ペルラス部門にギジェルモ・ガロエのデビュー作*SSIFF 2025 ⑨2025年08月17日 15:30

    カンヌ映画祭併催の「批評家週間」でSACD脚本賞受賞の「Ciudad sin sueño

   

    

             (ペルラク/ペルラス部門の公式ポスター)

 

ペルラス部門ギジェルモ・ガロエのデビュー作「Ciudad sin sueño」(スペイン=フランス、スペイン語・アラビア語、97分)が、スペイン映画としてただ1作選ばれました。「批評家週間」インディペンデント賞SACD脚本賞受賞作品です。既に詳細をアップしておりますが、カンヌでは情報不足ということもあって、前回とダブらないように、今回少し補足しておきます。スペイン公開20251121日がアナウンスされました。

   

      

               (ギジェルモ・ガロエ監督)

 

        

 

★前回よりキャスト情報が増え、補足しておきます。

キャスト:アントニオ トニ’・フェルナンデス・ガバレ(トニ)、ビラル・セドラオウイ(トニの友人)、ヘスス‘チュレ’・フェルナンデス・シルバ(祖父チュレ)、マヌエラ アネリ’・フェルナンデス・フェルナンデス、デボラ‘スラミ’・ヴァルガス、フランシスカ‘パキ’・ヒメネス・フェルナンデス、サナ・アグミル、ルイス・ベルトロ

   

     

            (トニと友人ビラル、フレームから)

 

★受賞歴、カンヌの他、ミュンヘン映画祭2025シネヴィジョン賞ノミネート、ブリュッセル映画祭 BRIFF2025 スペシャル・メンション受賞。監督以下撮影監督のルイ・ポサなどスタッフ紹介、トニ役のアントニオ・フェルナンデス・ガバレの紹介もしております。

Ciudad sin sueño」の紹介記事は、コチラ20250527

 

ニューディレクターズ部門にホセ・アラヨンの「La lucha」*SSIFF2025 ⑧2025年08月13日 15:41

         ホセ・アラヨンの「La lucha / Dance of the Living

    

       

2)「La lucha / Dance of the Living2025 

データ:製作国スペイン=コロンビア、2025年、長編2作目、スペイン語、ドラマ、92分、撮影地カナリア諸島フエルテベントゥーラ島、16mm撮影、プレミア上映

監督:ホセ・アンヘル・アラヨン(アラジョン)、製作:El Viaje Films(スペイン)/ Blond Indian Films(コロンビア)共同製作、資金提供:MEDIA Creative Europe / ICAA / カナリア諸島政府 / ラジオ・テレビ・カナリア 協賛:カナリア諸島レスリング連盟、フエルテベントゥーラ・レスリング連盟、他フエルテベントゥーラ映画委員会など多数、製作者:マリナ・アルベルティ、脚本:マリナ・アルベルティ、サムエル・M・デルガド、撮影:マウロ・エルス、美術:シルビア・ナバロ、編集:エマ・タセル、キャスティング:センドリアン・ラプヤデ

 

キャスト:ヤスミナ・エストゥピニャン(マリアナ)、トマシン・パドロン(父ミゲル)、イネス・カノ、サラ・カノ、アリダニー・ぺレス

  

ストーリー:火星を思わせる乾燥したフエルテベントゥーラ島、母親ピラールが亡くなり、マリアナと父親ミゲルは前進しようとしますが、喪失感から父娘二人は精神的に漂流しています。カナリア諸島のレスリングは彼らの避難所であり、世界に自分たちの居場所を作るための方法です。しかし、トップレスラーのミゲルの体は慢性的な膝の痛みを抱え衰え始めています。一方このスポーツの規範には小柄すぎるマリアナの怒りは、彼女にルール違反を促します。チャンピオンシップ決勝を目前にして、不確実な状況に立たされていることに気づきます。父と娘は手遅れになる前にお互い冷静になる方法を見つけねばなりません。500年の伝統を誇るカナリア・レスリングを背景に、スポーツをはるかに超えた想像力、譲歩の拒否、静かな誇りが語られる。

 

監督・スタッフ紹介ホセ・アンヘル・アラヨン1980年カナリア諸島テネリフェ生れ、製作者、脚本家、監督、撮影監督、フィルム編集者。プロデューサーとしてのキャリが長い。「En el insomnio」がカルタヘナ映画祭2010とラス・パルマスFF短編賞を受賞、「La ciudad oculta」がフェロス賞2020ドキュメンタリー賞を受賞、ベネチア映画祭2023短編部門にノミネートされたマリナ・アルベルティ(監督、脚本家、製作者)の「Aitana」(2319分)に脚本を監督と共同執筆する。ベネチア映画祭2019オリゾンティ部門出品のテオ・コートの「Blanco en Blanco」には製作と撮影を手掛け、ペドロ・シエナ賞2021撮影監督賞を受賞、テオ・コートは監督賞、FIPRESCI賞以下、ハバナ、トゥールーズ、ビニャ・デル・マルなど受賞歴多数。

 

      

              (ホセ・アンヘル・アラヨン)

 

2013年、マウロ・エルセ(監督、撮影監督)と共同監督した「Slimane」(西=モロッコ=仏、ベルベル語・西語、70分)で長編映画デビューを果たし、製作、脚本も手掛けた。IBAFFムルシア映画祭2014オペラ・プリマ賞を受賞する。共同監督のマウロ・エルセは、オリベル・ラシェの『ファイアー・ウィル・カム』でゴヤ賞2020撮影賞を受賞している。アラヨンはベネチアFF2021「批評家週間」ノミネートのサムエル・M・デルガド&エレナ・ヒロンの「Eles Transportan a Morte / They Carry Death」には製作と撮影で参加、本作と同じカナリア諸島を拠点として展開するドラマです。アートディレクターのシルビア・ナバロは「They Carry Death」を手掛けています。

 

      

     

                (撮影中のアラヨン監督)

 

キャスト紹介:主役マリアナを演じたヤスミナ・エストゥピニャンは、本作でデビュー、キャスティングのセンドリアン・ラプヤデ1年がかりで探した。父親役のトマシン・パドロンはベテランのレスラーということです。


ニューディレクターズ部門に2作品ノミネート*SSIFF 2025 ⑦2025年08月12日 13:57

          イラティ・ゴロスティディ・アギレチェとホセ・アラヨン

   

      

           (ニューディレクターズ部門の公式ポスター)

 

★バスク出身のイラティ・ゴロスティディ・アギレチェ1988)のデビュー作「Aro berria」と、テネリフェ出身のホセ・アラジョン1980)の第2作め「La lucha / Dance of the Living」の2作がノミネートされました。当部門は1作めから2作目が対象です。85日にノミネート全作品が発表になっており、日本からもユカリ・サカモト(坂本悠花里/ユカリ、東京1990)の『白の花実』1226日公開)がクロージング作品として選ばれています。招待作品ということで賞には絡まないのかもしれません。他、中国、コスタリカ、デンマーク、インド、イギリス、ロシア、スウェーデン、台湾、トルコ、計13作です。当ブログでは、スペイン映画2作をアップします。まずはイラティ・ゴロスティディ・アギレチェの「Aro berria」からアップします。

   

       

          (ニューディレクターズ13作入りの公式ポスター)

 

 

1)Aro berria / Anekumen

Ikusmira Berriak 2020 作品

データ:製作国スペイン、2025年、スペイン語・バスク語、歴史ドラマ、110分、長編デビュー作。イクスミラ・ベリアクの他、ロカルノ・レジデンス2023FIDLab、インディ・リスボア・共同プロダクション・フォーラムなどに参加している。

監督・脚本:イラティ・ゴロスティディ・アギレチェ、製作:Apellaniz y de Sosa SL / Anekumen Pelikula AIE / Leire Apellaniz & Claudia Salsedo / SEÑOR y SEÑORAICAARTVEEiTBから資金提供を受けている。製作者:レイレ・アベリャニス、カルメン・ラカサ、撮影:イオン・デ・ソーサ、衣装デザイン:ハビエル・ベルナル・ベルチ、プロダクションデザイン:クラウディア・サルセド

