国際映画祭の受賞作が並ぶペルラク部門17作*サンセバスチャン映画祭2023 ⑰ ― 2023年09月22日 10:32
ペルラク部門オープニングはカンヌのグランプリ「The Zone of Interest」
★今年のペルラク部門のオープニング作品は、ジョナサン・グレイザーの「The Zone of Interest」(La zona de interés アメリカ=イギリス=ポーランド)、カンヌ映画祭2023の目玉でパルムドールが期待されていましたが、第2席にあたる審査員グランプリを受賞しています。強制収容所アウシュビッツ・ビルケナウの有刺鉄線の向こう側で贅沢三昧を満喫しているルドルフ・ヘス司令官一家の幸せな日常と収容所の阿鼻叫喚が交互に描かれる。ホロコーストの恐怖を描いた作品は数えきれないほど鑑賞してきているが、こちら側とあちら側が同時進行する映画は衝撃的ではなかろうか。12月8日アメリカ公開、来年早々日本の映画館にも登場するようです。グレイザー監督の現地入りも予定されている。
(オープニング作品「The Zone of Interest」から)
★クロージング作品は最初、トロント映画祭でワールド・プレミアされた、ラジ・リの「Les Indésirables」(Los indeseables フランス)がノミネートされていましたが、どうも上映されないようです。どういう事情なのか目下情報は未入手です。彼のデビュー作『レ・ミゼラブル』(19)はオスカー賞ノミネート以下、ゴヤ賞2020のヨーロッパ映画賞受賞作、国際映画祭の賞荒らしでした。
(ラジ・リの「Los indeseables」から)
★ペルラク部門は金貝賞には絡みませんが、サン・セバスティアン市がオーナーであるドノスティア市観客賞の対象になります。観客の投票数で2作品が選ばれます。作品賞には50.000ユーロ、ヨーロッパ作品賞には20.000ユーロが副賞として授与される。またビクトリア・エウヘニア劇場で上映される作品のうちアルマーニ・ビューティがパトロンの賞の対象作品になっています。クロージングに発表され、トロフィーが授与される。
★昨年の作品賞は、アルゼンチンのサンティアゴ・ミトレの『アルゼンチン1985』、ヨーロッパ作品賞にはスペインのロドリゴ・ソロゴジェンの『ザ・ビースト』が受賞、前者はプライムビデオ配信、後者は東京国際映画祭2022の東京グランプリ受賞作と、共に字幕入りで鑑賞できました。
★また今回、サン・セバスティアン市の選挙人名簿登録者(18歳以上)のうち失業者を対象に、メイン会場クルサール、あるいは3000人収容のベロドロモで上映される映画のチケット1000枚が既に配布されたと報じています。日本ではちょっと考えられないですね。本祭のホセ・ルイス・レボルディノス総ディレクターは、サン・セバスティアン市に感謝の辞を述べている。
(手前がホセ・ルイス・レボルディノス、後方がドノスティア市長エネコ・ゴイア氏)
★本祭に限らずアジア勢は日本以外は閑散としている。日本関連作品は、サンセバスチャンとは相性のいい浜口竜介の『悪は存在しない』(ベネチアFF 銀獅子審査員賞)、是枝裕和の『怪物』(カンヌFF クィア・パルム賞・坂元裕二脚本賞)、ドイツとの合作映画だがヴィム・ヴェンダースの『Perfect Days』(カンヌFF 役所広司男優賞、12月22日公開)の3作がノミネートされています。韓国出身でカナダで活躍するセリーヌ・ソンのラブストーリー『Past Livesパスト・ライブス』(サンダンスFF、ベルリンFF)の製作国は米国です。今年は合作を含めると最多の4作が選ばれている。
(浜口竜介の『悪は存在しない』から)
(是枝裕和の『怪物』から)
(ヴィム・ヴェンダースの『Perfect Days』から)
(セリーヌ・ソンの『Past Livesパスト・ライブス』から)
★いよいよ開幕が近づいて(9月22日20:30現地時間)、招待客の現地入り報道も活発になってきました。他の映画祭同様、映画祭関係者も含めて、もうマスク着用姿はみられません。「La sociedad de la nieve / Society of the Snow」(邦題『雪山の絆』でNetflix配信が予告されている)のJ.A. バヨナも既に現地入りして、出迎えのホセ・ルイス・レボルディノスとハグ、ファンとの撮影にも応じていました。他セクション・オフィシアルの審査員のクリスティアン・ペツォールト、彼の最新作「Roter Himmel / Afire / El cielo rojo」はペルラクにノミネートされている。ヴィッキー・ルエンゴ、ファン・ビンビンも到着しましたが、しかしこれからが本番です。ペルラク部門のうちスペイン語映画をピックアップして時間の許す限り紹介する予定です。
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