マルタ・マトゥテのデビュー作が金のビスナガ作品賞*マラガ映画祭2026 ⑦ ― 2026年04月11日 11:41
金のビスナガは若手監督マルタ・マトゥテのデビュー作が受賞

★マラガ映画祭のセクション・オフィシアルは、スペイン映画とイベロアメリカ映画の2本立て、前者の最高賞「金のビスナガ」作品賞は新人監督マルタ・マトゥテのデビュー作「Yo no moriré de amor」が受賞、後者はメキシコのホアキン・デル・パソの「El jardín que soñamos」の手に渡りました。先ず前者の作品紹介から始めます。脚本にマトゥテ監督自身が投影されているという主役を演じたフリア・マスコルトが銀のビスナガ主演女優賞、父親役のトマス・デル・エスタルが銀のビスナガ助演男優賞を受賞しています。昨年もエバ・リベルタードのデビュー作「Sorda」が受賞して女性監督の活躍を印象づけた。本作は『幸せの、忘れもの』という邦題でゴールデンウイークに劇場公開されます。相変わらず陳腐なタイトルですが、何とかなりませんかね。
「Yo no moriré de amor / I Won’t Die for Love」
製作:Elastica Films(スペイン)/ Solita Films(同)/ Saga Film(ベルギー)
協賛:ICAA / RTVE / Movistar Plus+ / Ayuntamiento de Madrid / Filmin /
Comunidad de Madrid
監督・脚本:マルタ・マトゥテ
撮影:サラ・ガジェゴ・グラウ
編集:カルロス・カニャス・カレイラ
音楽:シモン・フランケ
美術:ロシオ・ペーニャ
キャスティング:マリア・ロドリゴ
衣装デザイン:エステル・ルカス・ハケティ Jaqueti
メイクアップ&ヘアー:アンネ・モラリス、サンドラ・オブリエン
製作者:マリア・サモラ(Elastica Films)、ホセ・エステバン・アレンダ、セサル・エステバン・アレンダ(Solita Films)、(エグゼクティブ)セシリア・リバス、フラビア・ビウルン(Saga Film)
データ:製作国スペイン=ベルギー、2026年、スペイン語、ドラマ、94分、撮影地:マドリード自治州バルデモロ(監督の故郷)、公開スペイン2026年5月8日
映画祭・受賞歴;第29回マラガ映画祭セクション・オフィシアル作品、金のビスナガ作品賞、銀のビスナガ助演女優賞(フリア・マスコルト)、助演男優賞(トマス・デル・エスタル)受賞、フェロス賞プエルタ・オスクラ2026受賞(AICEスペイン映画ジャーナリスト協会メンバーが選ぶ賞)
キャスト:フリア・マスコルト(クラウディア)、ソニア・アルマルチャ(母親)、トマス・デル・エスタル(父親)、ラウラ・ワイスマー、ギジェルモ・ベネト、フラン・カントス(ペペ)、レティシア・エタラ、マルク・ドミンゴ(アルベルト)、ダニエル・ゲーロ、ホルヘ・バサンタ、ロレア・インチャウスティ(レイレ)、他
ストーリー:18歳になるクラウディアの物語、母親のアルツハイマー病が静かな嵐のように押し寄せ、長らく断絶していた家族の役割を定義し直す必要に迫られている。クラウディアは早めに始まった介護で彼女の青春は息ができない。介護する義務と同世代の他の女性のように青春を謳歌したい願望のはざまで引き裂かれている。この目の前の現実を生きる方法を探し始めるが、それは家族全員の絆を変えることになるだろう。愛、独立、道義心、義務と願望の葛藤についての物語。

(左から、トマス・デル・エスタル、フリア・マスコルト、マトゥテ監督、
ソニア・アルマルチャ、ラウラ・ワイスマー、マラガFF、3月11日、フォトコール)
★監督紹介:マルタ・マトゥテ Marta Matute García、1988年マドリード自治州バルデモロ生れ、監督、脚本家、女優、撮影監督。2011年、マドリード・コンプルテンセ大学視聴覚コミュニケーション卒、ウィリアム・レイトン劇場ラボラトリーで演劇芸術の学位を取得する。女優として短編映画に出演。ゴン・ラモスやエバ・ミルなどの演出で舞台にも立っている他、パウラ・アモールやハビエル・ヒネルの演出助手も手掛けており、独立系の映画のフィルム編集者でもある。
*フィルモグラフィー:
2016「Zong」短編、監督ボルハ・エチェベリア、女優出演
2017「Grasse Matinée」短編、監督イバン・アルティレス、女優出演
2023「Una amiga」短編、監督、脚本
2024「Xiao Wei」短編、監督Jiajie Yu Yan、脚本共同執筆・女優出演
2026「Yo no moriré de amor」長編デビュー作、監督、脚本


