アルトゥーロ・リプスタインの「El diablo entre las piernas」*マラガ映画祭2020 ⑧2020年04月11日 17:20

      アルトゥーロ・リプスタインの「El diablo entre las piernas」はモノクロ映画

 

      

 

アルトゥーロ・リプスタインは、マラガ映画祭2020の特別賞の一つ「レトロスペクティブ賞―マラガ・オイ」の受賞者で来マラガの予定でした。直前に延期が発表になり急遽キャンセルしたのでした。開催なら320日上映になるはずだったのが、最新作El diablo entre las piernasでした。昨年のトロント映画祭2019「マスターズ部門」でワールドプレミアされました。長年連れ添い老境に入った夫婦の憎みあいながら離れない衝撃的な内容の物語、ベテランのアレハンドロ・スアレスシルビア・パスケルが夫婦を演じます。他にメキシコを代表するダニエル・ヒメネス=カチョや若手のグレタ・セルバンテスがクレジットされています。

 

 「El diablo entre las piernasDevil Between the Legs2019

製作:Alebrije Cine y Video S.A. / Oberon Cinematográfica S.A. / Carnaval Films S.A. /

      Fina Films S. de R.L. / Fidecine / Estudios Churubusco

監督:アルトゥーロ・リプスタイン

脚本:パス・アリシア・ガルシアディエゴ

音楽:デビッド・マンスフィールド

撮影:アレハンドロ・カントゥ

編集:マリアナ・ロドリゲス

プロダクション・デザイン:アレハンドロ・ガルシア

メイク&ヘアー:マリ・パス・ロブレス

プロダクション・マネージメント:ロドリゴ・ルイス・デ・チャベス

製作者:モニカ・ロサノ、ミゲル・ネコエチェア、アントニオ・チャバリアス、マルコ・ポロ・コンスタンデセ、(ライン)クラウディア・バルデス

 

データ:製作国メキシコ、スペイン語、2019年、ドラマ、142分(映画祭データ、147分もあり)、撮影地メキシコシティ、配給Wanda Vision S. A.

映画祭・受賞歴:トロント映画祭2019マスターズ部門上映912日、モレリア映画祭2019上映1021日、マラガ映画祭2020セクション・オフィシアル正式出品、他サン・ディエゴ・ラテン映画祭など。

 

キャスト:シルビア・パスケル(ベアトリス)、アレハンドロ・スアレス(夫エル・ビエホ/オールド・マン)、グレタ・セルバンテス(メイドのディノラ)、ダニエル・ヒメネス=カチョ(タンゴ教室のパートナー兼教師)、エランド・ゴンサレス、マル・カレラ、パトリシア・レイェス・スピンドラ(イサベル)、他

 

ストーリー:メキシコシティで老齢期を迎えたベアトリスとエル・ビエホの物語。ホメオパシーの薬剤師を引退したエル・ビエホは、部屋着のままベアトリスを侮辱しながら、家の中をぶらぶらして退屈しのぎをしている。二人は衝突に疲れはて平安な日常とはほど遠いが、彼女はもう他の生き方を諦めてしまっている。互いに依存しあっているからだ。しかし猜疑心の強い夫の非難の矛先に耐えられなくなると、こっそりタンゴ・レッスンに抜け出す。自分より若いタンゴの教師でパートナーに会いに行く。二人の子供たちは既に家を出ており、メイドのディノラがいるだけだった。ある晩のこと、行き先も定めずに或るたった一つの目的をもって外出する。帰宅すると大惨事が起きていた。

   

   4年ぶりスクリーンに戻ってきたアルトゥーロ・リプスタイン――老人の性を語る

 

アルトゥーロ・リプスタイン(メキシコシティ1943)については、本映画祭の特別賞の一つ「レトロスペクティブ賞―マラガ・オイ」の欄のほか、ガルシア・マルケス小説の映画化の記事を紹介したおり、『大佐に手紙は来ない』で少し触れただけでした。話題作としては公開された『ディープ・クリムゾン 深紅の愛』(「Profundo carmesí)と『大佐に手紙は来ない』(「El coronel no tiene quien le escriba」)、ミニ映画祭で上映された『夜の女王』(「La reina de la noche」)など、1990年代の作品が多い。『ディープ・クリムゾン~』はアリエル賞1997では多数のカテゴリーにノミネートされたが自身は受賞を逃した。他にイギリスとの合作映画『フォックストロット』75、西語・英語)が、ピーター・オトゥールやシャーロット・ランプリングを起用したことで公開された。

 

    

      (『ディープ・クリムゾン深紅の愛』のオリジナル・ポスター)

 

1966年のTiempo de morir(モノクロ)がデビュー作、これはガルシア・マルケスの小説『死の時』の映画化でした。他にもコロンビア映画だがマルケスの『大佐に手紙は来ない』を映画化、カンヌ映画祭1999のコンペティション部門にノミネートされている前世紀のメキシコでは珍しいカンヌ映画祭の常連者の一人として、受賞こそありませんが6回もノミネートされている。また脚本家のパス・アリシア・ガルシアディエゴは監督夫人、1986年以来の作品を手掛けている。バジャドリード映画祭2017エスピガ栄誉賞を受賞している。

 

主な監督フィルモグラフィTVシリーズ・短編は割愛)

1966Tiempo de morir デビュー作

1974El Santo oficio カンヌ映画祭コンペティション部門初出品

1986EL imperio de la fortuna ゴールデン・アリエル賞・シルバー・アリエル監督賞受賞

1991La mujer del puerto カンヌ映画祭「ある視点」初出品、グアダラハラ映画祭FIPRESCI受賞

1993Principio y fin サンセバスチャン映画祭金貝賞、グアダラハラ映画祭FIPRESCI受賞

   ゴールデン・アリエル賞受賞

1994La reina de la noche(『夜の女王』メキシコ)カンヌ映画祭コンペティション部門出品

1996Profundo carmesí(『ディープ・クリムゾン 深紅の愛』メキシコ)

   ハバナ映画祭グラン・サンゴ賞・監督賞、トゥリア賞観客賞ほか多数

1998El evangelio de las maravillas カンヌ映画祭「ある視点」出品

1999El coronel no tiene quien le escriba(『大佐に手紙は来ない』コロンビア)

   カンヌ映画祭コンペティション部門出品、東京国際映画祭出品、

   サンダンス映画祭ラテンアメリカ・シネマ賞

2000La perdición de los hombres サンセバスチャン映画祭金貝賞受賞

       Así es la vida... カンヌ映画祭「ある視点」出品

2002La virgen de la lujuria ベネチア映画祭サンマルコ賞スペシャル・メンション他

2005Los héroes y el tiempo (ドキュメンタリー)

2012Las razones del corazón サンセバスチャン、モレリア、アブダビ、ワルシャワ各映画祭出品

2015La calle de la amargura ヒホン映画祭監督賞受賞

2019El diablo entre las piernas

 

レトロスペクティブ賞の記事紹介は、コチラ20200318

ガルシア・マルケス作品映画化の記事は、コチラ20140427

   

      

  (主演者フェルナンド・ルハン、マリサ・パレデス、サルマ・ハエックを配した、

   『大佐に手紙は来ない』のオリジナル・ポスター)

 

