セクション・オフィシアル(イベロアメリカ映画)*マラガ映画祭2025 ⑤ ― 2025年03月23日 21:20
チリのビンコ・トミシックの「El ladrón de perros」が金のビスナガ受賞
★作品紹介が終わらないうちに受賞作が発表になってしまいました。作品賞「金のビスナガ」は、イベロアメリカ映画賞がビンコ・トミシックの単独監督デビュー作「El ladrón de perros」、スペイン映画賞はエバ・リベルタードの「Sorda」、本作は観客賞もゲットしました。他、ベレン・フネスの「Los tortuga」が銀のビスナガ審査員特別賞と脚本賞、ヘラルド・オムスの「Molt lluny」が銀のビスナガ批評家審査員特別賞を受賞しました。全受賞作は授賞式を含めて後日アップ予定。
*セクション・オフィシアル(イベロアメリカ映画)*
1)「Culpable cero」アルゼンチン=スペイン、2024年、110分、コメディドラマ
監督:ヴァレリア・ベルトゥチェリ(ブエノスアイレスのサンニコラス1969、長編2作目)、舞台女優としてスタートを切る。TVや映画に出演、2018年「La reina del miedo」で監督デビュー、サンダンス映画祭女優賞を受賞する。モラ・エリサルデ(デビュー作)、ブエノスアイレス大学で映像&音響デザインを専攻卒業する。2012年広告編集者としてキャリアを切り、TVシリーズの編集(「Morko y Mali」)やビデオクリップを制作する。2018年、宣伝広告と並行して映画プロジェクトの監督や脚本も手掛けている。
*ベルトゥチェリ監督キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2018年04月10日
脚本:ヴァレリア・ベルトゥチェリ、モラ・エリサルデ、マレナ・ピチョト
製作:Pampa Films / Gloriamundi Producciones
キャスト:ヴァレリア・ベルトゥチェリ(ベルタ・ミュラー)、セシリア・ロス(カローラ)、ユスティナ・ブストス(マルタ)、ガイア・ガリバルディ(オリビア)、マルティン・ガラバル(ラミロ)、メイ・スカポラ(グレース)、マラ・ベステッリ(サンドラ)、ルシア・マシエル(グアダ)他

(左からヴァレリア・ベルトゥチェリ、モラ・エリサルデ、2025年03月18日)

2)「El diablo en el camino」メキシコ=フランス、2024年、108分
監督・脚本:カルロス・アルメリャ(メキシコシティ、長編3作目)、イギリスの映画学校(CCC)とロンドン映画学校で学ぶ。短編「Tierra y pan」がベネチア映画祭2008短編部門の金獅子賞を受賞、そのほか受賞歴多数。ドキュメンタリー「Toro negro」は共同監督だが、サンセバスチャン映画祭2005でオリソンテス賞、ハバナ映画祭サンゴ賞を受賞、モレリア映画祭でも上映された。長編デビュー作「En la estancia」(15)はロッテルダム映画祭でプレミアされ、グラマドやサンディエゴなど国際映画祭で受賞している。2作目「Animo juventud !」(20)はモレリアFF、釜山青少年映画祭にノミネートされた。TVシリーズ多数。
製作:CIMA / B Positivo Producciones / Tita B Producciones / Zensky Cine /The42Films 他
キャスト:ルイス・アルベルティ(フアン)、マイラ・バタジャ(イサベル)、アケツァリー・ベラステギ Aketzaly Verastegui、リカルド・ウスカンガ、オスワルド・サンチェス、ロベルト・オロペサ、他


3)「El ladrón de perros / The Dog Thief」ボリビア=チリ=メキシコ=仏=伊、2024年、
90分、トライベッカ映画祭2024上映
監督・脚本:ビンコ・トミシック・サリナス(サンティアゴ・デ・チリ1987、長編単独デビュー作)、監督、脚本家、製作者。2014年、制作会社 Calamar Cine を設立。フランシスコ・エビアとの共同監督作品「El fumigador」(16)が、PÖFFタリン・ブラックナイツでプレミア上映され、SANFIC 2016 でナショナルフィルム賞を受賞した。カンヌ映画祭シネフォンダシオンとベネチア・ビエンナーレ・カレッジ・シネマ・プログラムで企画された。マラガ映画祭2025イベロアメリカ映画賞金のビスナガ受賞。
製作:Color Monster / Zafiro Cinema / Calamar Cine
キャスト:アルフレッド・カストロ(セニョール・ノボア)、フランクリン・アロ(マルティン)、テレサ・ルイス(セニョリータ・アンドレア)、マリア・ルケ(グラディス)、フリオ・セサル・アルタミラノ(ソンブラス)、ニノン・ダバロス(セニョーラ・アンブロシア)


4)「Nunca fui a Disney」アルゼンチン、2024年、74分
監督:マティルデ・トゥテ・ヴィサニ(ブエノスアイレス1989、デビュー作)、ブエノスアイレス大学の映像&音響デザイナーとしての学位を得る。監督、脚本家、フィルム編集者。2017年「Rosa」で短編デビュー、長編第1作である「Nunca fui a Disney」は第25回BAFICI(ブエノスアイレス国際インディペンデントFF)で監督賞を受賞している。第2作の準備中。
脚本:マティルデ・トゥテ・ヴィサニ、アグスティナ・マルケス・メルリン
キャスト:ルシア・マルティネス・ラグ(ルシア)、アレハンドラ・ボルヘス、アルマ・フロレス、フランシスコ・アンテロ、ヘレミアス・サラテ、ルシアナ・ロメロ、ヤミラ・アスクアガ


5)「Perros」ウルグアイ=アルゼンチン、2025年、102分
監督・脚本:ヘラルド・ミヌッティ(デビュー作)、社会コミュニケーションを専攻、10年間ジャーナリストだった。2013年ウルグアイ文化教育省の奨学金を得て映画を学んでいる。短編「Hogar」(18)は、ビアリッツ・ラテンアメリカ映画祭で審査員特別メンションを受賞、グアダラハラ映画祭コンペティション部門にノミネートされている。長編デビュー作は、
製作:Cinevinay / Cimarrón(The Mediapro Studio)
キャスト:ネストル・グツィーニ、マルセロ・スビオット、マリア・エレナ・ぺレス、ノエリア・カンポ、ロベルト・スアレス、カタリナ・アリジャガ、マヌエル・タテ、ソレダード・ペラヨ


6)「Sugar Island」ドミニカ共和国=スペイン、2024年、90分、ドキュメンタリー
テッサロニキ映画祭2024 WIFT 賞、ベネチア映画祭ヤング審査員賞ほか受賞、
マラガ映画祭2025銀のビスナガ撮影賞(アルバン・プラド)受賞
監督:ジョアンヌ(ヨハンヌ)・ゴメス・テレロ(ドミニカ共和国1985、ドキュメンタリー3作目)、ドキュメンタリー監督、脚本家、製作者、キューバの国際映画テレビ学校 EICTV の講座のコーディネーター。カタルーニャ映画視聴覚上級学校ESCACで映画配給修士課程卒業。短編ドキュメンタリー「Bajo las carpas」(14、52分)で監督デビュー、2016年「Caribbean Fantasy」を発表している。
脚本:ジョアンヌ・ゴメス・テレロ、マリア・アベニア
製作:Tinglado Film / Guasábara Cine
キャスト:イェリダ・ディアス Yelida Diaz、フランシス・クルス、フアン・マリア・アルモンテ、ルス・エメテリオ、ヘネシス・ピニェイロ、ディオゲネス・メディナ


7)「Violentas mariposas」メキシコ、2024年、101分、モレリア映画祭2024、
メキシコ公開2024年10月
監督・脚本:アドルフォ・ダビラ(長編デビュー作)、監督、脚本家、製作者、メキシコシティのメトロポリタン自治大学 UAM でデザインを専攻した後、フルブライト奨学金を得て、ワシントンのアメリカン大学で映画を学び、ニューメキシコのサンタフェにある人類学フィルムセンターでも学んでいるなど多才。広告映画、ドキュメンタリー、ミュージックビデオ、短編5作を撮っており、現在長編2作目が進行中。
製作:Neural / Mandarina Cine
キャスト:ディアナ・ラウラ DI(エバ)、アレハンドロ・ポーター(ビクトル)、ノルマ・パブロ(テレ)、ソフィー・アレクサンダー・カッツ(ロラ)、ジェルマン・ブラッコ(マテオ)、レオナルド・アロンソ(ラウル)、フアン・ルイス・メディナ(ムニェコ)、ヤヨ・ビジェガス(レオン)、他


