第74回サンセバスチャン映画祭2026結果発表*サンセバスチャンFF26 ⑳ ― 2026年09月27日 16:17

      マイク・リーの「Tender Loving Care」が金貝賞と脚本賞を受賞

 

      

 

★9月26日(現地)、マイク・リーの「Tender Loving Care」が最高賞の金貝賞と監督自らが手がけた脚本賞、ケイト・オフリンが主演俳優賞と、なんと3冠を射止めました。本作が最後の作品になるかもしれないという噂が消し飛んでしまいました。審査員特別賞に阿彪 アー・ビャオAh Biao の「Bian Jing / Border」、監督賞に「Garrat du váimmu / Brace Your Heart」のアマンダ・ケンネル、以下セクション・オフィシアルの受賞結果だけアップしておきます。

 

★セクション・オフィシアル審査員は、委員長アイラ・サックス以下、カトリーヌ・パイエ、マイク・リッジ、川村元気、ビル・マカルスガルド、マリア・ブラガ、パトリシア・ロペス・アルナイスの7名でした。

 

           ◎セクション・オフィシアル受賞結果◎

   

最優秀作品賞(金貝賞)

「Tender Loving Care」(仮題「優しい愛情」)監督マイク・リー(イギリス)

製作国:イギリス

 

     

 

審査員特別賞

「Bian Jing / Border」(仮題「辺境」)監督アー・ビャオ(中国)

製作国:香港=アメリカ合衆国=韓国

 

     

 

最優秀監督賞(銀貝賞)

アマンダ・ケンネル(スウェーデン)、「Garrat du váimmu / Brace Your Heart」仮題「覚悟を決めて」)製作国:スウェーデン=ノルウェー=デンマーク=アイスランド=ブルガリア

 

   

 

最優秀主演俳優賞(銀貝賞、今回は2人)

ケイト・オフリン(イギリス)、出演作「Tender Loving Care」

   

 

 

アスタ・カンマ・アウグスト(スウェーデン)

出演作「Markens Grode / Growth of the Soil」(仮題「土壌の成長」)

監督ハンス・ペッター・モランド、製作国:ノルウェー=デンマーク=ドイツ

 

  

 

最優秀助演俳優賞(銀貝賞)

ハビエル・カマラ(スペイン)

出演作「5 minutos más / 5 More Minutes」(監督ハビエル・ルイス・カルデラ)

製作国:スペイン

 

   

 

最優秀撮影審査員賞

オスカル・ダルスバッケン(ノルウェー)「Markens Grode / Growth of the Soil」

 

     

 

最優秀脚本審査員賞

マイク・リー(イギリス)「Tender Loving Care」

 

  

 

★セクション・オフィシアルは以上です。ガラの記事、オリソンテス・ラティノス、ニューディレクターズなど他部門は次回アップする予定です。濱口竜介の『急に具合が悪くなる』はRTVE「他の視点」賞、原田マハの『無用の人』は、FIPRESCI 賞をそれぞれ受賞しました。

  

ナオミ・ワッツのドノスティア栄誉賞授与式*サンセバスチャンFF26 ⑲ ― 2026年09月25日 16:15

            もう一人のドノスティア栄誉賞受賞者ナオミ・ワッツ

 

      

 

★9月19日、サンセバスティアンは連日セレブやスターのラッシュで盛り上がっています。特に19日はナオミ・ワッツのドノスティア栄誉賞の授与式、カルメン・マチの映画国民賞授与式、ペルラス部門ノミネートのハビエル・アンブロッシ&ハビエル・カルボの「La bola negra」の一行が大挙して登場、レッドカーペットはファンで大賑わいでした。セクション・オフィシアルにノミネートされているハビエル・ルイス・カルデラの「5 mitutos más」のチーム、監督、ハビエル・カマラ、ベレン・クエスタ、ベト・ロメロなども注目の的で記者会見も満席のようでした。今回はメイン会場クルサール・ホールで行われたナオミ・ワッツに絞ってフォト集をアップいたします。授与式のあと上映される出演作「The Housewife」の監督ベン・シリニアンも最後に登壇して自作を語りました。

*ナオミ・ワッツのキャリア&フィルモグラフィーと出演作「The Housewife」の紹介記事は、

 コチラ⇒2026年09月08日

 

  

      

★授与式は22時半からと相変わらず遅く、日本では考えられない時間帯におこなわれた。バスクの俳優ジョン・プラサオラが女優でプロデューサーでもある受賞者ナオミ・ワッツのキャリアをバスク語とスペイン語で、手にしたメモに目を落とすことなく紹介したのには驚いた。続いてプレゼンターの『インポッシブル』(12)の監督J. A.バヨナが登場、最高栄誉賞であるドノスティアのトロフィーを手渡しました。

       

             

        (受賞者ナオミ・ワッツとプレゼンターのJ.A.バヨナ監督)

 

        

  (総合司会を務めたジョン・プラサオラ)

 

★受賞者は「女優であることの喜びは、他人の人生に入り込んで生きながら、その過程で自分自身をより深く発見すること」とスピーチした。また「私の人生を変えてくれた」今は亡き『マルホランド・ドライブ』(01)の監督デヴィッド・リンチに感謝を述べた。さらに彼女を信じて起用してくれたミヒャエル・ハネケ、デヴィッド・クローネンバーグ、ピーター・ジャクソン、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、自身のデビュー作「The Housewife」にオファーしてくれたベン・シリニアンにも感謝した。ハリウッドでは「女優は40歳で全てが終わる」といわれたが、「こんな年まで女優でいられることに感動している」ともスピーチした。

   

   

 (「私の人生を変えてくれたリンチ監督にこの賞を捧げたい」とスピーチした受賞者)

 

★ナオミ・ワッツが『インポッシブル』で冒険を体験させてくれたJ.A.バヨナに感謝を述べると、涙もろい監督はさっそく目を潤ませていた。スペイン映画の興行成績ナンバーワンの記録は、今後も破られることはないでしょう。彼女の出演作でスペインの観客が最も多く映画館に足を運んだ映画でした。バヨナ監督は、「ナオミが津波に引きずられていくシーンの撮影では、誰も台本に従っていなかった。そこにいたのは女優のナオミではなく、見知らぬ人に救けを求める泣き叫ぶ女性がいるだけでした」と、監督を信頼してくれた女優を賞賛した。

         

                        

           (肩を組んで退場した受賞者とプレゼンター)

 

 

★午前10時半ごろ会場に現れた受賞者と「The Housewife」のベン・シリニアン監督以下スタッフや共演者たちと、恒例のフォトコールに応じ、その後行われた記者会見に臨んだときのフォト集です。ガラ直前のレッドカーペットでもファンの求めに気軽に応じていました。

  

  

         (映画祭出席のサインをするナオミ・ワッツ)

 

  

                    (同じくベン・シリニアン監督)

  

 

  

        (「The Housewife」のチーム全員のフォトコール)

 

   

(監督、共演のレナ・オリンなどと一緒に)

 

    

          (ドノスティア栄誉賞受賞の記者会見)

 

★J.A.バヨナは、アウト・オブ・コンペティションで特別上映されるカルロス・トーレスのドキュメンタリー「Más allá de la sociedad」(TVシリーズ、3話、150分)のクリエイターです。

 

第74回サンセバスチャン映画祭2026開幕*サンセバスチャンFF26 ⑱ ― 2026年09月21日 17:27

       ヴェルナー・ヘルツォーク――ドノスティア栄誉賞の授与式

 

    

 

★9月18日(現地20:30)、サンセバスチャン映画祭がクルサール・ホールで開幕、9日間にわたる映画上映、各種イベントが始まりました。オープニングの進行役は女優のマリオナ・テレスとファリバ・シェイカン、映画祭お馴染みのカエタナ・ギジェン・クエルボも参加して、第74回の顔であるリカルド・ダリンを賞賛しました。47ヵ国から寄せられた263本が上映されます。