★かつてのキャストやスタッフの多くが監督から呼ばれて参加している。上述したように脚本を執筆したのは、監督夫人のパス・アリシア・ガルシアディエゴ1986年のEL imperio de la fortuna以来タッグを組んでいる。本作はフアン・ルルフォが1960年代に映画のプロットとして執筆したEl gallo de oro(「金鶏」)をもとに映画化された。メキシコ映画祭1997で『黄金の鶏』の邦題で上映された。ルルフォは生涯に『燃える平原』と『ペドロ・パラモ』の2作しか書かなかった、というか書く必要がなかったというメキシコを代表する作家。1986年は奇しくもルルフォが鬼籍入りした年であった。

 

      

 (パス・アリシア・ガルシアディエゴ、監督、出演者のダニエル・ヒメネス=カチョ)

 

★音楽を担当したのがアメリカの作曲家デビッド・マンスフィールド、過去には『ディープ・クリムゾン 深紅の愛』や「El evangelio de las maravillas」、『大佐に手紙は来ない』、Así es la vida...などを手掛けている。撮影監督のアレハンドロ・カントゥは、La calle de la amargura15)を本作同様モノクロで撮っている。リプスタイン監督はカラー全盛時代にもモノクロを手放さない監督の一人、そのエレガントな映像の評価は高い。本作にはイサベル役のパトリシア・レイェス・スピンドラが主演している。彼女は『夜の女王』のヒロインでもあるが、La virgen de la lujuriaにも出演している。

 

     

        (本作と関係が深い「La calle de la amargura」のポスター)

  

 

        「大きな挑戦だった」とベアトリス役のシルビア・パスケル

 

★ベアトリスを演じたシルビア・パスケル(ソノラ1949)は、最近ではTVシリーズ出演がもっぱらだが、リプスタイン映画には、パトリシア・レイェス・スピンドラ同様La calle de la amarguraに出演している。モレリア映画祭のプレス会見では「完成した映画を観て、どうやってこんな力強い演技ができたのだろうと思った。詩的で明るくリラックスしている。女優としてこんな体験は二度とないだろう多くのことを学んだ、素晴らしい経験だった。これまでの私の女優人生で一番の映画」と、猜疑心の強い夫による愚弄と侮辱を耐えているタンゴ愛好家の女性を演じたパトリシア・パスケルは語った。

 

   

          (インタビューに応じるシルビア・パスケル)

 

★今回オファーを受けて脚本を読んだが、ヌードになるということで逡巡したという。「撮影中はとてもナーバスになった。女優としてのキャリアは長いが今までヌードになったことはなかった。それでもう若くないし美しくも魅力的でもないとアルトゥーロに言ったのよ。というわけで自分のキャリアを高めるために演じた。とても大きな挑戦だった」と70歳になるシルビア。この映画を観た孫たちがどんな感想を述べるか不安だった。しかし彼女たちは心を動かされ「これは仕事だから」と好意的だった由。シルビア自身もロマンティックで心優しい無垢なベアトリスが好きになったと語っている。

 

      

            (ベアトリスとエル・ビエッホ、映画から)

 

★一方、夫になるアレハンドロ・スアレス(メキシコシティ1941)は、シルビア・パスケルやパトリシア・レイェス・スピンドラと同じくLa calle de la amargura」に出演の他、リプスタイン映画ではLas razones del corazónに出演している。他に最近では70代の老人3人がかつて青春時代を過ごした思い出のアカプルコに出かける、アルフォンソ・セラノ・マトゥリノの少し辛めのコメディAcapulco La vida va17)に出演、善良な老人の一人を演じている。『アカプルコ 人生は続く』の邦題で Netflix で配信されている。

 

   

       (エル・ビエッホ役のアレハンドロ・スアレス、映画から)

 

★ベアトリスのタンゴのパートナーになるダニエル・ヒメネス=カチョは、マドリード生れ(1961)ということもあるのか『バッド・エデュケーション』『ブランカニエベス』のようなスペイン映画出演も多い。リプスタイン映画では、『ディープ・クリムゾン 深紅の愛』の禿げているが鬘をすればハンサムになるジゴロ役でアリエル男優賞を受賞した。『大佐に手紙は来ない』、「La virgen de la lujuria」、に出ている。メキシコの男優としてはガエル・ガルシア・ベルナル以上に認知度が高い。他にアルゼンチン映画ではルクレシア・マルテル『サマ』の主役、サンティアゴ・ミトレ『サミット』では、抜け目のないメキシコ大統領を演じている。

 

    

 (ヒメネス=カチョとコラル看護師役のレジナ・オロスコ、『ディープ・クリムゾン~』から)


ダビ・トゥルエバの新作「A este lado del mundo」*マラガ映画祭2020 ⑦2020年04月07日 17:31

               ダビ・トゥルエバの新作「A este lado del mundo

 

      

 

★スペインから届くニュースは、サンチェス政府の甘い判断による始動の遅れ、続くその対応の悪さによって起こるべくして起こった医療崩壊、命の選別が始まった怒りと諦め、巷は嘆きと涙で溢れ、もはや以前の社会には戻れないかのようです。日本も今の状態が続くなら「明日は我が身」かもしれません。そもそも当ブログは政治経済にはタッチしない立場でしたが、映画を含む文化もこれらと絡みあっていることを身に染みて感じております。カンヌ映画祭以下、各国が開催する2020年の主要映画祭もオールあやしくなってきました。2月下旬から3月上旬にかけてのヨーロッパ諸国の映画賞は何とか開催できたようですが、果たして正しい判断だったのかが問われかねません。小規模の映画祭はプラットフォームをストリーミングに切り替えるなど苦肉の策で切り抜けているところもありますが、それも限界にきているのではないでしょうか。

 

               

                 (ダビ・トゥルエバ監督)

 

★いつ日の目を見ることができるか分からない作品紹介でも、いつかは夜が明けることを信じてアップしていくことにしています。ダビ・トゥルエバの新作A este lado del mundoは長編10作目にあたり、マラガ映画祭のセクション・オフィシアルに出品されました。エンジニアリング会社を解雇されたアルベルトが異文化の世界をめぐるロードムービー。ダビ・トゥルエバは2013年の『「ぼくの戦争」を探して』2018年のCasi 40以来の当ブログ登場です。主役アルベルト役のビト・サンスマテオ・ヒル『熱力学の法則』や、監督の甥にあたるホナス・トゥルエバ8月のエバ』などに出演、トゥルエバ一家の常連の一人です。

     

『「ぼくの戦争」を探して』の作品&監督フィルモグラフィは、コチラ20141121

Casi 40」の作品紹介は、コチラ20180404

『熱力学の法則』の作品紹介は、コチラ20180402

8月のエバ』の作品紹介は、コチラ20190603

 

    

 (義姉クリスティナ・ウエテと監督『「ぼくの戦争」を探して』でゴヤ賞2014作品賞を受賞) 

 

 

 

A este lado del mundoOn the Side of the World2020

製作:Buenavida Producciones / Perdidos G.C.

