アスガー・ファルハディ✕バルデム=クルス✕エル・デセオ2016年06月06日 15:53

      アスガー・ファルハディの次回作の舞台はスペインのアンダルシア

 

★イランのアスガー・ファルハディハビエル・バルデムペネロペ・クルスのカップル、アルモドバル兄弟の製作会社エル・デセオが手を組んで新作を撮る。ファルハディはカンヌ映画祭2016The Salesman(英題「ザ・セールスマン」)が脚本賞を受賞したばかりです。先にシャハブ・ホセイニが男優賞を受賞していたので「1作品1賞」というカンヌの原則を破ったことで場内はざわめいたようです。それにはベルリン映画祭金熊賞受賞の『別離』11)ほどの出来ではなかったことも背景にあるようです。つまり、受賞に値する作品が他にもあったではないかという不満です。タイトルはアーサー・ミラーの『セールスマンの死』から採られている。

 

       

           (最近のハビエル・バルデムとペネロペ・クルス)

 

★クルス出演は既にアナウンスされておりましたが、バルデムが共演することはファルハディがカンヌに到着するまで伏せられていた。そもそもはエル・デセオのアグスティン・アルモドバルが『私が、生きる肌』(11)のプロモーションのためロス入りして接触したのが始まりだった。ファルハディはアルモドバルがJulietaをマドリードで撮影していたとき立ち寄っていたから,水面下では大分前から進んでいたということになります。ファルハディによると「6月にロケ地見分にスペインを訪れ雰囲気を掴みたい。できれば夏にはクランクインしたい」とインタビューに応えている。2017年秋公開でしょうか。。

 

  

               (アルモドバルとファルハディ)

 

IMDbによれば、タイトルは目下未定ですが、言語はスペイン語英語、製作は他にフランスのMemento Films、今のところ製作国はスペインとフランスのみ。脚本は監督自身が執筆、あらあらのプロットは「アンダルシア地方のブドウ栽培農家の家族を中心にした愛の三角関係」らしく、絡んでくるもう一人にはアメリカの俳優が起用される模様です。テーマ的には複雑な家族関係を描くなどファルハディとアルモドバルは似通っている。アグスティンによると「ファルハディはロンダやスペインの南部が気にいっている」ということですから撮影地もほぼ決定しているのでしょうか。(Memento Filmsは、『The Salesman』や『ある過去の行方』も製作している)

 

   

            (ファルハディ監督、カンヌ映画祭2016にて)

 

★スペイン語を解さない外国で撮影する不安はないかとの質問に、「外国での撮影としては第2作目、不安は感じていない」、第1作はフランスで撮った『ある過去の行方』13、仏・伊・イラン合作)、言語はフランス語とペルシャ語だった。『アーティスト』に出演していたベレニス・ベジョの演技に感心して主役に起用した。カンヌ映画祭2013で女優賞を受賞して監督の期待に応えました。「過去に向き合わないで未来は描けない」が信条とか。しかし公開3作品のうち一番感心したのは、ベルリン映画祭で監督賞(銀熊)に輝いた『彼女が消えた浜辺』09)でした。イランの中流階級の問題が凝縮されていて、こういう声高ではない方法で問題提起ができるのだと感心した。邦題の許容範囲は広いのですが、内容に余計なものを「付け足さない」という翻訳のイロハを逸脱して興醒めでしたが。(2009年に開催された「アジアフォーカス福岡国際映画祭」のタイトルは英題”About Elly”のカタカナ表記『アバウト・エリ』でした。監督も来日)