モントリオール映画祭2014*ノミネーション②2014年08月18日 16:23

  ファースト・フィルム部門(続)

Schimbare(西)2014 アレックス・サンパジョ Alex Sampayo Parra 監督・脚本

製作:Ficcion Producciones 共同脚本:ボルハ・カーマニョ、言語:スペイン語、スリラー 

 


監督紹介:1978年ガリシアのポンテベドラ生れ、監督・脚本家・プロデューサー他。14歳のときから短編を撮り始めたという経歴の持ち主。2000年に短編“Alzheimer”で監督デビュー、ガリシアTVドラマ“Terra de Miranda”(200714話、ガリシア語)、同“Padre Casares”(20084話、ガリシア語)他、多数の短編のあと、本作で長編デビューを果たした。

キャスト:カンデラ・ペーニャ(エルビラ)、ルイス・カストロ・サエラ(ルイス)、サンドラ・Mokrycka(少女)他

 

ストーリー:ルイスとエルビラは、東欧の犯罪組織と接触してルーマニアに行くことになる。二人は目的地近くでルート変更の連絡を受け取る。ブダペストに止まってあるものを収集しなければならなくなる。最初は簡単に思えたが、「ある収集物」とは8歳の少女であった。この瞬間から彼らは人生の岐路に立たされる。計画続行か、または少女解放かの決断を迫られる。彼らの決断次第で誰かが命を落とすことになるだろう。

 

まずタイトルの“Schimbare”は、「交換」を意味するルーマニア語から取られており、ゾッとするような違法臓器密売の事実が背景にあるようです。前半が社会派ドラマ、後半はスリラー仕立てになっている。監督によると、ベルギーのダルデンヌ兄弟の影響を受けているとインタビューで語っていますが、多分、前半と後半のトーンが分かれる『ロルナの祈り』あたりを念頭においているのかもしれない。ショッキングなテーマであるが、脚本執筆には世界保健機構WHOのデータを使用したと語っており、絵空事ではないようです。世界で行われている臓器移植の10%は違法臓器で、ヨーロッパでは組織されたグループによって主に東欧諸国が提供している。

 

      

          (撮影中の左から、監督、ルイス・サエラ、カンデラ・ペーニャ、サンドラ)

 

撮影は201311月にルゴ近郊のコルゴO Corgoでクランクイン、ルーマニアの部分はハンガリーで4週間かけて撮影された。キャスト陣は、カンデラ・ペーニャ、ルイス・サエラとベテランが演じているので自分は安心していられたとも。子役のサンドラは、ポーランド人で初出演、勘がよく、想像力豊かな少女で、実年齢は9歳だった由。カンデラ・ペーニャは、デビュー作『時間切れの愛』(1994)でゴヤ賞助演・新人女優賞を異例のダブルノミネート、『テイク・マイ・アイズ』(2003)他で助演女優賞を受賞した実力派、ゴヤ賞2013予想と結果②⇒コチラでご紹介済みです。ルイス・サエラは1966年サンチャゴ・デ・コンポステラ生れのベテラン、すでに『月曜日にひなたぼっこ』(2002)、『アラトリステ』(2006)、『第211号監房』(2009)などに出演しております。

  

モントリオール映画祭2014*ノミネーション①2014年08月17日 18:48

★秋の第一陣として8月下旬から9月にかけて、ヴェネチア映画祭(827日~96日)より一足先にモントリオールで開催される国際映画祭、正式名称は「Festival des Films du Monde--Montréal」、今年は821日から91日まで。モントリオールはカナダでもフランス語圏なので英語よりフランス語映画が多く、受賞作もそのような傾向がある。スペイン語映画はフランシスコ・ロンバルディの『豚と天国』(1990ペルー≂西合作)から絶えて受賞がない。

 

★順当にご紹介するなら、ワールド・コンペティション部門から始めるべきですが、今年のマラガ映画祭の目玉の一つTodos están muertos ノミネートされていましたので、まずそこから入ります。

 

★ファースト・フィルム部門(First Films World Competition)

Todos están muertos They Are All Deadベアトリス・サンチス 2014西 メキシコ

17回マラガ映画祭2014審査員特別賞・最優秀女優賞(エレナ・アナヤ)・青年審査員特別賞(マラガ大学が選考)・オリジナル・サウンドトラック賞(Akrobats)を受賞した。最優秀作品賞の次に大きい賞が審査員特別賞、デビュー作ながら閉幕後の330日にスペイン公開を果たしている。(マラガ映画祭2014で既にご紹介している作品⇒コチラ411

 

キャスト:エレナ・アナヤ(ルぺ)、アンヘリカ・アラゴン(母パキータ)、ナウエル・ペレス・ビスカヤルト(兄ディエゴ)、クリスティアン・ベルナル(息子パンチョ)、マカレナ・ガルシア(ナディア)、パトリック・クリアド(ビクトル)他

 

ストーリー1980年代には兄ディエゴとロックバンド「グリーンランド」を結成、ポップ・ロック歌手のスターとして輝かしい成功をおさめたルぺの15年後が語られる。時は流れ、当時のルぺたちの活躍が話題になることはない。引退した彼女の人生に過去のある幻影が忍び寄ってくる。兄の死後、メキシコ出身の迷信深い母親パキータとちょうど思春期を迎えたテーンエイジャーの息子パンチョと暮らしているが、広場恐怖症のうえパニックに陥りやすいルぺは愛情こまやかな母親なしでは生きていけない。息子はエゴイストの母を嫌っており、二人の関係はぎくしゃくしている。折りも折りパキータは自分に残された時間が少ないことを知り、<死者の日>に戻ってくる亡き息子のディエゴに相談しようと決心する。 


