『モルタデロとフィレモン』のハビエル・フェセル*「Campeones」が大ヒット ― 2018年06月12日 16:24
主人公は知的障害をもつ10人のバスケットボール選手たち
★『モルタデロとフィレモン』のハビエル・フェセルが、「Campeones」で長編コメディに戻ってきました。主人公は初出演の10人の知的障害者と、『マーシュランド』や「El autor」で、ゴヤ賞の主演男優賞を2回受賞したハビエル・グティエレス、本作の演技で3回目の受賞も夢ではない。4月6日の封切り以来、9週目にして興行成績1600万ユーロ、観客動員数は既に270万人を突破、今なお快進撃を続行中。この記録を超えるのは、2014年公開されたエミリオ・マルティネス=ラサロの大ヒット作「オーチョ・アペジードス・バスコス」だけということで、公開以来トップ3をキープしている。
「Campeones」(「Champions」)2018
製作:Morena Films / Movistar+ / Pelicula Pendelton)/ RTVE / ICO / ICAA (以上スペイン)
/ Realizaciones Sol S.A.(メキシコ)
監督:ハビエル・フェセル
脚本:ダビ・マルケス、ハビエル・フェセル
撮影:チェチュ・グラフ
編集:ロベルト・ボラド、ハビエル・フェセル
音楽:ラファエル・アルナウ、歌曲「Este es el momento」演奏Coque Malla
キャスティング:ホルヘ・ガレオン
美術:ハビエル・フェルナンデス
衣装デザイン:アナ・マルティネス・フェセル
メイクアップ&ヘアー:エリ・アダネス(チーフ)、ペドロ・ラウル・デ・ディエゴ(特殊メイク)、リュイス・ソリアノ(ヘアー)
製作者:ルイス・マンソ、アルバロ・ロンゴリア、ガブリエル・アリアス=サルガド
データ:製作国スペイン=メキシコ、スペイン語・不明言語、2018年、コメディ・ドラマ、124分&118分、製作資金約450万ユーロ、撮影地マドリード、ウエルバ、撮影期間;2017年4月10日~7月6日、配給元ユニバーサル・ピクチャー(スペイン)、公開マドリード限定4月3日、スペイン公開4月6日、メキシコ5月18日、フランス6月6日、ドイツ7月26日、他
キャスト:ハビエル・グティエレス(マルコ・モンテス)、フアン・マルガージョ(フリオ)、アテネア・マタ(マルコの妻ソニア)、ルイサ・ガバサ(マルコの母アンパロ)、ラウラ・バルバ(裁判官)、ダニエル・フレイレ(カラスコサ)、ルイス・ベルメホ(ソニアの同僚)、(他「ロス・アミーゴス」の選手として)セルヒオ・オルモ、フリオ・フェルナンデス、ヘスス・ラゴ、ホセ・デ・ルナ、グロリア・ラモス、フラン・フエンテス、ヘスス・ビダル、ステファン・ロペス、アルベルト・ニエト・フェランデス、ロベルト・チンチジャ、ほか決勝戦対戦チーム「ロス・エナノス」の選手多数、ハビエル・フェセルも新聞記者役で出演している。
物語:マルコ・モンテスはスペイン・バスケット・ナショナルリーグのチームABCの副監督である。マナーが悪く横柄なことから他のコーチとは上手くいってない。プロとしてのキャリアも人間的にも多くの問題を抱えこんでお先真っ暗である。むしゃくしゃして飲酒運転、あげくの果てに事故ってしまい解雇されてしまった。裁判官は懲らしめの罰金として2年間の服役か、または90日間の奉仕活動「ロス・アミーゴス」という知的障害者のバスケットボール・チームの監督のどちらかを選択するよう言い渡した。後者を選んだマルコにとってこんな罰則は好みではなかったが、やがてこの奇妙なチームの面々から、学ぶべき事柄の多さに気づいていく。彼らの病気のイメージからは程遠い、率直で独立心の強い、肩ひじ張らずに生きていく姿に我が人生を見つめ直していく。
「フツウ」の定義、「幸せ」の定義、誰が決めるの?