 

     

 

キャスト:マイテ・ムゲルサ・ロンセ、オスカル・パスクアル・ロペス、アイマル・ウリベサルゴ、エドゥルネ・アスカラテ、ジョン・アンデル・ウレスティ、ナタリア・スアレス、(特別出演)ヤン・コルネ、オリベル・ラシェ、ハビエル・バランディアン

 

ストーリー19785月、フランコのスペインは終焉を迎え、民主主義移行への興奮が感じられたサンセバスティアンの郊外では、水道メーター工場の労働者が集まり、ストライキについての集会を開いていた。最終的には失敗に終わり、幻滅した彼らのなかで最もラディカルな若いグループは工場を去り、社会変革より個人的なより仲間内の領域に向かい始めます。人里離れた山中に籠り、カタルシス体験を共有することで激しい探求への旅を企てますが、彼らの願望は深い矛盾にぶつかり、彼らが求めていた理想は揺らぎ始めます。フランコ没後の1970年代の実話に着想を得て製作された。

 

     

 

監督紹介イラティ・ゴロスティディ・アギレチェ1988年ナバラ州エゲシバル生れ、監督、脚本家。ビルバオとバルセロナで芸術と映画を学び、フルブライト奨学金を得て、ニューヨークに留学。本祭関連では、短編「Unicornio」(18分、シネミラ・キムアク部門2021)ほか。「Contadores」(19分、サバルテギ-タバカレア部門2023)は、カンヌ映画祭併催の「批評家週間」でライツ・シネ・ディスカバリー賞にノミネートされた他、グアナファト映画祭、ヴィラ・ド・コンデ映画祭などにもノミネートされた。アルカラ・デ・エナレス短編映画祭2023でイオン・デ・ソーサが撮影賞を受賞した。本作は「Contadores」で探求された世界を掘り下げたものであり、当時の歴史的再現やドキュメンタリー資料を駆使してアプローチしている。

   

     

           (イラティ・ゴロスティディ・アギレチェ監督)

 

   

    (イオン・デ・ソーサ、監督、製作者カルメン・ラカサ、SSIFF 202585日)

 

★次回、ホセ・アラヨンの「La lucha / Dance of the Living」を予定しています。


セクション・オフィシアル特別上映作品*SSIFF 2025 ⑥2025年08月09日 17:15

       フィクション、ノンフィクション、TVシリーズ2作、合計4作が上映

 

★アウト・オブ・コンペティション特別上映作品として4作が選ばれている。ドラマとしてアシエル・アルトゥナの「Karmele」(114分)、ノンフィクションとしてイサキ・ラクエスタエレナ・モリーナの「Flores para Antonio」(98分)、TVミニシリーズに、コルド・アルマンドスの「Zeru ahoak / Sky Mouths / Bocas de cielo」(4話、160分)と、パコ・プラサパブロ・ゲレロの共同監督作品「La suerte / Fate」(6話、183分)です。今回はいま話題になっている「Karmele」をアップします。

  

 

 

 Karmele / Time to Wake Up Together2025

Foro de Coproducción Europa-América Latina 2019

製作:Euskal Irrati Telebista / Eusko Jauraritza Gobierno Vasco / 

     Gastibeltza Filmak / RTVE

監督:アシエル・アルトゥナ

脚本:アシエル・アルトゥナ、キルメン・ウリベ・エルカレキン

(原作)キルメン・ウリベ La hora de despertarnos juntos

音楽:アイトル・エチェバリア

撮影:ハビエル・アギレ

編集:ロラン・デュフレッシュ

キャスティング:マリア・ロドリゴ

プロダクションデザイン:サロア・シルアガ

製作者:マリアン・フェルナンデス・パスカル

 

データ:製作国スペイン、2025年、スペイン語・バスク語、歴史ドラマ、114

映画祭・受賞歴:サンセバスチャン映画祭2025アウト・オブ・コンペティション特別上映

 

キャスト:ジョネ・ラスピウル(カルメレ・ウレスティ)、エネコ・サガルドイ(チョミン・レタメンディ)、ナゴレ・アランブル、ハビエル・バランディアラン

   

     

           (ジョネ・ラスピウルとエネコ・サガルドイ)

 

ストーリー1937年バスク、看護師のカルメレと家族は内戦のため故国を追い出されフランスに避難していた。カルメレは音楽や舞踊を通して反戦活動をするなかで、バスク大使館とコンタクトを取る。そこでプロフェッショナルのトランペット奏者チョミンと出会う。その後、二人はベネズエラに渡りカラカスで一時期暮らした後、奪い取られたものを取り戻す期待をもってスペインに戻ってくる。スペイン内戦、フランコ独裁政権、亡命と20世紀のスペインを生きぬいた女性とその家族が語られる。実話に基づいて書かれたキルメン・ウリベの小説の映画化。

   

        

     

                (カルメルとチョミン)

 

監督紹介アシエル・アルトゥナ1969年ギプスコア県ベルガラ生れ、監督、脚本家、撮影監督。テルモ・エスナルと共同監督した短編デビュー作「Txotx」(15分)がマラガ映画祭1997短編賞2席を受賞。本祭関連では、テルモ・エスナルと2005年長編デビュー作「Aupa Etxebeste !」がニューディレクターズ部門でユース賞を受賞した。2016年ベロドロモ部門で上映された短編集「Kalebegiak」(12編)の1編を二人で手掛けている。2019年同じくエスナルとバスク映画ガラで「Agur Etxebeste !」、単独ではアウト・オブ・コンペティション上映のドキュメンタリー「Bertsolari」(11、バスク語)、続いて「Amama」(15)でバスク映画部門のイリサル賞を受賞した他、ナント映画祭2016ユース審査員賞、モンテレイ映画祭2016観客賞を受賞した代表作。クイナリー・シネマ部門でバスクの伝統料理を提供するレストラン・アルサクのドキュメンタリー「Arzak since 1897」(20)が上映された。

 

  

           (イリサル賞受賞した「Amama」と、サンセバスチャン映画祭2015)

 

     

     (アシエル・アルトゥナとテルモ・エスナル、サンセバスチャン映画祭2019

 

原作者紹介キルメン・ウリベ・エルカレキンは、1970年バスク自治州ビスカイヤ県オンダロア生れ、詩人、小説家、脚本家、バスク語で執筆している。最初の小説 Bilbao-New York-Bilbao2008年刊)がスペイン国民小説賞を受賞、スペイン語、カタルーニャ語は勿論のこと、フランス語、英語、ポルトガル語、ロシア語ほかに翻訳されている。日本でも『ビルバオ-ニューヨーク-ビルバオ』の邦題で翻訳刊行されている。『オババコアック』の著者ベルナルド・アチャガと同様バスク語作家として知られている。

 

キャスト紹介ジョネ・ラスピウル1995年サンセバスティアン生れ、歌手、ダンサー、ミュージシャン。17世紀初頭のバスク地方の魔女狩り裁判をテーマにしたパブロ・アグエロの「Akelarre」(20、西仏アルゼンチン、スペイン語・バスク語)でデビュー、高い評価を受け、ダビ・ペレス・サニュドの「Ane」(20)にパトリシア・ロペス・アルナイスの娘役に起用され、期待に応えてゴヤ賞2021新人女優賞を受賞、ロペス・アルナイスも主演女優賞を受賞した。他にイシアル・ボリャインの「Maixabel」(21)、アシエル・ウルビエタのスリラー「La isla de los faisanes / Faisalen irla」(25)に出演している。

Akelarre」の作品紹介は、コチラ20200802

Ane」の作品紹介は、コチラ20210127

 

      

               (「Ane」のフレームから)

 

     

            (「Ane」でゴヤ賞2021新人女優賞受賞)

 

エネコ・サガルドイは、1994年ビスカヤ県ドゥランゴ生れ、俳優、アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ共同監督の『アルツォの巨人』(「Handia」)でゴヤ賞2018新人男優賞とスペイン俳優組合賞を受賞する。ボルハ・デ・ラ・ベガの「Mía y Moi21)、パウル・ウルキホ・アリホのアドべンチャー・ファンタジー「Irati」(22)主演、TVミニシリーズ「Patria」(208話、バスク語)などに出演している。