 

         


        (スペイン舞台芸術アカデミー会長カエタナ・ギジェン・クエルボ)

 

  

     (左から、総合司会者マリオナ・テレス、ファリバ・シェイカン)

 

★早速ドイツの監督にして脚本家、プロデューサーでもあるヴェルナー・ヘルツォークに本祭最高栄誉賞であるドノスティア賞のトロフィーがオーランド・ブルームから手渡されました。ブルームはヘルツォークの最新作「Bucking Fastard」(仮題「バッキング・ファスタード」米国=アイルランド合作)に主演しており、受賞者を「非凡な映画監督、冒険心に富んだ監督」と賞賛しました。ベネチア、トロント各映画祭で上映されている今秋話題の映画です。

*ヘルツォークのキャリア&フィルモグラフィー、「Bucking Fastard」の紹介記事は、

 コチラ⇒2026年09月04日

  


      

      

       (バスク文化とバスク語を賞賛したヴェルナー・ヘルツォーク)

      

  

         (ヴェルナー・ヘルツォークとオーランド・ブルーム)

    

★ローランド・ジョフィ監督の「The Mission / La missión」(『ミッション』)40周年を記念して、主演のジェレミー・アイアンズとプロデューサーのデヴィッド・パットナムが登壇しました。本作はカンヌ映画祭1986のパルムドール受賞作品、その他アカデミー撮影賞、ゴールデングローブ賞(作曲、脚本)、BAFTA作曲賞などを受賞した力作。イエズス会宣教師を演じたアイアンズは本作を思い起こし、映画は「警告と希望」を発信すべきとスピーチした。

 

      

 (歓迎に応えるジェレミー・アイアンズとデヴィッド・パットナム、レッドカーペット)

 

     

  

       (登壇したジェレミー・アイアンズとデヴィッド・パットナム)

  

★セクション・オフィシアルの審査員の紹介がありました。委員長アメリカのアイラ・サックス(監督・脚本家・製作者、メンフィス1965、『ポルトガル、夏の終わり』『人生は小説よりも奇なり』)以下、フランスのカトリーヌ・パイエ(脚本家、1980、『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』)、イギリスのマイク・グッドリッジ(製作者、『TOUCHタッチ』『SISUシス復讐の決闘』)、川村元気(監督・脚本家・製作者、横浜1979、『君の名は。』『百花』)、スウェーデンのビル・マカルスガルド(俳優、『バーバリアン』『it/イットそれが見えたら終わり』)、ブラジルのアリス・ブラガ(俳優、サンパウロ1983、『シティ・オブ・ゴッド』『アイ・アム・レジェンド』)、スペインのパトリシア・ロペス・アルナイス(俳優、ビトリア1981,『ミツバチと私』「Los domingos」)全員が登壇しました。

 

        

               (審査委員長アイラ・サックス)

  

  

 (左から、カトリーヌ・パイエ、マイク・グッドリッジ、川村元気、ビル・マカルスガルド、

  アリス・ブラガ、パトリシア・ロペス・アルナイス、コンペティション審査員)

 

★ガラ終了後にクルサール・ホールで上映される、セクション・オフィシアルのオープニング作品、ファティ・アキンの「Gaister / Ghost Song」の監督以下出演者、主演のマリアム・ダウード、エレン・M・ギューヴァルチン、助演のカルロッタ・フォン・ファルケンハイン、ガブリエル・ウィナー・アモリンが登壇しました。

*作品、監督キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2026年08月28日

 

  

  (左から、エレン・M・ギューヴァルチン、マリアム・ダウード、アキン監督、

   エレン・M・ギューヴァルチン、カルロッタ・フォン・ファルケンハイン)

 

★その他、国際映画批評家連盟FIPRESCIが選ぶ、Fipresciグランプリがポール・トーマス・アンダーソン監督の「One Battle After Another」(25、『ワン・バトル・アフター・アナザー』)に贈られました。評論家でFIPRESCI副会長のパオラ・カセラが、本作の代表者ワーナー・ブラザース副会長のカルロス・プラダに手渡しました。

 

    


             (カルロス・プラダ、パオラ・カセラ)


RTVE「別の視点」賞は女性プロデューサーが対象*サンセバスチャンFF26 ⑰ ― 2026年09月20日 14:32

       視聴覚産業への貢献を称える女性プロデューサーが競います

 

   

 

★第20回を迎えるRTVE「別の視点」賞は、今回は8本の映画の女性プロデューサーが対象です。女性プロデューサーが視聴覚創造の重要な推進役を担ってきたことを認めたからだそうです。セクション・オフィシアルから4本(未紹介2作)、ニューディレクターズ部門2本(未紹介1作)、ペルラス部門2本が選ばれました。審査員は、RTVE理事マリア・ソラナ、女優ライア・コスタ、プロデューサーのマリサ・フェルナンデス・アルメンテロスの3方です。今回は五月雨式の発表でセクション・オフィシアルを全作紹介できなかったこと、ペルラス部門の濱口竜介の『急に具合が悪くなる』が選ばれていることもあってアップしますが、多くが合作なので製作者も当然女性だけではありません。

 

◎セクション・オフィシアル

1)「Artakalan / What Remains」

製作国:トルコ=フランス=ルクセンブルク=ブルガリア

監督:イェシム・ウスタオウル(トルコ1960)

製作者:イェシム・ウスタオウル、アンナ・マリア・アスラノール、ベフルーズ・ハシェミアン

*作品紹介は、コチラ⇒2026年08月04日

 

   

 

2)「Garrat du Vaimmu / Brace Your Heart」(仮題「覚悟を決めて」)

データ:製作国スウェーデン=ノルウェー=デンマーク=アイスランド=ブルガリア、2026年、長編3作め、ドラマ、北部サーミ語、スウェーデン語、97分、トロント映画祭プラットフォーム部門でワールドプレミア

監督・脚本:アマンダ・ケンネル(スウェーデン、ウメオ市1986)、南部サーミ出身の監督、脚本家。父親がサーミ人、母親はスウェーデン人。長編デビュー作『サーミの血』(ベネチアFF2016)が東京国際映画祭で審査員特別賞を受賞、劇場公開された。

製作者:エヴァ・オーケルグレン(Nordisk Film Production Sveriga スウェーデン)

   リサ・マリー・クリステンセン(Forest People ノルウェー)

   カリン・カリノフ(Invictus ブルガリア)

 

キャスト:エリ・サラ・ヴァルケパー(エジュヴァ)、アソッテ・ガウプ・ユウソ(ヘイカ)、ヴィンセント・ニア(ネジュラ)

ストーリー:エジュヴァは亡父のトナカイの群れを相続します。群れを繫栄させようと苦労している。地元リーダーであるヘイカが彼女に好意を寄せ、ためらいながらも受け入れざるをえないと考えている。しかし、彼の従兄弟ネジュラが現れると、エジュヴァは初めて真実の愛を見つけ全てが変わります。嫉妬したヘイカは裏切られたと彼女に厳しく当たります。彼女は手の震えが止まらず群れの世話が難しくなっていくが、自分の未来を切り開くため闘わねばなりません。

 

       

    

               (アマンダ・ケンネル監督)

 

3)「KRUX」(仮題「クルックス」)

データ:製作国ドイツ=ポーランド、2026年、長編デビュー作、ドラマ、ドイツ語、92分、トロント映画祭ディスカバリー部門ワールドプレミア

監督・脚本:トニー・ヴァール(ドイツ)

