RTVE「別の視点」賞は女性プロデューサーが対象*サンセバスチャンFF26 ⑰ ― 2026年09月20日 14:32
視聴覚産業への貢献を称える女性プロデューサーが競います

★第20回を迎えるRTVE「別の視点」賞は、今回は8本の映画の女性プロデューサーが対象です。女性プロデューサーが視聴覚創造の重要な推進役を担ってきたことを認めたからだそうです。セクション・オフィシアルから4本(未紹介2作)、ニューディレクターズ部門2本(未紹介1作)、ペルラス部門2本が選ばれました。審査員は、RTVE理事マリア・ソラナ、女優ライア・コスタ、プロデューサーのマリサ・フェルナンデス・アルメンテロスの3方です。今回は五月雨式の発表でセクション・オフィシアルを全作紹介できなかったこと、ペルラス部門の濱口竜介の『急に具合が悪くなる』が選ばれていることもあってアップしますが、多くが合作なので製作者も当然女性だけではありません。
◎セクション・オフィシアル
1)「Artakalan / What Remains」
製作国:トルコ=フランス=ルクセンブルク=ブルガリア
監督:イェシム・ウスタオウル(トルコ1960)
製作者:イェシム・ウスタオウル、アンナ・マリア・アスラノール、ベフルーズ・ハシェミアン
*作品紹介は、コチラ⇒2026年08月04日

2)「Garrat du Vaimmu / Brace Your Heart」(仮題「覚悟を決めて」)
データ:製作国スウェーデン=ノルウェー=デンマーク=アイスランド=ブルガリア、2026年、長編3作め、ドラマ、北部サーミ語、スウェーデン語、97分、トロント映画祭プラットフォーム部門でワールドプレミア
監督・脚本:アマンダ・ケンネル(スウェーデン、ウメオ市1986)、南部サーミ出身の監督、脚本家。父親がサーミ人、母親はスウェーデン人。長編デビュー作『サーミの血』(ベネチアFF2016)が東京国際映画祭で審査員特別賞を受賞、劇場公開された。
製作者:エヴァ・オーケルグレン(Nordisk Film Production Sveriga スウェーデン)
リサ・マリー・クリステンセン(Forest People ノルウェー)
カリン・カリノフ(Invictus ブルガリア)
キャスト:エリ・サラ・ヴァルケパー(エジュヴァ)、アソッテ・ガウプ・ユウソ(ヘイカ)、ヴィンセント・ニア(ネジュラ)
ストーリー:エジュヴァは亡父のトナカイの群れを相続します。群れを繫栄させようと苦労している。地元リーダーであるヘイカが彼女に好意を寄せ、ためらいながらも受け入れざるをえないと考えている。しかし、彼の従兄弟ネジュラが現れると、エジュヴァは初めて真実の愛を見つけ全てが変わります。嫉妬したヘイカは裏切られたと彼女に厳しく当たります。彼女は手の震えが止まらず群れの世話が難しくなっていくが、自分の未来を切り開くため闘わねばなりません。


(アマンダ・ケンネル監督)
3)「KRUX」(仮題「クルックス」)
データ:製作国ドイツ=ポーランド、2026年、長編デビュー作、ドラマ、ドイツ語、92分、トロント映画祭ディスカバリー部門ワールドプレミア
監督・脚本:トニー・ヴァール(ドイツ)
製作者:マルティナ・ハウブリッヒ、共同クラウディア・シュレーテル
(CALA Film Puroduction ドイツ)
エヴァ・プチシンスカ(Extreme-Emotions、ポーランド)
キャスト:イエラ・ハーゼ(グレタ)、フリーダ・ロビーサ・ハマン、クレメンス・シック、ルーカス・ミコ、マルティン・ヴトケ、シュテフィ・キューネルト、ハンス・ウーヴェ・バウアー、マルレーネ・フランツォーネ、ヒューゴ・ゴアース
ストーリー:第二次世界大戦末期のドイツ北東部の小村の暗い現実を描いている。ナチス政権が敵が見つけられるように住民に命じたのです。男性の大半は前線におり、残っているのは数人の女性、子供、残ることを許された少数の男性だけです。人生は今も昔からの慣わしで、学校、教会、結婚式などが支えられています。そうすれば何もかも上手くいくと村人たちはまだ信じています。そして川は誰とも分からない遺体を運んできます。敵がいつ来るのか、来たとき何が起こるのか、誰にも分かりません。事実は沈黙させられ、流言で埋め尽くされる。その沈黙のなかから、敵より大きな恐怖が生まれてきます。ソビエト赤軍の到着による屈辱を避けるため、住民を集団自決に追い込むよう命じられた住民の実話に着想を得ています。


(「道徳的、ホラー的おとぎ話として見てほしい」と語る監督トニー・ヴァ―ル)
4)「Markens grode / Growth of the Soil」
製作国:ノルウェー=デンマーク=ドイツ
監督:ハンス・ペッター・モランド(ノルウェー、オスロ1955)
製作者:4 1/2 Fiction As(ノルウェー)、Scanbox Productions(デンマーク)、Nadcon Film(ドイツ)
*作品紹介は、コチラ⇒2026年08月04日

◎ニューディレクターズ部門
5)「El mal hijo / The Bad son」(オープニング作品)
製作国:スペイン
監督:ハイメ・ロレンテ(スペイン、ムルシア1991)
製作者:カルメン・アグアド
*作品紹介は、コチラ⇒2026年08月07日

6)「Obuvkite na bashta mi / My Father’s Shoes」(仮題「父の靴」)
データ:製作国ブルガリア=フランス、2026年、長編デビュー作、ドラマ、ブルガリア語、86分、SSIFFでワールドプレミア。
監督・脚本:フリスト・シメオノフ(ブルガリア)
製作:カチャ・トリチコワ(Contrast Films ブルガリア)
ジャン・ローラン・シニディス、ジェローム・ヌネス(Films De Force Majeur 仏)
キャスト:ヴァレリア・ヴァルバノア、ターニャ・シャホワ、ヴィヤラ・コラロワ、ボリスラフ・ルセフ、ミグレナ・ヴェジロワ
ストーリー:ミマは父親を知らずに、妥協のない母親ボイカに育てられました。父の死の知らせが届き、遺体が村に戻ると、事実を認めることは義務であると同時にジレンマとなる。一方、母親はかつて愛した男と向き合うことを拒むが、母娘は沈黙の過去と和解しなければなりません。ミマは自分が決して選ばない人生を受け継ぐ義務がどういう意味なのか決めねばなりません。


(フリスト・シメオノフ監督)
◎ペルラス部門
7)「Josephine」
製作国:アメリカ合衆国
監督:ベス・デ・アラウジョ(サンフランシスコ1985)
製作者:ベス・デ・アラウジョ、ジェマ・チャン、マリーナ・スタビレ、他多数
*作品紹介は、コチラ⇒2026年08月24日

8)「Soudain / All of a Sudden / De repente」『急に具合が悪くなる』
製作国:フランス=日本=ドイツ=ベルギー
監督:濱口竜介(川崎1978)
製作者:ベッティナ・ブローケンパー、シャーロット・ドーファン、松田広子、他多数
*作品紹介は、コチラ⇒2026年08月24日

★以上の8作です。ドイツでは長年タブー視されていたテーマに取りくんだ、トニー・ヴァ―ルの「KRUX」が先頭を走っていると予想します。これは過去の戦争映画ではなく、今の時代にある恐怖がテーマでしょうか。またはアマンダ・ケンネルの「Garrat du Vaimmu / Brace Your Heart」もありでしょうか。
閉幕作品は「200 vidas, Paco Rabal」*サンセバスチャンFF26 ⑯ ― 2026年09月17日 12:10
クロージング作品はバネサ・ベニテスの「200 vidas, Paco Rabal」

★オープニング作品もスペイン初公開のノンフィクションでしたが、バネサ・ベニテスの「200 vidas, Paco Rabal」は、世界初公開です。メイド・イン・スペイン部門を締めくくる映画がスペイン未公開というわけです。本作は俳優パコ・ラバル(ムルシア県アギラス1926~2001)の生誕100周年、没後25周年を記念して製作されました。半世紀に及ぶ俳優人生でクレジット無しを含めると映画データバンクには218本、タッグを組んだ監督には、ルイス・ブニュエル、ミケランジェロ・アントニオーニ、カルロス・サウラ、ペドロ・アルモドバル、クロード・シャブロル、ルキノ・ヴィスコンティなどなど、スペインに止まらず国際的に活躍した俳優でした。

(ルイス・ブニュエルの『ナサリン』から)

(「おじさん」と慕っていたブニュエルとのツーショット)
★ベニテス監督は、1980年アンダルシアのセビーリャ県南部のオスナ生れ、監督、脚本家。ドキュメンタリー「La vida chipén」がゴヤ賞2023オリジナル歌曲賞(「Un paraíso en el sur」)に作曲家のパロマ・ペニャルビアとノミネート、他にカルメン賞2023などにノミネートされている。TVシリーズを数多く手がけていますが、2017年の「Rota n’Roll」は、スペイン内戦後の農村ロタにソ連の脅威を抑えるため、ヨーロッパ最大のアメリカ軍基地が建設された歴史ドキュメンタリーです。

(バネサ・ベニテス監督)

