ハビエル・グティエレス、マラガ―スール賞授与式*マラガ映画祭2019 ⑦ ― 2019年03月25日 17:56
大賞マラガ―スール賞は怖れ知らずの役者ハビエル・グティエレスの手に
★去る3月17日、マラガ―スール賞の授与式が満員のセルバンテス劇場で行われました。授与式に先だって、マラガ大賞者がアントニオ・バンデラス海岸通りに建ててもらえる記念碑の除幕式がありました。写真で分かるようにほぼ等身大の高さで受賞者の名前と手形が彫ってあります。歴代の受賞者の記念碑が建ち並ぶ遊歩道にまた一つ並ぶことになりました。出席者は、マラガ市長フランシスコ・デ・ラ・トーレ、文化担当の市議会議員ジェマ・デル・コラル、日刊紙「スール」編集長マヌエル・カスティージョ、マラガ映画祭総ディレクターのフアン・アントニオ・ビガル、殺到したファンに囲まれてのお披露目でした。
(アントニオ・バンデラス海岸通りに建てられた記念碑の前で)
★授賞式は「El autor」の共演者でマラゲーニャの女優アデルファ・カルボがプレゼンツ、前年の受賞者であるメキシコの監督ギレルモ・デル・トロからトロフィーを受け取った。授賞式前のインタビューで「賞はたくさんあります。重要なことは観客を熱中させること、私たちは観客のために演じています」と語っていたハビエル・グティエレス、授賞式では「光栄で名誉なことです・・・監督や以前の受賞たちに囲まれて戴けることを誇りに思います」とスピーチした。お祝いに駆けつけた『マーシュランド』のアルベルト・ロドリゲスは「彼は決してNoとは言わない、怖れを知らない」と。「El autor」のマヌエル・マルティン・クエンカは「(撮影中に)一緒に遊びに行くときには、いつも私を待っていてくれた大親友だ」と挨拶した。
★TV界を代表してアレホ・サウラス、舞台演出家ダニエル・エシハ、演劇仲間の女優クリスティナ・カスターニョなどもお祝いに馳せつけて祝辞を述べた。母親や息子も、我が息子、我が父の栄誉を目にしたことでした。マラガとの接点は主にセルバンテス劇場での舞台出演が多いということでした。
★ハビエル・グティエレス Javiel Gutiérrez は、1971年アストゥリアスのルアンコ生れ、映画・舞台・TV俳優。その華麗な20年に及ぶキャリアからスペインでは知らない人はいない。1997年短編デビュー、2000年にはTVシリーズ、長編映画は2002年、エミリオ・マルティネス=ラサロの青春コメディ『ベッドの向こう側で』でデビューした。アレックス・デ・ラ・イグレシア、サンティアゴ・セグラの「トレンテ」シリーズ、しかし彼を一躍スターダムに押し上げたのは、アルベルト・ロドリゲスの『マーシュランド』でした。サンセバスチャン映画祭2014男優賞を手始めに、ゴヤ賞、フォルケ賞、フェロス賞、イベロアメリカ・プラチナ賞、フォトグラマス・デ・プラタ、サン・ジョルディ賞などの男優賞を制覇した。
(落ちこぼれ刑事に扮した『マーシュランド』から)
★2015年から翌年にかけては引っ張り凧、セスク・ゲイ『しあわせな人生の選択』(15)、2016年にはイシアル・ボリャイン『オリーブの樹は呼んでいる』、サルバドール・カルボ『1898年、スペイン領フィリピン最後の日』、イニャキ・ドロンソロ『クリミナル・プラン 完全なる強奪計画』、2017年マヌエル・マルティン・クエンカ「El autor」、そしてゴヤ賞2019作品賞を受賞したハビエル・フェセルの「Campeones」と続く。オリオル・パウロの「Durante la tormenta」が最近『嵐の中で』の邦題でNetflix配信が始まっている。以上のようにシリアスドラマもコメディもこなせる怖れ知らずの役者といわれる所以である。本邦でも映画祭、劇場公開、Netflix配信と字幕入りで鑑賞できる機会が増えたことで知名度は確実に上昇中です。
(主役を演じた「El autor」のポスター)
(障害者を視覚化した「Campeones」の監督ハビエル・フェセルと並んで)