★ハビエル・フェセルと言えば『モルタデロとフィレモン』(03)、古くからのファンなら『ミラクル・ぺティント』(98)、あるいは未公開ながらラテンビート上映の『カミーノ』(08)、短編ドキュメンタリー『ビンタと素晴らしきアイディア』(04)が、スペイン新進作家5人のオムニバス映画「En el mundo a cada rato」(邦題『世界でいつも・・・』ユニセフ制作)に採用され上映されました。『カミーノ』はゴヤ賞2009の作品・監督・脚本賞以下6冠制覇の話題作でした。ラテンビート上映時に来日、Q&Aでの飾らない人柄から多くのファンを獲得しました。1985年暮に14歳という短い生涯を閉じたアレクシア・ゴンサレス=バロスの実話にインスピレーションを受けて製作されたフィクションでしたが、家族が敬虔なオプス・デイの信者だったことから、後々訴訟問題に発展、監督は長らく長編から遠ざかっておりました。
★2014年アニメーション「Mortadelo y Filemon contra Jimmy el Cachondo」以外は、すべて短編(11作)で、うち「Bienvenidos」(28分)がアルカラ・デ・エナレス短編映画祭2015の観客賞を受賞、ほか国際映画祭での受賞が相次ぎました。もう長編ドラマは撮らないのかと気になっていたところでした。『カミーノ』から10年の歳月が流れた昨年11月に、監督がTV番組に宣伝を兼ねて出演、「3月公開」をアナウンスしました。ファンが心待ちにしていた結果が、この興行成績にストレートに出ているようです。コメディ「Campeones」は、上記したように目下快進撃を続けています。映画祭、DVD、あるいは公開を期待しても良さそうです。
(新作をプレゼンするフェセル監督とグティエレス)
★予告編からも充分面白さが伝わってきますが、本作のテーマの一つが、「フツウ」の定義、「幸せ」の定義、障害を大いに楽しもうという視点が観客を虜にしている。エル・パイスによると、成功の秘密は3つあるという。一番目は、スペインで興行成績がよい映画は民放テレビ局がお膳立てした映画が多いが、本作は該当しない。二番目は、知名度のある俳優はマルコ・モンテス役のハビエル・グティエレス唯一人、それ以外は知的障害のあるアマチュアたち、三番目は、テーマの切り取り方、人間的にもコーチとしても、社会的信用が失墜したダメ男マルコが主人公、ハビエル・グティエレスの魅力が大きいようです。7歳以下は保護者同伴だが、なかには子供に分からないジョークもある由、しかし全く問題ではないそうで、子供たちは楽しんでいると家族連れは口を揃える。
(チャンピオンの表彰台に立つ監督&選手一同)
(ロス・アミーゴスの選手に演技を指示するフェセル監督)
★フェセル監督曰く「私たちはキャスト選定の段階で、実際の知的障害者を起用すべきか、あるいは役者に演じてもらうほうがよいか事前に決めていなかった。しかしオーディション初日に、彼らが発する誠実さと信頼性に出会ってしまった」ので彼らに出演依頼をしたようです。「私は根っからの楽観主義者なんだ、それに最初から登場人物たちの能力が観客と繋がっていると信仰のように確信していたんですよ」「私は若者たちのエモーショナルな知性や人生を大いに楽しんじゃおうという考え方に魅了された」「何が何だか分からない感情に満たされ泣いたり笑ったりしているうちに、幸せな2時間が過ぎてしまう」エトセトラ、ということです。笑う門には福来る、つかの間の幸せでも充分ですから浸りたい。
(ハビエル・グティエレスと「ロス・アミーゴス」)
★まだ先の話ですが、2009年『カミーノ』を上映してくれたラテンビートが今年15周年を迎えるそうです。アグスティン・アルモドバルをゲストに開催された第1回、当初は「ヒスパニックビート」でした。2回目が開催されるかどうか危ぶみましたが、どっこい15年間続いているのでした。ということで今年の目玉に「チャンピオンズ」は打ってつけではないでしょうか。他に2018年興行成績トップ3の一つ、アレックス・デ・ラ・イグレシアのシリアス・コメディ「Perfectos desconocidos」もスクリーンで鑑賞したい。
*劇場公開映画*
◎ミシェル・フランコの「Las hijas de Abril」が『母という名の女』の邦題でスケジュールが決定しました。劇場は『父の秘密』や『ある終焉』を公開したユーロスペース、2018年6月16日(土)~です。カンヌ映画祭2017「ある視点」部門の審査員賞受賞作品。
◎カルラ・シモンのデビュー作「Verano 1993」が『悲しみに、こんにちは』の邦題で、同じユーロスペースで7月下旬公開です(日時は未定)。以前ラテンビートで『夏、1993』として上映予定だった映画です。まったくの的外れとまで言わないが、どうしてこんな陳腐な邦題にしたのか理解に苦しむ。ゴヤ賞2018新人監督賞受賞作品。
*「Perfectos desconocidos」の紹介記事は、コチラ⇒2017年12月17日
