『聖なる証』セバスティアン・レリオ*Netflix 鑑賞記 ― 2022年12月05日 09:35
痛みと喪失を抱える人々の出会いと再生の物語

★19世紀半ばアイルランドを襲った大飢饉後に起きた「断食少女」の奇跡の記録に着想を得て書かれた同名小説の映画化、原作者エマ・ドナヒューは「小説はフィクションですが、断食少女の記録は古く中世に遡ります」と語っている。作家は共同脚本家としても参加しています。ドナヒューはアナという奇跡の断食少女を登場させ、真実なのか詐欺なのか、はたまた邪悪な陰謀が蠢いているのか、真否を確かめるためクリミア戦争に従軍したイギリス人看護師を、遥かロンドンからアイルランドの小さな村に派遣することにした。セバスティアン・レリオの長編8作目『聖なる証』は、痛みと喪失のトラウマを抱えた3人の登場人物の出会いから再生までを語ったサイコスリラー。

(エマ・ドナヒューの原作 ”The Wonder” の表紙)
★セバスティアン・レリオ・ワット紹介:1974年アルゼンチンのメンドサ生れですが、2歳のとき母親の母国チリのビニャ・デル・マルに移住したチリ国籍の監督。2~3年ごとに引越しを繰り返したので、自身を〈ノマド〉と称している。デビュー作『聖家族』は養父のカンポスを使用したが2作め以降はレリオに戻している。アンドレス・ベロ大学で1年間ジャーナリズムを学んだあと、チリ映画学校を卒業、1995年から短編、ミュージックビデオ、ドキュメンタリーを撮っている。初期の3作はいずれも宗教的信仰をテーマにしている。2017年の『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』も超正統派ユダヤ・コミュニティの厳しい掟社会に生きる2人の女性の愛と信仰がテーマです。チリに長編映画としては最初のオスカー像を運んできた5作目『ナチュラルウーマン』(17)が代表作。『聖なる証』については第70回サンセバスチャン映画祭で金貝賞を競った折りに簡単にご紹介しています。
*「The Wonder」の作品紹介記事は、コチラ⇒2022年08月06日
*『ナチュラルウーマン』の主な紹介は、コチラ⇒2017年01月26日/2018年03月16日
★以下に長編全8作のタイトルだけをアップしておきます。6作目以降が英語映画ということもあって、チリの監督としては日本語字幕入りで鑑賞できる数少ない監督の一人です。
2006「La sagrada familia」(邦題『聖家族』ラテンビート2006)サンティアゴ・カンポス
2009「Navidad」(仮題「クリスマス」)
2011「El año del tigre」(仮題「タイガーの年」)
2013「Gloria」(邦題『グロリアの青春』2014年公開)
2017「Una mujer Fantástica」(邦題『ナチュラルウーマン』2018年公開)
2017「Disobedience」(邦題『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』アイルランド=英=米、
英語・ヘブライ語、2020年2月公開)
2018「Gloria Bell」(邦題『グロリア 永遠の青春』リメイク、チリ=米、英語、2021年12月公開)
2022「The Wonder」(邦題『聖なる証』英語・アイルランド語、Netflix配信)
『聖なる証 あかし』(原題「The Wonder」)2022
製作:Element Pictures / Element / Fis Eireann Screen Ireland
監督:セバスティアン・レリオ
脚本:セバスティアン・レリオ、アリス・バーチ、原作者エマ・ドナヒュー
音楽:マシュー・ハーバート(『ナチュラルウーマン』)
撮影:アリ・ウェグナー
編集:クリスティナ・ヘザリントン
キャスティング:ニーナ・ゴールド
製作者:エド・ギニー、アンドリュー・ロウ、テッサ・ロス、ジュリエット・ハウエル、(エグゼクティブ)エマ・ドナヒュー、以下割愛
データ:製作国イギリス=アイルランド、言語英語・アイルランド語、2022年、歴史ドラマ、サイコスリラー、108分、撮影地アイルランド、2021年8月12日クランクイン、限定公開2022年11月2日、イギリス、アイルランド、米国、カナダ、スペイン、Netflix プレゼンツ、配信11月21日
映画祭・受賞歴:テルライド映画祭2022ワールド・プレミア、トロントFF、サンセバスチャンFFコンペティション部門正式出品、BFI ロンドンFF、リオデジャネイロFF、ベルファストFF、マル・デル・プラタFF、ブリティッシュ・インデペンデント・フィルム賞(オリジナル・スコア賞マシュー・ハーバート受賞)、他作品賞・監督賞・アンサンブル演技賞以下ノミネート多数
キャスト:フローレンス・ピュー(英国人看護師エリザベス・ライト/リブ)、トム・バーク(デイリーテレグラフ記者ウィリアム・バーン/ウィル)、キラ・ロード・キャシディ(アナ・オドネル/ナン)、ニアフ・アルガー(キティ・オドネル/ナレーター)、デヴィッド・ウィルモット(旅籠の主人ショーン・ライアン)、ルース・ブラッドリー(妻マギー・ライアン)、トビー・ジョーンズ(オドネル家の主治医マクブレアティ医師)、キアラン・ハインズ(タデウス神父)、ジョシー・ウォーカー(シスター・マイケル)、エレイン・キャシディ(アナの母ロザリーン・オドネル)、カオラン・バーン(アナの父マラキー・オドネル)、ダーモット・クロウリー(オトウェイ卿)、ブライアン・F・オバーン(オドネル家の家主ジョン・フリン)、メアリー・マレー(訪問客)、ライアンの5人の娘たち他多数
ストーリー:1962年、クリミア戦争に従軍した英国人看護師エリザベス・ライトは、11歳の誕生日以来4ヵ月間も断食しているアナ・オドネルを注意深く観察するよう要請され、アイルランドのミッドランド地方の小さな村に派遣されてくる。アナを一目見ようと巡礼者や観光客が殺到し、ロンドンから新聞記者もやってくる。リブ・ライトは翌日、アナの背後にある真相を突き止めるために結成された委員会に呼び出される。リブ・ライトは故国に敵対的なアイルランドの村に唯一人でいる。一部の人が宗教上の奇跡と見なしている医学的驚異を理解するには、誰が信頼できるのかを判断しなければならない。もしかすると天の恵みで生きている聖女として村人が囲っているのではないか、あるいはもっと邪悪な動機があるのだろうか。19世紀に典型的だった断食少女の奇怪な出来事にインスパイアされたサイコスリラー。オドネル家が封印していた秘密、宗教的集団ヒステリー、医学的仮説(理性と信仰の衝突)、イギリスの優越性とアイルランドの屈折、アナのバックストーリーが明らかになるにつれ、表面からは見えなかった真実が現れてくる。何が起こっているのかではなく、なぜ起こっているのかが語られる。

(フローレンス・ピューに演技指導をするレリオ監督)
偽のオープニング、監督の意図は何でしょうか?
A: 映画のオープニングは実に奇妙で、スタジオセットのようなシーンから始まります。すると女性の声で「こんにちは、これは始り。これから皆さんが出会う登場人物たちは、自身の物語を完全な献身で信じています。私たちは物語あっての存在、だから彼らの話を信じてください」というナレーターの声が聞こえてくる。
B: 観客はこの奇妙なオープニングに「これはいったい何?」とたちまち物語に引きずり込まれていく。結末は「単なるデマでした」で終わるだろうと高を括って見はじめた観客を釘付けにする。
A: カメラが移動すると、薪ストーブの煙が立ちのぼる船中らしい食堂で食事をしている女性が目にはいる、フローレンス・ピュー扮する英国人看護師エリザベス〈リブ〉・ライトの登場です。船に乗り列車に乗りつぎ馬車に揺られて雨のなかやっとアイルランドの小さな村の旅籠に到着する。
B: 旅籠の主人夫婦と5人の娘たち、看護師派遣を決定した村の長老である委員会のメンバー5人、村外れの荒涼とした一軒家に暮らす断食少女の家族、と次々に主な登場人物が手際よく出揃います。
A: 冒頭から看護師役のフローレンスの演技に圧倒されますが、間もなく本作がメタフィクションの構造をもっていることに気づきます。それはともかく私たちは謎を引きずって看護師と一緒に旅をすることになる。

(パフォーマンスが絶賛された看護師リブ・ライト役のフローレンス・ピュー
とセバスティアン・レリオ監督、BFI ロンドン映画祭2022のフォトコール)
B: 委員会のメンバーの一人宿屋の主人ショーン・ライアンは「茶番だと証明してさっさと帰れ」とアンチ奇跡派、反対に医学を学んで理性的であるはずの医師マクブレアティは、未知の栄養分、つまり植物のように日光のエネルギーや香りから栄養を得ているなど途方もない「完全な献身」派、奇跡を信じたい。
A: 地主でオドネル家の家主ジョン・フリンは信心深いが、ここを聖地にして一儲けしたいのか、早く奇跡を証明して欲しい打算的な俗物。タデウス神父は説明するまでもないがオトウェイ卿はやや中立の印象です。
B: ライアンは観光客や巡礼客が増え商売繁盛となるからデマでも歓迎するのかと思いきやそうではない。ここいらが面白い。
A: リブは自分の仕事が看護ではなく、アナが本当に断食しているかどうかの真否を観察することに利用されたと直ぐに理解する。土地の修道女マイケルと1日8時間3交替、観察期間は2週間、二人は相談してはならず別々に報告することが言い渡される。どうして看護師ではないシスターが参加するのか、「シスターが一緒なら家族が安心する土地柄だ」と、村の後進性を宿屋の主婦マギーに言わせている。出番は少ないがこの冷静で洞察力のあるマギーの人格造形がいい。

