デヴィッド・クローネンバーグに栄誉賞*サンセバスチャン映画祭2022 ⑳ ― 2022年09月26日 10:04
カナダの監督デヴィッド・クローネンバーグにドノスティア栄誉賞
★9月21日、ビクトリア・エウヘニア劇場において、カナダの監督、脚本家、製作者、俳優のデヴィッド・クローネンバーグ(トロント1943)のドノスティア栄誉賞の授賞式がありました。ガラの進行役は本祭の総ディレクターホセ・ルイス・レボルディノス、彼はクローネンバーグ映画を「私たちの人間的な資質の隠された側面を描いている。それは普段は見せないものだが基本的な部分であり、私たちの現実の姿である」と端的に紹介した。
★プレゼンターは『アレックス』や『CLIMAX クライマックス』の問題作を撮っているフランスの監督ギャスパー・ノエ、キャリア&フィルモグラフィーを含めた長い祝辞のあと、やっと登壇した受賞者は、鳴りやまぬ拍手にしばしスピーチができなかった。ノエ監督はブエノスアイレス生れだがパリに在住して、両国の国籍を持っている。「クローネンバーグは映画に生物学者、外科医や精神科医が探索すると思われる新しいテーマやトリックを持ち込んで、異常で不穏だが円熟したプリズムを通して、私たち自身の存在を再考させてくれた」と称揚した。ガラの後、カンヌ映画祭2022に出品された最新作「Crimes of the Future」が上映された。
(ノエ監督からトロフィーを受け取る受賞者)
★受賞スピーチ「人生のある時点で生涯功労賞を受賞することは、もう映画を撮るのは止めるというメッセージであり、そう自分に言い聞かせる一つの方法だと思っていました。『もう充分だ、止めなさい』と。しかし、時間が経つにつれて、特にこのような賞を、長い歴史があり美しい街で開催される映画祭で頂けて、そうじゃないと思い直しています。この賞は、映画を作り続けるための励ましとして受け取ります」とスピーチした。また「アートは規範を揺るがすものであり、困難で暴力的、かつ破壊的で不安定な人間性の側面に取り組むという意味で、しばしばアートは犯罪であると考えてきました。ある意味でアートは、私たちが理解できるように、地球上で市民生活を続けるために必要である事柄を表現する方法を与えることによって、文明に寄与しています。昨今起こっている出来事を考えるに、かつてないほどアートの犯罪は焦眉の急です。それで私は、犯罪映画バンザイ!と言いたい」と。あと3ヵ月で80代の大台に乗りますが、制作意欲は以前と変わらない。
(右手にいるのがホセ・ルイス・レボルディノス)
★最初に監督の代表作、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(05)、『イースタン・プロミス』(07)、『危険なメソッド』(11)に主演したヴィゴ・モーテンセンがビデオでお祝いのメッセージを送ってきた。彼は2020年のドノスティア栄誉賞受賞者で、その節、監督からお祝いのビデオ・メッセージをもらっていた。彼の初監督作品「Falling」も正式出品され、クローネンバーグは本作に脇役でしたが出演していた。監督はカナダ、俳優はアメリカと出身国は異なっていますが、二人とも父方の祖父がデンマーク人という縁で結びついているようです。ヴィゴは語学の才人でデンマーク語も堪能です。
「親愛なるデヴィッド、サンセバスチャン映画祭によるあなたの価値ある評価を祝福します。あなたは世界中のシネマニア、愛好家にとって生きた伝説です。この数年間、あなたとコラボして多くのことを学べたことは、私にとって名誉であり特権でした」と。サンセバスティアンのように美しい街での滞在を楽しんでください。「私はあなたが好きです、デヴィッド」と最後はバスク語で締めくくった。