★エル・パイスのコラムニスト、ジョルディ・コスタによると、「完璧に仕上がった映画ではないが、デビュー作としては大胆なアイデンティティに溢れた」作品と評価は高い。既に忘れられた1980年代のノスタルジーやあの世とこの世の境界線のないファンタジックなストーリーを嫌う人は辛口批評になっている。悲劇、コメディ、ドラマ、ファンタジーなどの要素が作用しあった不思議なカクテルとなっているようです。フランコ体制後のスペインは、民主主義移行期を過ぎて1980年代に入ると、アルモドバルを筆頭に新しい才能がスペイン映画界に輩出された。彼のデビュー作『ペピ、ルシ、ボム、その他大勢の娘たち』や、イバン・スルエタの第2Arrebato(エウセビオ・ポンセラ/セシリア・ロス主演)など、1980年の製作である。両作とも公開もDVDも発売されなかったが、『ハモン、ハモン』(1992)でブレイクする以前のビガス・ルナも含めて再評価されるべきと思います。観念的とか美学とは無縁ながら社会を解体するエネルギーがほとばしっている。個人的には20世紀では1980年代の映画が一番面白いと思います(アルモドバル以外の二人は鬼籍入りしています)。

 

ベアトリス・サンチスは、1976年バレンシア生れ、監督、脚本家、アート・ディレクター。2008年のLa claseがゴヤ賞2009短編ドキュメンタリー賞にノミネート、2010年の短編Mi otra mitadがワルシャワ映画祭にノミネートされている。エレナ・アナヤとの5年間(200813)にわたるパートナー関係を昨年の夏解消した。 

 

       (マラガ映画祭授賞式でのベアトリスとエレナのツーショット)

 

エレナ・アナヤは、1975年パレンシア生れ、アルフォンソ・ウングリアのAfrica1996)でデビュー、フェルナンド・レオンの『ファミリア』(1996)、これは「スペイン映画祭1998」で上映されたので、比較的早く日本に紹介された。その後も次々に話題作に引っ張りだこ、最近ではフリオ・メデム『ローマ、愛の部屋』(2010)、アルモドバル『私が、生きる肌』(2011)などで認知度バツグン、マラガ映画祭2012の大賞「マラガ賞」受賞者でもある。

 

(ルぺに扮したエレナ・アナヤ)

 

アンヘリカ・アラゴンは、1953年メキシコ・シティ生れ。カルロス・カレーラの『アマロ神父の罪』(2002)でヒロインのアメリア(アナ・クラウディア・タランコン)の母親を演じ、アリエル賞の助演女優賞を受賞したベテラン。昨年のラテンビート2013で上映されたラファ・ララの『55日の戦い』(2013)では、ドーニャ・ソレダー役を演じた。

 

         (アンヘリカ・アラゴン『55日の戦い』のプレス会見で)

 

★他にパブロ・ベルヘルの『ブランカニエベス』(2012)の白雪姫役でデビュー、翌年ゴヤ賞新人女優賞をいきなり受賞したシンデレラ女優マカレナ・ガルシアが出演している。

 

続・トロント映画祭2014 ノミネーション2014年08月15日 18:27

今年は「ガラ・プレゼンテーション」部門にはスペイン語映画のノミネーションないようです。スペシャル・プレゼンテーション」部門で、イサベル・コイシェの英語映画Learning to Drive(米国)をご紹介したのに、肝心の Damian SzifronRelatos salvajesWild Tales アルゼンチン≂西 2014)が洩れていました。追加いたします。

 

★これは5月開催のカンヌ映画祭2014コンペティションに正式出品された映画で、その折りに2回にわたってご紹介しております。スピールバーグ製作総指揮のTVシリーズ『世にも不思議なアメージング・ストーリー』(198587)が下敷きになっています。一話完結のオムニバス・ドラマ、コメディ、スリラー、バイオレンスなど6話で構成され、リカルド・ダリン、レオナルド・スバラグリア、ダリオ・グランディネッティ、エリカ・リバス、オスカル・マルティネス、リタ・コルテセ、フリエタ・ジルベルベルクなどの豪華キャスト。

 

                

                         (リカルド・ダリン 映画のワンシーン)

 

★監督は、1975年ブエノスアイレス生れ、脚本家、監督、エディター、プロデューサー。長編第2 El fondo del mar2003Bottom Sea)、第3作アクション・コメディTiempo de valientes2005On Probation)が、 ビアリッツ映画祭(ラテンアメリカ部門)で観客賞を受賞、マラガ映画祭では主役2人のうちルイス・ルケがベスト男優賞(銀賞)を受賞、ペニスコラ・コメディ映画祭では、作品賞、監督賞の他、もう一人の主役ディエゴ・ペレッティが男優賞を受賞した。最近はテレビの仕事が多く、次回作が待たれていた。

 

    

(ポスターをバックにしてDamian Szifron 監督)

 