*「Las hijas de Abril」の紹介記事は、コチラ⇒2017年05月08日
*「El verano 1993」の主な紹介記事は、コチラ⇒2017年02月22日
「監督週間」にロマのレスビアンの愛を語った映画*カンヌ映画祭2018 ④ ― 2018年05月13日 16:19
アランチャ・エチェバリアのデビュー作「Carmen y Lola」
★「ある視点」は後回しにして、ビルバオ生れの新人アランチャ・エチェバリアのデビュー作「Carmen y Lola」について。女性同士の愛が禁じられているロマ社会で、偏見や差別、家族の無理解と闘って愛を貫徹しようとする十代の娘カルメンとロラの物語。エチェバリア監督談によると、本作は2009年スペインでロマ女性の同性婚第1号となったロサリオとサラのニュースにインスパイアーされて製作したということです。実在の二人はロマの居住が多いグラナダ出身ですが、映画はマドリードの町外れに舞台を移している。スペインでは、2005年同性婚が正式に認められるようになった。「ある視点」でも、ケニアの女性監督ワヌリ・カヒウWanuri Kahiuが首都ナイロビを舞台にして撮った長編デビュー作「Rafiki / Friend」が、レズビアンの愛をテーマにしている。ケニアでは現在でもケニアの法律や文化、またモラルに反するとして、同性愛は御法度で14年間の禁固刑が科せられる。今作はホモセクシュアルなシーンを理由に本国では上映禁止になった。
「Carmen y Lola」2018
製作:TvTec Servicios Audiovisuales
協賛:ICAA、教育文化スポーツ省、マドリード市、Orange Spain Film madrid
監督・脚本:アランチャ・エチェバリア
音楽:ニナ・アランダ
撮影:ピラール・サンチェス・ディアス
編集:レナート・サンフアン
キャスティング:ディエゴ・ベタンコル、クリスティナ・モレノ
衣装デザイン:テレサ・モラ
メイクアップ:ソレ・パディリャ、グロリア・ピナル
製作者:アランチャ・エチェバリア、ピラール・サンチェス・ディアス
データ:スペイン、スペイン語、2018年、90分、撮影地マドリード、サンタンデール(カンタブリア州)、製作費約700,000ユーロ。脚本はSGAE基金(作家編集者協会)が設立したフリオ・アレハンドロ賞の特別メンションを受賞。カンヌ映画祭2018併催の「監督週間」正式出品作品、初監督作品に与えられるカメラ・ドール賞の対象作品に選ばれている。
キャスト:サイラ・ロメロ(ロラ)、ロシー・ロドリゲス(カルメン)、モレノ・ボルハ(ロラの父パコ)、ラファエラ・レオン(ロラの母フロール)、カロリナ・ジュステ(パキ)、他
物語:カルメンは、マドリードの町外れに住んでいるロマの娘である。他の女の子たち同様、結婚して、できるだけ沢山の子供を産み育てるという、なん世代にも亘って繰り返されてきた人生を運命づけられている。美容師になりたいが、父親も恋人も、彼女の仕事には関心がない。17歳になればどうせ結婚するのだから。ロラは16歳、他のロマの娘とは一風変わっていて、大学に行くことが夢である。内気なロラは時々壁や塀に小鳩のグラフィティをして周りを驚かせている。男の子には興味がなく、ネットで女性同士がキスをしているのを見ると慌ててしまう。野菜の露天商を営む父親は娘が地域の合唱団で歌っているのを誇りに思い、字の読めない母親は娘が学校に通っていることを誇りにしている。そんな二人がある日、雨の降り出した市場で偶然運命の出会いをしてしまった。カルメンはロラに抗しがたい魅力を感じ、ロラも不思議な感情を抱く。ロマ社会の偏見や差別、家族の口出しにもかかわらず二人は急速に惹かれあっていく。
(一目で惹かれあうカルメンとロラ)
★プロフェッショナルな俳優は、パキを演じたカロリナ・ジュステ唯一人だそうで、他はオーディションに押し掛けた1000人ほどのアマチュアから、エキストラを含めて約150人を選んだ。大変な作業で6か月もかかり、特にカルメン役の人選に難航した。もう半ば諦めかけたときにロシー・ロドリゲスが現れ、彼女のエントリーナンバーはなんと897番だった。結婚しても6か月後に夫を見捨てるという、ロマ・コミュニティに見られる典型的な「不幸な結婚」の一例を演じる。サイラ・ロメロが扮したロラは16歳、ロマとロマでない両親の娘という設定、父親が営む野菜の露天商を手伝っている。恥ずかしがり屋で目立つのが好きではないが、カルメンと出会うことで心を急速に解放していく。
(カルメン役のロシー・ロドリゲス)
(壁に小鳩のグラフィティをして心を発散させるロラ)
★冒頭で触れたように監督の肩を押したのは、2009年の「ロマ女性の同性婚第1号」というグラナダ・ニュースを聞いたことによる。二人は顔写真なしの仮名を条件に新聞社の取材に応じた。だからロサリオもサラも本名ではない。周囲からも家族からもロマ・コミュニティからも追い出され、闘いはまるでボクシングの試合のようだったという。いわゆる「村八分」以上の扱いを受けたが、二人の決心は揺るがなかった。ロマの女性であることは、家父長制が敷かれたマチスモが常識である社会では、そもそも女性の同性婚など存在すべきではないということです。ロサリオとサラの話は遠い前世紀のことではなく、ついこの間の話なのである。今もってスペインのロマの女性は、用箪笥ではなく金庫室に閉じ込められているから、容易なことではカミングアウトできない。