★本映画祭開催中に、彼が出演した『マーシュランド』、『オリーブの樹は呼んでいる』、『1898、スペイン領フィリピン最後の日』と「El autor」の4作が特別に記念上映されました。
リカルド・フランコ賞授与式、ラファエル・コボス*マラガ映画祭2019 ⑧ ― 2019年03月26日 19:11
スペインで脚本家として食べていくのは大変です
★3月21日、脚本家ラファエル・コボスの第22回マラガ映画祭「リカルド・フランコ賞」の授賞式がありました。本賞はスペイン映画アカデミーとコラボレーションしています。授賞式を前にして短時間だが本映画祭総ディレクターフアン・アントニオ・ビガルのインタビューに応じた。「裏方である脚本家に光を当ててくださって感謝に堪えない・・・この受賞は私たちがしている仕事の可視化に寄与してくれて、二重に嬉しい」と語った。観客を泣かせたり笑わせたりするのも脚本家の仕事、ホンが悪ければ良作は存在しない。「それにしては脚本家に支払われる報酬は少なすぎると私たちは常々考えています・・・スペインで脚本家として暮らせるのは14パーセント未満」と厳しい実情を明らかにした。これはスペインだけの話ではないでしょう。映画で食べていけるのは一握りのスターだけかもしれない。
(フアン・アントニオ・ビガルのインタビューを受ける受賞者)
★授賞式は年来の友人で仕事仲間でもある女優ブランカ・ロメロと俳優フリアン・ビリャグランの司会で始まり、彼が脚本だけでなく、いつもアルベルト・ロドリゲス監督に寄り添って、キャスティングから撮影クルーのリハーサルにも積極的に参加していることが紹介された。20年来の親友アントニオ・アセド、さらにはアントニオ・デ・ラ・トーレも「最初、どうして撮影中の監督のそばに脚本家が座っているのか奇異に思っていた。しかし次第に各々のセリフや言い方に注意を払っていることが分かり、真底から映画に情熱を傾けていることに感動した」と祝辞を述べた。有終の美を飾ったのは、勿論アルベルト・ロドリゲス監督、「一緒に脚本を書き続けて16年になった。この16年間、君は多くの質問を私に投げかけてきた。そのことが嬉しかったと先ず言いたい。更に私たちがなすべき唯一のことは世の中を理解しようと努力することだ」と心境を吐露した。
★ラファエル・コボスはマーク・トウェインの名言の引用からスピーチを始めた。「作家は説教師には二つのタイプがあると言っている。一つは怖れを持っている人、もう一つは嘘をつく人です。私はいつも嘘はつかないように努めたい」と。続けて自分が常に魅了されてきた脚本家でもあったリカルド・フランコ監督の名前を冠した賞を貰えたことをとても誇りに思っていること、陰の存在である脚本家に光を当ててくれた映画アカデミーに感謝すると述べた。
(スペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソからトロフィーを受け取る受賞者)
(受賞スピーチをする受賞者)
★ラファエル・コボス Rafael Cobos、1973年セビーリャ生れの脚本家、ショーランナー。アルベルト・ロドリゲス監督と二人三脚で脚本を共同執筆していることは、以下のフィルモグラフィーで歴然とする。「20年前から映画で生きているが、アルベルト・ロドリゲスのお蔭でレベルを高めることができた」とコボス。またロドリゲス監督も「彼にゴヤ賞がもたらされたことが何より嬉しい」と相思相愛の仲である。まだタイトルは未発表だが、目下ロドリゲス監督の新作を共同で執筆している最中とか。皆を「驚かせる」内容ということです。
(ロドリゲス監督とラファエル・コボス、『マーシュランド』でゴヤ賞2015脚本賞)
*アルベルト・ロドリゲス監督作品*
2005 7 vírgenes 『7人のバージン』(ラテンビートLB 2006)
ゴヤ賞2007オリジナル脚本賞ノミネーション
2008 After ゴヤ賞2009オリジナル脚本賞ノミネーション、アセカンAsecan 脚本賞受賞