(短編「Una amiga」のポスター)
★金のビスナガ作品賞の「Yo no moriré de amor」は、2020年スペイン映画アカデミーのレジデンシアに選ばれる。2021年に第18回「フリオ・アレハンドロ長編脚本SGAE賞*」を受賞、Ventana CineMad、Ventana Sur、などのワークショップに参加して制作した。アルツハイマー型認知症になった母親を10年間にわたって介護した家族や監督自身が投影されている。同世代のカルラ・シモンやベレン・フネス、ピラール・パロメロの作品からも着想を得ていると語っている。本格的な評価はこれからですが、将来が有望視されている。
*フリオ・アレハンドラ(ウエスカ1906~デニア1995)は、スペイン、メキシコ、アルゼンチン映画の脚本家、ルイス・ブニュエルの『ビリディアナ』(61)や『哀しみのトリスターナ』(70)の脚本を監督と共同執筆している。SGAE Sociedad Genaral de Autores y Editoresは、1995年設立された著作権管理団体でスペイン著者出版社協会。

(フリオ・アレハンドロ長編脚本SGAE賞のトロフィを掲げる監督)
★キャスト紹介:フリア・マスコルトJulia Mascort、バルセロナ出身の映画・舞台女優、歌手、楽器はギターとチェロ。ラウラ・オブラドールズの短編単独デビュー作「Las chicas/The Girls」(24、16分、スペイン語)、クリスティアン・アビレスの「La herida luminosa」(22、23分、スペイン語)出演の他、カタルーニャTVシリーズ「Com si fos ahir/With That Same Look」(2022年8話出演)、「Un nuevo amanecer」(2024年2話出演)、長編出演は今回が初、主役も女優賞も初のようです。カタルーニャ語、スペイン語のバイリンガル、英語もできる。マラガではスペイン語でインタビューを受けていた。

(銀のビスナガ主演女優賞受賞、マラガFFガラ)
★トマス・デル・エスタル Tomás del Estal、1967年サラマンカ生れ、俳優。TVシリーズ出演でスタート、脇役専門とはいえ本数が3桁は多すぎる。コメディからホラー、社会派シリアスドラマと芸域は広いから、スペイン映画ファンなら必ず見覚えがあるでしょう。受賞歴は、今回の銀のビスナガ助演男優賞受賞が初、検索している管理人も驚いている。最近では、こんな映画に出演しています、2024『叫び』、2021『ウェイ・ダウン』、2018『誰もがそれを知っている』、2016『スモーク・アンド・ミラーズ』、同『ジュリエッタ』、2015『ヤシの木に降る雪』、2014『トガリネズミの巣穴』、2010『BIUTIFUL ビューティフル』、同『ペーパーバード 幸せは翼にのって』など、当ブログでも作品紹介をしています。TVシリーズではシーズン2が始まった『ガリシアン・ギャング』、『鉄の手』などがNetflixで配信されている。

(銀のビスナガ助演男優賞受賞、マラガFFガラ)
★アルツハイマー認知症の母親を演じたソニア・アルマルチャ(アリカンテ州ピノソ1972)は、バレンシアの演劇芸術学校とウィリアム・レイトンで演技を学んだ。マラガ関連では、マラガFF2025の短編部門でポロ・メナルゲスの「Una vocal」で銀のビスナガ主演女優賞を受賞した。2020年ハビエル・マルコの「A la cara」で同じ短編部門の同賞を受賞している。この短編は2025年に同タイトルで長編化され、ロラ・ガオス賞の主演女優賞にノミネートされた。

(母親とクラウディア、フレームから)
★ハイメ・ロサーレスがゴヤ賞2008作品賞と監督賞を受賞した『ソリチュード:孤独のかけら』に主役に抜擢され、物静かだが我が道を着々と準備する芯の強い女性を演じて、スペイン俳優組合新人女優賞を受賞しています。他2017年にエステバン・クレスポの『禁じられた二人』、パコ・プラサのホラー『エクリプス』、ロドリゴ・ソロゴジェンのスリラー「El reino」、フェルナンド・レオン・デ・アラノアのブラックコメディ「El buen patrón/The Good Boss」では、ゴヤ賞2022助演女優賞ノミネート、俳優組合女優賞などを受賞、ジョン・ガラーニョ&アイトル・アレギの「Marco」、クラウディア・ピントの「Las consecuencias」(21)、最近は主に映画出演にシフトしている。
*『ソリチュード:孤独のかけら』の作品紹介は、コチラ⇒2013年11月08日
*「Las consecuencias」の作品紹介は、コチラ⇒2021年07月01日
*「El buen patrón」の作品紹介は、コチラ⇒2021年08月10日
★ラウラ・ワイスマー(ヴァイスマール)Laura Weissmahr、1992年タリファ生れ、女優、製作者。バルセロナのエオリア高等演劇芸術学校で演技を学んだ後、イギリスのウエストミンスター大学で映画テレビ制作の学位を取得する。ドキュメンタリーを撮っている。エレナ・マルティン・ヒメノ監督の「Júlia Ist」(17)やダビ・ビクトリの「No matarás」(20)に出演、2024年にマル・コルのサスペンス「Salve María」主演して、ゴヤ賞2025新人女優賞ほか、ガウディ賞、フェロス賞、バジャドリード映画祭、サンジェルマン賞などを受賞して脚光を浴びた。これからの活躍を予感させる。

(ゴヤ賞2025新人女優賞受賞のガラ)
★今秋の東京国際映画祭2026での上映を期待したいところです。
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