グラシア・ケレヘタ、常軌を逸したコメディに方向転換? ― 2018年10月23日 13:52
女三人よれば姦しい、笑いと殺し、マリベル・ベルドゥが大奮闘!

★先日、ハビエル・フェセルのコメディ「Campeones」(アカデミー賞スペイン代表作品)が映画館を涙と笑いでいっぱいにしている記事をご紹介しましたが、今回は笑いと殺しで会場を沸かせているグラシア・ケレヘタの常軌を逸したコメディ「Ola de crímenes」のご紹介(255館で上映)。スペインのは失業率は、幾分改善されたとはいえ相変わらずEU域内では高い。そんなこととは無関係なのか、日常に笑いが少ないからせめて映画館でもと考えるのか、よくよくコメディが好きな国民です。
*「Campeones」の内容紹介は、コチラ⇒2018年06月12日
★「Campeones」の記録を塗り替えるとは思いませんが、来年のゴヤ賞候補が視野に入ってきました。主演女優の三人は、ケレヘタお気に入りのマリベル・ベルドゥ、最近エルネスト・アルテリオと離婚して自由の身になったフアナ・アコスタ、ホセ・ルイシ・ガルシの常連だったパウラ・エチェバリア。迎え撃つ男性陣はドラマもコメディも何でも来いのベテランアントニオ・レシネス、ルイス・トサール、ハビエル・カマラ、ラウル・アレバロ、これでは勝ち目がないと、TVシリーズで活躍のラウル・ペーニャ、親の七光りを武器に人気急上昇中のミゲル・ベルナルドー、目下売り出し中のアシエル・リカルテなどの若手を招集、若い女性ファンを取り込もうという魂胆です。バスクの州都ビルバオを舞台に繰り広げられる殺人劇とは?

(悪女三人組、左からパウラ・エチェバリア、マリベル・ベルドゥ、フアナ・アコスタ)
「Ola de crímenes」2018年
製作:Bowfinger International Pistures / Crimen Zinema / Historias del Tio Luis / Mediaset Espana / Mogambo / Movistar+ / Telecinco Cinema
監督:グラシア・ケレヘタ
脚本:ルイス・マリアス
音楽:フェデリコ・フシド
撮影:アンヘル・アモロス、ダビ・オメデス
編集:レイレ・アロンソ
美術:ギジェルモ・ジャグノ
衣装デザイン:パトリシア・モネー Monné
メイクアップ&ヘアー:ミル・カブレル、トノ・ガルソン、ノエ・モンテス
プロダクション・マネジメント:アシィエル・ぺレス
キャスティング:ロサ・エステベス
製作者:アルバロ・アウグスティン、Ghislain Barrois、ルイス・マリアス、(以下エグゼクティブ)エドゥアルド・カルネロス、マリア・ルイサ・グティエレス、リカルド・ガルシア・アロッホ、パロマ・モリナ、他
データ:製作国スペイン、スペイン語、2018年、ブラックコメディ、スリラー、撮影地ビルバオ、公開スペイン10月05日、ポルトガル2019年01月03日
キャスト:マリベル・ベルドゥ(主婦レイレ)、ルイス・トサール*(レイレの元夫コスメ)、パウラ・エチェバリア(コスメの新妻バネサ)、フアナ・アコスタ(弁護士スサナ、バネサの友人)、アントニオ・レシネス(刑事アンドニ)、ラウル・ペーニャ(アンドニの部下フアンチュ)、アシエル・リカルテ(レイレの息子アシエル)、ミゲル・ベルナルドー(アシエルの親友フレン)、ハビエル・カマラ*(司祭)、ラウル・アレバロ*(タクシードライバー)、ノラ・ナバス*(イケルネ)、モンセ・プラ(エベリン)、テレサ・ロサノ(祖母パキ)、その他大勢(*印は特別出演)
物語:レイレはビルバオ郊外の庭付き一戸建ての家で何不自由なく息子と快適に暮らしていた。ところが年頃になった息子アシエルが、元夫のコスメを鋏で刺し殺すという予想だにしないことで天と地がひっくり返ってしまった。息子を助けたい一心で、犯人は外部から闖入したという偽装工作に着手する。コスメの新しい妻バネサの汚職事件の隠蔽、その友人弁護士スサナの介入、息子の親友がレイレにぞっこんになるなど、バスク州警察の捜査は混乱して、あろうことかレイレに殺害容疑がかかってきて・・・
友人の悪事を知ったら、あなたならどうします?
★ざっとこんなお話ですから、コラムニストの性格もあって各紙の評価は真っ二つです。方向転換かと評されるグラシア・ケレヘタ監督、「私にはこんな脚本思いつかない」と苦笑い。脚本を執筆したルイス・マリアスについては、「Fuego」を監督した折にご紹介しています。13歳でデビュー、既に35年に及ぶ芸歴のあるマリベル・ベルドゥ(マドリード1970)は、「15 años y un diía」やコメディ「Felices 140」などで、監督と常に二人三脚で映画を作ってきている。ケレヘタと言えばベルドゥ、ベルドゥと言えばケレヘタと言われるほどの仲、「撮影中は生傷が絶えなくて、今でも首が左に回らないの」と、ベルドゥは大口開けて笑う。

