第70回ロカルノ映画祭2017*ノミネーション発表 ― 2017年07月30日 17:26
古稀を迎えた小規模ながら世界有数の国際映画祭ロカルノ
(8月2日水曜日、いよいよ開幕されます)
★70回目で思い出すのは、戦後間もない1946年に始まったカンヌ映画祭です。ロカルノ映画祭もカンヌと同じ年に生まれました。カンヌやベネチア、ベルリンやトロントのような大規模な映画祭ではありませんが、芸術と商業のバランスを上手く取りながら、今では夏本番8月に開催される世界有数の国際映画祭としてレベルAに成長しました。ベネチアやトロント、サンセバスチャンなど秋開催の先陣を切って開催され、特に新人監督に広く門戸を開いています。スイス南部イタリア語圏のロカルノ市という立地条件の良さ、世界最大の野外スクリーン「ピアッツア・グランデ」(7500席)の上映などで人気を集めています。しかしどの映画祭も直面しているのが資金難と若い人の映画に対する考え方の変化です。今年のカンヌでも感じたことですが、未来に向けての新しい戦略が待たれるところです。
(1968年よりグランプリ作品には、トロフィー金豹が授与されるようになった)
★第1回のオープニング作品は、ロベルト・ロッセリーニの『無防備都市』(“Roma, Citta Aperta” 1945)だったそうです。既にカンヌ映画祭でワールド・プレミアされていたが、特別賞を受賞しました。グランプリはルネ・クレールの『そして誰もいなくなった』で、ロッセリーニ自身も1948年に戦争三部作の第3作目『ドイツ零年』で受賞しています。彼のネオレアリズモと言われる映画手法は、スペインの若手シネアスト、ガルシア・ベルランガやアントニオ・バルデムにも大きな影響を与えました。日本も1954年に衣笠貞之助の『地獄門』が受賞しています。スペインは非常に遅くアルベルト・セラの”Historia de la meva mort”(2013、カタルーニャ語)が初めて受賞しました。
*アルベルト・セラの金豹賞受賞の記事は、コチラ⇒2013年8月25日
(金豹賞のトロフィーを手にしたアルベルト・セラ)
★さて2017年のコンペティション部門には、ブラジル映画、フリアナ・ロハス&マルコ・ドゥトラの ”As boas maneiras”(“Good Manners” 仏合作)と、チリのラウル・ルイス&バレリア・サルミエントの “La telenovela errante”(“The Wandering Soap Opera”1990)の2作がノミネーションされています。後者の監督ラウル・ルイスは2011年に亡くなっており、サルミエントはルイス監督夫人で編集者だった。1973年のピノチェトの軍事クーデタ以降フランスに亡命しており、ピノチェト失脚後に帰国した。その帰国後の第1作が本作である。1990年11月にたったの6日間で撮影したままの未完成作品をこの度サルミエントが完成させた。米国やチリなどにばらばらに保管されていたネガを編集したようです。多作家だったラウル・ルイスの第121番目の作品になるはずです。彼はロカルノでは、長編第2作となる1968年の “Tres tristes tigres” が、翌年金豹賞を受賞している。そんな経緯もあって今回ノミネーションされたのかもしれない。
(ラウル・ルイスとバレリア・サルミエント)
(出演のパトリシア・リバデネイラ、フランシスコ・レイェス、ルイス・アラルコン、映画から)
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