第11回イベロアメリカ・プラチナ賞2024*結果発表 ― 2024年05月03日 17:56
作品賞を含めて6カテゴリーを制したバヨナの『雪山の絆』

★4月20日、メキシコのリビエラ・マヤのシカレ公園内にあるエルグラン・トラチコ劇場で第11回イベロアメリカ・プラチナ賞の授賞式がありました。本賞については2019年の第6回以降ノミネーションも結果発表も、金太郎飴の結果にうんざりして記事にしませんでした。今回アップするのは、一つにはフアン・アントニオ・バヨナの『雪山の絆』がフィクション部門の作品賞以下6カテゴリーを独占したこと、23カテゴリーのうち16部門をスペイン作品が制するというラテンアメリカ諸国の不振、これではイベロアメリカ映画賞の名が泣くばかりです。さらに昨年12月23日アルゼンチン大統領となったハビエル・ミレイの映画産業を脅かす言動が話題にのぼったこともあってアップすることにしました。
★『雪山の絆』で6冠(作品・監督・撮影・編集・録音・男優賞)を制したフアン・アントニオ・バヨナは、昨今のアルゼンチンにおけるミレイ大統領の文化軽視に警鐘を鳴らした。監督賞受賞の舞台で映画は「表現の道具」として守る必要性があるとスピーチした。私が「本日この舞台に立っているのは両親のお蔭です。両親は学んだり仕事を選んだりする自由を持ちませんでした。父親は15歳から、母親は9歳から働き始めました。しかし彼らにとって子供たちの教育や教養は最も重要な課題だったのです」と語った。バルセロナのトリニダード・ビエハの貧しい家庭で育ったことは、スペイン版ウイキペディアにも載っていますが、このようなハレ舞台で話すのは初めてではないでしょうか。彼の謙虚さ常識にとらわれない斬新な発想の源は、この両親のお蔭と思わずにはいられない素晴らしいスピーチでした。

(勢揃いしたトロフィー6個の『雪山の絆』クルー、
左からアンドレス・ジル、オリオル・タラゴ、監督、エンツォ・ヴォグリンチッチ、
アルゼンチンの俳優フェリペ・ゴンサレスとフアン・カルソ)
*第11回イベロアメリカ・プラチナ賞2024受賞結果*
*映画部門*
◎作品賞(フィクション)
「La sociedad de la nieve」(『雪山の絆』)スペイン&アルゼンチン、
監督フアン・アントニオ・バヨナ


(出演者に囲まれた監督、左フアン・カルソ、右フェリペ・ゴンサレス)
◎コメディ賞(フィクション)
「Bajo terapia」スペイン、監督ヘラルド・エレーロ
*「映画の質は俳優たちと無関係ではない、彼らと一緒に仕事ができて満足している」と出演者を称賛した。

◎オペラ・プリマ賞
「20,000 especies de abejas」(『ミツバチと私』)スペイン、
監督エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン
*『雪山の絆』に次ぐ4冠で、監督は「多様性」が認められたことを称揚した。製作者のバレリー・デルピエールは「デビュー作として撮るのは冒険だったが、この映画をご覧になれば私たちの現実を見つけることができます。結局、映画は現実の扉なのです」とスピーチした。
*このカテゴリーは、アルゼンチンの「Blondi」、プエルトリコの「La pecera」、チリの「Los colonos」(『開拓者たち』)、ベネズエラの「Simón」、コスタリカの「Tengo sueños eléctricos」と、まんべんなくノミネートされたがスペイン映画が受賞した。当ブログではすべての作品を紹介しています。

(スピーチする製作者のバレリー・デルピエール)
◎ドキュメンタリー賞
「La memoria infinita」 チリ、監督マイテ・アルベルディ


◎アニメーション賞(フィクション)
「Robot Dreams」(『ロボット・ドリームズ』)スペイン&フランス、
監督パブロ・ベルヘル

◎監督賞
フアン・アントニオ・バヨナ 『雪山の絆』
*原作なしに本作は存在しなかったこと、アンデスの事故で生還した人々、生還できなかった人々やその家族に感謝の言葉を述べた。壇上に上がるまえに出演者たちと抱き合って共に喜び合っていた姿が印象的でした。

◎脚本賞
エスティバリス・ウレソラ 『ミツバチと私』

◎撮影賞
ペドロ・ルケ 『雪山の絆』
*受賞者欠席のため代理でフアン・アントニオ・バヨナ監督が登壇して、受賞者のメッセージを読み上げた。
◎オリジナル音楽賞
アルフォンソ・デ・ビラリョンガ 『ロボット・ドリームズ』

◎編集賞
アンドレス・ジル&ジャウマ・マルティ 『雪山の絆』

(アンドレス・ジルが登壇した)
◎美術賞
ロドリゴ・バサエス 「El conde」(『伯爵』) 監督パブロ・ラライン


◎録音賞
オリオル・タラゴ、ホルヘ・アドラドス、マルク・オルツ 『雪山の絆』

(オリオル・タラゴが登壇した)
◎女優賞
ライア・コスタ 「Un amor」(『ひとつの愛』)スペイン、監督イサベル・コイシェ
*受賞を予期していなかったのか欠席、本作での受賞は初かもしてない。友人のカロリナ・ジュステが代理で受けとった。彼女はダビ・トゥルエバの新作「Saben aquell」でノミネートされていた。

(代理のカロリナ・ジュステ)
◎男優賞
エンツォ・ヴォグリンチッチ 『雪山の絆』
*「チャンスに恵まれないウルグアイから来て、この幸運に感謝したい。誰でも人生を変えるチャンスが与えられる」と。ずっと受賞を取り逃がしていたから喜びも一入身にしみた受賞者でした。何しろ体重を半分くらいに落としたのでした。


◎助演女優賞
アネ・ガバライン 『ミツバチと私』
*受賞者欠席で、製作者と監督が登壇した。

(アネ・ガバラインのスマホのメッセージを読み上げるウレソラ監督)
◎助演男優賞
ホセ・コロナド 『瞳をとじて』スペイン、監督ビクトル・エリセ
*マドリードで撮影中の受賞者は欠席で、製作者の一人が代理で受けとった。


(ホセ・コロナド、フレームから)
◎価値ある映画と教育賞
『ミツバチと私』
*TVシリーズ*
◎作品賞
「Barrabrava」(8話『バーラブラバ~ギャングたちの熱狂』)アルゼンチン、ウルグアイ
創案者ヘスス・ブラセラス
*エグゼクティブプロデューサーのサンティアゴ・ロペスが登壇した。「受賞するとは思わなかったのでスピーチを用意していなかった。キャスト陣、スタッフたち感謝したい」とスピーチした。プライムビデオ配信が2023年6月23日に開始されている。

(サンティアゴ・ロペス)

◎創案者賞
ダニエル・ブルマン 「Iosi, el espía arrepentido」
(『悔い改めたスパイ』シーズン2、8話)アルゼンチン
*二重スパイのイオシ・ぺレスの物語、プライムビデオ配信2023年10月27日。受賞者は『僕と未来とブエノスアイレス』の監督、脚本家、製作者。1994年のアルゼンチン・イスラエル相互協会ビル爆破事件を背景にしている。『安らかに眠れ』のセバスティアン・ボレンステインも監督の一人として参加している。


◎女優賞
ロラ・ドゥエニャス 「La Mesías」スペイン 創案者ロス・ハビス
*連戦連勝の受賞者です。


◎男優賞
アルフレッド・カストロ 「Los mil días de Allende」(全4話)
チリ、スペイン、アルゼンチン、監督ニコラス・アクーニャ
*チリ70年代、サルバドール・アジェンデ大統領(1970~73)を体現した演技で受賞した。残念ながら欠席、トロフィーは代理が受けとり、受賞者のスピーチ「20世紀のもっとも重要な政治家にして思想家アジェンデを演じることができたのは望外の喜びでした」をスマホで読み上げた。

(受賞者のメッセージを読み上げる)

◎助演女優賞
カルメン・マチ 「La Mesías」
◎助演男優賞
アンディ・チャンゴ 「El amor después del amor」(全8話)アルゼンチン、米国
創案者フアン・パブロ・コロジエ
*アルゼンチンのシンボリックなロックスター、フィト・パエスの人生を辿るドラマ、受賞者はチャーリー・ガルシアを演じた。Netflix配信の可能性あり。