製作者:マルティナ・ハウブリッヒ、共同クラウディア・シュレーテル

    (CALA Film Puroduction ドイツ)

    エヴァ・プチシンスカ(Extreme-Emotions、ポーランド)

  

キャスト:イエラ・ハーゼ(グレタ)、フリーダ・ロビーサ・ハマン、クレメンス・シック、ルーカス・ミコ、マルティン・ヴトケ、シュテフィ・キューネルト、ハンス・ウーヴェ・バウアー、マルレーネ・フランツォーネ、ヒューゴ・ゴアース

ストーリー:第二次世界大戦末期のドイツ北東部の小村の暗い現実を描いている。ナチス政権が敵が見つけられるように住民に命じたのです。男性の大半は前線におり、残っているのは数人の女性、子供、残ることを許された少数の男性だけです。人生は今も昔からの慣わしで、学校、教会、結婚式などが支えられています。そうすれば何もかも上手くいくと村人たちはまだ信じています。そして川は誰とも分からない遺体を運んできます。敵がいつ来るのか、来たとき何が起こるのか、誰にも分かりません。事実は沈黙させられ、流言で埋め尽くされる。その沈黙のなかから、敵より大きな恐怖が生まれてきます。ソビエト赤軍の到着による屈辱を避けるため、住民を集団自決に追い込むよう命じられた住民の実話に着想を得ています。

 

   

   

 (「道徳的、ホラー的おとぎ話として見てほしい」と語る監督トニー・ヴァ―ル)

 

4)「Markens grode / Growth of the Soil」

製作国:ノルウェー=デンマーク=ドイツ

監督:ハンス・ペッター・モランド(ノルウェー、オスロ1955)

製作者:4 1/2 Fiction As(ノルウェー)、Scanbox Productions(デンマーク)、Nadcon Film(ドイツ)

*作品紹介は、コチラ⇒2026年08月04日

 

      

 

 

◎ニューディレクターズ部門

5)「El mal hijo / The Bad son」(オープニング作品)

製作国:スペイン

監督:ハイメ・ロレンテ(スペイン、ムルシア1991)

製作者:カルメン・アグアド

*作品紹介は、コチラ⇒2026年08月07日

      


      

6)「Obuvkite na bashta mi / My Father’s Shoes」(仮題「父の靴」)

データ:製作国ブルガリア=フランス、2026年、長編デビュー作、ドラマ、ブルガリア語、86分、SSIFFでワールドプレミア。

監督・脚本:フリスト・シメオノフ(ブルガリア)

製作:カチャ・トリチコワ(Contrast Films ブルガリア)

   ジャン・ローラン・シニディス、ジェローム・ヌネス(Films De Force Majeur 仏)

    

キャスト:ヴァレリア・ヴァルバノア、ターニャ・シャホワ、ヴィヤラ・コラロワ、ボリスラフ・ルセフ、ミグレナ・ヴェジロワ

ストーリー:ミマは父親を知らずに、妥協のない母親ボイカに育てられました。父の死の知らせが届き、遺体が村に戻ると、事実を認めることは義務であると同時にジレンマとなる。一方、母親はかつて愛した男と向き合うことを拒むが、母娘は沈黙の過去と和解しなければなりません。ミマは自分が決して選ばない人生を受け継ぐ義務がどういう意味なのか決めねばなりません。

 

  

   

             (フリスト・シメオノフ監督)

  

 

◎ペルラス部門

7)「Josephine」

製作国:アメリカ合衆国

監督:ベス・デ・アラウジョ(サンフランシスコ1985)

製作者:ベス・デ・アラウジョ、ジェマ・チャン、マリーナ・スタビレ、他多数

*作品紹介は、コチラ⇒2026年08月24日

 

    

 

8)「Soudain / All of a Sudden / De repente」『急に具合が悪くなる』

製作国:フランス=日本=ドイツ=ベルギー

監督:濱口竜介(川崎1978)

製作者:ベッティナ・ブローケンパー、シャーロット・ドーファン、松田広子、他多数

*作品紹介は、コチラ⇒2026年08月24日

 

   

 

★以上の8作です。ドイツでは長年タブー視されていたテーマに取りくんだ、トニー・ヴァ―ルの「KRUX」が先頭を走っていると予想します。これは過去の戦争映画ではなく、今の時代にある恐怖がテーマでしょうか。またはアマンダ・ケンネルの「Garrat du Vaimmu / Brace Your Heart」もありでしょうか。


閉幕作品は「200 vidas, Paco Rabal」*サンセバスチャンFF26 ⑯ ― 2026年09月17日 12:10

     クロージング作品はバネサ・ベニテスの「200 vidas, Paco Rabal」

 

    

 

★オープニング作品もスペイン初公開のノンフィクションでしたが、バネサ・ベニテスの「200 vidas, Paco Rabal」は、世界初公開です。メイド・イン・スペイン部門を締めくくる映画がスペイン未公開というわけです。本作は俳優パコ・ラバル(ムルシア県アギラス1926~2001)の生誕100周年、没後25周年を記念して製作されました。半世紀に及ぶ俳優人生でクレジット無しを含めると映画データバンクには218本、タッグを組んだ監督には、ルイス・ブニュエル、ミケランジェロ・アントニオーニ、カルロス・サウラ、ペドロ・アルモドバル、クロード・シャブロル、ルキノ・ヴィスコンティなどなど、スペインに止まらず国際的に活躍した俳優でした。

 

  

(ルイス・ブニュエルの『ナサリン』から)

 

    

      (「おじさん」と慕っていたブニュエルとのツーショット)

 

 

★ベニテス監督は、1980年アンダルシアのセビーリャ県南部のオスナ生れ、監督、脚本家。ドキュメンタリー「La vida chipén」がゴヤ賞2023オリジナル歌曲賞(「Un paraíso en el sur」)に作曲家のパロマ・ペニャルビアとノミネート、他にカルメン賞2023などにノミネートされている。TVシリーズを数多く手がけていますが、2017年の「Rota n’Roll」は、スペイン内戦後の農村ロタにソ連の脅威を抑えるため、ヨーロッパ最大のアメリカ軍基地が建設された歴史ドキュメンタリーです。

 

   

                          (バネサ・ベニテス監督)

 

     

         (ドキュメンタリー「La vida chipén」のポスター)

  

 

「200 vidas, Paco Rabal / 200 Lives, Paco Rabal」(仮題「」)

製作:MLK Producciones / Horizon Media / Plan B et Compagnie / Monstro Films

      協賛:RTVE / Canal Sur Radio y Televisión / La 7 Television / Movistar Plus

監督・脚本:バネサ・ベニテス

音楽:クルド・ピメント

撮影:セサル・エルナンド、フアン・アルフォンソ・モレノ

編集:レナート・サンフアン

サウンド:ホルヘ・マリン

製作者:(MLK Produccionesスペイン)ホセ・アントニオ・エルゲタ、(Horizon Media スペイン)ホセ・エヘア、カルロス・ベルモンテ

共同製作者:(Plan B et Compagnieフランス)セクリエ・マエストロ・シャブロル、パスカル・ラフマニ、(Monstro Filmsメキシコ)モニカ・ロサノ、イーモン・オファリル

 

データ:製作国スペイン=フランス=メキシコ、2026年、ドキュメンタリー、歴史、ビオピック、俳優パコ・ラバルの映画アドベンチャー、スペイン語・英語・フランス語、95分

  

出演:(アーカイブ映像)フランシスコ・ラバル、ルイス・ブニュエル、フェルナンド・レイ、カルロス・サウラ、フアン・アントニオ・バルデム、ジュリアノ・モンタルド、アスンシオン・バラゲル(女優、ラバルの妻)、ルイス・エスコバル、ヌリア・エスペルト

