イサキ・ラクエスタの新作は西仏合作映画*ベルリン映画祭2022 ― 2022年01月31日 14:48
2015年パリ同時多発テロ〈バタクラン劇場〉襲撃事件の生存者の実話

★イサキ・ラクエスタの新作「Un año, una noche」は、スペインとフランスの合作、両国の若手演技派が集合しました。2015年11月13日の夜、パリ11区にある伝説的なコンサートホール「バタクラン劇場」で起きたISILメンバーによるパリ同時多発テロ事件の一つの実話がベースになっています。事件当夜の生存者ラモン・ゴンサレスの ”Paz, amor y Death Metal” の映画化。襲撃された6ヵ所の死亡者130名のうちバタクラン劇場だけで89名、負傷者300名という最も多い犠牲者を出している。既に6年以上の歳月が流れましたが今でも記憶に残るテロ事件でした。原作者のラモン・ゴンサレスには『BPM ビート・パー・ミニット』(17)のアルゼンチン出身だがフランスで活躍するナウエル・ぺレス・ビスカヤート、そのガールフレンドのセリーヌにフランスの『燃ゆる女の肖像』(19)で主役の画家を演じたノエミ・メルランが扮します。両作ともカンヌFFを沸かせた作品でした。


(撮影中のノエミ・メルランとナウエル・ぺレス・ビスカヤート)
★イサキ・ラクエスタ(ジローナ1975)については、前作『二筋の川』(19、Entre dos aguas)他でご紹介しております。邦題はスペイン映画祭2019(インスティトゥト・セルバンテス東京、6月25日~7月2日)で上映されたときのものです。本作の脚本家で製作者のイサ・カンポと二人のあいだの愛娘揃ってオープニングに来日、Q&Aに参加いたしました。
*『二筋の川』の監督&作品紹介は、コチラ⇒2018年07月25日/2019年07月06日
*『記憶の行方』作品紹介は、コチラ⇒2016年04月29日

(イサキ・ラクエスタとイサ・カンポ、マラが映画祭2016、フォトコール)
「Un año, una noche」(One Year, One Night)
製作:Bambú Producciones / Mr. Fields and Friends / Noodles Production /
La Termita Films
監督:イサキ・ラクエスタ
脚本:フラン・アラウホ、イサ・カンポ、イサキ・ラクエスタ
原作:ラモン・ゴンサレスの ”Paz, amor y Death Metal”
音楽:ラウル・フェルナンデス・ミロ
撮影:イリーナ・リュプチャンスキ
編集:セルジ・ディエス、フェルナンド・フランコ
キャスティング:ピエール・フランソワ・クレアンシエル、ロサ・エステベス
美術:ミケル・フランシスコ、セバスティアン・ゴンデク
衣装デザイン:Alexia Crisp-Jones
メイクアップ:アルマ・カザル、ミロウ・サナー
特殊効果:The Action Unit
製作者:ディエゴ・ポロ、ライア・コル、モニカ・タベルナ
データ:製作国スペイン=フランス、フランス語、2022年、ドラマ、言語フランス語、撮影地バルセロナ、配給Studio Canal、Eurimages 他から資金援助を受けて製作された。
映画祭・受賞歴:第72回ベルリン映画祭2022コンペティション部門
キャスト:ナウエル・ぺレス・ビスカヤート(ラモン)、ノエミ・メルラン(セリーヌ)、キム・グティエレス、アルバ・ギレラ(ルーシー)、ナタリア・デ・モリーナ、C.タンガナ、Miko Jarry、マイク・F. パンフィール(カリム)、ホセ・ハビエル・ドミンゲス(友人)、ジャン=ルイ・ティルバーグ(教育家)、アレックス・モリュー・ガリガ、エドワード・リン(バルのオーナー)、イゴール・マムレンコフ、他
ストーリー:2015年11月13日の夜、パリ11区にある伝説的なコンサートホール「バタクラン劇場」に、武器を携えたISLLジハーディストのテロリスト4人が突然襲撃した。6ヵ所のパリ同時多発テロのうち最大の犠牲者89名を出した。スペイン人のラモン、フランス人のガールフレンドのセリーヌは、生存者としてテロ襲撃のトラウマと闘う人生を生きることになる。ラモン・ゴンサレスの ”Paz, amor y Death Metal” の映画化。Death Metalは当夜出演していたアメリカのロックバンド〈イーグルス・オブ・デス・メタル〉から採られている。