(アルゼンチンでは「文化が抹殺されている」とスピーチした)
◎栄誉賞
セシリア・ロス
★プレゼンターのエンリケ・セレソからトロフィーを受けとり「私たちの映画に注意を払わねばなりません。何故なら常に危険にさらされていますから。イベロアメリカ共同体は一つになり、ある国に問題が生じれば助け合わなければなりません」とスピーチした。1956年ブエノスアイレス生れ、アルモドバルのミューズの一人、アルゼンチンとスペインの国籍を持つ女優。
*キャリア&フィルモグラフィーの主な紹介記事は、


(エンリケ・セレソからトフィーを受け取る受賞者)
続セクション・オフィシアル・ノミネート*マラガ映画祭2024 ④ ― 2024年03月04日 14:22
★ラテンアメリカ諸国の作品はアルゼンチン、ウルグアイ、メキシコ、コロンビア、キューバ、ブラジルなどがノミネートされました。
12)La mujer salvaje
データ:キューバ、2023年、監督・脚本アラン・ゴンサレス(キューバ、デビュー作)、共同脚本ヌリ・ドゥアルテ、93分
キャスト:ロラ・アモレス、ジャン・マルコス・フラガ・ピエドラ、イソラ・モラレス、
グリセル・モンソン、ヤイテ・ルイス、レアンドロ・セン、ホルヘ・ぺルゴリア、ほか多数


13)Lluvia
データ:メキシコ、2023年、監督ロドリゴ・ガルシア・サイス(デビュー作)、脚本パウラ・マリコヴィッチ、95分
キャスト:ブルノ・ビチル、アルセリア・ラミレス、マウリシオ・アイザック、マルタ・クラウディア・モレノ、マユコ・ニヘイ、エステバン・カイセド、クリスチャン・フェレル、ほか多数


14)Descansar en paz(Rest in Peace)
データ:アルゼンチン、2024年、監督セバスティアン・ボレンステイン、脚本マルコス・オソリオ・ビダル、セバスティアン・ボレンステイン、105分、Netflix 3月27日配信、邦題『安らかに眠れ』
キャスト:ホアキン・フリエル、グリセルダ・シチリアニ、ガブリエル・ゴイティ、ラリ・ゴンサレス
*紹介作品多数、作品紹介予定作品


15) Golán
データ:コロンビア、2024年、監督・脚本オルランド・クルサト(デビュー作)、99分
キャスト:ハコボ・ベラ、マルセラ・アグデロ、ハイメ・カスターニョ、ラウラ・シェル


16) Los terrenos
データ:アルゼンチン、ウルグアイ、ブラジル、2023年、監督・脚本ベロニカ・チェン(アルゼンチン、6作目)、108分
キャスト:アスル・フェルナンデス、セサル・トロンコソ、ビクトリア・オレリャナ・ムニョス、レオン・チェン、マリア・ウセド、フェデリコ・リス、ほか多数


17) Naufragios
データ:アルゼンチン、ウルグアイ、2024年、監督・脚本ヴァニナ・スパタロ(アルゼンチン、デビュー作)、共同脚本ダニエル・ガルシア・モルト、90分
キャスト:アルフォンソ・トルト、ソフィア・パロミノ、マイアマル・アブロドス、ラウタロ・ベットニ、ロミナ・ペルッホ、マテオ・チアリノ


18) Radical
データ:メキシコ、2024年、監督・脚本クリストファー・ザラ(ケニア、現グアテマラ在住、3作目)、127分
キャスト:エウヘニオ・デルベス、ダニエル・ハダッド、ジェニファー・トレホ、ミア・フェルナンダ・ソリス、ダニロ・グアルディオラ
*作品紹介を予定しています。


19) Yana-Wara
データ:ペルー、2023年、監督ティト・カタコラ(ペルー、デビュー作)、監督脚本オスカル・カタコラ(ペルー、先住民アイマラ、遺作)、104分
キャスト:ルス・ディアナ・ママニ、セシリオ・キスペ、フアン・チョケウワンカ、イルマ・D・ペルッカ、ホセ・D・カリサワ、フランシスコ・F・トレス、アリピオ・パウロ、フェリックス・R・ティケ、イラリア・カタコラ、他多数


★以上19作がセクション・オフィシアルにノミネートされました。話題作をアップしていきます。
フォト集 ②*サンセバスチャン映画祭2022 ㉓ ― 2022年10月02日 14:20
ラテンアメリカ諸国から現地入りしたシネアストたち
★フォト集②はラテンアメリカからやってきたシネアストたちの特集。多分新型コロナウイルス以前より多かったのではないでしょうか。セクション・オフィシアルのセバスティアン・レリオ(チリ)、ペルラス部門のサンティアゴ・ミトレ(アルゼンチン)やアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(メキシコ)、ホライズンズ・ラティノ部門のアンドレス・ラミレス・プリド(コロンビア)、キューバのパベル・ジルーとカルロス・レチュガ、マリアノ・ビアシン(アルゼンチン)、ナタリア・ベリスタイン(メキシコ)、ほか多くが現地入りしました。
◎サイコスリラー「The Wonder」(英語)がセクション・オフィシアルにノミネートされたセバスティアン・レリオは、主役の少女アンナ・オドネルを演じたキラ・ロード・キャシディほかと現地入り、少女はすっかり背丈が伸びてしいました。

(監督とキラ・ロード・キャシディ、フォトコール)

(セバスティアン・レリオ監督とキラ・ロード・キャシディ、9月22日フォトコール)
◎ペルラス部門上映のサンティアゴ・ミトレの「Argentina、1986」の一行は、監督以下主演のリカルドダリン、ピーター・ランサニ、製作者の一人チノ・ダリン、ほか大勢で現地入りしました。ベネチア映画祭では金獅子賞は逃したが、FIPRESCI賞、カトリックメディア協議会(SIGNIS)賞オナラブル・メンションを受賞していた。SSIFFではサンセバスティアン市観客賞を受賞、Gala RTVE部門のセスク・ゲイのアクション・コメディ「Histirias para no contar」に出演、EUSKO LABEL賞を受賞して未だ滞在していたチノ・ダリンが受け取った。

(サンティアゴ・ミトレ監督)

(リカルドダリンとピーター・ランサニ)

(やはり人気の高いチノ・ダリン)
◎メキシコのアレハンドロ・G・イニャリトゥの「Bardo, Falsa cronica de una cuantas verdades」(『バルド、偽りの記録と一握りの真実』で東京国際映画祭上映)の一行は、監督以下主演のダニエル・ヒメネス=カチョ、グリセルダ・シチリアーニ、アンドレス・アルメイダが参加しました。
*『バルド、偽りの記録と一握りの真実』の作品紹介は、コチラ⇒2022年09月08日


(左から、グリセルダ・シチリアーニ、監督、ダニエル・ヒメネス=カチョ
アンドレス・アルメイダ)
◎ホライズンズ・ラティノHL部門にノミネートされた「Un Varón」のファビアン・エルナンデス(コロンビア)は、製作者のマヌエル・ルイス・モンテアレグレほかと現地入りしました。

(ファビアン・エルナンデス監督)

(マヌエル・ルイス・モンテアレグレと監督、9月23日プレス会見)
◎HL部門のマリアノ・ビアシンの「Sublime」(アルゼンチン)のクルーも、監督ほか主役のマルティン・ミラー、エグゼクティブプロデューサーのフアン・パブロ・ミラーが参加しました。マルティン・ミラーは製作者の息子のようです。開催前から第10回セバスティアン・ラティノ賞の受賞が決まっていました。

(マリアノ・ビアシン監督)

(左から、製作者フアン・パブロ・ミラー、監督、マルティン・ミラー、9月21日)

(マルティン・ミラー 、9月22日のプレス会見)
◎HL部門のアナ・クリスティナ・バラガンの「La piel pulpo」(エクアドル)のクルーは、監督と女性スタッフの参加でした。

(アナ・クリスティナ・バラガン監督)

(アナ・クリスティナ・バラガン監督、9月23日プレス会見)
◎HL部門のアンドレス・ラミネス・プリドの「La jauria」(『ラ・ハウリア』で東京国際映画祭上映)には、監督と主役のジョジャン・エスティベン・ヒメネスの二人が現地入りした。何らかの賞に絡むと予想しましたが外れました。今年は勝率15%?です。
*『ラ・ハウリア』の作品紹介は、コチラ⇒2022年08月25日