(出演)アルトゥーロ・リプスタイン(監督)、ゴンサロ・スアレス(監督)、ロベルト・フィエスコ(メキシコの製作者・監督)、エンリケ・セレソ(製作者)、アンドレス・ビセンテ・ゴメス(製作者)、フェルナンド・メンデス=レイテ、(以下俳優)ビクトリア・アブリル、アナ・ベレン、ホセ・サクリスタン、ヒネス・ガルシア・ミリャン、エウラリア・ラモン、ソニア・グランデ、ミゲル・エルモソ、セシル・メストル(フランスの女優・助監督)、ラファエル・アルバレス ’エル・ブルホ’(「フンカル」89で共演)、アントニオ・サウラ(製作者、サウラの子息)、ベニト・ラバル(ラバルの子息、短編「Paco, Mi padre」の監督)、他多数

  

解説:パコ・ラバルの声のカセット録音やフランコ時代の二枚目俳優として政治的関与にもかかわらず、すぐさま駆けつけたツアー、撮影、フェスティバルのイベントのスーパー8ミリフィルムを通して、彼は自身の人生、後悔、矛盾を見直します。彼が幾度か演じたゴヤのように、ボルドーでの死の瞬間を連想させる印象的なフィルムがあります。本祭では、ラファエル・ヒル、ルーカス・デマレ、レオン・クリモフスキー、ペドロ・オレア、ハイメ・デ・アルミリャンなどの監督たちと成功を収めました。第1回サンセバスチャン映画祭1953男優賞、ドノスティア栄誉賞2001の受賞者です。

 

    

                (SSIFF2026公式ポスター)

 

★サンセバスチャン映画祭1953での男優賞受賞は、フランシスコ・ロビラ・ベレタの「Hay un camino a la derecha」主演でした。船員を解雇されて生きるために強盗を計画する労働者の話で、当時のスペインの貧困、痛み、苦悩が語られ、妻を演じたフリア・マルティネスも女優賞を受賞しています。カルロス・サウラの「Goya en Burdeos」(99、『ゴヤ』)は、ボルドーでのゴヤの晩年を描いている。ラバルは翌年のゴヤ賞で主演男優賞を初めて受賞、200作以上も出演していながら受賞は死の前年の1回限りでした。キャリア&フィルモグラフィーは『無垢なる聖者』で紹介しております。またマリオ・カムスの『蜂の巣』では、ビクトリア・アブリル、アナ・ベレン、ルイス・エスコバル、ホセ・サクリスタンなどが共演している。アブリルとは『アタメ』や「Tiempo de silencio」でも共演している。

 

   

   (アルバ公爵夫人役マリベル・ベルドゥ、ゴヤに扮したラバル、『ゴヤ』から)

      

      

               (トンビのヒナとパコ・ラバル、『無垢なる聖者』から)

   

    

        (死が分かつまで連れ添ったラバルとアスンシオン・バラゲル)

 

 ◎フランシスコ・ラバルの主なフィルモグラフィー

1952「Sol intrepida」主演、監督ラファエル・ヒル

1953「Hay un camino a la derecha」主演、監督フランシスコ・ロビラ・ベレタ

   SSIFF1953男優賞受賞

1953「La guerra de Dios」主演、監督ラファエル・ヒル(SSIFFグランプリ受賞)

1958「La noche y el alba」主演、監督ホセ・マリア・フォルケ

1959「Nazarin」『ナサリン』(メキシコ)主演、監督ルイス・ブニュエル、

   原作ベニト・ぺレス・ガルドス、カンヌFF公式上映、国際賞受賞

1959「Sonatas」(メキシコ合作)主演、監督フアン・アントニオ・バルデム、

   原作ラモン・デル・バジェ=インクラン、ベネチアFF正式出品

1960「Trio de damas」コメディ、主演、監督ペドロ・オレア

1961「Virideana」『ビリディアナ』(メキシコ合作)助演、監督ルイス・ブニュエル、

   カンヌFFパルムドール共同受賞

1962「L'Eclisse」『太陽はひとりぼっち』(イタリア=フランス)助演、

   監督ミケランジェロ・アントニオーニ、カンヌFF特別審査員賞受賞

1966「La Religieuse」『修道女』(フランス)助演、監督ジャック・リベット、

   原作ドニ・ディドロ

1967「Belle de jour」『昼顔』(フランス=イタリア)助演、監督ルイス・ブニュエル、

   原作ジョセフ・ケッセル

1970「Cabezas cortadas」『切られた首』(ブラジル合作)主演、監督グラウベル・ローシャ

1971「Goya, historia de una soledad」主役ゴヤ、監督ニノ・ケベド、カンヌFF出品

1976「Las laegas vacaciones del 36」『1936年の長い休暇』助演、監督ハイメ・カミーノ

1977「Sorcerer」『恐怖の報酬』(米国)主演、監督ウイリアム・フリードキン、

   原作ジョルジュ・アルノー(1953アンリ・ジョルジュ・クルーゾーの同名作品がある)

1978「Cosi come sei / Asi como eres」『今のままでいて』(イタリア合作)助演

   監督アルベルト・ラットゥアダ

1978「Corleone」『白熱マフィア戦争/皆殺しの構想』(イタリア)主演、

   監督パスクアレ・スクイティエリ

1982「La colmena」『蜂の巣』出演、監督マリオ・カムス、原作カミロ・ホセ・セラ

1984「Los santos inocentes」『無垢なる聖者』主演、監督マリオ・カムス、

   原作ミゲル・デリーベス、カンヌFF主演男優賞をアルフレッド・ランダと受賞

1985「Tiempo de silencio」主演、監督ビセンテ・アランダ

1985「Padre nuestro」『わが父 パードレ・マエストラ』主演、監督フランシスコ・レゲイロ

   カンヌFF「ある視点」出品

1989「¡ Atame !」『アタメ』助演、監督ペドロ・アルモドバル、ゴヤ賞助演男優賞ノミネート

1989「Barroco」『バロック』(メキシコ、キューバ合作)主演、監督ポール・ルデュク、

   原作アレホ・カルペンティエル

1997「Pajarico」『パハリーコ―小鳥―』助演、監督カルロス・サウラ

1999「Goya en Burdeos」『ゴヤ』主演、監督カルロス・サウラ、ゴヤ賞主演男優賞受賞

   

1984年、映画国民賞受賞

1999年、スペイン芸術功労賞金のメダル受賞

2001年、サンセバスチャン映画祭ドノスティア栄誉賞受賞  

 

★今回ラバルが出演した公開作品を検索したところかなりの数がありましたが、必ずしも代表作というわけではなく取捨選択しました。1940年代はクレジット無しも多い。以上は字幕入りで鑑賞できる作品を中心にして、管理人が恣意的に選んだフィルモグラフィーです。ゴチック体タイトルは当ブログに作品紹介があります。

*『ビリディアナ』の作品紹介は、コチラ⇒2020年05月29日

*『無垢なる聖者』の作品 & ラバルのキャリア紹介は、コチラ⇒2014年03月10日~03月11日

  

メイド・イン・スペイン部門25作が出揃う*サンセバスチャンFF26 ⑮ ― 2026年09月12日 16:33

    開幕はアルベルト・セラのノンフィクション「Seize moments de ma vie」

   

     

★メイド・イン・スペイン部門は、著作権管理団体SGAEとのコラボレーションです。8月初めに24作が一挙発表になりましたが、追加の可能性を匂わせていました。9月9日、ロドリゴ・ソロゴジェンの「El ser querido」が追加され、第74回は25作が公式上映となりました。どうやら劇場公開の終了を待っていたようです。ハビエル・バルデム、ビクトリア・ルエンゴ主演の本作は、カンヌ映画祭コンペティションでプレミアされた折、当ブログで作品紹介をしています。25作のなかには、ペドロ・アルモドバル、イサベル・コイシェ、ビクトル・ガルシア・レオン、マルタ・マトゥテなどの話題作が含まれています。