★本作にはアメリカで活躍中のグスタボ・サンタオラジャが故郷ブエノスアイレスに戻って音楽を担当したことでも話題になった。『ブロークバック・マウンテン』と『バベル』で2005年、2006年と連続でアカデミー作曲賞を受賞、その他『アモーレス・ペロス』、『21グラム』、『モーターサイクル・ダイアリーズ』、『ビューティフル』など数えきれない。サンタオラジャによれば、ロック、ソウル、アフリカのリズム、ラテンアメリカのポピュラー音楽をミックスさせたとのこと。

 

★もう一つの話題は、アルモドバル兄弟の製作会社「エル・デセオ」が共同製作に参画、二人ともカンヌには応援に馳せつけましたが、残念ながら賞には絡めませんでした。しかしカナダ・プレミアとしてトロント映画祭にノミネーションされたのは喜ばしい。

 

  

  (左から、エリカ・リバス、アルモドバル、オスカル・マルティネス カンヌ映画祭にて)

 

Relatos salvajesの詳細はコチラ51日)とコチラ522日)にアップしております。

 

「レック4」 がトロント映画祭2014にノミネーション2014年08月13日 15:27

                  トロント国際映画祭2014*ノミネーション

  

★秋の映画祭の季節がめぐってきました。今年のトロント映画祭は94日から14日まで。開催日が近いサンセバスティアン映画祭(919日~27日)とノミネーションが重なりますが、今年もフランソワ・オゾン(仏)のThe New Girlfriendやクリスチャン・ペツォルト(独)のPhoerixなどがダブっています。スペイン語映画に絞って列記いたしますと:

  

 

★ミッドナイト・マッドネス部門 Midnight Madness

“[REC] 4: Apocalypse” 「レック4 アポカリプス」西 ワールド・プレミア 2014 ホラー
製作:フリオ・フェルナンデス、カルロス・フェルナンデス

監督・脚本:ジャウマ・バラゲロ 助監督:フェルナンド・イスキエルド

脚本:マヌ・ディアス

撮影:パブロ・ロッソ

  

キャスト:マヌエラ・ベラスコ(アンヘラ・ビダル)、パコ・マンサネド(グスマン)、エクトル・コロメー(リカルテ医師)、イスマエルIsmael Fritschi(ニック)、クリスプロ・カベサス(ルーカス)、パコ・オブレゴン(ジナルド医師)、マリア・アルフォンサ・ロッソ(老婦人)

 

ストーリー:TVレポーターのアンヘラ・ビダルは、汚染されたビルから兵士たちによって救出され検査のためオイル・タンカーに隔離される。しかし彼らはアンヘラが未知の伝染性の種を運んできたことに気づいていない。 


○パコ・プラサが監督した「レック3」は、前2作と同じレック・シリーズでも独立していましたが、第4作はバラゲロ監督に戻り、ストーリーでも分かるように「レック」「レック2」に繋がっています。完成予定は2013年でしたが、同年7月にクランクイン、7週間かけてバルセロナ、カナリア諸島、スタジオで撮影した。本作では赤と青が、つまり血と海がたっぷり目にできると監督が請け合っています。また「レック2」の最後に突然現れたニーニャ・メデイロスのような驚きもたくさん用意しているそうです。受賞に関係なく日本公開も間違いなしです。

    

★バンガードVanguard 部門

Shrew’s NestMusarañas”西 ワールド・プレミア 2014 スリラー・ホラー 95

エグゼクティブ・プロデューサー:アレックス・デ・ラ・イグレシア、カロリーナ・バング他

監督・脚本:フアン・フェルナンド・アンドレス、エステバン・ロエル(共に長編第1作)

音楽:ジョアン・バレント  

撮影:アンヘル・アモロス
製作:Pokeepsie Films

  

キャスト:マカレナ・ゴメス(モンセ)、ナディア・デ・サンティアゴ(モンセの妹)、ルイス・トサール(姉妹の父親)、ウーゴ・シルバ(隣人カルロス)、カロリーナ・バング(カルロスの婚約者)、グラシア・オラヨ(モンセの顧客)、シルビア・アロンソ、他

 

       

                   (左から2人目、デ・ラ・イグレシア、シルバ、ナディア、マカレナ、ロエル、
      フアンフェル、カロリーナ)

ストーリー:1950年代のマドリード、母親が赤ん坊を残して死んでしまうと、臆病な父親は耐えられなくなって蒸発してしまう。広場恐怖症のモンセは家から外に出られず、ただ姉としての義務感から不吉なアパートの中に閉じこもって赤ん坊を育てることになる。苦しみから主の祈りとアベマリアの世界に逃げ込んで、今では既に成長した妹を通してだけ現実と繋がっている。ある日のこと、この平穏が断ち切られる。若くて無責任な隣人カルロスが不運にも階段から落ち、唯一這いずってこられるモンセの家の戸口で助けを求めていた。誰かがトガリネズミの巣に入ってしまうと、たいてい二度と出て行かれない。

 

   

        (左から、エステバン・ロエル、フアンフェル・アンドレス)

