開幕作品はアルゼンチンの「Jesús López」*サンセバスチャン映画祭2021 ⑯ ― 2021年08月30日 13:41
第4弾――マキシミリアノ・シェーンフェルドの「Jesús López」

★ホライズンズ・ラティノ部門オープニング作品に選ばれた「Jesús López」は、アルゼンチンのマキシミリアノ・シェーンフェルドの長編第3作目、サンセバスチャン映画祭がワールドプレミアです。他に長編ドキュメンタリー2作、短編を数本撮っている。アルゼンチンのエントレリオス州クレスポ生れの監督、脚本家、作家。新作はレーシングドライバーだった従兄ヘスス・ロペスのアイデンティティを引き継ぎたい10代の若者アベルの物語。WIP Latam 2020作品。
「Jesús López」(アルゼンチン=フランス)
製作:Murillo Cine(アルゼンチン)/ Luz Verde(フランス)
監督:マキシミリアノ・シェーンフェルド
脚本:マキシミリアノ・シェーンフェルド、(原作)セルバ・アルマダの”Chicas Muertas”
撮影:フェデリコ・ラストラ
音楽:ハビエル・ディス
編集:アナ・レモン
録音:ソフィア・ストラフェイス
製作者:ヘオルヒナ・Baish、セシリア・サリム(Murillo Cine)、マキシミリアノ・シェーンフェルド、ルセロ・ガルソン(Luz Verde)
データ:製作国アルゼンチン=フランス、スペイン語、2021年、ドラマ、90分、WIP Latam 2020作品、撮影地エントレリオス州バジェ・マリア、期間2019年2月~2020年12月。エントレリオス地域基金、メトロポリタン基金、フランスのシネ・ナショナル・センターCNC基金、INCAA他の協力を得ている。販売代理店Pluto Film
映画祭・受賞歴:第69回サンセバスチャン映画祭2021ホライズンズ・ラティノ部門ノミネート、オープニング作品。
キャスト:ルカス・シェル、ホアキン・スパン、ソフィア・パロミノ、イア・アルテタ、アルフレッド・セノビ、パウラ・ランゼンベルク、ロミナ・ピント、ベニグノ・レル、他
ストーリー:若いレーシングドライバーのヘスス・ロペスが交通事故で亡くなり、町はショック状態に陥った。目的のないティーンエイジャーであるヘススの従弟アベルは、彼の身代りになりたいと次第に思うようになった。ヘススの両親の家に落ちつき、彼の服を着て友人や元のガールフレンドと一緒に出かけたりした。最初は町の人もそれを受け入れ、アベル自身もこの役が気に入っていた。しかし従兄とそっくりであることが彼を不安にさせ、ヘスス・ロペスに変身するほどまでになる。町ではヘススに敬意を表してレースが企画され、アベルは従兄の精神に勇気づけられ故人の車を走らせる。このレースの結果は、変身が本物だったのかどうかを決定するだろう。

(アベル役のルカス・シェル、フレームから)


★監督紹介:マキシミリアノ・シェーンフェルドSchonfeld (アルゼンチン、エントレリオス州クレスポ1982)は、監督、脚本家、製作者。コルドバ国立大学で映画とTVの制作を3年間学んだ後、国立映画実験制作学校ENERCを卒業。2007年短編数本を撮った後、2011年にTVシリーズ「Ander Egg」、2012年TVミニシリーズ「El lobo」で高い評価を得る。長編劇映画デビュー作「Germania」がブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭BAFICI 2012特別審査員賞とFEISAL賞を受賞、同年ハンブルク映画祭で初監督作品に贈られるヤング・タレント賞を受賞、リオやハバナなど国際舞台にデビューした。コペンハーゲン・ドキュメンタリー映画祭から招聘され、カドリー・コーサールと中編「Auster」(14)を共同監督する。
★ミステリアスな長編2作目「La helada negra」がマル・デル・プラタ映画祭2015、次いでベルリン映画祭2016パノラマ部門にノミネート、トゥールーズ、ハバナ、香港、ハイファなどの映画祭に正式出品された。第3作にも起用されたルカス・シェル、ベニグノ・レルがクレジットされている。長編3作目が本作「Jesús López」である。国内外の映画祭審査員を選ばれるなど活躍の場を広げている。

(主演のアイリン・サラスを配した「La helada negra」のポスター)
★2016年、初めてドキュメンタリー「La siesta del tigre」がドク・リスボア映画祭にノミネート、コスキン音楽祭ドキュメンタリー賞を受賞した。2019年ドキュメンタリー「Luminum」を撮っている。

(マキシミリアノ・シェーンフェルド)
★セルバ・アルマダ(エントレリオス1973)の恐怖のクロニクル ”Chicas Muertas”(2014年刊)がベースになっているということでしたが、原作はアルゼンチンで1980年代にそれぞれ別の州(チャコ、コルドバ、エントレリオス)で実際に起きた若い3人の女性殺害事件のノンフィクション。作家が初めてノンフィクションに挑戦して、当時ヒホンのノンフィクション賞などを受賞している話題の作品。テーマはジェンダー差別にもとづく暴力が無処罰に終わることへの怒りが原動力になっている。本作「Jesús López」とどのようにリンクするのか分かりません。アベルの物語とありますが、タイトルになった事故死したヘスス・ロペスの物語かもしれません。