『アルツォの巨人』の紹介記事は、コチラ20170906

Irati」の紹介記事は、コチラ20221222

Patria」の紹介記事は、コチラ20200812

      

      

            『アルツォの巨人』のフレームから

       

  

         (『アルツォの巨人』でゴヤ賞2018新人男優賞受賞)

 

公式ポスターの顔に選ばれた故マリサ・パレデス*SSIFF 2025 ⑤2025年08月05日 16:53

   ポスターの顔はマリサ・パレデス & ドノスティア栄誉賞はエステル・ガルシア

    

          

         (故マリサ・パレデス、マヌエル・オウトゥムロ撮影)

 

730日、各セクションの公式ポスターが発表になりました。第73SSIFF2025 の顔は、昨年師走に急逝したマリサ・パレデスになりました。1977年初登場以来、昨年までの約40年間の尽力にオマージュが捧げられることになりました。スペインのファッション写真界を代表するマヌエル・オウトゥムロ(ガリシア州オウレンセ1949)が、2000年マドリードで撮影したフォト。2018年にフランスの女優イザベル・ユペールで始まった公式ポスターの顔は、ペネロペ・クルス、ウィレム・デフォー、シガニー・ウイバー、ジュリエット・ビノシュ、ハビエル・バルデム、昨年はケイト・ブランシェットでした。どういうわけかパレデスはドノスティア栄誉賞は貰っていませんでした。

パレデスのキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ2025022520180118

 

★その他、ニューディレクターズ(ドラマ)、オリソンテス・ラティノス(戦争映画)、サバルテギ-タバカレア(ロマンティック・ミュージカル)、ペルラス(サイエンスフィクション)、クイナリーシネマ(ホラー)、ネスト(アニメーション)、シネミラ(アドベンチャー)、メイド・イン・スペイン(ウエスタン)の主要8部門のポスターも勢揃いしました。()はジャンルを表現しているようです。

   

   

             (主要8部門のポスター)

 

 

★ドノスティア栄誉賞にエステル・ガルシア(セゴビア1956)が選ばれました。アルモドバル兄弟の制作会社「エル・デセオ」の中心的な製作者として知られ、1986年にエル・デセオに入社、『マタドール』のプロダクション・アシスタントとして参加以来、アルモドバル映画の全作を手掛けています。1987年『欲望の法則』、1988年『神経衰弱ぎりぎりの女たち』、本祭セクション・オフィシアル出品の『私の秘密の花』(95)、オスカー外国語映画賞受賞の『オール・アバウト・マイ・マザー』(99)、『パラレル・マザーズ』、最新作『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』などのほか、エル・デセオがラテンアメリカ映画に出資した映画、例えばダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』、パブロ・トラペロの『エル・クラン』、ギレルモ・デル・トロ、ルクレシア・マルテル、ルイス・オルテガなどを含めると、かなりの本数になります。既に映画国民賞2018を受賞した折にキャリア紹介をしておりますが、別途キャリア紹介を予定しています。

映画国民賞受賞の記事は、コチラ20180917

     

   


アルベルト・ロドリゲスのTVシリーズ「Anatomía de un instante」*SSIFF 2025 ④2025年08月01日 11:27

         ダブル・ノミネートのアルベルト・ロドリゲスの歴史ドラマ

    

       

       (終結後、家族に無事を知らせる電話をする議員たち)

 

★アウト・オブ・コンペティション部門には、既にご紹介したアグスティン・ディアス・ヤネスの新作「Un fantasma en la batalla」とアルベルト・ロドリゲスTVミニシリーズ「Anatomía de un instante」(4話、180分)の2作が選ばれ、4話のうち3話が上映されるようです。ハビエル・セルカスの同名ノンフィクション小説(2009年刊)がベースになっています。フランコ没後の民主主義移行期に起きた1981223日の軍事クーデタ未遂事件が舞台です。スペインの子供たちは歴史の教科書で学びます。当時の国王ドン・フアン・カルロスI世の力量を国民が初めて知ることになったドラマチックな事件でもありました。今日のスペイン民主主義体制の土台となった事件だけにヒット作になるでしょうが、制作会社の一つMovistar Plus+ が配信しますので、多分日本では見ることができないでしょう。

   

        

           (下院議場中央壇上のアントニオ・テヘロ中佐)

 

Anatomía de un instante / The Anatomy of a Momento

 アウト・オブ・コンペティション

製作;Arte France / DLO Producciones / Movistar Plus+

監督:アルベルト・ロドリゲス

脚本:ラファエル・コボス、フラン・アラウホ、アルベルト・ロドリゲス

(原作)ハビエル・セルカス

撮影:アレックス・カタラン

編集:ホセ・MG・モヤノ、アナ・ガルシア

キャスティング:エバ・レイラ、ヨランダ・セラノ

美術:ペペ・ドミンゲス・デル・オルモ

衣装デザイン:フェルナンド・ガルシア

プロダクションデザイン:アレックス・ミヤタ

メイク&ヘアー:ヨランダ・ピーニャ(主任)、イツィアル・コスタス、ナチョ・ディアス、アイダ・カルバリョ

製作者:ホセ・マヌエル・ロレンソ(クリエーター)、フラン・アラウホ、マヌエラ・オコン

 

データ:製作国スペイン、2025年、スペイン語、TVミニシリーズ4話、撮影地マドリードの下院議場、アルカラ・デ・エナレス、他。配給スペインMovistar Plus+ で配信が決定している。

  

キャスト:アルバロ・モルテ(総理大臣アドルフォ・スアレス)、エドアルド・フェルナンデス(スペイン共産党書記長サンティアゴ・カリージョ)、マノロ・ソロ(副総理グティエレス・メジャド陸軍将軍)、ダビ・ロレンテ(治安警備隊中佐アントニオ・テヘロ)、ミキ・エスパルペ(国王フアン・カルロスI世)、オスカル・デ・ラ・フエンテ(ミランス・デル・ボッシュ陸軍大将)、フアンマ・ナバス(アルフォンソ・アルマダ陸軍少将)、サムエル・ロペス(社会労働党アルフォンソ・ゲーラ)、イグナシオ・カステージョ(議長ランデリノ・ラビージャ)、ルイス・ベルメホ、ベネアロ・エルナンデス(フアン・ガルシア・カレス)、他多数

 

ストーリー1981223日、午後620分、治安警備隊アントニオ・テヘロ中佐と自動小銃で武装した警備隊員200名が下院議場を占拠、国王を擁した軍事政権樹立を要求する。テヘロ中佐が拳銃を手に議場に乱入、安全のため議席の足元の床に身を伏せるよう命令して辱めたが、アドルフォ・スアレス首相、サンティアゴ・カリージョ共産党書記長、グティエレス・メジャド副首相の3名は指示に従わなかった。民主主義の前進を率いたこの3人と軍事クーデタ未遂事件の首謀者3人、治安警備隊アントニオ・テヘロ中佐、ミランス・デル・ボッシュ陸軍大将、アルフォンソ・アルマダ陸軍少将を通して、スペイン民主化のプロセスを強化することになった「F-23事件」が語られる。

 

       

         (テヘロ中佐を演じたダビ・ロレンテ、フレームから)

 

    

         (メジャド副総理役のマノロ・ソロ、スアレス首相役のアルバロ・モルテ)

 

         

          (カリージョ役のエドゥアルド・フェルナンデス)

 

★スペインで「F-23事件」と言えば、スペイン人なら1981年に起きた軍事クーデタ未遂事件と分かります。Fはスペイン語の2febrero の頭文字、わが国の「3-11」、アメリカの「9-11」と同じように、年号は不要です。三軍の長でもあったフアン・カルロスI世のクーデタ不支持表明で、発生から18時間後に終結した無血クーデタですが、スペイン民主主義の行方を決定づけたターニングポイントとなる事件でした。とはいえ現在でも事件の推移は混沌としており、事件の黒幕の解明には至っていないということです。製作者がどこまで事件に踏み込んでいるのか目下のところ分かりませんが、監督、脚本家など製作スタッフの顔ぶれから期待したいところです。