(テロ生存者のラモンとセリーヌ、フレームから)
バタクラン劇場への悲劇的な襲撃からトラウマに直面したカップル
★ラクエスタ監督は、バタクラン劇場への悲劇的な襲撃から1年後の2016年、倫理的な問題、人間関係、トラウマに直面しなければならなかった若いカップルをフォローする本作に取り組んだ。上記のように出演者はスペイン、フランスからキャスティングされている。
★主演のナウエル・ぺレス・ビスカヤートはフランスで活躍しているが、1986年ブエノスアイレス生れ、舞台と映画俳優、国籍はアルゼンチン。映画デビューは2004年から、エドゥアルド・ラスポの「Tatuado」で2005年銀のコンドル新人賞を受賞、ブノワ・ジャコの『肉体の森』(10)出演を機に、その後フランス語を学ぶため3ヵ月パリに留学した。アルゼンチンに戻り、ルイス・オルテガの「Lulú」(14)で、銀のコンドル主演男優賞にノミネートされている。しかし国際的な成功は、カンヌ映画祭2017出品のロバン・カンピヨの『BPM ビート・パー・ミニット』出演でした。本作はグランプリ、国際批評家連盟賞、クィア・パルム他を受賞、従ってカンヌの1作品1賞のルールにより、最優秀男優賞を逃しました。しかし2018年にはセザール新人賞、リュミエール男優賞などを受賞、ヨーロッパ映画賞にもノミネートされ、国際的な名声を手に入れた。

(日本語版のチラシから)
★ノエミ・メルランは、1988年パリ生れ、女優、監督、脚本家。モデルとしてスタートしたが、パリの演劇学校で学んでいる。2011年より女優として活躍しているが、監督として2本の短編を撮った後、既に長編映画にデビューして評価を得ている。ルー・ジュネの『不実な女と官能詩人』(19)、セリーヌ・シアマ監督の『燃ゆる女の肖像』(19)の画家役で女性映画批評家協会WFCC賞、リュミエール女優賞ほかを受賞、ノミネート多数の話題作。長編監督デビュー作「Mi iubita, mon amour」は自作自演、カンヌ映画祭2021でゴールデンカメラにノミネート、サンセバスチャン映画祭のサバルテギ-タバカレラ部門でも上映されている。

(ノエミ・メルラン、『燃ゆる女の肖像』から)
★スペインサイドのキム・グティエレス、ナタリア・デ・モリーナについては度々登場させているので割愛しますが、ミュージシャンのC. タンガナ(本名アントン・アルバレス・アルファロ1990)が俳優デビューを飾ったことが話題になっています。

(C. タンガナ)
★共同脚本家のフラン・アラウホは製作者、脚本家、監督。イサキ・ラクエスタ&イサ・カンポの『記憶の行方』でガウディ賞(作品・脚本)、続く『二筋の川』でも作品賞を受賞している。TVシリーズのヒット作を数多く手掛けており、なかでイサベル・ペーニャ&ロドリゴ・ソロゴジェンの「Antidisturbios」(20)でイリス賞(プロダクション)とペペ・コイラの「Hierro」(19)で脚本賞、他にメストレ・マテオ賞(脚本)を共同で受賞している。
★音楽は『二筋の川』を手掛けたラウル・フェルナンデス・ミロ、撮影監督はフランスの名匠アルノー・デプレシャンの青春映画『あの頃エッフェル塔の下で』(15)のイリーナ・リュプチャンスキ、フィルム編集のセルジ・ディエスは『二筋の川』でガウディ賞を受賞、もう一人のフェルナンド・フランコはデビュー作「La herida」(13)がサンセバスチャン映画祭で審査員特別賞を受賞、翌年のゴヤ賞2014で新人監督賞やフォルケ賞作品賞を受賞するなどしている。スタッフは西仏合作らしく両国の実力者が支えている。
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