 

★オープニング作品は、2024年のドキュメンタリー「Tardes de soledad」(『孤独の午後』)で金貝賞を射止めたアルベルト・セラのノンフィクション「Seize moments de ma vie / Sixteen Moments of My Life」(仮題「私の人生の16の瞬間」フランスとの合作、85分、ドイツ語・フランス語)です。セラは製作、編集も手がけています。アウト・オブ・コンペティションでしたがロカルノ映画祭でプレミアされました。ドイツ出身のフランス女優で歌手のイングリッド・カーヴェン(ザールブリュッケン1938、国籍フランス)の人生賛歌です。彼女はパリのブッフェ・デュ・ノール劇場で行われた1回限りのコンサートで自身の人生の16の瞬間のパフォーマンスを披露します。セラの常連作曲家マルク・ベルダゲルとジョー・ロビンソンが共作した16曲のバラードを仏語・独語で歌います。バンド伴奏はモルフォート Molforts。

  

音楽:ジョー・ロビンソン、マルク・ベルダゲル、他

撮影:アルトゥール・トルト

編集:クレマン・ピント、アルベルト・セラ

製作者:ピエール・マルタン・ジュバン、アルベルト・セラ、(エグゼクティブ)ピエール・マルタン・ジュバン、モンセ・トリオラ、他クリスティナ・コンラッド

サウンド:ジョルディ・リバス

衣装デザイン:イヴ・サンローラン

 

     

  (「Seize moments de ma vie」から)

 

◎イングリッド・カーヴェン(カーフェン)は、一時結婚していたライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督が製作・脚本・撮影・美術・フィルム編集を自ら手がけた『13回の新月がある年に』(78)に出演、ヴェルナー・シュローターの『愚か者の日』(89)、アンドレ・テシネの『私の好きな季節』(93)、ベルトラン・ボネロの「Ingrid Caven, musique et voix」(12、仮題「イングリッド・カーヴェン、音楽と声」)、またダニエル・シュミットの『ラ・パロマ』(74)に主演、同監督の『天使の影』(76)はファスビンダーの戯曲『ゴミ、都市そして死』をシュミットが映画化、他に『季節のはざまで』(92)、パスカル・ホフマン&ベニー・ヤーベルクのドキュメンタリー『ダニエル・シュミット 思考する猫』(10)などに出演している。

 

     

         (「Ingrid Caven, musique et voix」のポスター)

 

◎アルベルト・セラのキャリア&フィルモグラフィーは、以下の作品でアップしています。

*『孤独の午後』の作品紹介は、コチラ⇒2024年08月04日

*『パシフィクション』の作品&キャリア紹介は、コチラ⇒2022年10月13日

   

      

       (アルベルト・セラ)


 

★3月開催のマラガ映画祭、5月開催のカンヌ映画祭などで、既に作品紹介をしている監督作品は以下の通りです。

  

「El ser querido / The Beloved」(スペイン=フランス)カンヌ映画祭コンペティション

監督:ロドリゴ・ソロゴジェン(マドリード1981)

 

  

(ハビエル・バルデム、ビクトリア・ルエンゴ)

   

 

*「El ser querido」の作品・キャリア紹介は、コチラ⇒2026年06月04日

 

 

「Amarga Navidad / Bitter Christmas」(スペイン)カンヌ映画祭コンペティション

監督:ペドロ・アルモドバル(カルサダ・デ・カラトラバ1949)

 

    

  (バルバラ・レニー、ビクトリア・ルエンゴ)

 

       

      (レオナルド・スバラリア)


   

*「Amarga Navidad」の作品・キャリア紹介は、コチラ⇒2026年06月14日

 

 

「Yo no moriré de amor / I Won’t Die for Love」マラガ映画祭コンペティション

 金のビスナガ作品賞受賞

監督:マルタ・マトゥテ(マドリード1988)

 

  
 (フリア・マスコット、ソニア・アルマルチャ)

   

           (マルタ・マトゥテ監督)

 

*「Yo no moriré de amor」の作品・キャリア紹介は、コチラ⇒2026年04月11日

 

 

★マラガのスペイン映画部門12作のうち、金のビスナガ作品賞を受賞した「Yo no moriré de amor / I Won’t Die for Love」を含めると、観客賞を受賞したマルタ・ディアス・デ・ロペ・ディアスの「Pioneras, Solo querían jugar」や、審査員特別賞を受賞したイアン・デ・ラ・ロサの「Iván & Hadoum」など7作も選ばれていますから、サンセバスチャンに来れば、今年のスペイン映画の話題作を纒めて観ることができそうです。マラガ映画祭2026でデータだけ紹介しています。

    

     

(マルタ・ディアス・デ・ロペ・ディアスの

 「Pioneras, Solo querían jugar」から)

    

        

 (イアン・デ・ラ・ロサの「Iván & Hadoum」から)

  

★次回はクロージング作品、バネッサ・ベニテス(セビーリャ1980)の「200 vidas, Paco Rabal」(ドキュメンタリー)の紹介を予定しています。2001年のドノスティア栄誉賞を受賞した俳優パコ・ラバルのドキュメンタリーで、今回がワールドプレミアです。

   

     

                  (パコ・ラバル)

  

ナオミ・ワッツにドノスティア栄誉賞*サンセバスチャンFF26 ⑭ ― 2026年09月08日 18:07

       インディーズ映画と大作での実績をもつ女優にして起業家のナオミ・ワッツ

 

     

 

★去る8月31日、二人目となるドノスティア栄誉賞にナオミ・ワッツの発表がありました。2001年、デヴィッド・リンチのミステリー『マルホランド・ドライブ』で国際的な名声を得た女優の道程は、必ずしも順風満帆ではありませんでした。「十年以上もオーディションに落ち続け、自分自身さえ見失っていた私を見つけてくれた・・・彼のお蔭で有名になりました」と、監督没後(2025年1月)に追悼している。既に30歳を超えており、当時のハリウッドでは「女優の40歳は90歳の老婆」と言われていた時代でした。しかし、ベティ・エルムスとダイアン・セルウィン役の忘れがたい二役で、映画界で最も魅力的な才能の一人としての地位を確立、ナショナル・ボード・オブ・レビュー、全米映画批評家協会などの最優秀女優賞を手にしました。2006年、監督の最後となる長編『インランド・エンパイア』でウサギのボイス出演をしている。

   

      

          (撮影中のナオミ・ワッツとデヴィッド・リンチ)

 

★ナオミ・ワッツは、1968年イギリスのケント州ジョアハム生れ、女優、モデル、演技以外でもプロデューサーのキャリアを磨き、起業家として女性の健康に関する活動をしている。イギリス生れだが、父親没後、14歳で母方の祖母の故郷オーストラリアに家族で移住した。演技はシドニーの演技学校で学んでいる。1991年、ジョン・デュイガンのティーン・ロマンス「Flirting」にニコール・キッドマンと出演した。スコット・コフィ―の短編「Ellie Parker」(01、16分)を監督と初プロデュース、主演もした。本作はサンダンスFFで上映され、その後2005年に長編映画化された。2004年オーストラリア映画協会のグローバル・アチーブメント賞を受賞している。

  

