ベテランと中堅入りまじり混戦模様の助演男優賞*ゴヤ賞2020 ⑪ ― 2020年01月11日 07:10
難しい候補者選び――「Dolor y gloria」から2人ノミネート
(ライバル同士になったスバラグリアとエチェアンディア、スペイン・プレミア3月13日)
★ベテランのエドゥアルド・フェルナンデスは、娘のグレタと親子を演じたベレン・フネスの「La hija de un ladrón」では、主役の常習窃盗犯に扮した。主演男優賞からは漏れたがアメナバルの『戦争のさなかで』で、ウナムノを弾劾するホセ・ミリャン・アストライ役で助演にまわった。2002年、イシドロ・オルティス他の「Fausto 5.0」で主演男優賞を取っている。アルベルト・ロドリゲスの『スモーク・アンド・ミラーズ』では、サンセバスチャン映画祭2016で銀貝賞男優賞受賞だったのでゴヤも取るかと予想したが外れた。『イン・ザ・シティ』(03)で助演受賞以来、主演・助演ノミネーションの山を築くだけで賞からは遠ざかっている。
★アルモドバルの「Dolor y gloria」から、アルゼンチン出身ながらスペインでの出演が多いレオナルド・スバラグリアと、アシエル・エチェアンディアが揃ってノミネートされた。前者は甘いマスクから日本でもファンが多いと思いますが、後者は公開作品がないことから馴染みがないのではないでしょうか。パウラ・オルティスの「La novia」で主演男優賞にノミネートされている。アルモドバルのイマイチだった『抱擁のかけら』(09)でボーイ役として参加したそうですが、編集の段階でボツになりクレジットされなかった。というわけで今回は2度目のオファーでした。残るベニト・サンブラノの「Intemperie」のルイス・カジェホは、ゴヤ賞関連ではノミネートは今回を含めて3回、まだ受賞はない。Netflix配信されたラウル・アレバロの『物静かな男の復讐』(16、『静かなる復讐』DVD)で主演男優賞にノミネートされたが受賞には至らなかった。
◎最優秀賞助演男優賞
アシエル・エチェアンディア 映画「Dolor y gloria」監督ペドロ・アルモドバル
〇アシエル・エチェアンディア(ビルバオ1975)は、俳優、舞台、歌手。バスク出身だが若くしてマドリードに移住、1995年TVシリーズで俳優デビュー。ゴヤ賞関連では、パウラ・オルティスの「La novia」で主演男優賞にノミネートされている。映画、TVに並行して舞台でも活躍、演劇界の最高賞マックス賞2012主演男優賞を「La avería」で、俳優ユニオン賞2011も受賞している。人気TVシリーズ「Velvet」(13~15)の第2シーズンで同じ俳優ユニオン賞2015助演男優賞を受賞するなどしている。アルフォンソ・アルバセテ他の群集劇『セックスとパーティーと嘘』(ラテンビート2009)、当ブログではフアンフェル・アンドレス他の『トガリネズミの巣穴』(同2014)やフリオ・メデムの『あなたのママになるために』(14)をアップしています。2005年ごろ出会ったホセ・ルイス・ウエルタスが別れていなければパートナー。
(バンデラスとエチェアンディア、映画「Dolor y gloria」から)
(パウラ・オルティスの「La novia」で主演男優賞ノミネート、ゴヤ賞2016授賞式)
レオナルド・スバラグリア 映画「Dolor y gloria」監督ペドロ・アルモドバル
〇レオナルド・スバラグリア(ブエノスアイレス1970)は、アルゼンチン俳優ながらフアン・カルロス・フレスナディジョの『10億分の1の男』でゴヤ賞2002新人男優賞受賞、2007助演男優賞にマヌエル・ウエルガが実話をもとにして映画化した『サルバドールの朝』でノミネートされている。スペインとの繋がりはマルセロ・ピニェイロの実話に基づいた「Plata quemada」(00、アルゼンチン・スペイン他)に出演したこと、当時人気絶頂だったエドゥアルド・ノリエガとタッグを組んで悲劇の銀行強盗犯を演じた。2001年東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で『逃走のレクイエム』の邦題で上映され、第1回ラテンビート2004では『炎のレクイエム』と改題されて再上映された。本作の成功がきっかけになりスペインに軸足をおくようになった。