★ビデオ・メッセージの後、監督作品がメモランダムにスクリーンに映しだされました。モーテンセンが主演した上記の3作のほか、『クラッシュ』(96)、『ラビッド』(77)、『デッドゾーン』(83)、『コスモポリス』(12)、『エム・バタフライ』(93)、『戦慄の絆』(88)などが次々に映しだされました。ほとんどが公開作品、なかには吹替版で放映された映画もあり、我が国での人気ぶりを実感したことでした。クローネンバーグとタッグを組んだ4作目「Crimes of the Future」の予告編も上映された。日本公開は2023年の予定。
(新作出演のレア・セドゥと監督、カンヌFF2022)
(主演のモーテンセンとレア・セドゥ、新作のフレームから)
(2021年公開された『クラッシュ 4K無修正版』のポスター)
★1986年から始まったドノスティア栄誉賞の受賞者に監督が選ばれたのは、2019年のコスタ・カヴラス以来、10年遡っても受賞者26人中、是枝裕和(18)、アグネス・ヴァルダ(17)、オリバー・ストーン(12)の4人しかおりません。最近は受賞者が複数になって多くなりましたが、大方が俳優出身でした。
第70回サンセバスチャン映画祭2022ガラ*受賞結果発表 ㉑ ― 2022年09月27日 13:11
金貝賞はコロンビアの女性監督作品「Los reyes del munndo」が受賞
★9月24日、第70回サンセバスチャン映画祭2022の授賞式がメイン会場クルサールで行われました。金貝賞はコロンビアのラウラ・モラの2作目「Los reyes del mundo」、審査員特別賞はアメリカのマリアン・マティアスの「Runner」、監督賞は『百花』の川村元気のデビュー作、若いシネアストが大賞を独占するという結果になりました。まだ授賞式を見ておりませんが、コンペティション部門以下、ホライズンズ・ラティノ部門など、結果だけ以下にアップしておきます。金貝賞は作品賞のみで、後は銀貝賞です。また昨年から男女の区別を撤廃、主演俳優と助演俳優となっています。脚本審査員賞受賞作ワン・チャオの「Kong Xiu / A Woman」は、最終段階で追加ノミネートされたので作品紹介が間に合いませんでした。中国語タイトルはヒロインの名前です。
セクション・オフィシアル
◎作品賞(金貝賞)
「Los reyes del mundo / The Kings of the World」
(コロンビア=ルクセンブルク=フランス=メキシコ=ノルウェー)
監督ラウラ・モラ
(メデジン出身のラウラ・モラ監督)
(製作者のミルランダ・トーレスとクリスティナ・ガジェゴと)
◎審査員特別賞
「Runner」(米=ドイツ=フランス)
監督マリアン・マティアス
(マリアン・マティアス監督と製作者ジョイ・ヨルゲンセン)
◎監督賞(銀貝賞)
川村元気 作品『百花』(日本)
◎主演俳優賞(銀貝賞)2人
ポール・キルヒャー 出演映画「Le lyceen / Winter Boy」
(監督クリストフ・オノレ、フランス)
カルラ・キレス 出演映画「La maternal」(監督ピラール・パロメロ、スペイン)
◎助演俳優賞(銀貝賞)
レナータ・レルマン 出演作品「El suplente / The Substitute」(監督ディエゴ・レルマン、アルゼンチン=スペイン=イタリア=メキシコ=フランス)
(監督であるパパにエスコートされて登壇したレナータ・レルマン、
左は審査員のレモハン・ジェレミア・モセセ)
◎脚本審査員賞
Dong Yun Zhou(ドン・ユン・チョウ?)、Wang Chao(王超 ワン・チャオ)
「Kong Xiu / A Woman」(監督ワン・チャオ、中国)
(ワン・チャオ監督、ビデオ・メッセージ)
(フレームから)
◎撮影審査員賞(銀貝賞)
マヌエル・アブラモヴィッチ
「Pornomelancolía」
(監督マヌエル・アブラモヴィッチ、アルゼンチン=フランス=ブラジル=メキシコ)
ニューディレクターズ部門
◎クチャバンク賞
「Fifi / Spare Keys」(監督ジャンヌ・アスラン、ポール・サンティラン、フランス)
◎スペシャル・メンション
「Pokhar Ke Dunu Para / On Either Sides of Pond」