(本作撮影中の左から、母親、父親、弟、ロラ)
★エチェバリア監督が「カルメンとロラ」で語りたいのは、二人が愛を育むなかで自分たちの視野を広げ、それぞれの視点を世界に向けること、ロマの女性たちの声を世界に届けることのようです。監督にとって重要なことは、現代的な素材を使ってクラシックな表現形式に生気を吹き込むことにある。かつてのパルム・ドール受賞作品、ダルデンヌ兄弟の『ロゼッタ』や『ある子供』、またはジャック・オーディアールの『ディーパンの闘い』のように、現実を操らないで語ることを目指して。最も以上の3作は、受賞発表時には会場からブーイングと称賛が同時に起きたのでした。
★アランチャ・エチェバリア Arantxa Echevarria は、1968年ビルバオ生れの監督、脚本家、製作者。マドリードのコンプルテンセ大学で映像科学を学び、同大学でオーディオビジュアル演出を専攻した。その後オーストラリアのシドニー・コミュニティ・カレッジで映画製作を学んだ。1991年から広告宣伝と映画を両立させながら、オーディオビジュアル産業のプロフェッショナルなキャリアを出発させる。
(本作撮影中のアランチャ・エチェバリア監督)
★2010年、短編デビュー作となる「Panchito」は、アマチュアだけを起用して撮ったコメディ。同2010年、国営テレビの要請でDocumentos TVのルポルタージュ「Cuestión de pelotas」、を撮る。これは女性サッカー・クラブReal Federación Española de Fútbolについてのドキュメンタリー。2013年、短編サイコ・スリラー「De noche y de pronto」を監督、翌年ゴヤ賞2014短編映画部門にノミネートされた。2016年、短編「El último bus」が、メディナ・デル・カンポ映画祭の作品賞を受賞した。2017年、ドキュメンタリー「7 from Etheria」は、7人の共同監督作品(製作は米国)。2018年、長編デビュー作「Carmen y Lola」が監督週間にノミネートされた。
(サイコ・スリラー「De noche y de pronto」のポスター)
アスガー・ファルハディの「エブリバディ・ノウズ」*カンヌ映画祭2018 ③ ― 2018年05月08日 17:53
イランの監督が撮っても「Everybody Knows」はスペイン映画です
(ジャン=リュック・ゴダールの『気狂いピエロ』を採用した第71回カンヌ映画祭ポスター)
★「批評家週間」にはポルトガル映画だけでスペイン語映画はノミネートなしです。コンペティションのオープニング作品「Everybody Knows」は、イランの監督アスガー・ファルハディがスペインの大物俳優を起用して、言語はスペイン語、スペイン、フランス、イタリアが製作国になって約10,000,000ユーロで製作、スペイン語題は「Todos lo saben」です。アカデミー外国語映画賞2冠の監督がスペイン語で撮るということで、2016年の製作発表時から鳴り物入りで逐一報道され話題を提供してきた。監督はカンヌ映画祭の常連でもあるからノミネーションは確実視されていたが、オープニング作品とは驚きました。ジャン=リュック・ゴダールの「The Image Book」を差し置いて選ばれたわけですから。今年のカンヌ映画祭ポスターは彼の『気狂いピエロ』です。スペイン映画が選ばれるのは、2009年アルモドバルの『バッド・エデュケーション』以来だそうです。
★カンヌ映画祭は英語題が基本ですが、一応スペイン映画なので西語タイトルにします(IMDbを採用)。まだ日本語データが揃っておりませんので、情報源は西語、英語のウイキペディアです。IMDbではペネロペ・クルスが扮するヒロインの名前が、キャスト欄ではラウラ、ストーリーラインではカロリナとチグハグですが、ウイキペディアと予告編を見る限りではラウラなのでこちらを採用します。
(スペイン語タイトル採用のポスター)
「Todos lo saben」(「Everybody Knows」)2018
製作:Memento Films(仏)/ Morena Films(西)/ Lucky Red(伊)/ El Deseo / France 3 Cinéma
監督・脚本:アスガーファルハディ(イラン)
撮影:ホセ・ルイス・アルカイネ(スペイン)
音楽:アルベルト・イグレシアス(スペイン)
編集:ハイデー・サフィヤリ(イラン、『別離』『セールスマン』)
衣装デザイン:ソニア・グランデ(スペイン、『アザーズ』『ミッドナイト・イン・パリ』)