○両監督とも本作が長編デビュー作となる。二人はマドリードの映画研究所のクラスの受講生だった。彼らの短編
0362011)は、Youtube 200万回のアクセスがあり数々の賞を受賞した。本作はデ・ラ・イグレシアがファンタジー、スリラー、ホラーと才能豊かな若い二人に資金援助をして製作された。エステバン・ロエルはテレビ俳優としても活躍しているようです。カロリーナ・バングはデ・ラ・イグレシアの異色ラブストーリー『気狂いピエロの決闘』(2010)に曲芸師として出演していた女優、プロデューサーの仕事は初めて。036に出演している。何かの賞に絡みそうですが、蓋を開けてみないことには分からない。

 

  

スペシャル・プレゼンテーションSpecial Presentations部門

Learning to drive” 米国 英語 2014 ワールド・プレミア

監督:イサベル・コイシェ

脚本・原作:サラ・ケルノチャン

撮影:マネル・ルイス

  

キャストパトリシア・クラークソン(ウェンディ)、ベン・キングズレー(ダルワーン)、グレイス・ガマー(娘ターシャ)、ジェイク・ウェバー(夫テッド)

   



ストーリー
:ウェンディはマンハッタンで活躍する批評家で、最近結婚生活が破綻してしまった。常に夫の車に頼っていたが、これからは自分で運転しなければならない。教習所の教官ダルワーンはシーク教徒で彼自身の結婚もダメになっていた。やがて二人の人生が交差し、予期しないかたちで転機が訪れる。大人のラブロマンス。

 

9-11以後、ニューヨークを舞台に映画を撮るのが夢だったという監督は、これで夢を叶えました。立て続けに新作を発表していますが、本作では教習所教官ダルワーンをシーク教徒のインド系アメリカ人に設定しているところから、アメリカの人種差別問題にも踏み込んでいるのでしょうか。英語映画で本ブログの対象ではありませんが、コイシェの近況報告ということでアップいたしました。 

 
                         (イサベル・コイシェ)

○コイシェのMi otro yoをアップした折り、次回作は、『エレジー』に出演したベン・キングズレーとパトリシア・クラークソンとがタッグを組んだLearning to driveで、ニューヨークでの撮影も昨年終了しましたと書きましたが、早くもトロントにエントリー、英語だと本当に早いです。アメリカ公開も10月に決定しています。テレビでの仕事が多いグレイス・ガマーの母親はメリル・ストリープです。いずれコイシェの映画に出演するのでしょうか。

 

○サラ・ケルノチャンの同名エッセイの映画化。前回の繰り返しになりますが、ケルノチャンはロバート・ゼメキスが監督した『ホワット・ライズ・ビニース』(2000)の原作者、ハリソン・フォードとミシェル・ファイファーが主演したサスペンス・スリラーでした。テレビ放映もありましたね。

 

ガボとカンヌ映画祭2014年04月29日 17:14

★『百年の孤独』刊行後「4610カ月と12日後に87歳で旅立った」ガルシア・マルケスは、人生の半分以上を栄光の中で送ったことになります。196765日、初版8000部で始まった刊行は、現在世界で約60007000万部を数えるという驚異的な部数を誇っています。

 

★前回の「ガボと映画」のリストで述べたように、彼自身が受賞した作品はフェリペ・カサルスのEl año de la peste 1979、「ペストの年」)1作です。メキシコのアカデミー賞といわれるアリエル賞脚本賞を共同執筆者のフアン・アルトゥーロ・ブレナンと受賞しています。本作は作品賞(金賞)、監督賞(銀賞)を受賞した作品です。他にメキシコ・ジャーナリスト・シネマ賞も受賞しました。フェリペ・カサルスは既にCanoa がベルリン映画祭1975で特別審査員賞を受賞していましたが、まだ40代になったばかりの、しかしメキシコ社会の矛盾にシフトしている監督でした。だからEl año de la peste 彼とタッグを組むのはテーマ的にぴったりでした。

 


フェリペ・カサルス:1937年、ピレネー沿いのガタリー(仏)生れ。サンセバスチャン映画祭1985 Los motivos de Luz が銀貝賞、記憶に新しいのが ダミアン・アルカーサルがパンチョ・ビリャの忠実な部下チコグランデに扮したChicogrande2010)が、アリエル賞作品賞・監督賞他8部門にノミネートされながら無冠に終わったことでした。

 

★マルケスはコロンビア時代に短編を撮っただけでしたが、長男ロドリーゴが父親の夢を果たしたことになります。カンヌ映画祭2000「ある視点」グランプリの『彼女を見ればわかること』、『愛する人』、『アルバート氏の人生』他が公開されています。

 

★作家がそのカンヌ映画祭の審査員になったのは、第35回目の1982年のこと、つまりノーベル文学賞受賞(19821021日)の半年前のことでした。審査委員長はイタリアのジョルジョ・ストレーレル、他にシドニー・ルメット、ジャンジャック・アノー、ジュラルディン・チャップリンなど。マルケスはキューバのウンベルト・ソラスの大作 Cecilia (「セシリア」)を強く推薦しましたが、結果はコスタ・ガブラスの『ミッシング』とユルマズ・ギュネイの『路みち』がパルムドールを分け合いました。

(写真:デイシー・グラナドスとイマノル・アリアス、「セシリア」から)

 


