ロドリゴ・ソロゴジェンの「El ser querido」*カンヌ映画祭2026 ― 2026年06月04日 16:13

          スリラーというジャンルのコルセットを脱ぎすてたソロゴジェン

        


             (英語版プロモーション・ポスター)

 

★今年のカンヌ映画祭にはスペインから3作がコンペティションにノミネートされました。ペドロ・アルモドバルの「Amarga Nadidad」、ロドリゴ・ソロゴジェンの「El ser querido / The Beloved」、前回アップしたロス・ハビスの「La bola negra」の3作品です。個人的に期待していたのがソロゴジェン、『ザ・ビースト』のような彼の過去の映画がもっていたスリラーの要素を除いたことが理由でした。プレミアム上映後の感触は悪くなかったようですが、下馬評はイマイチでした。フランス公開はカンヌでワールドプレミアされた当日の5月16日(配給ル・パクト)、スペインは8月26日(同ア・コントラコリエンテ・フィルム)、公開後モビスター・プラスで配信されます。近いうち鑑賞できることを期待してアウトラインをアップします。

 

★プレミアム上映後のスタンディングオベーションは、ソロゴジェンのスピーチを入れて7~8分くらい、夕方からのコンペ上映時には観客にもフォーマルな服装が求められるから蝶ネクタイ姿がいっぱい。映画祭関係者、カメラマンも黒服だからライトが当たった人しか判別できない。ソロゴジェン監督以下、脚本家イサベラ・ペーニャ、製作者ギジェルモ・ファレ、エドゥアルド・ビリャヌエバ、キャスト陣はハビエル・バルデム、ビクトリア・ルエンゴ、マリナ・フォイス、ラウル・アルバレス、ラウル・プリエトなど、本作には関係してないと思うが、ホセ・アントニオ・バヨナの姿もあった。

 

      

  

     (ワールドプレミア後のレッドカーペット、カンヌ映画祭2026、5月16日)

 

★新作「El ser querido」は、単独デビュー作「Stockholm」(ゴヤ賞2014新人監督賞ノミネート)から数えると6作めになる。長いあいだ離れて会うこともなかった父親エステバン(ハビエル・バルデム)と娘エミリア(ビクトリア・ルエンゴ)の物語、長年疎遠だった著名な映画監督の父、売れない女優の娘が再会して一緒に仕事をするとどうなるか。バルデムの起用は初、ルエンゴはTVシリーズ「Antidisturbios / Riot Police」の主役に抜擢している。スペインの過去の植民地であったサハラ砂漠を舞台に、現実とフィクションを交錯させている。

 

 「El ser querido / The Beloved」(愛しきもの)

製作:Caballo Films / Movistar Plus+/ El Ser Querido AIE / Le Pacte / 

   Comunidad de Madrid / ICEC / ICAA / Crea SGR / Triodos Bank

監督:ロドリゴ・ソロゴジェン

脚本:イサベル・ペーニャ、ロドリゴ・ソロゴジェン

撮影:アレハンドロ・デ・パブロ

音楽:オリヴィエ・Arson

編集:アルベルト・デル・カンポ

キャスティング:パウラ・カマラ、アランツァ・ベレス

プロダクションデザイン&美術:ホセ・ティラド

衣装デザイン:サイオア・ララ

メイクアップ&ヘアー:フランシス・ボディ、イレネ・ペドロサ、ヘスス・ヒルGil、他

製作者:フラン・アラウホ、ギジェルモ・ファレ、ホルヘ・ペッツィPezzi、(共同)アリス・ラバディ、ジャン・ラバディ、(エグゼクティブ)ハビエル・バルデム、クララ・ラゴ、ナチョ・ラビリャ、エドゥアルド・ビリャヌエバ

 

データ:製作国スペイン=フランス、2026年、スペイン語、ドラマ、135分、撮影地:カナリア諸島フエルテベントゥラ島のパハラ、ラ・オリバ、マドリードなど、2025年2月クランクイン、公開フランス5月16日、スペイン8月26日、スウェーデン12月18日(予定)