監督・脚本:ダビ・トゥルエバ

音楽:ハビエル・リモン

撮影:フリオ・セサル・トルトゥエロ

編集:マルタ・ベラスコ

録音:アルバロ・シルバ・Wuth、ダビ・デ・ラ・クルス、(録音編集)サロメ・リモン

製作者:マルガ・ビリャロンガ

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2020年、コメディ・ドラマ、96分、撮影地:モロッコと国境を接するスペインの飛地メリリャ、マドリード、アンダルシアのハエン、他。配給Buenavista Cine

映画祭・受賞歴:マラガ映画祭2020セクション・オフィシアル出品作品

 

キャスト:ビト・サンス(アルベルト)、アンナ・アラルコン(ナゴレ)、オンディナ・マルドナド、ホアキン・ノタリオ、ハンフリ・トペラ、モハメド・ジダン・バリー

 

ストーリー:若いエンジニアのアルベルトの物語。恋人と住む家を買うプランを立てていたアルベルトは、マドリードのエンジニアリング会社から前触れもなく解雇されてしまった。以前の上司からよその土地での仕事を打診されたとき、彼は前進するためにも受け入れるほかなかった。仕事はモロッコと国境を接するスペインの飛地メリリャの町で待っていた。そこでアルベルトはナゴレと知り合うが、彼女の任務は土地に不慣れなアルベルトの案内人であった。ここでは彼は難船者同様だったからだ。世界を揺るがしている複雑な大問題の一つ、それは移民、彼は自分の視座を変えざるを得なくなる。

 

           

            (アルベルト役のビト・サンス、映画から)

 

 

         世界は純粋ではない――世界を見る目を変える難しさ

 

★メリリャはアフリカ大陸にあるスペイン領で、日本の旅行会社も植民地時代の歴史的建造物や城砦が残っていることから、モロッコ観光と組み合わせてツアーが企画されている。しかしここはイベリア半島のスペインとは同じでない。アンナ・アラルコン(バルセロナ1979)が演じたナゴレのような人物が欠かせない。当ブログ初登場だが、ベレン・フネスがゴヤ賞2020 新人監督賞を受賞した「La hija de un ladrón」(19)に出演している。

    

    

        

                      (ナゴレ役のアンナ・アラルコン、映画から)

 

★もう一人の登場人物、2008年民族紛争の激化で父親が犠牲者になり、親族と一緒に故郷ギニア共和国を離れたモハメド・ジダン・バリーが話題になっている。監督によると「ジダンの役は本当に小さい役だし複雑でもないのだが、とても難しく更に重要な役だった。昨年クランクインしたときは、アフリカ難民として入国したばかりで、スペイン語も覚束なかった。ところが凄いスピードで上達していった。劇中でも存在感があった・・・演技の豊かさは彼の個人的な体験にも裏打ちされていた」と驚きを隠さない。現在21歳ということですが、アフリカ中西部の共和国ギニアを出てから彷徨った国は、コートジボワール、ブルキナファソ、ニジェール、アルジェリア、モロッコから、もう一つのスペインの飛地セウタの柵を越えて飛び降りた。どこの国でも黒人は嫌われ5年以上留まることはできなかったという。

 

    

       (モハメド・ジダン・バリーとビト・サンス、映画から)

 

★ジダンはセウタの柵を破って入国、2018年末にマドリード北東部の区オルタレサに辿りついた移民の一人。地区の家族のいない子供たちの施設、30年前に開設されたエル・オリバーで暮らしていた。監督との接点はスペインの主御公現の祝日(16日)に、みどりごイエスに贈り物を持参する東方の三博士の一人バルタサルに扮して馬車に乗ったことだという。良い子も悪い子も博士たちの従者からキャラメルを貰える子供たちには待ち遠しい祝日。オルタレサ地区ではアフリカ出身の若い青年が選ばれるのが恒例だそうです。バルタサルに選ばれた折りに、ジダンがヨーロッパ・プレスに語ったスペイン入国の経緯のニュースをトゥルエバ監督が偶然見た。探していた登場人物にぴったりだった。運命の出会いというわけでした。撮影後、やはりジダンの人生は変わらない。元の宿泊施設に戻って契約社員として働いている。調理師の免許を取って正規の仕事につけることが夢である。

 

★ジダンに拘ったのは、ジダンの物語が本作の主要テーマ、移民と重なるからである。日本では欧米ほど移民や難民問題が表面化していないが、個人的にはそれも時間の問題だと考えている。現在はコロナウイルス撲滅で難民問題どころではなくなっているが、いずれ収束するでしょうが、撲滅はできない。ウイルスも難民も長く付き合っていかねばならない問題でしょう。

 

2018年の「Casi 40」までのフィルモグラフィは紹介済みですが、マラガ映画祭では本作以外に、シンガーソングライターのチチョ・サンチェス・フェルロシオ(マドリード19402003)についてのドキュメンタリーSi me borrara el viento lo que yo canto1989分)も上映予定だった。昨年のサンセバスチャン映画祭でプレミアされていたが、マラガでも上映が予定されていた。映画祭は延期か中止か分かりませんが、音楽ファンには残念なことでした。

 

   

 

★ダビ・トゥルエバは作家として多くの小説を刊行している。最新作は El rio baja sucioシルエラ社)でマラガでも、映画が上映されないのでもっぱら小説のインタビューを受けていた。新作はいわゆる若者向けの小説らしく、意図を訊かれた作家は「サリンジャーの『ライ麦畑で捕まえて』やカポーティの『草の竪琴』、ハーパー・リーの『アラバマ物語』は、若者向けの小説ですが、どの年代の大人も楽しめます」とかわしていた。13歳から18歳まで子供たちは本を読まなくなるとも。大人だけでなく子供の読書離れも万国共通のようです。


パストール兄弟の第3作目『その住人たちは』*マラガ映画祭2020 ⑥2020年03月31日 16:27

           ダビ&アレックス・パストール兄弟の新作Hogar」は心理サスペンス

 

   

 

ダビ&アレックス・パストール兄弟の新作Hogarはサスペンス、第23回マラガ映画祭202013日~22日)コンペティション部門に選ばれている。今回は映画祭が開催されていないのでスクリーンでは観られなかったが、既に326日からNetflix 配信が始まっている。スペインでは珍しくない見栄っ張りな計算高い男の納得いかない成功物語。愚かな登場人物が出たり入ったりして、後半にかけて心がザラザラしてくるが、主人公ハビエル・ムニョスの鬼気迫る眼光に目が離せなくなる。これほどユーモア無しでは観客は救われないが、1980年代から90年代にかけて急速に民主化が行われたスペイン社会の、いささか図式的とはいえ、強い男を強制される社会の病んだ一面を切りとっている。競争社会の敗北者なら主人公の中に「本当はオレもこうしたかった」と夢想する自分を発見するのではないか。批評家と観客の評価が真っ二つに分かれる作品の好例。

 

     

   (左から、アレックス・パストール、ハビエル・グティエレス、ダビ・パストール)

 

 Hogar(「Occupant」)2020

製作:Nostromo Pictures

監督:ダビ・パストール、アレックス・パストール

脚本:アレックス・パストール、ダビ・パストール

撮影:パウ・カステジョン

音楽:ルカス・ビダル

編集:マルティ・ロカ(AMMAC

キャスティング:アンナ・ゴンサレス

衣装デザイン:イランツゥ・カンポス

メイク:ルシア・ソラナ(特殊メイク)

プロダクション・マネージメント:ダビ・クスピネラ

製作者:ヌリア・バルス、マルタ・サンチェス、アドリアン・ゲーラ、(ライン)マグダ・ガルガリョ

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2019年、スリラー・ドラマ、103分、撮影地バルセロナ、配給ネットフリックス(326日配信開始)

映画祭・受賞歴:第23回マラガ映画祭2020セクション・オフィシアル正式出品

 