2012 Grupo 7 『UNIT 7 ユニット 7 麻薬取締第七班』ゴヤ賞2013オリジナル脚本賞ノミネート、
アセカン脚本賞受賞
2014 La isla mínima 『マーシュランド』(公開)ゴヤ賞2015オリジナル脚本賞受賞、
アセカン脚本賞受賞、シネマ・ライターズ・サークル脚本賞受賞
2016 El hombre de las mil caras『スモーク・アンド・ミラー 1000の顔を持つスパイ』
(LB 2016、公開)アセカン脚本賞、シネマ・ライターズ・サークル脚本賞、
ゴヤ賞2017脚色賞受賞
2018 La Peste 1(6話)TVシリーズ、Movistar+/ Atipica Films
2019 La Peste 2(6話)同上
*その他の監督作品*
2013 El amor no es lo que ガブリエル・オチョア監督と共同執筆
2013 Ali パコ・バニョス監督と共同執筆
2015 Toro 『トロ』フェルナンド・ナバロと共同執筆、監督キケ・マイジョ
マラガ映画祭2016オープニング作品(コンペティション外)
2019 Yo, mi mujer y mi mujer muerta サンティ・アモデオ監督と共同執筆
(マラガ映画祭2019正式出品)
★リカルド・フランコ賞受賞を記念してアルベルト・ロドリゲスの『マーシュランド』、『UNIT 7 ユニット 7』、『スモーク・アンド・ミラー』の3作が特別上映された。本映画祭では『マーシュランド』の二人の主演者、ハビエル・グティエレスがマラガ―スール賞、ラウル・アレバロがマラガ才能賞、そしてラファエル・コボスのリカルド・フランコ賞と三つの特別賞を受賞、監督も苦労が報われたか。
セシリア・ロス、レトロスペクティブ賞授与式*マラガ映画祭2019 ⑨ ― 2019年03月28日 16:16
「アルモドバルとスルエタは自由で斬新な人、それが私を魅了した」
★3月22日、スペイン映画で最も有名な女優の一人、アルゼンチン出身のセシリア・ロスに「レトロスペクティブ賞―マラガ・オイ」のトロフィーがギター奏者の弟アリエル・ロス(Rotロット、1960)から手渡されました。授賞式に先だって「AC マラガ」ホテルのフォーラムで開催された、マラガ映画祭総ディレクターフアン・アントニオ・ビガルのインタビューでは、「アルモドバルとスルエタは自由で斬新な人、それが私を魅了した」と語った。特に自由のコンセプトについて「芸術は自由な創造から生まれる。限界を設けたり自己検閲していては、核心に迫れない」と強調した。
(ビガルのインタビューを受ける受賞者セシリア・ロス)
★セシリア・ロスの「キャリア&フィルモグラフィー」については、ビルバオで初冬に開催される第56回「ビルバオ記録映画&短編映画祭ZINEBI 2014」で栄誉賞を受賞した折に紹介しております。イバン・スルエタ監督についても言及しております。
*セシリア・ロスの「キャリア&フィルモグラフィー」の紹介は、
★インタビュアーのビガルからアドルフォ・アリスタラインとの接点を訊かれたセシリアは、彼は1975年当時「私のデビュー作であるフアン・ホセ・フシド監督の「No toquen a la nena」の助監督だった。彼とはキャスティングのときに知り合い、私は未だ16歳、それ以来だから40年以上になります」と応えている。「私たちは長きにわたる友情と経験、映画への冒険を共に歩んできました。アドルフォは本当に不思議な監督なの。みんながそう認めている」と。
★デビュー作はスペイン亡命前の映画、アルゼンチンでは他にセルヒオ・レナンの「Crecer de golpe」(77)に出演している。1976年に軍事独裁政権の手で行方不明者になった作家ハロルド・コンティの小説の映画化でした。家族で亡命を決意したには、自分たちも突然行方不明者になるかもしれないという恐怖が背景にあった。当時のアルゼンチンを支配したのは「恐怖の文化」だった。スペインでは比較的早くホセ・ルイス・ガルシの「Las verdes praderas」(77)に起用され幸運な滑り出しであった。
