『キホーテ 映画に跨って』アスセン・マルチェナ&ハビエル・リオジョ ― 2015年07月04日 16:06
6月のドン・キホーテの視点 映画上映会
★先日ご案内したセルバンテス文化センター映画上映会の『キホーテ 映画に跨って』を見てきました。20世紀初頭から現代までのドン・キホーテ映画を素材にした、実写からアニメーション、ギニョール、ジャンルはドラマからドキュメンタリー、ミュージカルなど40本近くが網羅されていました。製作国もスペインを始めとして、米国、フランス、ソ連、ドイツ、イギリス他。無声、モノクロ、カラーとそれこそバラエティーに富んでいて、これでは日本語字幕は付けられないと納得。
“Quijote,
cabalgando por el cine”
監督(共同):アスセン・マルチェナ&ハビエル・リオジョ
製作:Junta de Castilla-La Mancha(カスティージャ≂ラ・マンチャ評議会)
プロダクション:Stom Comunicacion para la Empresa Publica Don
Quijote dela Mancha 2005 S.A.
協賛:セルバンテス協会
データ:スペイン、2007、ドキュメンタリー、86分、DVD上映
*『機知にとんだ郷士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ』(1605)正編(前編)刊行400周年記念行事の一環として企画されたもの。
★ドキュメンタリーに登場した目ぼしいドン・キホーテ映画(製作順)
製作国、監督、俳優(キホーテとサンチョ)をメモランダムに列挙:
1933“Don Quixote”「ドン・キホーテ」仏英独、英語、モノクロ、ミュージカル、73分
監督ゲオルク・ヴィルヘルム・パブスト、キホーテ(フェオドール・イワノヴィッチ・シャリアピン)サンチョ(ジョージ・ロビー)
*独英仏語の3バージョンのうちDVD化されフランス版使用。
1947“Don Quijote de la Mancha”『ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ』スペイン、西語、137分、モノクロ、監督ラファエル・ヒル、キホーテ(ラファエル・リベリェス)サンチョ(フアン・カルボ)*
1957“Don Kikhot”ソビエト連邦、ロシア語、カラー、110分、監督グリゴーリ・コージンツェフ
1965“Don Quichotte”カナダ=フランス、フランス語、TVドキュメンタリー
監督エリック・ロメール
1972“Man of La Mancha”『ラ・マンチャの男』イタリア=米国、英語、カラー、129分、公開
監督アーサー・ヒラー、キホーテ(ピーター・オトゥール)、サンチョ(ジェームズ・コ コ)、ドゥルシネーア(ソフィア・ローレン)
1973“Don Quijote cabalga de nuevo”西=メキシコ、コメディ、スペイン語、カラー、132分
監督ロベルト・ガバルドン、キホーテ(フェルナンド・フェルナン≂ゴメス)、サンチョ(カンティンフラスことマリオ・モレノ)
1992“Don Quijote de Orson Welles”(“Orson
Welles’ Don Quijote”)「オーソン・ウェルズのドン・キホーテ」スペイン=イタリア=米国、スペイン語、カラー、116分
監督オーソン・ウェルズ、ダイアローグ:ハビエル・ミナ&ヘスス・フランコ、キホーテ(フランシスコ・レイゲーラ)サンチョ(エイキム・タミロフ)
2002“El caballero Don Quijote”『エル・カバジェロ・ドン・キホーテ』スペイン、119分
監督マヌエル・グティエレス・アラゴン、キホーテ(フアン・ルイス・ガジャルド)サンチョ(カルロス・イグレシアス)ドゥルシネーア(マルタ・エトゥラ)
*本作の記事はコチラ⇒2015年6月19日
自分の中のドン・キホーテを刺激する
A: 上記の作品は記憶に残った作品の一部、1回見ただけでは全容はつかめず、かつて見たことのある映像が出ると、「ああ、『オーソン・ウェルズのドン・キホーテ』だ、ラファエル・ヒルの『ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ』だ」と部分的に分かるだけでした。なにしろ40作近い作品を詰め込んでいるから目まぐるしいことおびただしい。
B: 子供向けに作られたアニメやギニョールの数もかなりありました。クロージングのクレジットに採用した作品のタイトル、製作年、監督名が列挙されていたので、DVDを再見すれば正確な情報が得られます。
A: 上記のように『機知にとんだ郷士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ』(1605)正編(前編)刊行400周年記念行事の一環として企画された。だから商業映画として製作されたものではなく、DVDのコピーも2000部、半分が世界各国にあるセルバンテス協会支部用に、残りが公共図書館などに寄贈されたようです。商業用でないので国際映画データベースIMDbから情報を入手することができませんでした。
B: 今回の上映もそのDVDで上映されたはず。