キャスト:ハビエル・グティエレス(ハビエル・ムニョス)、マリオ・カサス(トマス・ブラスコ)、ルス・ディアス(ハビエルの妻マルガ)、ブルナ・クシ(トマスの妻ララ)、イリス・バリェス・トレス(トマスの娘モニカ)、クリスティアン・ムニョス(ハビエルの息子ダニ)、ダビ・ラミネス(庭師ダミアン)、ダビ・ベルダゲル(広告会社役員ラウル)、ヴィッキー・ルエンゴ(ナタリア)、ダビ・セルバス(広告会社役員ダリオ)、ラウル・フェレ(ダリオの部下ルカス)、ヤネス・カブレラ(家政婦アラセリ)、サンティ・バヨン(受付係)、エルネスト・コリャド(教師)、エリ・イランソ(断酒会指導者アンパロ)、その他断酒会メンバー多数

 

ストーリー:かつては有名な広告会社の役員だったハビエル・ムニョスの物語。1年前から失業しており、家族は豪華なマンション生活を断念しなければならなくなった。もう若くはないハビエルにとって再就職は難しく、もはや自尊心は打ち砕かれていた。ある日のこと、かつてのマンションの鍵を持っていることに気づくと、ある怖ろしい計画を思いつく。失った栄光を取り戻すために新しい住人をスパイし始めるが、次第に新入居者の人生に深く侵入していく。しかしそれは破滅への道でもあったのだが・・・

   

(策略を練る病んだ主人公ハビエル)

   

           

 

            自分は変えられないが、社会は変化していく

 

A: 正義感の強い人には耐えられない映画でしょうか。ハビエルのようなクソ野郎は小型なら世間にごまんといるでしょう。しかし想像するだけで実際にはやらないだけの話です。

B: しかし、脚本が少しザツすぎませんか。格差社会は万国共通ですが、シリアス・ドラマとして人物造形が単純、例えば広告会社面接官の慇懃無礼な態度、応募者を下にみる横柄さ、小市民を隠れ蓑にしている小児性愛者、アルコール依存症患者、断酒会の指導者、夫を信頼できない妻、言葉の暴力、自分を同定できる登場人物が一人も出てこない。

 

A: そうではなく、自分に同定したくない人物ばかりなのです。自分はあれほどワルじゃないしバカじゃないと。ハビエルは社会は変化しているのに自身を変えられないの典型です。過去の栄光を手放せない虚栄心の強い、自分が前世紀に制作したBMWや大手電機会社のコマーシャルに固執している。

B: 現在の自分は、かつて制作したCMあなたにふさわしい暮し」をしていない。「自分にふさわしくない妻や息子」のいる<仮の我が家>が我慢ならない。

 

A: <真の我が家>占拠している新しい住人は、元来ならここにいるべき人間ではなく排除しても許されると。しかし正義を行う相手が間違っていた。「目には目を歯には歯を」から逸脱していることが観客をいらいらさせる。それにしてもユーモアが少し欲しかったですね。

B: 屋外に出られなくなるパンデミックで社会が崩壊した世界を描いた『ラスト・デイズ』でさえありましたからね。

 

A: 他人の人生を乗っ取ろうとする話と言えば、最近話題になっているポン・ジュノの『パラサイト 半地下の家族』ですが、こちらはブラック・コメディ。「観客に大いに笑ってもらおうとして撮った」と監督。前半は笑えますが、後半は恐ろしくて静まり返ります。

B: パラサイトしている家族は、果たして上階に暮らす金持ちか、半地下に暮らす失業者か、そのどちらかが問われている。

 

           アイディアの誕生は旧居の鍵だった!

 

A: 世界の映画祭で高評価を得た短編映画La ruta natural05)の後、2009年に世界終末を描いた『フェーズ6(原題「Carries」)で長編デビューした。しかしこれは監督と脚本を担ったアメリカ映画、2006年に完成していたがリリースされたのは2009年という経緯がある。第2作が2013年に撮ったパニック・スリラーSFLos últimos díasで、スペイン語映画の長編デビュー作でした。本邦では『ラスト・デイズ』の邦題で公開され、『フェーズ6』同様アマゾン・プライムで配信されている。

 

     

               (日本語版ポスター、2013年公開)

 

B: 電気が通じてないのにエスカレーターが動いていたり、マドリード動物園の熊が出てきたり、無理に付け足したような唐突なエンディングなど脚本にアラが目立ったが、『フェーズ6』やホセ・コロナドキム・グティエレスマルタ・エトゥラレティシア・ドレラなど、日本でも少しは知られた俳優を起用できたお蔭で公開された。

A: ガウディ賞受賞作品ということもあったかもしれない。2作とも現在世界を恐怖に陥れている新型コロナウイルス感染症 COVID-19を予見したような内容なので、今見ると当時とは感想が変わるかもしれない。パンデミック物は終りにしたのか、第3作目は人間の心に巣食う闇をテーマに選んだ。しかしプロット運びに観客を納得させない部分が目立ち、相変わらず足を引っ張っている。

 

B: 本作のアイディアの誕生は、ほったらかしにしていた以前住んでいた古い家の鍵を保存していたことだそうです。

A: この鍵で我々が以前住んでいた家に入れると気づいたことでした。それが「元は自分が住んでいたが今は他人が住んでいる家に侵入する」というアイディアに発展した。解雇を切り出された家政婦のアラセリが雇い主のハビエルに鍵を投げつけるシーンを伏線にした。

 

B: このシーンには違和感を覚えたが、試行錯誤の結果だったのかな。新入居者トマスがピーナッツ・アレルギーを口走るシーンも不自然だった。

A: スリラー好きなら直ぐピーンとくるセリフですね。ハビエル・グティエレスマリオ・カサスの一騎打ちをもっと期待していた観客は消化不良を起こしているかも。主人公を怒らせる広告会社の面接官ラウルを演じたダビ・ベルダゲルは、カルラ・シモン『悲しみに、こんにちは』で少女の養父となった叔父を演じた俳優、養母を演じたのが、今回はおバカなトマスの妻ララ役のブルナ・クシでした。

 

    

            (ハビエル・グティエレスとマリオ・カサス)

 

      

   (夫トマスを信じきれない妻を演じたブルナ・クシとモニカ役のイリス・バリェス)

 

B: 表面は夫の失業に理解を示す良き妻を装いながら、その実、夫を優しく責め立てる看視者マルガを演じたのが、ラウル・アレバロ『物静かな男の復讐』でベネチア映画祭女優賞受賞者のルス・ディアスでした。

A: 彼女とマリオ・カサスはサム・フエンテス『オオカミの皮をまとう男』17)で共演している。落とせないのが小児性愛者の庭師ダミアン役のダビ・ラミレス1971年バルセロナ出身、ホセ・コルバチョ&フアン・クルスの『タパス』05)で映画デビューしたが、もっぱらTVシリーズに出演、映画は他に [REC] 312)に出ている。

 

    

          (夫を優しく責め立てるマルガ役のルス・ディアス)

 

 

B: 画面構成には斬新とまでは言えないが、若い監督たちが好きそうなスタイリッシュな、鏡を利用した構図が多用されていた。しかし筋運びとアンバランスの印象を受けた。

A: 監督はプロットで勝負するタイプではないのかもしれない。撮影監督のパウ・カステジョンは、クリスチャン・ベールが主演した『マシニスト』の撮影助手でキャリアをスタートさせ、イギリス、イタリア映画、カタルーニャTVシリーズなどを手掛けている。

 

           批評家と観客の乖離――真っ二つに分かれた評価

 