メイクアップ:アナ・ロサノ、マリロ・オスナ
プロダクション・デザイン美術:マリア・クララ・ノタリ
プロダクション・マネージメント:アルバロ・サンチェス・ブストス
製作者:アレバロ・ロンゴリア(スペイン)、アレクサンドル・マレ=ギ(フランス)、アンドレア・オキピンティ(イタリア)、他
データ:製作国スペイン=フランス=イタリア、スペイン語、2018年、スリラードラマ、130分、撮影地マドリード北方トーレラグナ、グアダラハラ、撮影期間2017年8月21日クランクイン、12月まで。カンヌ映画祭2018オープニング作品。
キャスト:ペネロペ・クルス(ラウラ)、ハビエル・バルデム(ラウラの元恋人パコ)、リカルド・ダリン(ラウラの夫アレハンドロ)、バルバラ・レニー(パコの妻ベア)、インマ・クエスタ(ラウラの妹アナ)、エルビラ・ミンゲス(ラウラの姉マリアナ)、エドゥアルド・フェルナンデス(マリアナの夫フェルナンド)、ハイメ・ロレンソ、ロジェール・カザマジョール(アナの花婿ジョアン)、ラモン・バレア(ラウラの父)、サラ・サラモ(マリアナの娘ロシオ)、カルラ・カンプラ(ラウラの娘イレネ)、ホセ・アンヘル・エヒド(フェルナンドの友人、元警官ホルヘ)セルヒオ・カステジャーノス、ネイジャ・ロハス、パコ・パストル・ゴメス(ガブリエル)他
物語:ブエノスアイレスに住んでいるラウラは、妹の結婚式に出席するため家族を連れて、生れ故郷であるマドリード北方の小さな町に帰郷する。ラウラの元恋人であるパコとその妻ベアも出席するという。しかし、ラウラの娘イレネの失踪事件を切っかけに予期せぬ突発事件が起き、巻き込まれた全員の人生を徹底的に変えてしまうことになる。過去の秘密が次第に明らかになっていく。
★本作の舞台となる小さな町は、マドリード北方に位置するトーレラグナという、現在人口5000人に満たない町です。町中央の広場プラサ・マジョールに面して「サンタ・マリア・マグダレナ教会」があり、映画にも出てくる教会はここではないかと思います。他には市民戦争で破壊された建造物が文化遺産としてそのまま残されているようです。こんな小さな町で事件が起きればどうなるか? 秘密は誰も口にしないだけで「エブリバディ・ノウズ」である。作中のセリフ「Todos lo saben」がタイトルになっている。
(再会した元恋人、ラウラとパコ)
★ヒロイン役のペネロペ・クルス、ゴヤ賞2018で主演女優賞にノミネートされて来マドリードしていたとき、本作の撮影中のエピソードを語っていた。「ファルハディ(監督)から、私を主役にした脚本を書いている、という電話を貰ったの・・・アスガーは感性がとても特別な監督で、例えば私がパニックの発作を起こして救急車に乗るシーンがあった。撮影が済んで救急車から下りてくると私を抱きしめて、別のシーンも撮りたいと頼むの。やり直すとそれが気に入った。私のキャリアの中でも非常に難しい登場人物でした」。気に入らないと不機嫌になって怒鳴る監督もいるからね。ハビエル・バルデムとの結婚10周年を迎えたクルス、7歳と4歳の子供の母親、親しい友人たちは「女優として女性として、今が最も充実している」と口を揃える。間もなく開幕するカンヌ初日、最も輝く女性は彼女でしょう。
(44歳になったペネロペ・クルス)
★アスガー・ファルハディフィルモグラフィーは、劇場公開作品では2009年『彼女が消えた浜辺』、2011年『別離』、2013年『ある過去の行方』、2016年『セールスマン』の4作でしょうか。タイトルがネタバレしていて頂けないが、個人的には最初の『彼女が~』には衝撃を受けた。厳しい検閲を掻い潜ってイランでもこんな素晴らしい映画が撮れるのだという驚きでした。アカデミー外国語映画賞を受賞した『別離』や『セールスマン』も悪くないが、『彼女が~』ほどではなかった。家庭のもめごとを軸にして、社会全体の闇を炙り出すテーマが大好きな監督、今度はスペインの何が炙り出されるのでしょうか。
(本作撮影中のアスガー・ファルハディ監督)
★主なキャスト以外では、リカルド・ダリン(『サミット』『瞳の奥の秘密』、)バルバラ・レニー(『マジカル・ガール』『家族のように』)、ラウラの妹役インマ・クエスタ(『スリーピング・ボイス 沈黙の叫び』『ブランカニエベス』)、その結婚相手になるロジェール・カザマジョール(『パンズ・ラビリンス』『ブラック・ブレッド』)、エドゥアルド・フェルナンデス(『スモーク・アンド・ミラーズ』『エル・ニーニョ』)、ハイメ・ロレンテ(Netflix配信TVシリーズ『ペーパー・ハウス』)、エルビラ・ミンゲス(『暴走車 ランナウェイ・カー』『時間切れの愛』)、ブドウ栽培をしているラウラの父役ラモン・バレア(『ブランカニエベス』Netflix配信『となりのテロリスト』)など、演技派のベテラン、新人を取り揃えています。
(ラウラと夫アレハンドロ)
(パコと妻ベア、後ろ向きのバルバラ・レニーで残念)
(ラウラと妹アナ役のインマ・クエスタ)
