アルモドバルの「ビター・クリスマス」は悲喜劇*カンヌ映画祭20262026年06月14日 15:20

           公開済みの作品で7回目のカンヌ映画祭コンペ入りは異例?

 

  

               (公開用のポスター)

 

★ちょうど1年前の202569日、ペドロ・アルモドバルの「Amarga Navidad」がクランクインした折に、大枠の紹介記事をアップしました。カンヌ映画祭には多分間にあわないと予想しましたが、なんと320日にスペインで早々と公開、更に公開済みの作品がカンヌ・コンペ入りするなんて聞いたことがないから、じゃワールドプレミアはどこで? やはりカンヌだというので驚きました。1999年、初めてコンペ入りした『オール・アバウト・マイ・マザー』で監督賞を受賞して以来、7作目のコンペ入りでした。2006年の『ボルベール〈帰郷〉』で脚本賞を受賞、しかし一番欲しいパルムドールはまだ手にしておりません。『私の秘密の花』(95)でタッグを組んで30年、音楽監督アルベルト・イグレシアスがサウンドトラック賞を受賞しました。こんな賞があることも知りませんでした。

 

★タイトルは、アルモドバルが2023年に出版した12編からなる短編集 “El último sueño” から、20年前に執筆されたお気に入りの Amarga Navidad と、これまた監督お気に入りのメキシコの国民的な大歌手、チャベラことイサベル・バルガ・リサノ Amarga Navidad から採られました。エルサの物語を2004年に設定したのと関係あるのかもしれません。劇中で流れるということです。作品紹介記事にチャベラ・バルガスの紹介もアップしております。過去のカンヌ・コンペ入りは、『オール・アバウト・マイ・マザー』、『ボルベール〈帰郷〉』、『抱擁のかけら』(09)、『私が、生きる肌』(11)、『ジュリエッタ』(16)、『ペイン・アンド・グローリー』(19)の6作です。

作品紹介記事は、コチラ20250617

  

     

     (カンヌ映画祭2026ワールドプレミア前のレッドカーペット、519日)

    

レッドカーペットに現れた出席者は, 左から、ニエベス・アルバレス、ロッシ・デ・パルマ、キム・グティエレス、アイタナ・サンチェス=ヒホン、レオナルド・スバラリア、監督、バルバラ・レニー、パトリック・クリアド、ビクトリア・ルエンゴ、ミレナ・スミット、歌手アマイア・ロメロの11名、カルメン・マチは不参加でした。

 

 

 「Amarga Navidad / Bitter Christmas

製作:El Deseo / Film Factory Entertainment Movistar Plus+ / Pathé

      / ICO / ICAA / RTVE

監督・脚本:ペドロ・アルモドバル

撮影:パウ・エステベ・ビルバ

音楽:アルベルト・イグレシアス

編集:テレサ・フォント

キャスティング:エバ・レイラ、ヨランダ・セラノ

衣装デザイン:パコ・デルガド

メイクアップ&ヘアー:アナ・ロペス=プイグセルベル(メイク)

                     マノロ・ガルシア(ヘアー)、他

美術:パブロ・ブラッティ

製作者:アグスティン・アルモドバル、(エグゼクティブ)エステル・ガルシア

  

データ:製作国スペイン、2026年、スペイン語、悲喜劇、111分、撮影地カナリア諸島のランサローテ島、マドリード、202569日ランサローテでクランクイン、812日終了。配給:スペイン(ワーナーブラザース・ピクチャーズ)、米国(ソニー・ピクチャーズ・クラシックス)、フランス(パテ Pathé520日)、イギリス、アイルランド(カーズン828日)、ドイツ(スタジオカナル・フィルム730日)、イタリア(ワーナーブラザース521日)、メキシコ、アルゼンチン、ブラジルほか中南米諸国(ワーナー・ブラザース528日)他。スペインでは公開後、モビスター・プラスが配信予定

映画祭・受賞歴:第79回カンヌ映画祭2026コンペティション、サウンドトラック賞(アルベルト・イグレシアス)、

 

キャスト

バルバラ・レニー:エルサ、広告ディレクター

レオナルド・スバラリア(スバラグリア):ラウル・デュラン、映画監督

アイタナ・サンチェス=ヒホン:モニカ、ラウルの20年来の秘書

ビクトリア・ルエンゴ:パトリシア、エルサの友人、パリにいる夫の浮気を疑っている

パトリック・クリアド:ボニファシオ、エルサの年弱のパートナー、消防士、ストリッパー

ミレナ・スミット:ナタリア、エルサの友人、子供を事故で亡くし鬱になっている

キム・グティエレス:サンティ、ラウルのパートナー

カルメン・マチ:ガルシア医師

グロリア・ムニョス:エルサの母親

ロッシ・デ・パルマ:ガブリエラ

アマイア・ロメロ:歌手アマイア

マリア・モラレス:パトリシア・オテロ医師

アントニオ・ロメロ:医師

ニエベス・アルバレス、ヌルディン・バタン、ラウラ・レデスマ、(フィエスタの招待客)ハビエル・アンブロッシ、ハビエル・カルボ、ロラ・ロドリゲス、オマール・アユソ、ギタリカデラフエンテ、ビビアナ・フェルナンデス、フェルナンド・イグレシアス、テオ・ルカダモ、フリア・デ・カストロ、その他大勢