作家は憤懣やるかたなく執拗にキューバ作品を推しましたが、特にルメットとチャップリンが反対に回って論争したことは有名です。後者はミゲル・リッティンの『モンティエルの未亡人』(1979)に出演したばかりでした。それとこれとはベツが彼女の信条です。映画祭主催者にも直訴したというから、凄いエネルギーですね。しかしパルムドール選出は正しかったというのが、今日の定説です。ユルマズ・ギュネイは、クルド出身のトルコ人、小説家、俳優。彼の作品が反社会的という理由で投獄・出獄を繰り返し、本作も獄中から監督、仮出所中にパリに脱出、そこで完成させたといういわくつきの映画、ちょっと政治的な力学も感じられますが。『路』は1985年劇場公開されました。彼は1984年癌で亡命先のパリで死去。同じクルドのバフマン・ゴバディに私たちが出会う以前の出来事でした。

 

★次がノーベル賞受賞後の翌年のカンヌ、彼の『無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語』が『エレンディラ』(1983)としてルイ・ゲーラによって映画化されコンペに選ばれていました。「時の人」ノーベル賞作家もカンヌ入りしておりましたが、作品がどうやら気に入らなかったようで機嫌は良くなかった。この年のカンヌは大変な年で日本からも今村昌平の『楢山節考』と大島渚の『戦場のメリークリスマス』の2作、スペインからもエリセの『エル・スール』とサウラの『カルメン』が出品され、世界の話題作が覇を競っていました。

  


当時の文化省映画総局長のピラール・ミローが現地入りしていたのは、『エル・スール』の製作者エリアス・ケレヘタとエリセの仲を修復するためでした。エリセの「まだ未完成」をケレヘタが聞き入れず強引にカンヌに出品したことで二人はもめていた。エリセはこの年のカンヌでは上映したくなかったのですね。ミローとしては散々な出来の『エレンディラ』の著者を慰めるべく夕食を共にしたいが、第一にすべきことはエリセを説得すること、それに肝心の長編を読んでいなかったらしく、ちぐはぐな会話になって・・・『エレンディラ』は受け入れられず、作家にとってこの年のカンヌも辛い思い出となりました。

パルムドールは『楢山節考』、監督賞にタルコフスキーの『ノスタルジア』とブレッソンの『ラルジャン』、サウラは芸術貢献賞を受賞しました。たかがカンヌ、されどカンヌ、毎年話題提供は続いております。そう、もう5月はすぐそこ、カンヌの季節です。

 

ガルシア・マルケス『わが悲しき娼婦たちの思い出』の映画化2014年01月23日 14:26

★ゴヤ賞候補主要作品の紹介は、授賞式までに1作ずつ間をおいてアップ、他のニュースがニュースでなくなるので、今回はノーベル賞作家ガルシア・マルケスの今のところ最新小説Memoria de mis putas tristes2004刊)の映画化について。77歳になった作家が久しぶりで書いた恋愛小説、同じノーベル賞作家川端康成の『眠れる美女』に触発されて書かれたということが話題になった。90歳の誕生日を迎えようとする老人と14歳の処女という「普通ではない」組合せも物議をかもした。老人の性愛もテーマの一つであろうが、真のテーマは「死と再生」でしょう。

 

原題:Memoria de mis putas tristes
(『わが悲しき娼婦たちの思い出』は小説の翻訳題による

監督・脚本:ヘニング・カールセンHenning Carlsen

脚本:ジャン=クロード・カリエール 原作:ガブリエル・ガルシア・マルケス

撮影監督:アレハンドロ・マルティネス

 

キャスト:ジュラルディン・チャップリン(ローサ・カバルカス)/エミリオ・エチェバリア(エル・サビオ)/パオラ・メディナ・エスピノサ(デルガディーナ)/アンヘラ&オリビア・モリーナ(カシルダ・アルメンタ)/アレハンドラ・バローサ(フロリーナ・デ・ディオス)/ドミニカ・パレタ(ヒメーナ・オルティス)/エバンヘリナ・ソサ(ダミアーナ)/ロドリーゴ・オビエド(ヒメーナの兄弟)/オフェリア・メディナ他

データ:メキシコ=スペイン=デンマーク=アメリカ 2011 言語スペイン語 90

 

2012年マラガ映画祭で特別若手審査員賞を受賞したので翌年には公開と思っていましたが、監督がデンマーク人がネックになったのか、ようやっとこの1月公開になりました。劇場公開になったのは、ロシア、デンマーク、ポーランド、メキシコ、ドイツ(DVD)、映画祭上映はマラガの他、リオ国際映画祭2011、グアダラハラ国際映画祭2012など。

 

カールセン監督は、1927年デンマークのオールボー市生れ。ガルシア・マルケスと奇しくも同年齢、脚本のカリエールも1931年生れだから「老青年3人組」の作品といえます。監督とラテンアメリカ映画との接点は、既に本作のプロデューサーの一人ラケル・グアハルドとタッグを組んだ経験があった。カリエールは、フェルナンド・トゥルエバの最新作『ふたりのアトリエ~ある彫刻家とモデル』を手掛けている。

 

 

(カールセン監督)

最初語り手のエル・サビオ(小説では博士)にアルゼンチンのフェデリコ・ルッピかエクトル・アルテリオ、少女デルガディーナにキューバ出身のアナ・アルマス(スペイン在住)が予定されていたようですが、紆余曲折があって上記のようになった。具体化は2008年に製作会社も決定、撮影は200911月メキシコのカンペチェでクランクイン、20105月に終了している。

