『ザ・ビースト』が東京グランプリ他3冠*東京国際映画祭2022 ⑧2022年11月03日 20:47

        東京グランプリにロドリゴ・ソロゴジェンの『ザ・ビースト』

 

    

 

112日、第35回東京国際映画祭2022の授賞式が東京国際フォーラムでありました。ロドリゴ・ソロゴジェンTIFF表記ソロゴイェン)の『ザ・ビースト』(西仏合作)が東京グランプリ/東京都知事賞監督賞男優賞ドゥニ・メノーシェ)の3冠を受賞しました。他にスペイン語映画では、チリのマヌエラ・マルテッリのデビュー作1976に主演したアリネ・クッペンハイムTIFF表記アリン・クーペンヘイム)が女優賞を受賞するなどした。コンペティション部門の受賞結果は以下の通り(タイトル、主製作国、監督など)、プレゼンターは各審査員。

 

 

東京グランプリ/東京都知事賞『ザ・ビースト』(スペイン)、ロドリゴ・ソロゴジェン

 監督欠席につきラテンビートFFプログラミング・ディレクターのアルベルト・カレロ・ルゴ氏が代理で受け取り、監督はビデオメッセージで挨拶、プレゼンターはジュリー・テイモア審査委員長、小池百合子都知事の両氏。

     

     

     

                   (小池都知事、カレロ・ルゴ氏、テイモア審査委員長)

 

審査員特別賞『第三次世界大戦』(イラン)、ホウマン・セイエディ

 監督欠席につき主演者マーサ・ヘジャーズィが代理で受け取り、プレゼンターはマリークリスティーヌ・ドゥ・ナヴァセル審査員。

   

     

                               (マーサ・ヘジャーズィ)

 

監督賞ロドリゴ・ソロゴジェン『ザ・ビースト』、トロフィー授与は割愛、プレゼンターはジョアン・ペドロ・ロドリゲス審査員。

 

男優賞ドゥニ・メノーシェ『ザ・ビースト』、欠席につきモントリオールからビデオメッセージ、トロフィー授与は割愛、プレゼンターはシム・ウンギョン審査員。

  


         

女優賞アリネ・クッペンハイム1976』(チリ)、欠席につきマヌエラ・マルテッリ監督が受け取り、受賞スピーチをした。クッペンハイムはサンティアゴからビデオメッセージ、プレゼンターは同上。

  

       

  

                (シム・ウンギョン審査員、マヌエラ・マルテッリ監督)

 

芸術貢献賞『孔雀の嘆き』(スリランカ)、サンジーワ・プシュパクマーラ監督、プレゼンターは柳島克己審査員。

    

     

 

観客賞『窓辺にて』(日本)今泉力哉監督、プレゼンターは同上。

   


   

★以上がコンペティション部門7カテゴリーの受賞結果でした。応援していたわけではありませんが、カルロス・ベルムトの4作目『マンティコア』は残念でした。最後にクロージング作品、黒澤明の名作『生きる』の舞台を第二次世界大戦後のイギリスに移した『生きる LIVING(主演ビル・ナイ)の監督オリヴァー・ハーマナスと、脚本を執筆したノーベル賞作家のカズオ・イシグロが〈黒澤愛〉を熱く語って終幕した。

 

★スペイン語映画のブロガーとして『ザ・ビースト』の3冠受賞が嬉しくないはずはありませんが、新進監督の発掘を掲げて始まった映画祭の作品賞が、カンヌ映画祭を皮切りに国際映画祭巡りをして受賞歴のある作品だったことに若干危惧を覚えました。当初の長編3作目までという決りも曖昧になっております。監督はデビュー当時の共同監督2作を含めると6作撮っており、TVシリーズのヒット作を多数手掛け、本国スペインではベテラン監督とまでは言いませんが新人枠ではありません。今回監督の代わりに来日したルイス・サエラがインタビューで「以前はアルモドバル映画に出たがりましたが、今はソロゴジェンです」と応じていた。これはちょっと大袈裟ですが話半分としても人気監督であることは確かです。話題作となった第2作「Stockholm」は、およそ10年前の2013年作品、3作目『ゴッド・セイブ・アス』(16)、5作目『おもかげ』(19)も公開されており、新進監督とは言い難い。

   


   (男優賞受賞のドゥニ・メノーシェ、マリーナ・フォイス、『ザ・ビースト』から)

 

★映画賞ではなく映画祭賞は、個人的にはカンヌFFのように「11賞を基本とすべし」と考えています。とにかく観客賞を入れても7カテゴリーしかないのですから、審査委員長が「心理スリラーの傑作」と最大級の賞賛をしても3冠では引けてしまいます。しかし審査以前の作品選考に問題があるのかもしれません。スペイン語映画のグランプリは1998年のアメナバルの『オープン・ユア・アイズ』2004年のフアン・パブロ・レベージャ他の『ウィスキー』(ウルグアイ)、どちらも長編2作目でした。大きな国際映画祭が終わった10月末開催の映画祭として不利であることを承知しつつも、新人発掘の更なる努力を期待したい。


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