B: 冒頭シーンに出てくるフリジスマート電機のアメリカンドリームを皮肉ったようなコマーシャルと、計画通りトマスに入れ替わったハビエルの実人生をエンディングでダブらせている。冒頭とエンディングは円環的で、これはスペイン語映画の特徴の一つでした。

A: どちらも子供は女の子で、ハビエルの理想の子供はモニカのような愛らしい少女であって、肥満でイジメられっ子のダニではない。「自分にふさわしくない」息子、洗剤の臭いが残る清掃員のマルガも「自分にふさわしくない」妻として、視界から消去してしまっている。本作では、CMのリード「あなたにふさわしい暮らし」La vida que merecesを受け取るために許される限界はどこまでかが問われている。

 

B: 不愉快な映画と感じた観客はスペインでも結構いて、「今までの人生で見たサイテーの映画、否、チョーサイテー」なんていうコメントもあった。

A: 制裁を加える相手が、自分を愚弄した広告会社の面接官、受講生の面前で恥をかかせた教師、規則規則を連呼する受付係ならまだしも、罪があるとは全然思えないトマスに向かったからでしょう。トマスの不運は、何も知らずにハビエルの<我が家>の占拠者になってしまったことだけでした。

 

B: 批評家と観客の乖離はよくあることで、あっち良ければこっちダメ、こっち良ければあっちダメ、両方揃うのは難しい。

A: 批評家は概ねポジティブな評価です。だからマラガ映画祭のセクション・オフィシアルに選ばれたわけでしょう。映画祭が開催されていればプレス会見の様子も伝わってきたのですが、コロナの猛威は収束の兆しもなく、スペインは政治経済文化オール息をひそめています。

 

B: 最後になりましたが、パストール兄弟の簡単なキャリア紹介。

A: ダビ・パストール1978年バルセロナ生れ、監督、脚本家、コロンビア大学の監督マスターコース卒。アレックス・パストール1981年バルセロナ生れ、監督、脚本家、カタルーニャ映画視聴覚上級学校ESCACで脚本を専攻する。上記に紹介した作品の他、ターセム・シンSFアクション『セルフレス/覚醒した記憶』15米、ライアン・レイノルズ、ベン・キングズレー主演)の脚本を二人で執筆している。これは2011年度ハリウッド優秀脚本リスト入りしていたもの。

 

ハビエル・グティエレスのキャリア&フィルモグラフィは、コチラ20190325

マリオ・カサスのキャリア&フィルモグラフィは、コチラ201903030305


アチェロ・マニャスの十年ぶりの新作*マラガ映画祭2020 ⑤2020年03月26日 14:04

       アチェロ・マニャスの新作はブラック・コメディ「Un mundo normal

 

   

   

★利害が複雑に絡みあってなかなか延期に踏み切れなかったIOCも、どうやら東京オリンピック・パラリンピック延期に舵を切った。安倍総理に下駄を預けたかたちのバッハ会長の狡さが際立った。元来決定権はIOCにあったと考えていたけれど、これじゃ責任転嫁です。中止があり得ないのは、もしそんなことをしたら2028年ロスが最後のオリンピックになってしまう恐れがあるからでしょう。新型コロナウィルスの勢いは増すばかり、ヒト、モノ、カネがストップして世界はマヒ状態、「コロナはアジアの感染症」と高を括っていた、WHOや欧米のリーダーたちの無能ぶりには開いた口が塞がらない。

 

★さて、第7回イベロアメリカ・プラチナ賞2020のノミネーションが発表になっていますが、ガラがいつ開催されるかは未定です。沈黙していたマラガ映画祭事務局も、MAFIZMálaga Festival Industry Zone2020Málaga WIPMálaga Work in Progress)が323日からオンラインでの開催を発表した(320日)。22作が参加するということです。

 

    

       (マラガ映画祭2020記者会見のフォトコール、33日マドリード)

 

★気になる監督、アチェロ・マニャスAchero MañasJuan Antonio Mañas Amyach)は、1966年マドリード生れの監督、脚本家、俳優。父は劇作家アルフレッド・マニャス、母は女優パロマ・ロレナ2014年に自伝 Como un relámpago(仮題「稲妻のように」)を出版している。マドリードの下町カラバンチェロで、文学やアート、演劇に囲まれながら育った。高校では絵画を、1984年に家族でニューヨークに移ってからは、Real Stageの演劇科で1年間演技を学んだ。映画界入りは俳優としてスタート、リドリー・スコットの『1492:コロンブス』(92)、カルロス・サウラの『愛よりも非情』93)、1995年には立て続けに、マヌエル・グティエレス・アラゴンのEl rey del río、アドルフォ・アリスタラインのLa ley de la frontera、そしてフアン・セバスティアン・ボリャインのBelmonteでは、ヘミングウェイを虜にした実在の闘牛士フアン・ベルモンテを演じている。舞台やTVシリーズにも出演しているが、監督デビューしてからは映画出演はない。

  

(アチェロ・マニャス監督)

                         

     

   

             (自伝を手にした母親パロマ・ロレナ)

 

★第4作目となるUn mundo normal20)は、2010年の第3Todo lo que tú quieras以来久々のブラック・コメディです。10年間近く新作を発表しなかったわけで、スペインでも若い人にはよく知られていないかもしれない。2000年に父親の虐待をテーマにしたEl Bolaで鮮烈デビューして、翌年のゴヤ賞では新人監督賞とオリジナル脚本賞の2冠、主役のフアン・ホセ・バジェスタが若干13歳で新人男優賞、更に作品賞にも輝いた。憎まれ役の父親にはマヌエル・モロンが扮した。監督が貰える賞のうち、ASECAN、トゥリア、サンジョルディ、スペイン俳優組合など23賞を獲得した。第2Noviembre03)はトロント映画祭FIPRESCI賞、サンセバスチャン映画祭審査員ユース賞などを受賞している。第2作と3作に母親のパロマ・ロレナが出演している。

 

       

 (第1作El Bola」バジェスタを配したポスター

 


(第2作「Noviembre」)

 

 Un mundo normal2020

製作:Tornasol Films / Last Will Producciones Cinematográficas A.I.E. / Sunday Morning Production S.L.

監督・脚本:アチェロ・マニャス

撮影:ダビ・オメデス

音楽:バネッサ・ガルデ

編集:ホセ・マヌエル・ヒメネス

衣装デザイン:クリスティナ・ロドリゲス

メイク&ヘアー:ビセン・ベティ(ヘアー)、アントニア・ぺレス(メイク)、アントニオ・ナランホ(特殊メイク)

製作者:ヘラルド・エレーロ、ペドロ・パストール、(エグゼクティブ)マリエラ・ベスイエフスキー

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2020年、ブラック・コメディ、103分、撮影地バレンシア州のリィリア、アルプエンテ、アルカセル、他。スペイン公開522日予定

映画祭・受賞歴:マラガ映画祭2020セクション・オフィシアル出品

 

キャスト:エルネスト・アルテリオ(エルネスト)、ガラ・アムヤチ(娘クロエ)、ルス・ディアス(フリア)、パウ・ドゥラ(マックス)、マグイ・ミラ(カロリナ)、オスカル・パストール、アブデラティフ・ウイダルHwidar、ラウラ・マニャス、他

 

