カンヌ映画祭審査委員長にアレハンドロ・G・イニャリトゥ*カンヌ映画祭2019 ①2019年03月06日 17:51

       メキシコからは初めての審査委員長、スペイン語話者としては3人目

    

★今年のアカデミー賞はメキシコ映画のROMA/ローマ』が、アルフォンソ・キュアロンの監督賞と撮影賞、外国語映画賞ではガブリエラ・ロドリゲスが初ノミネート初受賞したばかりでした。そんな熱気も冷めやらぬ226日、今度はカンヌ映画祭の事務局から第72回の「審査委員長はアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ」とアナウンスされた。

 

      

     (第70回カンヌ映画祭2017でのアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ)

 

2015年からカンヌ映画祭会長職にあるピエール・レスキュールは「アレハンドロは勇気と驚きにあふれたシネアストであり、信念の人、時代のアーティストでもある」と選んだ理由をコメントしました。同じく映画祭総代表のティエリー・フレモーは、「カンヌはすべての映画に開かれている映画祭、『バベル』の監督の出席を通して、今度の映画祭ではメキシコ映画が特集されるだろう」と述べたようです。監督自身も「とても名誉なこと」というコメントを出した。映画祭の審査員を引き受けるのは稀なことらしいのですが、丁度10年前、第22回東京国際映画祭2009の審査委員長を務めた経験があります。

 

★スペイン語を母語とする審査委員長第1号は、1967年にノーベル文学賞を受賞したグアテマラの作家ミゲル・アンヘル・アストゥリアス18991974)で、第23回の1970年のことだった。第2号が2017年のペドロ・アルモドバル、第3号がゴンサレス・イニャリトゥ、勿論メキシコからは初めてです。戦後すぐの1946年に始まったカンヌ映画祭の審査委員長は、第1回~3回までがフランスの歴史家ジョルジュ・ユイスマン、第4回がアンドレ・モーロワ、他ジャン・コクトーマルセル・パニョルマルセル・アシャールなどと作家が続き、映画産業に直接携わっているシネアストではありませんでした。製作者や監督、俳優が務める今とは大分様子が違っていた。ヨーロピアンではないアストゥリアスが選ばれたのは、ノーベル文学賞受賞のほかに、一時パリ在住だった時期があったからでしょうか。

 

★ゴンサレス・イニャリトゥ監督が国際舞台に電撃デビューしたのが、ここカンヌでした。2000『アモーレス・ぺロス』がカンヌ映画祭併催の「批評家週間」のグランプリを受賞、本作で同じく鮮烈デビューしたガエル・ガルシア・ベルナルの人生もひっくり返ってしまいました。2006『バベル』で監督賞、2010BIUTIFUL ビューティフル』では主演のハビエル・バルデムが男優賞を受賞、第70回の節目となる2017年には、コンペティション外だが実験的なヴァーチャルリアリティ映画Carne y arenaを、小型飛行機専用の格納庫で上映するという試みをした。審査委員長をつとめたアルモドバルが「映画は映画館だけで見る時代は終わったのか」と語ったのでした。

 

           

 (二人とも若かった『アモーレス・ぺロス』当時のG.G.ベルナルと監督)

    

          

           (バルセロナで撮影中の監督とカンヌ男優賞受賞のハビエル・バルデム)

 

★オスカー像もトータル4個せしめている。大激戦だった2015年に「ハリウッドはコメディが嫌い」を覆して『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』により作品・監督・脚本の3冠、文字通り<奇跡>の受賞でした。手は2本しかないから同時に全部持てなかった。しかし、授賞式のテレビ視聴率はすこぶる悪く、大枚をはたいて放映権を買った企業からはブーイングの嵐、そんなこと「オレの知ったことか」と監督。本作は全米公開ではなかったので見てる人が少なかったのでした。翌年『レヴェナント 蘇えりし者』でまさかの連続監督賞を受賞、主演のレオ様にも念願の男優賞がもたらされ、極寒のカナダで頑張った二人の努力が報われました。Netflix 問題を抱えたまま、何はともあれカンヌは発車しました。

 

     

  (バードマンのマイケル・キートンと監督)

    

       

    (『レヴェナント』撮影中の監督とオスカー賞男優賞のレオナルド・ディカプリオ)

 

 管理人覚え

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