   キャスト陣のトレビア

語り手の主人公エル・サビオ役のエミリオ・エチェバリアは、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの『アモーレス・ペロス』(第3部)の主人公エル・チボやアルフォンソ・キュアロンの『天国の口、終りの楽園』でお馴染みの国際派ベテラン俳優。『アモーレス・ペロス』が東京国際映画祭のグランプリを受賞した2000年に、監督と一緒に来日しております。

 


デルガディーナに扮するパオラ・メディナ・エスピノサは、メキシコの名花オフェリア・メディナの姪御さん、既に29歳。小説では14歳ですが、映画は17歳ぐらいに設定されているとはいえ、いささか無理がありますね。オフェリアも特別出演(多分入院中の母親役)して話題作りに貢献している。(写真:エル・サビオのエチェバリアとデルガディーナのパオラ)

 


娼婦カシルダ・アルメンタの若い頃と現在を演じているのが、アンヘラ・モリーナオリビアの母娘。カシルダはエル・サビオが若い頃通っていた人気の娼婦、引退後に中国人と結婚して主婦になる。アンヘラは女優には珍しい5人の子持ち、オリビアはアンヘラの最初の夫との間に、1980年長女として誕生、この撮影後の2012年に長女を出産している。アンヘラは『ブランカニエベス』で白雪姫の祖母役を演じましたが、実際も撮影中に孫が出来たというわけです。アンヘラまたは映画人モリーナ一家についてはじっくりとご紹介したいと考えています。
(写真:エル・サビオとカシルダのアンヘラ)

 

 

 (ローサのジュラルディン)

娼家の女将ローサ・カバルカス役のジュラルディン・チャップリン、彼女が主役でしょうかね。昔は太った大女のローサも73歳になった今では、すっかり痩せて皺くちゃになっている。しかし頭の回転と毒舌は健在、エル・サビオに眠り姫デルガディーナを斡旋する。こういう役は彼女に打ってつけですね。1944年カリフォルニアのサンタ・モニカ生れ、父親の『ライムライト』(1952)のオープニング・シーンに現れる少女から数えると、出演本数130本以上になる。デヴィッド・リーンの『ドクトル・ジバゴ』(1965)から現在に至るキャリアをいずれきちんとご紹介したい。


エル・サビオの婚約者ヒメーナ・オルティス役のドミニカ・パレタは、1972年ポーランド生れ、若い頃メキシコに移住、テレビ界出身。エル・サビオの若くして亡くなる美貌の母親フロリーナ・デ・ディオス役のアレハンドラ・バローサは、1971年メキシコ市生れ、代表作はアレハンドロ・スプリンガルのNo eres tú, soy yo2010)、脚本も手がけている。この母親が主人公が抱えるトラウマの原因になっている。


『ブランカニエベス』残念*ヨーロッパ映画祭2013年12月10日 12:48

127日(現地時間)に発表になりました。『ブランカニエベス』もアルモドバルの『アイム・ソー・エキサイテッド』(コメディ部門)も残念な結果となりました。ヨーロッパの心を捉えたのは、イタリアのパオロ・ソレンティーノのLa grande bellezzaThe Great Beauty)でした。作品賞・監督賞を受賞、主演男優賞にトニ・セルヴィッロが2008年の『ゴモラ』(マッテオ・ガローネ監督)に続いての受賞となりました。予告編で見るかぎりではイタリアの静と動、恐怖と無情、華麗さと悲惨が描かれている印象です。イタリア以外では作れない映画かもしれない。来年のイタリア映画祭上映は確定でしょうか。

 

★既に衣装デザイナー賞が決定していた『ブランカニエベス』のパコ・デルガード、特別賞の「ワールドシネマ貢献賞」受賞のアルモドバルは、それぞれトロフィーを手にしました。コメディ賞は、今年5月に劇場公開になったスザンネ・ビアの『愛さえあれば』(デンマーク、スウェーデン他)が受賞しました。

 

(写真:トロフィーを手にしたアルモドバル)

★ヴィム・ヴェンダース総裁は「我が親愛なるアルモドバル、君の優しい頬笑みを見られるなんて今夜はなんて素晴らしいんだろう!」とスペイン語で挨拶したようです。製作の弟アグスティンは勿論のこと、アルモドバル学校の美女美男(でない人も混じっている?)が会場に押し掛け、『アイム・ソー・エキサイテッド』の歌を合唱した模様。美女とはエレナ・アナヤ、ロッシイ・デ・パルマ、パス・ベガ、レオノール・ワトリング、ブランカ・スアレス、美男とはハビエル・カマラ、カルロス・アレセス、ウーゴ・シルバ、ミゲル・アンヘル・シルベストレ、ラウル・アレバロの生徒さん、“We love you”と斉唱しました。ハビエル・カマラとブランカ・スアレスはラテンビートにゲスト登場して大いに会場を沸かせたばかりです。


『エリ』の撮影監督ロレンソ・ハーゲルマン最優秀撮影賞受賞2013年11月23日 11:19

         ストックホルム国際映画祭ハーゲルマン撮影賞を受賞

       