★女性記者からの「男社会の中で働く女性たちの立ち位置について」の質問には、「女性たちはカメラの前でも後でも変革を起こそうとして団結して闘っています。しかし賃金の点からも登場人物の重要性の点からも平等とは言えません。女性の役柄は男性を支えるような物語が多いのです」と映画界の男性優位を否定しませんでした。「自分は少女のときからの夢が叶えられ、とても幸運だったが、<キャリア>という言葉は好きではありません。好きなのは人生に必要な仕事の熟練度と結果と考えています」と、ただ長ければいいというわけではないということでしょうか。
「感謝と名誉なことだと・・仕事と人生は常に繋がっています」とセシリア
★授賞式の進行役は、受賞者と34年前から親友だというアルゼンチン人のパストラ・ベガだった。この受賞が質量ともにプロフェッショナルな仕事をし、常に未来を見据えていた女優セシリア・ロスに与えられたこと、故国を捨てずに大西洋を挟んだ二つの国の橋渡しをしたことに触れた。「スペインに来てからも故国を捨てなかった。彼女は決して二つの国の分断を望まなかったからだ」とパストラ・ベガ。スペインとラテンアメリカ諸国を映画で結びつけようとする「本映画祭の精神にぴったりな代表的な女優の一人です。私たちは離れ離れではありません」とも。
(レトロスペクティブ賞のトロフィーを高く掲げたセシリア・ロス、3月22日)
★続いてアルモドバル映画で共演したロレス・レオン「私たちは知り合って何年も経ちますが、重要なのは最初からの友情が変わらずにずっと続いているということです。女性としても母親としても波長が合って、今日まで全てのことに協力し合っています」と。同じくアルモドバル映画の常連カルロス・アレセスは「彼女はとびぬけた才能の持ち主、彼女の物腰、声、目、あなたは嘘を真のように演じることができる。わざとらしくなくできるのです。映画で楽しんで今では友人としても楽しんでいる」とスピーチ。「アルモドバルの娘たち」の一人であるセシリアのお祝いには、本来ならアルモドバル自身が来マラガしたかったはずですが、この日は新作「Dolor y gloria」の封切り日でした。
★トロフィーのプレゼンターは上述したように、ミュージシャンの弟アリエル・ロットだった。「子供のときから女優になるのが夢だった姉の最初の観客は私でした。彼女のリハーサルに魅惑されていたのでした。今では私一人のためではなく多くのファンのために演技しています。ロス家の家族を代表して感謝を捧げます」と挨拶しました。
(受賞スピーチをするセシリア、後ろは弟アリエル・ロットとロレス・レオン)
★受賞者自身は「ただただ感謝と名誉なことだと感じております。このレトロスペクティブ賞を戴けるのは極めて重要な一つの道程と考えています。キャリアも人生も常に繋がっており、それは同じことなのです」と、受賞が一つの区切りではあっても終りでないことを語ったようでした。
(セシリアとアリエルの姉弟)
★セシリア・ロス Cecilia Roth、1956年8月8日ブエノスアイレス生れ。ユダヤ系ウクライナ人の父は1930年代にアルゼンチンに移民してきた作家、ジャーナリスト、母はメンドーサ生れのセファルディの歌手。1975年3月に起きた軍事クーデタに危険を感じた一家は、翌年家族でスペインに亡命した。軍事独裁政権崩壊後、大西洋を往復しながら映画、TVシリーズなどで活躍している。1997年、アドルフォ・アリスタラインの「Martín Hache」で、スペイン生れでない女優が初めてゴヤ賞1998主演女優賞を手にしたことで話題になりました。更にアルモドバルの『オール・アバウト・マイ・マザー』がアカデミー賞2000外国語映画賞を受賞、セシリアも2個目のゴヤ賞主演女優賞、ヨーロッパ映画賞1999女優賞、フォトグラマス・デ・プラタ2000女優賞、他数々の国際映画祭で受した。
