タマラ・カセリャスとフリア・デ・パスの「Ama」*マラガ映画祭2021 ㉔2021年07月07日 13:26

        タマラ・カセリャスが「Ama」主演で銀のビスナガ女優賞を受賞

 

      

 

フリア・デ・パス監督のデビュー作Amaは、主役のタマラ・カセリャス銀のビスナガ女優賞をもたらしました。本作は2019年にESCAC(カタルーニャ映画視聴覚上級学校、マラガ映画祭が注目している映画学校)の卒業制作として撮られた同名の短編がベースになっています。当時フリアは「あまり良い状態ではなかった」とマラガのEFEインタビューに応えている。監督はまだ25歳、母親に借金をして製作したようですが、マラガで母親に最大級のプレゼントを贈ることができました。ハリウッドや男性シネアストたちが、長年にわたって作り続けてきたスーパー家父長制の映画は害をもたらし続けている。監督は、あってはならない「母性神話」の打ち壊しに挑戦しました。何故なら「母性は一つでなく、母親の数だけあり、それぞれ違っていていい」と監督。

    

       

(タマラ・カセリャス、レイレ・マリン・バラ、監督、マラガFF2021フォトコール)

 

     

 Ama2021

製作:La Dalia Films / Ama Movie AIE

監督:フリア・デ・パス・ソルバス

脚本:フリア・デ・パス・ソルバス、ヌリア・ドゥンホ・ロペス

撮影:サンドラ・ロカ

音楽:マルティン・ソロサバル

編集:オリオル・ミロン

美術:ラウラ・ロスタレ

衣装デザイン:クリスティナ・マルティン

メイクアップ:メルセデス・ルハン、タニア・ロドリゲス

プロダクション・マネージメント:リチャード・ファブレガ、マメン・トルトサ

音響:ヤゴ・コルデロ、ほか

視覚効果:ギレム・ラミサ・デ・ソト(短編)

製作者:(エグゼクティブ)シルビア・メレロ、ホセ・ルイス・ランカニョ

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2021年、ドラマ、90分、撮影地バレンシアのアリカンテ、撮影期間20203月から6月、パンデミックで中断、2021年完成させた。配給&販売Filmax、スペイン公開2021716

映画祭・受賞歴:第24回マラガ映画祭2021セクション・オフィシアル部門、銀のビスナガ女優賞受賞(タマラ・カセリャス)、AICE(スペイン映画ジャーナリスト協会)が選ぶフェロス・プエルタ・オスクラ賞を受賞。

 

キャスト:タマラ・カセリャス(ぺパ)、レイレ・マリン・バラ(娘レイラ)、エステファニア・デ・ロス・サントス(ロサリオ)、アナ・トゥルピン(アデ)、マヌエル・デ・ブラス(カルロス)、チェマ・デル・バルコ、パブロ・ゴメス=パンド(レイラの父ディエゴ)、マリア・グレゴリオ、バシレイオス・パパテオチャリス、カルメン・イベアス、エリン・ガジェゴ、シルビア・サンチェス、ほか

 

ストーリー:母性神話に縛られて孤独のなかにいる多くの女性たちの物語。さまざまな警告の末に、アデは友人のぺパを家から追い出してしまう。6歳になる娘のレイラと一緒に道路に佇んでいるぺパを目にしたのが最後だった。もう助けてくれる人は誰もいない、ぺパとレイラは生きるための場所を見つけるために闘わねばならない。困難に直面しながらも探求に取りかかる。それは遠い昔の今では存在しない関係との和解に耐えることでもあるだろう。母と娘の新たな絆を創りだすだろうが、それは間違いを許容するもので理想化とは異なるものだろう。あってはならない母性神話に挑戦する女性たちの物語。

 

       

            (路頭に迷うぺパと娘レイラ、映画から)

 

監督紹介フリア・デ・パス・ソルバスは、1995年バルセロナ生れの監督、脚本家。バルセロナのESCAC(カタルーニャ映画視聴覚上級学校)で映画演出を専攻する(201218)。2012年、短編「Atrapado」、助監督、キャスティング監督などをしながら、2017年に共同監督(11名)として撮った長編La filla dalgú19)は、マラガ映画祭2019モビスター+賞を全員で受賞した。2018ESCACの卒業制作である短編Ama1919分)は、アルカラ・デ・エナレス短編映画祭にノミネートされた。今回、初の単独監督として本作「Ama」で長編デビューした。テーマは不平等、特に女性が受けている社会的地位の格差、フィクションとドキュメンタリーの接続点を求めている。鼻ピアスに耳の後ろから剃り上げたライオン・ヘアー、エイミー・ワインハウス風のアイライン、このタフでぶっ飛んだ監督は、映画祭に旋風を巻き起こした。

 

    

    (「まだ私は25歳の青二才です」と応えるデ・パス監督、プレス会見)

 