★ストックホルム国際映画祭で『エリ』の撮影監督ロレンソ・ハーゲルマンがベスト撮影賞を受賞しました。『エリ』についてはLBFFその他で既にご紹介済みです。スペイン語映画として公式コンペティションに、サンセバスチャン映画祭SIFF 2013「金貝賞」受賞のマリアナ・ロンドンPelo maloBad Hairベネズエラ­=ペルー=ドイツ)、同銀貝賞監督賞を受賞したフェルナンド・エインビッケClub Sandwich(メキシコ)がエントリーされていました。

 

SIFFについては、個別作品を折々ご紹介しただけで総括をしないままですが、まもなく始まるゴヤ賞候補作品と重なると思うので、そちらで纏めるつもりです。大物受賞者は国際批評家連盟賞のベルトラン・タヴェルニエだけ、「大スター不在の映画が大賞を射止めた」と評されたSIFF 2013年でした。こうやって国際映画祭の受賞作品をご紹介していると「1年の364日はどこかで映画祭が開催中」が冗談じゃなく思えてきます(笑)。

 


ロレンソ・ハーゲルマン(カンヌでの発音による)Lorenzo Hagermanは、ドキュメンタリー映画で出発、Which Way Home2009、アメリカ)が2010年のアカデミー賞にノミネートされるという実績の持主です。エルサルバドルの10代前半の子供たちが豊かな「北」を目指して列車の屋根で旅をするドキュメンタリー。そうキャリー・フクナガの『闇の列車、光の旅』のドキュメンタリー版です。『エリ』ではエスカランテ監督とカンヌ入りしており単独インタビューも受けておりました。映画をご覧になった方はメキシコのウンザリするほど乾いた風景や特に遠景の捉え方にドキュメンタリー手法を感じた方が多かったのではないでしょうか。(東京国際映画祭カタログにフィルム編集者のナタリア・ロペスが紹介されておりますが、撮影監督はハーゲルマンです。

 

                 

                                                            (金貝賞を手にしたロンドン監督)

★ついでにSIFFに触れますと、マリアナ・ロンドン Mariana Rondon の第3Pelo malo金貝賞受賞には驚きました。ベネズエラ作品がオフィシャル・コンペに選ばれるのも珍しいこと。他に彼女は「セバスチャン2013スペシャル・メンション」も手にしました。不寛容なベネズエラ社会をえぐり出した本作はサンセバスチャンの惜しみない熱烈な歓迎を受けた。「不寛容を癒すために作られた、こんなちっちゃい映画にこんな大賞をありがとう。違いを尊重してくれたサンセバスチャン、本当にありがとう」と受賞の言葉もよかった。審査委員長トッド・ヘインズによると「審査員全員一致の受賞」ということです。彼の『エデンより彼方に』のテーマも不寛容、主役のジュリアン・ムーアにヴェネチア以下数々の女優賞をもたらした映画でした。

 

          

                                        (左から2人目、エインビッケ監督、サンセバスチャンにて)

フェルナンド・エインビッケ Fernando EimbckeClub Sandwichは、母親と思春期にさしかかった息子のあいだに芽生えるオイディプス的な密接な関係についての物語。エインビッケは既に『ダック・シーズン』(2004)や『レイク・タホ』(2008)で国際的な評価を受けている監督。アリエル賞、アルフレッド・バウアー賞受賞など国際舞台の体験者です。後者は劇場未公開ですが第21TIFF 2008で上映されました。いずれPelo maloともどもご紹介する機会があるでしょう。

  

アレックス・デ・ラ・イグレシア新作*トロント映画祭⑤2013年09月16日 13:00

          アレックス・デ・ラ・イグレシア、観客賞次点に入賞


★ご紹介がすむ前に結果が発表されてしまいました。アレックス・デ・ラ・イグレシアLas brujas de Zugarramurdiが、Midnight Madness部門のピープルズ・チョイスの次点に入りました。これから始まるサンセバスティアン国際映画祭SIFF920日~28日)のコンペティション外に出品が決まっていたのでそちらでと思っていました。

   

★キャストはデ・ラ・イグレシア作品にお馴染みの面々、シリーズRecのニーニャ・メデイロス役の大当たりから『気狂いピエロの決闘』『いのちの花火』(DVD題ですが、原題に辿りつくのが・・・)に起用されたハビエル・ボテ、大物サンティアゴ・セグラ、アルモドバル作品にはもう出ないがアレックスのには出ると発言していたカルメン・マウラ、ピエロ役だったカルロス・アレセス、あのテレレ・パベスも凄いメーキャップで登場、マカレナ・ゴメス、お茶の間を卒業したマリオ・カサスウーゴ・シルバ、加えてマリア・ブランコペポン・ニエト・・・など、曲者役者をどう泳がしたか楽しみです。もう劇場公開、少なくともDVDは間違いなしでしょう。

 

SIFF922日上映の後、早くも27日からスペイン公開、フランス10月、ロシア11月が決定しています。アメリカのオースティン・ファンタジック・フェスティバルでWitching and Bitchingの英題で926日上映。

 

 

アルベルト・アルベロ”Libertador”*トロント映画祭④2013年09月16日 11:06

 