★出演作はTVシリーズを含めると3桁に及ぶ。その確かな演技力は多くの監督に愛されている。2003年アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの『21グラム』でアカデミー賞主演女優賞初ノミネートほか、ボストン、フロリダ、ロサンゼルスなどの映画批評家協会賞を受賞、ショーン・ペンやベニチオ・デル・トロと共演、2005年、ピーター・ジャクソンの『キング・コング』では、アメリカSFファンタジー・ホラー映画アカデミーの主演女優賞やロンドン映画批評家協会の年間女優賞を受賞、同年マーク・フォースターのサイコスリラー『ステイ』でユアン・マクレガーと共演した。デヴィッド・クローネンバーグの『イースタン・プロミス』(07)では、ヴィゴ・モーテンセンやヴァンサン・カッセルと共演している。

 

        

         (ショーン・ペンとナオミ・ワッツ、『21グラム』から)

 

   

        (ポスター)

 

       

              (『キング・コング』から)

 

★ミヒャエル・ハネケが『ファニーゲーム』(97)をセルフリメイクした『ファニーゲームU.S.A.』(08)で再びモーテンセンと共演した。ロドリゴ・ガルシアの『愛する人』(09)は、トロントFFでプレミア、本祭のクロージング作品で、その後国際映画祭巡りをした作品。同年トム・ティクヴァの『ザ・バンク堕ちた虚像』ではクライヴ・オーウェンと、ダグ・リーマンがブレイム事件を描いた実録ポリティカル・サスペンス『フェア・ゲーム』(10)では、3度目の共演となるショーン・ペンと夫婦役を演じた。クリント・イーストウッドの『J・エドガー』(11)でレオナルド・ディカプリオと、そして翌年、J.A.バヨナの『インポッシブル』で2度目となるオスカー賞主演女優賞にノミネートされた。2004年のスマトラ沖地震による未曾有のツナミを生き延びた家族を描いた実話の映画化、ユアン・マクレガーと夫婦役を演じた。スペインのシネマ・ライターズ・サークル賞2013主演女優賞、パームスプリングFF功績賞、サンタバーバラFFモンテシート賞ほか受賞歴多数、スペインでの世界興行売上ナンバーワンは、いまだに破られていない。

 

      

     

           (『インポッシブル』スペイン語版ポスター)

 

★何作かを掛け持ちで出演しているから選ぶのに迷うが、2013年、オリヴァー・ヒルシュピーゲルの『ダイアナ』では、ウェールズ公妃ダイアナの最後の2年間を演じたが、脚本が雑で低評価だった。2014年、アレハンドロ・G・イニャリトゥがアカデミー賞作品賞以下、数々の映画賞を受賞した『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』に脇役で出演、ノア・バームバックのコメディ『ヤング・アダルト・ニューヨーク』で、ベン・スティラーやアダム・ドライバーと共演、2015年、ジャン=マルク・ヴァレの遺作となったドラマ『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』にジェイク・ジレンホークと共演、2017年、コリン・トレヴォロウの『ザ・ブック・オブ・ヘンリー』に主演、Netflixで配信された。2019年、サンダンスFFでプレミアされ高評価だった、ジュリアス・オナーの社会派サスペンス『ルース・エドガー』ではティム・ロスと夫婦役を演じた。

 

★2020年、オーストラリアが製作した、グレンディン・イヴィンの『ペンギンが教えてくれたこと』に主演、2016年にキャメロン・ブルーム他が上梓したノンフィクションの映画化、Netflixで配信されている。2021年、フィリップ・ノイスのスリラー『デスパレート・ラン』に主演・製作、2024年、オドレイ・ディヴァン(ディワン)の『エマニュエル』は、エマニュエル・アルサンの同名小説の映画化、製作はフランスだが言語は英語、本祭セクション・オフィシアルのオープニングを飾った。当ブログで作品紹介をしています。

*『エマニュエル』の紹介記事は、コチラ⇒2024年07月01日

 

★2025年、”Dare I Say It: Everything I Wish I’d Know About Menopause” がニューヨーク・タイムズのベストセラーのリスト入りしている。ドノスティア栄誉賞の授与式は、9月19日メイン会場のクルサール・ホールで行われ、その後、ベン・シリニアンの長編デビュー作「The Housewife」が上映されることになっています。ワッツが主役の主婦を演じます。

  

 

 「The Housewife / La esposa perfecta」(仮題「主婦」)

データ:製作国アメリカ合衆国、2026年、歴史ドラマ、102分、撮影地カナダのモントリオール、チューリッヒFF、トロントFF、サンセバスチャンFF、各映画祭上映

監督:ベン・シリニアン、脚本アリッサ・ヒル

キャスト:ナオミ・ワッツ、タイ・シェリダン、ルーク・エヴァンス(ラッセル)、マイケル・インペリオリ(アンソニー)、レナ・オリン、デビ・マザール、他

ストーリー:ニューヨーク、1964年、若いジャーナリストがクイーンズ地区にナチス将校と思われる男が秘密裏に暮らしていることを嗅ぎつける。彼が目指す容疑者の魅力的な妻と親しくなり、ジャーナリスティックな完璧さで追い詰めていくと、捜査は意外な展開を迎える。実話に基づいています。

 

  

             (ナオミ・ワッツ、フレームから)

 

     

★監督紹介:ベンジャミン・シリニアン、カナダのケベック州モントリオール生れ、監督、脚本家、俳優、クイーンズ大学で映画製作を学んでいる。短編「Lost in Motion」(12、4分、監督、共同脚本)は、カナダ国立バレエ団のプリンシパルダンサー兼振付師、作曲家ギヨーム・コーテをフィーチャーしている。トロントFFでプレミアされた。「Lost in Motion 2」(13、4分、監督、共同脚本)は、コーテの妻ヘザー・オグデン出演、第二次世界大戦中にフランス南部で孤児になったユダヤ人の少年と少女のラブストーリー「Josef et Aimee」(15、17分、監督、共同脚本)は、フランス語のファンタジードラマ。共同脚本家は3作ともレスリー・ゴットリーブ。

 

   

             (ベン・シリニアン監督)

  

ヴェルナー・ヘルツォークにドノスティア栄誉賞*サンセバスチャンFF26 ⑬ ― 2026年09月04日 12:04

    ニュー・ジャーマン・シネマの旗手ヴェルナー・ヘルツォークに栄誉賞

 

   

 

★サンセバスチャン映画祭の最高栄誉であるドノスティア栄誉賞に、ニュー・ジャーマン・シネマを代表する監督ヴェルナー・ヘルツォークと、女優でプロデューサー、起業家でもあるナオミ・ワッツがアナウンスされています。今回は発表順に前者ヘルツォークのアップです。昨年ベネチア映画祭の栄誉金獅子賞が授与され、本祭も遅ればせながら授与することにしたのか、ドイツの受賞は初めてかも。

 

      

     (昨年、栄誉金獅子賞を受賞したヴェルナー・ヘルツォーク、ベネチアFF2025)

 

★ヴェルナー・ヘルツォーク、1942年ミュンヘン生れ、監督、脚本家、オペラ演出家、プロデューサー、俳優と幾つもの顔をもつ才人。ミュンヘン生れだが、子供時代はバイエルンの山間の村で育ち、11歳になるまで映画の存在さえ知らなかったという。15歳で映画製作を決意、資金作りのため高校の数年間は夜勤で製鉄所の溶接工として働いた。ミュンヘン大学で歴史とドイツ文学を専攻したが、19歳で初めて短編「Herakles」(62「ヘラクレス」)を撮り、大学は中退した。その後、奨学金を得てアメリカはペンシルベニア州のピッツバーグ大学と同市のデュケイン大学で学んでいる。

 

★1968年、長編デビュー作『生の証明』がベルリン映画祭で審査員特別賞(銀熊)を受賞した(公開1983)。続くドキュメンタリー『闇と沈黙の国』(71、公開1978)はマンハイム・ハイデルベルクFFのインターフィルム賞を受賞、1972年、クラウス・キンスキー(1926~91)を初めて起用した『アギーレ/神の怒り』を発表、翌年のカンヌ映画祭併催の「監督週間」に出品された(公開83)。