(ドキュメンタリー「La vida chipén」のポスター)
「200 vidas, Paco Rabal / 200 Lives, Paco Rabal」(仮題「」)
製作:MLK Producciones / Horizon Media / Plan B et Compagnie / Monstro Films
協賛:RTVE / Canal Sur Radio y Televisión / La 7 Television / Movistar Plus
監督・脚本:バネサ・ベニテス
音楽:クルド・ピメント
撮影:セサル・エルナンド、フアン・アルフォンソ・モレノ
編集:レナート・サンフアン
サウンド:ホルヘ・マリン
製作者:(MLK Produccionesスペイン)ホセ・アントニオ・エルゲタ、(Horizon Media スペイン)ホセ・エヘア、カルロス・ベルモンテ
共同製作者:(Plan B et Compagnieフランス)セクリエ・マエストロ・シャブロル、パスカル・ラフマニ、(Monstro Filmsメキシコ)モニカ・ロサノ、イーモン・オファリル
データ:製作国スペイン=フランス=メキシコ、2026年、ドキュメンタリー、歴史、ビオピック、俳優パコ・ラバルの映画アドベンチャー、スペイン語・英語・フランス語、95分
出演:(アーカイブ映像)フランシスコ・ラバル、ルイス・ブニュエル、フェルナンド・レイ、カルロス・サウラ、フアン・アントニオ・バルデム、ジュリアノ・モンタルド、アスンシオン・バラゲル(女優、ラバルの妻)、ルイス・エスコバル、ヌリア・エスペルト
(出演)アルトゥーロ・リプスタイン(監督)、ゴンサロ・スアレス(監督)、ロベルト・フィエスコ(メキシコの製作者・監督)、エンリケ・セレソ(製作者)、アンドレス・ビセンテ・ゴメス(製作者)、フェルナンド・メンデス=レイテ、(以下俳優)ビクトリア・アブリル、アナ・ベレン、ホセ・サクリスタン、ヒネス・ガルシア・ミリャン、エウラリア・ラモン、ソニア・グランデ、ミゲル・エルモソ、セシル・メストル(フランスの女優・助監督)、ラファエル・アルバレス ’エル・ブルホ’(「フンカル」89で共演)、アントニオ・サウラ(製作者、サウラの子息)、ベニト・ラバル(ラバルの子息、短編「Paco, Mi padre」の監督)、他多数
解説:パコ・ラバルの声のカセット録音やフランコ時代の二枚目俳優として政治的関与にもかかわらず、すぐさま駆けつけたツアー、撮影、フェスティバルのイベントのスーパー8ミリフィルムを通して、彼は自身の人生、後悔、矛盾を見直します。彼が幾度か演じたゴヤのように、ボルドーでの死の瞬間を連想させる印象的なフィルムがあります。本祭では、ラファエル・ヒル、ルーカス・デマレ、レオン・クリモフスキー、ペドロ・オレア、ハイメ・デ・アルミリャンなどの監督たちと成功を収めました。第1回サンセバスチャン映画祭1953男優賞、ドノスティア栄誉賞2001の受賞者です。

(SSIFF2026公式ポスター)
★サンセバスチャン映画祭1953での男優賞受賞は、フランシスコ・ロビラ・ベレタの「Hay un camino a la derecha」主演でした。船員を解雇されて生きるために強盗を計画する労働者の話で、当時のスペインの貧困、痛み、苦悩が語られ、妻を演じたフリア・マルティネスも女優賞を受賞しています。カルロス・サウラの「Goya en Burdeos」(99、『ゴヤ』)は、ボルドーでのゴヤの晩年を描いている。ラバルは翌年のゴヤ賞で主演男優賞を初めて受賞、200作以上も出演していながら受賞は死の前年の1回限りでした。キャリア&フィルモグラフィーは『無垢なる聖者』で紹介しております。またマリオ・カムスの『蜂の巣』では、ビクトリア・アブリル、アナ・ベレン、ルイス・エスコバル、ホセ・サクリスタンなどが共演している。アブリルとは『アタメ』や「Tiempo de silencio」でも共演している。

(アルバ公爵夫人役マリベル・ベルドゥ、ゴヤに扮したラバル、『ゴヤ』から)

(トンビのヒナとパコ・ラバル、『無垢なる聖者』から)

(死が分かつまで連れ添ったラバルとアスンシオン・バラゲル)
◎フランシスコ・ラバルの主なフィルモグラフィー
1952「Sol intrepida」主演、監督ラファエル・ヒル
1953「Hay un camino a la derecha」主演、監督フランシスコ・ロビラ・ベレタ
SSIFF1953男優賞受賞
1953「La guerra de Dios」主演、監督ラファエル・ヒル(SSIFFグランプリ受賞)
1958「La noche y el alba」主演、監督ホセ・マリア・フォルケ
1959「Nazarin」『ナサリン』(メキシコ)主演、監督ルイス・ブニュエル、
原作ベニト・ぺレス・ガルドス、カンヌFF公式上映、国際賞受賞
1959「Sonatas」(メキシコ合作)主演、監督フアン・アントニオ・バルデム、
原作ラモン・デル・バジェ=インクラン、ベネチアFF正式出品
1960「Trio de damas」コメディ、主演、監督ペドロ・オレア
1961「Virideana」『ビリディアナ』(メキシコ合作)助演、監督ルイス・ブニュエル、
カンヌFFパルムドール共同受賞
1962「L'Eclisse」『太陽はひとりぼっち』(イタリア=フランス)助演、
監督ミケランジェロ・アントニオーニ、カンヌFF特別審査員賞受賞
1966「La Religieuse」『修道女』(フランス)助演、監督ジャック・リベット、
原作ドニ・ディドロ
1967「Belle de jour」『昼顔』(フランス=イタリア)助演、監督ルイス・ブニュエル、
原作ジョセフ・ケッセル
1970「Cabezas cortadas」『切られた首』(ブラジル合作)主演、監督グラウベル・ローシャ
1971「Goya, historia de una soledad」主役ゴヤ、監督ニノ・ケベド、カンヌFF出品
1976「Las laegas vacaciones del 36」『1936年の長い休暇』助演、監督ハイメ・カミーノ
1977「Sorcerer」『恐怖の報酬』(米国)主演、監督ウイリアム・フリードキン、
原作ジョルジュ・アルノー(1953アンリ・ジョルジュ・クルーゾーの同名作品がある)
1978「Cosi come sei / Asi como eres」『今のままでいて』(イタリア合作)助演
監督アルベルト・ラットゥアダ
1978「Corleone」『白熱マフィア戦争/皆殺しの構想』(イタリア)主演、
監督パスクアレ・スクイティエリ
1982「La colmena」『蜂の巣』出演、監督マリオ・カムス、原作カミロ・ホセ・セラ
1984「Los santos inocentes」『無垢なる聖者』主演、監督マリオ・カムス、
原作ミゲル・デリーベス、カンヌFF主演男優賞をアルフレッド・ランダと受賞
1985「Tiempo de silencio」主演、監督ビセンテ・アランダ
1985「Padre nuestro」『わが父 パードレ・マエストラ』主演、監督フランシスコ・レゲイロ
カンヌFF「ある視点」出品
1989「¡ Atame !」『アタメ』助演、監督ペドロ・アルモドバル、ゴヤ賞助演男優賞ノミネート
1989「Barroco」『バロック』(メキシコ、キューバ合作)主演、監督ポール・ルデュク、
原作アレホ・カルペンティエル
1997「Pajarico」『パハリーコ―小鳥―』助演、監督カルロス・サウラ
1999「Goya en Burdeos」『ゴヤ』主演、監督カルロス・サウラ、ゴヤ賞主演男優賞受賞
1984年、映画国民賞受賞
1999年、スペイン芸術功労賞金のメダル受賞
2001年、サンセバスチャン映画祭ドノスティア栄誉賞受賞
★今回ラバルが出演した公開作品を検索したところかなりの数がありましたが、必ずしも代表作というわけではなく取捨選択しました。1940年代はクレジット無しも多い。以上は字幕入りで鑑賞できる作品を中心にして、管理人が恣意的に選んだフィルモグラフィーです。ゴチック体タイトルは当ブログに作品紹介があります。
*『ビリディアナ』の作品紹介は、コチラ⇒2020年05月29日
*『無垢なる聖者』の作品 & ラバルのキャリア紹介は、コチラ⇒2014年03月10日~03月11日
メイド・イン・スペイン部門25作が出揃う*サンセバスチャンFF26 ⑮ ― 2026年09月12日 16:33
開幕はアルベルト・セラのノンフィクション「Seize moments de ma vie」

★メイド・イン・スペイン部門は、著作権管理団体SGAEとのコラボレーションです。8月初めに24作が一挙発表になりましたが、追加の可能性を匂わせていました。9月9日、ロドリゴ・ソロゴジェンの「El ser querido」が追加され、第74回は25作が公式上映となりました。どうやら劇場公開の終了を待っていたようです。ハビエル・バルデム、ビクトリア・ルエンゴ主演の本作は、カンヌ映画祭コンペティションでプレミアされた折、当ブログで作品紹介をしています。25作のなかには、ペドロ・アルモドバル、イサベル・コイシェ、ビクトル・ガルシア・レオン、マルタ・マトゥテなどの話題作が含まれています。
★オープニング作品は、2024年のドキュメンタリー「Tardes de soledad」(『孤独の午後』)で金貝賞を射止めたアルベルト・セラのノンフィクション「Seize moments de ma vie / Sixteen Moments of My Life」(仮題「私の人生の16の瞬間」フランスとの合作、85分、ドイツ語・フランス語)です。セラは製作、編集も手がけています。アウト・オブ・コンペティションでしたがロカルノ映画祭でプレミアされました。ドイツ出身のフランス女優で歌手のイングリッド・カーヴェン(ザールブリュッケン1938、国籍フランス)の人生賛歌です。彼女はパリのブッフェ・デュ・ノール劇場で行われた1回限りのコンサートで自身の人生の16の瞬間のパフォーマンスを披露します。セラの常連作曲家マルク・ベルダゲルとジョー・ロビンソンが共作した16曲のバラードを仏語・独語で歌います。バンド伴奏はモルフォート Molforts。
音楽:ジョー・ロビンソン、マルク・ベルダゲル、他
撮影:アルトゥール・トルト
編集:クレマン・ピント、アルベルト・セラ
製作者:ピエール・マルタン・ジュバン、アルベルト・セラ、(エグゼクティブ)ピエール・マルタン・ジュバン、モンセ・トリオラ、他クリスティナ・コンラッド
サウンド:ジョルディ・リバス
衣装デザイン:イヴ・サンローラン

(「Seize moments de ma vie」から)
◎イングリッド・カーヴェン(カーフェン)は、一時結婚していたライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督が製作・脚本・撮影・美術・フィルム編集を自ら手がけた『13回の新月がある年に』(78)に出演、ヴェルナー・シュローターの『愚か者の日』(89)、アンドレ・テシネの『私の好きな季節』(93)、ベルトラン・ボネロの「Ingrid Caven, musique et voix」(12、仮題「イングリッド・カーヴェン、音楽と声」)、またダニエル・シュミットの『ラ・パロマ』(74)に主演、同監督の『天使の影』(76)はファスビンダーの戯曲『ゴミ、都市そして死』をシュミットが映画化、他に『季節のはざまで』(92)、パスカル・ホフマン&ベニー・ヤーベルクのドキュメンタリー『ダニエル・シュミット 思考する猫』(10)などに出演している。