(アンドレス・ラミレス・プリドとジョジャン・エスティベン・ヒメネス、9月23日)
◎HL部門ノミネートの「El caso Padilla」(キューバ)は、パベル・ジルー監督が9月18日に現地入り、翌日上映後プレス会見に臨んだ。

(パベル・ジルー監督)

(パベル・ジルー、9月19日)
◎HL部門ノミネートの:「Vicenta B.」(キューバ)は、カルロス・レチュガ監督、ビセンタ・ブラボ役のリネット・エルナンデス・バルデスが参加、レチュガ監督は在住しているバルセロナからの参加。

(カルロス・レチュガ監督、リネット・エルナンデス・バルデス)

(9月18日、満員の会場で)
◎HL部門ノミネート、スペイン協同賞受賞の「Ruido / Noise」(メキシコ)は、ナタリア・ベリスタイン監督、本作の主役を演じた実母フリエタ・エグロラ、製作者のカルラ・モレノ、マリア・ホセ・コルドバが現地入り、ガラでは製作者の二人が登壇した。

(宿泊ホテルのマリア・クリスティナで寛ぐ監督と女優フリエタ・エグロラ、9月19日)
◎HL部門ノミネート、期待していたマヌエラ・マルテッリの「1976」は、監督ほかが参加、本作は第35回東京国際映画祭コンペティション部門に正式出品されます。
*作品紹介は、コチラ⇒2022年09月13日

(マヌエラ・マルテッリ監督、9月22日)
◎HL部門にノミネートされたコスタリカ映画がオリソンテス賞を受賞した。監督バレンティナ・モーレルの「Tengo sueños eléctricos」はデビュー作。

(バレンティナ・モーレル監督、9月20日)
◎ニューディレクターズ部門ニカラグア映画の「La hija de todas las rabias」には、ラウラ・バウマイスター監督が参加。

(ラウラ・バウマイスター監督、9月18日)
ニューディレクターズ部門13作*サンセバスチャン映画祭2022 ⑩ ― 2022年08月29日 15:59
日本の若手監督も含めて一挙に発表になった13作

★去る7月28日、ニューディレクターズ部門13作が出揃いました。昨年ノミネートされなかった日本からは2作が選ばれました。古川原壮志の『なぎさ』(21)、第34回東京国際映画祭ワールド・プレミア作品です。もう1作の『宮松と山下』は、佐藤雅彦、関友太郎、平瀬謙太郎の監督集団〈5月ごがつ〉のデビュー作、現在窮地に陥っている香川照之が主演しており、11月18日の公開に先駆けて、本祭でワールドプレミアとなった。
★昨年のWIP Latam 2021と WIP Europa 2021 の受賞作が揃ってノミネートされています。このセクションはデビュー作か2作までが対象、後援者のクチャバンクによるクチャバンク・ニューディレクター賞(作品賞)には副賞として50,000ユーロとスペイン国内での公開が約束されています。他にユースTCM賞があり、18歳から25歳までの学生150人が審査員です。スペイン語映画は、オール女性監督のスペイン2作と当ブログ初登場のニカラグア1作、他はフランス、モルドバ共、デンマーク、スイス、クロアチア、ロシア、韓国、インド、日本の2作です。スペイン語映画3作だけアップしておきます。
*ニューディレクターズ部門13作*
1)「La hija de todas las rabias / Daughter of Rage」ニカラグア
VIII Foro de Coproduccion Europa-America Latina 2019
WIP Latam 2021 WIP Latam Industria 2021
データ:製作国ニカラグア=メキシコ=オランダ=独=仏=ノルウェー=西、2022年、スペイン語、ドラマ、87分、脚本ラウラ・バうマイスター、撮影テレサ・クンKuhn、編集ラウル・バレラス、フリアン・サルミエント、プロダクション・マネージメント、ハビエル・ベラスケス・ドランテス、録音ガリレオ・ガラス、美術ノエミ・ゴンサレス、製作Felipa Films、製作者ロッサナ・バウマイスター、ブルナ・Haddad、マルタ・オロスコ。サンセバスチャン映画祭の援助を受けて製作され、上記のWIP Latam 2021以下を受賞している。

監督:ラウラ・バウマイスター(Baumeisterニカラグアの首都マナグア1983)、監督、脚本家。デビュー作、本作はゴミ捨て場で一人で生き延びようとする11歳の少女の物語。

(受賞スピーチをする監督、サンセバスチャン映画祭2021の授賞式)
キャスト:アラ・アレハンドラ・メダル(マリア)、ビルヒニア・セビーリャ・ガルシア(母親リリベス)、カルロス・グティエレス(タデオ)、ノエ・エルナンデス(ラウル)、ディアナ・セダノ(ロサ)
ストーリー:現在のニカラグア、11歳のマリアは母親リリベスと一緒にマナグアの大きなゴミ捨て場で暮らしている。マリアにとってここは、見つけたものは自分のものになるアミューズメントパークのようなものでした。彼女の将来は、母親が販売するために育てている血統書付きの子犬にかかっていた。子犬に毒を盛るというアクシデントが起こり、リサイクル工場で見習いで働いていたマリアをおいて、母親は町を出ることになる。数日すぎても母親は戻ってこなかった。マリアは捨てられたと思いたくないが、混乱して腹を立てていた。ある夜のこと彼女はタデオと知り合った。上品で夢見がちな少年は、母親と共にマリアを助けようと決心する。「多くのラテンアメリカの人々が自身の国の厳しい現実のなかでも前進しようとする回復力についての映画」と監督。


(マリア役アラ・アレハンドラ・メダル)
2)「Secaderos / Tobacco Barns」スペイン
データ:製作国スペイン=米国、2022年、スペイン語、ドラマ、98分、脚本アナ・アリステギ、美術ロレナ・フェルナンデス、ヌリア・ディアス・イバニェス、メラニア・バン、造形マリア・ルイサ、キャスティングはマリチュ・サンス、録音ホアキン・パチョン、メイク&ヘアーはネレア・エレーロ、製作 & 製作者Fourminds Films / La Claqueta PC(オルモ・フィゲレド・ゴンサレス=ケベド)/ La Cruda Realidad/ Un Capricho de Producciones /(米)Amplitud INC / DDT Efectos Especiales、、パオラ・サインス・デ・バランダ、撮影2021年8~9月の6週間、撮影地グラナダ県のベガ、ラス・ガビアス、フエンテ・バケロス、ラ・パスほか十数ヵ所。

監督:ロシオ・メサ(グラナダ県ラス・ガビアス1983)、監督、製作者、長編第2作目。セビーリャ大学コミュニケーション学部ジャーナリズム科卒、その後2010年アンダルシア政府から奨学金を授与され、ニューヨーク・フィルム・アカデミーのドキュメンタリー監督の修士号を取得、デビュー作「Orensanz」(13)は、現代アーティストのアンヘル・オレンサンスのビオピック、セビーリャ・ヨーロッパ映画祭プレミアされた。製作者としてはドキュメンタリーを専門とする制作会社 My Deer Films を設立、アルバロ・ゲレアの「Alma anciana」(21)はベルリン映画祭フォーラム部門で上映された。2014年ロサンゼルスに拠点を置く LA OLA を仲間と設立し代表を務めている。ロス以外のニューヨーク、メキシコシティなどの都市でスペインの前衛映画の普及に推進している。カリフォルニア在住、第2作を撮るため帰郷した。

(「Secaderos」撮影中のロシオ・メサ、2021年9月)
★第2作は、製作チームの90パーセントがアンダルシア人、スタッフは勿論のこと、約2000人がオーディションに集まり、150人に絞り込むまで1ヵ月を要したという。根気よくキャスティングに臨んでくれたマリチェ・サンスに感謝している。地元のアマチュアを起用したことで、物語がよりリアルになっている。スタッフ以外にもフリーランスのマリエタ・バウティスタ、アルバ・サビオなどの協力を得た。また映画を作る別の方法があることを教えてくれた映像作家として、『顔たち、ところどころ』を89歳で撮り、カンヌ以降、映画祭の受賞行脚をしたアニエス・ヴァルダ、ルクレシア・マルテル(『サマ』)、イタリアのアリーチェ・ロルヴァケル(『夏をゆく人々』『幸福なラザロ』)、メルセデス・アルバレスなどのドキュメンタリー作家、フィクションとノンフィクションの垣根を越えて製作している女性監督をあげている。