★フランスのプロデューサーのアレクサンドル・マレ=ギは、『ある過去の行方』と『セールスマン』を手掛けており、俳優としても活躍中のミラノ出身のアンドレア・オキピンティは、『イル・ディーヴォ』、『少年と自転車』、『海を飛ぶ夢』など。アルバロ・ロンゴリアは、フリオ・メデム映画を手掛ている製作者で、クルスが乳がん患者を演じた『あなたのママになるために』(「Ma ma」)、『ローマの部屋』、『セブン・デイズ・イン・ハバナ』、古くはサウラの『イベリア』などをプロデュースしている。撮影監督ホセ・ルイス・アルカイネは、サウラ、今は亡きビガス・ルナ、アルモドバルを撮っているベテラン、音楽のアルベルト・イグレシアスは毎年ゴヤ賞にノミネートされ、ゴヤ胸像のコレクター、やはりお金が掛かっているなぁという印象です。
(左から、バルデム、ファルハディ監督、ダリン、フェルナンデス)
*追記:『誰もがそれを知っている』の邦題で、2019年6月01日から公開
エステバン・アレンダ兄弟のデビュー作「Sin fin」*マラガ映画祭2018 ⑭ ― 2018年04月21日 17:24
現在、過去、そして未来を飛び越えて旅するSFトーンのロマンス
★4月19日、セサル・エステバン・アレンダ&ホセ・エステバン・アレンダ兄弟の長編デビュー作「Sin fin」が上映されました。父親は映画プロデューサーで配給を手掛けるホセ・エステバン・アレンダ(息子と同名)、1983年、スペインに初めてアカデミー賞外国語映画賞をもたらしたホセ・ルイス・ガルシの『黄昏の恋』のプロデューサーとして知られている。兄弟二人は子供のころから、この父親の影響を受けて育った。既に短編では国際的に多くの受賞歴の持ち主です。ストーリーが時間を飛び越えて進むので、不自然にならないよう編集に多くの時間を割いた、とプレス会見で語っていた。主人公ハビエルとマリアの愛と失われた愛の物語。2014年、兄弟二人で撮った同じタイトルの短編がもとになっており、主役の二人も同じハビエル・レイとマリア・レオンが演じている。
(右がセサル、左がホセ、マラガに現れた兄弟監督)
「Sin fin」 2018
製作:Producciones Transatlanticas / Solita Films / Elamedia Estudios /
協賛RTVE / ICAA / Canal Sur / Crea SGR / アンダルシア評議会文化部
監督・脚本:セサル・エステバン・アレンダ&ホセ・エステバン・アレンダ
撮影:アンヘル・マモロス
音楽:セルヒオ・デ・ラ・プエンテ
編集:セサル・エステバン・アレンダ
美術:ロシオ・ペーニャ
製作者:ホセ・エステバン・アレンダ、フェリックス・ブルゴス、ホセ・アントニオ・エルゲタ、ロベルト・ブトラゲーニョ
データ:製作国スペイン、スペイン語、ドラマ、SF、97分、撮影地マドリード、マラガ、カディス(コニル・デ・ラ・フロンテラ)、マラガ映画祭2018正式出品4月19日上映、配給フィルマックス・インターナショナル
キャスト:ハビエル・レイ(ハビエル)、マリア・レオン(マリア)、フアン・カルロス・サンチェス(70代のハビエル)、マリ・パス・サヤゴ(マリ・カルメン)、パコ・オチョア(アントニオ)、ロベルト・カンピジョ(ペドリート)、アセンシオ・サラス(祖父)、パコ・モラ(チャーリー)、クリスティアン・ガメロ(ルカス)、ほか
プロット:ハビエルはマリアへの失われた愛を取り戻すために未来からやって来る。一緒に知り合った魅惑的な日を思い出す。明け方にマドリードを発ち夕暮れどきのアンダルシアの海岸にやって来る。すべては、マリアがかつて愛しあった頃の活気あふれる女性に戻れるようにするためだ。マドリード、マラガ、カディスを巡る一種のロード・ムービー。
(カディスの浜辺の二人)
(かつてのマリアとハビエル)
★マリアを演ずるマリア・レオン(1984セビーリャ)は、「マリアは旅が決して終わらないことを望んでいる」とプレス会見で語っている。ハビエル・レイ(ガリシア生れ)は、「マリア・レオンはマリアというとても複雑な人格を演じるのに相応しかった。この作品は時間の飛躍がずっと続くせいで、異なった側面をその都度切り替えて演じなければならなかった。綿密に検討しながら、結果的には満足したものになった」と語っている。マリア・レオンの公開作品は、ベニート・サンブラノの『スリーピング・ボイス~沈黙の叫び~』に出演、サンセバスチャン映画祭2011女優賞、ゴヤ賞2012新人女優賞を受賞している。批評家からは「映画はさておき、マリア・レオンという逸材を発掘した」と、その演技力が絶賛された。ハビエル・レイは、マリア・レオンの実兄パコ・レオンの『KIKI~愛のトライ&エラー』(16、ラテンビート上映)に小さな役で出演している。
*『スリーピング・ボイス~沈黙の叫び~』の紹介記事は、コチラ⇒2015年05月09日
*『KIKI~愛のトライ&エラー』の紹介記事は、コチラ⇒2016年10月08日
(現在のマリアとハビエル)
*監督キャリア&フィルモテカ*
