サバルテギータバカレラ*サンセバスチャン映画祭2018 ⑥2018年08月01日 14:52

                    サバルテギは「何でもありの部門」です!

 

     

サバルテギZabaltegiは、バスク語で「自由」という意味で、その名の通り言語やジャンルを問わない。従って本数も多く今年はスペイン語映画は、長編3短編2で、バスク語は見当たりません。タバカレラTabakaleraは、かつてのスペイン煙草専売公社だった建物を2010年から5年がかりで大改装、現在ではサンセバスチャンの現代文化国際センターに生まれ変わりました(開館は2015911日)。展覧会などができる展示場のほか、常設の映画館、レストラン、ホテル、博物館のような機能も兼ね備えており、市の観光スポットになっています。サンセバスチャン映画祭SSIFF2016年からサバルテギ部門の映画を上映しています。映画国民賞の授賞式は当映画祭が恒例ですが、昨年の受賞者アントニオ・バンデラスの授賞式はタバカレラで行なわれました。

 

               

         (現代文化国際センターに生まれ変わったタバカレラ全景)

 

★長編は、ガリシアはルゴ出身のシャシオ・バーニョの「Trote」、フェデリコ・ベイローの「Belmonte」、アルゼンチンのロラ・アリアスTeatro de guerra」の3本、短編はパンプローナ出身(1988)のマディ・バルベルの「592 metroz goiti」、アリカンテのオリウエラ出身(1982)のエレナ・ロペス・リエラの「Los que desean」の2本です。

 

592 metroz goiti短編ドキュメンタリー(24分)製作国スペイン 2018

監督・脚本・撮影:マディ・バルベル(バーバー?)Maddi Barber

物語:土地の姿が完全に変わってしまったとき、人生にはどんな可能性が残されるのだろうか。1990年代にナバラ州のピレネー山腹にイトイツ・ダムの建設が始まり、7つの村と3つの自然保護区が水没した。むき出しの帯状地帯に標高592メートルの外観が谷の景観を二分している。下では水が流れ、上では人生が続いている。建設予定当初から現在まで建設の是非が問われている。イトイツの名称は水没した村の名前から取られている。

 

   

 

      

                (イトイツ・ダムの遠景)

 

Los que desean短編ドキュメンタリー(24分)、製作国スイス、スペイン、2018

監督:エレナ・ロペス・リエラ Elena López Riera

スイスのジュネーブ大学、マドリードのカルロスⅢ大学で学ぶ。本作はロカルノ映画祭にエントリーされている。短編「Pueblo」(15)がカンヌ映画祭併行開催の「監督週間」にエントリーされている。

物語:スペイン南部、手書きで彩色された小バトのレースについての映画。変わっているのはスピードを競うのではなく、小バトの可愛らしさと滞空時間の長さを競うレースである。

 

 (飛翔する小バトを見上げる参加者たち)

  

    

                (それぞれ彩色された小バト)

 

Trote(「Trot」、スペイン、リトアニア)シャシオ・バーニョ

キャスト:マリア・バスケス(カルメ)、セルソ・ブガーリョ(父ラモン)、ディエゴ・アニド(兄ルイス)、タマラ・カノサ(兄嫁マリア)、フェデリコ・ぺレス、他

 

物語:カルメはガリシア内陸部の山村のパン屋で働きながら両親と暮らしている。父親ラモンとの会話は少なく、母親は病に伏している。この息のつまるような生活から逃げ出したいが、いつも今一歩のところで邪魔がはいる。週末には村伝統の祭り、馬と人間が闘う「ラパ・ダス・ベスタス」が開催される。村では祭りの準備が始まり、カルメの兄ルイスも妻マリアを伴ってマドリードから帰郷、数日間過ごすことになるだろう。トロット、逃亡、人間と馬の、理性と本能の闘いが語られるだろう。

  

     

監督シャシオ(サシオ?)・バーニョXacio Baño(ルゴ、1983)の長編デビュー作。レオン大学の映画学科で学ぶ。短編では既に数々の受賞を得ており、なかで2012年のAnacosは、マラガ映画祭2012の短編部門の審査員特別賞「銀のビスナガ」を受賞したほか、メディナ・デ・カンポ映画週間2013でも「もう一つの視点」賞を受賞している。続く2014年の短編ドキュメンタリーSer e voltar(バルセロナ・インディペンデント映画祭審査員スペシャル・メンション)、2015年のEco(同映画祭観客賞)ほか受賞歴多数。SSIFFより一足早く8月初旬に開催されるロカルノ映画祭の「現在のシネアストたち」部門に正式出品が決定しています。

 

              

              (撮影中の監督とマリア・バスケス)

 

スタッフ:脚本はディエゴ・アメイシェイラス(ホルヘ・コイラの『朝食、昼食、そして夕食』)との共同執筆、撮影はルシア・C・パン、主に港湾都市ポンテべドラで撮影され、製作はFrida Filmsルイサ・ロメオ、ガリシアTVの協力を受けている。

 

    

 (左から、マリア・バスケス、監督、ルイサ・ロメオ、ノミネーション発表会場、720日)

 

★主役のカルメを演じたマリア・バスケス(ビゴ、1979)は、イシアル・ボリャインの「Mataharis」(07)でゴヤ賞2008の助演女優賞にノミネートされ、シネマ・ライターズ・サークル賞では助演女優賞を受賞した。公開作品ではホルヘ・コイラの『朝食、昼食、そして夕食』(10)に小さい役で出演している。SSIFF関連では、ニューディレクターズ部門に正式出品されたネリー・レゲラのMaría (y los demás)16)に出演している。主役のマリアを演じたバルバラ・レニーがフェロス賞の女優賞を受賞した作品、バスケスは2002年から始まったガリシア映画に特化した映画賞メストレ・マテオ賞2017の助演女優賞にノミネートされた。

 

★父親を演じたセルソ・ブガーリョ(ポンテべドラ、1947)は、実話を素材にしたアメナバルの『海を飛ぶ夢』04)の主人公ラモン・サンペドロ(ハビエル・バルデム)の兄役で一躍有名になった。閉鎖的で頑固なガリシア気質の人物を演じてゴヤ賞2005助演男優賞を受賞した。1970年代に舞台俳優として出発、映画デビューはホセ・ルイス・クエルダの『蝶の舌』99)の司祭役ということですから既に50歳を過ぎていた。他にフェルナンド・レオン・デ・アラノアの『月曜日にひなたぼっこ』2002)の失業のため妻に逃げられ孤独死する老人を演じた。脇役が多いが、東京国際映画祭2008Earth Grand Prix賞を受賞したホセ・アントニオ・キロスのコメディ『フェデリコ親父とサクラの木』(原題「Cenizas del cielo」)では主役のフェデリコになった。また レオン・デ・アラノアのAmador10)でもアマドールを主演した。TVシリーズや短編出演のほか声優としても活躍している。   

              

       (カルメ役のマリア・バスケスと父親ラモン役のセルソ・ブガーリョ)

 

★デビュー作「El Apóstata」がSSIFF2015コンペティション部門にノミネートされたフェデリコ・ベイローの「Belmonte」と、アルゼンチンのロラ・アリアスTeatro de guerra」は次回にアップします。前者は『信仰を捨てた男』の邦題でNetflixで放映されている。

 

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