翌年『10億分の1の男』(01)、マリア・リポールの『ユートピア』(03)、ビセンテ・アランダの『カルメン』(03)、『サルバドールの朝』(06)とスペイン映画が続いた。公開作品ではダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』(14、スール賞ノミネーション)、イスラエル・アドリアン・カエタノの『キリング・ファミリー 殺し合う一家』(17、銀のコンドル賞受賞)など故国アルゼンチンの映画賞、銀のコンドル賞、マルティン・フィエロ賞など受賞、ノミネーションはかなりの数にのぼる。Netflix配信作品(マルティン・オダラの『黒い雪』ほか多数)を含めるとかなりの作品が見られる。マラガ映画祭2017の最高賞「マラガ賞」を受賞して海岸沿いの遊歩道に手形入りの記念碑を建ててもらっている。
*『人生スイッチ』の紹介記事は、コチラ⇒2015年07月29日
*『キリング・ファミリー 殺し合う一家』の紹介記事は、コチラ⇒2017年02月20日
*マラガ映画祭2017マラガ賞&キャリア紹介は、コチラ⇒2017年03月13日
(レオナルド・スバラグリア、映画「Dolor y gloria」から)
(マラガ賞の記念碑の前で両手を広げるスバラグリア、2017年3月)
ルイス・カジェホ 映画「Intemperie」 監督ベニト・サンブラノ
〇ルイス・カジェホ(カイェホもあり、セゴビア1970)は、1998年TVシリーズでデビュー。ゴヤ賞関連ではフェルナンド・レオン・デ・アラノアの「Princesas」で2006年新人、上記したようにラウル・アレバロの『物静かな男の復讐』で2017主演(俳優ユニオンは受賞)、今回の悪役農園主役で助演とノミネートは3回です。比較的遅いデビューの割には脇役が多いせいか出演本数はTVシリーズ、短編を含めると114作になる。なかでアントニオ・ムニョス・デ・メサの「Amigos de Jesús」(07)では主役を演じている。オスカル・サントスの『命の相続人』(ラテンビート2010)、アレックス・デ・ラ・イグレシアの『グラン・ノーチェ!最高の大晦日』(同2015)、パコ・レオンの『KIKI~愛のトライ&エラー』(同2016)、他にアルベルト・ロドリゲスの『スモーク・アンド・ミラーズ』(同2016)、フェルナンド・ゴンサレス・モリーナのヒット作『ヤシの木に降る雪』にも出演している。他にセルヒオ・バレホンのデビュー作、コメディ「Jefe」(18)では清掃員フアナ・アコスタに翻弄される社長役で主演している。コメディを得意としているが、演技の幅は広い。
*『物静かな男の復讐』の主な紹介記事は、コチラ⇒2017年01月09日
(少年を追う農園主を演じたルイス・カジェホ、映画「Intemperie」から)
(主演男優賞にノミネートされたカジェホ、ゴヤ賞2017授賞式)
エドゥアルド・フェルナンデス 映画『戦争のさなかで』 監督アレハンドロ・アメナバル
〇エドゥアルド・フェルナンデス(バルセロナ1964)は、俳優。上記した以外に、主演・助演ノミネーションの山というのを列記すると、2000新人賞マリアノ・バロッソ「Los lobos de Washington」、2002助演ビガス・ルナ『マルティナは海』、2006主演マルセロ・ピニェイロ「Metodo」、2011助演アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ『ビューティフル』、2015助演ダニエル・モンソン『エル・ニーニョ』(ザ・トランスポーター)、2019助演アスガル・ファルハディ『誰もがそれを知っている』などが主なものであるが、ゴヤ賞以外のガウディ賞、マラガ賞、サン・ジョルディ賞などに広げると書ききれない。バジャドリード映画祭2018栄誉賞を受賞している。
*『エル・ニーニョ』の主な紹介記事は、コチラ⇒2014年11月03日
*『スモーク・アンド・ミラーズ』の紹介記事は、コチラ⇒2016年09月24日
*『誰もがそれを知っている』の主な紹介記事は、コチラ⇒2018年05月08日
(ホセ・ミリャン・アストライに扮したフェルナンデス、映画から)
(銀貝賞のトロフィーを手にしたフェルナンデス、サンセバスチャン映画祭2016授賞式)
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