 

223日は、アドルフォ・スアレス首相が政治的混乱、高い失業率、ETAのテロ活動の未解決の責任を取って辞意を表明(129日)、当日は新首相選出の手続きを行っていたところでした。従って与野党下院議員がほぼ全員出席、国営放送局によりテレビで生中継されていました。一方ミランス・デル・ボッシュ将軍がテレビ局を占拠、突然放映が中断されましたが、記録は残っています。ラジオからは内戦当時の軍隊行進曲が流され国民を40年前の恐怖に陥れた。因みにダニエル・カルパルソロのTVミニシリーズ「Asalto al Banco Central / Bank Under Siege」(245話、『バンク・アンダーシージ』Netflix)の第1話の冒頭にこのときの実写が挿入されています。下院議場の中央壇上に駆け上がって威嚇するテヘロ中佐、スアレス首相、カリージョ書記長、メジャド副首相の3人以外は議席の床に伏せている映像を見ることができます。本作はF-23事件から3ヵ月後の523日に起きたバルセロナにあるスペイン中央銀行へ押し入った強盗事件を描いています。

  

       

     (反乱首謀者3人、左からテヘロ、アルマダ、ミランス・デル・ボッシュ)

 

    

         (原作者ハビエル・セルカスが表紙に使用したクーデタ当日の下院議場内)

 

★コンペティション外、TVシリーズということもあるので、スタッフ、キャスト紹介は割愛しますが、ロドリゲス監督はセクション・オフィシアルの「Los Tigres」、脚本家ラファエル・コボスはマラガ映画祭2019でリカルド・フランコ賞を受賞した折に紹介、カリージョ役のエドゥアルド・フェルナンデスは映画国民賞2025受賞の記事で、副総理メジャド役のマノロ・ソロはビクトル・エリセの『瞳をとじて』やガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーンの『コンペティション』、ラウル・アレバロの『静かなる復讐』などに出演しています。原作者のハビエル・セルカス(カセレス1962)は小説家、翻訳家、日本では『サラミスの兵士たち』(Soldados de Salamina 2001)と、最近『テラ・アルタの憎悪』(Terra Alta 2019)の翻訳が出版されています。

アルベルト・ロドリゲスの紹介記事は、コチラ20250724

ラファエル・コボスの紹介記事は、コチラ20190326

エドゥアルド・フェルナンデスの紹介記事は、コチラ20250713


セクション・オフィシアルの追加作品「Los domingos」*SSIFF2025 ③2025年07月27日 16:31

          バスクの監督アラウダ・ルイス・デ・アスアの「Los domingos

 

         

      

723日、セクション・オフィシアルの追加発表がありました。結局これでスペイン映画は4作となりました。昨年TVミニシリーズ「Querer」(4話)がアウト・オブ・コンペティションで上映され、連続でサンセバスチャン映画祭に登場することになりました。セクション・オフィシアルにノミネートは初となるアラウダ・ルイス・デ・アスアの「Los domingos」は、長編3作目、17歳になる聡明な理想主義者アイナラの選択は、家族を驚かせ深い断絶と試練をもたらします。

   

   

            (左から2人目、ルイス・デ・アスア監督、中央がブランカ・ソロア)

   

4)Los domingos / Sundaysアラウダ・ルイス・デ・アスア

データ:製作国スペイン=フランス、2025年、スペイン語、ドラマ、115分、撮影地ビルバオ、2025220日クランクイン。配給スペインBTeam Pictures

製作Buena Pinta Media / Encanta Films / Colose Producciones / Movistar Plus+ /

   Think Studio Sayaka Producciones

監督・脚本:アラウダ・ルイス・デ・アスア、製作者:マヌエル・カルボ、マリサ・フェルナンデス・アルメンテロス、サンドラ・エルミダ、マヒカリ・イピニャ、撮影:ベト・ロウリチ、編集:アンドレス・ジル、美術:サロア・シルアガ、衣装デザイン:アナ・マルティネス・フェセル

 

キャスト:ブランカ・ソロア(アイナラ)、パトリシア・ロペス・アルナイス(母マイテ)、ミゲル・ガルセス(父親)、フアン・ミヌヒン、マベル・リベラ、ナゴレ・アランブル、リエル・アラバ(ゴルカ)、他

 

ストーリー:聡明な理想主義者アイナラは17歳、大学でどのようなキャリアを選ぶか決心しなければなりません。少なくとも、それは家族がアイナラに期待していることです。しかし彼女は自分の将来は別の場所にあるように考えています。彼女は神のおそばに近づきたいと修道会のシスターになる計画を打ち明ける。このニュースに不意を衝かれた家族は驚愕し、家族に深い断絶と試練を引き起こすことになる。

   

     

             

監督紹介アラウダ・ルイス・デ・アスア(バラカルド1978)、監督、脚本家。デウスト大学(スペイン最古の私立大学)卒業後、マドリード映画学校 ECAM の映画監督の学位を取得した。短編5作を撮ったのち、デビュー作「Cinco lobitos / Lullaby」がベルリン映画祭2022パノラマ部門で上映された。同年マラガ映画祭コンペティション部門にノミネート、金のビスナガ作品賞を含む7冠を制した。翌年のゴヤ賞では新人監督賞を受賞するほか、主演女優賞(ライア・コスタ)、助演女優賞(スシ・サンチェス)の3冠、その他フェロス脚本賞、シネマ・ライターズ・サークル新人監督賞、ディアス・デ・シネ賞、ガウディ賞ヨーロッパ映画賞など2023年は受賞ラッシュの年となった。

 

      

                     (ルイス・デ・アスア監督、SSIFF 2024にて)

 

 

★ 第2作ロマンチックコメディ「Eres tú / Love at First Kiss」(23、米合作)は、『だから、君なんだ』の邦題でNetflixが配信している。上述した本祭2024 のアウト・オブ・コンペティションで上映された「Querer」は、新作にも出演しているナゴレ・アランブルとペドロ・カサブランクが主演、「愛が何であるか理解している男性はいるのか」がテーマ、TVシリーズ部門のトロフィー、例えばフェロス賞(作品賞・脚本・主演女優賞)、フォルケ賞(作品・主演男優賞)、フォトグラマス・デ・プラタ観客賞シネマ・ライターズ・サークル賞(作品・アンサンブル・スター賞)などを手にした。

Cinco lobitos」の作品紹介は、コチラ2022051420221213

Querer」の作品紹介は、コチラ20241009

      

    

 (デビュー作「Cinco lobitos」ポスター)

 

キャスト紹介:アイナラ役のブランカ・ソロアは今作でデビューです。母親役のパトリシア・ロペス・アルナイス1981)は、昨年ピラール・パロメロの「Los destellos / Glimmers」で銀貝女優賞を受賞、ダビ・ペレス・サニュドの「Ane」でゴヤ賞2021主演女優賞とサンジョルディ賞、エスティバリス・ウレソラ・ソラグレンの『ミツバチと私』でマラガ映画祭2023銀のビスナガ助演女優賞、その他グアダラハラ映画祭、香港映画祭など海外の映画祭でも評価された。ナゴレ・アランブルはフォルケ賞とフェロス賞主演女優賞を受賞した「Querer」の他、ジョン・ガラーニョ&ホセ・マリ・ゴエナガのバスク語映画『フラワーズ』14)で日本に紹介されている。「Ane」、ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーンの『コンペティション』(21)、TVミニシリーズ「Patria」、パウル・ウルキホ・アリホの「Irati」(22、バスク語)、イボン・コルメンサナの「El bus de la vida」(24)など当ブログ紹介の良作に起用されている。マベル・リベラ(ア・コルーニャ1952)は、アメナバルの『海を飛ぶ夢』でゴヤ賞2005の助演女優賞を受賞している。

 

     

      (撮影中のブランカ・ソロアと監督)

    

     

           (銀貝女優賞受賞のロペス・アルナイス、「Los destellos」から)

 

    

                                         (ナゴレ・アランブル、「Querer」から)