映画祭・受賞歴:カンヌ映画祭2026コンペティション部門、ジャカルタ・ワールド・シネマ(10月予定)

 

ストーリー:著名な映画監督エステバン・マルティネスは、映画だけでなく、過剰に彩られた過去でも伝説的な存在です。新作では、長年疎遠だった女優の娘エミリアに役を提供しようとします。一緒に撮影現場で暮らすことで、何年も分かち合うことのなかった親密さが芽生えるが、同時に癒えなかった古い傷口が再び開くことになる。互いに目を見て話すことのなかった二人の人間についての映画。 

 

キャスト:ハビエル・バルデム(エステバン・マルティネス)、ビクトリア・ルエンゴ(エミリア・マルティネス)、マリナ・フォイス(マリナ)、ラウル・アレバロ(セサル)、ムラド・ウアニ Mourad Quani(ビラル)、メリナ・マシューズ(バルバラ)、ラウラ・ビルン(アリス)、ヌリア・プリムス(チャロ)、パブロ・ゴメス=パンド(パブロ)、マレナ・ビリャ(マレナ)、ペパ・グラシア(ぺパ)、他多数

  

★壊れた家族の再会、権力者と犠牲者のあいだで起こるエモーショナルな暴力、互いに調和しない記憶、ストーリーからはよくあるテーマのように思われます。多くの批評家がヨアキム・トリアーの『センチメンタル・バリュー』との類似性を指摘しています。あちらの父娘も監督と女優だった。比較は避けられないと思いますが、だからと言ってソロゴジェン映画の興味がゼロかというわけではない。短い予告編からは、沈黙が支配しているように見える。登場人物のクローズアップされた視線、沈黙、表情から、壊れた父娘の関係を探ることになりそうです。

   

         

             

       (ハビエル・バルデムとビクトリア・ルエンゴ、フレームから)

 

★監督紹介:ロドリゴ・ソロゴジェン(マドリード1981)、監督、脚本家、製作者。単独監督デビュー作以来、何回かキャリア紹介をしておりますので、今回は主なフィルモグラフィー&受賞歴だけ以下にアップしておきます(TVシリーズは割愛)。

 

    

                         (監督、ルエンゴ、バルデム、カンヌFF5月16日)

 

2013「Stockholm」マラガFF、監督賞、イサベル・ペーニャと脚本賞受賞

2016「Que dios nos perdone」『ゴッド・セイブ・アス マドリード連続老女強姦殺人事件』

   サンセバスチャン映画祭セクション・オフィシアル初ノミネート

2017「Madre」短編、ゴヤ賞2018短編映画賞受賞、米アカデミー賞2019ノミネート

2018「El Reino / The Realm」サンセバスチャン映画祭セクション・オフィシアル、

   ゴヤ賞2019監督賞、イサベル・ペーニャと脚本賞、フェロス賞監督賞・脚本賞受賞

2019「Madre」『おもかげ』公開

2022「As Bestas / The Beasts」『ザ・ビースト』TIFF、邦題『理想郷』で公開、SSIFF観客賞

   ゴヤ賞2023作品・監督・イサベル・ペーニャと脚本賞受賞、セザール賞2023外国映画賞

2026「El ser querido」カンヌ映画祭コンペティション初ノミネート

 

*「Stockholm」とキャリア紹介記事は、コチラ⇒2014年06月17日

*「Que dios nos perdone」の紹介記事は、コチラ⇒2016年08月11日

* キャリア&フィルモグラフィーの紹介記事は、コチラ⇒2018年03月26日

*「El reino」の作品紹介は、コチラ⇒2018年07月25日

 

 

★キャスト紹介:

◎ハビエル・バルデム(カナリア諸島ラス・パルマス1969)、俳優、製作者。伯父にフアン・アントニオ・バルデム監督、母に女優のピラール・バルデム、俳優で作家の兄カルロス、女優の姉モニカ、妻ペネロペ・クルスと、まさに映画一家です。2023年、第71回ドノスティア栄誉賞受賞が発表された折に、かなり詳しいキャリア&フィルモグラフィーをアップしています。1年遅れの授与式に、ビクトリア・ルエンゴと「El ser querido」に主演することをアナウンスしておりました。

*キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2023年06月09日

*ドノスティア栄誉賞授与式の記事は、コチラ⇒2024年09月23日

 

  

                             (新作フレームから)

 

   

                        (カンヌFFフォトコール、5月17日)

 

◎ビクトリア・ルエンゴ・サエス、1990年、パルマ・デ・マジョルカ生れのバルセロナ育ち、映画、テレビ、舞台女優。ヴィッキー・ルエンゴでデビューしたが、2020年ごろからビクトリアを使用している。バルセロナのメモリー・スクールで演技、ダンス、歌を学んでいる。2010年、TVシリーズでスタートをきる。主な映画出演は以下の通りです。ミケル・グレアのデビュー作「Suro」に主演、高評価で翌年のゴヤ賞主演女優賞にノミネート、ガウディ賞では受賞を果たした。2022年にメディナ映画祭「21世紀の女優賞」を受賞、舞台女優としては、モノローグ劇「Prima Facie」を演じ好評を博している。

 

     

                (新作フレームから)


    

    (カンヌFFフォトコール、5月17日)

 

★TVシリーズでは、警察を舞台にしたスリラー「Antidisturbios / Riot Police」(20、6話)に機動隊員ライア・ウルキホ役で主演、オンダス賞2021主演女優賞,フォトグラマス・デ・プラタ主演女優賞を受賞、フォルケ賞やフェロス賞、イリス賞などにノミネートされた。ソロゴジェン監督にとっても大きな転機になったTVシリーズでした。他にコルド・セラが手がけるサスペンス「Reina Roja」(『レッド・クイーン』24、シーズン1,7話)で、IQ242のアントニア・スコットを演じている。再びホヴィク・ケウチケリアンとタッグを組んだ。プライムビデオで配信されている。

 

2014「Born」『ボルンの街に、灯る火』監督クラウディオ・スリアン

   ニューヨーク市映画祭2015主演女優賞受賞

2018「Las leyes de la termodinamica」『熱力学の法則』コメディ、監督マテオ・ヒル

2020「Hogar」スリラー、共同監督アレックス・パストール&ダビ・パストール

2021「Chavalas」コメディ、監督カロル・ロドリゲス・コラス

   ガウディ賞2022主演女優賞ノミネート

2021「El sustituto / The Replacement」クライムスリラー、監督オスカル・アイバル

2022「Suro / Cork」監督ミケル・グレア、カタルーニャ語、フランス語ほか

   ゴヤ賞2023主演女優賞ノミネート、ガウディ賞主演女優賞を受賞

2024「La habitacion」『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』監督ペドロ・アルモドバル

2024「Verano en diciembre」監督カロリナ・アフリカ

2026「Amarga Navidad」監督ペドロ・アルモドバル

2026「El ser querido」監督ロドリゴ・ソロゴジェン

  

*『熱力学の法則』の作品紹介は、コチラ⇒2018年04月02日

*「Suro / Cork」の紹介記事は、コチラ⇒2022年08月01日

*「Amarga Navidad」の紹介記事は、コチラ⇒2025年06月17日

 

◎批評家から演技が絶賛されているマリナ・フォイスとラウル・アレバロの立ち位置がまだ分かりません。もう4年前になるが『ザ・ビースト / 理想郷』のマリナ・フォイスの演技は忘れられません。東京国際映画祭2022では東京グランプリなど受賞しましたが、素晴らしい演技にも拘わらず女優賞は逃しました。ラウル・アレバロ、メリナ・マシューズも『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』に出演しており、スタッフ同様キャストも気心の知れた布陣のようです。秋の映画祭を期待したい。

 

 
  

 

           (プレス会見、カンヌFFフォトコール、5月17日)