(「Ingrid Caven, musique et voix」のポスター)
◎アルベルト・セラのキャリア&フィルモグラフィーは、以下の作品でアップしています。
*『孤独の午後』の作品紹介は、コチラ⇒2024年08月04日
*『パシフィクション』の作品&キャリア紹介は、コチラ⇒2022年10月13日

(アルベルト・セラ)
★3月開催のマラガ映画祭、5月開催のカンヌ映画祭などで、既に作品紹介をしている監督作品は以下の通りです。
「El ser querido / The Beloved」(スペイン=フランス)カンヌ映画祭コンペティション
監督:ロドリゴ・ソロゴジェン(マドリード1981)

(ハビエル・バルデム、ビクトリア・ルエンゴ)

*「El ser querido」の作品・キャリア紹介は、コチラ⇒2026年06月04日
「Amarga Navidad / Bitter Christmas」(スペイン)カンヌ映画祭コンペティション
監督:ペドロ・アルモドバル(カルサダ・デ・カラトラバ1949)

(バルバラ・レニー、ビクトリア・ルエンゴ)

(レオナルド・スバラリア)

*「Amarga Navidad」の作品・キャリア紹介は、コチラ⇒2026年06月14日
「Yo no moriré de amor / I Won’t Die for Love」マラガ映画祭コンペティション
金のビスナガ作品賞受賞
監督:マルタ・マトゥテ(マドリード1988)


(マルタ・マトゥテ監督)
*「Yo no moriré de amor」の作品・キャリア紹介は、コチラ⇒2026年04月11日
★マラガのスペイン映画部門12作のうち、金のビスナガ作品賞を受賞した「Yo no moriré de amor / I Won’t Die for Love」を含めると、観客賞を受賞したマルタ・ディアス・デ・ロペ・ディアスの「Pioneras, Solo querían jugar」や、審査員特別賞を受賞したイアン・デ・ラ・ロサの「Iván & Hadoum」など7作も選ばれていますから、サンセバスチャンに来れば、今年のスペイン映画の話題作を纒めて観ることができそうです。マラガ映画祭2026でデータだけ紹介しています。

(マルタ・ディアス・デ・ロペ・ディアスの
「Pioneras, Solo querían jugar」から)

(イアン・デ・ラ・ロサの「Iván & Hadoum」から)
★次回はクロージング作品、バネッサ・ベニテス(セビーリャ1980)の「200 vidas, Paco Rabal」(ドキュメンタリー)の紹介を予定しています。2001年のドノスティア栄誉賞を受賞した俳優パコ・ラバルのドキュメンタリーで、今回がワールドプレミアです。

(パコ・ラバル)
ナオミ・ワッツにドノスティア栄誉賞*サンセバスチャンFF26 ⑭ ― 2026年09月08日 18:07
インディーズ映画と大作での実績をもつ女優にして起業家のナオミ・ワッツ

★去る8月31日、二人目となるドノスティア栄誉賞にナオミ・ワッツの発表がありました。2001年、デヴィッド・リンチのミステリー『マルホランド・ドライブ』で国際的な名声を得た女優の道程は、必ずしも順風満帆ではありませんでした。「十年以上もオーディションに落ち続け、自分自身さえ見失っていた私を見つけてくれた・・・彼のお蔭で有名になりました」と、監督没後(2025年1月)に追悼している。既に30歳を超えており、当時のハリウッドでは「女優の40歳は90歳の老婆」と言われていた時代でした。しかし、ベティ・エルムスとダイアン・セルウィン役の忘れがたい二役で、映画界で最も魅力的な才能の一人としての地位を確立、ナショナル・ボード・オブ・レビュー、全米映画批評家協会などの最優秀女優賞を手にしました。2006年、監督の最後となる長編『インランド・エンパイア』でウサギのボイス出演をしている。

(撮影中のナオミ・ワッツとデヴィッド・リンチ)
★ナオミ・ワッツは、1968年イギリスのケント州ジョアハム生れ、女優、モデル、演技以外でもプロデューサーのキャリアを磨き、起業家として女性の健康に関する活動をしている。イギリス生れだが、父親没後、14歳で母方の祖母の故郷オーストラリアに家族で移住した。演技はシドニーの演技学校で学んでいる。1991年、ジョン・デュイガンのティーン・ロマンス「Flirting」にニコール・キッドマンと出演した。スコット・コフィ―の短編「Ellie Parker」(01、16分)を監督と初プロデュース、主演もした。本作はサンダンスFFで上映され、その後2005年に長編映画化された。2004年オーストラリア映画協会のグローバル・アチーブメント賞を受賞している。
★出演作はTVシリーズを含めると3桁に及ぶ。その確かな演技力は多くの監督に愛されている。2003年アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの『21グラム』でアカデミー賞主演女優賞初ノミネートほか、ボストン、フロリダ、ロサンゼルスなどの映画批評家協会賞を受賞、ショーン・ペンやベニチオ・デル・トロと共演、2005年、ピーター・ジャクソンの『キング・コング』では、アメリカSFファンタジー・ホラー映画アカデミーの主演女優賞やロンドン映画批評家協会の年間女優賞を受賞、同年マーク・フォースターのサイコスリラー『ステイ』でユアン・マクレガーと共演した。デヴィッド・クローネンバーグの『イースタン・プロミス』(07)では、ヴィゴ・モーテンセンやヴァンサン・カッセルと共演している。

(ショーン・ペンとナオミ・ワッツ、『21グラム』から)

(ポスター)

(『キング・コング』から)
★ミヒャエル・ハネケが『ファニーゲーム』(97)をセルフリメイクした『ファニーゲームU.S.A.』(08)で再びモーテンセンと共演した。ロドリゴ・ガルシアの『愛する人』(09)は、トロントFFでプレミア、本祭のクロージング作品で、その後国際映画祭巡りをした作品。同年トム・ティクヴァの『ザ・バンク堕ちた虚像』ではクライヴ・オーウェンと、ダグ・リーマンがブレイム事件を描いた実録ポリティカル・サスペンス『フェア・ゲーム』(10)では、3度目の共演となるショーン・ペンと夫婦役を演じた。クリント・イーストウッドの『J・エドガー』(11)でレオナルド・ディカプリオと、そして翌年、J.A.バヨナの『インポッシブル』で2度目となるオスカー賞主演女優賞にノミネートされた。2004年のスマトラ沖地震による未曾有のツナミを生き延びた家族を描いた実話の映画化、ユアン・マクレガーと夫婦役を演じた。スペインのシネマ・ライターズ・サークル賞2013主演女優賞、パームスプリングFF功績賞、サンタバーバラFFモンテシート賞ほか受賞歴多数、スペインでの世界興行売上ナンバーワンは、いまだに破られていない。


(『インポッシブル』スペイン語版ポスター)
★何作かを掛け持ちで出演しているから選ぶのに迷うが、2013年、オリヴァー・ヒルシュピーゲルの『ダイアナ』では、ウェールズ公妃ダイアナの最後の2年間を演じたが、脚本が雑で低評価だった。2014年、アレハンドロ・G・イニャリトゥがアカデミー賞作品賞以下、数々の映画賞を受賞した『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』に脇役で出演、ノア・バームバックのコメディ『ヤング・アダルト・ニューヨーク』で、ベン・スティラーやアダム・ドライバーと共演、2015年、ジャン=マルク・ヴァレの遺作となったドラマ『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』にジェイク・ジレンホークと共演、2017年、コリン・トレヴォロウの『ザ・ブック・オブ・ヘンリー』に主演、Netflixで配信された。2019年、サンダンスFFでプレミアされ高評価だった、ジュリアス・オナーの社会派サスペンス『ルース・エドガー』ではティム・ロスと夫婦役を演じた。
★2020年、オーストラリアが製作した、グレンディン・イヴィンの『ペンギンが教えてくれたこと』に主演、2016年にキャメロン・ブルーム他が上梓したノンフィクションの映画化、Netflixで配信されている。2021年、フィリップ・ノイスのスリラー『デスパレート・ラン』に主演・製作、2024年、オドレイ・ディヴァン(ディワン)の『エマニュエル』は、エマニュエル・アルサンの同名小説の映画化、製作はフランスだが言語は英語、本祭セクション・オフィシアルのオープニングを飾った。当ブログで作品紹介をしています。
*『エマニュエル』の紹介記事は、コチラ⇒2024年07月01日
★2025年、”Dare I Say It: Everything I Wish I’d Know About Menopause” がニューヨーク・タイムズのベストセラーのリスト入りしている。ドノスティア栄誉賞の授与式は、9月19日メイン会場のクルサール・ホールで行われ、その後、ベン・シリニアンの長編デビュー作「The Housewife」が上映されることになっています。ワッツが主役の主婦を演じます。
「The Housewife / La esposa perfecta」(仮題「主婦」)
データ:製作国アメリカ合衆国、2026年、歴史ドラマ、102分、撮影地カナダのモントリオール、チューリッヒFF、トロントFF、サンセバスチャンFF、各映画祭上映
監督:ベン・シリニアン、脚本アリッサ・ヒル
キャスト:ナオミ・ワッツ、タイ・シェリダン、ルーク・エヴァンス(ラッセル)、マイケル・インペリオリ(アンソニー)、レナ・オリン、デビ・マザール、他
ストーリー:ニューヨーク、1964年、若いジャーナリストがクイーンズ地区にナチス将校と思われる男が秘密裏に暮らしていることを嗅ぎつける。彼が目指す容疑者の魅力的な妻と親しくなり、ジャーナリスティックな完璧さで追い詰めていくと、捜査は意外な展開を迎える。実話に基づいています。

(ナオミ・ワッツ、フレームから)

★監督紹介:ベンジャミン・シリニアン、カナダのケベック州モントリオール生れ、監督、脚本家、俳優、クイーンズ大学で映画製作を学んでいる。短編「Lost in Motion」(12、4分、監督、共同脚本)は、カナダ国立バレエ団のプリンシパルダンサー兼振付師、作曲家ギヨーム・コーテをフィーチャーしている。トロントFFでプレミアされた。「Lost in Motion 2」(13、4分、監督、共同脚本)は、コーテの妻ヘザー・オグデン出演、第二次世界大戦中にフランス南部で孤児になったユダヤ人の少年と少女のラブストーリー「Josef et Aimee」(15、17分、監督、共同脚本)は、フランス語のファンタジードラマ。共同脚本家は3作ともレスリー・ゴットリーブ。

