サンセバスチャン映画祭2016*テーマは「出会い」 ①2016年05月26日 11:51

           世界中に拡散した暴力は無視できない

 

★カンヌが終わったら次は何だったかしら? カンヌもコンペティション外や特別招待作品などを積み残しており、落ち穂拾いが必要ですが気分を変えたい。メキシコのアカデミー賞「アリエル賞」結果発表は、今年は528日とちょっと先です。というわけで少し気が早いけれどサンセバスチャン映画祭のご紹介、去る55日に「64回サンセバスチャ2016」の部門ごとのポスターが発表になっておりました。916日から24日までの9日間、作品選考はこれから、ノミネーション発表は8月初旬でしょうか。ホセ・ルイス・レボルディノスが今年も映画祭総代表者を務めます。

 

 

  (第64回のメインポスターをお披露目するホセ・ルイス・レボルディノス)

 

★第64回のポスターには16人の人物が描かれておりますが、これは偶然ではなく、2016916日オープニングが掛けてあるらしい。デザイナーは「スタジオ・プリモ」のホルヘ・エロセギ、スペインのデザイン事務所が応募した10作の中から、映画祭実行委員会が選考にあたった。エロセギによると、「この作品は、ジャーナリストとして観客として、映画産業に携わる多くのプロフェッショナルな人の出会いを表現している」ようです。レボルディノスも「みんなで映画祭に行こう!」というアイデアを反映させたもの、と説明している。

 

★世界中で起きている政治的対立が本映画祭のテーマの一つになるようです。2016年の選考基準の一つとして、コンペティション部門を含めて、今多くの地域で起きているバイオレンスの状況を冷静に分析した作品を特別に考慮して、前途多難な未来を語った作品を多めに選考する。なぜなら「映画祭といえども、今世界で起きていることに背を向けていることはできない」とJL・レボルディノス。サンセバスチャンは他の映画祭に比較すると政治的メッセージの強い映画祭ですが、今年はそれが更に強まりそう、昨年は管理人の好きな「ユーモア」だったのですが。

 

★世界に拡散した暴力をテーマにした「The Act of Killing, Cine y Violencia Global」部門では、暴力をテーマにした過去の優れた映画の回顧上映も予定されている。日本のフィルム・ノワールや200015に製作された独立系の新しい映画が上映される。タイトルの由来は、勿論ジョシュア・オッペンハイマーが2012年に撮った『アクト・オブ・キリング』(英=デンマーク=ノルウェー、製作総指揮ヴェルナー・ヘルツォーク)から取られている。劇場公開は2014年でした。1965年、インドネシアで起こった「赤狩り」と称した100万人規模の大虐殺のドキュメンタリー。複雑すぎて一言では紹介できませんが、「本当の悪とは何か」をテーマにした、ただ恐ろしいだけの映画ではなく、人間が犯す悪の正体を掘り下げている。

 

       

 

         フランスとの連携を深めるサンセバスチャン

 

★昨年の特集は日本映画でしたが、今年は「ジャック・ベッケル」の回顧上映が特集されます。フランソワ・トリュフォーなどヌーヴェル・ヴァーグの監督たちに尊敬されたフランスの監督(190660,享年53歳)。映画批評誌『カイエ・デュ・シネマ』の執筆陣に大きい影響を与えた監督。ルノワールの助監督を務めた後、1942年『最後の切り札』(未公開)でデビュー、シモーヌ・シニョレ主演の『肉体の冠』(51)は日本でも話題を呼んだ。フレンチ・フィルム・ノワール『現金(げんなま)に手を出すな』(54)では、主役のジャン・ギャバンがベネチア映画祭で男優賞を受賞した。ジュラール・フィリップがモディリアーニを演じた『モンパルナスの灯』(58)、脱獄映画の傑作と言われる遺作『穴』(60)など、ドラマ、サスペンス、コメディと簡潔だがきちんと計算された構成にファンは魅了されている。長編13作がスペインでは未公開、フランコ時代の理不尽な検閲をパスできなかった。大きな損失ですよ。日本でも全作が直ぐ公開されたわけではなく未公開作品もありますが、DVDなど一応字幕入りで見ることができます。

 

        

                      (ジャック・ベッケル回顧上映のポスター)

 

サバルテギZabaltegi部門は、ジャンルがアバウトです。〈サバルテギ〉はバスク語で「自由」という意味、というわけで国籍、言語やジャンル、長編短編を問わずドキュメンタリーも含めて自由に約30作品ほどが選ばれるセクションです。「コンペティション部門」は勿論ですが、サバルテギの中からもゴヤ賞ノミネーションを受けることが多い。「サンセバスチャンは、ゴヤ賞の石切り場」と言われる所以です。

 

        

      (サバルテギ・セクションのポスター)

 

★映画祭総予算は750万ユーロ、メドはたったのでしょうか。JL・レボルディノスもカンヌに出掛けて根回しをしてきたようです。作品選考、赤絨毯を歩くスターたちのリストアップ、サミットほどではないでしょうが、テロ対策も含めて国際映画祭の準備は待ったなしです。ラテンビート上映に関係ある「ホライズンズ・ラティノ」部門は、ノミネーション発表の折にご紹介したい。

 

    

                        (ホライズンズ・ラティノ部門のポスター)

 

★コンペティション部門の審査員は、金貝賞Concha de Oro以下、合計6の選出をする。基本的にはカンヌ映画祭と同じように「1作につき1賞」ですが、例外的に2014年の“Magical Girl”の金貝賞と銀貝賞(監督賞)のダブル受賞もありました。

*金貝賞は、作品賞として製作者に与えられ、金賞はこれ一つ

*銀貝賞は、監督賞、女優賞、男優賞 の3

*審査員賞は、撮影賞、脚本賞    の2賞     

 

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