フアン・ディエゴ・ボット監督デビュー*サンセバスチャン映画祭2022 ⑫2022年09月03日 17:18

         監督デビュー作「En los Márgenes」はスリラードラマ

 

        

 

★俳優フアン・ディエゴ・ボットのキャリアは、子役を含めると70作にもなるから、紹介は代表作、サンセバスチャン映画祭関連、ゴヤ賞など目ぼしい受賞作品に絞らざるをえないが、先ずはペネロペ・クルスとタッグを組んだデビュー作の紹介から。今年の映画国民賞受賞者ペネロペ・クルスの授与式は、本祭期間中に行われるのが恒例ですから、多分ツーショットが見られるでしょう。今回は製作者を兼ねているから、その意気込みも半端ではないようです。脚本を共同執筆したオルガ・ロドリゲスは、10年間の交際期間を経て2017年に結婚、2009年に娘が誕生していた。制作会社 Morena Films のベテラン製作者アルバロ・ロンゴリアは、ペネロペ・クルスとルイス・トサールが主演したフリオ・メデムの『あなたのママになるために』で製作者としてデビューした。ほかにアスガー・ファルハディの『誰もがそれを知っている』も手掛けています。音楽のエドゥアルド・クルス・サンチェスはペネロペ・クルスの実弟、ヌル・アル・レビは監督の実妹という具合に繋がっています。

    

       

 

En los Márgenes / On the Fringe

製作:Morena Films / Amazon Prime Video / Crea SGR / RTVE / TeleMadrid / Head Gear Films 他

監督:フアン・ディエゴ・ボット

脚本:フアン・ディエゴ・ボット、オルガ・ロドリゲス

撮影:アルナウ・バルス・コロメル

音楽:エドゥアルド・クルス

編集:マパ・パストール

キャスティング:アナ・サインス=トラパガ、パトリシア・アルバレス・デ・ミランダ

美術:マリア・クララ・ノタリ

セットデコレーション:ビセンテ・ディアス

衣装デザイン:ワンダ・モラレス

メイクアップ:パブロ・イグレシア、マヌエラ・メリノ

プロダクション・マネージメント:エレナ・アルコレア、ジョセップ・アモロス、アレックス・ミヤタ、アントネーリョ・ノベリャーノ

製作者:アルバロ・ロンゴリア、ペネロペ・クルス、(エグゼクティブ)ステファン・ケリハーStephen Kelliher、ヤナ・ゲオルギエワYana Georgieva、ソフィー・グリーン、コンプトン・ロス、他共同製作者多数

 

データ:製作国スペイン=ベルギー、2022年、スペイン語、スリラードラマ、105分、配給プライムビデオ、スペイン公開2022107

映画祭・受賞歴:第75回ベネチア映画祭2022「オリゾンティ」部門正式出品、第70回サンセバスチャン映画祭2022「ペルラス」部門正式出品

   

キャスト:ペネロペ・クルス(アスセナ)、ルイス・トサール(ラファエル)、フアン・ディエゴ・ボット、マリア・イサベル・ディアス・ラゴ、アデルファ・カルボ、ヌル・アル・レビ、アシャ・ビリャグラン、クリスティアン・チェカ、ハビエル・ペルディゲロ(ヘスス)、セルヒオ・ビリャヌエバ、フェブリス・ブティック(バルのオーナー)、フォント・ガルシア、イレネ・ブエノ・ロヨ、ほか

  

ストーリー:家族、愛、孤独についての映画。複雑に絡みあった三つのストーリーを交錯させながら、人生の流れを永遠に変えてしまう可能性のある重要な24時間を脱して生き残ろうとする3人の登場人物のカウントダウンが描かれる。経済的なストレスが人間関係に与える影響と、愛情と連帯を原動力として前に進むタイムトライアル・スリラー。大都会の片隅に暮らす人々のエモーショナルな旅。

 

       

    

 