(ベン・シリニアン監督)
ヴェルナー・ヘルツォークにドノスティア栄誉賞*サンセバスチャンFF26 ⑬ ― 2026年09月04日 12:04
ニュー・ジャーマン・シネマの旗手ヴェルナー・ヘルツォークに栄誉賞

★サンセバスチャン映画祭の最高栄誉であるドノスティア栄誉賞に、ニュー・ジャーマン・シネマを代表する監督ヴェルナー・ヘルツォークと、女優でプロデューサー、起業家でもあるナオミ・ワッツがアナウンスされています。今回は発表順に前者ヘルツォークのアップです。昨年ベネチア映画祭の栄誉金獅子賞が授与され、本祭も遅ればせながら授与することにしたのか、ドイツの受賞は初めてかも。

(昨年、栄誉金獅子賞を受賞したヴェルナー・ヘルツォーク、ベネチアFF2025)
★ヴェルナー・ヘルツォーク、1942年ミュンヘン生れ、監督、脚本家、オペラ演出家、プロデューサー、俳優と幾つもの顔をもつ才人。ミュンヘン生れだが、子供時代はバイエルンの山間の村で育ち、11歳になるまで映画の存在さえ知らなかったという。15歳で映画製作を決意、資金作りのため高校の数年間は夜勤で製鉄所の溶接工として働いた。ミュンヘン大学で歴史とドイツ文学を専攻したが、19歳で初めて短編「Herakles」(62「ヘラクレス」)を撮り、大学は中退した。その後、奨学金を得てアメリカはペンシルベニア州のピッツバーグ大学と同市のデュケイン大学で学んでいる。
★1968年、長編デビュー作『生の証明』がベルリン映画祭で審査員特別賞(銀熊)を受賞した(公開1983)。続くドキュメンタリー『闇と沈黙の国』(71、公開1978)はマンハイム・ハイデルベルクFFのインターフィルム賞を受賞、1972年、クラウス・キンスキー(1926~91)を初めて起用した『アギーレ/神の怒り』を発表、翌年のカンヌ映画祭併催の「監督週間」に出品された(公開83)。

(『アギーレ/神の怒り』ポスター)
★怪優キンスキーとは5本タッグを組んでいる。例えば、2作めはムルナウの『吸血鬼ノスフェラトゥ』(22)をリメイクした『ノスフェラトゥ』(79、公開1985)で、ドラキュラ伯爵に扮した。同じ年に3作目となる『ヴォイツェク』(公開1983)では、19世紀初めライプツィヒで実際に起きた情婦殺人事件をベースに、キンスキーは殺人犯ヴォイツェクに扮した。4作めがオペラハウス建設の資金作りのためアマゾンの奥地でゴム農園を開拓するアイルランドからやってきた男フィッツジェラルド(フィツカラルド)に扮した。カンヌFFで監督賞を受賞した『フィツカラルド』(82、公開1983)は、他にドイツ映画賞、サンセバスチャンFFのOCIC賞を受賞、ゴールデングローブ賞の外国映画賞にノミネートされるなどした。最後がブラジルの盗賊コブラ・ヴェルデを描いた歴史アドベンチャー『コブラ・ヴェルデ』(88、公開1990)、アンチ・ヒーローを演じた。バイエルン映画賞を受賞した。5作とも時期はずれるが劇場公開されている。

(カンヌFF監督賞を受賞した『フィツカラルド』のポスター)
★60年にわたるキャリアをもつ受賞者は、ドイツだけでなく国際的にも影響力のあるシネアストの一人となり、極端な状況下にある人間がもつ矛盾した本質を追求する作品を発表し続けている。今回の受賞理由として、彼の映画は「フィクションもノンフィクションも、極限の風景やコントロールできない力に直面した征服者や夢想家たちで溢れている。〈恍惚の真理〉という概念に導かれ、彼はより深く詩的な現実の側面を明らかにするための単なる事実の観察を超えた映画を提唱している」と。蒸気船の山越えシーンが伝説となった『フィツカラルド』のラストシーンなどを想起させる。
★TVシリーズを含めるとおよそ80作に及ぶ代表作の一つが、『小人の饗宴』(77)、19世紀初めニュルンベルクの路上で発見された言葉を解しない青年の実話を描いた『カスパー・ハウザーの謎』、カンヌFF1975審査員グランプリとFIPRESCI賞を受賞した。オーストラリアの先住民アポリジニの姿を映した『緑のアリが夢見るところ』(84)、現代登山の父ラインホルト・メスナーをモデルにした『彼方へ』は、ベネチアFF1991で脚本家に与えられる金オゼッラ賞を受賞した。その後ドキュメンタリーを数本製作している。

(『カスパー・ハウザーの謎』ポスター)
★2001年、10年ぶりに第2次大戦前のベルリンを舞台に、ポーランド出身のユダヤ人鍛冶屋の息子の実話に基づいた『神に選ばれし無敵の男』(英語)、他にドキュメンタリー『グリズリーマン』(05)、『戦場からの脱出』(07)、『バッド・ルーテナント』(09)、『狂気の行方』(09)、『アラビアの女王 愛と宿命の日々』(15)など発表しているが、製作国は大半が米国です。
「Bucking Fastard」(仮題「バッキング・ファスタード」)
データ:製作国米国=アイルランド、2026年、実話に基づくドラマ、109分、撮影地アイルランド。他にジュリエット・ダーリングが実在した一卵性双生児チャップリン姉妹を、ドキュメンタリー「A Pair of One」(87、27分、製作国オーストラリア)で撮っている。
映画祭・受賞歴:ベネチアFF2026でワールドプレミア、トロントFF、サンセバスチャンFF、ニューヨークFFなどで上映予定
監督・脚本:ヴェルナー・ヘルツォーク
キャスト:ケイト・マーラ(ジーン)、ルーニー・マーラ(ジョーン)、オーランド・ブルーム(ギャレス・マルルーニー、姉妹の恋人)、ドムナル・グリーソン(ソーシャルワーカーのティモシー)
ストーリー:ジーンとジョーンのホルブルック家の姉妹は、声を合わせて話し、同じ男性を愛し、同じ夢を共有するほど仲が良い。同時に同じ間違いをします。私たちは彼女たちが見ている世界を見ることはできませんが、世界が二人にどのような反応を示すか見ています。例えば裁判や報道を通じて、誰が彼女たちを助けようとしているか、または誰が利用しようとしているかです。イギリス出身の一卵性双生児姉妹フリーダ&グレタ・チャップリンの実話に基づいている。

(主演したルーニーとケイトのマーラ姉妹、フレームから)

(実在したモデル、フリーダとグレタのチャップリン姉妹)

(SSIFFのポスター)
★「Bucking Fastard」は、9月18日、ドノスティア栄誉賞授与式当日に上映されます。ジーンとジョーンを演じたケイト・マーラ(1983生れ)とルーニー・マーラ(1985生れ)は本当の姉妹、共演は初めて、既に開幕したベネチアには、監督、マーラ姉妹、ストーカーされる役のオーランド・ブルームも出席、6分半のスタンディングオベーションに応えました。

(ベネチアFF2026、9月3日)
閉幕作品はミヒャエル・ロスカムの「Le Faux Soir」*サンセバスチャンFF26 ⑫ ― 2026年09月01日 10:47
ロスカムの新作「Le Faux Soir」は史上初のメディアハッキング

★セクション・オフィシアルのクロージング作品は、ベルギーのミヒャエル・R・ロスカムの新作「Le Faux Soir」、金貝賞に絡まないアウト・オブ・コンペティションから選ばれました。トロント映画祭でワールドプレミアされた後、サンセバスチャンFFにやってきます。1943年ナチス占領下のベルギーが舞台、レジスタンスの一団が国民の士気を高めるため途方もないアイデアを思いつきます。同国の穏健な全国紙「Le Soir」(ル・ソワール紙)をプロパガンダの道具に変身させた実話に基づいています。マリー・イスタスの著書 ”Le ‘faux’ Soir, 9 novembre 1943” (フランス語版、1993年刊)がベースになっている。

「Le Faux Soir」(仮題「ル・フォー・ソワール/偽ル・ソワール紙」)
◎クロージング作品
データ:製作国ベルギー=フランス、2026年、フランス語・ドイツ語、スリラー、歴史ドラマ、実話、134分、撮影地ブリュッセル。トロントFF(9月11日)、サンセバスチャンFF9月26日、公開ベルギー(12月2日)、フランス(2027年1月27日)
監督:ミヒャエル・R・ロスカム
脚本:ミヒャエル・R・ロスカム、ドメニコ・ラ・ポルタ、ベルナール・ファレーズ
原作者:マリー・イスタス ”Le ‘faux’ Soir, 9 novembre 1943”
音楽:クリストフ・シャッソル
撮影:ジョーダン・ヴァンシェル
製作者:ジャン・イブ・ルーバン、カサンドル・ワーノーツ、アリス・ジラード、ミヒャエル・R・ロスカム、他
キャスト:アリエ・ワルトアルテ(マルク“イヴォン”オブリオン)、メラニー・ティエリー、カリム・ルクルー、マラ・タキン、ブーリ・ラナー、ジュリアン・フリソン、フランソワ・ダミアン、ルース・ベクワート、ジャン・ブノワ・ユジュ、他多数
ストーリー:1943年、ナチス占領下のベルギーのブリュッセルが舞台、同国のレジスタンスの一団が穏健な全国紙「ル・ソワール」を彼らのプロパガンダの道具に変えた。1918年の第1次世界大戦の休戦記念日が禁止されるなか、レジスタンスの一団が突飛で独創的なアイデアを思いつく。ベルギー国民の士気を高めるため、占領者を嘲笑する記事がギッシリ詰まった、偽の「ル・ソワール」紙を発行したらどうだろうか。新聞名も、フォーマットも同じだがフェイク新聞、世界初のメディアハッキング。第2次世界大戦中のベルギー抵抗運動の最も興味深いエピソードの一つが再現されている。