ストーリー:エキセントリックな舞台演出家エルネストの物語。母の訃報を受けたエルネストは帰郷する。セメンテリオに向かう途中、母の遺骨をおさめた柩を盗んでしまう。海に散骨することが母の願いだったからである。娘のクロエは世間の慣習に拘らない父親についていけず疲労困憊している。しかし父との旅のなかで、彼の振る舞いが狂気でないことが分かってくる。父が望んでいることは自分自身に誠実なこと、しばしば世間の常識と異なっていることもあるのだ。

   

    

        (霊柩車の運転手を追い出して柩を盗んだ父と揉める娘クロエ)

  

★監督曰く「人はそれぞれ違っている独特な存在。家族との繋がり、そして死による別れがある。私を此の世に連れてきてくれた母へのオマージュ、常識に抵抗するのに必要なのは愛と支えだと気がついた。多くのことが私たちの精神を痛めつけている。そこからフラストレーション、無力感、苛立ち、失望が生み出されている」と。もっと人生は自由であっていいのではないかという提案らしい。もしかしたら母の死が今回の新作の動機の一つだったのかもしれない。

 

    

              (父エルネストと娘クロエ、映画から)

 

★主役のエルネスト・アルテリオ1970)は、ブエノスアイレス出れだが、家族(父エクトル・アルテリオ)と一緒に5歳でスペインに移住している。アレックス・デ・ラ・イグレシアPerfectos desconocidosに、2018年夏別れたフアナ・アコスタと危機に瀕した夫婦役で出演していた。オシドリ夫婦の評判でしたが映画完成後に本当に別れてしまった。キャリア&フィルモグラフィは以下にアップしています。

エルネスト・アルテリオのフィルモグラフィは、コチラ20180711

 

      

                (父エクトルとエルネスト)

 

★娘クロエを演じたガラ・アムヤチは、映画初出演、まだ情報がない。カロリナ役のマグイ・ミラ(バレンシア1944)はTVシリーズ出演が多いが、ソエ・ベリエトゥアEn las estrellas18)に出ている。アレックス・デ・ラ・イグレシアとカロリナ・バングが製作を手掛けているせいか、『パパと見た星』の邦題でNetflixで配信されている。フリア役のルス・ディアス(カンタブリア1975)は、ラウル・アレバロ『物静かな男の復讐』に出演、ベネチア映画祭2016「オリゾンティ部門」の女優賞を受賞している。短編を撮るなど監督デビューもしている。

ルス・ディアスの紹介記事は、コチラ20170109

    

(クロエ役のガラ・アムヤチ)

  

 (エルネストとカロリナ)

        

                      

 (ルス・ディアス)

 

  

★強力な3人のベテラン製作者ヘラルド・エレーロペドロ・パストールマリエラ・ベスイエフスキーは制作会社Tornasol Films に所属している。字幕入りで最近観られた作品のなかで、受賞歴の多いヒット作、『瞳の奥の秘密』、『ゴッド・セイブ・アス~マドリード連続老女強姦事件』、『12年の長い夜』などを手掛けている。

イシアル・ボリャインの新作はコメディ*マラガ映画祭2020 ④2020年03月21日 18:34

           イシアル・ボリャインの新作「La boda de Rosa」はコメディ

 

      

319日、映画祭中止の噂も流れていた第73回カンヌ映画(512日~23日)の正式な<延期>発表がありました。事務局は6月下旬、または7月上旬の線で検討しているようです。マクロン政府により1000人以上の集会が禁止されている現状で開催できるわけがありません。一応スパイク・リーが審査委員長に決定しておりますが、ラインナップは4月中旬の予定、予定はあくまで未定です。先日テキサス州オースティンで開催されるはずだったSXSWサウス・バイ・サウスウェスト映画祭の中止がアナウンスされたばかりでした。中止なら1968年の五月革命の混乱を機に、若いシネアストたちの映画祭ボイコットで中断して以来のことになる。

 

★一方、マラガ映画祭のセクション・オフィシアルにノミネートされているイシアル・ボリャインLa boda de Rosaは、主役ロサ(45歳の設定)にお気に入りのカンデラ・ペーニャ(バルセロナ1973)を配したコメディ。ボリャインは自身の監督デビュー作Hola, ¿estás sola?95、コメディ)に、イマノル・ウリベのシリアス・ドラマ『時間切れの愛』で脇役ながら存在感を発揮したペーニャを起用、、両作ともおよそ実年齢と重なる役柄です。映画祭上映になったTe doy mis ojos03『テイク・マイ・アイズ』)にも主人公の妹役に起用している。新作の脚本はTe doy mis ojos」で共同執筆したアリシア・ルナと今回もタッグを組んだ。撮影地にバレンシアのベニカシムを選び、2018年盛夏にクランクインした。

   

   

       (撮影中のボリャイン監督とロサ役のカンデラ・ペーニャ)

 

 

  La boda de Rosa

製作:Tamdem Films / Turanga Films / Setembro Cine / Halley Production  

   協賛Movistar+、RTVE、バレンシア文化協会

監督:イシアル・ボリャイン

脚本:イシアル・ボリャイン、アリシア・ルナ

撮影:セルジ・ガリャルド、ベアトリス・サストレ

編集:ナチョ・ルイス・カピリャス

音楽:バネッサ・ガルド

キャスティング:デボラ・ボルケ、ミレイア・フアレス

美術:ライア・コレト

衣装デザイン:ジョバンナ・リベス

メイク&ヘアー:アネ・マルティネス(メイク)、アンパロ・サンチェス(ヘアー)

製作者:クリスティナ・スマラガ、リナ・バデネス、フェルナンダ・デル・ニド、アレクサンドラ・レブレト

 

データ:製作国スペイン=フランス、スペイン語、2020年、コメディ・ドラマ、97分、撮影地バレンシア州のベニカシム、アルカサル、コスタ・デル・アサアル海岸、他、スペイン公開73日予定

映画祭・受賞歴:第23回マラガ映画祭2020セクション・オフィシアル出品

 

キャスト:カンデラ・ペーニャ(ロサ)、ナタリア・ポサ、セルジ・ロペス、パウラ・ウセロ、ラモン・バレア(父アントニオ)、ハボ・ヒメネス、マリア・マロト、エリック・フランセス、ルシン・ポベダ、マリア・ホセ・イポリト、パロマ・ビダル(マルガ)、他

 

ストーリー45歳を迎えたロサは、自身が自分のためでなく他の人のために並外れた努力をして生きていることに気づく。そこで自分の生き方を変えようと核のボタンを押そうと一大決心をした。人生の主導権を取ること、自身のビジネスをもつという夢を実現することだ。しかしロサは直ぐに、父親や娘や兄姉たちが別のプランをもっていることを知る。人生を変えるのは容易なことではない。それに家族は厄介だ。ロサとおせっかいでエゴイスト、いささかシュルレアリストだがとても愛情あふれた家族の物語。「家族と上手くやるにはどうしたらいい?」「離れて暮らすことだよ」

 

      

 (左から、ラモン・バレア、セルジ・ロペス、ナタリエ・ポサ、パウラ・ウセロ、映画から)

 

★『オリーブの樹は呼んでいる』(16)以来、久々にコメディのメガホンをとった。Yuli18)、『ザ・ウォーター・ウォー』10)の脚本を手掛けた夫君ポール・ラヴァティは参加せず、前述したように『テイク・マイ・アイズ』のアリシア・ルナとタッグを組んだ。クルーの多くが女性であることが列挙したクレジットから察することができます。ボリャインは長らく女優だったこともあり撮り直しを好まない。監督スタートが遅く、従って作品数も多いほうではない。しかし低予算ながら奇をてらわずに社会に疑問を静かに投げかけている。『オリーブの樹は呼んでいる』がラテンビート2016で上映された折り来日した。監督キャリア&フィルモグラフィは以下にご紹介しています。