(ロエベのケープとパンタロン、シャネルのネックレス、ジョルジオ・アルマーニのブレスレット、ニナ・リッチの帽子、プロモーションのためエルパイス紙のインタビューに応じるベルドゥ)

(レイレの金持ちの元夫役ルイス・トサール、残した荷物を取りに戻って昇天してしまう)

(レイレと尊属殺人犯の息子アシエル役のアシエル・リカルテ)

(レイレの聴聞司祭役で特別出演のハビエル・カマラ)

(女性たちに翻弄されるバスク州警察の刑事役アントニオ・レシネスとラウル・ペーニャ)

(レイレに恋する息子の親友フレン役のミゲル・ベルナルドーと)

(コスメの現妻バネサ役のパウラ・エチェバリアと友人弁護士スサナ役のフアナ・アコスタ)

(タクシードライバー役のラウル・アレバロと)
★女性が主役の映画が曲がり角に来ており、本作はある意味で歴史的な瞬間と語るフアナ・アコスタとパウラ・エチェバリア。品格があるとは思えないセリフも飛び出すらしくハチャメチャなストーリーだが、女性たちは混沌とした男世界で大いに苦しんでいることも事実。最後のオチが観客を納得させられるかどうか。「自由に撮らせてくれた。仕事の本質は変わらないけれど、形式は変わった」とケレヘタ監督。また「自分がTVシリーズを手掛けるなんて考えてもいなかったが挑戦しているのは、自分でも驚きだ」とも。
★キャストのなかで当ブログ初登場の一人、親の七光り組と上述したミゲル・ベルナルドーBernardeau(1996、カタカナ表記?)、親友の母親レイレが好きになってしまう役。初めての大役だが、Netflixで配信中のTVシリーズ『エリート』(「Elite」8話)に既に登場している。長身のイケメン、ドラマでは建設会社社長を父に持つ自信過剰の気障なエリート高校の生徒を演じているが、二十歳過ぎて高校生役はいかにも老けすぎている。母親アナ・ドゥアートは、長寿TVシリーズ「Cuéntame cómo pasó」でイマノル・アリアスと夫婦役を演じた女優、父親ミゲル・アンヘル・ベルナルドーは、本ドラマの製作者。業界の厳しさを知る両親は息子の俳優志望に躊躇していたようだが、現在はバックアップを惜しまない。ドラマもコメディもこなせそうだが未知数です。

(TVドラマ『エリート』出演のミゲル・ベルナルドー)
★プロデューサーの顔ぶれは上述したように豪華版です。アルバロ・アウグスティン、Ghislain Barroisは、『インポッシブル』『KIKI~愛のトライ&エラー』『怪物はささやく』「Perfectos desconocidos」、マリア・ルイサ・グティエレスは、「トレンテ」シリーズ(3、4、5)、『黒い雪』「No dormiras」、リカルド・ガルシア・アロッホは『マーシュランド』と、ブラックコメディ、スリラーを数多く手掛けている製作者たちが参画しています。ケレヘタ監督、脚本家ルイス・マリアスについては以下の関連記事で。

(スペイン公開フォトコール、ケレヘタ監督、ベルドゥ他の出演者)
関連記事・管理人覚え
*「Fuego」監督ルイス・マリアス紹介記事は、コチラ⇒2014年12月11日
*「15 años y un día」の紹介記事は、コチラ⇒2014年01月26日
*「Felices 140」の紹介記事は、コチラ⇒2015年01月07日
* フアナ・アコスタ離婚劇については、コチラ⇒2018年07月11日
* ベルドゥ主演の『アブラカダブラ』(ラテンビート2018上映)は、コチラ⇒2017年07月05日
最近のコメント