(長老で構成された委員会、左からドクター、委員長オトウェイ卿、タデウス神父)
B: リブが居間に飾ってある写真から、オドネル家には息子がいたことに気づくところからドラマが俄然動き出す。子供は少し前に原因不明の病気で亡くなったという。しかし母親ロザリーンは淡々と「息子が早く神の元へ行けたからよかった」と語る。
A: 来世は永遠、現世はまたたく間に終わる、と固く信じている。だから死は魂の救済なのです。賢いリブは息子の死とアナの断食に何か繋がりがあると直感する。リブは自分の仕事が基本的に少女を死に至らしめる看護にすぎないと気づきはじめているから早く断食を止めさせたい。水と祈りだけで生きているアナは宗教的信念のため恍惚として元気そうに見えるが、何か秘密があるにちがいない。
B: 観客はアナが彼女には大きすぎるぶかぶかの兄の靴を履いていること、「聖カタリナの神秘の結婚」のカードがお気に入りであること、アナの宝物、聖母マリア像のなかに兄の遺髪が入っていたこと、兄が「地獄、天国のどちらにいるか分からない」と話していたことが伏線だったと観客は気づく。
A: 聖カタリナは〈アレクサンドリアのカタリナ〉のことで、キリスト教の聖人で殉教者です。聖母マリアによって幼子イエスと婚約させられたという、いわゆる「神秘の結婚」をしている。シンボルは花嫁のベールと指輪、アナも「目には見えない指輪をしている」とリブに語っていた。オドネル家の忘れたい過去がおぼろげながら浮き上がってくる。
親が願う子供の緩慢な死、教会の独善性
B: アナは11歳の誕生日以来4ヵ月ものあいだ水以外は口にせず奇跡的に健康である。アナは宗教的な理由で断食をしており「天からのマナ」に支えられているから食べ物は必要ないと言う。
A: では「天からのマナ」とは何か。奇跡に懐疑的な看護師は、家族がマナと称して秘かに食べ物を与えているのではないかと推測する。リブの関心事はアナの健康と幸せだから早く原因を突き止めて断食を止めさせたい。
B: 家族との接触を禁止すると果たせるかなアナは急激に衰弱していく。貧血、浮腫、壊血病の兆候が現れ始める。リブは母親とアナが交わす朝晩のキスにやっと辿りつく。噛み砕いた食べ物を口移しにしていたのではないか。
A: これが「天からのマナ」だった。リブは母親に朝晩のキスを再開するよう懇願するが、母親は「アナの神聖な死後、自分の二人の子供は天国に行ける」と拒絶する。ロザリーンは我が子の緩慢な死を願っているのです。当時では既に少数派になっていたアイルランド語しか解さない父親の存在感は薄く妻に引きずられている。両親は兄妹の関係を察していたに違いない。両親の無知蒙昧を非難することはできない。大飢饉のトラウマは十数年後の今でも村全体に影を落としており、住民は大飢饉の原因はイギリス人のせいだと考えていた。

(アナ・オドネル役のキラ・ロード・キャシディ)
B: リブは敵に囲まれている。19世紀半ばに大ブリテン島を襲った飢饉は、後にジャガイモ大飢饉と歴史書に書かれるようになった。
A: 原因はジャガイモが疫病に罹って枯死したためですが、特にアイルランドが酷かった。それは領主や支配階級がイギリスやスコットランドなどで暮らしていたため対応に遅れをとったからです。だからあながち間違ってはいないのです。1947年がピークで、人口の2割強が死亡したという。
B: コロナどころの話ではないですね。ジャガイモが主食でしたから想像を絶します。しかし、母親が兄妹の罪深い関係を妹のせいにして、アナの死を願うのは別問題です。
A: アナの「自分は妹であり妻だった」という衝撃的な告白に気丈なリブも動揺する。ロザリーンは息子の死は天罰だと信じており、それはアナのせい、地獄で業火に焼かれている息子の魂を救うためにアナを犠牲にすることを躊躇わない。アナも自分の命を犠牲にすることで、地獄で永遠に焼かれつづけている兄を解放できると信じている。
B: 「神聖な行為でなかった」から兄は召されたが、今でも兄を愛しているとも語った。子役と動物にはどんな名優も勝てないと言いますが、アナの迫真の演技には驚くと同時に涙も禁じえなかった。
キティ・オドネルはアナのお姉さんですか?
A: 本作で重要な登場人物にニアフ・アルガー扮するキティ・オドネルが挙げられる。彼女が観客に「私たちは物語あっての存在」と語りかけたナレーターだったことが分かるのですが、いまいち立ち位置が謎めいている。英語版の解説ではアナの姉となっているが家族写真にはいなかった。姉なら写っているはずです。
B: リブと近い年齢に見えるから少なくともロザリーンの子供ではない。ロザリーンあるいはマラキーの妹か、先妻の子供か、そのどれでもない虚構の存在なのか。まだ高価で珍しかった家族写真を撮っていたのも奇異ですね。
A: タデウス神父が家の前でアナを撮るシーンもあり、当時写真は時代の先端を行っていた。キティに戻すと、彼女は学校に行けなかったから聖書も新聞もすらすら読めないが、皮肉屋で鋭い観察力の持主、唐突にあちこちに出没する。メタフィクションの構造をもっていることは先述したが素性がはっきりしない。私たちに情報をばらまきつつ社会規範を乱そうとしている。
B: キティはアナが最後に口にしたものが聖体拝領のパンだったと告げる。それは単なるパンではなくイエスの肉体と血である。小麦粉に過ぎないと考えるリブは「私は物語でなく事実を探す」と応じるが、キティは「あなたは真実を探すというが、あなただって物語が必要」と、リブの弱点をつく。

(「あなただって物語が必要」と語気を強めるキティ・オドネル)
A: キティはトム・バーク扮する「デイリーテレグラフ」の記者ウィリアム・バーンと幼馴染みだという。飢饉でもウィルは町の学校に行けたが自分は行けなかった。彼が寄宿生だったときに家族は一人残らず亡くなった。「尊厳を守るため家のドアを内側から鍵をかけた。道端で野垂れ死にしないように」とリブに告げる。アイルランド人はイギリスの支配下にあるが誇り高い民族だとリブに分からせるためのセリフです。

(忘れたい過去をもつ記者ウィリアム・バーン)
B: 男性優位社会の告発を滲ませながら大飢饉の凄惨さを物語る。キティの口ぶりからウィルに好意を寄せていることを匂わせている。ロンドンからはるばる帰郷してきた記者は、物語に飢えている大衆のためにアナを取材して記事を書かねばならない。しかし会わせてもらえない、そこで情報欲しさにリブに近づいていく。

(最初の出会い、ウィル、リブ、ウィルにもらったソーマトロープで遊ぶアナ)
A: リブはウィルから不躾な言葉を投げかけられて彼を無視していたが、彼が見かけによらず自分と同じ悲しみと喪失を味わっていることに衝撃を受ける。反発しながらも惹かれあっていた二人はやがて結ばれるのだが、この3人はスクリーン上に同時に現れることはない。
B: もしかしてキティは、オドネル家に住みついて観客を揺さぶる一種のトリックスター的役目を果たしているのではないか。映画はリアリズムの手法で進行するが、ストーリー的にはホラーすれすれを滑走している。
A: 飢饉で荒廃したアイルランドの風景を完璧にとらえた撮影のお蔭で、観客はこれが現実であると容易に信じます。しかし監督の方向性は認めますが、後半は少し急ぎすぎで物足りなく、結末はありえない。科学と宗教のどちら側につくかで見方は変わるかもしれず、21世紀に生きる私たちにも物語は必要です。
個人の倫理がコミュニティの信念と衝突するとモラルはどうなるか?
B: 冒頭で看護師には靴を履くことなく旅立った赤ん坊の存在が知らされ、後に3週間と2日の女の子だったことが分かる。リブは医学知識のある看護師でありながら我が子を救えなかったことで自分を罰している。
A: スプーン1杯のアヘンチンキ剤の力を借りなければ眠りにつけない重い不眠症に罹っており、自傷行為をしています。科学を信じ倫理を尊重し、何よりも事実を追及する合理的な人間ですが、忘れたい過去に苦しんでいる。
B: 本作のテーマの一つに、個人の倫理がコミュニティの信念と衝突するとモラルはどうなるかという問題があります。特に未だに飢饉のトラウマに苦しんでいて、イギリスに敵対的なコミュニティと対立するときです。
A: オドネル夫婦の拒否にあい万策尽きたリブは、アナを助けるためモラルを無視した大胆な賭けに出ます。リブは自分の職業倫理が試され、生か死かの選択に直面する。彼女の計画を聞かされたウィルは、最初危険すぎると尻込みする。自身の責任の可能性を懸念したからです。
B: 結局リブの計画にのるのですが、それは彼にも危険でも物語が欠かせなかったからですね。監督が突きつけたのは「モラルとは何ですか」という疑問です。人を救うためとはいえ世間を欺く嘘は悪か、いかなる理由の放火も大罪か。

(証拠隠滅をはかるリブ・ライト)
A: 偽の死亡書類を委員会に提出し、自らも火傷を負ったリブは、下宿で委員会の判断が下るのを待つことになる。シスター・マイケルが初めてリブに話しかける。「幻を与えられて途中でミサを抜け出しました。火事を目撃する前に、天使がアナを馬の背に乗せて走り去るのに出会いました。アナが新しい世界へ行けたと約束してください」とリブに迫ります。
B: リブは約束すると何回もうなずく、シスターも共犯者になったのです。自由意志や公正な社会が宗教的熱狂をどこまで許容するかも投げかけている。

