『ブランカニエベス』の次は『アブラカダブラ』*パブロ・ベルヘルの第3作2016年05月29日 14:57

             アクセル踏んで5年ぶりに新作発表

 

★昨年10月に「第3作はファンタスティック・スリラーのコメディAbracadabra、クランクインは来年夏、公開は2017年」とアナウンスがありましたが、いよいよクランクインしました。大当たりした第2『ブランカニエベス』から5年が経ちましたが、5年というのは監督にしては破格の速さではないでしょうか。デビュー作『トレモリノス7302)と第2作の間隔は2倍の10年でした。思いっきりアクセル踏んでスピードを上げ、55日にマドリードで撮影開始、現在はナバラ州のパンプローナに移動しています。IMDbもアップされましたが、まだ全容は分かりません。撮影地はマドリードとナバラ、約2ヶ月の9週間が予定されています。

 

   

    (左から、ホセ・モタ、ベルドゥ、監督、デ・ラ・トーレ、パンプローナにて)

 

 ◎キャスト陣

★主役のカルメンに前作のマリベル・ベルドゥ、その夫カルロスにアントニオ・デ・ラ・トーレ、カルメンの従兄にホセ・モタ、他にキム・グティエレス、ホセ・マリア・ポウ、フリアン・ビジャグラン、サトゥルニノ・ガルシア、ベテランのラモン・バレアまで曲者役者を揃えました。マリベル・ベルドゥアントニオ・デ・ラ・トーレはグラシア・ケレヘタのFelices 14015)で既にタッグを組んでいる。どんなお話かというと、カルメンはマドリードのカラバンチェルに住んでいる主婦、近頃夫カルロスの挙動がおかしいことに気づく。どうやら悪霊か何かにとり憑かれているようだ。そこで従兄のペペに助けを求めることにする。

    

Felices 140”の紹介記事は、コチラ⇒201517

マリベル・ベルドゥの紹介は、コチラ⇒2015824など

アントニオ・デ・ラ・トーレの紹介は、コチラ⇒201398など

 

     

               (私たち夫婦になりますが・・・)

 

★カルメンの従兄ペペ役のホセ・モタは、1965年シウダレアル生れ、コメディアン、俳優、声優、監督、脚本家。サンティアゴ・セグラの「トレンテ」シリーズの常連、アレックス・デ・ラ・イグレシアのダーク・コメディ『刺さった男』12)で、不運にも後頭部に鉄筋が刺さってしまった男を演じた。TV界ではチョー有名な存在だが、再び映画に戻ってきた。今回は催眠術にハマっている役柄のようで、カルロスに乗り移ってしまった悪霊を払おうとする。写真下はホセ・モタがアントニオ・デ・ラ・トーレに催眠術をかけている絵コンテ、『ブランカニエベス』も手がけたイニゴ・ロタエチェのデッサンから。 

    

                       (イニゴ・ロタエチェの絵コンテ)

 

 

       (ホセ・モタ)

 

キム・グティエレスは、今年公開されたハビエル・ルイス・カルデラのSPY TIMEスパイ・タイム』でエリート諜報員アナクレト(イマノル・アリアス)の息子アドルフォに扮しアクションも披露したばかり。今回の役は、「コッポラの『地獄の黙示録』(79)でマーロン・ブランドが演じたカーツ大佐のように物語の一種の道しるべ的な存在になる」とか、詳しいことは現段階ではバラしたくないと監督。ダニエル・サンチェス・アレバロの『漆黒のような深い青』06)でブレークした後、ドラマ、コメディ、アクションと確実に成長している。

SPY TIMEスパイ・タイム』とキム・グティエレスの紹介は、コチラ⇒201622

 

      

         (アナクレトとアドルフォ父子、映画から)

 