★短編Ama」の登場人物で重なるのはぺパ、ディエゴ、レイラ(別の子役エンマ・エルナンデス・ぺレス)、アデ(ロランダ・パテルノイ)と多くない。監督とぺパ役のタマラ・カセリャスは長編デビューに4年の歳月を掛けたという。映画はこんな風に始まる。ディスコで踊り明かした若い女性が帰宅する、既に新しい一日が始まっており、テーブルでお絵描きをしていた小さな女の子が迎える、女性は動じる風もなくおはようと言う。娘の育児放棄に耐えきれない友人から家を追い出されてしまう。

 

     

               (短編「Ama」のポスター)

 

★監督は「これまでのぺパの人生を説明しない方針にした。町中を子連れで放浪するぺパを無責任な母親と呼ぶこともできます」。しかし監督は、ぺパを理解するためのモラルやアリバイを提供しない。またぺパを裁かないし、観客に許しを求めない。このような状況に至るまでの経済的社会的なリソースを提供しないシステムを描くだけです。母性は存在してはならない神話であってそれは一つでなく、母親の数だけあり、それぞれ違っていていい」と監督。製作者のホセ・ルイス・ランカニョは、「芸術的品質、若くて才能あふれる制作チームの努力、何よりも映画が語る物語の力強さのため」と、製作意図に挙げている。

 

     

      (マラガ入りした監督、タマラ・カセリャス、レイレ・マリン・ベラ)

 

★ぺパを演じて、銀のビスナガ女優賞受賞タマラ・カセリャス(カセジャス)は、セビーリャ生れの35歳、舞台女優を目指し、セビーリャのViento Sur Teatroの演劇学校で学ぶ。その後18歳でバルセロナに移り、バルセロナの演劇学校Nancy Tuñonで学んでいる。2010年映画デビュー、2015年アルバル・アンドレス・エリアスの短編「4 días de octubre」(ESCAC Films)に出演、ハビエル・チャカルテギのコメディ「La estación」(18)、ホセチョ・デ・リナレスの「Desaparecer」(18ESCAC Films)で長編デビュー。他に上記の短編&長編の「Ama」、デ・パス監督との接点はESCACのようです。

 

      

        (銀のビスナガを手に喜びを全開するタマラ・カセリャス)

 

★ウェイトレスの仕事を終えて映画祭に馳せつけたタマラは、「私はぺパのように感じたことはないとはいえ、もし彼女が傷ついていると信じれば、すべての家族に言えることですが、まさかそんなことだったとは気づかなかったと言うのです」と語っている。事件後に親戚やご近所さんがメディアに語る定番ですね。またタマラは映画が絶えず深層に潜めているライトモチーフ、放棄または怠慢について「それぞれモードは異なりますが、それは私たち二人が感じている何かです」と。この映画には私にとって父や母が何であるかの分析があり、映画を見れば感動すると語っている。

    

     

           (自分とは違うぺパを演じたタマラ、映画から)

 

★ぺパが遊びまわっているあいだ、娘レイラの世話を押しつけられている友人アデ(アナ・トゥルピン)は、二人が彼ら自身の人生を見つけるために敢えて路頭に送り出す。レイラを演じたレイレ・マリン・ベラは自然体で、本当に難しいシーンをカバーしてくれたと監督は少女を絶賛している。タマラと同郷の先輩ロサリオ役のエステファニア・デ・ロス・サントスは幼女の祖母役、セクション・オフィシアル部門のアウトコンペティションで上映された、ビセンテ・ビジャヌエバのコメディ「Sevillanas de Brrooklyn」で活躍しています。短編「Ama」にもディエゴ役で出演していたパブロ・ゴメス=パンドは、幼女の父親役です。

 

        

  (意見の異なる友人アデとぺパ)

 

      

         (撮影中のレイラ、ぺパ、ロサリオ、20203月)

 

   

                    (新たな絆を模索するレイラとぺパ)

 

★マラガFF ESCAC出身のシネアストを重視している。2017年のカルラ・シモン(『悲しみに、こんにちは』)、2018年のエレナ・トラぺ(「Las distancias」)が金のビスナガを受賞している。2020年のピラール・パロメロ(「Las niñas」)はサラゴサ出身で卒業生ではないが、ゴヤ賞2020新人監督賞のベレン・フネス(「La hija de un ladorón」)もESCACで学んでいる。4作とも作品紹介をしていますが、今のスペインはマドリードよりバルセロナが熱い。マラガFFESCACが女性監督の採石場と称される所以です。1994年バルセロナ自治大学の付属校としてバルセロナで設立、2003年に本部をバルセロナ州テラサ(タラサ)に移した。活躍中の卒業生は、J.A. バヨナマル・コルキケ・マイジョオスカル・ファウラハビエル・ルイス・カルデラなど数えきれない。生徒に非常に厳しい要求をする学校として有名ですが、それなりの成果をあげているということでしょう。

 

★マラガ映画祭はとっくの昔に終幕しましたが、ゴヤ賞2022の新人監督賞、主演女優賞のノミネートを視野に入れて紹介いたしました。デ・パス監督の次回作は、児童虐待をテーマにした短編、目下準備中ということです。