フアン・ディエゴ・ボット監督紹介1975年ブエノスアイレス生れ、俳優、舞台演出家、今回長編映画監督としてデビューした。ディエゴ・フェルナンド・ボットとクリスティナ・ロタの長男、アルゼンチン系スペイン人、両親姉妹とも俳優という俳優一家。マリア・ボット(ブエノスアイレス1974)、ヌル・アル・レビ(マドリード1979)、従兄アレハンドロ・ボット(ブエノスアイレス1974)も俳優。19773月、父親はビデラ軍事独裁政権によってデサパレシード、いわゆる犠牲者3万とも言われる行方不明者の一人となった。1978年、2歳になったとき、母親は新しいパートナーとの間に妊娠が分かり、二人の子供を連れてスペイン移住を決意する。翌年、妹ヌル・アル・レビが生まれた。家族はアルゼンチンとスペインの二重国籍をもっている。2021年、演劇国民賞を受賞している。現在はマドリード在住。

 

      

 

★母クリスティナ・ロタがマドリードで設立した俳優養成学校で演技を学ぶ。この学校の同窓生には、ペネロペ・クルス、アントニオ・デ・ラ・トーレ、マルタ・エトゥラ、ラウル・アレバロなど演技派を輩出している。俳優デビューは8歳、1992年アメリカ大陸到達500年を記念して製作された、リドリー・スコットの『1492:コロンブス』でコロンブスの息子ディエゴに扮した。しかし国際舞台への第一歩はモンチョ・アルメンダリスの「Historias del Kronen」(95)主演であった。カンヌFFのコンペティション部門に正式出品されたあと、本祭のメイド・イン・スペイン部門で上映され、翌年のゴヤ新人男優賞にノミネートされた。アルメンダリスの「Obaba」(05)にも起用された。

 

          

              (フアン・ディエゴ・ボット、「Historias del Kronen」から)

 

★他にサンセバスチャンFF関連では、セクション・オフィシアルにアドルフォ・アリスタラインの「MartinHache」(97)、「Roma」(『ローマ』04)、イマノル・ウリベの「Plenilunio」(99、ゴヤ賞2001主演男優賞ノミネート)、ビクトル・ガルシア・レオンの「Vete de mí」(06、ゴヤ賞2007助演男優賞ノミネート)、ペルラス部門には、ジョン・マルコヴィッチの監督デビュー作「Pasos de baile / The Dancer Upstairs」(02、『ダンス・オブ・テロリスト』)ではハビエル・バルデム扮する警部補の部下役で共演、ホアキン・オリストレルの「Los abajo firmantes」(03)はサバルテギ部門で特別上映されている。2011年にはホライズンズ・ラティノ部門の審査員を努めている。ゴヤ賞は上記を含めて5回ノミネートされているが、まだ受賞はない。以前アップしたビクトル・ガルシア・レオンの「Los Europeos」(20)では、フェロス賞2021助演男優賞を受賞したが、フォルケ賞もゴヤ賞もノミネートで終わっている。

 

★今回の「En los Márgenes」が長編デビュー作、短編ではメイド・イン・スペイン部門で上映された、ベテラン&新人総出演の感があるスペイン監督のアンソロジー「¡ Hay motivo !」(0432話)に Doble moral で参加している。これは当時の国民党党首ホセ・マリア・アスナル首相批判がテーマ、2003年のイラク侵攻、移民問題、住宅価格の高騰、メディア操作などテーマはいろいろです。他にアルバロ・ロンゴリアがプロデュースした、5人の監督が1話ずつ手掛けるアンソロジー、TVミニシリーズ「Relatos con-fin-a-dos」(2020分)があり、彼は第5Gourmet で参加、脚本も執筆した。ルイス・トサール、警官役で妹のヌル・アル・レビが出演している。コロナウイルスのパンデミックで混乱に陥った人々を扱ったコメディ、ロマンス、スリラーなど。プライムビデオで配信された。

 

キャスト紹介:主役のペネロペ・クルスルイス・トサール(ルゴ1971)は、当ブログでは常連なので割愛しますが、両人が揃って主演した『あなたのママになるために』、トサールが主演したダニエル・モンソンの『エル・ニーニョ』ほか、主なキャリア&フィルモグラフィー紹介は以下の通りです。

ペネロペ・クルスの紹介は、コチラ20220625

ルイス・トサールの紹介は、コチラ20160703

『エル・ニーニョ』の紹介記事は、コチラ20140920

『あなたのママになるために』の作品紹介は、コチラ20150904

 

   

                       (映画国民賞2022を受賞するペネロペ・クルス

   

         

       (『プリズン211』でゴヤ賞2010主演男優賞を受賞したトサール)