(偽「ル・ソワール」紙)
★第1次世界大戦の休戦25周年を記念した5万部の「偽新聞」作り、独立戦線が主導した。発行日1943年11月9日の朝、あちこちのニューススタンドで爆笑が沸き起こった。面目丸つぶれの占領者の弾圧が始まる。翌年2月、使用された印刷機の同定がなされ、製作にかかわった人物が次々逮捕され、中心人物マルク・オブリオンも3月に倒れ、仲間たちも同じ運命を辿った。関係者の多くがナチスの強制収容所から戻ることは叶わなかったという。休戦日は11月11日だが、その日は避けたそうです。
★監督紹介:ミヒャエル・R・ロスカム(ベルギー、シント=トロイデン/サン=トロン1972)、監督、脚本家、製作者、ジャーナリスト。ブリュッセルのサン・ルーカス美術アカデミーでグラフィック・デザインを学び、アムステルダムのモーリッツ・ビンガ-映画学校で脚本作成の修士号を取得した。ジャーナリストとしてオランダ語新聞「デ・モルゲン」で働き、数本の短編を撮ったのち、2011年、クライム・サスペンス「Rundskop」(邦題『闇を生きる男』)で長編デビューを果たした。ベルリナーレのパノラマ部門上映、アカデミー賞の国際映画賞にノミネートされた。2014年、「The Drop」(『クライム・ヒート』)が、サンセバスチャンFFのセクション・オフィシアルにノミネートされ、脚本賞を受賞した。また「Le Fidele」(『ビヨンド・ザ・スピード』)は、ベネチアFF2017アウト・オブ・コンペティションで上映され、アカデミー賞ベルギー代表作品に選ばれている。さらに2021年、タロン・エガートン主演のTVミニシリーズ「Black Bird」(『ブラック・バード』)の最初の3話を監督、エグゼクティブプロデューサーも手がけた。エミー賞とゴールデングローブ賞にもノミネートされている。

(ミヒャエル・R・ロスカム監督)
★キャスト紹介:アリエ・ワルトアルテ、本作で主役を演じたワルトアルテの出演作は、マチュー・アマルリックの『彼女のいない部屋』(21)では主人公の夫役、ルーカス・ドンのデビュー作『Girlガール』(18)ではトランスジェンダーの少女の父親役、セドリック・カーンの実話に基づく法廷ドラマ『ゴールドマン裁判』(23)では、アンチヒーローの主人公ピエール・ゴールドマン役を演じ、セザール賞2024の主演男優賞を受賞した。他にパトリシア・マズィの連続殺人事件を描く『サターン・ボウリング』(25)などがある。

(セザール賞のトロフィーを手に、アリエ・ワルトアルテ、2024年)
★約70年前、同じテーマでガストン・シューケンス監督の「Un Soir de joie / An Evening of Joy」(55「喜びの夕べ」)が製作されており、2023年には、この華麗な行為の80周年を記念して修復が施されシネマテックで10日間にわたり上映された。また2021年のグラフィック・ノベル版は、歴史コミック部門のアトミウム賞とコグニート賞を受賞、命をかけて占領者を困惑させたレジスタンスに敬意を表しました。ロスカムの新作も、いずれ字幕入りで鑑賞できそうです。

(「Un Soir de joie」のポスター)
開幕作品はファティ・アキンの「Geister」*サンセバスチャンFF26 ⑪ ― 2026年08月28日 17:41
サンセバスチャンFF初登場のファティ・アキンの詩的ドラマ「Geister」

★今回のセクション・オフィシアルの発表は五月雨式でなかなか全容が見えませんでしたが、オープニング作品にトルコ系ドイツ人のファティ・アキンの「Geister / Ghost Song」のアナウンスがありました。アキン監督は本祭初登場、他6作も発表になり合計17作が金貝賞を競うことになりました。クロージング作品はアウト・オブ・コンペティションからベルギーのミヒャエル・R・ロスカムの「Le Faux Soir」に決定しました。コンペティション17作(うちデビュー作が3本)、アウト・オブ・コンペティション3作、アウト・オブ・コンペティションの特別上映5作、これでリストが完成しました。今回は開会式の後にクルサール・ホールで上映されるオープニング作品の紹介。
「Geister / Ghost Song」(仮題「ゴースト・ソング」)
◎オープニング作品
データ:製作国ドイツ、2026年、ドイツ語、ファンタジー、ロマンス、106分、撮影ハンブルク
監督:ファティ・アキン
脚本:ファティ・アキン、ルース・トマ
撮影:フランク・グリーブ
プロダクションデザイン:セス・ターナー
メイクアップ:マイケ・ハインライン
製作:Bombero International / Warner Bros.Film Productions Germany
キャスト:マリアム・ダウード(ファラシャ)、エレン・M・ギューヴァルチン(ファリス)、カルロッタ・フォン・ファルケンハイン、ガブリエル・ウィナー・アモリン、モハメド・アチュール(ガッサン)、ラマ・アルハラビ(シファ)、他
ストーリー:ファラシャとファリスは、卒業パーティーで出会ったとき20歳でした。一目ですべてが変わります。しかしファラシャはその夜に亡くなってしまいます。彼と離れることを拒み、彼女は二つの世界の境界を越える方法を発見します。40夜だけ、40だけ、彼女は夢の中でファリスに会うことができます。このようにして愛は育み続けます、最後の夜まで。二つの世界のあいだで展開する特別なラブストーリー。


(ファラシャとファリス)
★監督紹介:ファティ・アキン(ファティフ・アーキンとも表記される)は、1973年ハンブルク生れのトルコ系ドイツ人、監督、脚本家、製作者、俳優。1994年ハンブルク造形芸術高等専門学校入学、2000年卒。彼はドイツの映画監督としては国際舞台では認知度が高いほうですが本祭初登場です。最も本祭はドイツ映画がそもそも少ない。彼は2004年、『愛より強く』(Head-On)がベルリナーレの金熊賞を受賞して国際舞台に登場しました。その後、『そして、私たちは愛に帰る』(The Edge ob Heaven)でカンヌFF2007の脚本賞と観客賞、『ソウル・キッチン』(Soul Kitchen)でベネチアFF2009特別審査員賞と、30代の若さで世界三大映画祭の主要な賞を手に入れました。

(ファティ・アキン監督)
★以後の代表作は、2012年ドキュメンタリー『トラブゾン狂騒曲 小さな村の大きなゴミ騒動』、2014年『消えた声が、その名を呼ぶ』、2016年『50年後のボクたちは』、2017年『女は二度決断する』がカンヌのパルムドールを争い、主演のダイアン・クルーガーに女優賞をもたらした。ゴールデングローブ賞外国語映画賞を受賞した。2019年『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』、2022年の『ラインゴールド』は、ドイツでは100万人以上の観客が鑑賞した。2025年『白パンと独裁者』は、第2次世界大戦末期が舞台、12歳の少年の視点で描かれる戦争ヒューマンドラマ、ダイアン・クルーガーも共演した。作品の大半が字幕入りで鑑賞できる稀有な監督。
ペルラス部門全16作品*サンセバスチャンFF26 ⑩ ― 2026年08月24日 19:27
オープニング作品はカンヌ映画祭グランプリ受賞作の「Minotaur」

★ペルラス(ペルラク)部門には合計16作品が上映されます。このセクションは主要な国際映画祭で既にワールドプレミアされ、評価を受けた作品から大半が選ばれます。今年は11作がカンヌで上映され、パルムドール、グランプリ、監督賞、演技賞(男優女優)などの受賞作が含まれており、スペイン人なら少し待てばカンヌに出向かなくとも本祭で安上りに楽しめます。今年はベネチア、ベルリン、サンダンスなどが含まれています。ドノスティア(サンセバスティアン)市観客賞の対象になります。(ただし「Juste une illusion」は除外)
★オープニングには、カンヌ映画祭グランプリ受賞作品、ロシアのアンドレイ・ズビャギンツェフ(1964)の「Minotaur」(「ミノタウロス」)が選ばれました。クロージングには映画祭とは無縁のフランスでのヒット作、オリヴィエ・ナカシュ(1973)とエリック・トレダノ(1971)の「Juste une illusion / Just an Illusion」に決定、『最強のふたり』でお馴染みのデュオ監督作品、1980年代のパリを舞台にしたコメディ、ルイ・ガレルやカミーユ・コッタン、子役サイモン・ブブリルが共演、映画祭の最後は笑って幸せになろうというわけです。
★今までスペイン映画のロス・ハビスの「La bola negra」だけが発表になっておりましたが、今回16作が勢揃いしました。一応作品名、監督、製作国、ジャンル、主なキャストなど長短ありますがアップしておきます。
*ペルラス(ペルラク)部門16作*
1)「Minotaur / Minotauro」(仮題「ミノタウロス」)
◎オープニング作品
データ:製作国フランス=ドイツ=ラトビア、2026年、ドラマ、135分、カンヌFFコンペティション、次点となるグランプリ受賞作品。ロシア、2022年が舞台、成功した会社の取締役グレブは、増大する企業の圧力に包囲され、彼の慎重に秩序立てられた人生の崩壊が暴力へと加速していく。クロード・シャブロルの『不定の女』()を再構築する犯罪サスペンス。キャストは、ドミトリー・マズロフ、イリス・レベデワ、ボリス・クドリン、他。
監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ(ロシア、ノヴォシビルスク1964)、代表作『エレナ』(11、カンヌFF「ある視点」特別審査員賞受賞)、『リヴァイアサン』(14、ロシア初のゴールデングローブ賞、カンヌ脚本賞など受賞)

2)「Juste une illusion / Just an Illusion / Tiempos de illusion」(仮題「ただの幻想」)
◎クロージング作品(アウト・オブ・コンペティション)
データ:製作国フランス、2026年、コメディ、119分、フランスで大ヒットした作品。1985年、もう直ぐ13歳になるヴィンセントは、パリ郊外で中流階級の家族と暮らしている。兄には無視され、両親は夫婦喧嘩が絶えない。もはや子供でも大人でもない宙ぶらりんのヴィンセントは、アイデンティティ、友情、家族、初恋にもひとりで向き合わねばなりません。父親にルイ・ガレル、母親にカミーユ・コッタン、兄にアレクシス・ローゼンシュティール、ヴィンセントにサイモン・ブブリルの布陣。
監督・脚本:オリヴィエ・ナカシュ(フランス、1973)、エリック・トレダノ(フランス、パリ1971)、本祭とは深い繋がりがあり、2011年のクロージング作品で、東京国際映画祭2011でもサクラ・グランプリを受賞した『最強のふたり』、同じく『サンバ』(14)、『セラヴィ!』(17)はセクション・オフィシアル、『スペシャルズ!』(19)はペルラス部門のドノスティア市観客賞を受賞している。日本でも認知度の高いデュオ監督です。

