、既にエステバン・ラミレスの第2作“Gestacion”(2009、英題“Gestation”)の演技で高い評価をうけている。
★チコ役のガブリエル・レテスはメキシコからの参加、メキシコ映画ファンならお馴染みの監督にして俳優のベテラン、“Flores de papel”(1977、英題“Paper Flowers”)がベルリン映画祭1978のコンペに選ばれている。また“El bulto”(1992)、2008年の“Arresto domiciliario”が代表作。彼はファジャスの才能に惚れこんで出演したというから楽しみです。パト役のアルバロ・マレンコはコスタリカでは有名なベテラン俳優ということですが、1作も見ておりません。出演した作品のIMDb(インターネット・ムービー・データベース)評価は高いですね。そういえば、本作のIMDbは今のところアップされておりません。
(写真:ダニエル役のペレスとソレダ役のアルバレス)
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