(監督 Parth Saurabh インド)
(左から、撮影監督 Pradeep Vignavelu、監督)
ホライズンズ・ラティノ部門
◎オリソンテス賞「Tengo sueños eléctricos」(ベルギー=フランス=コスタリカ)
監督バレンティナ・モーレル
サバルテギ-タバカレラ部門
◎サバルテギ-タバカレラ賞「Vanskabte land / Godland」
(デンマーク=アイスランド=フランス=スウェーデン)
監督Hlynur Palmasonフリヌール・パルマソン
ネスト部門
◎ネスト賞「Montaña azul / Blue Mountain」(短編14分、コロンビア)
監督ソフィア・サリナス、フアン・ダビ・ボオルケスBohorques
◎スペシャル・メンション「Anabase」(短編28分、スイス)
監督バンジャマン・グベ Benjamin Goubet
ドノスティア(サンセバスティアン)市観客賞
◎ドノスティア市観客賞「Argentina, 1985」(ペルラス部門、アルゼンチン=米)
監督サンティアゴ・ミトレ
(製作者の一人チノ・ダリン)
◎ヨーロッパ映画賞「As bestas / The Beasts」
(ペルラス部門、スペイン=フランス)
監督ロドリゴ・ソロゴジェン
(アドルフォ・ブランコ・ルカス、ロドリゴ・ソロゴジェン)
バスク映画イリサル賞
◎イリサル賞「Suro」(スペイン)
監督ミケル・グレア
◎スペシャル・メンション
「A los libros y a las mujeres canto / To Books And Women I Sing」
(スペイン)
監督マリア・エロルサ
ユースTCM賞
◎「A los libros y a las mujeres canto / To Books And Women I Sing」
(スペイン)
監督マリア・エロルサ
WIPヨーロッパ賞
◎WIPヨーロッパ産業賞・WIPヨーロッパ賞
「Hesitation Wound」(監督セルマン・ナカル、トルコ=フランス=ルーマニア)
◎ヨーロッパ―ラテンアメリカ共同作品賞(第11回)
「Seis meses en el edificio rosa con azul」
(監督ブルノ・サンタマリア・ラソ、メキシコ)
RTVE「ある視点」賞
◎RTVE「ある視点」賞
「El sostre groc / El techo amarillo」(監督イサベル・コイシェ スペイン)
*セクション・オフィシアル特別上映作品
◎スペシャル・メンション
「Corsage / La emperatriz reberde」(監督マリー・クロイツァー、
オーストリア=フランス=ドイツ=ルクセンブルク)
◎スペイン協同賞
「Ruido / Noise」(監督ナタリア・ベリスタイン、メキシコ)
(製作者カルラ・モレノ、マリア・ホセ・コルドバ)
ドゥニア・アヤソ賞
◎ドゥニア・アヤソ賞
「Secaderos / Tobacco Barns」(監督ロシオ・メサ、スペイン=米)
◎スペシャル・メンション
「El sostre groc / El techo amarillo」(監督イサベル・コイシェ、スペイン)
◎FIPRESCI賞「Suro」(監督ミケル・グレア、スペイン)
★だいたいメインの賞は以上のようでした。スペインで開催される映画祭ですからスペイン語映画に偏るのは仕方がないとして、今年は多すぎる印象でした。ただセクション・オフィシアルの1作品1賞の原則は守られました。それにしても川村元気の監督賞にはびっくり、デビュー作がノミネートされること事態がそもそも異例なのでした。今年はデビュー作や初出演の受賞者が多く、まるで新人○○賞の印象でした。
フォト集 ①*サンセバスチャン映画祭2022 ㉒ ― 2022年09月30日 10:02
パパラッチに人気だった参加者のフォト集
