アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ新作*サンセバスチャン映画祭2022 ⑬ ― 2022年09月08日 15:02
イニャリトゥの新作「Bardo」はノスタルジック・コメディ?
★ペルラス部門最後のご紹介は、メキシコのアレハンドロ・G・イニャリトゥの「Bardo, Falsa crónica de una cuantas verdades」、監督の分身とおぼしきジャーナリストでドキュメンタリー映画作家のシルベリオ・ガボにダニエル・ヒメネス=カチョが扮します。しかしコメディで観客の忍耐力をテストするような174分の長尺なんてあり得ますか? 脚本は『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(14)の共同執筆者ニコラス・ジャコボーネ、監督と一緒に翌年のアカデミー賞ほか国際映画祭の授賞式行脚をいたしました。サンティアゴ・ミトレの「Argentina, 1985」同様、第79回ベネチア映画祭コンペティション部門で既にワールド・プレミアされています(9月1日)。さて、評判はどうだったのでしょうか。
(グリセルダ・シチリアーニ、イケル・サンチェス・ソラノ、イニャリトゥ監督、
ダニエル・ヒメネス=カチョ、ヒメナ・ラマドリッド、ベネチア映画祭2022、9月1日)
「Bardo, Falsa crónica de una cuantas verdades /
Bardo, False Chronicle of a Handful of Truths」メキシコ
製作:Estudios Churubusco Azteca SA / Redrum
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、ニコラス・ジャコボーネ
音楽:ブライス・デスナー
撮影:ダリウス・コンジ
編集:モニカ・サラサール
キャスティング:ルイス・ロサーレス
プロダクション・デザイン:エウヘニオ・カバジェロ
衣装:アンナ・テラサス
メイク&ヘアー:タリア・エチェベステ(メイク)、クラウディア・ファンファン(ヘアー)他
製作者:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、ステイシー・ペルキー(ペルスキー)、(エグゼクティブ)カルラ・ルナ・カントゥ、(ラインプロデューサー)ヒルダルド・マルティネス、ミシェル・ランヘル、他
データ:製作国メキシコ、2022年、スペイン語、コメディ・ドラマ、174分、撮影地メキシコシティ、配給 Netflix、2022年11月4日アメリカ限定公開、12月16日Netflixにて配信開始
映画祭・受賞歴:第79回ベネチア映画祭2022コンペティション部門正式出品(9月1日上映)、第70回サンセバスチャン映画祭2022ペルラス部門正式出品
キャスト:ダニエル・ヒメネス=カチョ(シルベリオ・ガボ)、グリセルダ・シチリアーニ(ルシア)、ヒメナ・ラマドリッド(カミラ)、イケル・サンチェス・ソラノ、アンドレス・アルメイダ(マルティン)、マル・カルラ(ルセロ)、他多数
ストーリー:シルベリオは国際的に権威のある賞の受賞者であるが、ロスアンゼルス在住のメキシコ人ジャーナリストでドキュメンタリー作家として知られている。彼は生れ故郷に戻るべきと思っているが、このような旅は、おそらく実存の限界をもたらすだろう。彼が実際に直面している不条理な記憶や怖れ、漠然とした感じの混乱と驚嘆が彼の日常生活を満たしている。激しいエモーション、度々襲ってくる大笑い、シルベリオは普遍的な謎と闘うだろうが、他にもアイデンティティ、成功、死すべき運命、メキシコ史、家族の絆、分けても妻や子どもたちとの親密な結びつきについても乗りこえるだろう。結局、現代という特殊な時代においては、人間という存在は本当に忍耐で立ち向かうしかないのだろう。彼は危機を乗りこえられるだろうか。ヨーロッパとアメリカの入植者によって侵略され、搾取され、虐待されてきたメキシコ、その計り知れない損失は返してもらっていない。
(ダニエル・ヒメネス=カチョ)
(ヒメネス=カチョとヒメナ・ラマドリッド、フレームから)
★どうやらシルベリオ・ガボは監督の分身で間違いなさそうですが、いささか胡散臭いでしょうか。プレス会見では「ピオピックを撮るのが目的ではありませんが、自身について多くのことを明かしています」と語っていました。各紙誌の評判が芳しくないのは長尺もさることながら、主人公のナルシシストぶりがハナにつき、テーマの詰め込み過ぎも視聴者を迷子にしているのではないかと推測します。監督は「前作以来7年間も撮っていなかった、プランが思い浮かばなかった」とも応えている。前作とは『レヴェナント 蘇えりし者』(16)のことで、アカデミー監督賞を受賞、主役のディカプリオも念願の主演男優賞をやっと手にした。前年の『バードマン』で作品・監督・脚本の3冠に輝いたばかりで、連続監督賞は長いハリウッド史でも珍しい快挙だった。カンヌ映画祭アウト・オブ・コンペティションでプレミアされた「Carne y Arena」(17)は、7分間の短編、他はドキュメンタリーをプロデュースしていただけでした。
(レッド・カーペットに現れた、夫人マリア・エラディア・ハガーマンと監督)
★ダニエル・ヒメネス=カチョによると監督からは、「何も準備するな!」というお達しがあって撮影に臨んだそうです。こういう映画の場合、先入観をもたずに役作りをするのは結構きついかもしれない。11月の公開後、12月16日から Netflix で配信が決定しています。アメリカ、スカンジナビア諸国を含めたヨーロッパ、オーストラリア、アルゼンチン、ブラジル他、アジアでは日本と韓国が入っています。後は観てからにいたします。
(ダニエル・ヒメネス=カチョとA. G. イニャリトゥ監督)
*『バードマン』の記事は、コチラ⇒2015年03月06日
*『レヴェナント』の記事は、コチラ⇒2016年03月02日
*「Carne y Arena」の記事は、コチラ⇒2017年04月16日
*追加情報:第35回東京国際映画祭2022に『バルド、偽りの記録と一握りの真実』の邦題でガラ・コレクション部門で上映されることになりました。
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