ホセ(ジョセップ)・マリア・ポウは、1944年バルセロナ生れ、『ブランカニエベス』、アメナバル『海を飛ぶ夢』(04)、イネス・パリス“Miguel y William”(07)、ベントゥラ・ポンセ“Barcelona (un mapa)”など、今作ではホセ・モタが熱中する催眠術の先生役。フリアン・ビジャグランは、マラガ映画祭2016でご紹介しています。ベテランのラモン・バレアは、1949年ビルバオ生れ、監督の大先輩、『トレモリノス 73』、ボルハ・コベアガのETAのコメディ“Negociador”(14)では主役の〈交渉人〉を演じた大ベテラン。

フリアン・ビジャグラン紹介は、コチラ⇒“Gernika420Quatretondeta422

ラモン・バレア紹介は、コチラ⇒“Negociador2015111

 

 ◎スタッフ紹介

★撮影監督にキコ・デ・ラ・リカ、衣装デザインにパコ・デルガト、編集にダビ・ガリャルトなど国際的評価の高い一流どころがクレジットされています。監督夫人Yuko Haramiは日本人、プロデューサー、カメラ、音楽家、ニューヨークで知り合ったとか。監督デビュー作以来二人三脚で製作に関わっている。『トレモリノス 73』の頃、娘が生まれている。『ブランカニエベス』の白雪姫カルメンシータを10歳に想定したのは娘の年に合わせたようです。ゴヤ賞のガラには着物姿で出席していた。

 

           「私はシネマニア、これは不治の病です」

 

 ◎監督紹介

★『ブランカニエベス』を検索すれば簡単にキャリアは検索できます。詳細は完成の折に紹介するとして、1963年ビルバオ生れ、監督、脚本家、製作者。デビュー作『トレモリノス 73は、「バスク・フィルム・フェスティバル2003」で上映されたあと、「ゆうばり国際ファンタステック映画祭2005」でも上映された。第2『ブランカニエベス』、第3作が来年公開のAbracadabraと極めて寡作です。

 

★第2作を企画中の2003年には、「無声モノクロ」はクレージーな企画でどこからも相手にされなかったことが、ブランクの大きな要因だった(モノクロは現在では高価でカネ食い虫)。つまり資金が集まらなかったということ。アカデミー賞作品賞をもらったミシェル・アザナヴィシウスの『アーティスト』(11)に影響を受けてモノクロにしたわけではない。今回はオールカラー、前作の成功もあって資金が比較的早く集まったからで、特別エンジンをふかしたわけではない。クランクイン予告の記者会見では、「ロシア人形のマトリューシュカのように、ホラーのなかにファンタジー、ファンタジーのなかにコメディ、コメディのなかにドラマと、入れ子のようになっている映画が好き。ウディ・アレンのファンで、特に『カイロの紫のバラ』(85)、『カメレオン』(83)、『スコルピオンの恋まじない』(01)などが気に入っている」と語っていた。

 

    

              (新作を語るパブロ・ベルヘル監督)

 

★映画のなかに、「エモーション、ユーモア、驚き、これから何が起きるか予想できないような物語を観客に楽しんでもらいたい。いつもこれが最後の作品になると考えている。自分を本職の監督だとは思っていないから、私にとって映画を撮ることはいわば命知らずのミッションに近い、時にはうまくいくこともあるが、時にはうまくいかないこともある」。「ベルドゥの役はドン・キホーテ的、ホセ・モタの役はサンチョ・パンサ的です。またはベルドゥは泣きピエロ、ホセ・モタは人気のある陽気なピエロとも形容できます」。「マドリード的な映画で、私の大好きな映画、アルモドバルの『グローリアの憂鬱』やビガス・ルナの“Angustia”に関連しています」ということなのですが、何やらややこしくなってきました。私の映画の源泉は映画館にあるという、シネマニアです。

 

原題は“¿Qué he hecho yo para merecer esto?”(84)です。マドリードの下町に暮らす主婦(カルメン・マウラ)がグータラ亭主を殺してしまうが事件は迷宮入りになる傑作コメディ、どうしてこんな平凡な邦題をつけたのか理解できない(笑)。“Angustia”はビデオが発売されているようですが未見です。

*追記:『アブラカダブラ』の邦題でラテンビート2018上映が決定しました。

  

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