エロイ・デ・ラ・イグレシア賞にクラウディア・リョサ*マラガ映画祭2017 ― 2017年03月16日 16:37
クラウディア・リョサがエロイ・デ・ラ・イグレシア賞を受賞
★前回に続いてマラガ映画祭の特別賞受賞者のご紹介、エロイ・デ・ラ・イグレシア賞受賞のクラウディア・リョサについてはマラガ映画祭2014に長編第3作「No lleres, vuela」がエントリーされた折に少しだけ紹介しました。本作の原題は「Aloft」で英語で撮られた初めての作品、ニコラス・ボルデュクが撮影監督賞を受賞した。リカルド・フランコ賞のシルヴィ・インベールは初めて当ブログ登場のメイクアップ・アーティストです。片仮名表記はこれでOKでしょうか。
◎エロイ・デ・ラ・イグレシア賞
★クラウディア・リョサ Claudia Llosaは、1976年リマ生れ、ペルー出身の監督、脚本家、製作者。伯父にノーベル賞作家で政治家のマリオ・バルガス=リョサ、映画監督のルイス・リョサ、母親パトリシア・ブエノ・リッソは造形アーティスト、エンジニアの父親アレハンドロ・リョサ・ガルシアと、ペルーでは裕福な一族の家庭に生まれる。ニュートン・カレッジを卒業後、リマ大学で映画演出を専攻、続いて1998年アメリカに渡り、ニューヨーク大学やサンダンス・インスティテュートでも学ぶ。同時期にはマドリードの私立学校TAI(Transforming Arts Instituto)のマスター・コースでも映画を学んでいる。しかし生まれ故郷ペルーに軸足をおいて映画を撮っているようです。デビュー作、第2作とも舞台はアンデス、ここが彼女の原点なのかもしれない。

(クラウディア・リョサ)
*2006年デビュー作「Madeinusa」がロッテルダム映画祭で国際映画批評家連盟賞受賞を皮切りに、サンダンス、マル・デル・プラタ、マラガ(ラテンアメリカ部門)、トゥールーズ(同部門)ほか、各映画祭で上映された。リマ映画祭の第1回監督作品賞とCONACINE賞を受賞する。本作は2003年ハバナ映画祭で脚本がプレミアされ脚本賞を受賞、翌2004年カロリーナ財団他の資金援助を受けてアンデスを舞台に撮る。ラテンビート2006で『マデイヌサ』の邦題で上映された。2007年にもカルタヘナ映画祭作品賞を受賞するなど受賞ラッシュは続き、14歳の少女マデイヌサを演じたマガリ・ソリエルは全くの素人だったが、この成功で女優の道に進む決心をした。

(『マデイヌサ』のポスター)
*第2作「La tita asustada」は、再びマガリ・ソリエルを主演に起用、アンデスに吹き荒れたペルー内戦を舞台に恐怖から解放されるまでの若い女性の自立の旅を描いた。デビュー作の成功もあって、ベルリン映画祭2009に正式出品、金熊賞と国際映画批評家連盟賞FIPRESCIを受賞した。続くグアダラハラ、リマ、ボゴタ、ハバナなど各映画祭でも受賞、ゴヤ賞2010イスパノアメリカ部門、オスカー賞外国語映画賞にもノミネートされ、アリエル賞イベロアメリカ部門の作品賞を受賞した。スペイン映画祭2009で『悲しみのミルク』の邦題で上映された。


(金熊賞のトロフィーを手に喜びの監督とマガリ・ソリエル、ベルリン映画祭)
*第3作が上述した「Aloft」です。ジェニファー・コネリー、メラニー・ロラン、キリアン・マーフィーを起用して、今回は母娘ではなく母と息子の関係を描いている。撮影は主にカナダのマニトバで行われた。本作もベルリン映画祭に正式出品、後マラガ、リオ、プサン、サンダンス、トライベッカなど各映画祭で上映された。他に短編「Loxoro」(2011)がベルリン映画祭2012の短編部門のテディ賞を受賞している。マラガ映画祭に縁が深いとはいえ、長編3作品で本賞受賞は珍しいケースかもしれない。
シルヴィ・インベールがリカルド・フランコ賞を受賞
◎リカルド・フランコ賞
★シルヴィ・インベールSylvie Imbertは、メイクアップアーティスト。1995年フランス映画、パトリック・アレサンドランのコメディ「Ainsi soient elles」(仏=西合作、西題「Mujeres a flor de piel」)のメイクアップでキャリアを出発させるが、アーティストは複数だった(アレサンドランは2003年の『赤ちゃんの逆襲』が公開されている)。1996年、一人で担当したのがヘラルド・エレロの「Malena es un nombre de tango」とペドロ・ぺレス・ヒメネス「Mambrú」の2作、続いてアメナバルの『オープン・ユア・アイズ』にメイクとヘアーを担当してゴヤ賞1998にノミネートされた。

(シルヴィ・インベール)
*以後1年に2~3作のペースで仕事をこなし、2008年ホセ・ルイス・クエルダの「Los girasoles ciegos」、アルモドバルの『私が、生きる肌』(11)、コメディ『アイム・ソー・エキサイテッド!』(13)、パブロ・ベルヘルの『ブランカニエベス』(12)でゴヤ賞を受賞した。他にゴヤ賞受賞はイサベル・コイシェの「Nadie quiere la noche」(15)があり、同作はガウディ賞も受賞した。他にフェルナンド・トゥルエバの『ふたりのアトリエ ある彫刻家とモデル』(12)、ベルヘルの第3作「Abracadabra」(17)など。目下はテリー・ギリアムの「The Man Who Killed Don Quixote」(西題「El hombre que mató a Don Quijote」公開2018予定)を担当している。

(初のゴヤ胸像を手にしたインベール、『ブランカニエベス』ゴヤ賞2013授賞式)
★シルヴィ・インベールは、『エレファント・マン』や『エイリアン』、またはデル・トロの『デビルズ・バックボーン』や『パンズ・ラビリンス』のメイクアップを担当したダビ・マルティ、ジャウマ・バラゲロの『REC』のような特殊メイクを得意とするダビ・アンビトのようなタイプではない。しかしメイク・アーティストとしてのテクニックの高評価が受賞につながったようです。
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