(セルバ・アルマダと ”Chicas Muertas” の表紙)
★本作はエントレリオス州バジェ・マリアで2019年2月にクランクイン、翌年の3月まで間隔をおいてバジェ・マリアとその近郊で撮影された。しかしコロナウイリス感染拡大で中断、再開されたのは2020年12月、1ヵ月で終了させた。従ってWIP Latam 2020(63分)で上映されたのは最終部分が含まれていないことになる。バジェ・マリア市は前作「La helada negra」の撮影地でもあり今回が2度目になる。19世紀末にドイツ移民によって開拓され、現在は観光地になっているが、小さな市町村にとってロケ地になることの経済効果は大きい。エキストラ募集、輸送、ケータリング、宿泊施設の提供、更にはバジェ・マリアの景観や文化を世界に紹介して貰えることで、監督以下クルーに感謝状のオマケがついた。

(バジェ・マリアでの撮影風景)
ドノスティア栄誉賞にジョニー・デップ*サンセバスチャン映画祭2021 ⑰ ― 2021年08月31日 21:12
ドノスティア栄誉賞受賞者はジョニー・デップとマリオン・コティヤール

★第69回サンセバスチャン映画祭2021ドノスティア栄誉賞をジョニー・デップが受賞することは大分前に決まっていましたが、8月24日二人目の受賞者としてマリオン・コティヤールがアナウンスされました。昨年はコロナウイリス感染拡大でヴィゴ・モーテンセン一人でしたが、今年は2人 米国とフランスの俳優が選ばれました。ジョニー・デップは9月22日、マリオン・コティヤールはオープニングの9月17日にメイン会場クルサールで授与式が行われます。両人とも日本語版ウィキペディアで読めますので、ごく簡単に発表順にアップします。今回はジョニー・デップ。 彼は昨年も本祭に参加、ジュリアン・テンプルのドキュメンタリー「Crock of Gold: AFew Rounds With Shane MacGowan」の製作者の一人、自身もシェン・マガウアンと共演している。 テンプル監督が審査員特別賞を受賞した。


(昨年のSSIFFに来サンセバスチャンしたジョニー・デップ)
★ ジョニー・デップ(ジョン・クリストファー・デップ2世)は、1963年ケンタッキー州生れ、俳優、プロデューサー、ミュージシャン。ギタリストとしてキャリアをスタートさせる。映画デビューは21歳のとき、ウェス・クレイブンのホラー映画『エルム街の悪夢』(84)で殺人鬼フレディ・クルーガーの犠牲者役で出演した。1990年『クライ・ベイビー』で初めて主役を演じ、「一番好きな監督」というティム・バートンのファンタジー『シザーハンズ』(90)でゴールデン・グローブ賞(ミュージカルコメディ部門)の主演男優賞にノミネートされた。『エド・ウッド』(94、モノクロ)、『スリーピー・ホロウ』(99)など、2016年の『アリス・イン・ワンダーランド』までバートン映画には9本出演している。

(相思相愛?のティム・バートン監督とジョニー・デップ)
★90年代の華々しいキャリアとして、忘れられないのがラッセ・ハルストレムの『ギルバート・グレイプ』(93)、知的障害をもつ弟(レオナルド・ディカプリオがアカデミー賞助演男優賞にノミネート)の世話をしながら一家の大黒柱役を演じた。ジョニデもレオさまもとても好かった。他に同監督の『ショコラ』(00)ではロマの青年に扮し、ぶっとんだ女優ジュリエット・ビノシュに負けない息の合った演技で、共に流れ者の悲哀を演じた。エミール・クストリッツァの『アリゾナ・ドリーム』に主演、監督がベルリン映画祭1993で銀熊審査員グランプリを受賞している。ジム・ジャームッシュの『デッドマン』(95)、マイク・ニューウェルの『フェイク』(97)では、実在したFBI潜入捜査官を演じた。 役柄上髪を剃って禿頭にした、テリー・ギリアムの『ラスベガスをやっつけろ』(98)、ロマン・ポランスキーの『ナインスゲート』(99、米西仏合作)など、90年代が一番充実していたのではないか。米アカデミー賞はノミネートだけで受賞歴はないが、1999年にはフランス映画アカデミーのセザール栄誉賞を受賞している。多分ハリウッドスターとしては最も早かったのではないか。

★21世紀に入るとゴア・ヴァービンスキー他が監督したシリーズ『パイレーツ・オブ・カリビアン』(03、06、07、11、17)で新しい世代のファンを獲得した。第1作目でアカデミー主演男優賞にノミネートされたが、前述したように他作品でも受賞はない。ゴールデン・グローブ賞にいたっては、ノミネート9回、ティム・バートンの『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』(07)で主演男優賞(ミュージカルコメディ部門)をやっと受賞しただけ。 最近は受賞から遠ざかっているが、ゴア・ヴァービンスキーの『ローン・レンジャー』(13)、ロブ・マーシャルのミュージカル『イントゥ・ザ・ウッズ』(14)、またスコット・クーパーの『ブラック・スキャンダル』(15)はSSIFF のパールズ部門で上映された。
★当ブログでも『夷狄を待ちながら』のタイトルで紹介したチロ・ゲーラの『ウェイティング・バーバリアンズ 帝国の黄昏』(19)、最新作アンドリュー・レヴィタスの『MINAMATAミナマタ』(20)では、水俣を伝えたジャーナリストの一人、写真家のユージン・スミスに扮する。水俣を考える微妙な作品ながら間もなく公開されることが決定した(9月23日)。今年は水俣病が公式認定されて65年目だそうで新刊や改版版が刊行される。新しいファンが期待される。

(キャプテン・ジャック・スパロウ)
★私生活では不祥事も含めて何かと話題が豊富だが、破格の出演料、多額の寄付やチップで有名、子煩悩で、ファンのサインに気軽に応じるなど偉ぶらない。現在はコロナでファンはおいそれと近づけないが、スペインでの人気は高い。メイン会場のクルサールで、9月22日にマヌエル・マルティン・クエンカの「La hija」の上映前に授与式がもたれる。9月13日にチケット販売が予告されている。次回はもう一人の受賞者マリオン・コティヤール。
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