  

          

             (『アギーレ/神の怒り』ポスター)

 

★怪優キンスキーとは5本タッグを組んでいる。例えば、2作めはムルナウの『吸血鬼ノスフェラトゥ』(22)をリメイクした『ノスフェラトゥ』(79、公開1985)で、ドラキュラ伯爵に扮した。同じ年に3作目となる『ヴォイツェク』(公開1983)では、19世紀初めライプツィヒで実際に起きた情婦殺人事件をベースに、キンスキーは殺人犯ヴォイツェクに扮した。4作めがオペラハウス建設の資金作りのためアマゾンの奥地でゴム農園を開拓するアイルランドからやってきた男フィッツジェラルド(フィツカラルド)に扮した。カンヌFFで監督賞を受賞した『フィツカラルド』(82、公開1983)は、他にドイツ映画賞、サンセバスチャンFFのOCIC賞を受賞、ゴールデングローブ賞の外国映画賞にノミネートされるなどした。最後がブラジルの盗賊コブラ・ヴェルデを描いた歴史アドベンチャー『コブラ・ヴェルデ』(88、公開1990)、アンチ・ヒーローを演じた。バイエルン映画賞を受賞した。5作とも時期はずれるが劇場公開されている。

 

       

        (カンヌFF監督賞を受賞した『フィツカラルド』のポスター)

 

★60年にわたるキャリアをもつ受賞者は、ドイツだけでなく国際的にも影響力のあるシネアストの一人となり、極端な状況下にある人間がもつ矛盾した本質を追求する作品を発表し続けている。今回の受賞理由として、彼の映画は「フィクションもノンフィクションも、極限の風景やコントロールできない力に直面した征服者や夢想家たちで溢れている。〈恍惚の真理〉という概念に導かれ、彼はより深く詩的な現実の側面を明らかにするための単なる事実の観察を超えた映画を提唱している」と。蒸気船の山越えシーンが伝説となった『フィツカラルド』のラストシーンなどを想起させる。

      

★TVシリーズを含めるとおよそ80作に及ぶ代表作の一つが、『小人の饗宴』(77)、19世紀初めニュルンベルクの路上で発見された言葉を解しない青年の実話を描いた『カスパー・ハウザーの謎』、カンヌFF1975審査員グランプリとFIPRESCI賞を受賞した。オーストラリアの先住民アポリジニの姿を映した『緑のアリが夢見るところ』(84)、現代登山の父ラインホルト・メスナーをモデルにした『彼方へ』は、ベネチアFF1991で脚本家に与えられる金オゼッラ賞を受賞した。その後ドキュメンタリーを数本製作している。

  

     

            (『カスパー・ハウザーの謎』ポスター)

 

★2001年、10年ぶりに第2次大戦前のベルリンを舞台に、ポーランド出身のユダヤ人鍛冶屋の息子の実話に基づいた『神に選ばれし無敵の男』(英語)、他にドキュメンタリー『グリズリーマン』(05)、『戦場からの脱出』(07)、『バッド・ルーテナント』(09)、『狂気の行方』(09)、『アラビアの女王 愛と宿命の日々』(15)など発表しているが、製作国は大半が米国です。

  

「Bucking Fastard」(仮題「バッキング・ファスタード」)

データ:製作国米国=アイルランド、2026年、実話に基づくドラマ、109分、撮影地アイルランド。他にジュリエット・ダーリングが実在した一卵性双生児チャップリン姉妹を、ドキュメンタリー「A Pair of One」(87、27分、製作国オーストラリア)で撮っている。

映画祭・受賞歴:ベネチアFF2026でワールドプレミア、トロントFF、サンセバスチャンFF、ニューヨークFFなどで上映予定

監督・脚本:ヴェルナー・ヘルツォーク

 

キャスト:ケイト・マーラ(ジーン)、ルーニー・マーラ(ジョーン)、オーランド・ブルーム(ギャレス・マルルーニー、姉妹の恋人)、ドムナル・グリーソン(ソーシャルワーカーのティモシー)

ストーリー:ジーンとジョーンのホルブルック家の姉妹は、声を合わせて話し、同じ男性を愛し、同じ夢を共有するほど仲が良い。同時に同じ間違いをします。私たちは彼女たちが見ている世界を見ることはできませんが、世界が二人にどのような反応を示すか見ています。例えば裁判や報道を通じて、誰が彼女たちを助けようとしているか、または誰が利用しようとしているかです。イギリス出身の一卵性双生児姉妹フリーダ&グレタ・チャップリンの実話に基づいている。

 

     

        (主演したルーニーとケイトのマーラ姉妹、フレームから)

 

     

 (実在したモデル、フリーダとグレタのチャップリン姉妹)

 

     

                (SSIFFのポスター)

  

★「Bucking Fastard」は、9月18日、ドノスティア栄誉賞授与式当日に上映されます。ジーンとジョーンを演じたケイト・マーラ(1983生れ)とルーニー・マーラ(1985生れ)は本当の姉妹、共演は初めて、既に開幕したベネチアには、監督、マーラ姉妹、ストーカーされる役のオーランド・ブルームも出席、6分半のスタンディングオベーションに応えました。

 

      

             (ベネチアFF2026、9月3日)

 

閉幕作品はミヒャエル・ロスカムの「Le Faux Soir」*サンセバスチャンFF26 ⑫ ― 2026年09月01日 10:47

       ロスカムの新作「Le Faux Soir」は史上初のメディアハッキング

 

    

 

★セクション・オフィシアルのクロージング作品は、ベルギーのミヒャエル・R・ロスカムの新作「Le Faux Soir」、金貝賞に絡まないアウト・オブ・コンペティションから選ばれました。トロント映画祭でワールドプレミアされた後、サンセバスチャンFFにやってきます。1943年ナチス占領下のベルギーが舞台、レジスタンスの一団が国民の士気を高めるため途方もないアイデアを思いつきます。同国の穏健な全国紙「Le Soir」(ル・ソワール紙)をプロパガンダの道具に変身させた実話に基づいています。マリー・イスタスの著書 ”Le ‘faux’ Soir, 9 novembre 1943” (フランス語版、1993年刊)がベースになっている。

 

      

 

「Le Faux Soir」(仮題「ル・フォー・ソワール/偽ル・ソワール紙」)

◎クロージング作品

データ:製作国ベルギー=フランス、2026年、フランス語・ドイツ語、スリラー、歴史ドラマ、実話、134分、撮影地ブリュッセル。トロントFF(9月11日)、サンセバスチャンFF9月26日、公開ベルギー(12月2日)、フランス(2027年1月27日)

監督:ミヒャエル・R・ロスカム

脚本:ミヒャエル・R・ロスカム、ドメニコ・ラ・ポルタ、ベルナール・ファレーズ

原作者:マリー・イスタス ”Le ‘faux’ Soir, 9 novembre 1943” 

音楽:クリストフ・シャッソル

撮影:ジョーダン・ヴァンシェル

製作者:ジャン・イブ・ルーバン、カサンドル・ワーノーツ、アリス・ジラード、ミヒャエル・R・ロスカム、他

  

キャスト:アリエ・ワルトアルテ(マルク“イヴォン”オブリオン)、メラニー・ティエリー、カリム・ルクルー、マラ・タキン、ブーリ・ラナー、ジュリアン・フリソン、フランソワ・ダミアン、ルース・ベクワート、ジャン・ブノワ・ユジュ、他多数