(リブとの会話を避けるシスター・マイケル)
A: さらに医師の道徳的、倫理的義務について、懐疑主義と信仰の必要性もテーマだった思います。宗教の役割について、その乱用の許容限度を考えることは、現代社会にも繋がっている。人々が義務と信念と愛の名の下に行動する混乱は、心の謎として今日的でもある。
B: 焼け落ちた家の残骸にアナの遺体はなかった。委員会は誰も罰せず、リブの雇用を無給として終了する。ダブリンで再会した3人は、エリザベス・チェシャー、ウィリキー・チェシャー、ナン・チェシャーと名乗って、ノーサンバーバラ号でシドニーに向けて出港する。
A: キティがスクリーンに現れ、新聞の委員会報告を読み上げる。観客に冒頭の「私たちは物語あっての存在」を思い起こさせる。
B: 「悲嘆にくれる世界が、聖なる証を求めている」というナレーションのあとに、ニアフ・アルガー扮する黒ずくめの女性が現れ、かつてアナがウィル記者からプレゼントされた小鳥と鳥籠が描かれた玩具ソーマトロープの「中、外、中、外」が繰り返される。
A: キティで始りキティで終わる。リブの粗末なスープの食事で始りノーサンバーバラ号の豪華な食事で終わる。ラテンアメリカ映画の特徴、円環的と移動がここでも採用された。
勇気、愛、そして誰が子供を守るか?
B: 原作者エマ・ドナヒュー(ダブリン1969、アイルランドとカナダ国籍)によると、全くのフィクションだが、「断食少女」は実際に存在した。アイルランドだけでなく16世紀から20世紀にかけてヨーロッパ、カナダを含む北米に数多く記録が残っている。
A: 作家は文芸史家でもあり、時間をかけて調べたということです。特に「19世紀半ばから、苦行の行為としての中世の聖人や現代の拒食症とも異なる事例が増加した。事例は10代の少女に限られた。アイルランドに設定したのは、1840年代からのジャガイモ大飢饉があったこと、そこが生れ故郷だからということもあったとインタビューに答えていた。

(原作者エマ・ドナヒュー)
B: ダーウィンの出現がカトリック信仰への疑いを引き起こした。奇跡と拒食症の分岐点は微妙で、飢饉で食べるものに事欠くと、口減らしのための緩慢な子供殺害が起きた。
A: 餓死をただ待つのではなく、奇跡と称して金儲けの詐欺、地域を巻き込む集団ヒステリーが起きてもおかしくない。本作で看護師をイギリス人にしたのは、現在でも見られる村社会の外国人嫌悪、村人の信仰に対する傲慢さを描きたかったのではないか。同じキリスト教でもイギリスは英国国教会、アイルランドはローマ・カトリック教という違いも浮き彫りにした。
B: 現在のように経済が破綻してもイギリス人がもち続ける優越感は、他国には理解しずらい(笑)。
A: ドナヒューの ”Room”(10)は『ルーム』として映画化され、アカデミー外国語映画賞の最終候補に残った。似てないように見えるが究極的には勇気、愛、そして誰が子供を守るかが語られており、同じテーマに行き着く。
B: レリオ監督は6作以降英語映画が続いています。スペイン語映画紹介ブログとしては枠外の作品ですが、気になる監督です。
A: 長編映画としては最初のオスカー像をチリにもたらした。『ナチュラルウーマン』が受賞したとき、アルゼンチンのマスコミによって「アルゼンチンの監督」と報じられた。しかし監督は「私はアルゼンチンにはよく出かけますが、アルゼンチン人ではありません」と訂正させた。
B: デビュー作の『聖家族』は実父のレリオでなく養父のカンポスを採用した。それで『グロリア』の監督が同一人物とは思わなかった。
A: 作風も違ったし「ラテンビート2013」のカタログの紹介記事で繋がりましたがレリオでなくレイロでした(笑)。チリ映画の認知度はこの程度だった。さて次回作はアメリカ映画の「Bride」(23予定)でまたもや英語です。キャストにスカーレット・ヨハンソンがクレジットされている。早くチリに戻ってきてください。

(左から、ニアフ・アルガー、エレイン・キャシディ、トビー・ジョーンズ、キラ・ロード、
監督、フローレンス・ピュー、ジョシー・ウォーカー、BFI ロンドン映画祭2022にて)
第37回ゴヤ賞2023ノミネーション発表 ②ゴヤ賞2023 ② ― 2022年12月08日 15:31
ロドリゴ・ソロゴジェンの『ザ・ビースト』が最多17ノミネーション

★去る12月1日、2度目のセビーリャ開催となる第37回ゴヤ賞2023のノミネーション発表がありました。スペイン映画アカデミー新会長となったフェルナンド・メンデス=レイテの最初のゴヤ賞ガラとなります。ノミネーション発表は、昨年の助演女優賞受賞者ノラ・ナバスと、同じく主演女優賞を受賞したブランカ・ポルティーリョのベテラン女優によって発表されました。カテゴリーは 28 部門と変わりなく、ただノミネートの数が4作から5作に増加しています。増やすことはかなり議論されたということです。ざっと見たところ11月下旬に発表になっていたフェロス賞と同じ顔触れでしょうか。授賞式は2023年2月11日(土)、会場はセビーリャ会議展示センターです。セビーリャ・ヨーロッパ映画祭を成功させているセビーリャ開催は、2019年に続いて2回目となります。
★ノミネーションは以下の通りです。初出には監督名と邦題のあるものは補いました。*印は既に作品紹介をしている作品です。

(フェルナンド・メンデス=レイテ、ノラ・ナバス、ブランカ・ポルティーリョ、12月1日)
*第37回ゴヤ賞2022ノミネーション全8カテゴリー*
◎作品賞
「As bestas」ロドリゴ・ソロゴジェン『ザ・ビースト』(東京国際映画祭、17カテゴリー)*

「Alcarras」カルラ・シモン(11個)*

「Cinco lobitos」アラウダ・ルイス・デ・アスア(11個)*

「La maternal」ピラール・パロメロ(3個)*

「Modelo 77」アルベルト・ロドリゲス(16個)*

◎監督賞
カルラ・シモン「Alcarras」
ロドリゴ・ソロゴジェン「As bestas」
ピラール・パロメロ「La maternal」
カルロス・ベルムト「Manticora」『マンティコア』(東京国際映画祭、4個)*

アルベルト・ロドリゲス「Modelo 77」
◎新人監督賞
カルロタ・ペレダ「Cerdita」(6個) *

アラウダ・ルイス・デ・アスア「Cinco lobitos」
エレナ・ロペス・リエラ「El agua」邦題『ザ・ウォーター』(東京国際映画祭) *

フアン・ディエゴ・ボット「En los márgenes」(5個) *

ミケル・グレア「Suro」 *

◎主演女優賞
マリーナ・フォイス「As bestas」
ライア・コスタ「Cinco lobitos」
アンナ・カスティーリョ「Girasoles silvestres」監督ハイメ・ロサーレス *

バルバラ・レニー「Los renglones torcidos de Dios」監督オリオル・パウロ(6個) *
邦題『神が描くは曲線で』(ネットフリックス)

ヴィッキー・ルエンゴ「Suro」
◎主演男優賞
ドゥニ・メノーシェ「As bestas」
ルイス・トサール「En los márgenes」
ナチョ・サンチェス「Manticora」
ハビエル・グティエレス「Modelo 77」
ミゲル・エラン「Modelo 77」
◎オリジナル脚本賞
アルナウ・ピラロ&カルラ・シモン「Alcarras」
イサベル・ペーニャ&ロドリゴ・ソロゴジェン「As bestas」
アラウダ・ルイス・デ・アスア「Cinco lobitos」
カルロス・ベルムト「Manticora」
アルベルト・ロドリゲス&ラファエル・コボス「Modelo 77」
◎脚色賞
カルロタ・ペレダ「Cerdita」
パウル・ウルキホ・アリホ「Irati」監督は脚色に同じ、バスク語 (5個) *

ギレム・クルア&オリオル・パウロ「Los renglones torcidos de Dios」
ダビ・ムニョス&フェリックス・ビスカレット「No mires a los ojos」
監督フェリックス・ビスカレット

フラン・アラウホ、イサ・カンポ、イサキ・ラクエスタ「Un año, una noche」(3個) *
監督イサキ・ラクエスタ

◎助演女優賞
マリー・コロン「As bestas」
カルメン・マチ「Cerdita」
スシ・サンチェス「Cinco lobitos」
ペネロペ・クルス「En los márgenes」
アンヘラ・セルバンテス「La maternal」
◎助演男優賞
ディエゴ・アニド「As bestas」
ルイス・サエラ「As bestas」
ラモン・バレア「Cinco lobitos」
フェルナンド・テヘロ「Modelo 77」
ヘスス・カロサ「Modelo 77」
◎新人女優賞
アナ・オティン「Alcarras」アンナで紹介
ルナ・ラミエス「El agua」
ラウラ・ガラン「Cerdita」
バレリア・ソローリャ「La consagración de la primavera」監督フェルナンド・フランコ *

ゾーイ・スタイン「Manticora」
◎新人男優賞
アルベール・ボッシュ「Alcarras」
ジョルディ・プジョル・ドルセト「Alcarras」
ミケル・ブスタマンテ「Cinco lobitos」
クリスティアン・チェカ「En los márgenes」
テルモ・イルレタ「La consagración de la primavera」
◎アニメーション賞
「Black is Beltza II: Ainhoa」 監督フェルミン・ムグルザ