 

ミゲル・ガルセスは、当ブログ紹介映画では、「Querer」、『ミツバチと私』、イシアル・ボリャインの「Soy Nevenka」(24)と「Maixabel」(21)、ロペス・アルナイスと共演したアンドレア・ハウリエタの「Nina」など、さらに今年は何本もTVシリーズが予定されている。フアン・ミヌヒンはブエノスアイレス生れ(1975)だが、海外の監督に起用されている。ディエゴ・レルマンの『代行教師』(22)とセバスティアン・シンデルの『天の怒り』(22)はNetflixで配信されている。フェルナンド・メイレレスの『2人のローマ教皇』(19)では、アンソニー・ホプキンスやジョナサン・プライスと共演、プライス演じるフランシスコ教皇の若い時代を演じた。ルクレシア・マルテルの『Zama サマ』(17)、銀のコンドル賞、マルティン・フィエロ賞、アルゼンチン映画アカデミー賞と受賞歴多数、TVシリーズ「El marginal」(43話、1622)では27話に出演、タト賞2016主演男優、本作では監督(2話、22)も手掛けている。

     

   

           (フアン・ミヌヒンとブランカ・ソロア、フレームから)


 

◎関連記事  

Ane」の作品紹介は、コチラ20210127

『ミツバチと私』の作品紹介は、コチラ20230303

Los destellos / Glimmers」の作品紹介は、コチラ20240730

Nina」の作品紹介は、コチラ20240911

『フラワーズ』の主な作品紹介は、コチラ20141109

『代行教師』の作品紹介は、コチラ20220809

『サマ』の主な作品紹介は、コチラ201710月13

 

★大学ではなく修道女になりたいという若い女性の話は日本では分かりづらいが、監督によると本作のアイディアは、知人のお嬢さんがヒントになっているそうです。


第73回サンセバスチャン映画祭セクション・オフィシアル*SSIFF2025 ②2025年07月24日 14:02

     サンセバスティアンでデビューしたシネアストたちが戻ってきました

   

   

             (SSIFF2025上映のスペイン映画一覧)

 

★第73回サンセバスチャン映画祭2025のノミネート作品が発表されました。まだスペイン映画に限定した部分的発表であり、全体像が見えてくるのはもう少し後です。金貝賞を競うセクション・オフィシアルには、ホセ・マリ・ゴエナガ&アイトル・アレギの「Maspalomas」、25年ぶりに戻ってきたホセ・ルイス・ゲリンの「Historias del buen valle / Good Valley Stories」、今回も脚本家ラファエル・コボスとタッグを組んでいるアルベルト・ロドリゲスの「Los Tigres」の3作品がノミネートされました。昨年は4作でしたが例年34作が選ばれています。情報に多寡がありますが、基本的なデータをアップしておきます。

 

           73SSIFFセクション・オフィシアル

 

1)Maspalomasホセ・マリ・ゴエナガ&アイトル・アレギ

データ:製作国スペイン、2025年、スペイン語、ドラマ、115分、撮影地カナリア諸島ラスパルマス、公開スペイン2025926

製作Euskal Irrati TelebistaEiTB/ ICAA / Irusoin / Maspalomas Pelikula / 

   Moriarti Produkzioak / RTVE

監督ホセ・マリ・ゴエナガ(スペイン、オルディシア1976)、アイトル・アレギ(スペイン、オニャティ1977)の共同監督、脚本:ホセ・マリ・ゴエナガ、撮影:ハビエル・アギレ、編集:マイアレン・サラスア・オリデン、キャスティング:マリア・ロドリゴ、衣装デザイン:サイオア・ララ、製作者:アンデル・バリナガ・レメンテリア、シャビエル・ベルソサ、アンデル・サガルドイ

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キャスト:ホセ・ラモン・ソロイス(ビセンテ)、ナゴレ・アランブル、カンディド・ウランガ、ソリオン・エギレオル、クリスティナ・イェラモス、ケパ・エラスティ

 

ストーリー:パートナーと別れた76歳のビセンテは、お気に入りのカナリア諸島のマスパロマスで人生を謳歌している。毎日太陽を浴び、思う存分娯楽三昧に浸っている。ところが予期しないアクシデントが彼をサンセバスティアンに引き戻すことになる。数年前からほったらかしにしていた娘と再会する。すでに解決されたと思っていた彼自身の隠された部分に再び直面しなければならない邸宅で暮らさなければならないだろう。この新たな状況のなかでビセンテは、他の人たちと仲直りする時間が未だあるかどうか自問することになるだろう。

 

       

   

 


 

2)Historias del buen valle / Good Valley Storiesホセ・ルイス・ゲリン

データ:製作国スペイン=フランス、2025年、ドキュメンタリー、スペイン語、122分、撮影地バルセロナ郊外バルボナ地区、配給元スペインWanda Visión、公開決定

製作Los Ilusos Films(ホナス・トゥルエバ&ハビエル・ラフエンテ)/ Perspective Films(ガエル・ジョネス&ホセ・ルイス・ゲリン)

監督・脚本ホセ・ルイス・ゲリン(バルセロナ1960)、ベルリン映画祭1984パノラマ部門にデビュー作「Los motivos de Berta」(『ベルタのモチーフ』)プレミア、第2作「Innisfree」(『イニスフリー』)がカンヌ映画祭1990「ある視点」プレミアされ、サンセバスチャン映画祭SSIFFサバルテギ部門上映、第3作「Tren de sombras」(『影の列車』)がカンヌ映画祭1997併催の「監督週間」プレミア、第4作ドキュメンタリー「En construcción」(『工事中』)がSSIFF 2001審査員特別賞FIPRESCIを受賞した。第5作「En la ciudad de Sylvia」がベネチア映画祭2007で上映、『シルビアのいる街で』で初めて公開された。2010年の「Guest」(『ゲスト』)はベネチアFFのオリゾンティ部門でプレミアされ、SSIFF サバルテギ・スペシャル部門で上映された。セビーリャ-ヨーロッパ映画祭2015作品賞を受賞した「La academia de las musas」は、東京国際映画祭で『ミューズ・アカデミー』の邦題で上映された。当ブログで作品紹介をしています。

『ミューズ・アカデミー』の紹介記事は、コチラ20151006同年1124

 

解説:バルセロナ郊外のバルボナ地区は、川、鉄道、高速道路によって周囲から孤立している。農村から都市への移行を生き、中心部では根絶された生活様式を保存している。スペイン内戦後にやってきた最初の移民の家と、ベッドタウンとして新たに移住してきたブロックが共存しており、この質素な一角を本物の地球村に変えました。本作は偏見、社会的な対立、世代とアイデンティティ、都市計画と環境保護の総和を語っていますが、今日の世界を冷静に人間味のある視点で描いている。移民人口の割合がかなり高いバルセロナのバルボナ地区で3年間にわたって撮影された。

 

★監督によると「この映画に登場する人々が経験する夢と葛藤は、世界中のいたる所に存在している。周縁部での生活は欠乏をはらんでいますが、それは中心部では消えてしまった独特なもの、抵抗の形態、生活様式を保存しています。それは映画製作者が構想する最も刺激的で野心的な挑戦です。質素であまり知られていない地域を描くことが全世界を映しだすことができる、つまり一枚の葉っぱを観察することで木全体の性質が明らかになるというのに似ています」と。

 

    

     

     

                (ホセ・ルイス・ゲリン)

 

 

3)Los Tigres」 アルベルト・ロドリゲス 

データ:製作国スペイン=フランス、2025年、スペイン語、スリラー、109分、撮影地カディス湾に面したウエルバ港、アリカンテのスタジオ Ciudad de la Luz202456日クランクイン、公開スペイン20251031日、配給ブエナ・ビスタ・インターナショナル

製作Movistar Plus+ / Kowalski Films / Feelgood Media / Mazagón AIE / Le Pacto(仏)