ストーリー:1943年、ナチス占領下のベルギーのブリュッセルが舞台、同国のレジスタンスの一団が穏健な全国紙「ル・ソワール」を彼らのプロパガンダの道具に変えた。1918年の第1次世界大戦の休戦記念日が禁止されるなか、レジスタンスの一団が突飛で独創的なアイデアを思いつく。ベルギー国民の士気を高めるため、占領者を嘲笑する記事がギッシリ詰まった、偽の「ル・ソワール」紙を発行したらどうだろうか。新聞名も、フォーマットも同じだがフェイク新聞、世界初のメディアハッキング。第2次世界大戦中のベルギー抵抗運動の最も興味深いエピソードの一つが再現されている。

   

       

               (偽「ル・ソワール」紙)

 

★第1次世界大戦の休戦25周年を記念した5万部の「偽新聞」作り、独立戦線が主導した。発行日1943年11月9日の朝、あちこちのニューススタンドで爆笑が沸き起こった。面目丸つぶれの占領者の弾圧が始まる。翌年2月、使用された印刷機の同定がなされ、製作にかかわった人物が次々逮捕され、中心人物マルク・オブリオンも3月に倒れ、仲間たちも同じ運命を辿った。関係者の多くがナチスの強制収容所から戻ることは叶わなかったという。休戦日は11月11日だが、その日は避けたそうです。

 

★監督紹介:ミヒャエル・R・ロスカム(ベルギー、シント=トロイデン/サン=トロン1972)、監督、脚本家、製作者、ジャーナリスト。ブリュッセルのサン・ルーカス美術アカデミーでグラフィック・デザインを学び、アムステルダムのモーリッツ・ビンガ-映画学校で脚本作成の修士号を取得した。ジャーナリストとしてオランダ語新聞「デ・モルゲン」で働き、数本の短編を撮ったのち、2011年、クライム・サスペンス「Rundskop」(邦題『闇を生きる男』)で長編デビューを果たした。ベルリナーレのパノラマ部門上映、アカデミー賞の国際映画賞にノミネートされた。2014年、「The Drop」(『クライム・ヒート』)が、サンセバスチャンFFのセクション・オフィシアルにノミネートされ、脚本賞を受賞した。また「Le Fidele」(『ビヨンド・ザ・スピード』)は、ベネチアFF2017アウト・オブ・コンペティションで上映され、アカデミー賞ベルギー代表作品に選ばれている。さらに2021年、タロン・エガートン主演のTVミニシリーズ「Black Bird」(『ブラック・バード』)の最初の3話を監督、エグゼクティブプロデューサーも手がけた。エミー賞とゴールデングローブ賞にもノミネートされている。 

 

      

              (ミヒャエル・R・ロスカム監督)

 

★キャスト紹介:アリエ・ワルトアルテ、本作で主役を演じたワルトアルテの出演作は、マチュー・アマルリックの『彼女のいない部屋』(21)では主人公の夫役、ルーカス・ドンのデビュー作『Girlガール』(18)ではトランスジェンダーの少女の父親役、セドリック・カーンの実話に基づく法廷ドラマ『ゴールドマン裁判』(23)では、アンチヒーローの主人公ピエール・ゴールドマン役を演じ、セザール賞2024の主演男優賞を受賞した。他にパトリシア・マズィの連続殺人事件を描く『サターン・ボウリング』(25)などがある。

   

        

      (セザール賞のトロフィーを手に、アリエ・ワルトアルテ、2024年)

 

★約70年前、同じテーマでガストン・シューケンス監督の「Un Soir de joie / An Evening of Joy」(55「喜びの夕べ」)が製作されており、2023年には、この華麗な行為の80周年を記念して修復が施されシネマテックで10日間にわたり上映された。また2021年のグラフィック・ノベル版は、歴史コミック部門のアトミウム賞とコグニート賞を受賞、命をかけて占領者を困惑させたレジスタンスに敬意を表しました。ロスカムの新作も、いずれ字幕入りで鑑賞できそうです。

 

     

             (「Un Soir de joie」のポスター)


開幕作品はファティ・アキンの「Geister」*サンセバスチャンFF26 ⑪ ― 2026年08月28日 17:41

         サンセバスチャンFF初登場のファティ・アキンの詩的ドラマ「Geister」

 

       

 

★今回のセクション・オフィシアルの発表は五月雨式でなかなか全容が見えませんでしたが、オープニング作品にトルコ系ドイツ人のファティ・アキンの「Geister / Ghost Song」のアナウンスがありました。アキン監督は本祭初登場、他6作も発表になり合計17作が金貝賞を競うことになりました。クロージング作品はアウト・オブ・コンペティションからベルギーのミヒャエル・R・ロスカムの「Le Faux Soir」に決定しました。コンペティション17作(うちデビュー作が3本)、アウト・オブ・コンペティション3作、アウト・オブ・コンペティションの特別上映5作、これでリストが完成しました。今回は開会式の後にクルサール・ホールで上映されるオープニング作品の紹介。

 

「Geister / Ghost Song」(仮題「ゴースト・ソング」)

◎オープニング作品

データ:製作国ドイツ、2026年、ドイツ語、ファンタジー、ロマンス、106分、撮影ハンブルク

監督:ファティ・アキン

脚本:ファティ・アキン、ルース・トマ

撮影:フランク・グリーブ

プロダクションデザイン:セス・ターナー

メイクアップ:マイケ・ハインライン

製作:Bombero International / Warner Bros.Film Productions Germany

 

キャスト:マリアム・ダウード(ファラシャ)、エレン・M・ギューヴァルチン(ファリス)、カルロッタ・フォン・ファルケンハイン、ガブリエル・ウィナー・アモリン、モハメド・アチュール(ガッサン)、ラマ・アルハラビ(シファ)、他

ストーリー:ファラシャとファリスは、卒業パーティーで出会ったとき20歳でした。一目ですべてが変わります。しかしファラシャはその夜に亡くなってしまいます。彼と離れることを拒み、彼女は二つの世界の境界を越える方法を発見します。40夜だけ、40だけ、彼女は夢の中でファリスに会うことができます。このようにして愛は育み続けます、最後の夜まで。二つの世界のあいだで展開する特別なラブストーリー。

 

    

 

  (ファラシャとファリス) 

       

★監督紹介:ファティ・アキン(ファティフ・アーキンとも表記される)は、1973年ハンブルク生れのトルコ系ドイツ人、監督、脚本家、製作者、俳優。1994年ハンブルク造形芸術高等専門学校入学、2000年卒。彼はドイツの映画監督としては国際舞台では認知度が高いほうですが本祭初登場です。最も本祭はドイツ映画がそもそも少ない。彼は2004年、『愛より強く』(Head-On)がベルリナーレの金熊賞を受賞して国際舞台に登場しました。その後、『そして、私たちは愛に帰る』(The Edge ob Heaven)でカンヌFF2007の脚本賞と観客賞、『ソウル・キッチン』(Soul Kitchen)でベネチアFF2009特別審査員賞と、30代の若さで世界三大映画祭の主要な賞を手に入れました。

 

  

            (ファティ・アキン監督)

   

★以後の代表作は、2012年ドキュメンタリー『トラブゾン狂騒曲 小さな村の大きなゴミ騒動』、2014年『消えた声が、その名を呼ぶ』、2016年『50年後のボクたちは』、2017年『女は二度決断する』がカンヌのパルムドールを争い、主演のダイアン・クルーガーに女優賞をもたらした。ゴールデングローブ賞外国語映画賞を受賞した。2019年『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』、2022年の『ラインゴールド』は、ドイツでは100万人以上の観客が鑑賞した。2025年『白パンと独裁者』は、第2次世界大戦末期が舞台、12歳の少年の視点で描かれる戦争ヒューマンドラマ、ダイアン・クルーガーも共演した。作品の大半が字幕入りで鑑賞できる稀有な監督。