ダニエル・サンチェス・アレバロ”La gran familia espanola”*ゴヤ賞2014ノミネーション ― 2014年01月27日 13:27
★作品賞にノミネートされている5作品のうち未紹介アラカルト(2)
*“La gran familia española” (“Family United”)*
製作:アトレスメディア・シネ(ミケル・レハルサ)、アティピカ・フィルム、S.L.(ホセ・アントニオ・フェレス)他 作品賞ノミネート
監督・脚本:ダニエル・サンチェス・アレバロ 監督賞とオリジナル脚本賞ノミネート
撮影:フアン・カルロス・ゴメス
音楽:Josh Rouse の“Do You Really Want To Be In Love?” 歌曲賞ノミネート
*アントニオ・デ・ラ・トーレとロベルト・アラモが揃って助演男優賞、パトリック・クリアドが新人男優賞にノミネート、他に編集賞(ナチョ・ルイス・カピジャス)、録音賞(カルロス・ファルオロ他)、特殊効果賞(フアン・ラモン・モリーナ他)、メイキャップ&ヘアデザイン賞(ロラ・ロペス他)を含めて10部門(ただし助演男優賞が二人なので≪11≫とカウントしている)の最多ノミネート。
キャスト:アントニオ・デ・ラ・トーレ(長男アダン)/ロベルト・アラモ(次男ベンハミン)/キム・グティエレス(三男カレブ)/ミケル・フェルナンデス(四男ダニエル)/パトリック・クリアド(五男エフライン)/ベロニカ・エチェギ(クリス)/サンドラ・マルティン(モニカ)/アランチャ・マルティ(カルラ)/アリシア・ルビオ(マリサ)/エクトル・コロメー(父親)他
データ:スペイン・スペイン語 2013 コメディ 撮影地マドリード(2012年8月下旬より10月中旬まで) 2013年9月13日公開(封切り1週目732.000ユーロ)
*ノミネート歴:シネマ・ライターズ・サークル2014にベロニカ・エチェギ助演女優賞・ロベルト・アラモ助演男優賞。
プロット:人生とはサッカーのようなもの、ゴールを入れる決まった方法は一つじゃない。戦略を練って決断し、気力と夢と喜びをシャカシャカ振って作ったカクテルだ。勿論ちょっぴり運も必要なんだ。妻に5人の息子を押しつけられ逃げられた父親は未だにそのトラウマから抜け出せない。長男は鬱ぎみ、その娘は次男の≪無垢なる≫オトナと大の仲良し、三男は恋人クリスを四男に横取りされたショックでアフリカへ2年振りに帰国する、そして今日2010年7月11日に18歳の五男が花婿になる。花嫁カルラのお腹は既にサッカー・ボール、なのに幼馴染のモニカが忘れられない。あいにく今日は南アフリカ・ワールド・カップの決勝戦、招待客は結婚式などそっちのけ、スペインじゅうがテレビに釘付けだ。スペインが決勝戦まで勝ち進むなんて誰が予想した!
★ダニエル・サンチェス・アレバロ Daniel Sanchez Arevalo は、1970年マドリード生れ。父ホセ・ラモン・サンチェス、母カルメン・アレバロは共にシネアスト、母親は本作にも出演している。以前にご紹介したことの繰り返しになるが、長編第4作となる“La gran familia español”は、負け組5人兄弟のミクロな世界を描きながら、今やEUのお荷物となっているスペインの、嘘でかためた社会が抱えるマクロな問題にメスを入れている。彼自身16年間も精神分析を受けている思惑の人だから、兄弟の人格には彼が少しずつ投影されている。背景にハリウッドの古典、ブロードウェイでもロングランしたスタンリー・ドーネンの『掠奪された七人の花嫁』(1954)への目配せがあると語っておりましたが、あちらのようにハッピーエンドにはなりません。ワールド・カップ優勝のような目出度しメデタシでもないようです。
*監督が「兄さん、兄さん」と呼んでるアントニオ・デ・ラ・トーレの紹介はあちこちでしてるから、今回初ノミネートの2人だけに致します。
★ロベルト・アラモ Roberto Alamo 1970年マドリード生れ。テレビ出身、人気TVシリーズ“Aguila Roja”(2009~13)にレギュラー出演。サンチェス・アレバロの第2作『デブたち』、公開作品ではアルモドバルの『私が、生きる肌』、ボジャインの『あなたに目をあげる』、未公開だが最近セルバンテス文化センター土曜映画上映会(字幕なし)で上映されたダビ・セラーノの“Dias de fútbol”(2003)、2012年ゴヤ賞新人監督賞他ノミネートで話題となったパウラ・オルティスの“De tu ventana a la mía”(2011)などがある。ゴヤ賞ノミネートは今回が初めて。
★パトリック・クリアド Patrick Criado 1995年マドリード生れ。テレビ出身、ロベルト・アラモと同じTVシリーズ“Aguila
Roja”(2009~13)のヌーニョ役でお茶の間にはお馴染み、ホセ・ラモン・アジェラの“Aguila Roja, la pelicula”(2011)にも同役で出演。本作の年齢設定が18歳、実年齢を演じたわけです。映画デビューはエミリオ・マルティネス・ラサロの“Las 13 rosas”(2007)、本作は2008年ゴヤ賞作品賞以下10部門を制覇、次のホセ・ルイス・クエルダの“Los girasoles ciegos”(2008)も2009年ゴヤ賞作品賞以下8部門を受賞していて、最初の出だしから恵まれている。ただし本人のゴヤ賞ノミネートは今回が初めて。甘いマスクだけでは生き残れない。
★今年は混線状態だからノミネーションの数だけでは判断できないが、いくつかは受賞するでしょう。サンチェス・アルバロ監督は第1作『漆黒のような深い青』からラテンビートやスペイン映画祭などで紹介されている珍しい存在。愛あい、涙なみだ、そして品あるユーモア、今年のラテンビートも期待したい。
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