(ヴィンセントの家族)
3)「Club Kid」(仮題「クラブ・キッド」)
データ:製作国アメリカ合衆国、2026年、デビュー作、コメディドラマ、126分。ニューヨークのアンダーグラウンド・パーティの主催する落ち目の男ピーターは、その存在すら知らなかった息子、10歳になるアーロの面倒をみる羽目になる。彼の狂気じみた生活は一変することになるが、やがて予想もしなかった状況に変わっていきます。ジョーダン・ファーストマン(ピーター)、カーラ・デルヴィーニュ、ディエゴ・カルバ、カービー・ハウエル・バティスト、コリーン・キャンプ、レジー・アブソロム(アーロ)出演。カンヌFF「ある視点」の作品賞、カメラドール、クイア・パームにノミネート。
監督・脚本・主演:ジョーダン・ファーストマン(アメリカ合衆国、ロングアイランド1991)は、作家、製作者、俳優、監督。俳優としてチリ出身のセバスチャン・シルバの「Rotting in the Sun」に出演している。ゲイのインフルエンサーでもある。シルバもカミングアウトしている。

4)「Coward / Cobarde」(仮題「臆病者/卑怯者」)
データ:製作国ベルギー=フランス=オランダ、2026年、歴史ドラマ、127分、長編3作め。カンヌFFコンペティション、男優賞にエマニュエル・マキアとヴァランタン・カンパーニュが受賞した。1916年、第一次世界大戦で戦場に送られた二人の兵士は、ベルギーの塹壕の中で愛と芸術の脆い聖域を見つけます。反戦ゲイ映画に止まらない、理不尽な男らしさの暴力を粉々にする危険な映画。
監督:ルーカス・ドン(ベルギー、ヘント1991)、デビュー作『Girl/ガール』がカンヌFF2018「ある視点」でカメラドールを受賞、本祭ではペルラス部門にノミネートされドノスティア市観客賞とセバスティアン賞を受賞した。2作め『CLOSE/クロース』はカンヌFF2022コンペティションのグランプリを受賞、ゴールデングローブ賞外国語映画賞を受賞、アカデミー賞にもノミネートされるなど注目の監督。

5)「Fatherland」(仮題「ファーザーランド/祖国」)
データ:製作国ポーランド=ドイツ=イタリア=フランス、2026年、ドラマ、モノクロ、82分、カンヌFFコンペティション、監督賞共同受賞。冷戦時代の1949年、ノーベル賞作家トーマス・マンと女優で作家の娘エリカは、廃墟となった祖国、アメリカが支配するフランクフルトからソ連支配下のワイマールまで黒のビュイックで横断する困難で感情的なロードトリップ。作家は分断された祖国と家族の深い亀裂に直面する。キャストは、ハンス・ツィシュラー(トーマス・マン)、サンドラ・ヒュラー(娘エリカ)、アウグスト・ディール、デヴィッド・ストリーゾウ、アンナ・メイドリー
監督:パヴェウ・パヴリコフスキ(ポーランド、ワルシャワ1957)、『イーダ』(13、アカデミー外国語映画賞、ヨーロッパ映画賞作品・監督賞、他)、『COLD WAR あの歌、2つの心』(18、カンヌFF監督賞、ヨーロッパ映画賞作品・監督賞)などを受賞している。

6)「Fjord」(仮題「フィヨルド」)
データ:製作国ルーマニア=フランス=ノルウェー=スイス=デンマーク、2026年、ドラマ、146分。カンヌFFでは2度目となるパルムドール受賞作品、他にFIPRESCI賞とエキュメニカル審査員賞の3冠。ルーマニア系家族がノルウェーの田舎町フィヨルドに移住してくる。敬虔なキリスト教徒の夫婦、ノルウェー人の妻(レナーテ・レインスヴェ)とルーマニア人の夫(セバスチャン・スタン)に5人のこどもの家族は、進歩的といわれるノルウェー共同体の価値観に戸惑う。社会の分断が描かれる。実話に基づいている。2027年劇場公開が決定している。
監督・脚本:クリスチャン・ムンジウ(ルーマニア、ラシ1968)、『4ヶ月、3週と2日』(07、カンヌFFパルムドール、ヨーロッパ映画賞監督賞)は、本祭ではペルラス部門でFIPRESCIグランプリを受賞している。『汚れなき祈り』(12、カンヌFF監督賞)、『エリザのために』(16、カンヌFF監督賞)、ほか。

7)「Hope」(仮題「ホープ希望」)
データ:製作国韓国、2026年、SFアクション・スリラー、157分、カンヌFFコンペティションに初ノミネート、山火事で通信が遮断されている町ホープ・ハーバーにエイリアンが降り立つ。増援は消火に向けられ、ホープ・ハーバーの警察署長と警官は高齢者の村を守ろうと奮闘する。人間の争いを通じて宇宙規模の悲劇へとエスカレートしていく。2027年劇場公開決定。
監督:ナ・ホンジン(韓国、ソウル1974)、カンヌFF、本祭SSIFFとも初登場、『チェイサー』(08)、『哀しき獣』(10、シッチェスFF監督賞)、『哭声/コクソン』(16、シッチェスFFフォーカス・アジア賞)が代表作。

8)「Josephine」(仮題「ジョセフィン」)
データ:製作国アメリカ合衆国、2026年、ドラマ、114分、長編2作め。サンダンスFF審査員グランプリ受賞、ベルリンFFコンペティションにノミネート。サンフランシスコのゴールデンゲート公園で偶然レイプを目撃した8歳のジョセフィンの物語。トラウマを抱えた少女は家族を不安定にし、両親は正義を求め、失った安全を取り戻す方法を模索する。メイソン・リーブス(ジョセフィン)、チャニング・テイタム(父)、ジェマ・チャン(母)、他
監督・脚本:ベス・デ・アラウジョ(サンフランシスコ1985)、監督、脚本家、製作者。カリフォルニア大学バークレー校で社会学を専攻、アメリカ映画協会のMFAを取得している。デビュー作「Soft Quiet / El club del odio」はアメリカーナFFでヤング審査員賞受賞、ゴッサム賞以下ノミネート多数。

9)「La bola negra」(仮題「黒いボール」)
データ:製作国スペイン=フランス、2026年、ドラマ、155分、カンヌFFコンペティション、監督賞共同受賞作品。ペネロペ・クルス、ロラ・ドゥエニャス、グレン・クローズ共演など話題てんこ盛り。当ブログでは作品紹介をしています。
監督・脚本:ハビエル・カルボ(マドリード1991)、ハビエル・アンブロッシ(マドリード1984)
*作品紹介は、コチラ⇒2025年07月04日/2026年05月26日


10)「La corset / Iron Boy」(仮題「コルセット/アイアン・ボーイ」)
データ:製作国フランス=ベルギー、2026年、アニメーション、90分、ソロデビュー作。農場で成長する11歳のクリストフは、体が真横に傾く病気に罹り、背骨のコルセットをつけざるをえなくなる。音楽とクララとの出会いで新たな地平を拓いていく少年の成長物語。自身の体験がもとになっている。カンヌFF「ある視点」特別審査員賞、アヌシーアニメーションFF審査員・観客・ガン財団配給賞の3冠。フランス公開10月14日、日本は2027年の劇場公開が決定している。
監督・共同脚本:ルイ・クリシー(フランス、シャルトル1977)、アニメ監督、アニメーター、脚本家。アニメーション『レミーのおいしいレストラン』、『カールじいさんの空飛ぶ家』、『ウォーリー』などのピクサー作品にアニメーターとして参加、「アステリックス・シリーズ」では共同で監督・脚本を手がけた。『アステリックスの冒険~秘密を守る戦い』がセザール賞2018アニメ部門にノミネートされている。初の長編ソロデビュー作品(共同脚本フランク・サロメ)である本作がカンヌ入りして特別審査員賞を受賞した。

11)「Soudain / All of a Sudden / De repente」『急に具合が悪くなる』
データ:製作国フランス=日本=ドイツ=ベルギー、2026年、カンヌFFコンペティション、女優賞にヴィルジニー・エフィラと岡本多緒(日本人初)が受賞。
監督:濱口竜介(川崎1978)、本祭では2008年ニューディレクターズ部門にデビュー作『PASSION』がノミネートされている。ペルラス部門に『寝ても覚めても』(18)、『ドライブ・マイ・カー』(2021年FIPRESCIグランプリ受賞)は特別上映枠で上映されたが、コロナ隔離期間中のため単独で現地入りしている。ペルラス部門に『悪は存在しない』(23,ルラ賞受賞)など。詳細は日本語版ウイキペディアに詳しい。

(ヴィルジニー・エフィラ、岡本多緒)
12)「Succedera questa notte / It Will Happen Tonight / Sucedera esta noche」(仮題「今夜必ず起こる」)
データ:製作国イタリア=フランス=スペイン、2026年、コメディ・ロマンス、103分。ベネチア2026コンペティションでワールドプレミアされた後、サンセバスチャンFFにやってきます。2011年の『3つの鍵』と同じイスラエルの作家エシュコル・ネヴォの短編集 ”Hungry Heart / Lev Raev”(2023年刊)にインスパイアされている。イスラエルの都市が舞台、同じマンションに住む悩み多き4人の人生が語られる。彼らの人生は、充足感、繋がり、贖罪を求めて絡み合う。マッテオ(ルイ・ガレル)とグレタ(ジャスミン・トレンカ)が主演。
監督:ナンニ・モレッティ(イタリア、ブルニコ1953)、監督、脚本家、俳優。1981年『監督ミケーレの黄金の夢』でベネチアFF審査員特別賞(特別金獅子賞)、1985年『ジュリオの当惑』でベルリンFF銀熊賞(審査員グランプリ)、1993年『親愛なる日記』でカンヌFF監督賞、2001年『息子の部屋』がパルムドールを受賞、俳優としても主演、自伝的な『母よ、』もカンヌFF2015にノミネートされている。