★9月24日(現地時間)、受賞者、または無冠のクルー、賞とは無関係のアウト・オブ・コンペティション部門などのシネアストたちのフォト集です。本祭事務局が公開したものから選びました。以下メモランダムにアップしていきます。
★12歳の子役レナータ・レルマンが助演俳優賞を受賞した、ディエゴ・レルマンの「El suplente」の参加者たち。レナータは監督と本作出演の女優マリア・メルリノの娘、劇中では主人公ルシオ(フアン・ミヌヒン)と別れた妻マリエラ(バルバラ・レニー)の子供を演じました。初出演で受賞、「どうして選ばれたのか分かりません」とインタビューに答えていた。記者たちも「レナータ・レルマンとは誰だ?」と大わらわ。父親の監督に付き添われて登壇した。父親曰く「水を得た魚」と我が子を絶賛しているのだが、娘は演技経験はゼロに近く、将来女優になるかどうかも決めていないと応じている。審査委員長マティアス・モステイリンがアルゼンチンの製作者なのが気になるし、個人的には子役にトロフィーは問題です。
*作品紹介は、コチラ⇒2022年08月09日
(レルマン監督とレナータ・レルマン父娘、9月24日)
(アルフレッド・カストロ、監督、フアン・ミヌヒン他出演者、右端がマリア・メルリノ)
★「Pelicula sorpresaサプライズ映画」というセクションがあるのを知りませんでしたが、今回アンドリュー・ドミニクの「Blonde」(Netflix『ブロンド』で9月28日から配信開始)のヒロインアナ・デ・アルマスがパパラッチを喜ばせていました。上映では途中退席者も出たそうですが、お茶の間で見るのも165分という長尺ではトイレタイムが必要です。賛否の別れる問題作。彼女はキューバ出身ですがスペインの国籍もあり、スペイン映画、TVシリーズ、ハリウッド映画出演で認知度は高い。
*作品紹介は、コチラ⇒2022年7月10日
(アナ・デ・アルマスとアンドリュー・ドミニク監督、9月24日)
★ニール・ジョーダンのスリラー「Marlowe」に出演したリーアム・ニーソンとダイアン・クルーガーもファンの人気を攫っていました。アウト・オブ・コンペティション部門なので賞には絡みませんが登壇して監督がスピーチしました。
(監督、ダイアン・クルーガー、リーアム・ニーソン、フォトコール)
★ペルラス部門で特別上映されたオリオル・パウロのミステリー「Los renglones torcidos de Dios」のチームのフォトコールは選ぶのに困るほど多かった。特に主役のバルバラ・レニー(1984)が人気、38歳での高齢出産を控えているが順調なのか元気そうです。共演者のエドゥアルド・フェルナンデス、ロレト・マウレオンと話題は尽きない。マウレオンはオープニングの総合司会をパコ・レオンと務めていた。
*作品紹介は、コチラ⇒2022年08月31日
(フェルナンデス、レニー、監督、マウレオン、フォトコール)
(上から、監督、バルバラ・レニー、エドゥアルド・フェルナンデス、ロレト・マウレオン)
★アウト・オブ・コンペティション部門で上映された、スペイン5監督の「Apagón / Offworld」(229分)も、各自脚本家や出演者と連れ立って参加していました。製作テレフォニカ・ビジュアル・デジタルSLU、アンソロジーTVシリーズです。監督は第1話から順にロドリゴ・ソロゴジェン、ラウル・アレバロ、イサ・カンポ、アルベルト・ロドリゲス、イサキ・ラクエスタの5人、太陽嵐が地球全体に衝撃を与え停電を引き起こす。このような状況で5つの都市を舞台に5つのストーリーが展開していく。
(プレス会見、9月23日)
(監督、脚本家などが勢揃い、ラウル・アレバロは欠席?)
(第1話出演のルイス・カジェホ)
(第2話出演のアイノア・サンタマリア)
(第2話出演のメリナ・マシューズ)
(第3話出演のパトリシア・ロペス・アルナイス)
(第3話出演のソエ・アルナオ)
(第4話出演のヘスス・カロサ)
(2話に出演するマリア・バスケス)
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