(息子役のエロイ・アソリンと、『オール・アバウト・マイ・マザー』から)
★アルモドバルの『アイム・ソー・エキサイテッド』(13)の後アルゼンチンに戻り、パブロ・トラペロの『エル・クラン』のTVシリーズ版、2018年ルイス・オルテガの「El Ángel」では、「死の天使」と言われた実在した殺人犯のビオピック映画に母親役で出演した。つい最近3月22日公開されたアルモドバルの新作「Dolor y gloria」出演のためスペインに戻った。アルモドバル自身のビオピック映画と言われているが、プラス・フィクションのようです。監督の分身サルバドール・マジョに扮するのがアントニオ・バンデラス、他にペネロペ・クルスが子供時代のサルバドールの母親役で出演している。2019年公開予定のエステバン・クレスポの「Black Beach」の公開が待たれる。
◎主なフィルモグラフィー(短編、TVシリーズは除く)
1976 No toquen a la nena アルゼンチン、監督フアン・ホセ・フシド
1977 Crecer de golpe (仮題「拡がる衝突」)、アルゼンチン、セルヒオ・レナン
1979 La familia, bien, gracias ペドロ・マソー
1979 Las verdes praderas (「緑の大草原」)ホセ・ルイス・ガルシ
1980 Arrebato (「激情」)イバン・スルエタ
1981 Pepi, Luci, Bom y otras chicas del montón 『ペピ、ルシ、ボン、その他の娘たち』
ペドロ・アルモドバル
1982 Laberinto de pasiones 『セクシリア』P. アルモドバル
1983 Entre tinieblas 『バチ当り修道院の最期』同上
1984 ¿ Qué he hecho yo para merecer esto ? 『グロリアの憂鬱』同上
1988 Las amores de Kafka 『カフカの恋』アルゼンチン=チェコスロバキア
ベダ・ドカンポ・フェイホー
1992 Un lugar en el mundo (「世界のある所」)アルゼンチン
アドルフォ・アリスタライン
1997 Martín (Hache) (「マルティン・アチェ」)アルゼンチン=西 同上
1999 Todo sobre mi madre 『オール・アバウト・マイ・マザー』P. アルモドバル
2000 Segunda piel 『第二の皮膚』ヘラルド・ベラ(東京国際レズ&ゲイ映画祭上映邦題)
2001 Vidas privadas 『ブエノスアイレスの夜』アルゼンチン=西 フィト・パエス
2002 Hable con ella 『トーク・トゥ・ハー』P. アルモドバル
2002 Deseo スペイン=アルゼンチン、ヘラルド・ベラ
2002 Kamchatka (「カムチャツカ」)アルゼンチン=西=伊 マルセロ・ピニェイロ
2003 La hija del caníbal 『カマキリな女』メキシコ=西 アントニオ・セラノ
2005 Padre Nuestro (「我らが父」)チリ ロドリーゴ・セプルベダ
2008 El nido vacío (「空っぽの巣」)アルゼンチン=西=仏=伊 ダニエル・ブルマン
2013 Los amantes pasajeros 『アイム・ソー・エキサイテッド』P. アルモドバル
2013 Matrimonio アルゼンチン、カルロス・ハウレギアルソ
2016 Migas de pan スペイン=ウルグアイ、マナネ・ロドリゲス
2018 El Ángel アルゼンチン=ウルグアイ、ルイス・オルテガ
2019 Dolor y gloria スペイン=アルゼンチン、P. アルモドバル
2019 Black Beach スペイン、エステバン・クレスポ