(ロベルト・ガバルドンの「ドン・キホーテ」カンティンフラスとフェルナン≂ゴメス)
A: ゲオルク・ヴィルヘルム・パブストの「ドン・キホーテ」は、以前参加した映画講座で教材として上映されたのを見ました。
B: ラファエル・ヒルはセルバンテス文化センターで上映したばかり、マヌエル・グティエレス・アラゴン作品は、5月の「ドン・キホーテの視点映画上映会」で英語字幕で上映されたようです。
A: グティエレス・アラゴン監督は1991年にTVミニシリーズで原作の正編(前編)を撮っている。これはそれに続く続編(後編)として企画された。キホーテにフアン・ルイス・ガジャルド、ドゥルシネーアにマルタ・エトゥラ、公爵夫人にエンマ・スアレスなど現在活躍中の俳優が出演している。

(ゲオルク・ヴィルヘルム・パブストの「ドン・キホーテ」F・シャリアピン)
B: ガジャルドは残念ながら2012年に鬼籍入りしてしまっています。
A: イネス・パリスの“Miguel y William”(2007)でミゲル・デ・セルバンテスに扮した。セルバンテスとシェイクスピアが同じ女性に恋してしまうロマンティック・コメディ。カルロス・サウラの『タンゴ』にも出演していたが、結構重要な役だったのにカタログでさえ無視されてしまった(笑)。
B: アレックス・デ・ラ・イグレシアの『刺さった男』(2011)が遺作になるのかな。

(カルロス・イグレシアスとフアン・ルイス・ガジャルド)
A: オーソン・ウェールズの「オーソン・ウェールズのドン・キホーテ」は、ウェールズが最後まで監督できず(1985没)ダイアローグを執筆したヘスス・フランコが引き継ぎ1992年に完成させた。フランシスコ・レイゲーラ(キホーテ)もエイキム・タミロフ(サンチョ)も故人のため、アーカイブ・フッテージ使用です。主従ボイスをペペ・メディアビジャとフアン・カルロス・オルドネスが担当した。

(「オーソン・ウェールズのドン・キホーテ」)
B: まだ旧ソ連時代にグリゴーリ・コージンツェフが「ドン・キホーテ」を撮っていた。
A: 彼はシェイクスピアの『リア王』や『ハムレット』を撮った監督、これは日本でも公開されたからオールドファンには懐かしい名前です。「ドン・キホーテ」はやはりというか、未公開です。
B: エリック・ロメールがTVドキュメンタリーを撮っていたなんて。
A: それぞれ自分の中のドン・キホーテ像をもっていて刺激されるのでしょう。ピーター・オトゥールと言えば『アラビアのロレンス』ですが、コメディも得意としたからキホーテ役は意外じゃない。スペインのフェルナンド・フェルナン≂ゴメスのキホーテも何度かスクリーンに登場した。実際は40作以上撮られていて、ここに登場したのもその一部というわけです。今後も作られつづけるでしょう。
テリー・ギリアムの「ドン・キホーテ」
A: キホーテ映画に執念を燃やし続けている監督の一人がテリー・ギリアム。2000年9月にクランクインした「ドンキホーテを殺した男」は諸般の事情で未完に終わった。事情とは、ロケ地が洪水という災害に見舞われ撮影機材が損害を受け、ロケ地の景観も変わってしまった。おまけにキホーテ役のジャン・ロシュフォールが椎間板ヘルニアの持病持ちで、それが悪化して馬に乗れなくなった。
B: 彼は姿かたちがキホーテにそっくり、乗馬も得意でキホーテ役にはもってこい、英語も一生懸命ベンキョウして準備していたのでした。今度は7度目の挑戦とか。

(撮影中のジャン・ロシュフォールとギリアム監督、2000年)
A: この不運続きの顛末をドキュメンタリーにしたのが『ロスト・イン・ラ・マンチャ』(2002)です。その損害額1500万ドルを保険会社が支払ったわけです。
B: それでも夢醒めやらず、またぞろジョン・ハートをキホーテ役に撮るそうですが。リンチの『エレファント・マン』、ハリポタのオリバンダー老人役、英語はできるから(笑)改めて勉強の必要はない。
A: お蔵入りした前作の脚本は保険会社が所有していて、リベンジにはその関係もあるのかしら。来年初めにクランクインする予定ですが、最近の報道によるとハートに膵臓癌が見つかって目下治療中、そうなるとどうなるのでしょう。難しい癌だし、トビー役のジョニー・デップも断ったそうだし。
B: 病に勝って再びスクリーンで馬上のキホーテ姿を見られたらと思います。スペイン以外の俳優のキホーテ役は多くないですからね。
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