セクション・オフィシアル-コンペティション外*サンセバスチャン映画祭2018⑤2018年07月29日 11:26

                エンリケ・ウルビスのTVシリーズ「Gigantes」の先行上映

 

★昨年から始まった2TVシリーズの先行上映は、『悪人に平穏なし』(11)の成功の後、しばらく音沙汰のなかったエンリケ・ウルビスホルヘ・ドラドGigantes(スペイン、全8話)に決定、今回もホセ・コロナドとタッグを組んでいます。コロナドは20174月に心臓の痛みを感じて緊急入院、冠状動脈のトラブルを取りのぞくステント手術を受けています。退院後、マヌエル・リバスのアイデアとなるTVシリーズVivir sin permiso(全14話、201718)に主演、4人の息子をもつガリシアの麻薬王に扮した。今回のGigantes」も3人の息子を麻薬の「巨人」に育て上げようとする父親役で、似たような設定が気に入りませんが、春から話題になっていたドラマです。管理人贔屓のウルビスとコロナドがタッグを組んだということでアップいたします。

 

              

              (ウルビス監督とホセ・コロナド)

 

     

 (左からホセ・コロナド、エリザベト・Gelabert、ダニエル・グラオ、ウルビス監督、

  イサク・フェリス、カルロス・リブラド、720日、マドリードの映画アカデミー)

    

Gigantes(スペイン、全8話)エンリケ・ウルビス&ホルヘ・ドラド

キャスト:ホセ・コロナド(父親アブラハム・ゲレーロ)、イサク・フェリス(長男ダニエル)、ダニエル・グラオ(次男トマス)、カルロス・リブラドNene(末子クレメンテ)、エリザベト・Gelabert、ヨランダ・トロシオ、ソフィア・オリア、マヌエル・ガンセド、他多数

 

解説:ゲレーロ家は数十年間、マドリードの暗黒街ラ・ラティナ地区でスペインからヨーロッパ諸国にコカインを流す麻薬取引網をコントロールしていた。しかし目下のファミリーは彼らにとって極めて重要な局面に立たされていた。長男ダニエルが15年の刑期を終えて出所してきたが、父アブラハムは病に伏していた。ダニエルは一家の然るべき地位を取り戻そうとするが、彼の知っていた世界はもはや存在していなかった。三男クレメンテの姿はなく、次男トマスが一家の大黒柱になっていたからだ。父親が三兄弟に施した教育は、生き残るためには手段を択ばず、モラルの限界を超えてでも檻の中の闘犬のように、<巨人>のごとく闘うことだった。兄弟の闘いの行くつく先は、兄弟間の愛と憎しみが語られるだろう。

 

★三兄弟は母親の愛を知らずに育った。モンスターのような麻薬密売人の父親は、兄弟を競わせてお金の稼ぎ方と暴力の使い方を教えてきた。長男ダニエル(イサク・フェリス)は後先を考えない衝動的な性格で、父親の姿を追って生きているのだが、父親のような人生は歩みたくないというジレンマを抱えている。三男クレメンテ(カルロス・リブラドNene)は家業から抜け出したいとボクシングに熱中しており、ガールフレンドもファミリーと距離をおくことを願っている。次男トマス(ダニエル・グラオ)は謎めいているが、彼ら三人の共通項は満身傷だらけという点である。ダニエル・グラオは、アルモドバルの『ジュリエッタ』でヒロインの夫を演じた俳優、イサク・フェリスは、マラガ映画祭2018で「金のビスナガ賞」を受賞したエレナ・トラぺの「Las distancias」に出演しています。カルロス・リブラドは当ブログ初登場、ボクシングの練習シーンでムキムキの肉体を披露しています。

 

        

(左から、長男ダニエル、次男トマス、三男クレメンテ)

     

   

   (左から、カルロス・リブラドNene、イサク・フェリス、ダニエル・グラオ)

 

       

                    (リブラドに演技指導をするウルビス監督)

     

  監督&スタッフ

エンリケ・ウルビス(ビルバオ、1962)と、ホルヘ・ドラド(マドリード、1976)の共同監督作品、ウルビスが全8話、ドラドが3話を担当した。ホルヘ・ドラドは、アルモドバルの『トーク・トゥ・ハー』(02)や『バッド・エデュケーション』(09)、ギレルモ・デル・トロの『デビルズ・バックボーン』(01)などで長いこと助監督をつとめたあと、米国との合作で撮ったサイコスリラーAnna(英題「Mindscape」)が、シッチェス映画祭2013にエントリーされた。言語が英語だったことも幸いして『記憶探偵と鍵のかかった少女』の邦題で翌2014年公開された。DVDも発売されたからスリラーファンにはウルビスより認知度が高いかもしれない。

 

★プロジェクトチームのリーダーはウルビス監督だが、オリジナルな発案者は俳優のマヌエル・ガンセドだそうで、今回は脚本と製作の他、俳優としても出演(2話)している。脚本はミシェル・ガスタンビデミゲル・バロッソ、マヌエル・ガンセド、ウルビス。ウルビス監督によると「前からの仕事仲間のマヌエルから、モビスター+が<Gigantes>と名付けた彼のアイディアを買ってくれ、それを私に監督して欲しいと言ってきた。そこでTVシリーズの脚本家ミゲル・バロッソに応援を依頼、オリジナル脚本の推敲に着手した。それからは目眩がしそうなトボガンに乗ってるようなもので、最終的にはいつも私の脚本を担当してくれるミシェル・ガスタンビデに参加してもらって完成させた」と経緯を語っている。

 

★撮影はウナックス・メンディア、前作『悪人に平穏なし』に続いての担当、他監督作品ではシッチェス映画祭2013のオープニング作品だったエウヘニオ・ミラの「Grand Piano」(『グランドピアノ 狙われた黒鍵』)、コルド・セラの「Gernika」(16)のほか、「Gran Hotel」(1112)のようなTVシリーズを多く手掛けている。本作ではTV用のフォーマットで撮影、主にマドリードのラバピエス地区、ラ・ラティナ地区、アンダルシアのアルメリアでも撮影した。

 

  

   (左に立っているのがアブラハム役のホセ・コロナドか。第1話の冒頭部分から)

 

      ウルビス&コロナド関連記事

『貸し金庫507』の紹介記事は、コチラ20140325

 ホセ・コロナドのキャリア紹介は、コチラ2014032020170417

コルド・セラのGernika」紹介記事は、コチラ20160420


★他にコンペティション外の特別上映には、テルモ・エスナル(ギプスコアのサラウツ、1966)のDantza(スペイン)と、古くは『にぎやかな森』(87)や『蝶の舌』(99)など本映画祭でも馴染みあるホセ・ルイス・クエルダ(アルバセテ、1947)のTiempo después(スペイン=ポルトガル合作)の2本がエントリーされています。
  
「Dantza」

 
「Tiempo después」