(主役の2人と中央が監督)
キャスト:ベラ・センテネラ(少女)、アダ・マル・ルピアニェス(思春期の娘)、タマラ・アリアス、クリスティナ・エウヘニア・セグラ・モリーナ、ホセ・サエス・コネヘロ、ジェニファー・イバニェス、ほか地元住民のエキストラ多数
ストーリー:田園の小さな村は、都会に住んでいる少女には天国であり、農村で暮らす思春期にある娘には鳥籠である。二人の視点を通して、農村の内部に入り込む。魔術的リアリズムのニュアンスを帯びた夏のタバコの乾燥工場を舞台に、二つのストーリーがパラレルに描かれる。ベガ・デ・グラナダの人々への個人的な敬意と風景に捧げられた人間関係についての群像劇。最初はドキュメンタリーとして構想されたが最終的にはドラマになった。ただし監督は、フィクションとノンフィクションを区別していない。すべては創造であるからです。



(フレームから)
「A los libros y a las mujeres canto / To Books And Women I Sing」スペイン
データ:製作国スペイン、2022年、スペイン語・イタリア語、ドキュメンタリー、72分、脚本・撮影・編集・録音マリア・エロルサ & サンティ・サルバドール、製作 & 製作者 Txintxua Films コルド・アルマンドス、マリアン・フェルナンデス、撮影地ギプスコア県、ユースTCM 賞対象作品、マラガ映画祭、ビルバオ・ドキュメンタリー & 短編FFに出品、Zinebi 63 の産業セクションのネットワーキング賞を受賞。

監督:マリア・エロルサ(ビトリア-ガステイス1988)監督、脚本家。長編デビュー作。短編デビュー作はイマノル・ウリベ以下、バスクの監督オール参加15人からなる短編集「Kalebegiak」(16)、エロルサはマイデル・フェルナンデス・イリアルテと共同で「Las chicas de Pasaik」を撮った。他に短編ドキュメンタリー「Our Walls」(16)をマイデル・フェルナンデス・イリアルテと「Ancora Lucciole」(19)、コルド・アルマンドスと共同でドラマ「Breaches」(20)などを監督している。
★長編デビュー作は失われた珍しい、または忘れられた本を守っている年配の女性たちの物語。監督によると、この風変わりなタイトル〈私が謳う本と女性たち〉は紀元前1世紀のローマの詩人ウェルギリウス最後の未完の叙事詩『アエネーイス』の冒頭の1節「私が謳う武器と人間」から採られたそうです。ドキュメンタリーとしては珍しく愛らしいユーモラスな視点で描き、アーカイブ資料と女性たちの証言を組み合わせたユニークな構成。文学、映画、またイメージが私たちの生活にどのように役立つか、私たちをより自由にするかを語り、日常生活における想像力の重要性をエリート主義でない方法で伝えるには、どうしたらよいかを自問している。
*監督キャリア&フィルモグラフィー紹介記事は、コチラ⇒2016年08月19日


(タバコを吸っているタバコ労働者の壁画の前のエロルサ)
キャスト:アントニア・デイアス(トニーナ)、ロレト・カサド(ロレト)、ヴィキ・クララムント(ヴィキ)、ヴァルトラウト・キルステ(ヴァル)、アン(ネ)・エロルサ(アンネ/アン)
ストーリー:ある女性はほとんど小型飛行機という名で知られています。別の女性は車の後部座席を書庫にしています。更に別の女性は書店の手に負えない書棚で指を骨折してしまいます。ハマキ工場で働く女性たちは物語を聞きながら作業しています。アイロン職人はアイロンをかけながら詩を思い出しています。彼女たち全員に、私は謳います。火、水、蛾、埃り、無知、熱狂に立ち向かい、匿名の女性軍団が本の保存を守っています。それは叙事詩も革命も武器もない、内に秘めたレジスタンスです。書籍保存に尽力する平凡で非暴力の女性たちへのオマージュ。アーカイブ資料と女性たちの証言で構成されている。


(指を骨折したと小指を見せる女性、フレームから)
★セクション・オフィシアルとは反対に奇しくもオール女性監督になったが、昨今のイベロアメリカ諸国の女性の台頭は目ざましい。発想の斬新さ、女性同士の団結力は見倣うべきものがある。ドノスティア栄誉賞受賞者、ジュリエット・ビノシュ、ダヴィッド・クローネンバーグの紹介、ペルラス部門ノミネートのサンティアゴ・ミトレの「Argentina、1985」、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの「Bardo, Falsa, crónica de unas cuantas verdades」、その他ロドリゴ・ソロゴジェン、イサキ・ラクエスタ、今回が監督デビューのフアン・ディエゴ・ボット(ペネロペ・クルス主演)、オリオル・パウロなどの新作紹介が残っています。
ホライズンズ・ラティノ部門10作が発表*サンセバスチャン映画祭2021 ⑨ ― 2021年08月08日 15:04
ラテンアメリカ諸国からデビュー作3作を含む10作が一挙に発表

★8月4日、ホライズンズ・ラティノ部門のノミネーション10作が発表になりました。このセクションはブラジルを含むラテンアメリカ諸国のスペイン語・ポルトガル語映画に特化しています。翌日にはペルラス(パールズ)部門15作、日本からは先ほど閉幕したカンヌ映画祭の脚本賞を受賞した濱口竜介の『ドライブ・マイ・カー』が特別上映されるほか、コンペ部分にもベルリン映画祭で銀熊審査員グランプリを受賞した『偶然と想像』がノミネートされています。それはさておき、今回はホライズンズ・ラティノ部門のご紹介、ラテンアメリカに初めて金獅子をもたらしたベネズエラのロレンソ・ビガスやベルリン映画祭パノラマ部門でデビュー作が初監督作品賞を受賞したアロンソ・ルイスパラシオスなどの名前が目にとまりました。取りあえずタイトル、製作国、監督、キャスト、などのトレビアをアップします。



*ホライズンズ・ラティノ部門*
① Jesús Lopéz (アルゼンチン=フランス)2021年、90分、WIP Latam 2020
オープニング作品
監督:マキシミリアノ・シェーンフェルド Schonfeld(アルゼンチン、クレスポ1982)の本作はワールドプレミア、事故死したレーシングドライバーのヘスス・ロペスの従弟アベルのその後が語られる。
別途作品紹介予定
キャスト:ルカス・シェル、ホアキン・スパン、ソフィア・パロミノ、イア・アルテタ、アルフレッド・セノビ、パウラ・ランセンベルク、ロミナ・ピント、ベニグノ・レル
*作品紹介記事は、コチラ⇒2021年08月30日

② El empleado y el Patrón / The Employer and the Employee クロージング作品
(ウルグアイ=アルゼンチン=ブラジル=仏)2021年、106分、WIP Latam 2020
監督:マヌエル・ニエト・サス(ウルグアイ)の第3作目は、WIP Latam 2020のEGEDAプラチナ賞受賞作品、カンヌ映画祭と併催の「監督週間」にノミネートされている。『BPMビー・パー・ミニット』のナウエル・ぺレス・ビスカヤートが主演。
キャスト:ナウエル・ぺレス・ビスカヤート、クリスティアン・ボルヘス、フスティナ・ブストス、ファティマ・キンタニージャ

③ Amparo (コロンビア=スウェーデン=カタール)2021年、95分
監督:シモン・メサ・ソト(コロンビア、メデジン1986)の長編デビュー作、カンヌ映画祭併催の「批評家週間」にノミネートされている。短編「Leidi」(14)はカンヌで短編部門のパルムドールを受賞、2016年にも「Madre」がノミネートされている。両作とも当ブログでアップしています。長編デビュー作ということで別途作品紹介予定。
キャスト:サンドラ・メリッサ・トレス、ディエゴ・アレハンドロ・トボン、ルチアナ・ガジェゴ、ジョン・ハイロ・モントーヤ
*作品紹介記事は、コチラ⇒2021年08月23日

④ Aurora(コスタリカ=メキシコ=パナマ)2021年、92分、Cine en Construcción 37
監督:パス・ファブレガ(コスタリカ)の長編2作目、ロッテルダム映画祭に正式出品された。デビュー作「Agua fria de mar」(10)は同ホライズンズ・ラティノ部門にノミネートされた。
キャスト:レベッカ・ウッドブリッジ、ラケル・ビリャロボス