監督アルベルト・ロドリゲス(セビーリャ1971)、監督、脚本家。本祭関係映画は、ニューディレクターズ部門ノミネートの「El traje」(02)、セクション・オフィシアルの「7 virgenes」(057人のバージン』)では主演のフアン・ホセ・バジェスタが銀貝男優賞を受賞した。「La isra mínima」(14『マーシュランド』公開)では、ハビエル・グティエレスが銀貝男優賞、アレックス・カタランが撮影賞、監督もフェロス・シネマルディア賞を受賞、翌年のゴヤ賞では作品賞を筆頭になんと10冠を制したヒット作になった。「El hombre de las mil caras」(16『スモーク・アンド・ミラーズ』)では、主演のエドゥアルド・フェルナンデスに銀貝賞のトロフィーをもたらし、ゴヤ賞では脚色賞を受賞した。「Modelo 77」(22)はコンペ外だったがセクション・オフィシアルのオープニング作品に選ばれている。

 

★またTVシリーズ「La peste」(17)と「Apagón」(22)も上映されており、今年もミニシリーズ「Anatomía de un instante」の上映が決定している。新作の脚本は今回も盟友ラファエル・コボスと共同執筆している。音楽:フリオ・デ・ラ・ロサ、撮影:パウ・エステベ・ビルバ、編集:ホセ・M. G. モヤノ

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『マーシュランド』の紹介記事は、コチラ20150124

『スモーク・アンド・ミラーズ』の紹介記事は、コチラ20160924

 

キャスト:アントニオ・デ・ラ・トーレ(アントニオ)、バルバラ・レニー(エストレーリャ)、ホアキン・ヌニェス、シルビア・アコスタ、セサル・ビセンテ、ホセ・ミゲル・マンサノバサロ”スコーン”、リカルド・ロッカ、ウルスラ・ディアス・マンサノ、カルロス・ベルナルディーノ、ホセ・ルイス・ラセロ、他

 

ストーリー:アントニオとエストレーリャは兄妹の物語。父親もダイバーでした。彼らは人生を通じて海と結びついています。アントニオはEl Tigre(タイガー)、無敵を誇る産業ダイバーとして仲間から一目置かれています。エストレーリャは海底生物を研究して海以外の陸にもつながっていますが、兄の働いているはしけ船で兄を手伝います。アントニオは本当に不器用な男で、将来のことはそっちのけ、生活はらくではありません。アントニオにアクシデントがおき、ダイバーとしての人生の終わりを告げられ、どん底に陥っている。しかしウエルバ港で沈没した石油タンカーの船体に隠されているコカインの密輸品を見つけることができれば、状況は好転するかもしれません。アントニオはそれに賭けることにしますが、エストレーリャは別の可能性を考えます。いつものことです。

 

★アントニオ・デ・ラ・トーレは、ロドリゲスの『マーシュランド』や『UNIT 7ユニット7麻薬取締第七班』(12Grupo 7」)に出演している。バルバラ・レニーは初めてでしょうか。

 

     

   

 

   

       (セクション・オフィシアルにノミネートされた監督)

 

★セクション・オフィシアル追加作品の発表がありました。アラウダ・ルイス・デ・アスアの「Los domingos」これで昨年と同じ4作品になりました。次回アップします。


アグスティン・ディアス・ヤネスの新作はNetflix*SSIFF2025 ①2025年07月16日 10:49

   Un fantasma en la batalla」の主役は1990年代のETA潜入捜査官

    

 

 

アグスティン・ディアス・ヤネスの新作Un fantasma en la batalla / She Walks in Darkness」が、Netflix で配信されるニュースに接しデータを集めていたところにサンセバスチャン映画祭のノミネーション発表が飛び込んできました。まだスペイン映画に限定した部分的な発表ですが、アウト・オブ・コンペティション部門上映が決まったようです。セクション・オフィシアルのスペイン映画には、ホセ・マリ・ゴエナガアイトル・アレギのコンビがタッグを組んだ「Maspalomas」と、サンセバスチャンに25年ぶりに戻ってきたホセ・ルイス・ゲリンの「Historias del buen valle / Good Valley Stories」、アルベルト・ロドリゲスの「Los  Tigres」の3 作がノミネートされていました。追い追いアップしていく予定です。

 

★アグスティン・ディアス・ヤネスの新作は、1990年代からおよそ10年間を、ETAバスク愛国主義のテロ組織に潜入して諜報活動をした若い治安警備隊員の実話に触発されて製作されました。19951月、サンセバスティアン市長選挙に国民党PPから立候補していたグレゴリオ・オルドーニェスが投票前日に暗殺される前から始まるようです。5年前からの構想ということで、今春クランクイン、フランス側バスクで撮影が開始されています。ヒロインのアマイアにスサナ・アバイトゥアが扮しますが、架空の人物です。ETAのテロリスト・グループに潜入した女性捜査官はアランサス・ベラドレ・マリン(偽名、本名はエレナ・テハダ)たった一人で、彼女をベースに人物造形をしたそうです。この女性潜入捜査官を主役にした、アランチャ・エチェバリアの「La infiltrada」ではカロリナ・ジュステが演じて、ゴヤ賞2025主演女優賞を受賞、エチェバリア監督もマルセル・バレナの「El 47」と作品賞を分かち合いました。

La infiltrada」の作品紹介記事は、コチラ20250115

   

       

            (スサナ・アバイトゥア、フレームから)

 

★製作スタッフは、『雪山の絆』を手掛けた、J. A. バヨナベレン・アティエンサ、サンドラ・エルミダ、ラウル・ギベルトなどが全員集合しています。

    

      

            (監督、製作者、メインキャストが勢揃い)

 

 「Un fantasma en la batalla / She Walks in Darkness

 (邦題『そして彼女は闇を歩く』)

製作:Producción de Bayona / Netflix

監督・脚本:アグスティン・ディアス・ヤネス

撮影:パコ・フェメニア

音楽:アルナウ・バタリェル

美術:ハイメ・アンドゥイサ

プロダクションデザイン:アライン・バイネー

キャスティング:フアナ・マルティネス

衣装デザイン:サイオア・ララ

メイクアップ:ベアトリス・ブスタマンテ

製作者:J. A. バヨナ、ベレン・アティエンサ、サンドラ・エルミダ、ラウル・ギベルト

 

データ:製作国スペイン、2025年、スペイン語、歴史、政治サスペンス、テロリズム、105分、撮影地ギプスコア県、フランス領バスク地方イパラルデ Iparralde、スペイン公開103日、Netflix 配信1017日が決定

映画祭・受賞歴:サンセバスチャン映画祭2025アウト・オブ・コンペティション上映

 

キャスト:スサナ・アバイトゥア(アマイア)、アンドレス・ゲルトルディスク、イライア・エリアス、ラウル・アレバロ、アリアドナ・ヒル、エドゥアルド・レホン、アントン・ソト(エタラ)、イニャキ・バルボア(ボリナガ)、エネコ・サンス(チェリス)、アンデル・ラカジェ(アンドニ)

 

ストーリー:若い治安警備隊員アマイアがETAテロ組織に潜入した約10年間が語られる。舞台は1990年代から2000年にかけての南フランスのバスク、アマイアのミッションはテロ組織が隠し持つ秘密兵器のアジト(スロス)を突き止めることでした。テロとの直接の闘いに関与し、スペインの歴史的、政治社会的文脈に根ざした捜査官たちの生活と経験に触発されて製作された。

 

アグスティン・ディアス・ヤネス監督紹介1950年マドリード生れ、監督、脚本家、作家。本作は7年ぶりの監督作品になる。本祭関連の映画として、1995年のデビュー作「Nadie hablara de nosotras cuando hayamos muerto」があり、審査員特別賞を受賞したほか、主役のビクトリア・アブリルが銀貝女優賞を受賞した。翌年のゴヤ賞でも8冠を制した。1997年『死んでしまったら私のことなんか誰も話さない』の邦題で劇場公開されている。

     

    

            (アグスティン・ディアス・ヤネス)

   