 

ストーリー:、2004年、12月の長い週末に母親を亡くした広告ディレクターのエルサは、仕事に没頭して対処しようとします。しかし片頭痛で休暇を余儀なくされ、憲法記念日(126日)の連休に友人のパトリシアと一緒にランサローテに向かうことにする。パトリシアにもマドリードを離れる必要があり、一方で年下の若いパートナーのボニファシオはマドリードに留まることにする。エルサは創作を再開するために、親しい友人たちの個人的な苦しみを食いものにしていきます。2025年、映画監督のラウルが脚本を執筆しているが、物語はラウルのもうひとりの自分であるエルサの物語であることが明らかになる。ラウルは創造性の壁を乗りこえるためにオートフィクションに没頭しており、それは自身の人生や若いパートナーのサンティ、アシスタントのモニカに影響を受けています。人生とフィクションは分かちがたく、時には痛みを伴うかたちで結びついている。しかし深入りはどこまで許されるのでしょうか。

   

         

                 (最初のポスター)

 

             「自分に対して最も残酷だった映画」と監督

 

★最初のポスターからも分かるように、バルバラ・レニー扮するエルサとレオナルド・スバラリアのラウルはダブル(分身)、そしてラウルは監督の別人格でもある。半自叙伝的な『ペイン・アンド・グローリー』と同じオートフィクションの要素を取り入れています。因みにあちらはアントニオ・バンデラスでした。二つの物語は悪影響をあたえながらパラレルに入れ子状に展開されます。二人の監督が重なりあうだけでなく、もう一人の監督とも重なるようです。もう一人の監督を理解して支え続けた母親が亡くなったのは、19999月で『オール・アバウト・マイ・マザー』が公開中のことで、翌年のアカデミー外国語映画賞受賞を知らずに旅立ちました。監督は2002年に上梓した自伝でカミングアウトしており、2004年は『バッド・エデュケーション』が公開された年でもあった。

 

       

                                          (本作撮影中のアルモドバル)

 

     

               (三人は一人、カンヌFF2026519日レッドカーペット)

 

★未紹介のエルサの年下のパートナー役ボニファシオを演じたパトリック・クリアド(マドリード1995は子役出身、ダニエル・サンチェス・アレバロのコメディ「La familia española」でゴヤ賞2014新人男優賞にノミネートされ大人の俳優としての第一歩を踏み出した。ロドリゴ・ソロゴジェンのTVシリーズ「Antidisturbios」(6話、20)でスペイン俳優組合賞2022,フェロス賞2021の助演男優賞を受賞した他、イベロアメリカ・プラチナ賞にノミネートされた。『ペーパー・ハウス』(6話、21)、「Las noches de Tefia」(6話)でオンダス賞2023主演男優賞を受賞した。アレックス&ダビ・パストールの『バード・ボックス・バルセロナ』(23)、パウラ・オルティスの『レッド・バージン』(24)でスペイン俳優組合賞を受賞している。短編だがブラス・エヘア・サラビアの「Remember Why You Started」で脚本も手がけている。

 

        

  

              (パニック発作で入院したエルサを介護するボニファシオ)

 

★主要キャストのキャリア&フィルモグラフィーは以下にアップしています。ラウルのアシスタントを20年も続けているモニカ役のアイタナ・サンチェス=ヒホンの演技が評価されていますが、うちに才能を秘めたモニカの立ち位置に注意して鑑賞したほうがよろしいようです。

 

       

       

               (アイタナ・サンチェス=ヒホンとレオナルド・スバラリア)

  

バルバラ・レニー、コチラ20150327日/20180621

レオナルド・スバラリア、コチラ20170313日/20241031

アイタナ・サンチェス=ヒホン、コチラ20241217

ビクトリア・ルエンゴコチラ20260604

 

★批評家の評価は、90%が概ねポジティブで、5点満点で平均4.2点です。「魅力的だが感動的ではない」、「『ペイン・アンド・グローリー』より不快だがより正直な作品」、「栄光より痛みが多い」、監督自身も述懐しているように、自身に対して「容赦ない正直さ」または「残酷な誠実さの自画像」を評価している。一方には『ペイン・アンド・グローリー』のようにうまく機能してないと嘆く評者もいます。かつて『抱擁のかけら』を「褒めるところがゼロ」と書いて大喧嘩したエル・パイスのカルロス・ボジェロは「またしても感情の嵐が作り物のように見えるデザインの展示」とけんもほろろです。

 

            

                    (バルバラ・レニーとビクトリア・ルエンゴ)  

 

      

                                       (バルバラ・レニーとミレナ・スミット)

 

       

  (レオナルド・スバラリアとキム・グティエレス)

 

   

          (ニエベス・アルバレスとロッシ・デ・パルマ、レッドカーペット)


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