「Inspector Sun y la maldición de la viuda negra」 監督フリオ・ソト・グルピデ

「Los demonios de barro」 監督ヌノ・ベアト

「Tadeo Jones 3, La tabla esmeralda」 監督エンリケ・ガト

「Unicorn Wars」 監督アルベルト・バスケス

◎ドキュメンタリー賞
「A las mujeres de España. María Lejárraga」 監督Laura Hojman

「El sostre groc (El techo amarillo)」 監督イサベル・コイシェ

「Labordeta, un hombre sin más」 監督パウラ・ラボルデタ&ガイスカ・ウレスティ

「Oswald. El falsificador」 監督キケ・マイリョ

「Sintiéndolo mucho」 監督フェルナンド・レオン・デ・アラノア

◎ヨーロッパ映画賞
「Berfast」(イギリス)監督ケネス・ブラナー、邦題『ベルファスト』

「Fue la mano de Dios」(イタリア)監督パオロ・ソレンティーノ、
邦題『Hand of God-神の手が触れた日-』

「La peor persona del mundo」(ノルウェー)監督ヨアキム・トリアー、
邦題『わたしは最悪。』

あああ
「Las ilusiones perdidas」(フランス)監督グザヴィエ・ジャノリ、邦題『幻滅』(2023年予定)

「Un pequeño mundo」(ベルギー)監督ローラ・ワンデル、邦題『プレイグラウンド』
(なら国際映画祭2022)

◎イベロアメリカ映画賞
「1976」(チリ)監督マヌエラ・マルテッリ、邦題『1976』(東京国際映画祭)*

「Argentina, 1985」(アルゼンチン)監督サンティアゴ・ミトレ、邦題『アルゼンチン 1985』
(プライムビデオ)*

「La jauría」(コロンビア)監督アンドレス・ラミレス・プリド、邦題『ラ・ハウリア』
(東京国際映画祭)*

「Noche de fuego」(メキシコ)監督タチアナ・ウエソ *

「Utama」(ボリビア)監督アレハンドロ・ロアイサ・グリシ、邦題『UTAMA~私たちの家~』
(Skipシティ国際Dシネマ映画祭)*

◎撮影賞
ダニエラ・カヒアス「Alcarras」
アレックス・デ・パブロ「As bestas」
ジョン・D.・ドミンゲス「Cinco lobitos」
アルナウ・バルス「Competencia oficial」 監督ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン *

アレックス・カタラン「Modelo 77」
◎編集賞
アナ・プラッフ「Alcarras」
アルベルト・デル・カンポ「As bestas」
アンドレス・ジル「Cinco lobitos」
ホセ・M.G.・モヤノ「Modelo 77」
セルジ・ディエス&フェルナンド・フランコ「Un año, una noche」
◎録音賞
エバ・バリニョ、トマス・ジオルジ、アレハンドロ・カスティーリョ「Alcarras」
アイトル・べレンゲル、ファビオラ・オルドヨ、ヤスミナ・プラデラス「As bestas」
アシエル・ゴンサレス、エバ・デ・ラ・フエンテス、ロベルト・フェルナンデス「Cinco lobitos」
ダニエル・デ・サヤス、ミゲル・ウエルテ、ペラヨ・グティエレス他「Modelo 77」
アマンダ・ビリャビエハ、エバ・バリニョ、アレハンドロ・カスティーリョ他「Un año, una noche」
◎特殊効果賞
マリアノ・ガルシア・マルティ&ジョルディ・コスタ「13 exorcismos」

オスカル・アバデス&アナ・ルビオ「As bestas」
ジョン・セラーノ&ダビ・エラス「Irati」
リュイス・リベラ&ラウラ・ペドロ「Malnazidos」 監督アルベルト・デ・トロ&
ハビエル・ルイス・カルデラ

エステル・バリェステロス&アナ・ルビオ「Modelo 77」
◎美術賞
モニカ・ベルヌイ「Alcarras」
ホセ・ティラド「As bestas」
メラニー・アントン「La piedad」 監督エドゥアルド・カサノバ (3個)

シルビア・Steinbrecht「Los renglones torcidos de Dios」
ペペ・ドミンゲス・デル・オルモ「Modelo 77」
◎オリジナル作曲賞
オリヴィエ・アルソン「As bestas」
アランサス・カジェハ、マイテ・アロイタハウレギ ”ムルセゴMursego”「Irati」
イヴァン・パロマレス「Las niñas de Cristal」監督ホタ・リナレス、邦題『少女は、踊る』

フェルナンド・ヴェラスケス「Los renglones torcidos de Dios」
フリオ・デ・ラ・ロサ「Modelo 77」
◎オリジナル歌曲賞
エドゥアルド・クルス&マリア・ロサレン「En los márgenes」
アランサス・カジェハ、マイテ・アロイタハウレギ、パウル・ウルキホ・アリホ「Irati」
ホアキン・サビナ、レイバ「Sintiéndolo mucho」
パロマ・ペニャルビア・ルイス&ヴァネサ・ベニテス・サモラ「La vida chipén」

ホセバ・ベリスタイン「Unicorn Wars」
◎衣装デザイン賞(6作品)
パオラ・トーレス「As bestas」
ネレア・トリホス「Irati」
スエビア・サンペラヨ「La piedad」
アルベルト・バルカルセル「Los renglones torcidos de Dios」
フェルナンド・ガルシア「Modelo 77」
クリスティナ・ロドリゲス「Malnazidos」
◎メイクアップ&ヘアー賞
イレネ・ペドロサ&ヘスス・ジル「As bestas」
パロマ・ロサノ「Cerdita」
サライ・ロドリゲス、ラケル・ゴンサレス、オスカル・デル・モンテ「La piedad」
モンセ・サンフェィウ、カロリナ・アチュカロ、パブロ・ペロナ「Los renglones torcidos de Dios」
ヨランダ・ピニャ&フェリックス・テレロ「Modelo 77」
◎プロダクション賞
エリサ・シルベント「Alcarras」
カルメン・サンチェス・デ・ラ・ベガ「As bestas」
サラ・ガルシア「Cerdita」
マリア・ホセ・ディエスポル「Cinco lobitos」
マヌエラ・オコン・アブルト「Modelo 77」
◎短編映画賞
「Arquitectura emocional 1959」(30分) 監督エリアス・レオン・シミニアニ、
「Chaval」(29分) 監督ハイメ・オリアス
「Cuerdas」(30分) 監督エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン
「La entrega」(25分) 監督ペドロ・ディアス
「Sorda」(18分) 監督エバ・リベルタード&ヌリア・ムニョス・オルティン
◎短編ドキュメンタリー賞
「Dancing with Rosa」(27分) 監督ロベルト・ムニョス・ルぺレス
「La gabia」(19分) 監督アダン・アリアガ
「Maldita. A Love Song to Sarajevo」(27分) 監督アマイア・レミレス・ガルシア
「Memoria」(15分) 監督ネレア・バロス
「Trazos del alma」(14分) 監督ラファエル・G.・アロヨ
◎短編アニメーション賞
「Amanece la noche más larga」(9分) 監督ロレナ・アレス&カルロス・F・デ・ビゴ
「Amarrados」(10分) 監督カルメン・コルドバ
「La prima cosa」(19分) 監督オマル・A.・ラザック&シーラ・ウクライナツShira Ukrainitz
「La primavera siempre vuelve」(10分) 監督アリシア・ヌニェス・プエルト
「Loop」(8分) 監督パブロ・ポレドリPolledri
★以上が全28カテゴリーのノミネーションです。冗談ではないですが、ロドリゴ・ソロゴジェン、アルベルト・ロドリゲス、カルラ・シモンの3作に絞られ、毎度のことながら興味が失せたファンも多いことでしょう。イベロアメリカ映画賞は誰が受賞してもおかしくない力作です。ヨーロッパ映画賞は公開または Netflix 配信と日本語字幕入りで観ることのできます。混戦なのは短編部門、「Arquitectura emocional 1959」のようにバジャドリード映画祭の短編部門で金の穂を受賞した作品も含まれ、ほぼ国際映画祭の短編部門受賞作が選ばれています。いずれ長編に挑戦するシネアストたちです。
★ゴヤ栄誉賞は、既にカルロス・サウラに決定しておりました。授賞式の総合司会者は、クララ・ラゴとアントニオ・デ・ラ・トーレと発表になりました。来年2月11日と大分先になりますので、ノーマーク作品を可能な限りご紹介する予定です。

(総合司会者、アントニオ・デ・ラ・トーレとクララ・ラゴ)
ソロゴジェンの作品賞受賞は確定か*ゴヤ賞2023 ③ ― 2022年12月13日 16:38
『ザ・ビースト』最多ノミネーションの17は予想外とソロゴジェン監督
★第37回を迎えるゴヤ賞2023は、アンダルシアのセビーリャで2月11日に授賞式が開催されます。28カテゴリーは前回アップした通りですが、今年の東京国際映画祭の東京グランプリ、監督賞、男優賞を受賞した『ザ・ビースト』が17個、カテゴリー的には助演男優賞が2人とダブっているので16部門です。最大ノミネート19部門のうち、新人女優・男優、歌曲の3部門がノミネートされなかった。過去には最多ノミネート無冠ということもありましたが今回はどうでしょうか。主演のドゥニ・メノーシェ、マリーナ・フォイス、助演女優賞のマリー・コロンはフランス人、誰が受賞しても外国人初受賞となります。
★最多ノミネーションは冗談でなく予想していなかったというロドリゴ・ソロゴジェンは、国際舞台で認められた「Stockholm」(13)以来「同じチームで続けられていることを光栄に思い感謝している・・・フランス人を含む俳優5人がまさかノミネートされるとは思ってもいなかった。マリーは喜びの叫びを挙げました」と。娘を演じたマリー・コロンは、今年の「SKIP シティ国際DシネマFF」に正式出品された『マグネティック・ビート』に主演しており、監督のヴァンサン・マエル・カルドナが監督賞を受賞した。マリーはフランスでは若手女優として主演映画も多く、TVシリーズにも出演している。選ばれた理由として監督は「ポスト・パンデミックや都会の疲れが関係している」とも語り、ライバルにカルラ・シモンを匂わせている。
*作品紹介は、コチラ⇒2022年06月10日

