トライベッカ映画祭でニュー・ナラティブ監督賞にチリの新人 ― 2020年05月11日 15:13
ガスパル・アンティーリョのデビュー作「Nadie sabe que estoy aquí」
★新型コロナウイリスCovid-19が全世界を席捲していることで、主要な映画祭は軒並み延期か中止に追い込まれています。トライベッカ映画祭は、911後のニューヨークを元気づけようと翌2002年に始まりました。第19回トライベッカ映画祭2020のオンライン上映の経緯は、前回触れましたように初めての試みとして観客なしだが賞ありで開催されました。全作が上映されたわけではないがネットやYouTubeで見ることができたようです。当然のことながらガラは開催されず、4月29日受賞結果が発表になった。審査員と受賞者はオンラインを通じてやりとりした。
★本映画祭は、US ナラティブ・コンペティションとインターナショナル・ナラティブ・コンペティションの2部門に大きく分かれています。チリのガスパル・アンティーリョのデビュー作「Nadie sabe que estoy aquí」が、後者のニュー・ナラティブ監督賞を受賞しました。チリのクール世代を代表するパブロ・ラライン&フアン・デ・ディオス・ラライン兄弟が設立した制作会社「ファブラ Fabula」がプロデュースしました。主人公メモ・ガリードにチリ出身だがアメリカで活躍するホルヘ・ガルシアが起用されました。ちょっとウルウルする物語です。
「Nadie sabe que estoy aquí」(映画祭タイトル「Nobody Knows I'm Here」)2020
製作:Fabula 協賛Netflix(USA)
監督:ガスパル・アンティーリョ
脚本:エンリケ・ビデラ、ホセフィナ・フェルナンデス、ガスパル・アンティーリョ
撮影:セルヒオ・アームストロング
編集:ソレダード・サルファテ
音楽:カルロス・カベサス
美術:エステファニア・ラライン
キャスティング:エドゥアルド・パシェコ
衣装デザイン:フェリペ・クリアド
助監督:イグナシオ・イラバカ、フアン・フランシスコ・ロサス
プロダクション・マネージメント:エンリケ・レルマン
製作者:アンドレア・ウンドゥラガ(エグゼクティブ)、フアン・デ・ディオス・ラライン、パブロ・ラライン、エドゥアルド・カストロ、クリスティアン・エチェベリア
データ:製作国チリ、スペイン語、2020年、ドラマ、100分、撮影地チリのバル・パライソ、フエルト・オクタイ、サンティアゴ、2018年クランクイン。
映画祭・受賞歴:第19回トライベッカ映画祭2020「インターナショナル・ナラティブ・コンペティション」部門、ワールドプレミア、ニュー・ナラティブ監督賞受賞
キャスト:ホルヘ・ガルシア(メモ・ガリード)、ルイス・ニエッコ(叔父)、ミリャライ・ロボス(マルタ)、ソランヘ・ラキントン、アレハンドロ・ゴイク、ネルソン・ブロト、フリオ・フエンテす、マリア・パス・グランドジェーン、ガストン・パウルズ、エドゥアルド・パシェコ、ロベルト・バンデル
ストーリー:メモは15年間のあいだ、チリ南部の人里離れた牧羊舎に閉じ込められている。ポップスターになるというかつての夢を諦め、大衆の目から遠ざかっていた。マルタはメモの歌声を聴いて、彼の才能が世間に知られる時が来たと思っている。彼女が彼の歌声を記録しビデオを投稿すると、口コミで広がっていき、それはメモを世界から切り離していた遠い過去の暗部を炙り出すことになる。なぜならメモの声が伝説上の花形歌手であったウイル・ウイリーズの声とそっくりだったからである。 (文責:管理人)
(メモ・ガリードに扮したホルヘ・ガルシア)
「姿は人生を決定づけ、人々の認識をゆがめて混乱させる」と監督
★ガスパル・アンティーリョGaspar Antilloのキャリアについては、2015年に監督、脚本、プロデュースした短編「Mala Cara」(Bad Face、8分)がマイアミ・ショート映画祭に出品されたこと以外、詳細が入手できていません。トライベッカ映画祭の監督インタビューでは「この映画はチリ南部に隠され忘れ去られた人物の肖像画です。若い女性の到着が彼の壊れやすい人生をどのように変えるかを描いています。今日の世界では、姿は人生を決定づけ、人々の認識をゆがめて混乱させます」と語っています。またNetflixにリリースされるにあたって、「映画のコンセプトは、疎外されたキャラクターの内面世界を探検するというアイデアから生まれた。偏見をもたずに彼の明るい部分だけでなく暗い部分も描いている」と語っている。
(マイアミ・ショート映画祭でのガスパル・アンティーリョ)
★少年メモは、美しい声の持ち主だったが太っちょでかっこいいとは言えななかった。ハンサムな少年の影武者として舞台裏で歌っていた。そのことは少年の心に深い傷跡を残すことになったというのがメモの暗い過去であった。成人したメモはチリ南部の人里離れた牧羊舎で叔父と一緒に暮らしている。人目を避けながらも豊かな内面世界を育んでいた。この太っちょのメモ・ガリードに扮したのがホルヘ・ガルシアだった。
(叔父役のルイス・ニエッコとメモ役のホルヘ・ガルシア)
(マルタ役のミリャライ・ロボスとメモ)
★ホルヘ・ガルシア Jorge Garcia、1973年ネブラスカ州オマハ生れの俳優、コメディアン。父親がチリ出身の医師、母親がキューバ出身の大学教師ということで、アメリカ人だがスペイン語が堪能。1995年UCLAでコミュニケーション学を専攻、演技はビバリー・ヒルズ・プレイハウスで学んだ。彼のキャリア情報は監督とは反対に豊富である。というのもアメリカABC製作のTVシリーズ、ミステリー・アドベンチャー「Lost」(2004~10「ロスト」)のヒューゴ’ハーリー’レイェス役でブレークしたからです。
(ヒューゴ・レイェス役のホルヘ・ガルシア、「Lost」から)
★スペイン語映画出演は、2011年のパコ・アランゴのコメディ「Maktub」に特別出演した。アランゴ監督はメキシコ生れ(1962年)だがスペインに移住、スペインで映画を撮っている。本作でゴヤ賞2012の新人監督賞にノミネートされている。出演者のゴヤ・トレドも助演女優賞にノミネートされている。続く2作目が同監督の「The Healer」(17)では神父に扮した。「Nadie sabe que estoy aquí」が3作目になる。クランクイン前に「このプロジェクトに参加できることを喜んでいます。私は何十年もチリに行っていないので、あちらの親戚との再会を楽しみにしています」と語っていましたが、果たして再会できたのでしょうか。
(J・ガルシア、アンドニ・エルナンデス、ゴヤ・トレド、ディエゴ・ペレッティ「Maktub」)
★ルイス・ニエッコ Luis Gnecco(サンティアゴ1662)は、パブロ・ララインの『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』(16)でネルーダに扮している。他にグスタボ・G・マリノの『ひとりぼっちのジョニー』(1993)、フェルナンド・トゥルエバの『泥棒と踊り子』(09)、ララインの『No』などでチリの俳優としては知名度があるほうかもしれない。
(ネルーダになったルイス・ニエッコ、『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』から)
★いずれNetflixで世界配信されるということなので(アジアが除外されないことを切に願っています)視聴できたら再アップするつもりです。
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