2001年「メイド・イン・スペイン」部門で2作目「Sin noticias de Dios」(『ウェルカム!ヘヴン』)、本作は当時のスペインで破格の製作費を費やして製作され、ペネロペ・クルス、ビクトリア・アブリル、ガエル・ガルシア・ベルナル、エルサ・パタキーなどが出演、撮影費の高いパリでも撮影された。そして2006年、ビゴ・モーテンセンをリクルートしたヒット作「Alatriste」は、ベストセラー作家アルトゥーロ・ペレス=レベルテの小説の映画化、2年後の2008年にはアブリル、新作出演のアリアドナ・ヒル、ピラール・ロペス・デ・アヤラ、エレナ・アナヤ、ディエゴ・ルナなどスターを起用して撮った「Solo quiero caminar」(『4人の女』DVD)、2017年「Oro」は、16世紀のアマゾン熱帯雨林に伝説の黄金都市を探し求めるアドベンチャー歴史ドラマ、ホセ・コロナド、オスカル・ハエナダ、新作出演のラウル・アレバロ、バルバラ・レニーなどが出演した。

    

    

            (邦題『アラトリステ』の最後のシーン)

  

当ブログ初登場のキャスト紹介

スサナ・アバイトゥア(バスク自治州ビトリア1990)、エレナ・タベルナの「La buena nueva」でトゥールーズ・シネスパニャ2008で新人女優賞受賞、ロドリゴ・ソロゴジェン「Stockholm」(13)、アンヘル・ゴンサレスのホラー「Compulsión」でタブロイド・ウォッチ賞助演女優賞受賞、アイトル・ガビロンドの「Patria」(20)でTVシリーズ助演女優賞ノミネート、ダニ・デ・ラ・オルデンの「Loco por ella」(21『クレイジーなくらい君に夢中』)、アラウダ・ルイス・デ・アスアのラブコメ「Eres tú」(23『だから、君なんだ』)、TVシリーズ「Farad」(23『華麗なるファラド家』8話)、サルバドール・カルボの「Valle de sombras」(23)、ダニ・ロビラと共演したイボン・コルメンサナの「El bus de la vida」(24)、マラガ FF2025コンペティションのダニエル・グスマン「La deuda」(25)など、ラブコメとシリアスドラマが演じられる若手女優。

    

      

 

アンドレス・ゲルトルディスク(マドリード1977)、J. A. バヨナ『永遠のこどもたち』、最近ではホナス・トゥルエバの「Volvereis」、アバイトゥアと共演した「El bus de la vida」、アルベルト・モライスの「La terra negra」など出演のベテラン。マラガ映画祭2007短編部門「Verano o Los defecos de Andrés」で銀のビスナガ男優賞受賞、「Morir」でゴヤ賞2018主演男優賞ノミネート、2018年メディナ映画祭21世紀の俳優に選ばれる。

   

  

   (アンドレス・ゲルトルディスクとスサナ・アバイトゥア、フレームから)

 

イライア・エリアス1980)、アシエル・アルトゥナの「Amama」でゴヤ賞2016新人女優賞とシネマ・ライターズ・サークル賞にノミネート、コルド・アルマンドスがサンセバスチャン映画祭2018でバスク映画賞イリサル賞を受賞した「Oreina / Ciervo」に出演している。

   

     

          (イライア・エリアス、デビュー作「Amama」から)

 

  

 (ラウル・アレバロ、フレームから)

   

   

      (アリアドナ・ヒルとスサナ・アバイトゥア、フレームから)

 

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エドゥアルド・フェルナンデスに映画国民賞2025のニュース2025年07月13日 18:28

     Marco」と「El 47」のエドゥアルド・フェルナンデスに映画国民賞2025

  

      

  (「Marco」でゴヤ賞2025主演男優賞を受賞したフェルナンデス、右は娘グレタ)

 

630日、今年の映画国民賞受賞者の発表がありました。選考母体はスペイン文化スポーツ教育省と映画部門はスペイン映画アカデミー、副賞は30.000ユーロ、主に前年に映画界で活躍、貢献した人が選ばれます。授与式は秋開催のサンセバスチャン映画祭期間中(2025年は919日~27日)と大枠は変わっておりません。エドゥアルド・フェルナンデス(バルセロナ1964)は、マルセル・バレナの「El 47」とアイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョの「Marco」の演技が評価され受賞しました。昨年12月から今年にかけてスペインで開催される映画賞、前者でガウディ賞、ディアス・デ・シネ賞、後者でフォルケ賞を皮切りに、ゴヤ賞、イベロアメリカ・プラチナ賞、シネマ・ライターズ・サークル賞、フォトグラマス・デ・プラタ、スペイン俳優組合賞、フェロス賞、ディアス・デ・シネ賞、文化省が授与する金のメダル芸術功労賞と貰える賞のほとんどを制覇しておりましたので、発表を待たずとも受賞は確実視されておりました。ゴヤ胸像4個保持者はカルメン・マウラと故ベロニカ・フォルケに続く3人目とか。

   

     

           (実在の詐欺師を演じた「Marco」のポスター)

  

★細切れにキャリア&フィルモグラフィーを紹介しておりますが、国民賞受賞を機会に公開作品もかなりありますので、代表作、受賞作を中心に紹介しておきます。19648月バルセロナ生れ、映画・舞台・TV俳優、2024年、短編「El otro」で監督デビュー、バジャドリード映画祭でプレミア上映されました。舞台俳優としてスタートをきる。シェイクスピアの『ハムレット』(マックス賞2013)、『テンペスト』、『ジョン王』、サミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』(観客賞)などに出演している。1990年作家のエスメラルダ・ベルベルと結婚、1995年グレタ・フェルナンデス誕生、2015年離婚、現在のパートナーはアイノア・アルダノンド。

    

          

         (パートナー、アイノア・アルダノンドとフェルナンデス)

      

    

    (シェイクスピアの『ハムレット』から、今は亡きマリサ・パレデスと)

 

TVシリーズに出演した後、1994年ロサ・ベルヘスの「Souvenir」で長編映画デビュー、マリアノ・バロッソのスリラー「Los lobos de Washington」(99)でハビエル・バルデムと共演、翌年ゴヤ新人賞にノミネート、サンジョルディ賞、オンダス賞を受賞した。マヌエル・ビセントの同名小説を映画化したビガス・ルナの「Son de mar」(01)は『マルティナは海』の邦題で公開された。本作はフェルナンデス日本初登場となった作品。アレックス・オレ、イシドロ・オルティス、カルロス・パドリサ、演劇集団ラ・フラ・デルス・バウスのホラー・ファンタジー「Faust 5.0」で現代のメフィストフェレス役でゴヤ賞2002主演男優賞受賞の他、シッチェスFF、サンジョルディ賞などを受賞した。ファウスト博士にミゲル・アンヘル・ソラが扮した。セスク・ゲイのアンサンブルドラマ「En la ciudad」でゴヤ賞2004助演男優賞を受賞、本作は『イン・ザ・シティ』の邦題でミニ映画祭で上映された。

 

      

       (ゴヤ賞主演男優賞を手にした「Faust 5.0」のポスター)

   

     

    (レオノール・ワトリングと共演した『イン・ザ・シティ』のポスター)

 

★マル・コルがゴヤ賞2010新人監督賞を受賞した「Tres dies amb la família」に主演、マラガ映画祭2009銀のビスナガ男優賞を受賞した。『家族との3日間』の邦題で東京国際女性映画祭2010で上映された。2010年は、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの「Biutiful」(『ビューティフル』)、アグスティ・ビリャロンガの「Pa negra」(『ブラック・ブレッド』)と収穫の多い年となった。2011年ペドロ・アルモドバルの「La piel que habito」(『私が、生きる肌』)、2014年ダニエル・モンソンの「El niño」(『エル・ニーニョ』)でゴヤ賞2015助演男優賞にノミネート、2015年のイマノル・ウリベの「Lejos del mar」では、エレナ・アナヤとタッグをくんで ETA の元テロリストを演じた。2016年は、アルベルト・ロドリゲスのスリラー「El hombre de las mil caras」(『スモーク・アンド・ミラーズ』)で実在したスペイン政府の元諜報員フランシスコ・パエサを演じて、サンセバスチャン映画祭2016の銀貝男優賞ガウディ賞は受賞したが、ゴヤ賞は逃した。

 