★16個ノミネートのアルベルト・ロドリゲスの「Modelo 77」は、作品・監督・脚本・作曲・主演男優2人・助演男優2人、ほか技術部門は漏れなくノミネートされている。主演男優賞にダブルノミネートは過去にあったかどうか。主演はマヌエルを演じた若いミゲル・エランと思うが、ハビエル・グティエレスが助演かというと少し違うかな。監督は「4人の俳優がノミネートされたのが最も嬉しかった」とコメントしているが、個人的には主演は1作品1人を基本にしてほしい。監督も「ミゲル・エランが映画の重みを担っており、ダブルで選ばれるとは思わなかった」ことを認めたようです。脚本は長年の盟友ラファエル・コボスと共同執筆した。第70回サンセバスチャン映画祭2022のオープニング作品。
*作品紹介は、コチラ⇒2022年07月26日

★つづく11個のカルラ・シモンの2作目「Alcarras」は、作品・監督・脚本・新人女優・新人男優2人・撮影・編集・録音・美術・プロダクションと技術面も押さえている。監督は初めてカメラの前に立った新人3人がノミネートされたことを感謝した。本作はプロの俳優は一人も登場しません。また1年かけて探し続けてくれたキャスティングのミレイア・フアレス、製作者のマリア・サモラに感謝した。本作は来年のアカデミー2023のスペイン代表作品、サモラによると「この映画は今でも映画館で上映されており、よく持ちこたえています。また3週間後にはアメリカで公開され、オスカー・レースに参加しています。ヨーロッパの多くの国でも公開されています」とコメントした。第72回ベルリン映画祭2022金熊賞受賞作品。
*作品紹介は、コチラ⇒2022年01月27日

★同じく11個ノミネートのアラウダ・ルイス・デ・アスアの「Cinco lobitos」は、作品・新人監督・主演女優・脚本・助演女優&男優、新人男優・撮影・編集・録音・プロダクション賞の11カテゴリー。今年の候補作165本のうち50本がデビュー作、本作も監督第1作です。ライア・コスタ演じるヒロインの造形は、監督の自伝的な要素を多く含んでいる作品です。「家父長制の相乗効果が壊れ、平等が自然で有機的な方法で確立されるかどうか確かめる必要があると思います」と監督。第25回マラガ映画祭2022金のビスナガ受賞作品、ライア・コスタとスシ・サンチェスが二人で銀のビスナガ女優賞を受賞した。
*作品紹介は、コチラ⇒2022年05月14日

★ピラール・パロメロの第2作目「La maternal」は、作品・監督・助演女優賞の3カテゴリーと少ないですが、パロメロらしい繊細さで評価は高い。未成年のまま望まぬ妊娠をしてしまった少女たちの避難所を舞台に、アマチュアの少女を起用して紛れこませることで、現実と虚構の境界を曖昧にしている。デビュー作『スクールガールズ』(21年公開)で、ゴヤ賞2021の作品・新人監督・脚本賞を攫った。14歳に設定された主役を演じるカルラ・キレスはノミネートされませんでしたが、母親役のアンヘラ・セルバンテスが助演女優賞にノミネートされた。第70回サンセバスチャン映画祭2022に正式出品された。
*作品紹介は、コチラ⇒2022年08月01日

★以上が作品賞にノミネートされた5作品です。
予測がつかない新人監督賞*ゴヤ賞2023 ④ ― 2022年12月15日 14:14
フアン・ディエゴ・ボット、監督デビュー「En los mérgenes」
★新人監督賞部門は混戦状態、作品賞と重なっているのがアラウダ・ルイス・デ・アスアの「Cinco lobitos」、東京国際映画祭で上映されたエレナ・ロペス・リエラの『ザ・ウォーター』、主演にルイス・トサールとペネロペ・クルスを起用したフアン・ディエゴ・ボットの「En los márgenes」、ミケル・グレアの「Suro」、以上4作は長短はあるものの既に作品紹介済みです。カルロタ・ペレダのスリラー・ホラー「Cerdita」は、ゴヤ賞2019短編映画賞を受賞した同タイトル作品がベースになっています。ルイス・デ・アスアは割愛します。
★エレナ・ロペス・リエラの『ザ・ウォーター』は、新人監督・新人女優(ルナ・パミエス)賞のわずか2カテゴリーですが、ノミネート欄にオリジナル題「El agua」を見つけたときには予想が当たって嬉しかった。カンヌ映画祭と併催の「監督週間」でワールド・プレミアされ、トロント、サンセバスチャン、チューリッヒ各映画祭を経て東京国際映画祭「ユースTIFFティーンズ」にやってきた。監督の生れ故郷アリカンテ県オリウエラを舞台に、神秘的かつ人類学的な視点から、娘、母親、祖母三世代の家族の肖像画を儀式、神話、伝統と融合させている。母親にバルバラ・レニー、祖母にニエベ・デ・メディナとプロの女優で固め、それ以外の主役ルナ・パミエスほかはアマチュアを起用し、監督のいとこたちも応援で出演している。
★ノミネートを見ていなかったという監督は、「とても驚いていますがラッキーです。映画の作り方にも見方にも変化の兆しがあり、今年はスペイン映画が成熟していること示した年だと思います。これが人々がさまざまな映画を作れる希望の明りになります」とコメント。既に作品・監督キャリア&フィルモグラフィー紹介をしています。
*作品・監督紹介は、コチラ⇒2022年10月17日

(ルナ・パミエスを配したポスター)
★フアン・ディエゴ・ボットのスリラー「En los márgenes」は、新人監督・主演男優ルイス・トサール・助演女優ペネロペ・クルス・新人男優クリスティアン・チェカ・オリジナル歌曲(“En los márgenes”)エドゥアルド・クルス&マリア・ロサレン、の5カテゴリー。共同脚本家のオルガ・ロドリゲスは監督夫人、エドゥアルド・クルスはペネロペ・クルスの実弟、ボット監督は自作自演です。複雑に絡みあった3つのストーリーを交錯させ、家族、愛、孤独が語られる。24時間というリミットのあるタイムトライアル・スリラー。第75回ベネチア映画祭オリゾンティ部門でワールド・プレミアされ、サンセバスチャン映画祭ペルラス部門に正式出品されている。トサールが12月開催となったフォルケ賞、フェロス賞2023にノミネートされている。
*作品・監督紹介は、コチラ⇒2022年09月03日

★ミケル・グレア(サンセバスティアン1985)の「Suro / Cork」は、新人監督・主演女優賞ヴィッキー・ルエンゴの2カテゴリー、言語はカタルーニャ語、サンセバスチャン映画祭セクション・オフィシアルでワールド・プレミアされ、その後チューリッヒ、レイキャビック、テッサロニキ、ヒホンなど各映画祭に正式出品された。サンセバスチャン映画祭ではFIPRESCI賞とバスク出身のシネアストに与えられるイリサル賞を受賞した。ほかアルメリア映画祭では監督第1作に贈られるFICAL、主役のポル・ロペスがエドゥアルド・ファジャルド賞を受賞している。既に作品・監督キャリア&フィルモグラフィー紹介をしています。
*作品・監督紹介は、コチラ⇒2022年08月01日

★カルロタ・ペレダの「Cerdita / Piggy」は、新人監督・脚色・助演女優カルメン・マチ・新人女優ラウラ・ガラン・メイクアップパロマ・ロサノ・プロダクションサラ・ガルシア賞の6カテゴリーとデビュー作としては頑張っている。2018年の同名短編の延長線上にあり、ゴヤ賞2019短編映画賞、フォルケ賞短編、サラゴサ短編FF、マドリード短編週間ほか、国際短編映画祭の受賞歴を誇っている。かなり体重オーバーな10代のサラを演じたラウラ・ガランが引きつづき長編にも出演している。母親役のカルメン・マチの怪演ぶりも見ものです。一応ジャンル的にはホラー・スリラーのようですが、期待するほど血は流れない。ラウラ・ガランが第28回フォルケ女優賞(ガラ12月17日)、第10回フェロス賞(同2023年1月28日)にも多数ノミネートされているので別途紹介を予定しています。
*作品・監督紹介は、コチラ⇒2022年12月19日

カルロタ・ペレダの「Cerdita」*ゴヤ賞2023 ⑤ ― 2022年12月19日 19:17
ラウラ・ガランのパーフォーマンスに絶句する?

★カルロタ・ペレダのデビュー作「Cerdita」は、前回触れたようにゴヤ賞2019短編映画賞受賞作「Cerdita」(14分)の延線上にあり、主役サラを同じラウラ・ガランが演じている。ペレダ監督が女優、モデル、メディア・パーソナリティとして活躍していたラウラ・ガランに接触したのは2017年、1986年生れの女優は既に30歳を超えていたから、10代の女の子に化けるには若干無理があったのではなかろうか。短編はメディナ・デル・カンポ映画祭2018でプレミアされ、国内は勿論フランスを含めた欧米の映画祭に出品され受賞歴を誇ることになった。短編よりさらに体重と年齢を増やした主役以外はキャストを総入れ替え、長編デビューを果たした。