★ホセ・エステバン・アレンダ(・ロドリゲス)は、監督、脚本家、製作者、俳優(クレジットはホセ・エステバン・ジュニア)。2003年ビジネス・スクールMEGA(Master Europeo en Gestion Audiovisual)卒業。セサル・エステバン・アレンダは、監督、製作者、脚本家、編集者。建築学を専攻。2004年、兄弟二人でアニメーション製作を主にした「Solita Films」を設立した。主な短編6作で500ヵ所の映画祭、100以上の受賞歴があるということです。他にドキュメンタリーなど他の監督作品を製作している。
*主なフィルモグラフィーは以下の通り。
2008「Manolo marca registrada」(9分、アニメ)監督・脚本セサル、製作ホセ
2008「La increible historia del hombre sin sombra」(9分、アニメ)監督・脚本・製作ホセ、
撮影・編集セサル。ゴヤ賞2009短編アニメーション賞受賞、
2010「El orden de las cosas」(20分)共同監督・脚本・製作、ゴヤ賞短編映画賞ノミネート、
エルチェ映画祭監督賞、、ワルシャワ映画祭短編賞スペシャル・メンション、
ナント・スペイン映画祭短編賞、他受賞歴多数
2011「Matar a un niño」(9分、アニメ)共同監督・脚本・製作、
マラガ映画祭2011短編銀のビスナガ、国際シネマ・バイア・デイズ短編賞受賞
2012「Inertial Love」(6分)マラガ映画祭2013短編銀のビスナガ、
夕張ファンタスティック映画祭2014短編賞、他
2014「Not the End」(29分)長編「Sin fin」のもとになった短編、
ヒホン映画祭、セビーリャ・ヨーロッパ映画祭上映
2018「Sin fin」省略
(左がホセ・エステバン・アレンダ、右セサル、ゴヤ賞2009短編アニメーション賞を受賞)
(アニメーション「La increible historia del hombre sin sombra」のポスター)
パノラマ部門にスペインから3作*ベルリン映画祭2018 ③ ― 2018年02月22日 18:22
『靴に恋して』のラモン・サラサールの新作「La enfermedad del domingo」
★コンペティション部門の次に重要なセクションが「パノラマ部門」、後にヒットする作品が多く含まれております。スペインからは、ラモン・サラサールの第4作め「La enfermedad del domingo」と、アルムデナ・カラセドとロバート・バハーのフランコ独裁時代に起きた事件についてのドキュメンタリー「El silencio de los otros」(「The Silence of Others」)、ディアナ・トウセドのガリシアの神話と人々を語るために現実と虚構をミックスさせた初監督作品「Trinta Lumes」の3作がノミネートされました。なかで少しは知名度のあるサラサール監督の新作をご紹介します。主役は『マジカル・ガール』でファンを増やしたバルバラ・レニー、『ジュリエッタ』でヒロインの母親を演じたスシ・サンチェスです。
(スシ・サンチェス、監督、バルバラ・レニー、ベルリン映画祭2018にて)
「La enfermedad del domingo」(「Sunday's Illness」)
製作:ICEC(文化事業カタルーニャ協会)、ICO(Instituto de Credito Oficial)、ICAA
監督・脚本:ラモン・サラサール
撮影:リカルド・デ・グラシア
音楽:ニコ・カサル
編集:テレサ・フォント
キャスティング:アナ・サインス・トラパガ、パトリシア・アルバレス・デ・ミランダ
衣装デザイン:クララ・ビルバオ
特殊効果:エンリク・マシプ
視覚効果:イニャキ・ビルバオ、ビクトル・パラシオス・ロペス、パブロ・ロマン、
クーロ・ムニョス、他
製作者:ラファエル・ロペス・マンサナラ(エグゼクティブ)、フランシスコ・ラモス
データ:製作国スペイン、スペイン語・フランス語、2018年、113分、ドラマ、撮影地バルセロナ、ベルリン映画祭(パノラマ・スペシャル)上映2月20日、スペイン公開2月23日
キャスト:バルバラ・レニー(キアラ)、スシ・サンチェス(アナベル)、ミゲル・アンヘル・ソラ(アナベルの夫ベルナベ)、グレタ・フェルナンデス(グレタ)、フレッド・アデニス(トビアス)、ブルナ・ゴンサレス(少女時代のキアラ)、リシャール・ボーランジェ(アナベルの先夫マチュー)、デイビット・カメノス(若いときのマチュー)、Abdelatif Hwidar(町の青年)、マヌエル・カスティーリョ、カルラ・リナレス、イバン・モラレス、他