監督キャリア&フィルモグラフィについては、コチラ20160719

ラテンビート2016来日の記事については、コチラ20161017

 

      

    (ボリャイン監督とラテンビートのディレクターであるカレロ氏、LB2016Q&A

 

★スペインのジョークに「あなたが家族と上手くやるには離れて暮らすことが最善」というのがある。家族は大切だが厄介でもある。女性ならロサは私の分身と感じる方もいると思う。昨年インスティトゥト・セルバンテス東京で開催された「スペイン映画祭2019」で上映されたネリー・レゲラ『マリアとその家族』16)と重なる部分がある。それぞれ特に悪い人ではないがちょっと迷惑な家族、父親だったり兄弟姉妹だったりする。

『マリアとその家族』の紹介記事は、コチラ20190814

 

★主役のカンデラ・ペーニャの他、ボリャイン映画初出演のナタリエ・ポサ(『さよならが言えなくて』『ジュリエッタ』)、セルジ・ロペス(『パンズラビリンス』『ナイト・トーキョー・デイ』)、ラモン・バレア(『列車旅行のすすめ』『誰もがそれを知っている』)、バレンシア出身で『オリーブの樹は呼んでいる』に出演していたパウラ・ウセロなどのベテランが脇を固めている。撮影は下の写真のように笑いが絶えないのがボリャイン流です。

 

      

                   (撮影の合間に談笑する、監督とカンデラ・ペーニャ)

        

    

         (監督、セルジ・ロペス、横向きがカンデラ・ペーニャ)

 

   

       (ナタリエ・ポサ)

 

  

                 (セルジ・ロペス)

 

★本作の製作者は女性が4人、国際的に活躍している先輩格のクリスティナ・スマラガやアルゼンチン出身のフェルナンダ・デル・ニドはそれなりの認知度がありますが、もう一人のエグゼクティブ・プロデューサーリナ・バデネスは、今までドキュメンタリーを手掛けることが多かったので認知度はこれからの人、最近ドラマを手掛けるようになった。2008年バレンシア工科大学オーディオビジュアル・コミュニケーション科卒、翌年キューバの国際映画テレビ学校で1年間ドキュメンタリーと監督のワークショップに参加、2011年 制作会社 Turanga Films を設立、2012年メディア・ビジネス・スクールのマスター・コースでマネージメントと映画製作を学ぶ。ボリャインが初めてドキュメンタリーに挑戦したEn tierra extrañaをスマラガと共同製作、今回コメディ・ドラマを初めて製作した。将来が期待される女性製作者の一人。

En tierra extraña」の紹介記事は、コチラ20141204

 

  

 

                   (リナ・バデネス)


ビスナガ栄誉賞にハビエル・フェセル監督*マラガ映画祭2020 ③2020年03月18日 11:52

           23回マラガ映画祭のビスナガ特別賞のご紹介

             

       

 

★新型コロナウイリスの蔓延で、全世界の映画祭&映画賞の延期または中止が報道されていますが、マラガ映画祭もその例にもれず今後の動向は皆目分かりません。しかし完成した作品はいずれ近い将来には観客に届くはずです。気を取り直して、まず既に発表になっておりましたマラガの特別賞を列挙しておきます。例年なら授与式にキャリア&フィルモグラフィを紹介してきましたが、今年は取りあえず名前だけアップしておきます。

 

ビスナガ栄誉賞

ハビエル・フェセル(マドリード1964、監督、脚本家)

 

     

201912『だれもが愛しいチャンピオン』が劇場公開された。マラガ映画祭では最新作Historias lamentablesが上映予定。

『だれもが愛しいチャンピオン』と監督紹介は、コチラ2018061220190701

   

     

             (最新作「Historias lamentables」から)

 

 

マラガ・スール賞

ガエル・ガルシア・ベルナル(メキシコ、監督、俳優、製作者)

 

  

*本賞はマラガの最高賞で海岸沿いの遊歩道に手形入りの記念碑を建ててもらえる。カンヌ映画祭2019特別上映枠で上映された、監督第2作目Chicuarotesがコンペティション外で上映予定。

Chicuarotes」の紹介記事は、コチラ20190513

  

               

                        (監督第2作目Chicuarotes」のポスター

 

 

マラガ才能賞-ラ・オピニオン・デ・マラガ

カルロス・マルケス=マルセ(バルセロナ1983、監督)

  

    

*本映画祭でデビュー作10,000 KMが作品賞を受賞、ゴヤ賞2015新人監督賞を受賞している。本映画祭2019ではEls dies que vindranが監督賞を受賞するなどマラガ映画祭の常連監督。

監督キャリア&フィルモグラフィの紹介記事は、コチラ2014041120190411

 

 

 

  

リカルド・フランコ賞

タチアナ・エルナンデス(衣装デザイナー)

 

    

 

*ゴヤ賞2011Lopeで衣装デザイン賞を受賞している。

 

 

レトロスペクティブ賞-マラガ・オイ

アルトゥーロ・リプスタイン(メキシコ・シティ1943、監督)

 

   

*来マラガをキャンセルしたニュースをアップいたしましたが残念でした。セクション・オフィシアルに最新作El diablo entre las piernasが上映予定。字幕入りで鑑賞できた代表作は、カンヌ映画祭に出品された『夜の女王』94)、ベネチア映画祭に正式出品された『ディープ・クリムゾン 深紅の愛』96)など、後者はアリエル賞を独占している。新作はいずれご紹介したい。

   

   

                                 (新作の英語題ポスター)

 

 

ビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞(今年は2人)

キティ・マンベール(マラガ1953)、女優、映画、舞台、TVで活躍

 

     

アルモドバル『神経衰弱ぎりぎりの女たち』『抱擁のかけら』エンリケ・ウルビスTodo por la pastaでゴヤ賞1992の助演女優賞を受賞している。

 

 

オスカル・マルティネス(ブエノスアイレス1949)俳優、作家、舞台演出家

  

 

*公開された作品では、ダミアン・ジフロン『人生スイッチ』14)、ベネチア映画祭に正式出品されたガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン『笑う故郷』16「名誉市民」)で本邦でもお馴染みになった。マルティネスは男優賞を受賞した。

『人生スイッチ』の紹介記事は、コチラ20150729

『笑う故郷』の紹介記事は、コチラ20161013同年1023

     

  
                                                     (『笑う故郷』 のポスター)

ピラール・パロメロのデビュー作*マラガ映画祭2020 ②2020年03月16日 19:14

 ビエンナーレに続いてマラガ映画祭にもノミネートされたピラール・パロメロ

 

      

★マラガ映画祭2020は、延期か中止かまだはっきりしませんが、取りあえずセクション・オフィシアルの中から話題作をご紹介したい。ピラール・パロメロのデビュー作Las niñas20)は、先だって閉幕したばかりのベルリン映画祭2020「ゼネレーションKplus」部門で既にワールド・プレミアされています。当時からマラガのセクション・オフィシアルにノミネートされていることが分かっていたので、アップを見合わせておりましたが、まさかこんなことになるとは思いませんでした。製作者は第67回ビエンナーレの同じセクションのグランプリ、カルラ・シモンの『悲しみに、こんにちは』(17Summer 1993」)を手掛けたバレリー・デルピエールです。