イングリッド・ガルシア・ヨンソン、RTVA賞授与式*マラガ映画祭2019 ⑩ ― 2019年03月29日 16:02
第4回RTVAアンダルシア才能賞はイングリッド・ガルシア=ヨンソンに
★3月22日、アルベニス館で第4回RTVAマラガ才能賞が女優のイングリッド・ガルシア=ヨンソンに授与されました。こんな栄誉賞があるとは気がつきませんでした。RTVA(アンダルシア・ラジオ・テレビ)が与える賞でトロフィーはビスナガでなく「El Gilemaエル・ジレンマ」と意味深なネーミングです。授賞式には、チャンネル・スールのディレクターホセ・アントニオ・デル・サス、マラガ映画祭総ディレクターのフアン・アントニオ・ビガルなどが出席、デル・サスより「エル・ジレンマ」のトロフィーが渡されました。
(トロフィーを高く掲げた受賞者とホセ・アントニオ・デル・サス)
★ホセ・アントニオ・デル・サスは、受賞者は「映画界のホープであり、将来が期待される重要な女優」と、ガルシア=ヨンソンを讃えた。またフアン・アントニオ・ビガルは「私たちとRTVAの関係は特別です。映画祭になくてはならない存在、非常に重要な仕事をしています」と、先ずチャンネル・スールが本映画祭に果たしている宣伝及び普及への尽力に感謝の意を述べた。次いで受賞者イングリッドがスペイン映画に果たした実績を称賛した。
(左から、J. A.ビガル、イングリッド・ガルシア=ヨンソン、J. A.デル・サス)
★受賞者イングリッド・ガルシア=ヨンソンは、嵐のような拍手の中で「エル・ジレンマ」のトロフィーを与えてくれたRTVAとマラガ映画祭にお礼を述べた。「このトロフィーは常に私の人生の目印となるでしょう。人間は自分を明確にすることはできませんが、ジレンマを家の中に持ち込むことは私をわくわくさせる」とスピーチした。「自分はアンダルシア人だと思っています。ここで育って、アクセントもアンダルシア訛りです。私に常に幸せを与えてくれるのもここ、さらに常に重要な仕事もアンダルシアでした。アンダルシア万歳、皆さまにも幸運を」と締めくくった。
★イングリッド・ガルシア=ヨンソン Ingrid García Jonsson は、1991年9月6日、スウェーデンで生まれるが育ったのはセビーリャである。父はセビーリャ出身のスペイン人、母はスウェーデン人。現在はマドリード在住、スペイン語、スウェーデン語、フランス語、英語と語学に堪能。彼女の実績でまず取り上げたいのが、ハイメ・ロサーレスのカンヌ映画祭「ある視点」部門に出品された「Hermosa juventud」(14)の主役ナタリア、赤ん坊を抱え将来に夢が描けない若い夫婦の絶望とバイタリティを好演した。本作は受賞には至らなかったがゴヤ賞、フォルケ賞、フェロス賞、ガウディ賞にノミネートされた他、サン・ジョルディ、トゥールーズ(シネ・エスパーニャ)、トゥリア新人賞を受賞した。
(「Hermosa juventud」から)
(左から、ハイメ・ロサーレス、イングリッド、夫役のカルロス・サストレ)
★2015年ラファ・マルティネスのホラー「Sweet Home」、2016年キケ・マイジョのスリラー「Toro」、2018年アンドレア・ハウリエタの分身もの「Ana de día」、今年に入ってからはリュイス・ミニャロの「Love Me Not」、本映画祭のオープニング作品となったアレホ・フラのコメディ「Taxi a Gibraltar」、オスカル・マルティネスが銀のビスナガ男優賞を受賞したサンティ・アモデオのコメディ「Yo, mi mujer y mi mujer muerta」ほか、公開がアナウンスされている映画が数本控えている。シリアスドラマ、コメディ、ホラー、スリラーとジャンルを厭わない。更にはフェロス賞2019授賞式のメイン司会者を一人で務めたばかりの才媛、過去にはアントニオ・デ・ラ・トーレとかコメディアンのシルビア・アブリルなどベテランが仕切ったから、若干27歳の女優の手に委ねたのは異例のことだったのではないか。
