第2弾ドキュメンタリー3作*ラテンビート2020 ③2020年10月14日 18:25

               ラテンアメリカの姿を映す3本のドキュメンタリー

 

★メキシコからは2014926日、ゲレロ州イグアラ市で起きたアヨツィナパ教員養成学校の学生43名の集団失踪事件をめぐる、中国出身の監督アイ・ウェイウェイの『ビボス~奪われた未来』(ドイツ)、キューバからはオーストリア出身の監督フーベルト・ザウパー監督の『エピセントロ~ヴォイス・フロム・ハバナ』(オーストリア、仏)、ベネズエラからはアナベル・ロドリゲス・リオスの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ベネズエラ』(ベネズエラ、英、ブラジル、オーストリア)、3作とも2020年製作です。「ビボス」はパコ・イグナシオ・タイボ二世が2019年に撮った『アヨツィナパの43人』(2部構成、Netflix配信)と同じ事件をテーマにしています。『ダーウィンの悪夢』のフーベルト・ザウパーがアフリカを離れてキューバで撮った「エピセントロ」のテーマは何でしょうか。

 

『ビボス~奪われた未来』(「Vivos」)ドキュメンタリー

(ドイツ。スペイン語・英語、112分)

 監督アイ・ウェイウェイ

★サンダンス映画祭2020ドキュメンタリー・プレミア部門上映、ベルゲン(ノルウェー)映画祭、CPHDOXコペンハーゲン・ドキュメンタリー映画祭、ミュンヘン・ドキュメンタリー映画祭、各ノミネーション。2014926日の夜、メキシコのゲレロ州イグアラ市アヨツィナパ教員養成学校の学生43人の集団失踪事件が起きた。上記したパコ・イグナシオ・タイボ二世の『アヨツィナパの43人』(19Netflix配信)は、事件の真相を追うドキュメンタリーだったが、本作は犠牲者の遺族や生存者へのインタビューで、メキシコの麻薬まみれの政治汚職の闇を掘り下げているようです。前者を見た限りでは、あまりの不条理な事件に言葉が見つからないのですが、中国政府から北京の自宅監禁を余儀なくされた経験をもつ、人権活動家でもあるアイ・ウェイウェイ監督の視点に興味がわく。

 

  

 

    

   (アイ・ウェイウェイ監督とサンダンスFFのプログラマーAnia Trzebiatowska

 

 

『エピセントロ~ヴォイス・フロム・ハバナ』(「Epicentro」)ドキュメンタリー

(オーストリア=フランス=米。スペイン語、108分)

 監督フーベルト・ザウパー

★サンダンス映画祭2020ワールドシネマ・ドキュメンタリー部門審査員大賞受賞、CPHDOXコペンハーゲン・ドキュメンタリー映画祭ノミネート、フランス、米国で公開されている。フーベルト・ザウパー監督といえば、78回米アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた『ダーウィンの悪夢』(04)があまりにも有名だが、タンザニアの事実を伝えていないとして毀誉褒貶相半ばした作品でした。10年後のサンダンスFFに現れた南スーダン独立をテーマにした「We Come as Friends」は特別審査員賞を受賞しています。そしてアフリカを離れてキューバ、1898年はアメリカ大陸におけるスペイン植民地支配の終焉とアメリカ帝国主義時代の始まりの年ですが、プロパガンダとしての映画が誕生した時代でもありました。さて、ザウパーは新作で何を語るのでしょうか。

トレビア:予告編を覗くと、どういうわけかウーナ・カスティーリャ・チャップリン(チャーリー・チャップリンの孫)が出演しており、オリジナル・ソングを披露しています。

 


 

   

   (キューバ国旗を手にしたフーベルト・ザウパー、サンダンスFF2020年124日)

 

    

        (ウーナ・カスティーリャ・チャップリン、映画から)

  

 

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ベネズエラ』(「Once Apon a Time in Venezuera」)

(ベネズエラ=イギリス=ブラジル=オーストリア。スペイン語・英語、99分)

 監督アナベル・ロドリゲス・リオス

★サンダンス映画祭2020ワールドシネマ・ドキュメンタリー部門、ヒューストン・ラテン映画祭、サンディエゴ・ラテン映画祭、アトランタ映画祭、セーレム映画祭など、米国の映画祭のオフィシャル・セレクションで上映されている。23回マラガ映画祭2020長編ドキュメンタリー部門では、Érase una vez en Venezuela, Congo Miradorのタイトルで上映された。

マラカイボ湖の南、コンゴ・ミラドールと呼ばれる水の村がある。ベネズエラの大油田があり、住民たちは近づく議会選挙の準備に追われている。チャビスタ政府のコーディネーターであるタマラ、タマラと対立する学校教師ナタリ、少女ジョアイニは増え続ける汚泥でコミュニティが泥まみれになるのを見ている。漁業で生計を立てている村民は、汚職や環境汚染、政治的荒廃をどうやって生きぬけばいいのか。それぞれの視点でベネズエラの現状を切りとっている。アナベル・ロドリゲス・リオスの長編デビュー作、日本では短編「El galón14)が上映されている。本作については監督紹介を含めて作品紹介を予定しています。

   

      

 

     

       (アナベル・ロドリゲス・リオス監督、サンダンスFFにて)

 

★以上3作は、サンダンス映画祭2020で上映された作品です。

  

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