(女優ラウラ・ガラン、カルロタ・ペレダ監督、撮影リタ・ノリエガ)
「Cerdita」(英題「Piggy」)
製作:Morena Films(西)/ Backup Media(仏)/ Cerdita AIE /
協賛:RTVE / Movister+ / Comunidad de Madrid 他
監督・脚本:カルロタ・ペレダ
音楽:オリヴィエ・アルソン
撮影:リタ・ノリエガ
編集:ダビ・ペレグリア
キャスティング:パウラ・カマラ、アランサ・ベレス
プロダクション・マネージメント:サラ・E・ガルシア
プロダクション・デザイン:オスカル・センペレ
衣装デザイン:アランシャ・エスケロ
メイクアップ&ヘアー:パロマ・ロサノ、ナチョ・ディアス
製作者:メリー・コロメル、(エグゼクティブ)ピラール・ベニト、(共同)ジャン=バティスト・ババン、デビッド・アトラン・ジャクソン、ほか
データ:製作国スペイン=フランス、スペイン語・英語、2022年、スリラー・ホラー、99分、撮影地エストレマドゥーラ州カセレスのビジャヌエバ・デ・ラ・ベラ、2021年7月17日クランクイン、公開スペイン10月14日、ほかカナダ、フランス、オランダ、フィンランド、米国(限定)、インターネット上映(アルゼンチン、米国)など、配給Filmax 他
映画祭・受賞歴:サンダンス映画祭2022でプレミア、シアトル・インデペンデントFF、ブエノスアイレス・インデペンデントFF、トランシルバニア、メルボルン、ブリュッセル、独ファンタジー・フィルムフェス、サンセバスチャン(サバルテギ-タバカレラ部門)、シッチェス、リオデジャネイロ、ベルゲン、テッサロニキ、台北・ゴールデンホース、ベルファスト、ほか多数。Grimmfest 2022 監督賞と女優賞、トゥルーズ・シネエスパーニャ2022女優賞受賞。フォルケ女優賞(受賞ならず)、フェロス賞2023(作品・監督・主演女優・助演女優・ポスターエドゥアルド・ガルシア・予告編マルタ・ロンガス)ノミネート、シネマ・ライターズ・サークル賞2023(新人監督・助演女優・新人女優・脚色)ノミネート。

(左から、ピラール・カストロ、監督、ラウラ・ガラン、カルメン・マチ、
サンセバスチャン映画祭2022フォトコール)
キャスト:ラウラ・ガラン(サラ)、リチャード・ホームズ(見知らぬ男)、カルメン・マチ(サラの母親アスン)、イレネ・フェレイロ(クラウディア)、カミーユ・アギラル(ロチ)、クラウディア・サラス(マカ)、ホセ・パストール(ペドロ)、フリアン・バルカルセル(サラの父親トマス)、アメッツ・オチョア(サラの弟)、フェルナンド・デルガド=イエロ(フアンカルリートス)、ピラール・カストロ(エレナ)、チェマ・デル・バルコ(フアン・カルロス)、フレド・タティエン(ロチ神父)、マレナ・グティエレス(セニョーラ・マリア)、ほか
*ゴチック体はゴヤ賞(監督・脚色・主演女優・助演女優・プロダクション・メイクアップ)にノミネートされている。作曲家オリヴィエ・アルソンはソロゴジェンの『ザ・ビースト』でノミネートされており、本作は残念でした。
ストーリー:エストレマドゥーラの真夏の暑さは地獄、サラのような体重オーバーの少女には絶え間ないイジメを意味します。彼女は外見のため自分を愛せず自分を否定して引きこもる。少女時代には仲良しだったクラウディアの仲間のロチやマカから嫌がらせを受けている。彼女たちのいじめは凄まじく尋常ではない。しかし見知らぬ男が村にやって来ていじめっ子を誘拐するのを目撃したとき、警察に届けるべきか、あるいは復讐を遂げるべきか、ジレンマに直面する。憎しみが憎しみを呼び、村は恐怖に包まれる。
★監督紹介:カルロタ・ペレダ、1975年1月12日マドリード生れ、監督、脚本家。映画はマドリード共同体映画視聴覚学校ECAMで学ぶ。法律を専攻していたので家族は映画に進むことに反対でした。ECAM入学も秘密でしたので学費に困り、並行してテレビ界で仕事をした。TVシリーズ「Periodistas」の脚本家としてスタートを切る。「Lex」(08、2話)、「Acacias 38」(15、15話)、「El secreto de Puente Viej」(18~19、10話)他を監督する。映画は以下の通りだが、共同監督作品は除外した。

(短編映画賞のトロフィーを手にしたカルロタ・ペレダ、ゴヤ賞2019)
2016「Las rubias」(17分)が国内外の140の映画祭で上映、マドリード「短編週間」審査員賞・テレマドリード賞、メディナFFヤング審査員賞、メディナ・デル・カンポ「映画週間」ヤング審査員賞、ソリア市短編コンクール賞などを受賞した。
2018「Cerditas」(14分)は、ゴヤ賞2019短編部門作品賞、ホセ・マリア・フォルケ賞短編賞、ソリア市短編コンクール・ヤング審査員賞、ドノスキノFF脚本賞、サラゴサFF作品賞、短編ファンタスティックLa vieja Encina FF観客賞、タピアレスFF審査員賞、アイダホ・ホラーFF外国部門作品賞、マドリード「短編週間」作品賞ほか、パレンシアFF観客賞、タラベラ・デ・ラ・レイナ短編FFパベス賞(作品・監督・脚本)、サントゥルシネ審査員賞、シン・シティ・ホラーFF審査員賞、各受賞。
2020「There will be Monster」(5分)、アルカラ・デ・エナレス短編FF脚本賞、サン・クガ・ファンタスティック審査員賞受賞。
2022「Cerdita/Piggy」割愛
2023「La ermita」次回作

(短編「Las rubias」のポスター)
★新人監督賞ノミネートとはいえ、TVシリーズを含めるとキャリアは長い。短編「Cerditas」の構想は、監督によると、「いじめについてのブラックユーモアとホラーをミックスした映画を作りたいと思っていた。カセレスで夏を過ごしていたのですが、暑さは尋常でなくシエスタの時間には誰も外出しません。そこで娘がシエスタをしている一番暑い時間帯にプールに出かけていた。するといつも同じ女の子を見かけました。まさかプールに入るつもり?」そこで少女は何をするつもりかというアイデアが浮かんだ。急いで坂道を上って家に着くと汗びっしょり、もう夕方には書き始めていました。監督自身も10代の頃には肥満に苦しんでいた。夏休みになると殊更辛かった。その経験を織り込んだ〈アメリカン・ゴシック〉を構想した。
★主役の女優探しに2年間費やした。ラウラ・ガランがキャラクターを完全に理解していたことに喜びと安堵を覚えました。「ガランのお蔭で、憎しみがさらに憎しみを生むだけであることが明らかな短編映画に纏めることができた」と監督。「スペインの映画業界はサウラやアルモドバル、ボリャインやコイシェ、ネット配信のTVシリーズのお蔭で注目を集めています。しかし忘れて欲しくないのはパコ・プラサやバラゲロのホラー映画です」とインタビューに応えている。
★キャスト紹介:ラウラ・ガラン、1986年グアダラハラ生れ、女優、モデル、メディア・パーソナリティ。2017年6月、舞台演出家パトリック・ベンコモ・ウェーバーと結婚、2児の母、一人は前妻の子供。弟ハビエル・ガランも俳優。2006年TVシリーズ「Brigada policial」でデビュー、映画デビューはカルロス・アウレコエチェアの短編「Yo, Ulrike, grito」(15)、「Cerdita」(18)、『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』(18)、「There will be Monster」、ダビ・ガラン・ガリンドの「Origenes secretos」(20『ヒーローの起源~アメコミ連続殺人事件』Netflix配信)、サラ・バンバ&イバン・マルティン・ルエダスの短編「Familias」(20)、次回作出演はTVシリーズ、アリツ・モレノの「Zorras」(23、8話)が進行中。見知らぬ男役のリチャード・ホームズは、ダニエル・カルパルソロの『ライジング・スカイハイ』(20)に出演している。

(リチャード・ホームズ扮する見知らぬ殺人鬼とサラ)

(撮影中の監督とラウラ・ガラン)

(カルメン・マチ扮するサラの母親アスンとサラ)

(フリアン・バルカルセル扮する肉屋を営む父親トマスとサラ、後方は監督)
ノーチェックの冒険ファンタジー「Irati」5部門ノミネート*ゴヤ賞2023 ⑥ ― 2022年12月22日 17:24
バスク語映画「Irati」の5部門ノミネートにびっくり

★パウル・ウルキホ・アリホのアドベンチャー・ファンタジー「Irati」が、脚色・オリジナル作曲・オリジナル歌曲・衣装デザイン・特殊効果賞の5カテゴリーにノミネートされた。シッチェス映画祭2022でプレミアされ、観客賞、特殊効果賞受賞作品、バスク語映画がノミネートされるのは珍しくなくなったが、エンターテインメントのファンタジーがノミネートされたことに驚きを隠せない。キャストはエネコ・サガルドイ(『アルツォの巨人』)、イツィアル・イトーニョやナゴレ・アランブル(『フラワーズ』)、イニィゴ・アランブル、ラモン・アギーレなど、バスクを代表する俳優が出演している。
「Irati」
製作:Bainet Zinema / Ikusgarri Films / Kilima Media / Irati Zinema
協賛ICAA / RTVE / Triodos Bank
監督・脚本:パウル・ウルキホ・アリホ
音楽:アランサス・カジェハ、マイテ・アロイタハウレギ ’Mursego’
撮影:ゴルカ・ゴメス・アンドリュー
編集:エレナ・ルイス
衣装デザイン:ネレア・トリホス
プロダクション・デザイン:ミケル・セラーノ
美術:ゴルカ・アルノソ、イサスクン・ウルキホ、他
特殊効果:ジョン・セラーノ、(ビジュアル効果)ダビ・エラス、他
製作者:イニャキ・ブルチャガ、パウル・ウルキホ・アリホ、フアンホ・ランダ、(エグゼクティブ)ジョネ・ミレン・ゴエナガ、他
*カラーはゴヤ賞にノミネートされた人。
データ:製作国スペイン=フランス、2022年、バスク語、アドベンチャー、ファンタジー、114分、撮影地アラゴン州ウエスカのロアーレ城、アラバ、ギプスコア、ナバラなど、2021年秋クランクイン。ロアーレ城は保存の良いロマネスク様式の城砦で他作品でも使用されている。
映画祭・受賞歴:シッチェス映画祭2022観客賞・特殊効果賞・メイクアップ賞受賞、第33回サンセバスチャン・ファンタスティック・ホラー映画週間観客賞、テネリフェ・イスラ・カラベラFF 観客賞・特殊効果賞など受賞。公開スペイン2023年2月24日
キャスト:エネコ・サガルドイ(エネコ)、エドゥルネ・アスカラテ(イラティ)、イツィアル・イトーニョ(マリ)、ラモン・アギーレ(ビリラ)、イニィゴ・アランブル(エネコ X)、イニィゴ・アランバリ、ナゴレ・アランブル(オネカ)、他多数
ストーリー:舞台は8世紀のバスク地方、スペイン北部でキリスト教が異教の文化に優位にたったとき、ピレネー山脈を越えようとしていたカール大帝軍の攻撃に直面した、ロンセスバジェス谷のリーダーは古代の女神に助けを求めます。命を捧げるという血の契約によって敵を打ち負かしますが、新しい時代には村の住民を守り導くことを息子のエネコに約束させる前でした。数年後、エネコは使命をはたす約束に直面しています。彼はカール大帝の膨大な宝物のかたわらに異教徒の方法で埋葬されている父親の遺体を取り戻します。自身のキリスト教信仰にもかかわらず、この地域の謎めいた異教の女性イラティの助けが必要になってくる。二人の若者は、「名前をもつすべてが存在する」奇妙で荒れ果てた奥深い森の中に入り込んでいく。カール大帝のロンセスバジェスの戦いに着想を得た冒険ファンタジー。