 

    

  (ピラール・パロメロ、マラガFF2020プレス会見、マドリード33日)

 

ピラール・パロメロ Pilar Palomero は、北スペインのアラゴンの州都サラゴサ出身の監督、脚本家。サラゴサ大学スペイン哲学科卒。2013年、ハンガリーの監督タラ・ベーラ(最後の作品『ニーチェの馬』2011)の指導のもと、サラエボでの「フィルム・ファクトリー」映画監督マスター課程に参加する。短編はワルシャワ映画祭、バルセロナのD'A Film Festival、ウエスカFF、マラガFF、釜山短編FFなどで上映されている。2017年ベルリナーレ・タレント養成の一員に選ばれる。2009年短編「Niño balcón」、2016年「La noche de todas las cosas」、2017年「Horta」など。Las niñas」が長編デビュー作。 

 

 

 Las niñas(「School Girls」)

製作:Inicia Films / Bteam Pictures / Las Niñas Mujeres A.I.E

監督・脚本:ピラール・パロメロ

撮影:ダニエラ・カヒアス

音楽:カルロス・ナヤ

編集:ソフィ・エスクデ

製作者:バレリー・デルピエール

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2020年、ドラマ、100分、配給Bteam Pictures、インターナショナル販売Film Factory、スペイン公開202094日予定

映画祭・受賞歴:第70回ベルリン映画祭2020「ゼネレーションKplus」部門ワールド・プレミア、第23回マラガ映画祭2020セクション・オフィシアルに正式出品

 

キャスト:アンドレア・ファンドス(セリア、11)、ナタリア・デ・モリーナ(セリアの母)、ソエ・アルナオ(友人ブリサ)、フリア・シエラ(クリスティナ)、エバ・マガニャ(アリシア)、アイナラ・ニエト(クララ)、エリサ・マルティネス(レイレ)、フランセスカ・ピニョン、他

 

ストーリー1992年サラゴサ、11歳のセリアは母親と二人で暮らしている。サラゴサのある修道会の女子高に通っている。セリアは父親を知らない、そのことが友達の噂の種になっている。最近バルセロナから新しい生徒ブリサが編入してきて、新しい世界が開けてくる。スペインの1992年は、バルセロナ五輪とセビーリャ万博があった年だった。セリアは人生が多くの真実といくつかの嘘から成り立っていることを知ることになる。

 

         

     (11歳の子供の母親役を演じるナタリア・デ・モリーナ)

 

 

  「セリアは私と類似性がありますがフィクションです」とピラール・パロメロ

 

★ベルリナーレのインタビューで「セリアは自分と重なり合う部分がありますが、フィクションで伝記映画ではありません。サラゴサの修道会女子高、ディスコ、トランポリンなどは、私が記憶している部分です。観客がセリアの内部に入り込めるようにエモーショナルな部分をプッシュする筋書にしました。少女時代から思春期のとば口に少しばかり入りかけた女の子の物語です」と語っていた。セリアは父親がいないことで学校では汚名を着せられる。スペインの1992年は、オリンピックと万博という二大イベントがあった年で、大きな変化があった。

 

               

         (トランポリンに興じるセリアと友人、映画から)

 

★「当時の女の子が受けていた教育や時代がどのようなものだったか、変えねばならないのは何かについて、映画を観た人が議論してほしい」、現在でもスペインでは男女間の不平等が存在している。「それは多くは表面化していないが、セリアに強いられた従順さ、将来は良妻賢母というメッセージが残響している」と監督。脚本を書き上げたときに、ここには男性の登場人物が多くなかったことに気づいた。「周囲には父親、弟、二人の従兄弟以外、男の子の友達は一人もいなかったからです」と、少女時代の不自然な環境に触れている。2013年、サラエボで体験したタラ・ベーラの教育プロジェクトに参加したことが、大きな転換となった。そこで「映画を撮ろうと自分の方向が決まったのです」と。

 

  

  

(女友達だけで完結していたセリアの狭い世界)

 

★現在スペインはイタリアに次ぐ新型コロナウイルスの蔓延で、政治も経済も麻痺状態、勿論映画館はオール閉鎖されました。感染者約7900人、死者288人からまた増えて295人と発表されましたが、今後も増え続けるのは必至です。パンデミックはアメリカを含むヨーロッパに中心が移ったようです。欧米諸国のリーダーたちの危機管理の甘さが問われることになる。


追加情報『スクールガールズ』の邦題で劇場公開決定

     東京は2021年09月17日から、新宿シネマカリテにて

   

第23回マラガ映画祭2020の延期が発表になりました ①2020年03月12日 19:20

          第23映画2020延期がアナウンスされました!

 

     

             (第23回マラガ映画2020のポスター)

 

310日(火)、既にレッドカーペットも敷かれ準備万端整った段階で、マラガ市議会が新型コロナウイルスを理由に映画祭延期を発表しました。1週間前の33日にはセクション・オフィシアルにノミネートされた製作者や監督、映画祭関係者がマドリードに集まって記者会見をしたばかりでしたが、危惧した通りになってしまいました。延期の日程は当然ながら不明のわけで、中止も視野に入っているのかもしれません。チケットの払い戻しには応じるようですが、そうなると経済的には大打撃です。昨年の観客数15万人が消えるわけですから、観光収入が大きいマラガ市の損失は計り知れない。リーマンショックどころの話ではなくなりました。

 

    

       (マラガ映画祭開催についてのプレス会見、マドリード、33日)

 

  

           (メイン会場となるセルバンテス劇場前)

 

★映画祭だけでなく、観光の目玉であるマドリードの三代美術館(プラド、ソフィア王妃芸術センター、ティッセン・ボルミネッサ)以下、国立考古学博物館、王宮も閉鎖されて文字通りSFの世界になってしまいました。21億円の資金提供を受けた国に遠慮していたWHOがやっとパンデミックを宣言しましたが、何を今更と怒りを禁じえない。もう誰もWHOの言うことなど信頼しないでしょう。日本も同じですが、一人一人がやりたいことを少しずつ我慢して、ウイルスが終息するまで我慢の子に徹するしかありません。

 

★マラガ特別賞の一つ「レトロスペクティブ―マラガ・オイ」受賞のためマラガ入りするはずだった、メキシコの監督アルトゥーロ・リプスタインが渡西をキャンセルしました。昨年はセシリア・ロスが受賞した賞でした。セクション・オフィシアルには、イシアル・ボリャインLa boda de Rosaダビ・トゥルエバA este lado del mundo10年ぶりに新作を発表するアチェロ・マニャスUn mundo normalダビ・イルンダインUno para todosなどがノミネーションされています。中止でなく延期を願ってご紹介するつもりです。

 

    

   (イシアル・ボリャインの「La boda de Rosa」の製作者クリスティナ・スマラガ)

 

    

           (「Un mundo normal」のアチェロ・マニャス監督)

 

   

          (「A este lado del mundo」のダビ・トゥルエバ監督)

 

     

           (「Uno para todos」のダビ・イルンダイン監督)

  

 

★ベルリン映画祭は滑り込みセーフ、あと1週間遅かったら開催できなかったかもしれない。EU域内では最も中国と関係が深いと言われるイタリアはゴーストタウンと化し、フランスも感染者が増加、文化イベントの中止、教育機関は幼稚園から大学までオール閉鎖となりましたので、カンヌ映画祭も雲行きが怪しくなってきました。