      

 (サンセバスチャンFF 2016 銀貝男優賞を受賞した『スモーク・アンド・ミラーズ』)

 

2016年、エンリケ・セレソがプロデュースしたサルバドール・カルボの「1898, Los últimos de Filipinas」『1898:スペイン領フィリピン最後の日』に指揮官エンリケ・デ・ラス・モレナスに扮し、ルイス・トサールやハビエル・グティエレス、カラ・エレハルデなどと共演した。アレックス・デ・ラ・イグレシアの群像劇「Perfecta desconocidos」(17)、アスガー・ファルハティ「Todos lo saben」『誰もがそれを知っている』(18)、アレハンドロ・アメナバルの「Mientras dere la guerra」(『戦争のさなかで』19)では、哲学者ウナムノを毛嫌いするホセ・ミリャン・アストライ将軍に扮し、2回目のゴヤ賞助演男優賞を受賞した。

  

  

    (フランコ総統の盟友、隻眼片腕のホセ・ミリャン・アストライ将軍を演じた)

 

2019年、ベレン・フネスの「La hija de un ladrón」は、愛娘グレタ・フェルナンデスと初共演、グレタは銀貝女優賞を手にした。親子で銀貝賞を受賞したことになり、自身の受賞よりも何倍も嬉しかったに違いない。スペイン映画賞のノミネートの山を築いたマルセル・バレナの「Mediterráneo」(21)では、受賞こそなかったが監督との絆を固め、次の「El 47」主演に繋がった。オリオル・パウロ「Los lengrones torcidos de Dios」(22)は、邦題『神が描くは曲線で』でネット配信された。上述したアイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョの「Marco」、マルセル・バレナの「El 47」の字幕入りを期待したい。2018年、バジャドリード映画祭栄誉スパイク賞を受賞した。

 

 

主なフィルモグラフィー(短編、TVシリーズは割愛、太字代表作)

1994Souvenir」コメディ、ロサ・ベルヘス

1999Zapping」フアン・マヌエル・チュミリャ

1999Los lobos de Washington」スリラー、マリアノ・バロッソ、ゴヤ賞新人賞ノミネート

2000El portero」ゴンサロ・スアレス

2001La voz de su amo」フィルムノワール、エミリオ・マルティネス=ラサロ

2001Son de mar」『マルティナは海』ビガス・ルナ、ゴヤ賞助演男優賞ノミネート

2001Faust 5.0」ファンタジー、アレックス・オレ、イシドロ・オルティス、

   カルロス・パドリサ、ゴヤ賞2002主演男優賞、他受賞歴多数

2002El embrujo de Shanghai」フェルナンド・トゥルエバ

2002Smoking room」ロヘル・グアル、J.D. Wallovits、マラガFF 銀のビスナガ男優賞

2003En la ciudad」『イン・ザ・シティ』セスク・ゲイ、ゴヤ賞助演男優賞、

   スペイン俳優組合賞

 

2004Cosas que hacen que la vida valga la pena」マヌエル・ゴメス・ペレイラ、

   ゴヤ賞主演男優賞・スペイン俳優組合賞ノミネート

2005Hormigas en la boca」マリアノ・バロッソ、マラガFF銀のビスナガ男優賞

2005Obaba」モンチョ・アルメンダリス

2005El método」マルセロ・ピニェイロ、スペイン俳優組合賞受賞、

   ゴヤ賞主演男優賞ノミネート

2006Ficción」セスク・ゲイ

2006Alatriste」『アラトリステ』アグスティン・ディアス・ヤネス

20083 días」『アルマゲドン・パニック』フランシスコ・ハビエル・グティエレス

2009Amores locos」ベダ・ドカンポ・フェイホー

2009Tres dies amb la família」『家族との3日間』マル・コル、

   マラガFF銀のビスナガ男優賞、ブタカ賞受賞、ガウディ賞主演男優賞、

   シネマ・ライターズ・サークル賞ノミネート

2009Luna caliente」『ザ:レイプ 獣欲』ビセンテ・アランダ

 

2010Biutiful」『BIUTIFUL ビューティフル』アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、

   ゴヤ賞助演男優賞ノミネート

2010La mosquitera」コメディ、アグスティ・ビラ、ガウディ賞主演男優賞受賞、

   フォルケ賞ノミネート

2010Pa negra」『ブラック・ブレッド』アグスティン・ビリャロンガ

2011La piel que habito」『私が、生きる肌』ペドロ・アルモドバル

2012Miel de naranjas」イマノル・ウリベ

2012Una pistola en cada mano」セスク・ゲイ、ガウディ賞助演男優賞

2013Todas las mujeres」マリアノ・バロッソ、フォルケ賞・サンジョルディ賞受賞、

   ゴヤ賞主演男優賞・シネマ・ライターズ・サークル賞・フェロス賞ノミネート

2014Marsella」ベレン・マシアス

2014El niño」『エル・ニーニョ/ザ・トランスポーター』ダニエル・モンソン

   ゴヤ賞助演男優賞ノミネート

 

2015Felices 140」コメディ、グラシア・ケレヘタ

2015Truman」『しあわせな人生の選択』セスク・ゲイ

2015Lejos del mar」スリラー、イマノル・ウリベ

2016La noche que mi madre mató a mi padre」コメディ、イネス・パリス

2016El hombre de las mil caras『スモーク・アンド・ミラーズ』

   アルベルト・ロドリゲス、サンセバスチャンFF銀貝男優賞、ガウディ賞、

   シネマ・ライターズ・サークル賞

20161898Los últimos de Filipinas」『1898:スペイン領フィリピン最後の日』

   サルバドール・カルボ

2017Perfecta desconocidos」ブラックコメディ、アレックス・デ・ラ・イグレシア

2018Todos lo saben」『誰もがそれを知っている』アスガー・ファルハティ

   ゴヤ賞助演男優賞ノミネート

2019Mientras dere la guerra」『戦争のさなかで』アレハンドロ・アメナバル、

   ゴヤ賞助演男優賞、シネマ・ライターズ・サークル賞

2019La hija de un ladrón / A thiefs daughter」ベレン・フネス、

   ガウディ主演男優賞ノミネート

 

2021Mediterráneo」マルセル・バレナ、ゴヤ賞主演男優賞、フォルケ賞、ガウディ賞、

   フェロス賞、イベロアメリカ・プラチナ賞、各男優賞ノミネート

2022Los renglones torcidos de Dios」『神が描くは曲線で』オリオル・パウロ

     ガウディ賞助演男優賞ノミネート

2024Marco」アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ、ゴヤ賞主演男優賞、

   フォルケ賞男優賞、プラチナ賞、シネマ・ライターズ・サークル賞、

   スペイン俳優組合賞ほか多数

2024El 47」マルセル・バレナ、ガウディ男優賞、ディアス・デ・シネ賞

 

★働き者ですね、出演本数の多さ、多彩さにアップして驚きました。このほかに短編、TVシリーズ、例えば最近では、Netflix 配信中の『鉄の手』(8話)、「30 Monedas」(16話、HBO MAX)に主演しており、さらに舞台にも出演しています。


★スペイン映画だけですが、サンセバスチャン映画祭2025のセクション・オフィシアル他ノミネート発表がありましたので、そろそろ作品紹介を予定しています。

 

 

◎主な関連記事

『エル・ニーニョ』紹介は、コチラ2014092020150115

Lejos del mar」紹介は、コチラ20141130

Felices 140」紹介は、コチラ⇒2015年01月07日

Marsella」紹介は、コチラ⇒2015年02月02日

『スモーク・アンド・ミラーズ』紹介は、コチラ20160924

1898:スペイン領フィリピン最後の日』紹介は、コチラ20170105

Perfecta desconocidos」紹介は、コチラ20170226

『誰もがそれを知っている』紹介は、コチラ20180508

La hija de un ladrón」紹介は、コチラ⇒2019年07月23日

『戦争のさなかで』紹介は、コチラ20191126

Mediterráneo」紹介は、コチラ20211213

Marco」とキャリア紹介は、コチラ20240903

El 47」紹介は、コチラ20241228