(フレームから)
★パウル・ウルキホ・アリホ監督紹介:1984年ビトリア生れ、監督、脚本家、製作者、フィルム編集者。2011年「Jugando con la muerte」(18分ミステリーコメディ)で短編デビュー、2012年「Monsters Do Not Exist」(10分)、2015年「El bosque negro」(15分)はエルチェ・ファンタスティックFF特別賞、トランシルバニア短編審査員賞、ほか受賞。

(パウル・ウルキホ・アリホ監督)
★2017年、コメディタッチのファンタジー・ホラー「Errementari」(98分、バスク語)で長編デビュー、アレックス・デ・ラ・イグレシアやカロリナ・バングたちが製作を手掛け、脚本はアシエル・ゲリカエチェバリアが監督と共同執筆、音楽はフランス出身だがバスクに根を下ろして活躍しているパスカル・ゲーニュ、撮影監督に新作と同じゴルカ・ゴメス・アンドリューが参画、キャストは鍛冶屋にカンディド・ウランガ、少女にウマ・ブラカグリアを起用、新作主演のエネコ・サガルドイが悪魔、他にラモン・アギーレ、イツィアル・イトーニョなどがクレジットされている。また新作で特殊効果賞にノミネートされているジョン・セラーノとダビ・エラスがゴヤ賞2019でもノミネートされていた。邦題『エレメンタリ 鍛冶屋と悪魔と少女』で2018年 Netflix で配信されている。

(デビュー作「Errementari」のポスター)
★キャスト紹介:エネコ役のエネコ・サガルドイ(ビスカヤ1994)は、アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョの実話「Handia」(17『アルツォの巨人』)でゴヤ賞2018新人男優賞、スペイン俳優組合新人賞、シネマ・ライターズ・サークル賞を受賞、ほかTVシリーズ「Patria」(20)に出演、ボルハ・デ・ラ・ベガの「Mia y Moi」(21)、ウルキホ・アリホの長編2作に主演している。イラティ役のエドゥルネ・アスカラテは、TVシリーズ「Gutuberrak」(2018~19、5話)でデビュー、ダビ・ペレス・サニュドの短編「Vatios」(22、14分)、今回主役イラティに抜擢された。

(エネコ役のエネコ・サガルドイ、フレームから)

(イラティ役のエドゥルネ・アスカラテ、同)
★マリ役のイツィアル・イトーニョは、TVシリーズ『ペーパー・ハウス』でお馴染みですが、オネカ役のナゴレ・アランブルと、ジョン・ガラーニョ&ホセ・マリ・ゴエナガの『フラワーズ』(14)で共演している。イニィゴ・アランブルは、『アルツォの巨人』、ラモン・アギーレは1986年デビューの大ベテラン、出演作は3桁に達する。TVシリーズ『ペーパー・ハウス』、『エレメンタリ~』、『アルツォの巨人』ではサガルドイの父親役を演じている。バスク語話者は少ないせいか同じ俳優の共演が目立つ。
★スタッフ紹介:オリジナル作曲・オリジナル歌曲賞にノミネートされている、アランサス・カジェハ、マイテ・アロイタハウレギは、パブロ・アグエロの「Akelarre」(20)でタッグを組んでゴヤ賞2021のオリジナル作曲賞、イベロアメリカ・プラチナ賞の音楽賞を受賞している。カジェハはアラウダ・ルイス・デ・アスアの「Cinco lobitos」でフェロス賞2023のオリジナル作曲賞にもノミネート、歌手でもあるマイテ・アロイタハウレギは ’Mursego’ のほうで知られており、フェルナンド・フランコの「La consagración de la primavera」(22)も手掛けている。衣装デザイン賞ノミネートのネレア・トリホスは、「Akelarre」で受賞、「Errementari」、アナ・ムルガレンのコメディ「García y García」(21)、フェリックス・ビスカレットの「No mires a los ojos」(22)などを手掛けている。
*『フラワーズ』、『アルツォの巨人』、「Akelarre」、「La consagración de la primavera」、「Cinco lobitos」、「García y García」、TVシリーズ「Patria」は、当ブログで作品紹介をしています。
第28回ホセ・マリア・フォルケ賞2023*受賞結果 ― 2022年12月26日 10:38
『ザ・ビ-スト』と「Cinco lobitos」が賞を分け合ったフォルケ賞

★去る12月17日、昨年から12月開催と前倒しに変更された第28回ホセ・マリア・フォルケ賞2023の授賞式が、1800人収容できるマドリードのパラシオ・ムニシパル IFEMA MADRID で開催されました。ゴヤ賞の前哨戦という立ち位置ですが、こちらは2021年1月開催だった第26回からTVシリーズも対象になりました。フォルケ賞に監督賞はなく、縁の下の力持ちである製作者に与えられる賞です。各賞に副賞として賞金が授与されます(俳優賞は各3,000ユーロ)。コロナは収束しておりませんがマスク着用が解除されました。ノミネーションはアップしませんでしたが、だいたいゴヤ賞と重なっています。優れた製作者に贈られるEGEDA金のメダルは、ホセ・ルイス・ベルムデス・デ・カストロが受賞しました。総合司会者は、俳優、ダンサー、歌手のアドリアン・ラストラとメキシコの女優エスメラルダ・ピメンテルが担いました。

(アドリアン・ラストラとエスメラルダ・ピメンテル)
*第28回ホセ・マリア・フォルケ賞2023受賞結果*
◎作品賞(フィクション&アニメーション)副賞30,000ユーロ
「As bestas」『ザ・ビースト』(2022;ロドリゴ・ソロゴジェン監督、Arcadia Motion Pictures / Caballo Films / Cronos Entertainment ALE / Le pacte / RTVE / Movistar+)
*ノミネート作品は、カルラ・シモンの「Alcarras」、アラウダ・ルイス・デ・アスアの「Cinco lobitos」、アルベルト・ロドリゲスの「Modelo 77」、ゴヤ賞と同じでした。


(スピーチするロドリゴ・ソロゴジェン)

◎長編ドキュメンタリー賞 副賞6,000ユーロ
「Labordeta, un homble sin más」(2022、パウラ・ラボルデタ&ガイスカ・ウレスティ監督;Urresti PC SL / Un hombre sin más AIE / Aragón TV)


◎女優賞
ライア・コスタ (「Cinco lobitos」)
*ノミネート候補者は、「Cinco lobitos」のスシ・サンチェス、「Cerdita」のラウラ・ガラン、「Girasoles silvestres」のアンナ・カスティーリョの3名でした。、

(ゴヤ賞主演女優賞にもノミネートされているライア・コスタ)
◎男優賞
ドゥニ・メノーシェ (「As bestas」)
*ノミネート候補者は、「En los márgenes」のルイス・トサール、「Modelo 77」のミゲル・エラン、「Manticora」のナチョ・サンチェスの3名でした。


(マドリード入りしていたメノーシェ)
◎TVシリーズ賞(フィクション)6,000ユーロ
「Apagón」(2022、フラン・アラウホ監督; Movistar+ / Buendia Studios)


(5部構成のTVシリーズ)
◎TVシリーズ女優賞
モニカ・ロペス (「Rapa」 2022、ホルヘ・コイラ&ペペ・コイラ;Movistar+ / Portocabo)

(モニカ・ロペスは舞台出演で欠席、ホルヘ・コイラ監督が代理で受け取った)

(主演のモニカ・ロペスとハビエル・カマラを配したポスター)
◎TVシリーズ男優賞
ヘスス・カロサ (「Apagón」)

◎短編賞 副賞3,000ユーロ
「Cuerdas」(2022、エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン;Sirimiri Films SL / Gariza Produkzioak SL / Kaiz Estudio SL / EITB)


◎ラテンアメリカ映画賞 副賞6,000ユーロ
「Argentina, 1985」『アルゼンチン 1985』(サンティアゴ・ミトレ監督;La Union de los Rios / Kenya Films / Amazon Studios / Infinity Hill Prime Video)
*ノミネートされた作品は、アレハンドロ・ロアイサ・グリシの「Utama」(ボリビア)、アルトゥーロ・モンテネグロのサスペンス「Cumpleaños」(パナマ)、マティアス・ビセの「El castigo」(チリ)、ゴヤ賞と重なったのは受賞作と「Utama」だけでした。