⑤ Azor (スイス=アルゼンチン=フランス)2021年、100分、
V Foro de Coproducon Europa=America Latina ヨーロッパ・ラテンアメリカ共同製作
監督:アンドレアス・フォンタナ(スイス)のデビュー作、アルゼンチン独裁政権とデサパレシードスを背景にした2人の銀行家が語られる。
キャスト:スティファニー・Cleau、ファブリツィオ・Rongione

⑥ La caja / The Box (メキシコ=米国)2021年、92分
監督:ロレンソ・ビガス(ベネズエラ、メリダ1967)は、デビュー作「Desde Allá」がベネチア映画祭2015で金獅子賞を受賞してシネマニアを驚かせた。ラテンビートでは『彼方から』の邦題で上映された。別途作品紹介予定。
キャスト:エルナン・メンドサ、Hatzin Navarrete
*作品紹介記事は、コチラ⇒2021年09月07日

⑦ Madalena (ブラジル)2021年、85分、Cine en Construcción 36
監督:マディアノ・マルチェティMadiano Marcheti(ブラジル)のデビュー作は、ロッテルダム映画祭のコンペティション部門にノミネートされている。マダレナの失踪に関係した3人の人物の物語が語られる。
キャスト:ナタリア・マザリン、ラファエル・デ・ボナ、パメリャ・ユーリ、Chloe Milan、マリアネ・カセレス

⑧ Noche de fuego / Players for The Stolen(メキシコ=独=ブラジル=カタール)
2021年、110分
監督:タティアナ・ウエソ(エルサルバドル1972、メキシコの二重国籍)の長編デビュー作、カンヌ映画祭「ある視点」でスペシャル・メンションを受賞している。ドキュメンタリー作家として高い評価を得ているウエソが初めて劇映画を撮りました。2016年のドキュメンタリー「Tempestad」は、アリエル賞2017監督賞、ベルリン映画祭カリガリ賞(特別審査員賞)、ゴヤ賞2018イベロアメリカ映画賞ノミネート、ハバナFF、リマFF他受賞歴多数。代表作にノンフィクション「El lugar más pequeña」(11)がある。別途作品紹介予定。
キャスト:アナ・クリスティナ・オルドニェス・ゴンサレス、マルヤ・メンブレニョ、マイラ・バタリャ
*作品紹介記事は、コチラ⇒2021年08月19日

⑨ Piedra noche / Dusk Stone (アルゼンチン=チリ=スペイン)2021年、87分、
WIP Latam 2020
監督:イバン・フンド(アルゼンチン)は、監督、脚本家、撮影監督、製作者。本作は一人息子を失った或る夫婦の苦悩が語られる。WIP Latam 2020の産業賞受賞作品。9月1日開催のベネチア映画祭と併催の「ヴェニス・デイ」がワールドプレミアになります。イバン・フンドは既に「Los labios」がカンヌの「ある視点」にノミネート、マル・デル・プラタFFやBAFICIブエノスアイレス国際インディペンデントFFなど国内の映画祭で受賞歴があります。
キャスト:マリセル・アルバレス、マラ・ベステリィ、アルフレッド・カストロ、マルセロ・スビオット、へレミアス・クアロ

⑩ Una pelícla de policías / A Cop Movie (メキシコ)2021年、107分
監督:アロンソ・ルイスパラシオス(メキシコシティ1978)は、モノクロで撮ったデビュー作「Güeros」(14)がSSIFF ホライズンズ・ラティノ部門で作品賞とユース賞を受賞、同年ラテンビートで『グエロス』の邦題で上映された。今回はベルリナーレ2021でイブラン・アスアドが銀熊フィルム編集賞を受賞している。別途作品紹介予定
キャスト:モニカ・デル・カルメン、ラウル・ブリオネス・カルモナ
*作品紹介記事は、コチラ⇒2021年08月28日

★今年は女性監督が2人とバランス的には偏りがありますが、タティアナ・ウエソの名前を久しぶりに目にしました。政情不安のエルサルバドル生れですがメキシコに渡って国籍を取得しています。今年はメキシコからアロンソ・ルイスパラシオスと2人がノミネートされた。どちらも話題作のようですから、秋の映画祭を視野に入れて作品紹介を予定しています。
第6回イベロアメリカ・プラチナ賞2019*結果発表 ― 2019年05月17日 15:59
予想通りアルフォンソ・キュアロンの『ROMA/ローマ』が大賞5冠を独占!

★開催したばかりのカンヌ映画祭はしばらくお休みして、去る5月12日に結果発表があった第6回イベロアメリカ・プラチナ賞授賞式のご報告。今回は偶数回なのでスペイン開催のはずですが、今回も昨年に引き続いてメキシコのカンクン近郊のリゾート地シカレ・リビエラ・マヤで行われました。気温が高く赤絨毯を踏んだシネアスト、セレブたちは汗ダクダクだったとか。総合司会は今回で2回目となるスペインのサンティアゴ・セグラとTVシリーズ女優賞を受賞したメキシコのセシリア・スアレスでした。

(総合司会者のセシリア・スアレスとサンティアゴ・セグラ)
★もう受賞作品はやる前から決まっていたようなもので、予想通りアルフォンソ・キュアロンの『ROMA/ローマ』が大賞5冠を独占し、サプライズ零%のガラ、作品賞・監督賞・脚本賞・撮影賞・録音賞の5カテゴリーです。メキシコ開催の授賞式でしたが、受賞が100%分かっていたにもかかわらず御大は姿を現しませんでした。どんな理由があったにせよ白けます。外野から「メキシコには住んでないよ」の声あり。2月にあった米アカデミー賞で外国語映画賞・監督賞・撮影賞の3冠を受賞していましたが、格が違うということでしょう。因みに外国語映画賞は来年から国際映画賞と名称が変わりますが、ルール変更はないそうです。

(第6回イベロアメリカ・プラチナ賞の受賞者一同)
*17カテゴリーの受賞作品・受賞者名は以下の通りです。
◎作品賞(フィクション)
「Roma」(『ROMA/ローマ』2018年12月14日よりNetflix配信)メキシコ

(製作者ガブリエラ・ロドリゲスと共同製作者ニコラス・セリス)
◎監督賞
アルフォンソ・キュアロン(『ROMA/ローマ』)
◎オペラ・プリマ初監督作品賞
「Las herederas」(『相続人』)パラグアイ、監督マルセロ・マルティネシ

(右端がマルセロ・マルティネシ監督)
◎女優賞
アナ・ブルン(『相続人』)

(喜びが爆発したアナ・ブルン)
◎男優賞
アントニオ・デ・ラ・トーレ (「El Reino」)スペイン、監督ロドリゴ・ソロゴジェン

◎脚本賞
アルフォンソ・キュアロン (『ROMA/ローマ』)

◎撮影賞
アルフォンソ・キュアロン (『ROMA/ローマ』)
◎編集賞
アルベルト・デ・カンポ (「El Reino」)

◎美術賞
アンヘリカ・ぺレア (「Pájaros de verano」『夏の鳥』)コロンビア、
監督クリスティナ・ガジェゴ&チロ・ゲーラ

◎オリジナル音楽賞
アルベルト・イグレシアス (「Yuli」)スペイン、監督イシアル・ボリャイン

◎録音賞
セルヒオ・ディアス、スキップ・リーヴセイ、ホセ・アントニオ・ガルシア、
クレイグ・ヘニガン(『ROMA/ローマ』)

(『ROMA/ローマ』のキャスト&スタッフ一同)
◎作品賞(アニメーション)
「Un día más con vida」(『アナザー・デイ・オブ・ライフ』)スペイン、
監督ラウル・デ・ラ・フエンテ&ダミアン・ネノウ

◎作品賞(ドキュメンタリー)
「El silencio de otros」スペイン、監督ロバート・バハル&アルムデナ・カラセド

◎価値あるシネマ教育プラチナ賞
「Campeones」スペイン、監督ハビエル・フェセル

◎TVミニシリーズ賞
「Arde Madrid」スペイン

(インマ・クエスタ、パコ・レオン、製作者アンナ・R・コスタ、アンナ・カスティーリョ)
◎TVシリーズ女優賞
セシリア・スアレス (「La casa de las flores」『ハウス・オブ・フラワーズ』
2018年8月10日よりNetflix 配信)メキシコ、ブラックコメディ、制作マノロ・カーロ