(ジャスミン・トレンカ、ルイ・ガレル)
13)「Tangles」(仮題「タングルズ」)
データ:製作国カナダ=アメリカ合衆国、2026年、長編アニメーション、デビュー作、102分。1990年代、アルツハイマー病が活気ある母親の人格を奪いはじめると、アーティストで活動家のサラは、クィアに優しいサンフランシスコでの刺激的な生活を離れ、生れ故郷の保守的な小さな町に戻ってきます。風変わりな家族が必要な娘となるためには、厳しい現実を受け入れねばなりません。ジャーナリスト、作家、漫画家のサラ・リービットのグラフィックノベルが原作。サラにアビー・ジェイコブソン、母親にジュリア・ルイ・ドレファス。カンヌFF特別上映部門で上映され、カメラドールとクィア賞にノミネートされた。トロントFFで北米初公開される。
監督・製作・脚本:リア・ネルソン(カナダ、バンクーバー1984)、監督、製作者、脚本家。バンクーバーを拠点にCM、ドキュメンタリーなどを手がける。代表作は、2013年ミュージックビデオ「Kylee Epp:Be Your Girl」、2015年、短編「Swiss Chalet:A Helping Hand」、2021年、キャシー・デ・コリングの「Precious Leader Woman」の製作を手がけている。

14)「The Invite / La invitacion」(仮題「招待状」)
データ:製作国アメリカ合衆国、2026年、コメディドラマ、107分。ジョー(セス・ローゲン)とアンジェラ(オリヴィア・ワイルド)の結婚生活は、危機に陥っている。謎めいた隣人ピニャ(ペネロペ・クルス)とホーク(エドワード・ノートン)を夕食に招くと、告白やら隠された欲望などが頭をもたげ、危うい展開を見せ始める。セスク・ゲイの「Sentimental」(20)アメリカ版。ロカルノFF観客賞、シドニーFFシドニー映画賞、ゴールデン・トレラー賞などにノミネートされている。
監督・主演:オリヴィア・ワイルド(ニューヨーク1984)、監督、女優。2019年、『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』で監督デビューする。他に『ドント・ウォーリー・ダーリン』(22、出演・監督・製作)がある。

15)「The Man I Love」(仮題「愛する男」)
データ:製作国アメリカ合衆国=フランス、2026年、ドラマ、95分。カンヌFFコンペティション&クィア賞ノミネート、ミュンヘンFF国際映画賞ノミネート。1980年代後半のニューヨーク、エイズを患うアンダーグラウンドのパフォーマンス・アーティスト(ラミ・マレック)の生と死、愛と欲望が描かれる。ラミ・マレク、トム・スターリッジ、レベッカ・ホール、ルーサー・フォード出演。
監督・脚本:アイラ・サックス(テネシー州、メンフィス1965)、監督、脚本家、製作者、ユダヤ系アメリカ人、ゲイを公表して、主にニューヨークで活躍。1996年『ミシシッピの夜』で長編デビュー、東京国際レスビアン&ゲイFF上映された。2007年ブラックコメディ『あぁ、結婚生活』、2014年、『人生は小説よりも奇なり』は、同性婚の合法化を受けてやっと結婚できたゲイのカップルが辿る居場所探しの物語、インディペンデント・スピリット賞、ゴッサム・インディペンデント映画賞など数々の映画祭にノミネートされ、SSIFFペルラス部門にノミネートされた。米仏ポルトガル合作の『ポルトガル、夏の終わり』は、カンヌFF2019でプレミアされ、主役のフランキーにイザベル・ユペール、その友人にマリサ・トメイが扮した豪華な布陣でした。

(ラミ・マレク)
16)「Wild Horse Nine」(仮題「ワイルド・ホース・ナイン」)
データ:製作国アメリカ合衆国=イギリス=チリ、2026年、ドラマ、113分。1973年チリ、軍事独裁クーデタが起きる直前、CIA のクリス(ジョン・マルコヴィッチ)とリー(サム・ロックウェル)は、サンティアゴからイースター島に派遣される。上司MJ(スティーブ・ブシェミ)と共に駐屯します。他にマリアナ・ディ・ジロラモ、アイリン・サラス、他。
監督・脚本:マーティン・マクドナー(イギリス、ロンドン キャンバーウェル1970)、劇作家、監督、脚本家。初長編映画『ヒットマンズ・レクイエム』(アカデミー脚本賞ノミネート)、『スリー・ビルボード』(17)でベネチアFF脚本賞受賞、ゴールデングローブ賞作品賞を含む4冠、アカデミー賞ではサム・ロックウェル助演男優賞、フランシス・マクドーマンド主演女優賞受賞、『イニシェリン島の精霊』(22)ベネチアFF脚本賞など常に高評価のシネアスト。本作も既に来年の劇場公開が決定している。

(サム・ロックウェル、ジョン・マルコヴィッチ)
★以上16作品です。以下に監督のフォトをアップしておきます。

(左から、アンドレイ・ズビャギンツェフ、オリヴィエ・ナカシュ、エリック・トレダノ、
ベス・デ・アラウジョ)

(左から、ルイ・クリシー、ルーカス・ドン、ジョーダン・ファーストマン、
濱口竜介、ナ・ホンジン)

(左から、マルティン・マクドナー、ナンニ・モレッティ、
クリスチャン・ムンジウ、リア・ネルソン)

(左から、パヴェウ・パヴリコフスキ、アイラ・サックス、オリヴィア・ワイルド、
ハビエル・アンブロッシ、ハビエル・カルボ)
★高評価の作品群ということもあって、なかなか多彩な顔ぶれです。日本での劇場公開が決定している作品もあるので、来年は楽しめそうです。
オリソンテス・ラティノス部門ノミネート作品*サンセバスチャンFF26 ⑨ ― 2026年08月17日 14:37
ソトマヨールの「La Perra」はカンヌ「監督週間」のパルム・ドッグ受賞作品
★オリソンテス・ラティノス部門には、前回の3作以外にチリ、メキシコ、ブラジル、米国の4作がノミネートされています。ドミンガ・ソトマヨール(チリ)の「La Perra」は、昨年のオープニング作品「Limpia」に続いての登場、ピラール・キンタナの同名小説の映画化です。アレッサンドラ・サンギネッティ(米国)のドキュメンタリー「La ilusión de un verano sin fin / The Illusion of an Everlasting Summer」、ブルーノ・サンタマリア・ラソ(メキシコ)の「Seis meses en el edificio rosa con azul / Six Months In a Pink & Blue Building」、リカルド・アルヴェス・ジュニア(ブラジル)の「A professora de frances / The French Teacher」の4作、合計12作になりました。
*オリソンテス・ラティノス部門ノミネート作品 ③*
9)「La Perra」(仮題「仔犬のユリ」)
データ:製作国ブラジル=チリ、2026年、ドラマ、スペイン語、113分、撮影地チリ。カンヌ映画祭併催の「監督週間」でパルムドッグ賞受賞作品、カルロヴィ・ヴァリFF(7月)、メルボルンFF(8月)、ブラジルのグラマドFF(8月)、ピラール・キンタナの同名小説に着想をえている。
監督・脚本:ドミンガ・ソトマヨール(チリのサンティアゴ、1985)、監督、脚本家、キャリア&フィルモグラフィーは、前作「Limpia」(『そこから泳いで、私の方へ』)で紹介しています。
キャスト:マヌエラ・オヤルン(シルビア)、ダビ・ガエテ(マリオ)、セルトン・メロ、パウラ・ルクシンガー・エスコバル、パウラ・ディナマルカ、ラファエラ・グリムバーグ
*マヌエラ・オヤルスンはチリでは有名な舞台女優、監督の説得で映画初主演、セルトン・メロはブラジルのベテラン俳優、マヌエラと仔犬は1ヵ月前からの繋がりだったと監督。
ストーリー:チリ南部、遠く離れた風の強い島で、シルビアは海藻穫りで生計を立て、パートナーと穏やかに人生を送っています。捨てられた仔犬のユリを引き取ると、彼女の日々は喜びと愛情と優しさ、それは長いあいだ抑えこんできた母親になるという願いを呼び起こすことになります。しかしユリの突然の失踪は、シルビアが苦しみ続けてきた幼少期のトラウマを再び搔きたて、まだ完全に立ち直れない過去と向き合うことを強いることになります。ピラール・キンタナの同名小説に着想を得て自由に脚色して映画化した。
*「Limpia」(『そこから泳いで、私の方へ』)の紹介記事は、コチラ⇒2025年10月24日


(シルビアとマリオ、仔犬のユリ)

(ドミンガ・ソトマヨール監督)

10)「La ilusión de un verano sin fin / The Illusion of an Everlasting Summer」(仮題「永遠の夏の幻想」)
データ:製作国アルゼンチン=アメリカ合衆国、デビュー作、ドキュメンタリー、93分
監督・脚本:アレッサンドラ・サンギネッティ(ニューヨーク1968)、写真家、監督。ロカルノ映画祭でワールドプレミアされる。25年にわたる撮影期間を経て、アルゼンチンのパンパスで暮らす従姉妹ギレルミナとベリンダを描いています。2007年からマグナム・フォトのメンバーであるサンギネッティの作品は、ニューヨークのMoMA、サンフランシスコ近代美術館、ヒューストン美術館、ブエノスアイレス美術館のコレクションの一部になっています。グッゲンハイム・フェローシップ他を受賞している。ニューヨーク生れだが、1970年から両親とブエノスアイレスに移り、2002年まで32年間暮らした。現在はカリフォルニア在住、国籍は米国。
解説:ドキュメンタリーは1999年から始り、監督が9歳の隣人ギレルミナとベリンダという少女に幻想を共有するよう誘い、数十年にわたるコラボレーションが続きます。二人の子供時代が終わると、彼女たちのゲームは重みを帯びていくことになります。時間の経過が最も強烈な緊張感として、この映画は二人の友情の記録となり、仕事や結婚、母親業、そして将来の進むべき道は分かれていきます。本作は女性の視点からアルゼンチンのパンパス地方の男性によって神話化された地域についてが語られます。

(左ギレルミナ、ベリンダ、「ネックレス」1999)

(ベリンダが結婚する、2007)

(アレッサンドラ・サンギネッティ監督)