★トロント第4弾は、「ガラ・プレゼン」に唯一エントリーされたベネズエラ=スペイン合作のベネズエラ映画、英題The Liberator2013)、何かの賞に絡むことを祈ってご紹介。ベネズエラ解放独立の父シモン・ボリーバル(17831830)の栄光と挫折の日々を描く力作。今年はボリーバル生誕230年ということから、3人の監督がそれぞれの視点から≪ボリーバル映画≫を製作しています。つまり3人のボリーバル誕生です。その一人が本作登場のエドガー・ラミレスです。あのオリヴィエ・アサイヤスの『カルロス』(2010LBFF2011上映)で伝説のテロリスト、カルロス・ザ・ジャッカルを演じた俳優。

 

監督紹介

アルベルト・アルベロ(・メンドーサ)Alberto Arvelo Mendoza1966年カラカス生れ。監督、脚本家、撮影監督。詩人アルベルト・アルベロ・ラモスを父に、音楽家アルベルト・アルベロ・トレアルバの孫。ロスアンデス大学で歴史を専攻、1986年に監督・脚本家としてデビューする。

1986Candelas en la niebla”“La canción de la montaña共に監督・脚本。

1997Una vida y dos mandados(One Life and Two Trails)同上。Freddy Sosa の同名小説の映画化、ニューヨークのラテンアメリカ映画祭で脚本賞を受賞。

2001Una casa con vista al mar(“Hause with a View of the Sea)同上。ビアリッツ、ウエルバ国際映画祭等で観客賞受賞。ハバナ映画祭でグラウベル・ローシャ賞も受賞(イマノル・アリアスやレアンドロ・アルベロが出演)。

2004Habana, Havana同上

2006Tocar y lucharTo Play and To Fightドキュメンタリー

2007Cyrano Fernández監督・脚本。

2013Libertador同上。

 

「シモン・ボリーバル・ユース・オーケストラ・システム」の沿革をインタビューと演奏を交えて製作したドキュメンタリー。プラシド・ドミンゴ、クラウディオ・アバド、サー・サイモン・ラトル、ジュゼッペ・シノーポリ、などなどを感動させ出演させた感動の記録。グスタボ・ドゥダメルの若い指導者の熱意と謙虚さに拍手。楽器を触るどころか見ることもなかった貧しい子供たちにクラシック音楽を楽しむことで人生を豊かにしていく軌跡は涙なしには見られない。マイアミ映画祭の観客賞を皮きりに、ヒューストンのラスアメリカス映画祭ドキュメンタリー賞、シカゴのラテン映画祭審査員特別賞、ベネズエラ国内のドキュメンタリー部門の賞を攫った。本作は20112月公開されたシネ響「マエストロ6」の一環として製作された映画『グスターボ・ドゥダメル指揮シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ』とは別の作品です。オーケストラは来日公演をしておりますからライブを聴かれた方もいらっしゃるでしょう。

(写真上:Libertadorをバックにアルベルト・アルベロ)

 

 キャスト

シモン・ボリーバル:エドガー・ラミレス

マリア・テレサ・ボリーバル妻:マリア・バルべルデ

アントニオ・ホセ・デ・スクレ将軍:エーリヒ・Wildpret

マヌエラ・サエンス:フアナ・アコスタ

ほか、Una casa con vista al marに出演したイマノル・アリアスとレアンドロ・アルベロ、ダニー・ヒューストンなど。

  

 
エドガー・ラミレス Edgar Ramírez 1977年ベネズエラのサン・クリストバル生れ。カラカスのカトリカ・アンドレス・ベジョ大学で社会情報学を専攻。武官だった父親の移動に伴って各国に滞在、母国語以外の英伊独仏語に通じている。2011年、『カルロス』でフランスのアカデミー賞と言われるセザール新人男優賞を受賞した。同年ゴールデン・グローブ賞ノミネート。フェリペ・オロスコのコロンビア=メキシコ=USA合作Saluda al diablo de mi parte11)に主役で出演と活躍の場を広げている。英語ができることから『ドミノ』(05)以来、『ゼロ・ダーク・サーティ』(12)など、ハリウッド映画出演も増えている。
アレバロ監督作品としては
Cyrano Fernándezにフェルナンデス役で起用されていた。

(写真:エドガー・ラミレス、20115月カンヌにて)

 

Erich  Wildpret ベネズエラの国立演劇学校で教育を受けた。メキシコ、イギリスでも学び、特に重要なのは新分野に挑戦しようとロスアンジェルスでも学んだこと。2010年あたりからベネズエラで活躍、今ではベネズエラの中心的存在となっています。ホセ・(ラモン・)ノボアのUn lugar lejano2010A Distant Place)の主役、マルガリータ・カデナスのデビュー作Cenizas eternas2011Eternal Ashes)に出演、本作はモントリオール国際映画祭金賞にノミネートされた。ホセ・ノボアは東京国際映画祭1995Sicarioが『少年ハイロ、迷走の果て』の邦題で上映され、最優秀監督賞を受賞したウルグアイの監督。

 

Libertador製作中から期待も大きく、数多くのインタビューに応じています。難しいのはボリーバルという誰でも名前なら知っている革命家にして思想家でもあった人間の複雑な性格というか生き方だったそうです。テーマがあまりに大きすぎて、どこから手をつけたらいいのか、何を入れ何を外すか、それで映画を撮る前に、まずスペイン内戦をテーマにした映画を見ることから始めたと。6年の沈黙は長すぎたと思いますが、言われてみれば分かることですね。ガルシア・マルケスの『迷宮の将軍』(新潮社刊)を読まれた方は納得してもらえると思います。