◎TVシリーズ男優賞
ディエゴ・ルナ (「Narcos: México」『ナルコス:メキシコ編』
2018年11月16日よりNetflix 配信)米国の犯罪ドラマ、製作総指揮カルロ・ベルナルド他

◎プラチナ栄誉賞
ラファエル(スペインのシンガーソングライター、俳優)

(喉もご披露したラファエル)


(左から、プラチナ賞ディレクターのエンリケ・セレソ、栄誉賞受賞者ラファエル、
総ディレクターのミゲル・アンヘル・ベンサル、アドリアン・ソラル)
★ざっと以上のようでした。第1回2014年(『グロリアの青春』)と2018年(『ナチュラルウーマン』)の受賞国チリ、2015年(『人生スイッチ』)と2017年(『笑う故郷』)の受賞国アルゼンチンは、ゼロ個と沈黙を強いられました。2016年はコロンビアの『彷徨う大河』、今回コロンビアは『夏の鳥』が美術賞を受賞して面目を施しました。昨年はメキシコ開催でしたがメキシコはゼロ個、今年はTVシリーズを含めると7個でした。録音賞のみがグループ受賞で、他はアルフォンソ・キュアロンの一人勝ちでした。
★スペインは作品賞を受賞したことはありませんが、今回は男優賞・オリジナル音楽賞・編集賞・ドキュメンタリー賞・アニメーション賞・価値あるシネマ教育プラチナ賞・TVシリーズ作品賞の7カテゴリー、さらにプラチナ栄誉賞をイベリア半島に運んできましたから、もう言うことなしです。
★『ROMA/ローマ』に限ったことではありませんが、Netflixや米国の制作会社の存在感はTVシリーズの受賞作品にみられるように顕著になってきました。映画祭のコンペティション部門にノミネートされたばかりなのに、映画祭が終わると1ヵ月もしないでお茶の間で見られる。その速さには実際驚きます。最初からNetflixオリジナル作品なら分かりますが。
イベロアメリカ・フェニックス賞財政難で一旦休止のニュース ― 2019年04月07日 15:29
ない袖は振れない苦しい台所事情も政治がらみか?

(黒いフェニックスの卵)
★毎年初冬の11月に開催されていた「イベロアメリカ・フェニックス賞」が、メキシコ当局による財政援助が難しくなり、やむなく休止に追い込まれてしまいました。第1回が2014年でしたから、たったの5回しか開催されなかったことになります。イベロアメリカと銘打たれておりましたが、選考母体は2012年創設されたばかりの「Cinema 23」でメキシコ主導の映画賞、授賞式開催国は持ち回りでなくメキシコと決まっていました。元宗主国のスペインとポルトガルも参加してノミネーションはされましたが、グランプリに輝くことはついぞありませんでした。

(第1回グランプリ作品ディエゴ・ケマダ=ディエスの「金の鳥籠」、授賞式から)
★2017年には、TVシリーズ部門にNetflixオリジナル作品の参加を開始、Netflixに門戸を開いた。麻薬王エスコバルの誕生から死までを描いた『ナルコス』がドラマ部門で、コメディ部門でも『クラブ・デ・クエルボス』が受賞した。第5回の2018年には『ペーパー・ハウス』が受賞、さらに「ネットフリックス・プリマ・オペラ賞」を設けて盛上げに協力し始めていたのですが、所詮焼け石に水だったようです。

(TVシリーズ部門、2018年受賞作『ペーパー・ハウス』Netflix)
★本映画賞の二大資金援助はメキシコの連邦政府と地方政府だったようで、主催者によると両者の折合いが難航、回答が貰えなかったことが休止の主たる理由だという。メキシコ新大統領アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドルは、一部の反汚職運動のような市民団体への助成金カットを数週間前に発表していた。政権批判をして論争のタネを振りまくNGOや文化団体には援助したくないのでしょう。そういう意味では本映画賞は、受賞作品を一瞥すれば一目瞭然、かなり政治的な色合いが濃く、援助カットの標的になってもおかしくない。第1回授賞式は、メキシコの麻薬密売組織に関係している政治家や警察関係者による学生43名の失踪殺害事件を厳しく批判、第5回はフェミニズム運動、特にアルゼンチンでの妊娠中絶合法化のシンボル緑のハンカチ運動など、毎年ラテンアメリカ諸国政府への「No」を鮮明にしている。
第1回作品賞2014『金の鳥籠』(メキシコ)ディエゴ・ケマダ=ディエス監督
第2回作品賞2015『ザ・クラブ』(チリ)パブロ・ラライン監督
第3回作品賞2016『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』(チリ)パブロ・ラライン監督
第4回作品賞2017『ナチュラルウーマン』(チリ)セバスティアン・レリオ監督
第5回作品賞2018『夏の鳥』(コロンビア)クリスティナ・ガジェゴ&チロ・ゲーラ共同監督

(第3回作品賞『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』の製作者フアン・デ・ディオス・ラライン、
トロフィーを手にしたネルーダ役のルイス・ニェッコ、刑事役のG.G.ベルナル)
(第4回作品賞『ナチュラルウーマン』で女優賞に輝いたダニエラ・ベガ)

(第5回作品賞『夏の鳥』ガラ、緑のハンカチを巻いたクリスティナ・ガジェゴ監督とスタッフ)
★残念なニュースですが、再開を願って2020年を待ちましょうか。
第5回イベロアメリカ・フェニックス賞2018*結果発表 ― 2018年11月20日 15:18
コロンビアの『夏の鳥』が作品賞と女優賞にカルミニャ・マルティネス

★去る11月7日、メキシコシティのエスペランサ・アイリス・シティシアターで授賞式が行われました。今年は結果発表とラテンビートが重なり大分遅れのアップになりました。作品賞がラテンビート上映の『夏の鳥』だったので、部分的にはラテンビートに絡めて触れております。フェニックス賞はメキシコの「シネマ23」主導の映画賞で、過去4回ともラテンアメリカ諸国の作品が受賞しています。元の宗主国スペインとポルトガルから選ばれたことはなく、今年はそもそも作品賞・監督賞にノミネーションさえありませんでした。映画部門とTVシリーズ部門に分かれています。ノミネーションは以下にアップしています。
*イベロアメリカ・フェニックス賞2018ノミネーション発表の記事は、コチラ⇒2018年09月30日
*映画部門*
◎作品賞(長編7作品)
「Alanis」監督アナイ・ベルネリ(アルゼンチン)
「As boas maneiras」同フリアナ・ロハス&マルコ・ドゥトラ(ブラジル)
「Cocote」同ネルソン・カルロ・デ・ロス・サントス・アリアス(ドミニカ共和国)
「Las herederas」同マルセロ・マルティネシ(パラグアイ) 邦題『相続人』
「Museo」同アロンソ・ルイスパラシオス(メキシコ)
〇「Pájaros de verano」チロ・ゲーラ&クリスティナ・ガジェゴ(コロンビア)邦題『夏の鳥』
「Zama」同ルクレシア・マルテル(アルゼンチン) 邦題『サマ』

(クリスティナ・ガジェゴを囲んで喜びの関係者一同)
◎監督賞(7人)
アナイ・ベルネリ「Alanis」
フリオ・エルナンデス・コルドン「Cómparame un Revólver」(メキシコ)
〇マルセロ・マルティネシ「Las herederas」
ラウラ・モラ「Matar a Jesús」(コロンビア)
アロンソ・ルイスパラシオス「Museo」
チロ・ゲーラ&クリスティナ・ガジェゴ「Pájaros de verano」
ルクレシア・マルテル「Zama」

(『相続人』のマルセロ・マルティネシ監督)
◎女優賞
カルミニャ・マルティネス 『夏の鳥』

◎男優賞
ロレンソ・フェロ 「El Angel」監督ルイス・オルテガ(アルゼンチン、西)

(トランプ大統領とアルゼンチン大統領マクリを批判したロレンソ・フェロ)
◎脚本賞
ラウラ・モラ&アロンソ・トレス「Matar a Jesús」(コロンビア)