(スペインのアマゾンプライムビデオの責任者リカルド・カルボネロが受け取った)

◎Cine y Educación en Valores
「Cinco lobitos」(2022、アラウダ・ルイス・デ・アスア監督;Sayaca Producciones SL / Encanta FilmsSLU / Buena Pinta Media SLU / RTVE / ETB Orange TV)
*ノミネートされた作品は、カルラ・シモンの「Alcarras」、フアン・ディエゴ・ボットの「En los márgenes」、フェルナンド・フランコの「La consagración de la primavera」、カルラ・シモンは無冠に終わりました。

(アラウダ・ルイス・デ・アスア監督と製作者たち)

◎EGEDA金のメダル
ホセ・ルイス・ベルムデス・デ・カストロ
★受賞者は、1943年マドリード生れの製作者。主に60~70年代にスペイン映画およそ50作くらいを製作したプロデューサー。セルジオ・レオーネ、マリアノ・オソレス、フェルナンド・フェルナン=ゴメス、ハビエル・アギーレ、エロイ・デ・ラ・イグレシア、などの監督と仕事をした。俳優では現在でも現役のコンチャ・ベラスコ、カルメン・マウラ、アンヘラ・モリーナ、ホセ・サクリスタン、アントニオ・オソレスなど。最初に手掛けた映画はラモン・フェルナンデスの「Matrimonio al desnudo」、撮影費用が格安にできたためスペインで撮影された『ソロモンとシバの女王』(58)などハリウッド映画も手掛けている。

(受賞スピーチをするベルムデス・デ・カストロ)
★会場が感動の渦になったのは、作品賞受賞でもなく El Consorcio のグループが熱唱したメドレーでもなく、昨年12月13日、第27回フォルケ賞ガラの翌々日に突然鬼籍入りしたホセ・マリア・フォルケの愛娘ベロニカ・フォルケへのオマージュでした。共演が多かったアントニオ・レシネスの、私はベロニカの「夫、恋人、兄、上司、そして親友でした」という愛情込めたオマージュに会場もしんみり、つづくシルビア・アバスカルにも皆うるうるで、未だに愛され続けている在りし日のベロニカの映像に、スタンディングオベーションが何度も繰り返されました。

(ベロニカ・フォルケの映像)

(アントニオ・レシネスとシルビア・アバスカル)
ノミネートされた候補者女優編*ゴヤ賞2023 ⑦ ― 2022年12月29日 08:35
第37回ゴヤ賞の前夜祭に集まったノミネート候補者たち

(ゴヤ賞2023前夜祭、2022年12月20日)
★去る12月19日、マドリードのフロリダ・レティロでゴヤ賞2023の前夜祭が行われ、ノミネートを受けた候補者たちが集いました(2月11日の授賞式はセビーリャで開催)。主演・助演・新人の女優賞紹介は各作品ポスターでしたので、今回はノミネートされた候補者のフォトを中心にアップしました。前夜祭にもかかわらず結構ドレスアップしています。
*第37回ゴヤ賞ノミネーション発表は、コチラ⇒2022年12月08日
★主演女優賞ノミネートのうち、ライア・コスタ、アンナ・カスティーリョ、ヴィッキー・ルエンゴが参加、『ザ・ビースト』のフランス女優のマリーナ・フォイス、『神が描くは曲線で』のバルバラ・レニーは女児を出産したばかりで欠席でした。
*ライア・コスタは、アラウダ・ルイス・デ・アスアのデビュー作「Cinco lobitos」に主演、第28回フォルケ賞女優賞を受賞したばかりです。

*アンナ・カスティーリョは、ハイメ・ロサーレスの「Girasoles silvestres」に主演、フォルケ賞にもノミネートされていました。

*ヴィッキー・ルエンゴは、ミケル・グレアのカタルーニャご映画「Suro」でノミネート。

*バルバラ・レニーは『神が描くは曲線で』でノミネート、フォトはフレームから。

*マリーナ・フォイスは『ザ・ビースト』でノミネート、来年のガラに姿を見せるでしょうか。フォトはフレームから。

★助演女優賞ノミネートのうち、カルメン・マチ、アンヘラ・セルバンテスが参加、マリー・コロン、「Cinco lobitos」のスシ・サンチェス、フアン・ディエゴ・ボットの「En los márgenes」のペネロペ・クルスは不参加でした。
*カルメン・マチは、カルロタ・ペレダの「Cerdita / Piggy」に主人公の母親役で助演、フォトは新人女優賞にノミネートされたラウラ・ガランとのツーショット写真。

*アンヘラ・セルバンテスは、ピラール・パロメロの「La maternal」に主人公の母親役でノミネートされた。

*フランス女優マリー・コロンは、『ザ・ビースト』の娘役でノミネート、フォトはフレームから。

*ペネロペ・クルス、「En los márgenes」のフレームから。

*スシ・サンチェス(左)「Cinco lobitos」のフレームから。

★新人女優賞ノミネートは、アナ・オティン、ルナ・パミエス、バレリア・ソローリャ、ゾーイ・スタイン、ラウラ・ガラン、全員が集いました。今後のことを考えると、万障繰り合わせてでもでしょう。
*アナ・オティンは、カルラ・シモンの「Alcarras」出演でノミネート。

*ルナ・パミエスは、監督のエレナ・ロペス・リエラのデビュー作『ザ・ウォーター』に主演、集いには新人監督賞ノミネートの監督と参加、フォトはツーショットです。

(左がルナ・パミエス)
*バレリア・ソローリャは、フェルナンド・フランコの「La consagración de la primavera」に主演、新人男優賞ノミネートのテルモ・イルレタと参加しました。

*ゾーイ・スタインは、カルロス・ベルムトの『マンティコア』主演でノミネート。

*ラウラ・ガランは、「Cerdita / Piggy」主演でノミネート、フォルケ賞の女優賞にもノミネートされていました。フォトはフォルケ賞に出席したときのものです。

ノミネートされた候補者男優編*ゴヤ賞2023 ⑧ ― 2022年12月31日 15:33
ノミネート259名の多くが参集した前夜祭

★女優編に続いて男優編をアップしますが、〈Encuentro de nominados〉と言われる前夜祭のフォトは、女優陣ほど多く入手できなかったのでフレームからの登場です。「Modelo 77」のハビエル・グティエレスとミゲル・エランは不参加、アルベルト・ロドリゲス監督、脚本賞のラファエル・コボス、助演男優賞のヘスス・カロサが参加、ほか監督、新人監督は概ね参加しているようでした。
★主演男優賞
*ドゥニ・メノーシェは、ロドリゴ・ソロゴジェンの「As bestas」(『ザ・ビースト』)でノミネート、フォルケ賞で男優賞のトロフィーを手にしたばかりです。東京国際映画祭でも男優賞を受賞している。おそらく現地入りするはずです。

*ルイス・トサールは、フアン・ディエゴ・ボットの「En los márgenes」でノミネート、前回のイシアル・ボリャインの「Maixabel」に続いてのノミネートです。

*ナチョ・サンチェスは、カルロス・ベルムトの「Manticora」でノミネート、監督、新人女優賞ノミネートのゾーイ・スタインと3人で参加しています。

*ハビエル・グティエレスは、アルベルト・ロドリゲスの「Modelo 77」でノミネート、おそらく受賞はないでしょう。
*ミゲル・エランは、アルベルト・ロドリゲスの「Modelo 77」でノミネート、二人とも不参加。

(グティエレスとエラン、フレームから)
★助演男優賞
*ディエゴ・アニドは、ロドリゴ・ソロゴジェンの『ザ・ビースト』でノミネート、ルイス・サエラとフランスからの移住者と対立する兄弟役で共演した。
*ルイス・サエラは、上記に同じ。東京国際映画祭に作品を代表して来日しました。ソロゴジェンの「El reino」で第33回ゴヤ賞2019助演男優賞を受賞しています。受賞の可能性ありです。

(左から、ディエゴ・アニド、ルイス・サエラ)
*ラモン・バレアは、アラウダ・ルイス・デ・アスアの「Cinco lobitos」でノミネート、出演本数が短編、TVシリーズを含めると3桁に上るが初ノミネートに驚く。1949年ビルバオ生れ、監督、脚本家でもある。

*フェルナンド・テヘロは、「Modelo 77」でノミネート、不参加。ダビ・セラーノのコメディ「Días de fútbol」でゴヤ賞2004新人男優賞を受賞している。助演男優賞ノミネートは2004年のナチョ・G・ベリーリャの『シェフズ・スペシャル』に続いて2回目。1967年コルドバ生れ。

(中央がフェルナンド・テヘロ、フレームから)
*ヘスス・カロサは、上記に同じ。フォルケ賞TVシリーズ部門の「Apagón」で男優賞を受賞している。ゴヤ賞絡みでは、同監督の「7 vírgenes」で2006年新人賞を受賞している。1987年セビーリャ生れ、故郷に錦を飾れるか。

★新人男優賞
*アルベール・ボッシュは、カルラ・シモンの「Alcarras」でノミネート。

*ジョルディ・プジョルは、上記に同じ。

*ミケル・ブスタマンテは、「Cinco lobitos」でノミネート。

*クリスティアン・チェカは、「En los márgenes」でノミネート。

*テルモ・イルレタは、フェルナンド・フランコの「La consagración de la primavera」でノミネート。

(左は共演者のバレリア・ソローリャ)
★今年の漢字〈戦〉がぴったりの1年でした。私たちとは思考回路の異なる人々が世界を動かしておりますが、希望を捨てずに新しい年を迎えたいと思っています。来る年は庶民にとって良い年でありますように。
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