11)「Seis meses en el edificio rosa con azul / Six Months In a Pink & Blue Building」(仮題「ピンクとブルーのビルでの6ヵ月」)
Foro de Coproducción Europa-América Latina 2022
データ:製作国メキシコ=ブラジル=デンマーク、2026年、スペイン語、初のフィクション、104分、カンヌ映画祭併催「批評家週間」でワールドプレミア、メルボルン映画祭(8月)上映
監督・脚本・編集:ブルーノ・サンタマリア・ラソ(メキシコシティ1986)、撮影監督、監督、脚本家、編集者、ドキュメンタリー監督として記憶、秘密、子供時代を探求している。代表作「Cosas que no hacemos」(20)や「Margarita」(16)などが国際映画祭で多数受賞している。当ブログでは、共同撮影監督として参加した、アイ・ウェイウェイの「Vivos」(『ビボス~奪われた未来~』)をアップしています。
キャスト:ジェイド・レイエス(ブルーノ)、ソフィア・エスピノサ、ラサロ・ガビノ・ロドリゲス、エドゥアルド・ゴメス、バレリア・バネガス、アヌアル・ベラ、テレサ・サンチェス、他
ストーリー:メキシコシティ、1990年代初頭。ブルーノは11歳の誕生日に、親友のウラジミルに恋をします。その夜、父親は家族の生活を一変させるHIV陽性の診断を受けます。サルサの歌のように、家族は痛みを和らげるために歌ったり踊ったりします。30年後、ブルーノは子供のころに理解できなかった記憶を撮影し再び思い起こします。
*『ビボス~奪われた未来~』の紹介記事は、コチラ⇒2020年12月21日


(ブルーノ役のジェイド・レイエス)

(ブルーノ・サンタマリア・ラソ監督)

12)「A professora de frances / The French Teacher」(仮題「フランス語教師」)
Proyecta 2018
データ:製作国ブラジル=フランス=ポルトガル、2026年、心理スリラー、ホラー、96分、長編4作め
監督・脚本:リカルド・アルヴェス・ジュニア(ブラジルのベロ・オリゾンテ1982)は監督、脚本家、製作者、舞台演出家。実験映画、フィクションとノンフィクション映画でキャリアを積み、本作が長編4作め。
キャスト:グレイセ・パソー(グラサ)、ジェニー・ベス(クララ)、エリサ・ルシンダ、バルバラ・コーレン、ロムロ・ブラガ、エドゥアルド・モレイラ、イタロ・ラウレアノ、ロジャー・ロジェリオ(グラサの父)、ペドロ・ゴイフマン(トマス)
*グラサ役のグレイセ・パソーは女優、監督、劇作家、『千の父より生れ紙息子』(25)に出演、クララを演じたジェニー・ベスは、カンヌ映画祭2023のパルムドールを受賞したジュスティーヌ・トリエの『落下の解剖学』にマルジュ役で出演、父親役のロジャー・ロジェリオやバルバラ・コーレンは、クレベール・メンドンサ・フィリオの『バクラウ』(19)に出演している。
ストーリー:グラサはベロ・オリゾンテに住んでフランス語の個人教師をしている。フランス人のガールフレンドと一緒に暮らしている。しかし父親の健康にかかわる緊急事態のため、子供時代に過ごした郊外の実家に戻ることにしました。地元の宗教団体を率いる隣家の家族が支援してくれますが、彼女を「自分の居場所」に連れ戻そうとする。グラサはアイデンティティと分別を危うくする不寛容と狂信の世界に囚われ、次第に不穏な道を進んでいくことになる。ブラジルの伝統的な家族の内部に潜む暴力が描かれる。

(グラサ役のグレイセ・パソー)

(リカルド・アルヴェス・ジュニア監督)

オリソンテス・ラティノス部門12作が出揃う*サンセバスチャンFF26 ⑧ ― 2026年08月12日 16:26
コスタリカの「Siempre soy tu animal materno」がオープニング作品

★8月10日、オリソンテス・ラティノス部門のオープニング作品を含む7作が発表になり、既にアナウンスされていた5作(ディエゴ・ルナ、フェルナンダ・トバルm、マヌエラ・マルテッリ、マルセロ・マルティネッシ、フェルナンド・エインビッケ、各監督)の合計12作が出揃い、オリソンテス賞を競うことになりました。今回はオープニング作品バレンティナ・モーレル(コスタリカ)の「Siempre soy tu animal materno」、フアン・ミゲル・ヘラシオ&エステバン・オヨス・ガルシア共同監督(コロンビア)の「Cinco años. Cuatro meses」、ロレンソ・フェロ&ルーカス・A・ビグナレ共同監督(アルゼンチン)の「El tren fluvial」、以上3作をアップします。
*既にアップ済みの5作品紹介記事は、コチラ⇒2026年07月23日
*オリソンテス・ラティノス部門ノミネート作品②*
6)「Siempre soy tu animal materno / Forever Your Maternal Animal」
◎オープニング作品
データ:製作国ベルギー=フランス=メキシコ=コスタリカ、2026年、ドラマ、スペイン語、108分、撮影コスタリカのサンホセ、長編2作め、カンヌ映画祭「ある視点」でワールドプレミアされ、女優賞受賞作品。ほかメルボルン映画祭出品作品(8月15日)
監督・脚本:バレンティナ・モーレル、1988年コスタリカ、サンホセ生れ、監督、脚本家、映画はフランスとベルギーで学んでおり、フランスとの二重国籍を持っている。長編デビュー作「Tengo sueños eléctricos」がロカルノ映画祭2022で監督賞、ダニエラ・マリン・ナバロが女優賞、レイナルド・アミアンが男優賞の3冠に輝き、本祭SSIFFでは「オリソンテス賞」を受賞している。
キャスト:ダニエラ・マリン・ナバロ(エルサ)、マリナ・デ・タビラ(母イサベル)、マリアンヘル・ビジェガス(妹アマリア)、レイナルド・アミアン(父ナウエル)
ストーリー:ヨーロッパでの長年の留学を終え、28歳になったエルサは家族と再会するためサンホセに戻ってくる。妹アマリアがひとりきりで自宅に引き籠っている。何かに囚われている妹はエルサとも距離をおき、まるで自身の世界に潜りこんでいくかのようだった。一方、両親は自分の生活に没頭しており、父親は一連の恋のアバンチュールに溺れ、母親は母親で若い頃の官能詩を再出版することに夢中になっており、二人とも事の緊急性を全く理解していない。2作めもばらばらに崩壊しかかっている家族の肖像が語られる。
*監督キャリア &「Tengo sueños eléctricos」の紹介記事は、コチラ⇒2022年08月25日

(左から、アマリアとエルサ)

(バレンティナ・モーレル監督、カンヌFF2026フォトコールにて)

7)「Cinco años. cuatro meses / Five Years, Four Months」(仮題「4年5ヵ月」)
WIP Latam 2025
データ:製作国コロンビア=米国、2026年、ドラマ、スペイン語、84分、製作者カルロス・ピニェイロ、エステバン・オヨス・ガルシア他、撮影パウラ・モレノ・ベルガラ、編集フアン・ミゲル・ヘラシオ、音響ダニエル・ガルセス・ナハル、音楽ダニエル・ガルセス・ナハル、スコット・Barley、美術Andyerson Posso Caro
監督・脚本:フアン・ミゲル・ヘラシオ(ボゴタ1995)&エステバン・オヨス・ガルシア(ボゴタ1995)共同監督、デュオはWIP Latam 2023で、初の長編映画「Selva / Jungle」を発表、2作目で戻ってきました。既にカルロヴィ・ヴァリ映画祭でワールドプレミアされている。本作は「A la hora de poner la mesa ya no eramos cinco」のタイトルでWIP Latam 2025のEGEDA(オーディオビジュアル著作権管理協会)産業プラチナ賞を受賞している。
キャスト:ジェニー・ナバ(マルタ・バケロ)、カルミーニャ・マルティネス(サンドラ)、カロリナ・ビバス(マルタの母親)、ロサルバ・ガルシア(アビガイル)、マリア・ドリス・テハダ、ジャクリン・カステージョ(リリアナ)、ロシオ・カステージョ(グロリア)、他
ストーリー:マルタは、コロンビアの武力紛争で息子の足跡を見失ったひとりの母親です。彼女が参加した最近の遺骨掘り起こしでは一致する骨は見つからなかったという知らせを受けます。公式機関の手段を使い果たしたマルタは、女性たちの支援グループを頼って、そこでサンドラに出会います。サンドラが言うには、「平原の遠方の村では、死者が願いごとを聞いてくれる」という噂を語ります。二人は確認を求めて旅に出ます。行方不明になった息子を見つけるために、うさんくさい噂に翻弄される母親が語られる。

(マルタ役のジェニー・ナバ)

(サンドラとマルタ)

(エステバン・オヨス・ガルシア、フアン・ミゲル・ヘラシオ、カルロヴィ・ヴァリFF)

(カルロヴィ・ヴァリ映画祭のポスター)
8)「El tren fluvial / The River Train」(仮題「川の列車」)
データ:製作国アルゼンチン、2026年、成長ドラマ、スペイン語、76分、長編デビュー作、撮影トマス・グリングバーグ、編集アンドレス・メディナ、ルーカス・A・ヴィニャレ、サウンドデザイン、マルティン・ガルシア・ブラヤ、美術・衣装オリビア・シャクテル、製作者トマス・グランディオ、バレンタイン・トレへ、カシアナ・ベラ、他エグゼクティブプロデューサー
監督・脚本:ロレンソ・フェロ(ブエノスアイレス1998)は、俳優として知られ、ルイス・オルテガの『永遠に僕のもの』(18)に主演して大きな注目を集めた。本作が監督デビュー作。一方、ルーカス・A・ヴィニャレ(ブエノスアイレス1997~リオデジャネイロ2026)は、6月14日、アメリカのミュージシャン〈オリバー・ツリー〉をサポートするイベントに参加、搭乗したヘリコプター衝突事故で死去、享年28歳の若さでした。フェロと共同監督した短編「La Pación」(24)はBAFICIで受賞する。ベルリン映画祭2026で上映されている。
キャスト:ミロ・バリア(ミロ)、マリアノ・バリア(父マリアノ)、ルクレシア・パソス(母ルクレシア)、マイレン・バリア(姉マイレン)、リタ・パウルス(教師)、ファビアン・カサス、他多数
ストーリー:9歳になるミロは、アルゼンチン北部の辺鄙な村に住んでいる。マランボ・ダンサーになる教育を受けていますが、彼の本当の夢は別のところにあります。彼は列車に乗り、映画でしか見たことのないブエノスアイレスを探検することに憧れています。小さな世界から抜け出すために、思いきって新たな旅に乗り出さねばなりません。

(ミロ役のミロ・バリア)

(ロレンソ・フェロ、ルーカス・A・ヴィニャレ)

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