◎撮影賞
ルイ・ポサス 「Zama」

(ミゲル・アンヘル・シルベストルからトロフィーを受け取るルイ・ポサス)
◎美術デザイン賞
レナータ・ピネイロ 「Zama」

◎衣装賞
メルセ・パロマ 「La librería」 監督イサベル・コイシェ(スペイン、イギリス)
◎録音賞
グイド・ベレンブラム&エマニュエル・クロセット「Zama」

◎編集賞
ミゲル・シュアードフィンガー&カレン・ハーレー 「Zama」

◎オリジナル音楽賞
レオナルド・Heiblum 『夏の鳥』
◎長編ドキュメンタリー賞
「Muchos hijos, un mono y un castillo」 監督グスタボ・サルメロン(スペイン)

(左から2人目の監督とヒロインの母親)
◎ドキュメンタリー撮影賞
フアン・サルミエント G. 「Central Airport THF」監督カリム・アイノズ(ブラジル、独、仏)

◎ネットフリックス・オペラ・プリマ賞
『相続人』マルセロ・マルティネシ(パラグアイ、独、ブラジル、ウルグアイ、ノルウェー、仏)

◎批評家賞
ルシアノ・モンテアグド(アルゼンチンの映画批評家)

◎シネアスト賞
ルイス・カルロス・バヘット(ブラジルの映画プロデューサー)

◎Exhibidores賞
「Perfectos desconocidos」監督アレックス・デ・ラ・イグレシア(スペイン)
*テレビ部門*
◎TVシリーズ
「La casa de Papel」シーズン2 (スペイン) 邦題『ペーパー・ハウス』

◎俳優アンサンブル賞
「Aquí en la tierra」シーズン1(メキシコ)




★写真は入手できたもの。
第5回イベロアメリカ・フェニックス賞2018*ノミネーション発表 ― 2018年09月30日 17:30
ネットフリックスの存在が大きくなってきたフェニックス賞2018
★去る9月24日、第5回イベロアメリカ・フェニックス賞2018のノミネーション発表がメキシコシティでありました。カテゴリーと解説に齟齬があったりカテゴリーの数が違ったりと、サイトでノミネーション個数にばらつきがありますが、当たらずとも遠からずでいくと、最多ノミネーションは、コロンビアのチロ・ゲーラ&クリスティナ・ガジェゴの「Pájaros de verano」の9個、アルゼンチンのルクレシア・マルテルの『サマ』の8個でした。作品・監督・脚本・男優女優・撮影・・・と両作とも主要カテゴリーに選ばれています。
★イベロアメリカとはいえ、旧宗主国のスペインとポルトガルは影が薄く、第4回までの作品賞はすべてラテンアメリカ映画が制しています(第1回メキシコの『金の鳥籠』、第2回から4回までの『ザ・クラブ』、『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』、『ナチュラルウーマン』と連続でチリが受賞しています)。今年スペインとポルトガルは主要カテゴリーのノミネーションがゼロでした。

(イベロアメリカ・フェニックス賞ノミネーション発表に集まったシネアストたち)
★チロ・ゲーラ&クリスティナ・ガジェゴの「Pájaros de verano」は、カンヌ映画祭2018併催の「監督週間」のオープニング作品です。チロ・ゲーラ映画の製作者クリスティナ・ガジェゴの初監督作品です。2016年には夫婦二人三脚で『彷徨える河』などの力作を撮っています。9カテゴリーの内訳は、作品・監督・脚本・撮影・編集・美術・衣装・オリジナル音楽、ゴッドマザーを演じたカルミナ・マルティネスが女優賞にノミネートされた(美術がないサイトあり)。
*「Pájaros de verano」の作品紹介は、コチラ⇒2018年05月18日

(女優賞ノミネートのカルミナ・マルティネスとラウラ・モラの「Matar a Jesús」から)
★ルクレシア・マルテルの『サマ』は、ベネチア映画祭2017のコンペティション外上映、国際映画祭に数多く出品され、ラテンビートでも昨年上映されました。しかし批評家の高い評価にもかかわらず今もって作品賞は受賞しておりません。イベロアメリカ諸国の公開が殆ど2018年だったことで、今年のノミネーションになりました。8カテゴリーの内訳は、作品・監督・脚本・撮影・編集・美術・録音とダニエル・ヒメネス・カチョが男優賞にノミネートされました。
*『サマ』の主な紹介記事は、コチラ⇒2017年10月13日

(サマを演じ男優賞ノミネートのダニエル・ヒメネス・カチョ、映画から)
★2作に続いて、メキシコのアロンソ・ルイスパラシオスの第2作「Museo」の6個です。その内訳は、作品・監督・撮影・オリジナル音楽・録音、ガエル・ガルシア・ベルナルの男優賞です。ベルリン映画祭2018脚本賞受賞作品。
*「Museo」の作品紹介は、コチラ⇒2018年02月19日

(男優賞ノミネートのガエル・ガルシア・ベルナル、映画から)
★同じくパラグアイのマルセロ・マルティネシの「Las herederas」の6個です。その内訳は、作品・監督・脚本・撮影・美術・録音、ベルリン映画祭で女優賞を受賞したアナ・ブルンはノミネートされませんでした。ベルリン映画祭2018のアルフレッド・バウアー賞と国際映画批評家連盟賞受賞作品、サンセバスチャン映画祭「ホライズンズ・ラティノ」部門オープニング作品、ラテンビート2018上映作品です。
*「Las herederas」の作品紹介は、コチラ⇒2018年02月16日

(監督とアナ・ブルン)
★作品賞・監督賞のノミネーションだけアップしておきます。
◎作品賞(7作品)
「Alanis」監督アナイ・ベルネリ、アルゼンチン
「As boas maneiras」同フリアナ・ロハス&マルコ・ドゥトラ、ブラジル
「Cocote」同ネルソン・カルロ・デ・ロス・サントス・アリアス、ドミニカ共和国
「Las herederas」同マルセロ・マルティネシ、パラグアイ
「Museo」同アロンソ・ルイスパラシオス、メキシコ
「Pájaros de verano」同チロ・ゲーラ&クリスティナ・ガジェゴ、コロンビア
「Zama」同ルクレシア・マルテル、アルゼンチン
◎監督賞(7人)
アナイ・ベルネリ「Alanis」
フリオ・エルナンデス・コルドン「Cómparame un Revólver」メキシコ
マルセロ・マルティネシ「Las herederas」
ラウラ・モラ「Matar a Jesús」コロンビア
アロンソ・ルイスパラシオス「Museo」
チロ・ゲーラ&クリスティナ・ガジェゴ「Pájaros de verano」
ルクレシア・マルテル「Zama」
★という具合でスペイン映画は作品賞にも監督賞にも見当たりませんでした。ドキュメンタリー部門にゴヤ賞2018受賞の「Muchos hijos, un mono un castillo」、男優賞に「El autor」のハビエル・グティエレス、脚本賞に「Petra」のハイメ・ロサレス、美術賞に「Handia」と「La libreria」他がありました。
★TVシリーズ部門ではネットフリックスの存在の大きさが際立っています。昨年も『ナルコス』などが受賞しましたが、今年もノミネーション5作品のうち3作がネットフリックスがらみです。スペインの「La casa de papel」(『ペーパー・ハウス』シーズン2)、メキシコ=米の「Narcos」(『ナルコス』シーズン3)、アメリカ製作の「Luis Miguel:La serie」(シーズン1)の3作です。ルイス・ミゲルというのは一名メキシコの「太陽El Sol」と言われるほどのプエルトリコ生れのメキシコの歌手、現在活躍中の歌手のビオピック、グラミー賞5回受賞でハリウッドのウォーク・オブ・フェームに星が刻まれています。しばらく活動を休むなど謎の多い歌手ですが昨年復活しました。ルイス・ミゲルをディエゴ・ボネタ、歌手だった父親をオスカル・ハエナダが演じています。シーズン1(13話)が2018年4月からメキシコ、米国、スペイン、生れ故郷プエルトリコでNetflix同時配信されました(日本は未配信のようです)。

(『ペーパー・ハウス』から)

(『ナルコス』シーズン3)

(ディエゴ・ボネタ、「Luis Miguel:La serie」から)
★この映画賞の作品選考はメキシコの「シネマ23」が中心になって行なわれ、イベロアメリカ映画アカデミー連盟、メキシコ映画アカデミーが参画、第16回モレリア映画祭(10月20~28日)で受賞結果発表があり、ガラは11月7日、メキシコシティのエスペランサ・アイリス・シティシアターで開催される予定。
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