プロット:8歳のときに母親アナベルに捨てられたキアラと呼ばれる少女の物語。35年後、キアラは変わった願い事をもって突然母親のもとを訪れてくる。理由は言わずに10日間だけ一緒に過ごしてほしいと。アナベルは娘との関係修復ができるかもしれないと思って受け入れる。しかし、キアラには隠された意図があったのである。ある日曜日に起こったことが、あたかも不治の病いのように人生を左右する。長い不在の重み、地下を流れる水脈のような罪の意識、決して消えることのない永続する感情が、静謐なピレネーの森の湖をバックに語られる。 (文責:管理人)
(母親に本当の願いを耳打ちするキアラ、映画から)
★物語からは暗いイメージしか伝わってこない。主役の娘役バルバラ・レニーは、『マジカル・ガール』(14、カルロス・ベルムト)以来日本に紹介された映画、例えば『インビジブル・ゲスト悪魔の証明』(16、オリオル・パウロ)、『家族のように』(17、ディエゴ・レルマン)と、問題を抱えこんだ女性役が多い。サラサール作品は初めてだが、コメディも演れる今後が楽しみな女優である。本作では彼女が着る普段着に或る意味をもたせているようです。母親アナベルの豪華な衣装は、母娘の対照的な生き方を象徴している。衣装デザイナー、クララ・ビルバオのセンスが光っている。
*バルバラ・レニーのキャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2015年3月27日他
★母親を演じたスシ・サンチェス(1955、バレンシア)は、今まで脇役専門のような印象でしたが、本作では何故8歳になる娘を放棄したのかという謎めいた過去をもつ難役に挑戦した。日本初登場は今は亡きビセンテ・アランダの『女王フアナ』(01)のイサベル女王役だと思いますが、他にもアランダの『カルメン』(04)や、ベルリン映画祭2009金熊賞を受賞したクラウディア・リョサの『悲しみのミルク』(スペイン映画祭’09)、ベニト・サンブラノの『スリーピング・ボイス~沈黙の叫び』(11)、アルモドバルの『私が、生きる肌』(11)、『アイム・ソー・エキサイテッド!』(13)、『ジュリエッタ』など、セスク・ゲイの『しあわせな人生の選択』(16)に出演している。
(スシ・サンチェスとバルバラ・レニー、映画から)
(撮影中のスシ・サンチェス、バルバラ・レニー、サラサール監督)
★サラサール作品では、『靴に恋して』以下、「10.000 noches en ninguna parte」(12)でゴヤ賞助演女優賞にノミネートされた他、俳優組合賞の助演女優賞を受賞した。TVシリーズは勿論のこと舞台女優としても活躍、演劇賞としては最高のマックス賞2014の助演女優賞を受賞している。その他の共演者についてはアルゼンチンからミゲル・アンヘル・ソラ、フランスからリシャール・ボーランジェなど、国際色豊かです。グレタ・フェルナンデスとフレッド・アデニスは、イサキ・ラクエスタ&イサ・カンポの『記憶の行方』(16)に出演している。
(プレス会見をするサラサール監督、ベルリン映画祭2018にて)
*監督フィルモグラフィー*
★ラモン・サラサールRamón Salazarは、1973年マラガ生れの監督、脚本家、俳優。アンダルシア出身だがバルセロナでの仕事が多い。1999年に撮った短編「Hongos」が、短編映画祭として有名なアルカラ・デ・エナーレスとバルセロナ短編映画祭で観客賞を受賞した。長編デビュー作「Piedras」がベルリン映画祭2002に正式出品され、ゴヤ賞2003新人監督賞にもノミネートされたことで、邦題『靴に恋して』として公開された。問題を抱えた年齢も職業も異なる5人の女性が登場する。オムニバスの体裁をとっているが、お互いつながりあって、いわゆるバルセロナ派の監督が得意とする合唱劇といわれるジャンルに近い。原題の意味は石の複数形、邦題には苦労したろうと思います。「石」はしっかり抱えている大切なものを指すようです。女性それぞれがその置き場所が見つからないでいる。登場人物の描き方は極端だが、観客は5人の誰かに自分の姿を重ねて見ることになる。
(ベルリナーレの『靴に恋して』のポスター)
★その他2005年「20 centimetros」は、ロカルノ映画祭に正式出品、マラガ映画祭批評家賞、マイアミ・ゲイ&レスビアン映画祭スペシャル審査員賞などを受賞した。2013年「10.000 noches en ninguna parte」はセビーリャ(ヨーロッパ)映画祭でアセカン賞を受賞している。2017年の短編「El domingo」(12分)が本作の習作のようです。キアラと父親は森の中の湖にピクニックに出かける。ママは一緒にいかない。帰宅すると家の様子が一変している。キアラは窓辺でママの帰りをずっと待ちわびている。キャストはキアラの少女時代を演じたブルナ・ゴンサレスとキアラの父親役のデイビット・カメノスの二人だけ、スタッフはすべて「La enfermedad del domingo」と同じメンバーが手掛けている。
(ママの帰りを待ちわびるキアラ役のブルナ・ゴンサレス、「El domingo」から)
(ブルナ・ゴンサレスと父親役のデイビット・カメノス)
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