(昼のアナと夜のニナの二役を演じ分けた「Ana de día」のポスター)
(主演のオスカル・マルティネスと。「Yo, mi mujer y mi mujer muerta」から)
(女性兵士に扮した「Love Me Not」から
*「Hermosa juventud」の紹介記事は、コチラ⇒2014年05月04日/05月26日
*「Ana de día」のの紹介記事は、コチラ⇒2019年01月08日
『オフィシャル・ストーリー』にラテン金の映画賞*マラガ映画祭2019 ⑪ ― 2019年03月31日 11:53
「ラテン金の映画賞」にルイス・プエンソの『オフィシャル・ストーリー』
(養父母に扮したエクトル・アルテリオとノルマ・アレアンドロ、養女役アナリア・カストロ)
★今回から「ラテン金の映画賞」が始まり、第1回目はルイス・プエンソのアルゼンチン映画『オフィシャル・ストーリー』(La historia oficial)が選ばれました。1986年に南米大陸に初のアカデミー外国語映画賞のオスカー像をもたらした映画、さらにゴールデン・グローブ賞も受賞しており、両賞を受賞した唯一のアルゼンチン映画でもある。その他カンヌ映画祭1985審査員エキュメニカル賞、養母を演じたノルマ・アレアンドロが女優賞を受賞している。そのほか銀のコンドル賞など数々の国際映画賞を受賞しており、今回の「ラテン金の映画賞」受賞は文句なしと言えるでしょうか。アルゼンチンが次にオスカー像を手にするには2009年のフアン・ホセ・カンパネラの『瞳の奥の秘密』まで待たねばならなかった。
★2016年、公開30周年を記念して修復版が再上映されています。公開30年後のプレス会見で、民主化されたとはいえ軍事独裁政権(1976~83)の総括はなされていなかったから「撮影中には多くの脅迫や嫌がらせをうけた。当時4歳だった養女役のアナリア・カストロが撮影のため外出できないよう自宅を見張って妨害した」と監督は語っていた。また「脚本については、五月広場の祖母たちから貴重なデータや協力を受けた」とも語っています。有名なのは五月広場の母親たちですが、逮捕時に妊娠していた娘たちが出産後直ちに殺害されていたことが既に分かっていたから、孫捜索に切り替わっていた。『オフィシャル・ストーリー』で政府高官夫妻が養女にした子供の母親は、そういう犠牲者の一人でした。オフィシャルな歴史と現実は、往々にして一致しないものです。
(30年後の養母役ノルマ・アレアンドロ、監督、養女ガビを演じたアナリア・カストロ)
★3月21日、来マラガできなかったプエンソ監督の代理として、映画修復録音部門の責任者で、アルゼンチンの国立映画製作学校長、国立映画視聴覚芸術協会INCAA員のカルロス・アバテがビスナガのトロフィーを受け取った。彼はアルゼンチンのベテラン監督カルロス・ソリンやマルセロ・ピニェエロ、フアン・ホセ・カンパネラの録音を手掛けている。プレゼンターはマラガ・フェスティバル・プログラム委員会のメンバーの一人ミリト・トレイロ氏でした。
(カルロス・アバテとミリト・トレイロ、3月21日)
*ルイス・プエンソの代表作*
1985「La historia oficial」(『オフィシャル・ストーリー』)アルゼンチン
監督・脚本・製作、公開
1989「Old Gringo」(『私が愛したグリンゴ』)アメリカ、監督・脚本、公開
1992「La Peste」(『プレイグ』)フランス、監督、カミュの小説『ペスト』の映画化、公開
2004「La puta y la ballena」(『娼婦と鯨』)アルゼンチン=西、監督・脚本・製作、DVD
2007「XXY」(『XXY~性の意思~』)アルゼンチン、製作、監督ルシア・プエンソ、BSスカパー
(以上字幕入りで観られるもの)
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