リカルド・フランコ賞授与式、ラファエル・コボス*マラガ映画祭2019 ⑧ ― 2019年03月26日 19:11
スペインで脚本家として食べていくのは大変です
★3月21日、脚本家ラファエル・コボスの第22回マラガ映画祭「リカルド・フランコ賞」の授賞式がありました。本賞はスペイン映画アカデミーとコラボレーションしています。授賞式を前にして短時間だが本映画祭総ディレクターフアン・アントニオ・ビガルのインタビューに応じた。「裏方である脚本家に光を当ててくださって感謝に堪えない・・・この受賞は私たちがしている仕事の可視化に寄与してくれて、二重に嬉しい」と語った。観客を泣かせたり笑わせたりするのも脚本家の仕事、ホンが悪ければ良作は存在しない。「それにしては脚本家に支払われる報酬は少なすぎると私たちは常々考えています・・・スペインで脚本家として暮らせるのは14パーセント未満」と厳しい実情を明らかにした。これはスペインだけの話ではないでしょう。映画で食べていけるのは一握りのスターだけかもしれない。
(フアン・アントニオ・ビガルのインタビューを受ける受賞者)
★授賞式は年来の友人で仕事仲間でもある女優ブランカ・ロメロと俳優フリアン・ビリャグランの司会で始まり、彼が脚本だけでなく、いつもアルベルト・ロドリゲス監督に寄り添って、キャスティングから撮影クルーのリハーサルにも積極的に参加していることが紹介された。20年来の親友アントニオ・アセド、さらにはアントニオ・デ・ラ・トーレも「最初、どうして撮影中の監督のそばに脚本家が座っているのか奇異に思っていた。しかし次第に各々のセリフや言い方に注意を払っていることが分かり、真底から映画に情熱を傾けていることに感動した」と祝辞を述べた。有終の美を飾ったのは、勿論アルベルト・ロドリゲス監督、「一緒に脚本を書き続けて16年になった。この16年間、君は多くの質問を私に投げかけてきた。そのことが嬉しかったと先ず言いたい。更に私たちがなすべき唯一のことは世の中を理解しようと努力することだ」と心境を吐露した。
★ラファエル・コボスはマーク・トウェインの名言の引用からスピーチを始めた。「作家は説教師には二つのタイプがあると言っている。一つは怖れを持っている人、もう一つは嘘をつく人です。私はいつも嘘はつかないように努めたい」と。続けて自分が常に魅了されてきた脚本家でもあったリカルド・フランコ監督の名前を冠した賞を貰えたことをとても誇りに思っていること、陰の存在である脚本家に光を当ててくれた映画アカデミーに感謝すると述べた。
(スペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソからトロフィーを受け取る受賞者)
(受賞スピーチをする受賞者)
★ラファエル・コボス Rafael Cobos、1973年セビーリャ生れの脚本家、ショーランナー。アルベルト・ロドリゲス監督と二人三脚で脚本を共同執筆していることは、以下のフィルモグラフィーで歴然とする。「20年前から映画で生きているが、アルベルト・ロドリゲスのお蔭でレベルを高めることができた」とコボス。またロドリゲス監督も「彼にゴヤ賞がもたらされたことが何より嬉しい」と相思相愛の仲である。まだタイトルは未発表だが、目下ロドリゲス監督の新作を共同で執筆している最中とか。皆を「驚かせる」内容ということです。
(ロドリゲス監督とラファエル・コボス、『マーシュランド』でゴヤ賞2015脚本賞)
*アルベルト・ロドリゲス監督作品*
2005 7 vírgenes 『7人のバージン』(ラテンビートLB 2006)
ゴヤ賞2007オリジナル脚本賞ノミネーション
2008 After ゴヤ賞2009オリジナル脚本賞ノミネーション、アセカンAsecan 脚本賞受賞
2012 Grupo 7 『UNIT 7 ユニット 7 麻薬取締第七班』ゴヤ賞2013オリジナル脚本賞ノミネート、
アセカン脚本賞受賞
2014 La isla mínima 『マーシュランド』(公開)ゴヤ賞2015オリジナル脚本賞受賞、
アセカン脚本賞受賞、シネマ・ライターズ・サークル脚本賞受賞
2016 El hombre de las mil caras『スモーク・アンド・ミラー 1000の顔を持つスパイ』
(LB 2016、公開)アセカン脚本賞、シネマ・ライターズ・サークル脚本賞、
ゴヤ賞2017脚色賞受賞
2018 La Peste 1(6話)TVシリーズ、Movistar+/ Atipica Films
2019 La Peste 2(6話)同上
*その他の監督作品*
2013 El amor no es lo que ガブリエル・オチョア監督と共同執筆
2013 Ali パコ・バニョス監督と共同執筆
2015 Toro 『トロ』フェルナンド・ナバロと共同執筆、監督キケ・マイジョ
マラガ映画祭2016オープニング作品(コンペティション外)
2019 Yo, mi mujer y mi mujer muerta サンティ・アモデオ監督と共同執筆
(マラガ映画祭2019正式出品)
★リカルド・フランコ賞受賞を記念してアルベルト・ロドリゲスの『マーシュランド』、『UNIT 7 ユニット 7』、『スモーク・アンド・ミラー』の3作が特別上映された。本映画祭では『マーシュランド』の二人の主演者、ハビエル・グティエレスがマラガ―スール賞、ラウル・アレバロがマラガ才能賞、そしてラファエル・コボスのリカルド・フランコ賞と三つの特別賞を受賞、監督も苦労が報われたか。
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